説明

放射線治療システムを較正するための方法および装置

ガントリー、放射線ビームを発生するように動作可能な放射線源、および測定デバイスを備える放射線治療システムおよびこのシステムの作動動作を行う方法。測定デバイスは、ガントリーに物理的接続され、多次元スキャニングアーム、および検出器を備える。この方法は、放射線源から放射線を発生するステップと、放射線を減衰ブロックに通すステップと、測定デバイスで放射線を受け取るステップとを含む。測定デバイスは、水と接触しないように位置決めされる。データは、受け取った放射線から生成され、システムの作動動作が、生成されたデータを使用して行われ、システム特性と事前定義標準とのマッチングが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年7月28日に出願された仮特許出願第60/820,690号の優先権を主張するものである。
本発明は、放射線治療用撮像および治療システムに関する。より具体的には、本発明は、システムを較正するために使用されるシステム内の構造、およびシステムを作動動作(コミッショニング)またはチューニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療用の医療機器は、高エネルギー放射線を使って腫瘍性組織を治療する。放射線の線量とその位置は、腫瘍が破壊されるのに十分な放射線を受けること、ならびに周囲および隣接する非腫瘍性組織に対する損傷が最小限に抑えられることの両方が確実になされるように正確に制御されなければならない。強度変調放射線治療(IMRT)では、それぞれが強度および/またはエネルギーに関して独立して制御されうる複数の放射線を用いて患者を治療する。これらの複数の放射線は、患者を中心として異なる角度から方向付けられ、組み合わさって所望の線量パターンを形成する。外部線源放射線治療では、患者の外部にある放射線源で内部の腫瘍を治療する。通常、外部線源は、腫瘍部位に対してのみビームが当たるようにコリメートされる。典型的には、放射線源は、高エネルギーX線、特定の直線加速装置からの電子、または高度に集束された放射性同位体からのガンマ線からなるが、他のタイプの放射線源も使用可能である。
【0003】
線量および線量位置は、患者治療を正確に確実に行えるように十分に制御される必要があるため、システム自体は、最初に適切に作動される必要があり、またシステムが適切な、予想されるパラメータの範囲内で確実に動作するように連続的に監視される必要がある。システムまたは機械が作動される時に、システムを構成し、システムが期待されるパラメータの範囲内で稼働していることを確実にするために、システム特性が所定の標準に対して測定され、比較される。作動動作は、全体的な機械較正の考慮、送出されるビームの幾何学のチューニング、そして特に、ビームにおけるあらゆる場所の出力およびエネルギーが、等しいことを保証することを含む。いくつかの場合において、個々のシステムは、互いに関して較正されることがなく、したがって、ある意味で、それぞれの個々のシステムは、ビーム形状、強度などの変動が機械間で異なるという点で孤立している。それぞれのシステムは、製造枠に収まるようにチューニングされ、固有の計画ステーションモデルが生成される。実際、各作動動作により、機械に適合するようにモデルに変更する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作動動作が、この方法でされる場合、治療が始まると個々のシステム間で患者を移動することは困難であり、その理由は、患者が適切な治療をそのまま受け続けることを保証にするために線量および他の治療パラメータに対する必要な変更のためである。患者が受ける線量は、ビーム形状および出力に依存するだけでなく、ビームそれ自体に含まれるエネルギーとともに変化するので、個々の作動動作では、治療が始まると、機械間で患者を移動するのが困難である。このタイプの個別の作動動作では、さらに、既知の標準との比較が容易でないため、機械のサービスおよび品質保証(QA)分析が困難になる。そこで、作動動作、サービス、およびQA分析を目的として既知の組の標準に対して測定される治療システムを実現することが望ましい。
【0005】
本発明は、既知の組の標準、「ゴールドスタンダード」として知られている、に関してシステムの較正を容易に行えるようにする放射線治療システムを提供する。ゴールドスタンダード値は、各種の方法で決定することができ、従来は、水槽を使用してゴールドスタンダードを設定するために使用される既知の減衰結果を得る。ゴールドスタンダードにチューニングされることができる放射線治療システムを提供することにより、個々のシステムを作動するのに要する時間と労力が軽減され、システムは、QAの観点から整備保守を容易にする。実際、全システムは、ゴールドスタンダードに調整されたときに線量測定上等価である。線量測定上等価となるように機械を調整することは、ときには、「ツイン動作」と呼ばれ、その結果得られる、ゴールドスタンダードに調整された機械は、「ツイン」と考えられる。システムの許容誤差は、システム毎に同一に留まるため、任意の個別システムから患者の治療計画を妨げることなく他のシステムに患者を移すことが容易に可能である。チューニングおよび作動動作は、実質的に自動化され、機械は、モデルに適合するように変更できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、放射線治療システムを実現する。システムは、放射線ビームを発生するように動作可能な放射線源、ガントリー、およびガントリーに結合された測定デバイスを備える。測定デバイスは、多次元スキャニングアームおよび放射線源からの放射線を受け取るように動作可能な検出器を備える。いくつかの実施形態では、システムは、システムの一部に結合された減衰ブロックも備え、この減衰ブロックは放射線源により出力される放射線ビームの経路内に出入りすることが可能である。一実施形態では、減衰ブロックは、実質的に階段形状となっているくさびを形成するように結合され一体にされた複数のアルミニウムプレートを備える。減衰ブロックを通過した放射線は、システムのコンポーネントを較正するために使用される。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、事前定義標準に対して放射線治療システムを作動動作する方法を実現する。放射線治療システムは、ガントリーに結合された測定デバイス、および放射線を発生するように動作可能な放射線源を備える。この方法は、放射線源により放射線を発生するステップ、放射線を減衰ブロックに通すステップ、測定デバイスで放射線を受け取るステップ、受け取った放射線からデータを生成するステップ、および生成されたデータを使用してシステムを作動動作し、システム特性と事前定義標準を調和させるステップを含む。この方法は、水と接触しないように測定デバイスを位置決めするステップも含む。
【0008】
本発明の他の態様は、詳細な説明と付属の図面を考察することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】放射線治療システムの斜視図である。
【図2】図1に例示されている放射線治療システムで使用することができる多葉コリメータの斜視図である。
【図3】図1の放射線治療システムで使用するためのツイン動作アームの斜視図である。
【図4】図1のシステムのガントリーに結合された図3のツイン動作アームの斜視図である。
【図5】図1のシステムに結合された減衰ブロックの斜視図である。
【図6】本発明によるソフトウェアにより生成される代表的なユーザーインターフェースのスクリーンショットである。
【図7】コンポーネント入力機能を例示する、図6のユーザーインターフェースの一部のスクリーンショットである。
【図8】縦方向プロファイルデータを例示する本発明のソフトウェアにより生成されるデータを表すグラフである。
【図9】横方向プロファイルデータを例示する本発明のソフトウェアにより生成されるデータを表すグラフである。
【図10】階段状減衰ブロックデータを例示する本発明のソフトウェアにより生成されるデータを表すグラフである。
【図11】本発明によるリニアック取り付けブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を詳しく説明する前に、本発明が、その応用例において、以下の説明で述べられているか、または以下の図面に例示されている構造の詳細およびコンポーネントの配列に制限されないことは理解されるであろう。本発明は、他の実施形態を利用することができ、また各種の方法で実施されるか、または実行される。また、本明細書で使用される語法および述語は、説明を目的としたものであり、制限するものとしてみなされるべきではないことも理解されるであろう。「含む」、「備える」、または「有する」、および本明細書におけるそれらの変形は、それ以降に記載される項目および同等の項目、さらには追加項目を包含することを意味する。特に断りまたは制限のない限り、「取り付けられる」、「接続される」、「支持される」、および「結合される」、ならびにそれらの変更形態は、広義に使用され、直接的と間接的の両方の取り付け、接続、支持、および結合を包含する。さらに、「接続される」および「結合される」は、物理的または機械的接続もしくは結合に制限されない。
【0011】
上側、下側、下方、上方、後方、底、前、後などの方向参照が、図面を説明する際に本明細書に行われるが、これらの参照は、便宜上(法線方向から見た)図面に対し相対的なものである。これらの方向は、文字通り解釈されること、または本発明を制限することをいかなる形でも意図されていない。それに加えて、「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は、本明細書では、説明することを目的として使用され、相対的重要性または有意性を示す、または暗示することを意図されていない。
【0012】
それに加えて、本発明のいくつかの実施形態は、説明することを目的として、コンポーネント大半がハードウェアでのみ実装されているかのように例示され、説明されている場合があるハードウェア、ソフトウェア、および電子コンポーネントまたはモジュールを含むことも理解されるであろう。しかし、当業者であれば、この詳細な説明を読んだ後に、少なくとも一実施形態において、本発明の電子回路に基づく態様は、ソフトウェアで実装されることを認識するであろう。そのようなものとして、ハードウェアおよびソフトウェアに基づく複数のデバイスは、複数の異なる構造的コンポーネントとともに、本発明を実装するために使用されることに留意されたい。さらに、その後の段落において説明されているように、図面に例示されている特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示すること、また他の代替機械的構成が可能であることを示すことを意図されている。
【0013】
図1は、放射線治療を患者14に施すことができる放射線治療システム10を例示している。放射線治療は、光子利用放射線療法、近接照射療法、電子線療法、陽子、中性子、もしくは粒子線療法、または他のタイプの治療法を含むことができる。放射線治療システム10は、ガントリー18を備える。ガントリー18は、放射線源24および放射線のビーム30を発生するように動作可能な直線加速装置26(別名「リニアック」)を備えることができる放射線モジュール22を支持することができる。図面に示されているガントリー18は、リングガントリーである、つまり、完全360°弧に広がり完全なリングまたは円をなすけれども、他のタイプの取り付け配列も使用可能である。例えば、C型の部分リングガントリー、またはロボットアームも、使用可能であろう。患者14に関して各種の回転および/または軸方向位置に放射線モジュール22を位置決めすることができる他のフレームワークも使用される。それに加えて、放射線源24は、ガントリー18の形状に従わない経路に移動することができる。例えば、放射線源24は、例示されているガントリー18が一般的に円形であるとしても非円形経路に移動する可能性がある。例示されている実施形態のガントリー18は、治療中に患者14が入るガントリー開口32を定める。
【0014】
放射線モジュール22は、放射線ビーム30を修正または変調するように動作可能な変調デバイス34を備えることもできる。変調デバイス34は、放射線ビーム30の変調を行い、放射線ビーム30を患者14に向ける。特に、放射線ビーム30は、患者の一部分38に向けられる。大まかに言うと、この部分は、全身を含んでもよいが、一般的には、全身よりも小さく、二次元領域および/または三次元体積により定められる。放射線を受けることが望まれている部分または領域は、ターゲットまたはターゲット領域と呼ぶことができ、注目する領域の一実施例である。他のタイプの注目する領域は、潜在的に危険な状態にある領域である。一部分が潜在的に危険な状態にある領域を含む場合、放射線ビームは、好ましくはその潜在的に危険な状態にある領域から迂回される。このような変調は、ときには、強度変調放射線治療(「IMRT」)と呼ばれる。
【0015】
変調デバイス34は、図2に例示されているようなコリメーションデバイス42を含むことができる。コリメーションデバイス42は、放射線ビーム30が通過することができる開口50のサイズを定め、調節する一組のジョー46を備える。ジョー46は、上側ジョー54と下側ジョー58とを備える。上側ジョー54および下側ジョー58は、開口50のサイズを調節するように移動可能である。ジョー46の位置により、患者14に送出されるビーム30の形状が調節される。
【0016】
一実施形態では、図2に例示されているように、変調デバイス34は、位置から位置へ移動して強度変調を行うように動作可能な複数の織り交ざるリーフ66を含む、多葉コリメータ62(別名「MLC」)を備えることができる。また、リーフ66は、最小開位置と最大開位置との間のどこかの位置へ移動されうることに留意されたい。複数の織り交ざるリーフ66は、放射線ビーム30が患者14の部分38に到達する前に放射線ビーム30の強度、サイズ、および形状を変調する。リーフ66のそれぞれは、リーフ66が素早く開閉して放射線の通過を許可したりブロックしたりできるようにモーターまたは空気弁などのアクチュエータ70により独立して制御される。アクチュエータ70は、コンピュータ74および/またはコントローラにより制御される。
【0017】
放射線治療システム10は、図1に例示されているように、放射線ビーム30を受け取るように動作可能な、検出器78、例えば、キロボルトまたはメガボルト電圧検出器を備えることもできる。直線加速装置26および検出器78は、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして動作することもできる。直線加速装置26は、患者14の部分38に向けて放射線ビーム30を放射する。部分38は、放射線の一部を吸収する。検出器78は、部分38により吸収される放射線の量を検出または測定する。検出器78は、直線加速装置26が患者14の周りを回転し、患者14に向けて放射線を放射しつつ、異なる角度から吸収データを収集する。収集された吸収データは、コンピュータ74に伝送され、そこで吸収データを処理し、患者の生体組織および臓器の画像を生成する。これらの画像は、骨、軟組織、および血管も示すことができる。システム10は、治療中に患者14の少なくとも一部分を支持するように動作可能な寝椅子82として示されている患者支持器も備えることができる。例示されている寝椅子82は、患者14の全身を支持するように設計されているが、本発明の他の実施形態では、患者支持器は、全身を支持する必要はなく、むしろ、治療中に患者14の一部分のみを支持するように設計することもできる。
【0018】
上で導入したツイン動作プロセスの第1のステップで、すべてのシステム10が測定される際に基づくゴールドスタンダードを設定する。ゴールドスタンダードは、作動動作、サービス動作、またはQAプロセス(較正を含む)のときに測定されるシステムのすべての基本特性の標準となるものである。基本特性は、位置合わせ、出力、エネルギー、ビーム形状、および多葉コリメータ62を含むことができる。より具体的には、ゴールドスタンダードへの変換は、ビーム対称性(リニアック位置合わせ)、1秒間に放出される光子の発生源の強度または光子数(出力フルエンス率)、放射線(エネルギー)の波長、光の色、または侵入深さ、xおよびy方向のプロファイル、フィールド幅、およびジョー位置(ビーム形状)、ならびに葉開閉回数および葉応答(MLC)の考慮を含む。
【0019】
ツイン動作プロセスを完遂するために、付加的ハードウェアおよび/またはソフトウェアがシステム10に結合される。図3および4に例示されているように、システム10は、ツイン動作アーム90を備える。アーム90は、ガントリー18に事前に取り付けられている取付パッド94を介してガントリー18に結合される。例示されている実施形態に示されているように、複数の取付パッド94が、ガントリー18の周りに配置され、複数の取り付け位置を形成する。取付パッド94は、公差設定または調節をさらに行わなくてもアーム90をガントリー18に取り付けられるように厳格な公差が設定される。図に示されているように、アーム90は、ブラケット96を使用して取付パッド94にボルトで固定される。アーム90をガントリー18に結合することにより、ガントリーおよびアーム90の制御を統一することができる。
【0020】
アーム90は、xおよびy方向で測定を行うことができる二次元(2D)スキャナ98を備える。他の実施形態では、アーム90は、3つの次元、または他の数の次元で測定することができるスキャナを備えることができる。ツイン動作アームは、さらに、リニアック26から信号を受信する電離箱102を備える。電離箱102は、これに結合されているビルドアップキャップ106を備える。例示されている実施形態では、ビルドアップキャップ106は、仮想水からなり、電離箱102内に受け取った信号を増大する機能を果たす。スキャナ98および電離箱102の移動は、従来のコントローラ110、114を使用して実行される。ガントリー開口32内の電離箱102の高さは、取付パッド94の位置により決定され、ガントリー18の等角点を使用して調節される。例示されている実施形態では、電離箱102の高さは、ガントリー18の等角点を中心としないが、むしろ、この等角点は、電離箱102の高さを設定するための基準点として使用される。例示されている実施形態では、電離箱102は、ガントリー18の等角点の真上を中心とする。
【0021】
例示されている実施形態では単一の電離箱102が使用されるが、本発明の他の実施形態では、1つまたは複数の電離箱がアレイ、グリッド、または体積内に取り付けられうる。複数の電離箱を使用すれば、多次元放射線ビームのより効率的な較正を行うことができる。例示されている実施形態では、電離箱を検出器として使用しているが、限定はしないが、ダイオード検出器、ダイヤモンド検出器などを含む他のタイプの検出器を電離箱の代わりに使用し、所望の結果を出すことも可能であることは理解される。
【0022】
システム10は、ツイン動作プロセスをさらに補助する減衰ブロック118も備える。従来の作動動作プロセスでは、水槽を使用して、リニアックから電離箱への信号を減衰し、線量の絶対測定を行うが、その際に、測定デバイスは水槽内に沈められている。水槽内の水の深さの結果、既知の減衰を使用してシステムのコンポーネントを調節することができる。しかし、水槽は非常に大きく、放射線ビームの経路に正確に移動させることが難しい場合が多いので、個々のシステムの作動動作を行うときに水槽を使用することは厄介であり、調節しにくい。さらに、いくつかのビーム幾何学的形状が比較的狭いため、水槽を使用して正確な測定結果を得ることは難しい。それに加えて、システム10の敏感なコンポーネントと接触する可能性がある水が存在することで、不確定性と危険性が増す。そのため、システム10では、アーム90がガントリー18に結合された状態で(つまり、水の中に沈めずに)減衰ブロック118を使用して、同じ結果を得る。
【0023】
図5に例示されているような減衰ブロック118は、実質的にくさび状をしており、一貫した厚さを持つアルミプレート120のスタックで形成され、その結果、階段状減衰パターンが得られる(階段状減衰パターンのグラフについては図10を参照のこと)。例示されている実施形態の減衰ブロック118は、寝椅子82に結合され、寝椅子82の移動とともに放射線ビームの経路内を出入りする(つまり、減衰ブロック118は、例示されている実施形態のリニアック26である、x線源の経路に出入りする)。他の実施形態では、減衰ブロック118は、ブロック118をリニアック26により生成される放射線ビームの経路内に出入りするために使用される別のデバイスに結合される。他の実施形態では、減衰ブロック118は、固定された状態であってもよい。減衰ブロック118は、任意の与えられたエネルギーを有するビームにより測定するために使用できるが、アルミプレート120の厚さ(または減衰ブロック118の厚さ全体)は、ビーム強度を補正するように調節される必要がある場合がある。
【0024】
減衰ブロック118は、水槽を従来使用していたのと類似の減衰結果をもたらす。ブロック118を使用することにより得られる結果は、水槽減衰を使用することで得られる予想結果と比較される。アルミニウムを、減衰ブロック118を形成する材料として使用すると、いくつかの利点が得られる。第1に、アルミニウムは、水に比べて密度が高く、水の所定の深さをシミュレートするのに少ない材料で済む。これにより、減衰器の重量と必要なアルミプレートの厚さの両方が低減される。さらに、作動動作、整備保守、およびQAプロセスで試験されるエネルギーレベルにおいて、アルミニウムは、水と比較的類似している特性を示し、ブロック118の減衰結果と予想される水の結果とをより容易に比較できる。しかし、材料の痕跡が既知の限りブロックを作製するために任意の数の材料を使用することができる。例えば、ブロック118を作製するためにプラスチックまたは他の金属が使用されうるが、多くの場合、アルミプレートと同じ結果を得るために他の材料のプレートの厚さを増す必要がある。それに加えて、例示されている実施形態のアルミプレートは、すべて等しい厚さであるけれども、他の実施形態では、プレートそれ自体の厚さは、所望の結果に応じて変化してもよい。
【0025】
図6は、ツイン動作プロセスを制御するソフトウェアによりシステム10のグラフィカルユーザーインターフェース上で生成されたスクリーンショット122を例示している。図6および7に例示されているように、ユーザーは、ビーム(126において)、寝椅子82(130において)、MLC 62(134において)、ガントリー18(138において)、およびジョー46(142において)を含む、システム10の各種の部分の制御に関する情報を入力することができる。ソフトウェアは、システム10からデータを収集し、図8〜10に例示されているグラフ表現などの出力を生成する。ソフトウェアは、制御および測定機能を統合することにより効率的なシステムチューニングを実行し、本質的に完全自動化される。ソフトウェアは、システム10により生成されるデータを適宜収集する方法を決定する固定スクリプトを含む。したがって、ソフトウェアにより集められた測定結果が、所定の範囲を外れているとわかった場合、ソフトウェア自体が、所望の結果を生成するため入力を適宜変更する方法を決定することができる。ソフトウェアは、フィードバック機構にデータを取らせ、必要ならばデータを修正し、次いで、さらにユーザーから入力を求めることなくデータを再測定することができる。
【0026】
図8は、ソフトウェアにより生成された例示的なグラフ出力である。グラフ146は、ビームの縦方向プロファイル(つまり、IEC y方向データ)を表している。グラフ146の形状は、ジョー46の位置により決定される。グラフ146は、ツイン動作されたシステム10に対するゴールドスタンダードのデータ線154(灰色で示されている)上に重ねられた電離箱102により受信されたデータから生成された第1のデータ線150(紫色で示されている)を含む。例示されているように、第1のデータ線150は、ゴールドスタンダードのデータ線154と実質的に同一であり、これで、システム10がy方向にゴールドスタンダードに合わせてツイン動作されていることが確認される。同様に、図9は、ビームの横方向プロファイルデータ(つまり、x方向データ)を表すグラフ158である。ここで、第1のデータ線162(紫色)は、ゴールドスタンダードのデータ線166(灰色)上に重ねられ、x方向のツイン動作であることが確認される。縦方向プロファイルデータおよび横方向プロファイルデータは両方とも、ビーム30の形状により異なる。図10は、階段くさび状減衰ブロック118の減衰データを表すグラフ出力170である。
【0027】
図11は、本発明の一実施形態による調節ブラケット174を例示している。調節ブラケット174は、ガントリー18上のリニアック26を簡単に調節できるようにする、ボルト178として示されている、複数の留め具を備える。ツイン動作プロセスの位置合わせ段階で、リニアック26は、位置合わせされる、あるいはいわば「ダイヤルイン」される必要がある。すでに既知のリニアック取り付け構成では、リニアックは、y方向の運動とは無関係にx方向に、またその逆にx方向の運動とは無関係にy方向に、自然に移動することはなかった。自然な運動は、実際には対角線に近かった。したがって、リニアックを正確に移動させることは困難であり、どのような移動を行おうと、x方向成分とy方向成分を伴う複合効果があった。ブラケット174を使用すると、ボルト178の対向する組を移動することにより、リニアック26が正確に、容易に調節されるようにx方向およびy方向にリニアックを独立して移動させることができる。
【0028】
上述の実施形態では、アーム90および減衰ブロック118などのいくつかのコンポーネントは、システム10の作動動作、整備保守、またはQAの実施の際に共用することについて説明された。しかし、本発明の他の実施形態では、いくつかのコンポーネントは、別々に使用することができるか、またはシステム10内の他の機能を実行するために使用されうる。
【0029】
例えば、ガントリー18が回転すると、アーム90、したがって電離箱102がガントリー18とともに回転することが理解される。アーム90を回転することにより、ビーム場形状の変化の測定、ガントリーの弛みの測定などの他の測定も可能である。Cアームガントリーなどを使用する、いくつかのガントリー構成では、ビームがすべての角度で一貫していることを保証することが重要である。ビーム幾何学的形状は、減衰ブロック118を使用せずに、アーム90(例えば、スキャナ98)を使用して妥当性を検証できる。好ましい場合、別の移動装置を使用して、ブロック118を任意のビーム角度でリニアック26の経路内に入れることができる。リニアック26のエネルギー出力を測定するなどの他の測定機能も、ブロック118を使用せずに実行できる。
【0030】
他の実施形態では、システムが、x線源の位置と反対側に検出器を備える場合、x方向とy方向の両方で較正データを収集するためにアーム90が使用される。これにより、データを使用してシステムの揺動で検出器信号がどのように変化するかを測定することが可能であるので、検出器のより堅牢な較正を行うことができる。したがって、較正は、ガントリーの角度、回転、および安定性に応じて変わる。アーム90は、2つの次元で測定する(例えば、x軸方向プロファイルに加えてy軸方向プロファイルを測定する)ように動作可能な1つの検出器または検出器アレイで置き換えられる。
【0031】
異なるビーム侵入深さについて測定するために複数の電離箱(または複数の検出器)が使用される場合、別の減衰ブロックを用意する必要はない。本質的に、いくつかの実施形態では、減衰ブロックおよび電離箱は、1つのユニットに組み込まれる。
【0032】
上述のツイン動作機構を使用するシステム10により生成されるデータは、他の各種の方法で使用することもできる。例えば、他の実施形態では、アーム90および/またはブロック118は、MLC 62の単一のリーフ66に対するプロファイルを取得するために使用されうる。これらのリーフは、静的であるか、または移動するものであってよく、リーフの運動時の出力を特徴付けることができる。MLCは、上に例示されているMLC 62であるか、またはスライドするリーフを有する二次元MLCとすることも可能である。ここで、すべてのジョーの厚さを較正することも可能であり、ビーム形状を変化させることでy方向の異なるフィールドの形状を得ることができる。さらに他の実施形態では、特にリニアックが移動可能なように設計されている場合、アーム90および/またはブロック118は、リニアックの位置に応じてビーム特性を取得するために使用されるか、またはその逆が可能である。したがって、デバイスは、リニアックのチューニングに使用することが可能である。この装置は、MLC位置合わせのためMLCさねはぎ試験で使用することも可能である。いくつかの場合において、アーム90は、適宜、測定から正規化されうる。
【0033】
全体として、上述のツイン動作機構を使用すると、セットアップがほとんど必要なくなるので、システム10の作動動作、サービス動作、およびQA分析がかなり簡素化される。個々のシステムの作動動作を実行する時間は、数日から数時間程度に短縮される。それに加えて、機械の個別作動動作を実行するのではなく、ゴールドスタンダードに対して任意のシステムを測定するので、訓練およびサービス時間が短縮され、治療を受けるために機械から機械へ患者が移動する機動性が高まる。上述のツイン動作プロセスは任意のフィールドのサイズについて作動動作を可能にする一般的較正を行うことができるので、すべてのビームフィールドのサイズについてこれらのプロセスを使用して容易に作動動作を実行できる。機械の耐用期間中に必要に応じてシステムのサービスおよび再チューニングを行った後の調節は、かなり効率的でもあり、ツイン動作されたシステムではサービス問題は比較的容易に診断できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリーと、
前記ガントリーに結合され、放射線ビームを発生するように動作可能である放射線源と、
多次元スキャニングアーム、および前記放射線源から放射線を受け取るように動作可能な検出器を備え、前記ガントリーに物理的に接続された測定デバイスと、
を備える放射線治療システム。
【請求項2】
さらに、前記システムに結合された減衰ブロックを備える、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記減衰ブロックは移動可能である、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記減衰ブロックは、前記放射線源により生成される放射線ビームの経路に移動可能に出入りする、請求項3に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記減衰ブロックは水で構成されていない、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記減衰ブロックは実質的に階段状である、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記減衰ブロックはくさびを形成するように結合された複数のプレートを備える、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記プレートは実質的に一様な厚さである、請求項7に記載の放射線治療システム。
【請求項9】
それぞれのプレートの厚さは、ビーム強度に合わせて調節するように可変である、請求項7に記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記減衰ブロックはアルミニウムで形成される、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記減衰ブロックはプラスチックで形成される、請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記スキャニングアームは、x、y、およびz方向の任意の組み合わせで移動する、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項13】
前記検出器は電離箱である、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項14】
前記検出器は複数の電離箱を備える、請求項13に記載の放射線治療システム。
【請求項15】
前記電離箱は、グリッド、アレイ、または体積のうちの1つで配列される、請求項14に記載の放射線治療システム。
【請求項16】
前記検出器は、ダイオード検出器またはダイヤモンド検出器のうちの一方を備える、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項17】
前記検出器は、複数の検出器を備える、請求項16に記載の放射線治療システム。
【請求項18】
前記複数の検出器は、グリッド、アレイ、または体積のうちの1つで配列される、請求項17に記載の放射線治療システム。
【請求項19】
さらに、前記放射線源に結合された調節ブラケットを備え、前記調節ブラケットは、第1の方向と第2の方向の両方で前記放射線源の位置を調節するように動作可能であり、前記第1および第2の方向のそれぞれの方向の前記放射線源の運動は、前記第1および第2の方向のうちの他方の方向の運動から独立している、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項20】
前記測定デバイスは複数の検出器を備える、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項21】
前記システムは前記スキャニングアームおよび前記ガントリーに対する統合制御システムを有する、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項22】
前記スキャニングアームは水と接触していない、請求項1に記載の放射線治療システム。
【請求項23】
ガントリーおよび放射線を生成することができる放射線源に結合された測定デバイスを備える放射線システムを、事前定義標準に対して作動させる方法であって、
前記放射線源から放射線を発生するステップと、
前記放射線を減衰ブロックに通すステップと、
前記測定デバイスを水と接触しないように位置決めするステップと、
前記測定デバイスで放射線を受け取るステップと、
受け取った前記放射線からデータを生成するステップと、
システム特性を事前定義標準に調和させるように、前記生成されたデータを使用して前記システムを作動させるステップと、
を含む方法。
【請求項24】
前記生成されたデータを使用して前記システムを作動させるステップは、前記生成されたデータを前記事前定義標準と比較するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記システムを作動させるステップは、さらに、位置合わせ、ビーム出力、ビームエネルギー、ビーム形状、ビーム対称性、出力フルエンス率、放射されるエネルギーの波長、放射線の侵入深さ、およびフィールド幅のうちの1または複数が考慮される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記システムは、前記放射線源により出力される放射線の前記経路内に配置されたコリメータを備え、受け取った前記放射線からデータを生成するステップは、コリメータ出力を特徴付けるステップと、複数のフィールドの形状について較正するステップと、前記放射線源の前記位置の関数としてビーム特性を測定するステップ(即ち、前記放射線のチューニングのため)と、前記コリメータの位置合わせとの1または複数を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
さらに、前記減衰ブロックを前記放射線の前記経路に出し入れするステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記測定デバイスで前記放射線を受け取るステップは、さらに、検出器を使用して前記放射線を受け取るステップを含み、前記検出器は電離箱を備える、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
さらに、第1および第2の方向と独立して前記放射線源を移動するステップを含み、前記移動は前記放射者線源の前記位置の調節を可能にする、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
システム特性を事前定義標準に調和させるように、前記生成されたデータを使用して前記システムを作動させるステップは、水槽における測定値に基づく事前定義標準と特性とを調和させるステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
動作パラメータの事前定義標準に適合するように、システムコントロールを利用する放射線治療システムをチューニングする方法であって、
放射線を減衰ブロックに通すステップと、
測定デバイスを使用し、システム出力に関係するデータを収集するステップと、
前記データを動作パラメータの前記事前定義標準と比較するステップと、
前記比較に基づきフィードバックを前記システムに与えるステップと、
前記システム出力が前記事前定義標準に適合するように前記フィードバックを使用して前記システムコントロールを調節するステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記調節は自動である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記調節は手動である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記放射線治療システムは、さらに減衰ブロックを備え、前記測定デバイスを利用してデータを収集するステップは、前記減衰ブロックから物理的に分離されている測定デバイスを利用してデータを収集するステップを含む、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−544446(P2009−544446A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522808(P2009−522808)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/016920
【国際公開番号】WO2008/013944
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】