説明

放射線治療装置制御装置および放射線照射方法

【課題】照射部位の位置を測定する頻度を低減し、かつ、その照射部位の位置を高精度に測定すること。
【解決手段】被検体の運動を示している運動情報を第1センサから収集する被検体運動収集部52と、第2センサがその被検体の照射部位の位置を測定する時間間隔をその運動情報に基づいて変更するセンサ制御部55と、その照射部位に照射される治療用放射線が照射部位の位置に基づいて変化するように放射線治療装置を制御する照射制御部56とを備えている。このとき、放射線治療装置制御装置2は、被検体の運動に基づいて推測される照射部位の動きが鈍いときにその照射部位の位置を測定する頻度を低減することにより、照射部位の位置を高精度に測定しつつ、放射線治療全体での照射部位の位置を測定する頻度を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置制御装置および放射線照射方法に関し、特に、患部に放射線を照射することにより患者を治療するときに利用される放射線治療装置制御装置および放射線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患部(腫瘍)に治療用放射線を照射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その治療用放射線としては、制動放射により生成される放射線が例示される。その放射線治療としては、患部が移動する移動分を考慮してその患部の大きさより広い範囲を照射すること、呼吸同期照射(ゲイテッドイラディエイション)、動体追尾照射が知られている。その呼吸同期照射は、患部の位置に基づいて治療用放射線を照射したりその照射を停止したりする手法である。その動体追尾照射は、患部の位置に基づいて治療用放射線の出射方向または照射野を変更する手法である。その呼吸同期照射と動体追尾照射は、その患部の大きさより広い範囲を照射することに比較して、患部と異なる正常な細胞に照射される治療用放射線の線量がより小さく好ましい。
【0003】
このような呼吸同期照射と動体追尾照射では、患部の位置を逐次に測定する必要がある。その測定方法としては、X線撮影による方法、MRI(Magnetic Resonance Imaging)による方法が例示される。呼吸や拍動等の生理的な動きにより速く動くターゲット(肺腫瘍が例示される)に関しては、ターゲットの位置を正確に把握するために、体内のターゲット位置を観測する周期を短くする(観測する頻度を多くする)必要がある。X線撮影の頻度が多くなるほど、患者のX線撮影のためのX線の被曝量が増大する。患者の治療用放射線以外の放射線による被曝量を低減する放射線治療が望まれている。
【0004】
X線撮影に利用されるX線と治療用放射線とを同時に患者に照射することは、法律により規制されている。MRIは、患部の位置を精度よく計測するために、長い間稼動する必要がある。MRIは、さらに、強い磁場を発生させるため、MRIによる患部の観測と治療用放射線の出射とを時分割する必要がある。このため、患部の位置の観測の頻度が多くなるほど、治療用放射線を照射する時間が減縮され、治療時間の長時間化を招くこととなっている。放射線治療の治療時間を低減し、患者の負担を低減することが望まれている。
【0005】
患部の位置をより正確に観測し、かつ、患部の位置の観測する頻度を低減することが望まれている。
【0006】
米国特許6144875号明細書には、呼吸によって動くターゲットについて、第1のセンサが体内のターゲットの位置を間欠的に取得し、第2のセンサが体外のターゲットの位置を連続的に取得し、それらの2つの位置を関連付け、体外のターゲットの位置に基づいて体内のターゲットの位置を推定して照射する技術が開示されている。
【0007】
米国特許6307914号明細書には、呼吸によって動くターゲットについて、2つのイメージャを用いて、事前に決められたフレームレートでX線撮像し、その画像に基づいて体内マーカの3次元位置を計算し、その3次元位置に放射線を照射して治療する放射線治療装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許6144875号明細書
【特許文献2】米国特許6307914号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、患部の位置の観測する頻度をより低減し、かつ、患部の位置をより高精度に観測する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、治療用放射線以外の放射線による被曝量を低減する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
本発明の課題は、放射線治療の治療時間を低減する放射線治療装置制御装置および放射線照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、被検体(43)の運動を示している運動情報を第1センサ(5)から収集する被検体運動収集部(52)と、第2センサ(24、25、31、32、33)が被検体(43)の照射部位(61)の位置を測定する時間間隔(72、73)をその運動情報に基づいて変更するセンサ制御部(55)と、照射部位(61)に照射される治療用放射線(23)が照射部位(61)の位置に基づいて変化するように放射線治療装置(3)を制御する照射制御部(56)とを備えている。時間間隔(72、73)は、照射部位(61)の動きが速いときに、照射部位(61)の位置を高精度に測定するために短くする必要がある。照射部位(61)の運動は、一般的に、被検体(43)の運動に同期している。このため、放射線治療装置制御装置(2)は、たとえば、被検体(43)の運動に基づいて推測される照射部位(61)の動きが鈍いときに、時間間隔(72、73)を長くして照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。すなわち、このような制御によれば、第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減し、かつ、照射部位(61)の位置を高精度に測定することができる。
【0012】
第2センサ(24、25、31、32、33)は、被検体(43)を透過した透過放射線(35、36)に基づいて照射部位(61)の位置を測定する。このとき、放射線治療装置制御装置(2)は、第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することにより、単位時間当たりに被検体(43)を透過する透過放射線(35、36)の量を低減することができ、被検体(43)の透過放射線(35、36)の被曝量を低減することができる。
【0013】
照射制御部(56)は、治療用放射線(23)の出射方向が照射部位(61)の位置に基づいて変化するように、放射線治療装置(3)を制御する。すなわち、放射線治療装置制御装置(2)は、動体追尾照射により治療用放射線(23)を照射する放射線治療に適用されることができる。
【0014】
第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する時間間隔(72、73)は、第1センサ(5)が被検体(43)の運動を測定する時間間隔(72、73)より長いことが好ましい。
【0015】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、その運動情報に基づいて照射部位(61)の位置の変化率を算出するターゲット運動算出部(54)をさらに備えている。このとき、センサ制御部(55)は、その変化率に基づいて時間間隔(72、73)を変更する。たとえば、放射線治療装置制御装置(2)は、その変化率の絶対値が大きいときに時間間隔(72、73)を小さくし、その変化率の絶対値が小さいときに時間間隔(72、73)を大きくすることができる。このような制御によれば、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0016】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、その運動情報と照射部位(61)の位置とに基づいて複数運動情報を複数位置に関連付けるテーブルを算出する相関算出部(53)をさらに備えている。このとき、ターゲット運動算出部(54)は、そのテーブルを参照して、その複数位置のうちのその運動情報に対応する推定位置に基づいて照射部位(61)の位置の変化率を算出する。このため、放射線治療装置制御装置(2)は、被検体(43)の運動と照射部位(61)の運動との対応が放射線治療中に変動したときにも、照射部位(61)の位置をより正確に算出することができる。すなわち、放射線治療装置制御装置(2)は、被検体(43)の運動と照射部位(61)の運動との対応が放射線治療中に変動したときにも、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0017】
本発明による放射線治療装置制御装置(2)は、その運動情報に基づいて被検体(43)の運動の周期を算出するターゲット運動算出部(54)をさらに備えている。このとき、センサ制御部(55)は、その周期に基づいて時間間隔(72、73)を変更する。たとえば、放射線治療装置制御装置(2)は、その周期が小さいときに時間間隔(72、73)を小さくし、その周期が大きいときに時間間隔(72、73)を大きくすることができる。このような制御によれば、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0018】
照射制御部(56)は、第2センサ(24、25、31、32、33)により照射部位(61)の位置を測定していない複数の期間(72、73)に治療用放射線(23)を照射する。複数の期間(72、73)のうちの第1期間(72)が複数の期間(72、73)のうちの第2期間(73)より長いときに、第1期間(72)に治療用放射線(23)が照射される期間は、第2期間(73)に治療用放射線(23)が照射される期間より長い。このとき、放射線治療装置制御装置(2)は、複数の期間(72、73)ごとに一定の期間だけ治療用放射線(23)を照射することに比較して、照射部位(61)に照射される治療用放射線(23)の量を増大させることができ、その分、治療時間を低減することができ、患者の負担を低減することができる。
【0019】
本発明による放射線治療システム(1)は、本発明による放射線治療装置制御装置(2)と第1センサ(5)と第2センサ(24、25、31、32、33)と放射線治療装置(3)とを備えていることが好ましい。
【0020】
本発明による放射線照射方法は、被検体(43)の運動を示している運動情報を第1センサ(5)から収集するステップ(S2)と、第2センサ(24、25、31、32、33)が被検体(43)の照射部位(61)の位置を測定する時間間隔(72、73)をその運動情報に基づいて変更するステップ(S4)と、照射部位(61)に照射される放射線(23)が照射部位(61)の位置に基づいて変化するように、放射線治療装置(3)を制御するステップ(S6)とを備えている。時間間隔(72、73)は、照射部位(61)の動きが速いときに、照射部位(61)の位置を高精度に測定するために短くする必要がある。照射部位(61)の運動は、一般的に、被検体(43)の運動に同期している。このような放射線照射方法によれば、たとえば、被検体(43)の運動に基づいて推測される照射部位(61)の動きが鈍いときに、時間間隔(72、73)を長くして照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。このような制御によれば、第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減し、かつ、照射部位(61)の位置を高精度に測定することができる。
【0021】
第2センサ(24、25、31、32、33)は、被検体(43)を透過した透過放射線(35、36)に基づいて照射部位(61)の位置を測定する。このような放射線照射方法によれば、第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することにより、単位時間当たりに被検体(43)を透過する透過放射線(35、36)の量を低減することができ、被検体(43)の透過放射線(35、36)の被曝量を低減することができる。
【0022】
放射線治療装置(3)は、放射線(23)の出射方向が照射部位(61)の位置に基づいて変化するように、制御される。すなわち、このような放射線照射方法は、動体追尾照射により放射線(23)を照射する放射線治療に適用されることができる。
【0023】
第2センサ(24、25、31、32、33)が照射部位(61)の位置を測定する時間間隔(72、73)は、第1センサ(5)が被検体(43)の運動を測定する時間間隔(72、73)より長いことが好ましい。
【0024】
本発明による放射線照射方法は、その運動情報に基づいて照射部位(61)の位置の変化率を算出するステップ(S3)をさらに備えている。このとき、時間間隔(72、73)は、その変化率に基づいて変更される。たとえば、その変化率の絶対値が大きいときに時間間隔(72、73)を小さくし、その変化率の絶対値が小さいときに時間間隔(72、73)を大きくすることができる。このような制御によれば、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0025】
本発明による放射線照射方法は、その運動情報と照射部位(61)の位置とに基づいて複数運動情報を複数位置に関連付けるテーブルを算出するステップ(S1)をさらに備えている。このとき、照射部位(61)の位置の変化率は、そのテーブルを参照して、その複数位置のうちのその運動情報に対応する推定位置に基づいて算出される。このため、放射線治療装置制御装置(2)は、被検体(43)の運動と照射部位(61)の運動との対応が途中で変動したときにも、照射部位(61)の位置をより正確に算出することができる。すなわち、このような放射線照射方法は、被検体(43)の運動と照射部位(61)の運動との対応が放射線治療中に変動したときにも、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0026】
本発明による放射線照射方法は、その運動情報に基づいて被検体(43)の運動の周期を算出するステップ(S3)をさらに備えている。このとき、時間間隔(72、73)は、その周期に基づいて変更される。たとえば、このような放射線照射方法によれば、その周期が小さいときに時間間隔(72、73)を小さくし、その周期が大きいときに時間間隔(72、73)を大きくすることができる。このような制御によれば、照射部位(61)の位置を高精度に測定しつつ、照射部位(61)の位置を測定する頻度を低減することができる。
【0027】
放射線(23)は、第2センサ(24、25、31、32、33)により照射部位(61)の位置を測定していない複数の期間(72、73)に照射される。複数の期間(72、73)のうちの第1期間(72)が複数の期間(72、73)のうちの第2期間(73)より長いときに、第1期間(72)に放射線(23)が照射される期間は、第2期間(73)に放射線(23)が照射される期間より長い。このとき、放射線照射方法は、複数の期間(72、73)ごとに一定の期間だけ放射線(23)を照射することに比較して、照射部位(61)に照射される放射線(23)の量を増大させることができ、その分、放射線(23)を出射する時間を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による放射線治療装置制御装置および放射線照射方法は、被検体の運動に基づいて推測される照射部位の動きが鈍いときにその照射部位を測定する時間間隔を長くすることにより、照射部位の位置を測定する頻度を低減し、かつ、照射部位の位置を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図面を参照して、本発明による放射線治療装置制御装置の実施の形態を記載する。その放射線治療装置制御装置2は、図1に示されているように、放射線治療システム1に適用されている。放射線治療システム1は、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3と赤外線カメラ5とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように、放射線治療装置3に接続され、赤外線カメラ5に接続されている。
【0030】
赤外線カメラ5は、患者に照射される赤外線の反射光を用いて患者の赤外線画像を撮像し、その赤外線画像を放射線治療装置制御装置2に出力する。
【0031】
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させる。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。
【0032】
首振り機構15は、走行ガントリ14のリングの内側に固定され、治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14の内側に配置されるように、治療用放射線照射装置16を走行ガントリ14に支持している。首振り機構15は、パン軸21およびチルト軸22を有している。チルト軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。パン軸21は、チルト軸22に直交している。首振り機構15は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、パン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、チルト軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。
【0033】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線23は、パン軸21とチルト軸22とが交差する交点を通る直線に概ね沿って放射される。治療用放射線23は、一様強度分布を持つように形成されている。治療用放射線照射装置16は、MLC(マルチリーフコリメータ)20を備えている。そのMLC20は、放射線治療装置制御装置2により制御され、治療用放射線23の一部を遮蔽することにより、治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を変更する。
【0034】
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、首振り機構15で治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように一旦調整されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0035】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0036】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0037】
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
【0038】
放射線治療装置3は、さらに、センサアレイ31を備えている。センサアレイ31は、センサアレイ31と治療用放射線照射装置16とを結ぶ線分がアイソセンタ19を通るように配置されて、走行ガントリ14のリングの内側に固定されている。センサアレイ31は、治療用放射線照射装置16により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した治療用放射線23を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ31としては、FPD、X線IIが例示される。
【0039】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
【0040】
図3は、患者43を示している。患者43は、内部にターゲット61を有している。ターゲット61は、患者43の患部を示し、治療用放射線23を照射すべき部位を示している。ターゲット61としては、肺の一部が例示される。患者43は、さらに、体外マーカ62が配置されている。体外マーカ62は、赤外線カメラ5により撮像される赤外線画像に映し出されるものであり、患者43の体表面に貼り付けられている。
【0041】
図4は、放射線治療装置制御装置2を示している。その放射線治療装置制御装置2は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、放射線治療装置制御装置2にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、ディスプレイが例示される。そのインターフェースは、放射線治療装置制御装置2に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、赤外線カメラ5と放射線治療装置3の旋回駆動装置11と走行駆動装置と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とMLC20とイメージャシステム(診断用X線源24、25、センサアレイ31、32、33)とカウチ駆動装置42とを含んでいる。
【0042】
そのコンピュータプログラムは、治療計画部51と運動収集部52と相関算出部53とターゲット運動算出部54とイメージャ制御部55と照射制御部56とを含んでいる。
【0043】
治療計画部51は、図示されていないコンピュータ断層撮影装置により生成された患者43の3次元データをユーザにより閲覧可能に出力装置に表示する。治療計画部51は、さらに、入力装置を用いて入力される情報に基づいて治療計画を作成する。その治療計画は、患者43のターゲット61の3次元データを示し、照射角度と線量との組み合わせを示している。その照射角度は、その患者の患部に治療用放射線を照射する方向を示し、すなわち、Oリング回転角とガントリ回転角とを示している。そのOリング回転角は、土台10に対するOリング12の向きを示している。そのガントリ回転角は、Oリング12に対する走行ガントリ14の向きを示している。その線量は、その各照射角度から患部に照射される治療用放射線の線量を示している。
【0044】
運動収集部52は、赤外線カメラ5を用いて患者43の体外マーカ62の赤外線画像を周期的に(たとえば、0.01秒〜0.1秒毎に)撮像する。運動収集部52は、その赤外線画像を撮影時刻に対応付けて記憶装置に一時的に記録する。運動収集部52は、さらに、その赤外線画像に基づいて体外マーカ62の位置を算出する。
【0045】
相関算出部53は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された透過画像に基づいてターゲット61の位置を算出する。相関算出部53は、さらに、その透過画像が撮像された時刻に近い時刻に赤外線カメラ5により撮像された赤外線画像から算出された体外マーカ62の位置とに基づいて、ターゲット61の位置と体外マーカ62の位置との相関関係を算出する。相関算出部53は、さらに、その相関関係を示すテーブルを作成する。
【0046】
ターゲット運動算出部54は、相関算出部53により算出されたテーブルを参照して、運動収集部52により算出された体外マーカ62の位置に基づいてターゲット61の位置を算出する。ターゲット運動算出部54は、さらに、その算出されたターゲット61の位置とその体外マーカ62の位置の算出に用いられた赤外線画像の撮像時刻とに基づいて、ターゲット61の位置の変化率を算出する。
【0047】
イメージャ制御部55は、間欠的に診断用X線35、36が出射して、患者43の透過画像を撮像するように、放射線治療装置3のイメージャシステムを制御する。イメージャ制御部55は、さらに、ターゲット運動算出部54により算出された変化率に基づいて時間間隔を算出する。その時間間隔は、運動収集部52により赤外線画像が撮像される時間間隔より長く、または、同等であり、たとえば、1/30秒〜数秒である。イメージャ制御部55は、さらに、その時間間隔で診断用X線35、36が出射し、その時間間隔で透過画像が撮像されるように、放射線治療装置3のイメージャシステムを制御する。
【0048】
照射制御部56は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された透過画像に基づいてターゲット61の位置を算出する。照射制御部56は、その算出された位置を治療用放射線23が透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を駆動し、MLC20を用いて治療用放射線23の照射野の形状を制御する。照射制御部56は、首振り機構15とMLC20とを駆動した後で、治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を出射する。治療用放射線23を出射する期間は、その診断用X線35、36が出射していない期間が長いほど長い。なお、照射制御部56は、その患部位置を治療用放射線23が透過するように、旋回駆動装置11または走行駆動装置またはカウチ駆動装置42をさらに用いて、患者43と治療用放射線照射装置16との位置関係を変更することもできる。
【0049】
図5は、赤外線カメラ5により撮像された赤外線画像から算出された体外マーカ62の位置と、その透過画像が撮像された時刻と概ね同時刻に放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された透過画像から算出されたターゲット61の位置との相関図の例を示している。その相関図65は、相関が強いことを示し、ターゲット61が体外マーカ62に同期していることを示している。
【0050】
図5は、さらに、相関関係を示している。その相関関係66は、相関算出部53により相関図65に基づいて算出され、体外マーカ62の位置とターゲット61の位置との相関関係を示している。すなわち、相関算出部53は、所定の時間内(たとえば、10秒)に、赤外線カメラ5により撮像された赤外線画像と放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された透過画像とに基づいて、相関図65を作成する。相関算出部53は、相関図65に基づいて相関関係66を算出する。相関算出部53は、その相関関係66に基づいて、テーブルを作成して記憶装置に一時的に記録する。そのテーブルは、体外マーカ62の位置集合をターゲット61の位置集合に対応付けている。すなわち、体外マーカ62の位置集合のうちの任意の要素は、ターゲット61の位置集合のうちの1つの要素に対応している。
【0051】
図6は、ターゲット運動算出部54により算出されるターゲット61の位置の変化の例を示している。その変化71は、ターゲット61の位置の変化率が変動していることを示し、ターゲット61が概ね周期的に運動していることを示している。図6は、さらに、放射線治療装置3のイメージャシステムが透過画像を撮像するタイミング(すなわち、診断用X線35または診断用X線36を出射するタイミング)を破線により示し、イメージャ制御部55により算出される時間間隔を示している。その時間間隔は、さらに、放射線治療装置3のイメージャシステムが診断用X線35、36を出射していない期間に概ね等しい。図6は、その時間間隔が一定でないことを示し、ターゲット61の位置の変化率が小さい期間で算出される時間間隔72に比較して、ターゲット61の位置の変化率が大きい期間で算出される時間間隔73が小さいことを示している。
【0052】
ここで、照射制御部56は、放射線治療装置3のイメージャシステムが診断用X線35、36を出射していない期間に、治療用放射線23を出射する。照射制御部56は、さらに、その期間が長いほど、長時間に治療用放射線23を出射する事が可能である。すなわち、照射制御部56は、時間間隔72で治療用放射線23を出射する時間が時間間隔73で治療用放射線23を出射する時間より長くなるように、治療用放射線23を出射する事が可能である。
【0053】
本発明による放射線照射方法の実施の形態は、放射線治療システム1を用いて実行され、治療計画を作成する動作と、放射線治療する動作とを備えている。
【0054】
その治療計画を作成する動作では、まず、ユーザは、コンピュータ断層撮影装置により生成された患者43の3次元データを放射線治療装置制御装置2に入力する。放射線治療装置制御装置2は、その3次元データに基づいて、その患者の患部とその患部の周辺の臓器とを示す画像を生成する。ユーザは、放射線治療装置制御装置2を用いてその画像を閲覧し、その患部の位置を特定する。ユーザは、さらに、その画像に基づいて治療計画を作成し、その治療計画を放射線治療装置制御装置2に入力する。その治療計画は、その患者の患部に治療用放射線を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線の線量および性状とを示している。
【0055】
図7は、放射線治療する動作を示している。ユーザは、まず、治療計画を作成したときと同様の姿勢に放射線治療装置3のカウチ41に患者43を固定する。放射線治療装置制御装置2は、赤外線カメラ5を用いて体外マーカ62を赤外線画像に周期的に撮像し、その赤外線画像の撮像に並行して、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43のターゲット61を透過画像に周期的に撮像する。放射線治療装置制御装置2は、その赤外線画像と透過画像とに基づいてテーブルを作成して記憶装置に一時的に記録する(ステップS1)。そのテーブルは、体外マーカ62の位置集合をターゲット61の位置集合に対応付けている。
【0056】
放射線治療装置制御装置2は、放射線治療が開始されると、赤外線カメラ5を用いて体外マーカ62を赤外線画像に周期的に撮像し、放射線治療装置3のイメージャシステムを用いて患者43のターゲット61を透過画像に周期的に撮像する。放射線治療装置制御装置2は、その赤外線画像に基づいて体外マーカ62の位置を算出する(ステップS2)。放射線治療装置制御装置2は、そのテーブルを参照して、その体外マーカ62の位置に基づいてターゲット61の位置を算出する。放射線治療装置制御装置2は、さらに、その体外マーカ62の位置の算出に用いられた赤外線画像の撮像時刻とその算出されたターゲット61の位置とに基づいて、ターゲット61の位置の変化率を算出する(ステップS3)。
【0057】
放射線治療装置制御装置2は、その算出された変化率に基づいて時間間隔を算出する。その時間間隔は、運動するターゲット61の位置を十分に高精度に測定することができる値であり、すなわち、その変化率の絶対値が大きいほど小さい値を示している。放射線治療装置制御装置2は、その時間間隔で診断用X線35、36が出射し、その時間間隔で透過画像が撮像されるように、放射線治療装置3のイメージャシステムを制御する(ステップS4)。
【0058】
放射線治療装置制御装置2は、その撮像された透過画像に基づいてターゲット61の位置を算出する(ステップS5)。放射線治療装置制御装置2は、その算出された位置を治療用放射線23が透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を駆動し、MLC20を用いて治療用放射線23の照射野の形状を制御する。放射線治療装置制御装置2は、首振り機構15とMLC20とを駆動した後で、診断用X線35、36が出射していない期間に、治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23を出射する(ステップS6)。このとき、放射線治療装置制御装置2は、さらに、その時間間隔が長いほど、長時間に治療用放射線23を出射する。
【0059】
放射線治療装置制御装置2は、治療計画に示される線量の治療用放射線23がターゲット61に照射されるまで、ステップS1〜ステップS6の動作を繰り返して実行する。この繰り返しの中のステップS1では、放射線治療装置制御装置2は、所定の期間に撮像された赤外線画像とその所定の期間に撮像された透過画像とに基づいてテーブルを更新して記憶装置に一時的に記録する。その所定の期間は、現在より所定の時間(たとえば、10秒)前の時刻から現在の時刻までの期間である。すなわち、その赤外線画像は、ステップS2で撮像された赤外線画像を含み、その透過画像は、ステップS2で撮像された透過画像を含んでいる。
【0060】
このような動作によれば、放射線治療装置制御装置2は、運動するターゲット61の位置を動体追尾照射に十分な程度に高精度に測定することができ、かつ、放射線治療全体で放射線治療装置3のイメージャシステムによるターゲット61の位置の測定の頻度を低減することができる。一般に、放射線治療装置3のイメージャシステムは、診断用X線35、36を出射するときに電磁波を放射し、その電磁波は、他の機器に悪影響を及ぼすことがある。放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムによる測定の頻度を低減することにより、放射線治療装置3が備える機器または放射線治療装置3の近傍に配置される機器に及ぼす悪影響を低減することができる。放射線治療装置制御装置2は、さらに、放射線治療全体で、放射線治療装置3のイメージャシステムにより消費される電力をより低減することができる。放射線治療装置制御装置2は、さらに、放射線治療全体で、患者43に照射される診断用X線35、36の量を低減し、患者43の診断用X線35、36の被曝量を低減し、患者43の負担を低減することができる。
【0061】
放射線治療装置制御装置2は、診断用X線35、36を出射する時間間隔が長いほど長時間に治療用放射線23を出射することにより、放射線治療全体で単位時間当たりに出射される治療用放射線23の量を増大させることができ、放射線治療にかかる時間を低減し、患者43の負担を低減することができる。
【0062】
図8は、放射線治療の直前に観測されたターゲット61の位置の変化の例を示している。その変化81は、ターゲット61の位置が概ね周期的に変化していることを示している。図8は、さらに、放射線治療の最中に観測されたターゲット61の位置の変化の例を示している。その変化82は、ターゲット61の位置が概ね周期的に変化していることを示し、その変化の周期が変化81の周期より大きいことを示している。このように、ターゲット61の位置は、概ね周期的に変動するが、その周期が変動することがある。
【0063】
本発明による放射線照射方法によれば、放射線治療装置制御装置2は、ターゲット61の位置の運動の周期が変動した場合であっても、運動するターゲット61の位置をより適切な時間間隔で測定することができ、運動するターゲット61の位置を動体追尾照射に十分な程度に高精度に測定することができる。
【0064】
図9は、放射線治療の直前に観測されたターゲット61の位置の変化の他の例を示している。その変化83は、ターゲット61の位置が概ね周期的に変化していることを示している。図9は、さらに、放射線治療の最中に観測されたターゲット61の位置の変化の例を示している。その変化84は、時間が経つにつれて、ターゲット61の所定期間(その周期の自然数倍の時間)での平均の位置85が移動していることを示している。このように、ターゲット61の位置は、概ね周期的に変動するが、時間が経つにつれて、その平均の位置が変動することがある。
【0065】
本発明による放射線照射方法によれば、放射線治療装置制御装置2は、ターゲット61の平均の位置が変動した場合であっても、運動するターゲット61の位置をより適切な時間間隔で測定することができ、運動するターゲット61の位置を動体追尾照射に十分な程度に高精度に測定することができる。
【0066】
なお、赤外線カメラ5は、呼吸に例示される患者43の運動を測定する他のセンサに置換することができる。そのセンサとしては、CCDカメラ、体表面レーザスキャン、ロードセルが例示される。そのCCDカメラは、患者43に照射される可視光線の反射光を用いて体外メーカ62の画像を撮像し、その画像を示す運動情報を放射線治療装置制御装置2に出力する。その体表面レーザスキャンは、患者43の体表面に照射されるレーザ光を用いてその体表面をスキャンすることにより患者43の体表面の位置と形状とを測定し、その体表面の位置と形状とを示す運動情報を運動情報を放射線治療装置制御装置2に出力する。そのロードセルは、患者43の腹部に巻かれるベルトの内側に配置され、その腹部とそのベルトとに挟まれる圧力を測定し、その圧力を示す運動情報を運動情報を放射線治療装置制御装置2に出力する。このとき、放射線治療装置制御装置2は、その運動情報に基づいてターゲット61の運動を推測することができる。すなわち、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療システム1が赤外線カメラ52に置換してこのようなセンサを備える場合であっても、同様にして、ターゲット61の位置を十分な程度に高精度に測定することができ、かつ、放射線治療全体で放射線治療装置3のイメージャシステムによるターゲット61の位置の測定の頻度を低減することができる。
【0067】
なお、放射線治療装置3のイメージャシステムは、ターゲット61の3次元位置を測定する他のセンサに置換することができる。そのセンサとしては、CT装置、MRI装置が例示される。
【0068】
そのCT装置は、複数の方向から透過した複数のX線に基づいて複数の透過画像を撮影し、その複数の透過画像をコンピュータで画像処理して患者43の断面の画像を生成し、その複数の透過画像をコンピュータで画像処理することにより患者43のターゲット61の位置を算出する。このとき、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムのときと同様にして、患者43の運動情報に基づいてそのCT装置によるX線の出射する時間間隔を変更する。
【0069】
そのMRI装置は、患者43に強い静磁場を作用させ、核磁気共鳴を利用して患者43の3次元データを画像化し、その画像を画像処理することにより患者43のターゲット61の位置を算出する。このとき、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムのときと同様にして、患者43の運動情報に基づいてそのMRI装置による強い磁場を発生させる時間間隔を変更する。
【0070】
すなわち、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムがこのようなセンサに置換された場合であっても、同様にして、ターゲット61の位置を十分な程度に高精度に測定することができ、かつ、放射線治療全体で放射線治療装置3のイメージャシステムによるターゲット61の位置の測定の頻度を低減することができる。放射線治療装置制御装置2は、さらに、そのセンサの近傍に配置される機器に及ぼす悪影響を低減することができ、そのセンサにより消費される電力をより低減することができる。
【0071】
放射線治療装置制御装置2は、そのセンサがCT装置であるときに、さらに、そのCT装置により患者43に照射されるX線の被曝量を低減し、患者43の負担を低減することができる。放射線治療装置制御装置2は、そのセンサがMRI装置であるときに、さらに、そのMRI装置により患者43に照射される電磁波の被曝量を低減し、患者43の負担を低減することができる。
【0072】
なお、放射線治療装置制御装置2は、ターゲット61の位置の変化量に基づいて時間間隔を変更することに置換して、赤外線カメラ5の計測結果に基づいて算出される他の値に基づいて時間間隔を変更することもできる。その値としては、ターゲット61の位置そのもの、ターゲットの運動の周期が例示される。このような制御であっても、同様にして、ターゲット61の位置を十分な程度に高精度に測定することができ、かつ、放射線治療全体で放射線治療装置3のイメージャシステムによるターゲット61の位置の測定の頻度を低減することができる。
【0073】
なお、本発明による技術は、ターゲット61の位置に基づいて治療用放射線23が変化する他の照射手法を実行する放射線治療に適用することができる。その照射手法としては、呼吸同期照射が例示される。このとき、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムによる計測結果に基づいて、治療用放射線23を照射したり照射を停止したりする。放射線治療装置制御装置2は、このような照射手法に適用された場合であっても、同様にして、ターゲット61の位置を十分な程度に高精度に測定することができ、かつ、放射線治療全体で放射線治療装置3のイメージャシステムによるターゲット61の位置の測定の頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明による放射線治療システムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、患者を示す断面図である。
【図4】図4は、放射線治療装置制御装置を示すブロック図である
【図5】図5は、体外マーカの位置とターゲットの位置との相関図を示し、相関算出部により算出される相関関係を示すグラフである。
【図6】図6は、ターゲット運動算出部により算出されるターゲットの位置を示し、イメージャ制御部により算出される時間間隔を示すグラフである。
【図7】図7は、放射線治療する動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、放射線治療の直前に観測されたターゲットの位置と放射線治療の最中に観測されたターゲットの位置との例を示すグラフである。
【図9】図9は、放射線治療の直前に観測されたターゲットの位置と放射線治療の最中に観測されたターゲットの位置との例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 :放射線治療システム
2 :放射線治療装置制御装置
3 :放射線治療装置
5 :赤外線カメラ
10:土台
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
15:首振り機構
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
20:MLC
21:パン軸
22:チルト軸
23:治療用放射線
24:診断用X線源
25:診断用X線源
31:センサアレイ
32:センサアレイ
33:センサアレイ
35:診断用X線
36:診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
51:治療計画部
52:運動収集部
53:相関算出部
54:ターゲット運動算出部
55:イメージャ制御部
56:照射制御部
61:ターゲット
62:体外マーカ
65:相関図
66:相関関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の運動を示す運動情報を第1センサから収集する被検体運動収集部と、
第2センサが前記被検体の照射部位の位置を測定する時間間隔を前記運動情報に基づいて変更するセンサ制御部と、
前記照射部位に照射される治療用放射線が前記位置に基づいて変化するように、放射線治療装置を制御する照射制御部
とを具備する放射線治療装置制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2センサは、前記被検体を透過した透過放射線に基づいて前記照射部位の位置を測定する
放射線治療装置制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかにおいて、
前記照射制御部は、前記治療用放射線の出射方向が前記位置に基づいて変化するように、前記放射線治療装置を制御する
放射線治療装置制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記第2センサが前記位置を測定する時間間隔は、前記第1センサが前記運動を測定する時間間隔より長い
放射線治療装置制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記運動情報に基づいて前記照射部位の位置の変化率を算出するターゲット運動算出部を更に具備し、
前記センサ制御部は、前記変化率に基づいて前記時間間隔を変更する
放射線治療装置制御装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記運動情報と前記位置とに基づいて複数運動情報を複数位置に関連付けるテーブルを算出する相関算出部を更に具備し、
前記ターゲット運動算出部は、前記テーブルを参照して、前記複数位置のうちの前記運動情報に対応する推定位置に基づいて前記照射部位の位置の変化率を算出する
放射線治療装置制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記運動情報に基づいて前記運動の周期を算出するターゲット運動算出部を更に具備し、
前記センサ制御部は、前記周期に基づいて前記時間間隔を変更する
放射線治療装置制御装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記照射制御部は、前記第2センサにより前記照射部位の位置を測定していない複数の期間に前記治療用放射線を照射し、
前記複数の期間のうちの第1期間が前記複数の期間のうちの第2期間より長いときに、前記第1期間に前記治療用放射線が照射される期間は、前記第2期間に前記治療用放射線が照射される期間より長い
放射線治療装置制御装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載される放射線治療装置制御装置と、
前記第1センサと、
前記第2センサと、
前記放射線治療装置
とを具備する放射線治療システム。
【請求項10】
被検体の運動を示す運動情報を第1センサから収集するステップと、
第2センサが前記被検体の照射部位の位置を測定する時間間隔を前記運動情報に基づいて変更するステップと、
前記照射部位に向けて照射される放射線が前記位置に基づいて変化するように、放射線治療装置を制御するステップ
とを具備する放射線照射方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2センサは、前記被検体を透過した透過放射線に基づいて前記照射部位の位置を測定する
放射線照射方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11のいずれかにおいて、
前記放射線治療装置は、前記放射線の出射方向が前記位置に基づいて変化するように、制御される
放射線照射方法。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれかにおいて、
前記第2センサが前記位置を測定する時間間隔は、前記第1センサが前記運動を測定する時間間隔より長い
放射線照射方法。
【請求項14】
請求項10〜請求項13のいずれかにおいて、
前記運動情報に基づいて前記照射部位の位置の変化率を算出するステップを更に具備し、
前記時間間隔は、前記変化率に基づいて変更される
放射線照射方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記運動情報と前記位置とに基づいて複数運動情報を複数位置に関連付けるテーブルを算出するステップを更に具備し、
前記照射部位の位置の変化率は、前記テーブルを参照して、前記複数位置のうちの前記運動情報に対応する推定位置に基づいて算出される
放射線治療装置制御装置。
【請求項16】
請求項10〜請求項13のいずれかにおいて、
前記運動情報に基づいて前記運動の周期を算出するステップを更に具備し、
前記時間間隔は、前記周期に基づいて変更される
放射線照射方法。
【請求項17】
請求項10〜請求項13のいずれかにおいて、
前記放射線は、前記第2センサにより前記照射部位の位置を測定していない複数の期間に照射され、
前記複数の期間のうちの第1期間が前記複数の期間のうちの第2期間より長いときに、前記第1期間に前記放射線が照射される期間は、前記第2期間に前記放射線が照射される期間より長い
放射線照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−178323(P2009−178323A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19801(P2008−19801)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】