説明

放射線治療装置、及びコリメータ装置

【課題】ギア駆動によってリーフブロックを移動させることで照射野を絞る放射線治療装置及び当該装置に備えられるコリメータ装置に関し、ギアの経時的な摩耗によってもバックラッシの拡大を防止することができる技術を提供する。
【解決手段】リーフブロック23A又は23Bに刻設されたラックギア25cにピニオンギア25bを噛合わせ、弾性体27によってピニオンギア25bをその背後からラックギア25cに向けて押圧するようにした。例えば、ピニオンギア25bをギアードモータ25aの前面に組み込み、弾性体27をギアードモータ25aの背面に取り付け、ギアードモータ25aごとピニオンギア25bを押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に曝射する放射線の照射野を絞るマルチリーフコリメータのギア駆動によりギアの歯が摩耗してもバックラッシが拡大することを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌や腫瘍等の患部に放射線を曝射することにより、当該患部の組織細胞を破壊、又は分裂阻止等することで、その治療を目指す放射線治療が広く行われるようになっている。この放射線治療は、患部周辺の正常組織の障害を最小限度に抑えるため、又患部への効果的な放射線照射のため、患部に放射線を正確に照射することが重要である。
【0003】
そこで発生した放射線は、照射野が患部形状と近似になるようにマルチリーフコリメータによって絞られる。マルチリーフコリメータは、タングステン等の放射線を遮断する素材で組成される複数枚のリーフブロックで構成され、放射線源と放射線を曝射する必要のない箇所との間にリーフブロックを移動させることによって、曝射する放射線の照射野を所定形状に絞る。
【0004】
このマルチコリメータは、各リーフブロックと対になった移動機構を有し、移動機構を駆動させることでリーフブロックを移動させる(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0005】
移動機構は、一般的には、ギア駆動によってリーフブロックにモータの駆動力を伝達する。例えば、リーフブロックの移動方向に沿って刻設されたラックギアとこのラックギアに噛み合うピニオンギアとを配し、ピニオンギアをシャフトや各種のギアを介してモータと接続する。そして、このピニオンギアにモータの駆動力を伝達する各種のギアのうちの一つにポテンショメータやエンコーダが取り付けられ、このギアの回転量を検出することでリーフブロックの変位を算出している。また、このラックギアとピニオンギアとの噛み合いは、ピニオンギアによってリーフブロックの停止位置を維持するという側面も有している。
【0006】
リーフブロックの移動のためにピニオンギアとラックギアの歯を噛み合わせると、これらギアの噛み合いにより歯が経時的に摩耗していき、バックラッシが当初の設定から経時的に大きくなっていく。即ち、ピニオンギアとラックギアとの歯面間の遊びが大きくなっていく。ピニオンギアとラックギアとの間のバックラッシが大きくなってくると、算出されたリーフブロックの変位量と実際の変位量とのズレが大きくなっていくため、リーフブロックの移動精度が低下していく。またピニオンギアトラックギアとの間が大きくなっていくため、リーフブロックの停止位置が維持されずに大きくなった遊びの分だけがたついてしまう。
【0007】
患部形状と照射野の形状誤差は、効果的な治療を行うためには患部位置付近で1mm以内程度におさめるのが好適である。そのためには、リーフブロックの位置ズレを0.3mm程度に抑えなくてはならない。放射線源からのリーフブロックの位置及び患部位置との距離の比に基づくものである。しかし、バックラッシュによる移動精度の低下及び停止位置のがたつきは、患部形状と照射野の形状誤差を徐々に大きくし、治療精度を低下させていってしまう。
【0008】
この問題を解決するために、従来は、定期的にメンテナンス作業を行い、このメンテナンス作業においては、バックラッシの変動を測定してバックラッシの変位量に応じてシム調節を行っていた。
【0009】
【特許文献1】特開平11−216197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ギア駆動によってリーフブロックを移動させることで照射野を絞る放射線治療装置及び当該装置に備えられるコリメータ装置に関し、ギアの経時的な摩耗によってもバックラッシの拡大を防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための、請求項1記載の発明は、放射線を照射する放射線源と、被検体を載置する寝台と、前記放射線源と前記寝台との間に介在して前記放射線源から前記寝台へ向けて曝射される放射線の照射野を所定形状に絞るマルチリーフコリメータと、を備え、前記マルチリーフコリメータは、前記放射線を遮蔽する素材で組成されるとともに、ラックギアが刻設されて、ギア駆動により前記照射野を拡大又は縮小する方向に移動可能な複数のリーフブロックと、前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持されるとともに、前記ラックギアと噛合うピニオンギアと、前記ピニオンギアの背後に設けられ、弾性復元力により前記ピニオンギアを前記ラックギアに向けて押圧する弾性体と、前記ピニオンギアに回転力を付与するギアードモータと、を有すること、を特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するための、請求項5記載の発明は、放射線源と寝台との間に介在して放射線の照射野を所定形状に絞るコリメータ装置であって、前記放射線を遮蔽する素材で組成されるとともに、ラックギアが刻設されて、ギア駆動により前記照射野を拡大又は縮小する方向に移動可能な複数のリーフブロックと、前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持されるとともに、前記ラックギアと噛合うピニオンギアと、前記ピニオンギアの背後に設けられ、弾性復元力により前記ピニオンギアを前記ラックギアに向けて押圧する弾性体と、前記ピニオンギアに回転力を付与するギアードモータと、を備えること、を特徴とする。
【0013】
前記ピニオンギアは、前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持された前記ギアードモータの前面に組み込まれ、前記弾性体は、前記ギアードモータの背面に取り付けられ、前記ギアードモータごと前記ピニオンギアを押圧するようにしてもよい(請求項2、6記載の発明に相当)。
【0014】
前記弾性体の歪みを検出する歪み検出手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項3、7記載の発明に相当)。
【0015】
前記ピニオンギアの位置の変位を検出する位置変位検出手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項4、8記載の発明に相当)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リーフブロックに刻設されたラックギアにピニオンギアを噛合わせ、弾性体によってピニオンギアをその背後からラックギアに向けて押圧するようにしたから、ピニオンギアとラックギアの噛み合いによる歯の経時的な摩耗によってもバックラッシを最適に維持することができ、照射野の精度の高い画成が保たれて治療精度の低下が防止される。また、自動的にバックラッシが最適に保たれるからメンテナンス作業を容易化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本実施形態に係る放射線治療装置1の構成例を示す外観図である。
【0018】
放射線治療装置1は、被検体Pの患部に放射線を曝射することで当該患部を治療する装置である。この放射線治療装置1は、放射線を発生させる放射ヘッド2と、被検体Pを載置する寝台5とを備える。放射ヘッド2と寝台5は、対向して配置される。放射ヘッド2で発生した放射線は、寝台5側へ放射される。
【0019】
この放射線治療装置1は、装置設置面に固定架台3を固定し、固定架台3に回転架台4を中空で回転可能に軸支させ、この回転架台4に放射ヘッド2を設置する。回転架台4は、略L字状の立体形状を有する。回転架台4は、片腕4bが固定架台3から離れる方向に向くように片腕4aが固定架台3に支持され、片腕4bの先端かつ内湾側に放射ヘッド2が設置されている。放射ヘッド2は、寝台5の方向へ向けられている。寝台5は、図示しない駆動装置によって被検体Pを体軸方向へ移動可能とし、また被検体Pを上下動並びに回転架台4の軸回り方向へ回転可能としている。
【0020】
放射線治療では、寝台5へ載置した被検体Pの患部と放射線のアイソセンタを合致させる。アイソセンタは、放射ヘッド2の回動軸3aと放射線の放射軸とが交差するポイントである。放射線を曝射する患部とアイソセンタとの位置合わせのため、回転架台4を回動軸3aの軸回りに回転させることで、放射ヘッド2の向きを変更する。放射ヘッド2の向き変更によって、発生する放射線は異なった角度で放射され、アイソセンタが回動軸3aの軸回りに変更可能となる。さらに、寝台5を駆動させて被検体Pを体軸方向及び上下動方向に移動させることで、アイソセンタを患部に合致させる。
【0021】
図2は、放射線治療装置1の基本構造を示す概略図である。放射ヘッド2には、放射線源21と図示しない絞りブロックとマルチリーフコリメータ23とが順に寝台5方向へ並べて内設されている。
【0022】
放射線源21は、電子加速器や対電子線ターゲット等を含み構成されており、電子加速器で電子を加速させ、対電子線ターゲットに衝突させることで放射線を発生させる。発生する放射線は、光子線(X線、γ線など)、電子線、重粒子線(陽子、ヘリウム、炭素、ネオン、π中間子線、中性子線など)等である。
【0023】
絞りブロック及びマルチリーフコリメータ23は、放射線源21から照射される放射線の放射範囲に設置され、放射線の放射範囲を絞ることにより、患部形状に合致した照射野Fを画成するコリメータ装置である。照射野Fは、放射線が曝射される領域である。
【0024】
このマルチリーフコリメータ23は、放射線源21から曝射される放射線を挟んで対向するリーフブロック23A及び23Bを備える。リーフブロック23A及び23Bの対は、その側面と直交する方向に複数並設されている。また、リーフブロック23A及び23Bは、タングステン等の放射線を遮蔽する素材で組成されている。
【0025】
リーフブロック23A及び23Bと交差する放射線は、このリーフブロック23A及び23Bによって遮蔽され、全リーフブロック23A及び23Bによって囲まれた空間を通過する放射線のみが寝台5側へ至る。即ち、全リーフブロック23A及び23Bによって囲まれた空間が照射野Fとなる。
【0026】
リーフブロック23A及び23Bは、板形状を有する。厚み方向の断面は、テーパ状であり、その側面は、短周長のアーチ状である。リーフブロック23A及び23Bの外周側円弧面は、放射線源21を中心とした円弧と同一のカーブ半径を有する。対面しているリーフブロック23Aとリーフブロック23Bとを放射線源21を中心とした同一円弧軌道に沿って接近又は離反移動させることによって、照射野Fを患部形状に合致した形状に絞る。
【0027】
コリメータ装置には、各リーフブロック23A及び23Bをそれぞれ独立して移動させる移動機構25が配置されている。図3は、リーフブロック23A又は23Bの外周側から見た斜視図であり、一部の移動機構25を説明の都合上取り外して示している。図4は、リーフブロック23A又は23Bを側面方向にスライスした断面図である。
【0028】
図3に示すように、移動機構25は、各リーフブロック23A及び各リーフブロック23Bのそれぞれと対になってその直下に相当する外周側に一機ずつ配される。各移動機構25は、対となっているリーフブロック23A又は23Bを、ギア駆動によって放射線源21を中心とした同一円弧軌道を移動方向として変位させる。
【0029】
この移動機構25は、ギアードモータ25aと、ピニオンギア25bと、ラックギア25cとを含み構成される。
【0030】
ギアードモータ25aは、減速機付きのモータであり、モータと減速機とが接続されて構成されている。ギアードモータ25aは、さらにポテンショメータもしくはエンコーダを収容している。ポテンショメータもしくはエンコーダは、減速機を構成する一のギアに取り付けられてそのギアの回転量を検出している。
【0031】
ラックギア25cは、リーフブロック23A又は23Bの外周面に外周方向に沿って刻設されている。ピニオンギア25bは、このラックギア25cと噛み合うように、リーフブロック23A又は23Bの外周面の直下に支持されている。
【0032】
ピニオンギア25bは、ギアードモータ25aの前面に組み込まれている。前面とは、ラックギア25cに近い箇所である。ギアードモータ25aの外装ケースのうち、ラックギア25cに近い端側は、2枚の板が対向配置され、その板と直交する3面が開口して形成されている。そして、この2枚の板を架橋して軸が固定されている。ピニオンギア25bは、この軸に軸支されて回転可能に支持されている。ピニオンギア25bは、軸の固定位置から2枚の板の先端までの距離よりもその半径が長く形成されており、ピニオンギア25bの一部は、開口からギアードモータ25aの外装ケースの外側へ突出している。
【0033】
このような移動機構25では、ギアードモータ25aのトルクは、ピニオンギア25bに伝達され、ピニオンギア25bを軸回転させる。ピニオンギア25bとラックギア25cは、ギアードモータ25aから伝達されたトルクを、リーフブロック23A又は23Bの放射線源21を中心とした円弧運動に変換する。これにより、ギアードモータ25aの回転量及び回転方向に応じてリーフブロック23A又は23Bが移動する。そして、ポテンショメータもしくはエンコーダが検出したギアの回転量に応じてリーフブロック23A又は23Bの移動量及び移動の向きが検出される。
【0034】
ピニオンギア25bを組み込んだギアードモータ25aは、取り付けブラケット26に取り付けられている。取り付けブラケット26は、並列するリーフブロック23A群及び23B群ごとにその直下に配されている。この取り付けブラケット26は、並列するリーフブロック23A群、または並列するリーフブロック23B群をその並列方向に亘って横断した板状の部材である。板面は、リーフブロック23A又は23Bの外周面の法線方向に向いている。
【0035】
この取り付けブラケット26には、リーフブロック23A及び23Bのそれぞれの直下に板を貫くスロット26aが空けられている。各スロット26aは、リーフブロック23A又は23Bの外周面の法線方向に向いて貫設される。ギアードモータ25aを組み込んだギアードモータ25aは、このスロット26aに一つずつ収納される。
【0036】
スロット26aの開口のうち、ラックギア25cと対向する開口とは反対の開口は、固定板26bで封止される。固定板26bは、一列のスロット26aを覆う板状の部材である。この固定板26bは、スロット26aにギアードモータ25aが収納された状態で、取り付けブラケット26の一面に一列のスロット26aを覆うようにネジ止め固定される。取り付けブラケット26の一面とは、ラックギア25cと対向する面とは反対の面である。
【0037】
ピニオンギア25bを組み込んだギアードモータ25aは、スロット26aの形状よりも若干小さく、スロット26aに遊貫された状態となっている。従って、ギアードモータ25aは、ラックギア25cの接線を含んだ平面内での移動はほとんど規制されているが、ラックギア25cに近づく方向には移動可能となっている。
【0038】
伴って、ギアードモータ25aに組み込まれたピニオンギア25bは、ラックギア25cの接線を含んだ平面内での移動はほとんど規制されているが、ラックギア25cに近づく方向には移動可能となっている。
【0039】
尚、スロット26aとギアードモータ25aの大きさの相違は、ラックギア25cとピニオンギア25bとの噛み合いが維持される範囲である。
【0040】
ギアードモータ25aの背後には、固定板26bを台座として弾性体27が設置されている。言い換えると、ピニオンギア25bの背後には、ギアードモータ25aを介して弾性体27が設置されている。背後とは、ラックギア25cに遠い側である。弾性体27は、例えばコイルスプリングや板バネである。
【0041】
図4に示すように、伸びきった弾性体27は、ラックギア25cとピニオンギア25bの歯山が限界まで摩耗した場合における、固定板26bからラックギア25cの接線までの距離から、ピニオンギア25bを加味したギアードモータ25aの全長を引いた値よりも長い。従って、弾性体27は、常に縮んだ状態、即ち伸びようとする弾性復元力を発揮した状態で設置される。
【0042】
そうすると、弾性体27の弾性復元力によって、ピニオンギア25bは、スロット26aに遊貫されているギアードモータ25aごと背後からラックギア25cに押圧されて、ピニオンギア25bに近づく方向に移動し、ラックギア25cと圧接する。ラックギア25cとピニオンギア25bとが圧接した状態で噛合うと、バックラッシは常に最小となる。
【0043】
ラックギア25cとピニオンギア25bの歯山が摩耗し、ラックギア25cとピニオンギア25bとの間に空間が生じると、弾性体27の弾性復元力によって、ピニオンギア25bがラックギア25cと圧接するまで移動し、バックラッシの大きさは最小に維持される。
【0044】
尚、摩耗の限界とは、トルクを加えたときにピニオンギア25bが空転するおそれがあるために、ピニオンギア25bやリーフブロック23A又は23Bの取り替えを推奨する摩耗量である。
【0045】
図5は、この摩耗量を検出する構成の一例を示す模式図である。図6は、摩耗量を検出する構成の他の一例を示す模式図である。
【0046】
図5に示すように、弾性体27に歪みゲージ28aを貼り付けておく。歪みゲージ28aは、弾性体27の歪みを検出するセンサである。例えば、歪みゲージ28aは、それ自体の歪みに比例して抵抗値が変化する電気抵抗体である。この歪みゲージ28aの抵抗変化を測定することにより、貼り付けられた弾性体27の歪みが検出される。即ち、弾性体27の歪みと比例する摩耗量の大きさが検出される。
【0047】
また、図6に示すように、固定板26b上に距離計28bを設置する。距離計28bは、ピニオンギア25bの位置変化を検出するセンサである。実際には、距離計28bは、該固定板26bからギアードモータ25aの背面までの距離を測定する。この距離を測定することで、ピニオンギア25bの位置変化が検出される。即ち、ラックギア25cへ向けて押圧されるピニオンギア25bの位置変化に比例する摩耗量の大きさが検出される。
【0048】
以上のように、リーフブロック23A又は23Bに刻設されたラックギア25cにピニオンギア25bを噛合わせ、弾性体27によってピニオンギア25bをその背後からラックギア25cに向けて押圧するようにした。例えば、ピニオンギア25bをギアードモータ25aの前面に組み込み、弾性体27をギアードモータ25aの背面に取り付け、ギアードモータ25aごとピニオンギア25bを押圧する。
【0049】
これにより、ピニオンギア25bとラックギア25cの噛み合いによる歯の経時的な摩耗によってもバックラッシの拡大を防止することができ、照射野Fの精度の高い画成が保たれて治療精度の低下が防止される。また、自動的にバックラッシが最小に保たれるからメンテナンス作業を容易化する。
【0050】
また、弾性体27の歪みを検出する歪みゲージ28aのような撓み検出手段を配置したり、ピニオンギア25bの位置の変位を検出する距離計28bのような位置変位検出手段を配置したりすることで、ピニオンギア25bやリーフブロック23A又は23Bの取り替え時期が容易に認識できる。
【0051】
尚、ピニオンギア25bをラックギア25cに押圧する手法としては、上記した実施例に限られない。図7は、ピニオンギア25bを背後から押圧してラックギア25cに近づく方向に移動させる構成の第1の他の例を示す模式図である。図8は、ピニオンギア25bを背後から押圧してラックギア25cに近づく方向に移動させる構成の第2の他の例を示す模式図である。
【0052】
例えば、図7に示すように、ギアードモータ25aをユニット支持軸26cで回転可能に軸支する。
【0053】
ユニット支持軸26cは、ピニオンギア25bやラックギア25cの歯が刻設されている方向と直交するようにスロット26a内に架橋されている。このユニット支持軸26cは、ギアードモータ25aの中心からずれて偏心した箇所でギアードモータ25aを軸支している。弾性体27は、ユニット支持軸26cで軸支されている側とは反対側に弾性復元力を与えるように配置されている。
【0054】
また、ギアードモータ25aがスロット26aの壁面に当接することなく、ピニオンギア25bやラックギア25cの歯が刻設されている方向に傾き可能となるように、スロット26aは、この方向に長く貫設されている。
【0055】
この例の場合、初期状態では、ギアードモータ25aの背面とラックギア25cの接線とが平行になるように配置しておく。その後、ピニオンギア25bとラックギア25cの歯が摩耗すると、弾性体27による押圧によって、ピニオンギア25bはギアードモータ25aごと持ち上げられようとする。ギアードモータ25aは、ユニット支持軸26cで軸支されているため、ユニット支持軸26cで軸支されている側とは反対側のみが持ち上げられ、ギアードモータ25aはスロット26a内で傾く。
【0056】
そうすると、ユニット支持軸26cからピニオンギア25bの先端までのラックギア25cの法線に沿った距離が伸び、ピニオンギア25bはバックラッシを最小に維持するようにラックギア25cに近づく。
【0057】
また、図8に示すように、移動機構25は、ギアードモータ25aと、伝達シャフト25dと、ラックギア25c及びピニオンギア25bから構成されている。ギアードモータ25aのトルクは、伝達シャフト25dを軸回転させる。伝達シャフト25dは、リーフブロック23A又は23Bの外周面の直下まで延び、ピニオンギア25bは、伝達シャフト25dの一端に取り付けられている。軸回転した伝達シャフト25dは、ピニオンギア25bを回転させる。
【0058】
弾性体27は、伝達シャフト25dのピニオンギア25bを軸支している側に取り付けられ、伝達シャフト25dを介してピニオンギア25bをラックギア25cに近づける方向に押圧している。伝達シャフト25dは、一部に蛇腹25eを有しており、この蛇腹25eを中心に屈曲可能となっている。
【0059】
この例によると、ピニオンギア25bとラックギア25cの歯が摩耗すると、弾性体27による押圧によって、伝達シャフト25dが蛇腹25eを中心に屈曲し、ピニオンギア25bを持ち上げる。持ち上げられたピニオンギア25bは、バックラッシを最小に維持するようにラックギア25cに近づく。
【0060】
尚、伝達シャフト25dは屈曲可能なものであれば、例えばリードワイアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係る放射線治療装置の構成例を示す外観図である。
【図2】放射線治療装置の基本構造を示す概略図である。
【図3】リーフブロックの外周側から見た斜視図である。
【図4】リーフブロックを側面方向にスライスした断面図である。
【図5】摩耗量を検出する構成の一例を示す模式図である。
【図6】摩耗量を検出する構成の他の一例を示す模式図である。
【図7】ピニオンギアを背後から押圧してラックギアに近づく方向に移動させる構成の第1の他の例を示す模式図である。
【図8】ピニオンギアを背後から押圧してラックギアに近づく方向に移動させる構成の第1の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 放射線治療装置
2 放射ヘッド
21 放射線源
23 マルチリーフコリメータ
23A、23B リーフブロック
25 移動機構
25a ギアードモータ
25b ピニオンギア
25c ラックギア
25d 伝達シャフト
25e 蛇腹
26 取付けブラケット
26a スロット
26b 固定板
26c ユニット支持軸
27 弾性体
3 固定架台
3a 回動軸
4 回転架台
4a、4b 片腕
5 寝台
P 被検体
F 照射野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
被検体を載置する寝台と、
前記放射線源と前記寝台との間に介在して前記放射線源から前記寝台へ向けて曝射される放射線の照射野を所定形状に絞るマルチリーフコリメータと、
を備え、
前記マルチリーフコリメータは、
前記放射線を遮蔽する素材で組成されるとともに、ラックギアが刻設されて、ギア駆動により前記照射野を拡大又は縮小する方向に移動可能な複数のリーフブロックと、
前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持されるとともに、前記ラックギアと噛合うピニオンギアと、
前記ピニオンギアの背後に設けられ、弾性復元力により前記ピニオンギアを前記ラックギアに向けて押圧する弾性体と、
前記ピニオンギアに回転力を付与するギアードモータと、
を有すること、
を特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
前記ピニオンギアは、前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持された前記ギアードモータの前面に組み込まれ、
前記弾性体は、前記ギアードモータの背面に取り付けられ、前記ギアードモータごと前記ピニオンギアを押圧すること、
を特徴とする請求項1記載の放射線治療装置。
【請求項3】
前記弾性体の歪みを検出する歪み検出手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の放射線治療装置。
【請求項4】
前記ピニオンギアの位置の変位を検出する位置変位検出手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の放射線治療装置。
【請求項5】
放射線源と寝台との間に介在して放射線の照射野を所定形状に絞るコリメータ装置であって、
前記放射線を遮蔽する素材で組成されるとともに、ラックギアが刻設されて、ギア駆動により前記照射野を拡大又は縮小する方向に移動可能な複数のリーフブロックと、
前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持されるとともに、前記ラックギアと噛合うピニオンギアと、
前記ピニオンギアの背後に設けられ、弾性復元力により前記ピニオンギアを前記ラックギアに向けて押圧する弾性体と、
前記ピニオンギアに回転力を付与するギアードモータと、
を備えること、
を特徴とするコリメータ装置。
【請求項6】
前記ピニオンギアは、前記ラックギアに近づく方向に移動可能に支持された前記ギアードモータの前面に組み込まれ、
前記弾性体は、前記ギアードモータの背面に取り付けられ、前記ギアードモータごと前記ピニオンギアを押圧すること、
を特徴とする請求項5記載のコリメータ装置。
【請求項7】
前記弾性体の歪みを検出する歪み検出手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項5記載のコリメータ装置。
【請求項8】
前記ピニオンギアの位置の変位を検出する位置変位検出手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項5記載のコリメータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233279(P2009−233279A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86592(P2008−86592)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】