説明

放射線治療管理システム

【課題】 治療計画の妥当性を客観的に判断できる放射線治療管理システムを提供する。
【解決手段】 放射線治療管理システム1は、過去の放射線治療の治療計画の計画決定要因情報とその各回の照射の照射線量情報とを蓄積するデータベース4と、登録に係る治療計画の計画決定要因情報に対応する過去の治療計画の計画決定要因情報に関連付けられた照射線量情報をデータベース4から検索するDB検索部321と、検索された照射線量情報に基づいて線量許容範囲を算出する線量許容範囲算出部322と、登録に係る治療計画の総照射線量が線量許容範囲に含まれるか判断する計画線量判断部323と、「含まれる」と判断されたときに、この治療計画をデータベース4に格納させる計画格納処理部324と、「含まれない」と判断されたときに、この治療計画の補正を要求する計画補正要求部325とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部に向けて放射線を照射して治療を行う放射線治療に関する情報を管理する放射線治療管理システムに関し、特に、放射線照射時における過照射や過小照射を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、被検体内の腫瘍等に対する好適な治療法として従来から広く実施されている。放射線治療においては、患部に対する放射線の照射は一般に複数回に分割して行われ、その総照射線量及び各回の照射線量は、患部の部位や状態、更には患者の年齢等の様々なファクタに応じて決定される。ここで、患部の位置や状態等については、X線CT装置等の画像診断装置によって事前に撮影された画像を参照して把握するのが通常である。
【0003】
また、放射線治療の効果と患者への安全性との双方を勘案すると、総照射線量及び各回の照射線量の値は的確に決定される必要がある。そのため、放射線治療においては、実際の治療に先立って、医師が治療計画を作成し、その治療計画に則って治療を実施するようになっている。
【0004】
下記の特許文献1、2には、放射線治療における治療計画の従来の作成方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の放射線治療計画方法は、患部の個別状況に応じた適切な処方条件を計画することを目的とするものであり、その構成は、被検体内の患部毎に及び放射線照射の不要なリスク臓器毎に照射放射線の目標処方線量を設定し、患部及びリスク臓器への放射線照射の処方の優先付けを行い、患部又はリスク臓器が重なる領域について優先付けに基づき優先度の高い方の目標処方線量を選択し、設定された目標処方線量又は選択された目標処方線量に基づきインバースプラン法を用いて患部への照射線量分布を算出し、この照射線量分布に基づき患部毎に及びリスク臓器毎に照射放射線の処方線量を算出し、目標処方線量と算出処方線量との差異を表す評価関数値を算出し、この評価関数値が所定の値以下となるように患部への照射線量分布を修正する、ものとされている。
【0006】
この特許文献1の計画方法においては、目標処方線量の設定処理や、患部及びリスク臓器に対する優先付け処理は、計画作成者である医師の経験等に基づいて行われる。そのため、総照射線量や各回の照射線量の判断についても医師自身によってなされることから、ケアレスミスや思い込みなどの人為的要因に基づく間違いが生じるおそれがある。
【0007】
このように、当該文献の方法では、治療計画を作成するに当たり照射線量の妥当性を客観的に判断することができないため、治療効果及び安全性の両面を確実に担保することは困難と考えられる。なお、このような間違いは、如何に注意を払っても生じてしまう偶発的なものであるため、それを人為的に回避することは困難と思われる。
【0008】
更に、実際の治療は放射線治療技師によって行われ、医師が治療現場にいないケースも多々あることを考慮すると、医師と技師との間に連絡ミス等が生じる可能性があり、実際に生じた場合には照射事故につながることさえ考えられる。したがって、治療計画時だけでなく、治療時においても、治療効果及び安全性(特に後者)を十分に担保することは困難と言える。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法は、医師が処方した線量の処方箋データに則した照射線量を設定することを目的とするものであり、各門から標的に向けてそれぞれ照射する放射線に対する体内吸収線量分布を計算し、少なくとも、標的に対して処方された処方線量、注意臓器に対する制限線量及び過大線量体積率を有する処方箋データ、各門から標的に向けてそれぞれ照射する放射線の照射線量の比率、並びに吸収線量分布計算手段により計算された体内吸収線量分布に基づいて、注意臓器に対する処方箋データについての第1の評価値を計算し、第1の評価値が所定の条件を満足する照射線量の比率を計算し、計算した各門の照射線量の比率と各門に対する体内吸収線量分布との積和へスケーリングパラメータを乗じた値、及び処方箋データに基づいて、標的及び注意臓器に対する処方箋データについての第2の評価値を計算し、第2の評価値が所定の条件を満足するスケーリングパラメータを計算し、少なくとも、計算したスケーリングパラメータ、計算した各門の照射線量の比率、及び各門に対する体内吸収線量分布に基づいて、各門の照射線量値を決定することにより、処方箋データを満足する照射線量を取得するように構成されている。
【0010】
また、前述の処方箋データとして、標的内の参照座標、処方線量、最大線量、最小線量、過小線量体積率、制限線量、最大線量、過大線量体積率、標的及び注意臓器ごとに重要度を示す制約重みが当該文献に列挙されている。
【0011】
この特許文献2に示す方法は、医師が決定した処方箋データに実際の照射線量を合わせるように構成されていることから、間違えた処方箋データが入力された場合には、適切な治療計画を作成することはできず、ひいては、治療効果や安全性に問題を及ぼす可能性があった。また、医師と技師との間の連絡ミス等による照射事故についても、それを抑制することは困難であった。
【0012】
ところで、放射線治療の治療効果や安全性を向上させるためのシステムは、導入コストやランニングコストが高いことなどの理由から、大規模病院などの経済的に十分余裕のある医療機関での運用が大部分であった。しかし、このような装置やシステムは、「患者の安全」という極めて重要な事項に寄与するものであるため、多くの医療機関にて運用されるべきと考えられる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−70921号公報
【特許文献2】特開2000−70389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、医師が作成した治療計画の妥当性を客観的に判断して、治療効果及び安全性の両面に配慮した放射線治療を実施することが可能な放射線治療管理システムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、医師と放射線技師との間の連絡ミス等に起因する照射事故を回避して安全性の向上を図ることが可能な放射線治療管理システムを提供することを他の目的とする。
【0016】
また、本発明は、放射線治療管理サービスをネットワークを通じて提供することで、放射線治療管理に掛かるクライアント側のコストを低減させ、それによりシステムの利用促進を図ることが可能な放射線治療管理システムを提供することを更に他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を入力する計画入力手段と、前記治療計画を格納する計画格納手段と、過去に実施された放射線治療の治療計画の計画決定要因情報と、前記過去の放射線治療における各回の照射の照射線量情報とを、関連付けて蓄積する蓄積手段と、前記計画入力手段により入力された新たな治療計画の計画決定要因情報に対応する前記過去の前記治療計画の計画決定要因情報に関連付けられた前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第1の検索手段と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報に基づいて、前記新たな治療計画の総照射線量の許容範囲を算出する許容範囲算出手段と、前記新たな治療計画の総照射線量が前記許容範囲に含まれるか判断する計画線量判断手段と、前記総照射線量が前記許容範囲に含まれると前記判断されたときに、前記新たな治療計画を前記計画格納手段に格納させる計画格納処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線治療管理システムであって、前記計画線量判断手段により前記総照射線量が前記許容範囲に含まれないと判断されたときに、前記新たな治療計画の補正を要求する計画補正要求手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の放射線治療管理システムであって、前記許容範囲算出手段は、前記検索された前記照射線量情報に示す照射線量を前記過去の各放射線治療毎に加算して前記各放射線治療毎の総照射線量をそれぞれ算出し、この算出された前記各放射線治療毎の総照射線量に基づいて前記許容範囲を算出することを特徴とする。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の放射線治療管理システムであって、前記許容範囲算出手段は、前記算出された前記各放射線治療の総照射線量の平均値を算出し、この平均値を含む前記許容範囲を算出することを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の放射線治療管理システムであって、治療計画の決定に関わる複数の計画決定要因をあらかじめ格納する要因格納手段と、操作手段と、前記格納された前記複数の計画決定要因のうちから前記操作手段により選択された計画決定要因を、放射線治療の管理に適用する管理用決定要因として設定する要因設定手段と、を更に備え、前記第1の検索手段は、前記管理用決定要因についての前記計画決定要因情報を検索条件として、前記蓄積手段から前記照射線量情報を検索する、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、サーバと、ネットワークを通じて前記サーバに接続され、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を入力する計画入力手段と、前記治療計画を格納する計画格納手段とを有するクライアントと、を含む放射線治療管理システムであって、前記サーバは、過去に実施された放射線治療の治療計画の計画決定要因情報と、前記過去の放射線治療における各回の照射の照射線量情報とを、互いに関連付けて蓄積する蓄積手段と、前記クライアントの前記計画入力手段により入力された新たな治療計画の計画決定要因情報に対応する前記過去の前記治療計画の計画決定要因情報に関連付けられた前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第1の検索手段と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報に基づいて、前記新たな治療計画の総照射線量の許容範囲を算出する許容範囲算出手段と、前記新たな治療計画の総照射線量が前記許容範囲に含まれるか判断する計画線量判断手段と、前記総照射線量が前記許容範囲に含まれると前記判断されたときに、前記新たな治療計画を前記クライアントの前記計画格納手段に格納させる計画格納処理手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の放射線治療管理システムであって、前記サーバは、前記計画線量判断手段により前記総照射線量が前記許容範囲に含まれないと判断されたときに、前記新たな治療計画の補正を要求する計画補正要求手段を備えることを特徴とする。
【0024】
また、請求項8に記載の発明は、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を格納する計画格納手段と、放射線を照射する放射線照射装置を制御する照射制御手段と、を有する放射線治療管理システムであって、前記放射線照射装置により過去に実施された放射線の照射における照射線量情報を蓄積する蓄積手段と、前記放射線照射装置による今回の照射の前に、前記今回の照射における照射線量の設定値を取得する照射線量取得手段を備え、前記今回の照射を含む治療計画に基づく過去の照射における前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第2の検索手段と、前記取得された前記今回の前記照射線量の設定値と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報とを加算して、前記今回の照射までの累積線量を算出する累積線量算出手段と、前記算出された前記累積線量が所定値を超えているか判断する累積線量判断手段と、を備え、前記照射制御手段は、前記累積線量が前記所定値を超えていないと前記判断されたときに、前記放射線照射装置に前記今回の照射を実施させる、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の放射線治療管理システムであって、前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記今回の前記照射線量の補正を要求する照射線量補正要求手段を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8又は請求項9に記載の放射線治療管理システムであって、前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記放射線照射装置による放射線の照射を禁止する照射禁止処理手段を備えることを特徴とする。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の放射線治療管理システムであって、前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、所定のパスワードの入力を要求するメッセージを所定の医師端末に送信する手段を備え、前記照射禁止処理手段は、前記パスワードが入力されたときに、前記放射線の照射の禁止を解除する、ことを特徴とする。
【0028】
また、請求項12に記載の発明は、請求項8に記載の放射線治療管理システムであって、前記放射線治療装置により実施された前記今回の照射の照射線量を、前記照射線量情報として前記蓄積手段に蓄積させる手段を更に備えることを特徴とする。
【0029】
また、請求項13に記載の発明は、サーバと、ネットワークを通じて前記サーバに接続され、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を格納する計画格納手段と、放射線を照射する放射線照射装置を制御する照射制御手段とを有するクライアントと、を含む放射線治療管理システムであって、前記クライアントは、前記放射線照射装置による今回の照射の前に、前記今回の照射における照射線量の設定値を取得する照射線量取得手段を備え、前記サーバは、前記放射線照射装置により過去に実施された放射線の照射における照射線量情報を蓄積する蓄積手段と、前記今回の照射を含む治療計画に基づく過去の照射における前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第2の検索手段と、前記クライアントの前記照射線量取得手段により取得された前記今回の前記照射線量の設定値と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報とを加算して、前記今回の照射までの累積線量を算出する累積線量算出手段と、前記算出された前記累積線量が所定値を超えているか判断する累積線量判断手段と、を備え、前記クライアントの前記照射制御手段は、前記サーバの前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていないと判断されたときに、前記放射線照射装置に前記今回の照射を実施させる、ことを特徴とする。
【0030】
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の放射線治療管理システムであって、前記サーバは、前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記今回の前記照射線量の補正を要求する照射線量補正要求手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
請求項1ないし請求項7の各項に記載の本発明は、新たに入力される治療計画に応じた過去の照射線量情報に基づいて、この新たな治療計画の総照射線量の許容範囲が算出するとともに、この総照射線量が許容範囲内に含まれる場合に、当該新たな治療計画を格納するように構成されている。したがって、医師が作成した治療計画の妥当性を過去のデータから求められる許容範囲によって判断できる。ここで、治療計画の総照射線量は、当該許容範囲の下限よりも大きな値になることから治療効果が考慮されており、更に、当該許容範囲の上限よりの小さな値になることから治療の安全性についても考慮されている。
【0032】
また、請求項8ないし請求項14の各項に記載の本発明は、放射線を照射する直前の段階において、今回の照射までの累積線量を算出し、この累積線量が所定値を超えない場合に今回の放射線照射を実施できるように制御を行う。したがって、放射線技師が照射を行う直前段階で、今回の照射線量の設定値の適否確認を実施できる。したがって、医師と放射線技師との間の連絡ミス等に起因する照射事故を回避でき、放射線治療の安全性向上を図ることができる。
【0033】
また、請求項6又は請求項7に記載の本発明によれば、新たに入力される治療計画の総照射線量の適否判断の処理を、ネットワーク上のサーバが実行するように構成されているので、医療機関側に設置されるクライアント側の機能を簡略化することができる。更に、このサーバによれば、複数の医療機関に対して放射線治療管理サービスを一度に提供することができる。したがって、各医療機関が負担するコストを低減でき、それによる当該システムの利用促進が期待される。
【0034】
請求項13又は請求項14に記載の本発明によれば、放射線照射時における照射線量の適否判断の処理を、ネットワーク上のサーバが実行するように構成されているので、医療機関側に設置されるクライアント側の機能を簡略化することができる。更に、このサーバによれば、複数の医療機関に対して放射線治療管理サービスを一度に提供することができる。したがって、各医療機関が負担するコストを低減でき、それによる当該システムの利用促進が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の好適な実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
以下、本発明の第1、2の実施形態をそれぞれ説明する。第1の実施形態は、院内LAN等のローカルなネットワークを用いた場合の本発明に関する。一方、第2の実施形態は、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)を用いて本発明に係る処理の一部をWAN上のサーバによって行う構成に関するものである。
【0037】
〈第1の実施形態〉
本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態は、図1に示すような放射線治療システムの一部として構成される。放射線治療システムは、治療計画作成のための診断から放射線照射までの一連の処置を行うためのシステムである。
【0038】
放射線治療の流れの概略を図9に示す。放射線治療においては、実際に放射線を照射する前に、画像診断装置による撮影画像などを参照して患部の診断を行い(S101)、その結果等を参照して、放射線の照射回数、総照射線量、各回の照射線量等を含む治療計画を作成し、システムに入力する(S102)。治療計画は、例えば、「6週間に亘って月曜から金曜までの合計30回、総照射線量60Gy(グレイ)、毎日2Gy」のように計画される。実際の放射線治療は、治療計画に則って実施される。すなわち、治療計画の照射回数に達するまで放射線照射が反復されて、治療は終了となる(S103、104)。
【0039】
治療計画は、様々なファクタを勘案して医師により決定される。その決定要因としては、例えば、患者の年齢、原発部位、治療部位、病理組織、放射線の照射レベル、放射線の照射方法(対向2門、対向4門等)、病巣深さ、重複癌の有無及びその重複度合、治療の種別(新鮮、再発、隔離転移等)、治療方針(対症治療、姑息治療、準根治治療等)、治療方法(放射線照射単独、手術と放射線照射との併用等)、などがある。以下、これらを「計画決定要因」と呼ぶこととする。「計画決定要因」には、以上に列挙した要因のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0040】
[全体構成]
さて、図1に示す本実施形態の構成について説明する。放射線治療システム1000は、患部等の診断用画像を撮影するX線CT装置等の画像診断装置1001と、患部に向けて放射線を照射する放射線照射装置1002とに加え、放射線治療に関する各種情報を管理するための放射線治療管理システム1として、計画入力装置2、データベース4が接続された治療管理装置3、及び、放射線照射装置1002に接続された治療用装置5を含んで構成される。
【0041】
画像診断装置1001、計画入力装置2、治療管理装置3及び治療用装置5は、それぞれLAN:Lを通じて通信可能に接続されている。LAN:Lは、インターネットNに接続されており、医師等が使用する医師端末6と通信可能になっている。この医師端末6は、例えば、携帯電話等の携帯端末や医師の自宅等に設置されたコンピュータなどである。
【0042】
なお、本実施形態では、計画入力装置2、治療管理装置3及び治療用装置5は、それぞれ個別の装置とされているが、これらのうちの任意の2つあるいは3つを単一の装置として構成してもよい。また、データベース4は、治療管理装置3にのみ直接に接続されているが、LAN:Lに直接接続されたネットワークストレージであってもよいし、治療管理装置3及び計画入力装置2に共通管理される構成であってもよい。更に、データベース4は、治療管理装置3に内蔵のハードディスクドライブ等の記憶装置であってもよい。また、LAN:Lは、通信線を用いた有線LANあるいは電波を用いた無線LANのいずれでもよい。
【0043】
[計画入力装置の構成]
計画入力装置2は、「計画入力手段」の一例である。この計画入力装置2は、放射線治療の治療計画を入力するためのコンピュータ端末からなり、所定の制御プログラムにしたがって動作する。計画入力装置2は、図2に示すように、制御部20、ユーザインターフェイス21及び通信インターフェイス(I/F)22を含んで構成される。
【0044】
ユーザインターフェイス21には、キーボード211やマウス212等の入力デバイスと、LCDやCRT等のディスプレイ213とが設けられている。通信I/F22は、LAN:Lを通じて各種データを送受信するためのインターフェイス回路を含んで構成される。
【0045】
制御部20は、計画入力装置2内蔵のCPUやメモリやハードディスクドライブなどを含んで構成される。このハードディスクドライブには、前述の制御プログラムがあらかじめ記憶されている。制御部20には、治療計画入力用の計画入力画面等の各種画面をディスプレイ213に表示させる表示制御部201と、この計画入力画面に入力されたデータを処理する入力データ処理部202と、LAN:Lを通じてのデータ送受を制御する通信制御部203とが設けられている。
【0046】
ユーザ(医師、技師等)は、キーボード211やマウス212を操作して計画入力画面に対する情報入力を行う。入力データ処理部202は、入力された治療計画と当該計画の計画決定要因(上述)とをひとまとめのデータにする。このデータは、通信I/F22により、LAN:Lを通じて治療管理装置3に送信される。以下、計画入力装置2から治療管理装置3に送信される治療計画を「登録に係る治療計画」と呼ぶことがある。
【0047】
[治療管理装置、データベースの構成]
次に、治療管理装置3とデータベース4の構成について説明する。図3は、治療管理装置3及びデータベース4の構成の一例を表す。
【0048】
〔データベース〕
まずデータベース4について説明する。データベース4には、治療計画格納部41(計画格納手段)、治療結果格納部42、要因設定リスト格納部43(要因格納手段)及び要因蓄積部44(蓄積手段)が設けられている。
【0049】
治療計画格納部41と治療結果格納部42は、それぞれ従来と同様のものである。治療計画格納部41には、治療計画が格納される。治療結果格納部42には、治療計画格納部41に格納された治療計画に基づいて放射線照射装置1002により実施された放射線照射の詳細情報が格納される。この詳細情報には、後述の要因蓄積部44には格納されない例えば患者名等の患者情報なども含まれる。また、この詳細情報は、後述の識別キーによって治療計画等と関連付けられている。
【0050】
要因設定リスト格納部43には、患者の年齢、原発部位、治療部位、病理組織、放射線の照射レベル、放射線の照射方法、病巣深さ、重複癌の有無、重複癌の重複度合、治療の種別、治療方針、治療方法など、前述した計画決定要因のリストが格納されている。
【0051】
要因蓄積部44には、治療計画格納部41に格納された治療計画に対応する計画決定要因の情報が格納される。また、この要因蓄積部44には、放射線照射装置1002による放射線照射がなされる度毎に、そのときの照射線量が格納される。この照射線量は、当該照射の基となる治療計画の計画決定要因の情報に関連付けられて格納される。
【0052】
この計画決定要因の情報と各回の照射線量との関連付けは、後述の識別キーを用いてなされる。すなわち、要因蓄積部44には、治療計画格納部41に格納された各治療計画について、その計画決定要因の情報(計画決定要因情報)と、当該治療計画に基づいて実施された各回の放射線照射における照射線量の情報(照射線量情報)とが、識別キーにより互いに関連付けられて格納される。
【0053】
なお、「計画決定要因」は、要因名(「年齢」等)を表し、「計画決定要因情報」は、要件に関する具体的情報(要件「年齢」については「50歳」等)を表すものとする。
【0054】
〔治療管理装置〕
治療管理装置3は、制御部30、要因設定コンポーネント31、治療計画管理コンポーネント32、照射線量管理コンポーネント33、ユーザインターフェイス34及び通信I/F35を含んで構成される。
【0055】
ユーザインターフェイス34は、計画入力装置2と同様に、キーボード341やマウス342等の入力デバイスと、LCDやCRT等のディスプレイ343とを有する。また、通信I/F35は、LAN:Lを通じて各種データを送受信するためのインターフェイス回路を含んで構成される。また、図示は省略するが、各種の音声を出力する音声出力部(音声出力回路、スピーカ等を含む)をユーザインターフェイス34に設けることができる。
【0056】
(制御部)
制御部30は、治療管理装置3内蔵のCPUやメモリやハードディスクドライブなどを含んで構成される。このハードディスクドライブには、所定の制御プログラムがあらかじめ記憶されている。制御部30には、治療計画管理用の画面や、放射線照射装置1002による照射線量管理用の画面等の各種画面をディスプレイ343に表示させる表示制御部301と、LAN:Lを通じてのデータ送受を制御する通信制御部302とが設けられている。
【0057】
また、制御部30は、治療管理装置3の全体制御を行い、特に、要因設定コンポーネント31、治療計画管理コンポーネント32、照射線量管理コンポーネント33のそれぞれの動作を制御する。更に、制御部30は、後述のパスワードの照合処理や発行処理、更には、このパスワードの入力を要求するメッセージの送信処理などを実行する。
【0058】
(要因設定コンポーネント)
要因設定コンポーネント31は、治療計画や照射線量の管理に適用する計画決定要因の設定処理を行うものであり、上記制御プログラムを実行するCPUを含んで構成される。この要因設定コンポーネント31には、「要因設定手段」の一例である要因設定部311が設けられている。
【0059】
制御部30の表示制御部301は、ユーザからの要求に応じて、要因設定リスト格納部43に格納された計画決定要因のリストをディスプレイ343に表示させる。ユーザは、マウス342等を操作して、表示されたリストから所望の計画決定要因を選択する。ここで、複数の計画決定要因を選択することができる。以上の処理の一例として、表示制御部301は、リスト中の各計画決定要因に対応するチェックボックスを表示させ、ユーザは、所望の計画決定要因のチェックボックスをマウス342でクリックしてチェックマークを入力することにより計画決定要因を選択する。その選択結果は、ユーザインターフェイス34から制御部30に送られる。
【0060】
要因設定部311は、上記の選択結果を受け、ユーザが選択した計画決定要因に対してフラグ等の選択識別情報を付与する。この選択識別情報が付与された計画決定要因は、治療計画管理や照射線量管理を実行する際に選択的に用いられる。以上の計画決定要因の設定は、例えば当該システム1の管理者等によって実行される。以下、要因設定部311により選択設定された計画決定要因を「管理用決定要因」と称することがある。
【0061】
(治療計画管理コンポーネント)
治療計画管理コンポーネント32は、計画入力装置2から送信された治療計画や計画決定要因等の管理を行うものであり、上記制御プログラムを実行するCPUを含んで構成される。治療計画管理コンポーネント32は、治療計画等の管理処理として、特に、登録に係る治療計画が示す総照射線量が適切であるか否か判断する処理を行う。
【0062】
また、治療計画管理コンポーネント32は、登録に係る治療計画に対して、それぞれ固有の識別キーを付与する。つまり、この識別キーは、各治療を識別するための情報である。したがって、各治療を構成する複数回の放射線照射は、同じ識別キーにより関連付けることができ、また、同一患者に対する複数の治療は、異なる識別キーによって区別される。なお、識別キーの付与処理は、計画入力装置2の入力データ処理部202(図2参照)によって実行してもよい。
【0063】
治療計画管理コンポーネント32には、データベース(DB)検索部321(第1の検索手段)、線量許容範囲算出部322(許容範囲算出手段)、計画線量判断部323(計画線量判断手段)、治療計画格納処理部324(計画格納処理手段)及び計画補正要求部325(計画補正要求手段)が設けられている。
【0064】
(DB検索部)
DB検索部321は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、登録に係る治療計画の計画決定要因情報に基づく検索条件を用いて要因蓄積部44を検索し、上記検索条件に該当する過去の照射線量情報を取得する処理を行う。より詳細に説明すると、DB検索部321は、要因蓄積部44に蓄積された計画決定要因情報のうちから上記検索条件に該当するものを検索するとともに、検索された各計画決定要因に関連付けられた照射線量情報を取得する。当該関連付けは識別キーによりなされている。DB検索部321による検索は、要因設定部311により選択設定された管理用決定要因を用いて行われる。
【0065】
このように、DB検索部321は、上記検索条件に該当する各計画決定要因情報にて実施された過去の治療における照射線量情報を取得するものである。なお、照射線量情報は、前述のように、治療を構成する各回の照射毎に格納され、各回の照射は識別キーにより関連付けられることから、DB検索部321により取得される照射線量情報は、各治療毎に関連付けられている。
【0066】
上記検索条件について具体的に説明する。この検索条件としては、例えば、次の2つの検索条件のいずれかを適用することができる。
【0067】
まず、第1の検索条件として、完全一致検索の手法がある。すなわち、登録に係る治療計画の計画決定要因情報に該当するものとして、管理用決定要因の各要因の情報が全て一致するものを要因蓄積部44から検索する手法である。
【0068】
また、第2の検索条件として、重み付け検索の手法がある。すなわち、管理用決定要因の各要因に対してその重要度に応じた重み付けをするとともに、登録に係る治療計画の計画決定要因情報に該当するものとして、重み付けの大きな(つまり重要度の高い)管理用決定要因が一致するものを要因蓄積部44から検索する手法である。
【0069】
例えば、管理用決定要因として、年齢、原発部位、治療部位、病理組織、照射レベル、照射方法、病巣深さが設定されている場合において、第1の検索条件を用いると、DB検索部321は、これら全ての要因の情報が、登録に係る治療計画の計画決定要因情報に一致する計画決定要因情報に関連付けられた照射線量情報を取得する。このように、第1の検索条件を用いると、管理用決定要件が全て等しい過去の治療における照射線量情報が取得される。
【0070】
一方、第2の検索条件として、図4に示すような重み付けが設定されている場合(数字が大きいほど重要度が高い)、例えば、重み=5の原発部位、治療部位及び照射方法(最重要要件)が一致するものを検索し、最重要要件のうちの1つが一致しないもののうち、重み=4の病理組織及び照射レベル(次重要要件)が一致するものを検索し、更に、最重要要件のうちの1つ及び次重要要件のうちの1つがそれぞれ一致しないもののうち、重み=3の病巣深さが一致するものを検索する。このような第2の検索条件を用いると、より重要度の高い要件が一致する過去の治療における照射線量情報が取得される。
【0071】
(線量許容範囲算出部)
続いて、線量許容範囲算出部322について説明する。線量許容範囲算出部322は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、DB検索部321により取得された過去の治療における照射線量情報に基づいて、放射線の照射線量の許容範囲(線量許容範囲)を算出する処理を行う。ここで、照射線量情報は、前述のように、1つの治療を構成する各回の放射線照射における照射線量を表す情報である。本実施形態の線量許容範囲算出部322は、特に、治療計画における総照射線量の許容範囲を算出する。なお、算出される許容範囲の上限は放射線の過大照射防止を目的とし、また、その下限は放射線の過小照射防止を目的として設定されるものである。
【0072】
この線量許容範囲算出部322は、DB検索部321が取得した照射線量情報に示す照射線量を各治療毎に足し合わせて、検索された各治療における総照射線量をそれぞれ算出する。ここで、一の治療と他の治療との識別は、前述の識別キーを参照して行うことができる。
【0073】
複数の治療が検索された場合、線量許容範囲算出部322は、例えば、上記算出した各治療の総照射線量の平均値を算出し、これを基準値Tとする。このとき、算出される複数の総照射線量を比較したときに、他とは大きく異なる値の照射線量(特異値)が存在するような場合には、その特異値の治療を除外した治療について平均値を算出するようにしてもよい。また、基準値Tは、平均値に限定されるものではなく、中央値や重み付け平均値などを適用してもよい。なお、1つの治療のみが検索された場合には、その治療について算出された総照射線量を基準値とする。
【0074】
更に、線量許容範囲算出部322は、上記算出した基準値Tを含む線量許容範囲を設定する。そのために、例えば、線量許容範囲算出部322は、事前に定められた許容変位量Δ(例えば10Gy)を基準値Tの前後に設定して、線量許容範囲(T−Δ、T+Δ)を求める。求められた線量許容範囲は、識別キーを介して当該治療計画に関連付けられて、データベース4の例えば治療計画格納部41に保存される。
【0075】
なお、上記許容変位量は基準値Tの前後ともに同じ値である必要はなく、例えば、治療の安全性をより重視する場合などには上限側の変位量を小さく設定することができ、逆に、多少のリスクを甘受しつつ治療効果を重要視する場合などには下限側の変位量を小さく(又は、上限側の変位量を大きく)設定することができる。また、許容変位量としては、以上のような事前に定められた値以外にも、例えば基準値Tの前後10%(0.9T、1.1T)など、事前に設定された割合(%)などを適用してもよい。
【0076】
ここで、事前に設定された許容変位量(値、%など)のデータは、治療管理装置3の制御部30のハードディスクドライブなどにあらかじめ記憶される。
【0077】
(計画線量判断部)
計画線量判断部323は、治療管理装置3のCPUを含んで構成されており、治療計画に含まれる照射線量(特に総照射線量)が、線量許容範囲算出部322により求められた線量許容範囲内に含まれているか否かを判断する処理を行う。
【0078】
照射線量が当該許容範囲内に含まれている場合、制御部30は、治療計画格納処理部324を動作させる。一方、含まれていない場合には、計画補正要求部325を動作させる。
【0079】
(治療計画格納処理部)
治療計画格納処理部324は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、データベース4の治療計画格納部41に、新たな治療計画を格納させる処理を実行する。
【0080】
(計画補正要求部)
計画補正要求部325は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、治療計画の補正をユーザ(医師や技師等)に要求するメッセージ(例えば「治療計画を補正してください」等)をディスプレイ343に表示させるコマンドや、図示しない音声出力部に警告音や警告メッセージを出力させるコマンドを制御部30に送信する。制御部30は、そのコマンドを受け、ユーザインターフェイス34を制御して上記メッセージや警告音等を出力させる。また、治療計画の補正を要求するメッセージを表示等させるコマンドを計画入力装置2に送信し、そのディスプレイ213等に出力させるようにしてもよい。
【0081】
また、計画補正要求部325の処理の一例として、医師端末6に治療計画の補正を要求するメッセージを送信させるコマンドを制御部30に送るようにしてもよい。当該構成を採用する場合、制御部30は、インターネットNを経由して医師端末6にメッセージを送信する。更に、治療計画の登録後すぐに放射線を照射するような場合を考慮し、制御部30は、当該治療計画に基づく放射線照射を禁止する信号を治療用装置5に送信するようにしてもよい。
【0082】
(照射線量管理コンポーネント)
照射線量管理コンポーネント33は、放射線照射装置1002を用いて患者に放射線を照射する直前に、その照射線量の適否を管理する処理を行うもので、上記制御プログラムを実行するCPUを含んで構成される。
【0083】
照射線量管理コンポーネント33には、DB検索部331(第2の検索手段)、累積線量算出部332(累積線量算出手段)、累積線量判断部333(累積線量判断手段)、治療結果格納処理部334及び照射線量補正要求部335(照射線量補正要求手段)が設けられている。
【0084】
(DB検索部)
DB検索部331は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、放射線照射装置1002による照射が行われる直前に治療用装置5から入力される情報(後述の照射準備情報;識別キー及び今回の照射線量を含む)に基づいて、データベース4の要因蓄積部44を検索し、今回の照射を含む治療計画に基づいて実施された過去の照射の照射線量情報を取得する。ここで、照射線量情報は、各回の放射線照射毎に作成され、識別キーによって各治療計画毎に関連付けられている。例えば、今回の照射が治療計画における第N回目の照射である場合、DB検索部331は、当該治療計画に基づく第1回目〜第N−1回目までの各回の照射における照射線量情報を取得する。
【0085】
(累積線量算出部)
累積線量算出部332は、DB検索部331が取得した過去の各照射線量情報に示す照射線量と、照射準備情報に含まれる今回の照射線量(照射準備線量)とを全て加算して、過去の照射線量と今回の照射準備線量との累積線量を算出する。
【0086】
(累積線量判断部)
累積線量判断部333は、治療計画格納部41等に保存された線量許容範囲をデータベース4から取得するとともに、累積線量算出部332が算出した累積線量が当該線量許容範囲の上限を超えているか否かを判断する。
【0087】
累積線量が当該許容範囲の上限を超えていない場合、制御部30は、治療結果格納処理部334を動作させる。一方、超えている場合には、照射線量補正要求部335を動作させる。ここで、線量許容範囲の上限は、本発明の「所定値」に相当する。
【0088】
(治療結果格納処理部)
治療結果格納処理部334は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、放射線照射装置1002により照射された照射線量を前述の照射線量情報としてデータベース4の要因蓄積部44に格納させる処理を行う。当該格納処理は各回の照射毎に実行され、格納される照射線量情報は、放射線の各回の照射毎に保存される。各回の照射の照射線量情報は、識別キーを介して各治療計画毎に関連付けられて保存される。このように、治療結果格納処理部334は、本発明に言う「照射線量を蓄積手段に蓄積させる手段」を構成している。また、治療結果格納処理部334は、放射線照射の詳細情報を治療結果格納部42に格納させる処理を行う。
【0089】
(計画補正要求部)
照射線量補正要求部335は、治療管理装置3のCPUを含んで構成され、照射線量の補正をユーザ(医師や技師等)に要求するメッセージ(例えば「照射線量を補正してください」等)をディスプレイ343に表示させるコマンドや、図示しない音声出力部に警告音や警告メッセージを出力させるコマンド、更には、医師端末6に治療計画の補正を要求するメッセージを送信させるコマンドなどを制御部30に送信する処理を行う。
【0090】
制御部30は、そのコマンドを受け、ユーザインターフェイス34を制御して上記メッセージや警告音等を出力させる。また、制御部30は、インターネットNを経由して医師端末6にメッセージを送信する。医師端末6に対するメッセージ送信は、例えば電子メール等によってなされる。また、LAN:Lが電話回線に接続されている場合には、医師等の携帯電話等に音声メッセージを送るようにしてもよい。
【0091】
更に、制御部30は、照射線量補正要求部335からのコマンドを受けると、放射線照射装置1002による放射線照射を禁止する信号(照射ロック信号)を治療用装置5に送信する。治療用装置5は、この照射ロック信号を受けると、放射線照射装置1002による照射処理をロックする。
【0092】
また、医師端末6にメッセージを送信する場合に、照射ロック解除用のパスワードの入力を要求するメッセージを同時に送信するようにしてもよい。このパスワードは、あらかじめ設定されている。メッセージを受けた医師等は、医師端末6を操作してパスワードを入力し、治療管理装置3に送信する。治療管理装置3の制御部30は、送信されたパスワードを照合し、照射ロック解除信号を治療用装置5に送信して、放射線を照射できるようにする。
【0093】
更に、情報管理上の安全性を考慮し、このパスワードは、一回限り使用可能なものとすることが望ましい。そのために、パスワードが入力された場合、そのパスワードを無効にするとともに、新しいパスワードを発行して医師端末6に電子メールや電話にて送信するように構成することができる。パスワードに関するこのような処理は、制御部30が実行する。
【0094】
[治療用装置、放射線照射装置の構成]
図5のブロック図は、治療用装置5の構成の一例を表す。なお、放射線照射装置1002は従来と同様の構成を有するので、その詳細に関する説明は省略する。
【0095】
治療用装置5は、放射線照射装置1002のコンソールとして用いられるコンピュータ端末であり、所定の制御プログラムにしたがって動作する。この治療用装置5は、制御部50、ユーザインターフェイス51及び通信I/F52を含んで構成される。
【0096】
ユーザインターフェイス51には、キーボード511やマウス512等の入力デバイスと、LCDやCRT等のディスプレイ513とが設けられている。通信I/F52は、LAN:Lを通じて各種データを送受信するためのインターフェイス回路を含んで構成される。
【0097】
制御部50は、治療用装置5内蔵のCPUやメモリやハードディスクドライブなどを含んで構成される。このハードディスクドライブには、前述の制御プログラムがあらかじめ記憶されている。
【0098】
制御部50には、放射線処理装置1002の動作制御及び照射線量や照射部位の設定などの処理を実行する照射制御部501(照射制御手段)と、照射制御部501により設定された照射線量を取得するとともに照射準備情報(前述)を治療管理装置3に送信する照射準備情報送信部502(照射線量取得手段)と、治療管理装置3からの要求に応じて放射線処理装置1002の放射線照射動作を禁止する処理とこの禁止状態の解除処理とを行う照射禁止処理部503(照射禁止処理手段)と、放射線処理装置1002を操作するための操作画面等の各種画面をディスプレイ213に表示させる表示制御部504と、LAN:Lを通じてのデータ送受を制御する通信制御部505とが設けられている。
【0099】
治療用装置5のユーザ(技師等)は、放射線処理装置1002による治療を行うとき、当該治療の識別キーや今回の照射線量等の情報をキーボード511やマウス512を操作して入力する。入力された情報は、制御部50のハードディスクドライブ等に記憶される。
【0100】
[処理手順]
以上のような構成の放射線治療管理システム1が実行する処理の手順の一例について、図6〜図8を参照して説明する。まず、計画入力装置2にて入力された治療計画の登録処理について図6に基づき説明し、次に、放射線照射時に実行される処理について図7、図8に基づき説明する。
【0101】
〔治療計画登録処理〕
図6に示す治療計画登録処理について説明する。当該処理は、主として、治療管理装置3の治療計画管理コンポーネント32により実行される。
【0102】
医師により作成された治療計画が入力されると(S1)、計画入力装置2は、その治療計画を治療管理装置3に送信する(S2)。
【0103】
計画入力装置2からの治療計画を受信すると、治療計画装置3の治療計画管理コンポーネント32は、この治療計画に対して識別キーを発行する(S3)。当該治療計画に関する各種の情報は、この識別キーによって関連付けられて処理に供される。制御部30は、治療計画に含まれる計画決定要因情報を治療計画管理コンポーネント32に送る。
【0104】
治療計画管理コンポーネント32のDB検索部321は、計画決定要因情報に基づき、所定の検索条件(完全一致検索、重み付け検索等)を用いて要因蓄積部44を検索し、該当する過去の治療における各回の照射の照射線量情報を取得する(S4)。照射線量情報は、識別キーによって各治療毎に関連付けられている。
【0105】
線量許容範囲算出部322は、取得された照射線量情報に示す照射線量を識別キーを参照して各治療毎に足し合わせ、検索された過去の各治療における総照射線量をそれぞれ算出し、それらの平均をとって基準値を算出するとともに、この基準値と前述の許容変位量とに基づき線量許容範囲を求める(S5)。
【0106】
計画線量判断部323は、登録に係る治療計画の総照射線量と、ステップS5で求められた線量許容範囲とを比較し、当該総照射線量が線量許容範囲内に含まれているか否か判断する(S6)。
【0107】
登録に係る治療計画の総照射線量が線量許容範囲内に含まれている場合(S6;Y)、治療計画格納処理部324が、当該治療計画をデータベース4の治療計画格納部41に格納させ(S7)、治療計画登録処理を終了する。
【0108】
一方、登録に係る治療計画の総照射線量が線量許容範囲内に含まれていない場合(S6;N)、計画補正要求部325は、治療計画の補正を要求するメッセージをディスプレイ343等に表示させる(S8)。
【0109】
治療計画が補正されて計画入力装置2に入力されると(S9)、治療管理装置3は、その補正された治療計画を受けて、その総照射線量が線量許容範囲内に含まれるか判断する(S6)。この総照射線量に関する判断は、総照射線量が線量許容範囲内に含まれるように補正されるまで反復される。総照射線量が線量許容範囲内の値になると、その治療計画を治療計画格納部41に格納し(S7)、治療計画登録処理を終了する。
【0110】
なお、治療計画の補正時に計画決定要因情報が変更されたときには、線量許容範囲を算出し直すように構成することが望ましい。この際、新たな識別キーを発行して補正前の治療計画と区別するようにしてもよい。
【0111】
〔放射線照射時における処理〕
図7、図8に示す放射線照射時に実行される処理について説明する。この処理は、主として、治療管理装置3の放射線量管理コンポーネント33により実行される。
【0112】
治療用装置5のユーザ(技師等)は、放射線照射装置1002による治療実施の準備段階として、当該治療計画の識別キー等の情報をユーザインターフェイス51から入力する(S11)。治療用装置5の照射制御部501は、データベース4内の治療計画やユーザによる照射線量等の調整結果などを参照して、患部に対する照射線量等を設定する(S12)。照射準備情報送信部502は、設定された照射線量(照射準備線量)と識別キーとを含む照射準備情報を治療管理装置3に送信する(S13)。
【0113】
治療管理装置3の放射線量管理コンポーネント33のDB検索部331は、照射準備情報の識別キーに基づいて、データベース4の要因蓄積部44を検索し、当該治療計画に基づく過去の照射における照射線量情報を取得する(S14)。
【0114】
累積線量算出部332は、取得された過去の各照射線量情報に示す照射線量と、照射準備情報に含まれる照射準備線量とを加算して今回の照射までの累積線量を算出する(S15)。累積線量判断部333は、線量許容範囲をデータベース4から取得するとともに、算出された累積線量が当該線量許容範囲の上限を超えているか否か判断する(S16)。
【0115】
累積線量が当該許容範囲の上限を超えていない場合(S16;Y)、制御部30は、当該照射準備線量にて照射できることを表す信号を治療用装置5に送信する(S17)。治療用装置5のユーザは、ユーザインターフェイス51を操作して放射線の照射を実施する(S18)。照射が実施されると、照射完了を表す信号が治療用装置5から治療管理装置3に送信される。治療管理装置3の治療結果格納処理部334は、今回照射された照射線量を照射線量情報として要因蓄積部44に格納し(S19)、処理は終了となる。このとき、今回の照射の詳細情報がデータベース4の治療結果格納部42に格納される(以下同様)。
【0116】
一方、累積線量が当該許容範囲の上限を超えている場合(S16;N)、照射線量補正要求部335は、照射線量の補正を要求するコマンドを制御部30に送る(S20)。制御部30は、このコマンドを受けて、照射ロック信号を治療用装置5に送信して放射線照射装置1002による照射処理を禁止する(S21)とともに、例えば医師端末6に対して照射ロック解除パスワードの入力を要求するメッセージ等を含む電子メールを送信する(S22)。
【0117】
メッセージを受けた医師等がパスワードを入力して治療管理装置3に送信すると(S23)、制御部30は、送信されたパスワードを照合する(S24)。
【0118】
送信されたパスワードが合っている場合(S24;Y)、制御部30は、照射ロック解除信号を治療用装置5に送信して、放射線を照射できるようにする(S25)。このとき、当該パスワードは無効とされ、新しいパスワードが発行されて医師端末6に電子メールにて送信される。照射が実施されると(S18)、治療結果格納処理部334は、今回の照射線量を要因蓄積部44に格納し(S19)、処理は終了となる。
【0119】
一方、送信されたパスワードが合っていない場合(S24;N)、制御部30は、パスワードの再入力を要求するメッセージを医師端末6に送信する(S26)。パスワードが再入力されると(S23)、制御部30は、再入力されたパスワードを照合する(S24)。このパスワードによる認証処理は、正しいパスワードが入力されるまで反復される。正しいパスワード入力されると(S24;Y)、制御部30は、照射ロック解除信号を治療用装置5に送信して、放射線を照射できるようにし(S25)、照射が実施されると(S18)、治療結果格納処理部334は、今回の照射線量を要因蓄積部44に格納する(S19)。以上で、処理は終了となる。
【0120】
[作用効果]
以上のような本実施形態の作用効果を説明する。まず、本実施形態の放射線治療管理システム1によれば、登録に係る治療計画に応じた過去の治療の照射線量に基づいて線量許容範囲が算出され、登録に係る治療計画の総照射線量がこの線量許容範囲内である場合に、その治療計画を登録するように構成されている。また、総照射線量が線量許容範囲内でない場合には、当該治療計画の登録を行わず、その補正を要求するように作用する。したがって、医師が作成した治療計画の妥当性を過去のデータから客観的に判断できるため、治療効果及び安全性の両面を適切に配慮した放射線治療を実施することが可能となる。なお、登録に係る治療計画毎に、その計画決定要因情報に応じた線量許容範囲が算出されるので、総照射線量の可否判断を高い精度で行うことができる。
【0121】
また、放射線治療管理システム1は、放射線を照射する直前に、前回までの照射線量と今回の照射線量の設定値(照射準備線量)との累積線量を算出し、この累積線量が線量許容範囲を超えるか否かを判断し、超えない場合に放射線の照射を許可するように作用する。また、累積線量が線量許容範囲を超える場合には、放射線照射が禁止されるように作用する。更に、累積線量が線量許容範囲を超える場合、照射禁止解除用のパスワードの入力を要求するメッセージを医師に向けて送信し、正しいパスワードが入力されない限り照射禁止状態が解除されないようになっている。それにより、照射線量の確認を照射直前にも行うことができる。したがって、医師と放射線技師との間の連絡ミス等に起因する照射事故を回避でき、治療の安全性向上を図ることが可能となる。
【0122】
また、一度使用される度毎にパスワードを変更するように構成すれば、技師等がパスワードを覚えて自身で入力してしまうような事態を回避できるので、照射事故の回避が可能となり安全性が高まる。
【0123】
[変形例]
放射線照射の禁止を解除するパスワードの入力要求メッセージの送信先は、当該治療の担当医の医師端末6に限定されるものではない。例えば、担当医とともに治療に当たる医師や、担当医の監督に当たる医師等の端末にも送信するように構成できる。そうすれば、例えば担当医が出張中であったり休暇中であったりして連絡できない場合であっても、照射禁止状態を解除できるので、照射線量の補正及び今回の照射を迅速に実施できる。
【0124】
また、治療効果が予定通りでないときや、画像診断装置1001による再検査により治療部位を変更するときなど、治療の途中で治療計画が変更された場合、それまでの照射における照射線量を新たな治療計画に反映させるように構成することが好ましい。例えば、変更以前の第1〜n回目の各照射線量情報を新たな治療計画の第1〜n回目の照射線量情報として設定するとともに、新たな治療計画の総照射線量の判断や累積線量の算出を、この第1〜n回目の照射線量情報を用いて実行するように構成できる。なお、治療計画の変更は、計画入力装置2だけでなく、治療管理装置3などでも行うことができる。
【0125】
また、照射制御部501による照射線量の設定値から照射準備線量を取得して照射準備情報を生成するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、放射線照射装置1002に照射線量設定用の手段(スイッチやダイヤル等)による設定値を検出し、その検出結果から照射準備線量を取得するように構成できる。
【0126】
また、治療管理装置3は、治療計画管理コンポーネント32及び照射線量管理コンポーネント33のいずれか一方のみを有するものであってもよい。その場合、前述の治療計画登録処理と放射線照射時における処理とのいずれか一方のみが実行される。
【0127】
〈第2の実施形態〉
本発明の第2の実施形態は、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)上のサーバにより処理の一部を行うように構成された本発明に関する。以下、第1の実施形態と同様の構成部分には同じ符号を用いて説明する。
【0128】
[全体構成]
図10は、本実施形態の放射線治療管理システム1′を含む放射線治療システム1000′の全体構成の概略を表す。この放射線治療システム1000′は、第1の実施形態と同様に、画像診断装置1001及び放射線照射装置1002に加え、放射線治療管理システム1′として、計画入力装置2、治療管理装置3′、データベース4′及び治療用装置5を含んで構成される。なお、計画入力装置2、治療管理装置3′、データベース4′及び治療用装置5は、「クライアント」の一例である。
【0129】
画像診断装置1001、計画入力装置2、治療管理装置3′及び治療用装置5は、それぞれLAN:Lを通じて通信可能に接続されている。LAN:Lは、インターネット等のWAN:Wに接続されており、サーバ10及び医師端末6とそれぞれ通信可能とされている。本実施形態の放射線治療管理システム1′には、サーバ10も含まれる。
【0130】
画像診断装置1001、放射線照射装置1002、計画入力装置2(図2参照)、治療用装置5(図5参照)及び医師端末6については、第1の実施形態と同様の構成を有する。以下、治療管理装置3′、データベース4′及びサーバ10の構成を説明する。
【0131】
本実施形態では、計画決定要因の設定情報の管理、治療計画の管理及び照射線量の管理をサーバ10によって行う。また、図10においては図示を省略したが、サーバ10には、複数の放射線治療管理システムがWAN:Wを介して接続されている。これら複数のシステムは、異なる複数の医療機関に設置されており、サーバ10は、各システムにて処理される情報をそれぞれ個別に管理するように構成されている。すなわち、サーバ10は、上述の計画決定要因の設定情報、治療計画及び照射線量の管理サービスを複数の医療機関に供給するものである。サーバ10と治療管理装置3′等との間のデータ通信時には、治療管理装置3′の装置識別情報が通信データとともに送信される。サーバ10は、この装置識別情報により、どの治療管理装置3′からの情報か判別することで、各治療管理装置3′毎に個別に処理を実行する。また、サーバ10は、各治療管理装置3′のアドレス情報(IPアドレス等)を記憶しており、このアドレス情報を用いてデータを送信する。
【0132】
[治療管理装置、データベースの構成]
図11を参照して、治療管理装置3′とデータベース4′の構成を説明する。
【0133】
〔データベース〕
データベース4′には、第1の実施形態と同様の治療計画格納部41及び治療結果格納部42が設けられている。
【0134】
〔治療管理装置〕
治療管理装置3′は、治療計画や治療結果をデータベース4′に登録する処理や、これらのデータを必要に応じて更新、消去、出力などする装置である。治療管理装置3′は、第1の実施形態と同様の制御部30、ユーザインターフェイス34及び通信I/F35に加えて、要因設定制御コンポーネント36が設けられている。
【0135】
要因設定制御コンポーネント36は、治療管理装置3′のCPUを含んで構成されており、要因設定制御部361によって計画決定要因の設定処理の制御を行う。
【0136】
要因設定制御部361は、計画決定要因の設定用画面の表示制御、この設定用画面に対する入力データの処理、サーバ10との間のデータ送受の制御など、放射線治療管理システム1′の管理者等が計画決定要因を設定するための各種制御を実行する。
【0137】
[サーバの構成]
図12を参照してサーバ10の構成を説明する。サーバ10は、第1の実施形態の治療管理装置3と同様の構成を備えており、制御部11、情報格納部12、要因設定コンポーネント13、治療計画管理コンポーネント14、照射線量管理コンポーネント15及び通信I/F16を含んで構成される。
【0138】
情報格納部12は、第1の実施形態のデータベース4と同様の要因設定リスト格納部121と要因蓄積部122とを有する。
【0139】
制御部11には、第1の実施形態の制御部30と同様に、制御部通信I/F16によるWAN:Wを通じてのデータ送受を制御する通信制御部111が設けられている。また、制御部11は、サーバ10の全体制御や、放射線照射装置1002の放射線照射の禁止を解除するためのパスワード発行処理、パスワード照合処理などを行う。
【0140】
要因設定コンポーネント13は、第1の実施形態の要因設定コンポーネント31と同様の動作を行うもので、要因設定部131を有する。要因設定部131は、治療管理装置3′の要因設定制御コンポーネント36との間で送受信される情報に基づき、第1の実施形態の要因設定部311と同様に管理用決定要因を設定する。
【0141】
管理用決定要因の設定処理は、例えば次のような手順で実行される。まず、治療管理装置3′のディスプレイ343に表示される前述の設定用画面からユーザが計画決定要因の設定を要求すると、その要求信号がサーバ10に送信される。サーバ10の要因設定部311は、要因設定リスト格納部121に格納された計画決定要因のリストを治療管理装置3′に送信する。治療管理装置3′の表示制御部301は、この計画決定要因のリストをディスプレイ343に表示させる。ユーザは、マウス342等を操作して、表示されたリストから所望の計画決定要因を選択する。要因設定制御部361は、その選択結果を受け、ユーザが選択した計画決定要因に対してフラグ等の選択識別情報を付与する。この選択識別情報が付与された計画決定要因は、治療計画管理や照射線量管理を実行する際に選択的に用いられる。
【0142】
治療計画管理コンポーネント14は、第1の実施形態の治療計画管理コンポーネント32と同様の構成を有し、DB検索部141、線量許容範囲算出部142、計画線量判断部143、治療計画格納処理部144及び計画補正要求部145を備えている。治療計画格納処理部144は、データベース4′への治療計画の格納を許可する信号を治療管理装置3′に送信するための処理を行う。また、治療計画管理コンポーネント314は、登録に係る治療計画に対して、それぞれ固有の識別キーを付与する。
【0143】
また、照射線量管理コンポーネント15も、第1の実施形態の照射線量管理コンポーネント33と同様の構成を有し、DB検索部151、累積線量算出部152、累積線量判断部153、治療結果格納処理部154及び照射線量補正要求部155を備えている。
【0144】
[処理手順]
以上のような放射線治療管理システム1′が実行する処理の手順の一例について、図13〜図15を参照して説明する。まず、計画入力装置2にて入力された治療計画の登録処理について図13に基づき説明し、次に、放射線照射時に実行される処理について図14、図15に基づき説明する。なお、以下に説明する処理手順においては、クライアント(病院)側におけるサーバ10とのデータのやりとりを治療管理装置3′によって実行するようになっているが、それに限定されるものではない。
【0145】
〔治療計画登録処理〕
図13に示す治療計画登録処理について説明する。当該処理は、第1の実施形態では主として治療管理装置3により実行されたが、本実施形態においてはサーバ10の治療計画管理コンポーネント14が中心となって実行する。
【0146】
医師により作成された治療計画が入力されると(S31)、計画入力装置2は、その治療計画を治療管理装置3′に送信する(S32)。治療管理装置3′は、この登録に係る治療計画のコピーを作成し、このコピーをサーバ10に転送する(S33)。なお、このとき、登録に係る治療計画に含まれる計画決定要因情報とその総照射線量の情報のみのコピーを送信するようにしてもよい。
【0147】
サーバ10が治療管理装置3′から治療計画(のコピー)を受信すると、治療計画管理コンポーネント14は、この治療計画に対して識別キーを発行する(S34)。制御部11は、治療計画に含まれる計画決定要因情報を治療計画管理コンポーネント14に送る。
【0148】
治療計画管理コンポーネント14のDB検索部141は、計画決定要因情報に基づき、所定の検索条件を用いて要因蓄積部122を検索し、該当する過去の治療における各回の照射の照射線量情報を取得する(S35)。
【0149】
線量許容範囲算出部142は、取得された照射線量情報に示す照射線量と、事前に設定された許容変位量とに基づいて、線量許容範囲を求める(S36)。求められた線量許容範囲は、識別キーにより当該治療計画に関連付けられて要因蓄積部122に保存される。
【0150】
計画線量判断部143は、登録に係る治療計画の総照射線量と、ステップS36で求められた線量許容範囲とを比較し、当該総照射線量が線量許容範囲内に含まれているか否か判断する(S37)。
【0151】
登録に係る治療計画の総照射線量が線量許容範囲内に含まれている場合(S37;Y)、治療計画格納処理部144は、当該治療計画の格納を許可する信号(格納許可信号)を治療管理装置3′に送信する(S38)。治療管理装置3′の制御部30は、格納許可信号を受信すると、登録に係る治療計画をデータベース4′の治療計画格納部41に格納し(S39)、治療計画登録処理を終了する。
【0152】
一方、登録に係る治療計画の総照射線量が線量許容範囲内に含まれていない場合(S37;N)、計画補正要求部145は、治療計画の補正を要求する信号(補正要求信号)を治療管理装置3′に送信する(S40)。治療管理装置3′は、この補正要求信号を受信すると、表示制御部301により、補正を要求するメッセージをディスプレイ343に表示させる(S41)。
【0153】
治療計画が補正されて計画入力装置2に入力されると(S42)、治療管理装置3は、その補正された治療計画のコピーをサーバ10に送信する(S43)。
【0154】
サーバ10は、補正された治療計画の総照射線量が線量許容範囲内に含まれるか判断する(S37)。この総照射線量に関する判断は、総照射線量が線量許容範囲内に含まれるように補正されるまで反復される。総照射線量が線量許容範囲内の値になると、格納許可信号が治療管理装置3′に送信される(S38)。治療管理装置3′の制御部30は、格納許可信号を受けると、登録に係る治療計画をデータベース4′の治療計画格納部41に格納し(S39)、治療計画登録処理は終了となる。
【0155】
〔放射線照射時における処理〕
図14、図15に示す放射線照射時に実行される処理について説明する。この処理は、第1の実施形態では主として治療管理装置3により実行されたが、本実施形態においてはサーバ10の照射線量管理コンポーネント15が中心となって実行する。
【0156】
放射線照射装置1002による治療実施時に、治療用装置5のユーザにより治療計画の識別キー等の情報が入力されると(S51)、照射制御部501により照射線量等が設定される(S52)。照射準備情報送信部502は、設定された照射線量(照射準備線量)と識別キーとを含む照射準備情報を治療管理装置3′に送信する(S53)。治療管理装置3′は、この照射準備情報のコピーを作成してサーバ10に転送する(S54)。
【0157】
サーバ10の放射線量管理コンポーネント15のDB検索部151は、受信された照射準備情報の識別キーに基づいて情報格納部12の要因蓄積部122を検索し、当該治療計画に基づく過去の照射における照射線量情報を取得する(S55)。
【0158】
累積線量算出部152は、取得された過去の各照射線量情報に示す照射線量と、照射準備情報に含まれる照射準備線量とを加算して今回の照射までの累積線量を算出する(S56)。累積線量判断部153は、識別キーを参照して当該治療計画の線量許容範囲を要因蓄積部122から取得し、ステップS55で算出された累積線量が当該線量許容範囲の上限を超えているか否か判断する(S57)。
【0159】
累積線量が当該許容範囲の上限を超えていない場合(S57;Y)、当該照射準備線量にて照射できることを表す信号がサーバ10から治療管理装置3′に送信され(S58)、治療用装置5に転送される(S59)。放射線の照射が実施されると(S60)、照射完了を表す信号が治療用装置5から治療管理装置3′に送信され、サーバ10に転送される(S61)。サーバ10の治療結果格納処理部154は、今回照射された照射線量を照射線量情報として要因蓄積部44に格納し(S62)、処理は終了となる。このとき、今回の照射の詳細情報がデータベース4′の治療結果格納部42に格納される(以下同様)。
【0160】
一方、累積線量が当該許容範囲を超えている場合(S57;N)、照射線量の補正を要求するコマンドが照射線量補正要求部155から制御部11に送られる。(S63)。このコマンドを受けた制御部11は、照射ロック信号を治療管理装置3′に送信する(S64)。治療管理装置3′は、この照射ロック信号を治療用装置5に転送して放射線照射装置1002による照射処理を禁止し(S65)、更に、医師端末6に対して照射ロック解除パスワードの入力を要求するメッセージ等を含む電子メールを送信する(S66)。
【0161】
入力されたパスワードは、治療管理装置3′に送信され(S67)、サーバ10に転送される(S68)。サーバ10の制御部11は、受信したパスワードを照合する(S69)。
【0162】
パスワードが合っている場合(S69;Y)、照射ロック解除信号がサーバ10から治療管理装置3′に送信される(S70)。治療管理装置3′は、この照射ロック解除信号を治療用装置5に転送して、放射線を照射できるようにする(S71)。このとき、使用されたパスワードは無効とされ、新しいパスワードが発行されて医師端末6に電子メールにて送信される。照射が実施されると(S60)、照射完了を表す信号が治療用装置5から治療管理装置3′を経由してサーバ10に転送される(S61)。サーバ10の治療結果格納処理部154は、今回照射された照射線量を照射線量情報として要因蓄積部44に格納し(S62)、処理は終了となる。
【0163】
一方、パスワードが合っていない場合(S69;N)、サーバ10は、パスワードの再入力を要求するメッセージを治療管理装置3′に送信する(S72)。治療管理装置3′は、当該メッセージを医師端末6に転送する(S73)。再入力されたパスワードは、治療管理装置3′に送信され(S67)、サーバ10に転送される(S68)。サーバ10の制御部11は、受信したパスワードを照合する(S69)。このパスワードによる認証処理は、正しいパスワードが入力されるまで反復される。正しいパスワード入力されると(S69;Y)、照射ロック解除信号がサーバ10から治療管理装置3′に送信される(S70)。治療管理装置3′は、この照射ロック解除信号を治療用装置5に転送して、放射線を照射できるようにする(S71)。照射が実施されると(S60)、照射完了を表す信号が治療用装置5から治療管理装置3′を経由してサーバ10に転送される(S61)。サーバ10の治療結果格納処理部154は、今回照射された照射線量を照射線量情報として要因蓄積部44に格納する(S62)。以上で、放射線照射時における処理は終了となる。
【0164】
[作用効果]
本実施形態の放射線治療管理システム1によれば、第1の実施形態と同様に、治療効果及び安全性の両面を適切に配慮した放射線治療を実施することができ、また、医師と放射線技師との間の連絡ミス等に起因する照射事故を回避でき、治療の安全性向上を図ることができる。
【0165】
また、本実施形態は、放射線治療管理に関する処理をサーバによって実行することにより、医療機関内のシステムに対してサービスを提供するように構成されている。したがって、第1の実施形態のように、本発明に係る構成を全て医療機関内のシステムに組み込んだ場合と比較して、同等のサービスを低いコストで享受できることから、当該システムの利用に躊躇していた医療機関への導入も期待される。
【0166】
[変形例]
以上の実施形態では、サーバ10との間のデータ送受は、治療管理装置3′によって行われ、他装置からのデータは治療管理装置3′を経由してサーバ10に送信され、サーバ10からのデータは治療管理装置3′を経由して他装置に送信されるように構成されているが、他装置とサーバ10との間で直接にデータ送受を行うように構成してもよい。例えば、照射ロック信号や照射ロック解除信号をサーバ10から治療用装置5に直接に送信するように構成でき、また、パスワード(再)入力を要求するメッセージをサーバ10から医師端末6に直接に送信するように構成できる。また、医師端末6から入力されたパスワードをサーバ10に直接に送信するように構成することもできる。
【0167】
以上に詳述した構成は、本発明を好適に実施するための一例を開示したものであり、本発明の要旨の範囲内における変形を排除するものではない。
【0168】
〈薬剤の投与量管理への応用〉
以上に詳述した実施形態では、放射線の照射線量の管理について説明したが、同様の構成を薬剤の投与量管理に対して応用することができる。
【0169】
管理対象となる薬剤としては、例えば抗癌剤など、所定の期間に亘って所定量を投与するものが想定される。そのような薬剤を用いた治療では、投与量や投与期間(投与タイミング)の計画(投与計画)が事前に決定され、その投与計画に沿って治療が実施されるのが通常である。また、投与計画は、放射線治療の治療計画と同様に、患者年齢や患部や使用薬剤など、各種の計画決定要因を勘案して決定される。
【0170】
以下、前述した第1の実施形態に準じた投与量管理の処理手順について説明する。なお、この処理手順を実行するための構成は、第1の実施形態における「放射線」を「薬剤」に、「照射」を「投与」に、「照射線量」を「投与量」にそれぞれ置き換えたものである。
【0171】
〔投与計画登録処理〕
医師により作成された投与計画が入力されると、この投与計画に対して識別キーが発行される。当該投与計画に関する各種の情報は、この識別キーによって関連付けられて処理に供される。
【0172】
投与計画の計画決定要因情報に基づき、過去の治療における各回の投与量情報を取得し、それを各治療毎に足し合わせて総投与量をそれぞれ算出し、投与許容範囲を求める。登録に係る投与計画の総投与量が、当該投与許容範囲内に含まれているか否か判断する。
【0173】
登録に係る投与計画の総投与量が投与許容範囲内に含まれている場合、当該投与計画をデータベースに格納し、処理を終了する。
【0174】
一方、登録に係る投与計画の総投与量が投与許容範囲内に含まれていない場合、投与計画の補正を要求するメッセージを表示させる。補正された投与計画が入力されると、その総投与量が投与許容範囲内に含まれるかを判断する。この総投与量に関する判断は、総投与量が投与許容範囲内に含まれるように補正されるまで反復される。総投与量が投与許容範囲内の値になると、その投与計画をデータベースに格納し、処理を終了する。
【0175】
〔薬剤投与時における処理〕
【0176】
投与直前に看護士等が当該投与計画の識別キー、投与量等の情報を入力すると、当該投与計画に基づく過去の投与における投与量情報が、識別キーに基づきデータベースから取得される。次に、この各投与量情報に示す投与量と、入力された今回の投与量とを加算して今回の投与までの累積投与量を算出し、この累積投与量が投与許容範囲に含まれるか否か判断する。
【0177】
累積投与量が投与許容範囲内に含まれている場合、当該投与量が適正あることを示すメッセージ等を出力する。看護士等が今回の投与を実施すると、今回の投与量が投与量情報としてデータベースに格納され、処理は終了となる。
【0178】
一方、累積投与量が投与許容範囲内に含まれていない場合、投与量の補正を要求するコマンドが生成され、投与を禁止するメッセージ等が出力される。なお、装置で自動的に薬剤を投与する場合には、当該装置に対して投与を禁止する信号が送られ、当該装置を投与禁止状態とすることができる。更に、医師端末に対し、投与禁止を解除するパスワードの入力を要求するメッセージ等を含む電子メールが送信される。メッセージを受けた医師等がパスワードを入力すると、そのパスワードの照合を行う。
【0179】
送信されたパスワードが合っている場合、投与禁止状態が解除された旨のメッセージ等を出力する。また、投与禁止を解除する信号を上記装置に送信して、投与可能状態にする。投与が実施されると、今回の投与量がデータベースに格納され、処理は終了となる。
【0180】
一方、送信されたパスワードが合っていない場合、パスワードの再入力を要求するメッセージが医師端末に送信される。パスワードが再入力されると、そのパスワードを照合する。このパスワードによる認証処理は、正しいパスワードが入力されるまで反復される。正しいパスワード入力されると、投与禁止状態が解除された旨のメッセージ等を出力する。また、投与禁止を解除する信号を上記装置に送信して、投与可能状態にする。投与が実施されると、今回の投与量がデータベースに格納され、処理は終了となる。
【0181】
以上のような薬剤投与管理システムによれば、登録に係る投与計画に応じた過去の治療の投与量に基づいて投与許容範囲が算出され、登録に係る投与計画の総投与量が当該許容範囲内でない場合には、投与計画の登録を行わずにその補正を要求するようになっているので、医師が作成した投与計画の妥当性を過去のデータから判断でき、治療効果及び安全性の両面に配慮した投薬治療を実施することが可能となる。
【0182】
また、投与の直前に、今回までの累積投与量を算出し、この累積投与量が許容範囲を超えるか否かを判断し、超える場合には投与を禁止するようになっている。更に、禁止解除用のパスワードの入力を要求するメッセージを医師に向けて送信し、正しいパスワードが入力されない限り投与禁止状態が解除されないので、投与量の確認を投与の直前にも行うことができる。したがって、医師と看護士等との間の連絡ミス等に起因する投薬事故を回避でき、治療の安全性が向上される。
【0183】
また、第2の実施形態のように、サーバによって処理を行えば、システムに掛かるコストが低減されるので、システム運用の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態の全体構成の一例を表すブロック図である。
【図2】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態に含まれる計画入力装置の構成の一例を表すブロック図である。
【図3】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態に含まれる治療管理装置及びデータベースの構成の一例を表すブロック図である。
【図4】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態に含まれる治療管理装置によるデータベースの検索処理における検索条件の一例を表す図である。
【図5】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態に含まれる治療用装置の構成の一例を表すブロック図である。
【図6】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【図7】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【図8】本発明に係る放射線治療管理システムの第1の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【図9】放射線治療の流れを表すフローチャートである。
【図10】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態の全体構成の一例を表すブロック図である。
【図11】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態に含まれる治療管理装置及びデータベースの構成の一例を表すブロック図である。
【図12】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態に含まれるサーバの構成の一例を表すブロック図である。
【図13】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【図14】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【図15】本発明に係る放射線治療管理システムの第2の実施形態が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0185】
1、1′ 放射線治療管理システム
2 計画入力装置
3、3′ 治療管理装置
30 制御部
31 要因設定コンポーネント
311 要因設定部
32 治療計画管理コンポーネント
321 データベース検索部
322 線量許容範囲算出部
323 計画線量判断部
324 治療計画格納処理部
325 計画補正要求部
33 照射線量管理コンポーネント
331 データベース検索部
332 累積線量算出部
333 累積線量判断部
334 治療結果格納処理部
335 照射線量補正要求部
34 ユーザインターフェイス
35 通信インターフェイス
4、4′ データベース
41 治療計画格納部
42 治療結果格納部
43 要因設定リスト格納部
44 要因蓄積部
5 治療用装置
50 制御部
501 照射制御部
502 照射準備情報送信部
503 照射禁止処理部
6 医師端末
10 サーバ
11 制御部
12 情報格納部
121 要因設定リスト格納部
122 要因蓄積部
13 要因設定コンポーネント
131 要因設定部
14 治療計画管理コンポーネント
141 データベース検索部
142 線量許容範囲算出部
143 計画線量判断部
144 治療計画格納処理部
145 計画補正要求部
15 照射線量管理コンポーネント
151 データベース検索部
152 累積線量算出部
153 累積線量判断部
154 治療結果格納処理部
155 照射線量補正要求部
16 通信インターフェイス
1000 放射線治療システム
1001 画像診断装置
1002 放射線照射装置
L LAN
N インターネット
W WAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を入力する計画入力手段と、
前記治療計画を格納する計画格納手段と、
過去に実施された放射線治療の治療計画の計画決定要因情報と、前記過去の放射線治療における各回の照射の照射線量情報とを、関連付けて蓄積する蓄積手段と、
前記計画入力手段により入力された新たな治療計画の計画決定要因情報に対応する前記過去の前記治療計画の計画決定要因情報に関連付けられた前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第1の検索手段と、
前記検索された前記過去の前記照射線量情報に基づいて、前記新たな治療計画の総照射線量の許容範囲を算出する許容範囲算出手段と、
前記新たな治療計画の総照射線量が前記許容範囲に含まれるか判断する計画線量判断手段と、
前記総照射線量が前記許容範囲に含まれると前記判断されたときに、前記新たな治療計画を前記計画格納手段に格納させる計画格納処理手段と、
を備えることを特徴とする放射線治療管理システム。
【請求項2】
前記計画線量判断手段により前記総照射線量が前記許容範囲に含まれないと判断されたときに、前記新たな治療計画の補正を要求する計画補正要求手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療管理システム。
【請求項3】
前記許容範囲算出手段は、前記検索された前記照射線量情報に示す照射線量を前記過去の各放射線治療毎に加算して前記各放射線治療毎の総照射線量をそれぞれ算出し、この算出された前記各放射線治療毎の総照射線量に基づいて前記許容範囲を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線治療管理システム。
【請求項4】
前記許容範囲算出手段は、前記算出された前記各放射線治療の総照射線量の平均値を算出し、この平均値を含む前記許容範囲を算出することを特徴とする請求項3に記載の放射線治療管理システム。
【請求項5】
治療計画の決定に関わる複数の計画決定要因をあらかじめ格納する要因格納手段と、
操作手段と、
前記格納された前記複数の計画決定要因のうちから前記操作手段により選択された計画決定要因を、放射線治療の管理に適用する管理用決定要因として設定する要因設定手段と、
を更に備え、
前記第1の検索手段は、前記管理用決定要因についての前記計画決定要因情報を検索条件として、前記蓄積手段から前記照射線量情報を検索する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の放射線治療管理システム。
【請求項6】
サーバと、
ネットワークを通じて前記サーバに接続され、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を入力する計画入力手段と、前記治療計画を格納する計画格納手段とを有するクライアントと、
を含む放射線治療管理システムであって、
前記サーバは、
過去に実施された放射線治療の治療計画の計画決定要因情報と、前記過去の放射線治療における各回の照射の照射線量情報とを、互いに関連付けて蓄積する蓄積手段と、
前記クライアントの前記計画入力手段により入力された新たな治療計画の計画決定要因情報に対応する前記過去の前記治療計画の計画決定要因情報に関連付けられた前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第1の検索手段と、
前記検索された前記過去の前記照射線量情報に基づいて、前記新たな治療計画の総照射線量の許容範囲を算出する許容範囲算出手段と、
前記新たな治療計画の総照射線量が前記許容範囲に含まれるか判断する計画線量判断手段と、
前記総照射線量が前記許容範囲に含まれると前記判断されたときに、前記新たな治療計画を前記クライアントの前記計画格納手段に格納させる計画格納処理手段と、
を備える、
ことを特徴とする放射線治療管理システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記計画線量判断手段により前記総照射線量が前記許容範囲に含まれないと判断されたときに、前記新たな治療計画の補正を要求する計画補正要求手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の放射線治療管理システム。
【請求項8】
複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を格納する計画格納手段と、
放射線を照射する放射線照射装置を制御する照射制御手段と、
を有する放射線治療管理システムであって、
前記放射線照射装置により過去に実施された放射線の照射における照射線量情報を蓄積する蓄積手段と、
前記放射線照射装置による今回の照射の前に、前記今回の照射における照射線量の設定値を取得する照射線量取得手段を備え、
前記今回の照射を含む治療計画に基づく過去の照射における前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第2の検索手段と、
前記取得された前記今回の前記照射線量の設定値と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報とを加算して、前記今回の照射までの累積線量を算出する累積線量算出手段と、
前記算出された前記累積線量が所定値を超えているか判断する累積線量判断手段と、
を備え、
前記照射制御手段は、前記累積線量が前記所定値を超えていないと前記判断されたときに、前記放射線照射装置に前記今回の照射を実施させる、
ことを特徴とする放射線治療管理システム。
【請求項9】
前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記今回の前記照射線量の補正を要求する照射線量補正要求手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の放射線治療管理システム。
【請求項10】
前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記放射線照射装置による放射線の照射を禁止する照射禁止処理手段を備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の放射線治療管理システム。
【請求項11】
前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、所定のパスワードの入力を要求するメッセージを所定の医師端末に送信する手段を備え、
前記照射禁止処理手段は、前記パスワードが入力されたときに、前記放射線の照射の禁止を解除する、
ことを特徴とする請求項10に記載の放射線治療管理システム。
【請求項12】
前記放射線治療装置により実施された前記今回の照射の照射線量を、前記照射線量情報として前記蓄積手段に蓄積させる手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の放射線治療管理システム。
【請求項13】
サーバと、
ネットワークを通じて前記サーバに接続され、複数回に亘り患部に放射線を照射する放射線治療の治療計画を格納する計画格納手段と、放射線を照射する放射線照射装置を制御する照射制御手段とを有するクライアントと、
を含む放射線治療管理システムであって、
前記クライアントは、前記放射線照射装置による今回の照射の前に、前記今回の照射における照射線量の設定値を取得する照射線量取得手段を備え、
前記サーバは、
前記放射線照射装置により過去に実施された放射線の照射における照射線量情報を蓄積する蓄積手段と、
前記今回の照射を含む治療計画に基づく過去の照射における前記照射線量情報を、前記蓄積手段から検索する第2の検索手段と、
前記クライアントの前記照射線量取得手段により取得された前記今回の前記照射線量の設定値と、前記検索された前記過去の前記照射線量情報とを加算して、前記今回の照射までの累積線量を算出する累積線量算出手段と、
前記算出された前記累積線量が所定値を超えているか判断する累積線量判断手段と、
を備え、
前記クライアントの前記照射制御手段は、前記サーバの前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていないと判断されたときに、前記放射線照射装置に前記今回の照射を実施させる、
ことを特徴とする放射線治療管理システム。
【請求項14】
前記サーバは、前記累積線量判断手段により前記累積線量が前記所定値を超えていると判断されたときに、前記今回の前記照射線量の補正を要求する照射線量補正要求手段を備えることを特徴とする請求項13に記載の放射線治療管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−167117(P2006−167117A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363278(P2004−363278)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】