説明

放射線画像撮影装置

【課題】センサー基板周りで静電気が発生することを防止し、或いは静電気が発生してもそれを効果的に除去することにより、衝撃や振動が加わっても読み出される画像データ等にノイズが重畳されることを的確に防止することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、複数の光電変換素子7が二次元状に配列されたセンサー基板4と、入射した放射線を光に変換して光電変換素子7に照射するシンチレーター3とを備え、センサー基板4とシンチレーター3との間に帯電防止機能を有する保護層44が設けられており、センサー基板4の、シンチレーター3に対向する側とは反対側の面4bに、導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に、照射された放射線を画像データに変換して読み出す放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線をシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換した後、変換され照射された光のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換する放射線画像撮影装置が種々開発されている。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台と一体的に形成された、いわゆる専用機型(固定型等ともいう。)として構成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、光電変換素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、通常、センサー基板上に複数の光電変換素子が二次元状(マトリクス状)に配列され、各光電変換素子にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)等で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。スイッチ手段は、それぞれ走査線に接続されており、走査線からオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、光電変換素子内に電荷を蓄積させる。また、走査線からオン電圧が印加されると光電変換素子内に蓄積された電荷を信号線に放出させる。
【0005】
そして、通常、放射線画像撮影は、放射線発生装置の放射線源から放射線画像撮影装置に対して、被験者の身体等の所定の撮影部位(すなわち胸部正面や腰椎側面等)を介した状態で放射線が照射されて行われる。放射線の照射の間、光電変換素子のスイッチ手段はオフ状態とされ、照射された放射線がシンチレーターで光に変換され、変換された光が光電変換素子に照射され、この光の照射(すなわち放射線の照射)により光電変換素子内で発生した電荷が光電変換素子内に蓄積される。
【0006】
そして、放射線の照射終了後に、走査線からスイッチ手段にオン電圧が印加されると、光電変換素子内に蓄積された電荷が信号線に順次放出され、信号線に接続されている読み出し回路で電荷が画像データDに変換されてそれぞれ読み出される。通常、このようにして画像データDの読み出し処理を行うように構成される。
【0007】
ところで、このような画像データDの読み出し処理等の際に、放射線画像撮影装置に外部から衝撃や振動が加わると、各光電変換素子から読み出される画像データDに比較的大きなノイズが重畳されてしまい、画像品質が劣化する場合があることが分かっている。そして、このようなノイズが発生する原因は必ずしも明確に判明している訳ではないが、各光電変換素子が形成されているセンサー基板周りで発生する静電気に起因すると考えられている。
【0008】
そこで、このような現象が発生することを防止するために、例えば特許文献4では、センサー基板とシンチレーターとの間に帯電防止層を設けることが提案されている。これは、センサー基板やシンチレーター基板等の比較的大きな面積を有するもの同士を貼り合わせたり剥離したりする場合に生じる静電気のために光電変換素子が破壊される等して、いわゆる画像欠陥が生じることを防止するための措置であるが、このように帯電防止層を設けた場合、少なくとも帯電防止層を設けない場合に比べて静電気の発生を抑制することが可能となり、画像欠陥の発生をより少なくすることが可能となる。
【0009】
そのため、このような技術を用いれば、センサー基板周りに静電気が発生している状態で放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わると、読み出される画像データDにノイズが重畳されるという上記の現象の発生を防止することにも役立つと考えられる。
【0010】
また、例えば特許文献5では、センサー基板の、シンチレーターに対向する側とは反対側の面側に、放射線遮蔽シート、断熱シート、導電性のシールド部材、および電気処理部がこの順番に配置されている構成が示されている。これは、センサー基板側や電気処理部側で発生する電気ノイズをシールド部材で遮蔽して、電気ノイズをシールド部材で受けてシールドフィンガーを介して筐体に逃がす等して、一方側で発生したノイズが他方側に伝達されることを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2010−19620号公報
【特許文献5】特開2011−58999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、例えば上記の特許文献4に記載されているようにセンサー基板とシンチレーターとの間に帯電防止層を設けるだけでは、少なくとも放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わることにより画像データDにノイズが重畳されるという上記の現象の発生を防止することが十分でない場合があることが分かってきた。
【0013】
また、上記の特許文献5に記載されているように構成しても、静電気が発生することを必ずしも十分に防止できず、少なくとも放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わることにより画像データDにノイズが重畳される点については、その発生を必ずしも確実に防止することができない場合があることも分かってきた。
【0014】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、センサー基板周りで静電気が発生することを防止し、或いは静電気が発生してもそれを効果的に除去することにより、衝撃や振動が加わっても読み出される画像データ等にノイズが重畳されることを的確に防止することが可能な放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【0015】
また、放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置側からの信号によらず、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成する場合にも、放射線の照射開始の検出処理の際に、センサー基板周りで静電気が発生すると、放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わった場合に、放射線の照射開始を誤検出する場合があることが分かってきた。
【0016】
そこで、本発明は、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出する場合に、放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わることによる放射線の照射開始の誤検出が生じることを的確に防止することが可能な放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の問題を解決するために、1に記載の放射線画像撮影装置は、
1)互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の光電変換素子とが設けられたセンサー基板と、
入射した放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
オン電圧を印加する前記各走査線を切り替えながら前記各走査線にオン電圧を順次印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オフ電圧が印加されると前記光電変換素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記信号線に接続され、前記光電変換素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記光電変換素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記センサー基板と前記シンチレーターとの間に、帯電防止機能を有する保護層が設けられており、
前記センサー基板の、前記シンチレーターに対向する側とは反対側の面に、導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層が設けられていることを特徴とする。
【0018】
2)2に記載の発明は、1に記載の放射線画像撮影装置において、前記帯電防止層は、導電性ポリマーまたは帯電防止剤を含む樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0019】
3)3に記載の発明は、1または2に記載の放射線画像撮影装置において、前記帯電防止層は、その表面抵抗値が10−2〜1014[Ω/m]であることを特徴とする。
【0020】
4)4に記載の発明は、1から3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置において、前記保護層は、導電性ポリマーまたは帯電防止剤を含む樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0021】
5)5に記載の発明は、1から4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置において、前記保護層は、その表面抵抗値が10〜1014[Ω/m]であることを特徴とする。
【0022】
6)6に記載の発明は、1から4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置において、前記保護層が、複数層の重ね合わせからなることを特徴とする。
【0023】
7)7に記載の発明は、6に記載の放射線画像撮影装置において、前記複数層の保護層のうち少なくとも一層が、ポリイミド樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0024】
8)8に記載の発明は、1から7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置において、前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記読み出し回路に読み出し動作を行わせて、前記スイッチ手段を介して前記光電変換素子からリークした電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【0025】
9)9に記載の発明は、1から7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置において、前記制御手段は、放射線画像撮影前に、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記光電変換素子からの照射開始検出用の画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、センサー基板とシンチレーターとの間に帯電防止機能を有する保護層を設け、さらに、センサー基板の、シンチレーターに対向する側とは反対側の面に導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層を設けたことにより、センサー基板周りで静電気が発生することを的確に防止し、また、仮に静電気が発生してもそれを効果的に除去することが可能となる。
【0027】
そのため、各光電変換素子からの画像データDの読み出し処理の際に、放射線画像撮影装置に外部から衝撃や振動が加わっても、各光電変換素子から読み出される電荷に静電気が混入することを的確に防止することが可能となり、読み出される画像データD等に、衝撃や振動に起因するノイズが重畳されることを的確に防止することが可能となる。
【0028】
また、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出するように構成する場合には、放射線の照射開始を検出するために読み出されるデータ(すなわち後述するリークデータdleakや照射開始検出用の画像データd)に、静電気に起因するノイズが重畳されることが防止される.そのため、放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わっても、放射線の照射開始の誤検出が生じることを的確に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置のセンサー基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4のセンサー基板上の小領域に形成された光電変換素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられたセンサー基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各光電変換素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】本実施形態に係る放射線画像撮影装置のセンサーパネル部分の拡大断面図である。
【図12】図11のセンサーパネルにおける1つの光電変換素子部分をさらに拡大した断面図である。
【図13】TFTを介して各光電変換素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図14】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各光電変換素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、光電変換素子等が筐体内に収納された可搬型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、支持台と一体的に形成された専用機型(固定型)の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0032】
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の概略的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3やセンサー基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0033】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0034】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0035】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1と外部装置との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部には、センサー基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、センサー基板4やシンチレーター3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのシンチレーター基板34が配設されている。
【0037】
なお、この部分の構成については、後で詳しく説明する。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0038】
シンチレーター3は、センサー基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした光に変換して出力するものが用いられる。
【0039】
シンチレーター3は、シンチレーター基板34に貼付される支持体(図示省略)上に蛍光体3a(後述する図11等参照)の層を有するが、支持体と蛍光体層3aの間に下引層(図示省略)を有する態様が好ましく、また、後述する図11等に示すように、支持体上に反射層3bを設け、反射層3b、下引層、および蛍光体層3aの構成であってもよい。以下、各構成層および構成要素等について説明する。
【0040】
蛍光体層3aを形成する蛍光体材料としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができるが、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体3aを柱状結晶構造に形成でき、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層3aの厚さを厚くすることが可能であることから、ヨウ化セシウム(CsI)が好ましく用いられる。
【0041】
但し、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加されて用いられる。例えば、特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。これらの中でもタリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)が好ましく、特にタリウム(Tl)が好ましい。
【0042】
また、ヨウ化セシウム(CsI)を含有する蛍光体層3aは、特に1種類以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとを原材料として形成することが好ましい。すなわち、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
【0043】
1種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。好ましいタリウム化合物は、ヨウ化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、またはフッ化タリウム(TlF,TlF3)等である。タリウム化合物の融点は、発光効率の面から、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。なお、ここでの融点とは、常圧下における融点である。
添加剤の化合物をCsIに添加する方法としては、これら添加剤の化合物を蒸着装置内で、CsIと同時に気化させ基板上に堆積させる方法を用いることができる。この場合、CsIの柱状結晶成長を阻害しないように、賦活剤として用いる化合物はヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化タリウム(TlI)、ヨウ化インジウム(InI)などのヨウ化物が好ましい。
また、蒸着により基板上にCsIを柱状構造に形成した後に、ナトリウム化合物、タリウム化合物、インジウム化合物などの賦活化合物と共に密閉空間に配置し、賦活化合物を昇華温度以上に加熱し、CsIの賦活を行う方法なども可能である。この場合、密閉空間に配置される基板上に形成されたCsIは100〜350℃の温度に加温しておくことが好ましく、賦活剤として用いる化合物は特に限定されないが、昇華温度が低いものが取扱上好ましい。特にユーロピウム化合物の昇華による賦活は、発光の残光時間短縮に効果がある。
【0044】
本実施形態に係る蛍光体層3aにおいて、当該添加剤の含有量は目的性能等に応じて、最適量にすることが望ましいが、ヨウ化セシウムの含有量に対して、0.001モル%〜50モル%、さらに0.1モル%〜10.0モル%であることが、発光輝度、ヨウ化セシウムの性質・機能の保持の面から好ましい。
【0045】
なお、蛍光体層3aの厚さは、50〜600μmであることが好ましく、支持体として樹脂フイルムを使用した場合は、断裁時の蛍光体のダメージの点から50〜500μmであることが好ましい。また輝度と鮮鋭性の特性のバランスから医療用として120〜400μmであることがより好ましい。
シンチレーター3の断裁方法は一般的な裁断方法に従えばいかなる裁断方法を適用してもよいが、作業性・精度等の面から、打ち抜き機、レーザー断裁等を用いて裁断するのが好ましい。
【0046】
また、後述する図11等に示すように、支持体上には反射層3bを設けることが好ましい。反射層3bは、蛍光体3a(すなわちシンチレータ3)から発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層3bは、Al,Ag,Cr,Cu,Ni,Ti,Mg,Rh,PtおよびAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。特に、上記の元素からなる金属薄膜、例えば、Ag膜、Al膜などを用いることが好ましい。また、このような金属薄膜を2層以上形成するようにしても良い。なお、反射層の厚さは、0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。また、反射層3bは、酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムといった光散乱微粒子とアクリル系、シリコン系、エポキシ系、ポリビニルアセタール系、ポリエステル系、ポリウレタン系のバインダー樹脂を含む液体を塗布することにより形成しても良い。白色顔料とバインダー樹脂を含む塗料を塗布することにより形成しても良い。特にバインダー樹脂としては接着性の観点でポリエステル系、ポリウレタン系等の疎水性樹脂が好ましい。
【0047】
本実施形態においては、支持体と蛍光体層3aの間、または反射層3bと蛍光体層3aの間に下引層(図示省略)を設けることが好ましい。当該下引層は、CVD法(気相化学成長法)によりポリパラキシリレン膜を成膜する方法や高分子結合材(バインダー)による方法があるが、膜付の観点から高分子結合材(バインダー)による方法がより好ましい。この高分子結合材(バインダー)はガラス転位点が30〜100℃であることが蒸着結晶と基板との膜付の点で好ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。また下引層の厚さは、鮮鋭性、柱状結晶の乱れ発生防止性などの面から0.5〜4μmが好ましい。
【0048】
また、本実施形態に係る支持体(図示省略)としては、各種の材料を使用することができ、支持体としては、カーボン、アルミニウム、ガラスを主成分として含有する材料で構成される支持体あるいは、ポリイミド、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、トリアセテート、ポリカーボネートといった高分子樹脂で構成される支持体が挙げられる。
また、支持体として フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった特性を有すバイオナノファイバーフィルムなども使用できる。 バイオナノファイバーは、軽い、鉄の5倍以上の強度、熱で膨張しにくい、混ぜる、塗る、フィルム状にするなど様々な使い方ができる素材であり。植物繊維が材料であるため燃やす事が出来るなど環境上のメリットがある。
さらに、支持体は着色されていてもよく、とくに、顔料が混入された樹脂フィルムであることが好ましい。特に、樹脂フィルムに酸化チタン、硫酸バリウムなどの光散乱微粒子を含有した樹脂フィルムからなる支持体は、反射層としても機能するためより好ましい。
【0049】
一方、センサー基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、センサー基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a(以下、表面4aという。)上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。
【0050】
センサー基板4の表面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、光電変換素子7がそれぞれ設けられている。このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の光電変換素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0051】
本実施形態では、光電変換素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各光電変換素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0052】
光電変換素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の光が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。光電変換素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された光)を電荷に変換するようになっている。
【0053】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して光電変換素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、光電変換素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、光電変換素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0054】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の光電変換素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、センサー基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0055】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれセンサー基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0056】
各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0057】
そして、フレキシブル回路基板12は、センサー基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、このセンサー基板4の下部構造についても、後で詳しく説明する。また、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0058】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0059】
前述したように、センサー基板4の検出部Pの各光電変換素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各光電変換素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
【0060】
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各光電変換素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0061】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、光電変換素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として光電変換素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0062】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0063】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0064】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位Vが印加されるようになっている。なお、基準電位Vは適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0065】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0066】
放射線画像撮影装置1で、各光電変換素子7内に残存する電荷を除去するための各光電変換素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0067】
すると、オン状態とされた各TFT8を介して各光電変換素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各光電変換素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0068】
一方、各光電変換素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧が印加され、オン状態とされた各TFT8を介して各光電変換素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0069】
そして、増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各光電変換素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0070】
増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各光電変換素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各光電変換素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後に制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0071】
相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各光電変換素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存される。
【0072】
そして、走査駆動手段15のゲートドライバー15bからオン電圧を印加する走査線5を順次切り替えながら、上記のようにして各光電変換素子7からそれぞれ画像データDが読み出され、記憶手段23に順次保存されるようになっている。
【0073】
なお、1回の画像データDの読み出し処理が終了すると、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされ(図10参照)、コンデンサー18bに蓄積された電荷が放電されて、上記と同様に、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す等して、増幅回路18がリセットされる。
【0074】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0075】
制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0076】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0077】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各光電変換素子7のリセット処理等を行わせたり、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各光電変換素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0078】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSP(図2参照)部分の構成について説明する。
【0079】
図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置のセンサーパネル部分の拡大断面図であり、図12は、図11のセンサーパネルにおける1つの光電変換素子部分をさらに拡大した断面図である。
【0080】
なお、図11では、図6に示したフレキシブル回路基板12やPCB基板33、PCB基板33上に形成された制御手段22や記憶手段23等の電子部品32の図示等が省略されており、図12ではTFT8等の図示が省略されている。また、図11や図12において、各部材の相対的な大きさや厚さ等は必ずしも実際の装置における相対的な大きさや厚さ等を反映するものではない。
【0081】
本実施形態では、センサー基板4上には、上記のように光電変換素子7等が形成されており、本実施形態では、図12に示すように、光電変換素子7の第1電極7a(図7や図8等参照)がセンサー基板4側に、また、第2電極7bがシンチレーター3側に形成されている。そして、前述したように、光電変換素子7の第1電極7aは図12では図示を省略したTFT8を介して信号線6に接続されており、第2電極7bにはバイアス線9が接続されている。
【0082】
そして、光電変換素子7やバイアス線9、TFT8、信号線6等を被覆するように、それらの上方に絶縁層42が形成されている。また、本実施形態では、光電変換素子7等による絶縁層42の表面の凹凸を平坦化するために、平坦化層が形成されている。平坦化層は、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、シリコーン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABSゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられ、中でもアクリルやポリイミド等の樹脂が好ましい。
【0083】
そして、図11や図12に示すように、平坦化層43のさらに上方、すなわちセンサー基板4とシンチレーター3との間には、帯電防止機能を有する保護層44が設けられている。
【0084】
なお、本実施形態では、保護層44と平坦化層43とを別の層として記載しているが、例えば、保護層44と平坦化層43とを一体化する、すなわち、保護層44で絶縁層42表面の凹凸を平坦化するように構成することも可能である。また、光電変換素子7とシンチレーター3との間に、保護層44や平坦化層43以外の層を形成することも可能である。
【0085】
本実施形態では、保護層44は、層の形成のしやすさの観点から、帯電防止剤を含む以下のような樹脂で形成されている。例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、シリコーン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABSゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂が好ましく、耐熱性、光透過性(すなわちシンチレーターの蛍光体から出力される光を透過する)の観点より透明ポリイミド樹脂が最も好ましい。
透明ポリイミドとしては、例えば、特開平8−104750号公報記載の透明ポリイミド樹脂、または、特開平8−3314号公報、特開2012−144603の透明ポリイミドフィルムなどが挙げられる。特に支持体としてポリイミドを使用した場合は、保護層として使用する透明ポリイミド樹脂の線熱膨張係数が30ppm以下であることが耐熱性の観点でより好ましい。
【0086】
また、保護層44は、その表面抵抗値が10〜1014[Ω/m]であることが好ましい。
【0087】
具体的には、保護層44の帯電防止機能は、樹脂に帯電防止剤を含有させることにより得られる。帯電防止剤としては、例えば、カーボン粒子(カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ)、酸化半導体粒子(酸化亜鉛系、酸化スズ系、酸化インジウム系)、界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルホスフォート、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、親水性高分子(スルホン酸塩、4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体)、導電性高分子(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(3,4−ジアルキルピロール)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(アニリンスルホン酸))等を挙げることができる。
【0088】
また、保護層44を、下記のような帯電防止機能を有する材料のみで形成することも可能である。例えば、界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルホスフォート、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、親水性高分子(スルホン酸塩、4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン共重合体)、導電性高分子(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(3,4−ジアルキルピロール)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(アニリンスルホン酸))等が挙げられる。
【0089】
さらに、保護層44を、金属微粒子が混入された導電性シートや導電性接着剤等の導電性ポリマーや、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の導電性酸化物等で形成することも可能である。
【0090】
なお、保護層44や平坦化層43、絶縁層42等は、シンチレーター3から光電変換素子7に照射される光を透過するものであり、透明であることが好ましい。
【0091】
一方、本実施形態では、前述したシンチレーター3は、図11や図12に示すように、蛍光体3aの柱状結晶で構成されており、前述した反射層3bや図示しない支持体等を介して本実施形態ではガラス基板からなるシンチレーター基板34に貼着されている。
【0092】
そして、図11に示すように、センサー基板4の光電変換素子7等が形成された側の面(すなわち表面4a)と、シンチレーター基板34のシンチレーター3等が貼着された側の面とが対向する状態で、センサー基板4とシンチレーター基板34とが接着剤45を介して貼り合わされるようになっている。その際、本実施形態では、シンチレーター3の蛍光体3aの先端Paが、前述した保護層44の上面に当接する状態とされるようになっている。
【0093】
なお、シンチレーター3は、上記のように蛍光体3aの柱状結晶で構成される必要はなく、例えば、シンチレーター基板34や反射層3bに、ペースト状の蛍光体を塗布するようにしてシンチレーター3を形成することも可能である。
【0094】
本実施形態では、センサー基板4の裏面4b、すなわちシンチレーター3に対向する側(表面4a)とは反対側の面4bには、導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46が設けられている。
【0095】
この帯電防止層46は、前述した保護層44と同様に、帯電防止剤を含む樹脂で形成されていてもよく、また、金属微粒子が混入された導電性シートや導電性接着剤等の導電性ポリマーや、ITOやIZO等の導電性酸化物等で形成することも可能である。
【0096】
本実施形態では、帯電防止層46は、その表面抵抗値が10−2〜1014[Ω/m]であることが好ましい。そして、本実施形態では、帯電防止層46のさらに裏面側に、放射線の透過を阻止する鉛の薄板47や、緩衝材48、基台31(図2参照)等が設けられている。
【0097】
なお、本発明では、センサー基板4の裏面4bに帯電防止層46を設けることは必須であるが、その他の鉛の薄板47や緩衝材48、基台31等の構成や順番等は任意に選択することが可能である。すなわち、上記の順番の代わりに、例えば、センサー基板4の裏面4bに、帯電防止層46、緩衝材48、鉛の薄板47、基台31等の順番で構成することも可能であり、装置に必要な構成や順番が適宜採用される。
【0098】
また、図11では図示を省略したが、前述したように、基台31の裏面側に、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24(図2参照)等が取り付けられている。
【0099】
次に、上記のように構成された放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0100】
前述したように、従来の放射線画像撮影装置では、前述した画像データDの読み出し処理等の際に、放射線画像撮影装置に外部から衝撃や振動が加わると、各光電変換素子7から読み出される画像データDに比較的大きなノイズが重畳されてしまう場合があり、その原因は必ずしも明らかではないが、センサー基板4周りで発生する静電気に起因すると考えられている。
【0101】
例えば、図11や図12に示すように、上記のように構成された放射線画像撮影装置1では、金属層や金属粒子を含む樹脂層からなる反射層3bと、各光電変換素子7の第2電極7bとの間に、平坦化層43や保護層44、シンチレーター3等が存在し、反射層3bと各光電変換素子7の第2電極7bとを両極とするコンデンサー状になっていると見ることができる。
【0102】
その際、従来の放射線画像撮影装置のように、センサー基板4とシンチレーター3との間に帯電防止機能を有する保護層44が仮に設けられていないとすると、この部分で発生した静電気すなわち正負の電荷が、例えば反射層3bの近傍に正の電荷(または負の電荷)が、また、各光電変換素子7の第2電極7bの近傍に負の電荷(または正の電荷)がそれぞれ集まる状態になる。
【0103】
そして、その状態で、各光電変換素子7から図11や図12では図示を省略したTFT8を介して信号線6に電荷を放出させて画像データDの読み出し処理が行われる際に、放射線画像撮影装置に何らかの衝撃や振動が加わると、各光電変換素子7から読み出される電荷に、各光電変換素子7の第2電極7bの近傍の電荷が重畳されてしまうため、読み出される画像データDに比較的大きなノイズが重畳されてしまうと考えられ得る。
【0104】
しかし、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のように、センサー基板4とシンチレーター3との間に保護層44が設けられていると、保護層44は帯電防止機能を有しているため、この部分での静電気の発生が防止される。
【0105】
また、仮にこの部分で静電気が発生しても、発生する静電気すなわち正負の電荷が、保護層44内に流れ込み、正の電荷(すなわち正孔)と負の電荷(すなわち電子)とが再結合して除去される。また、静電気を除去することができなくても、静電気が少なくとも保護層44内に拡散される。
【0106】
そのため、静電気による電荷が、反射層3bの近傍や各光電変換素子7の第2電極7bの近傍に溜まることがなくなるため、画像データDの読み出し処理の際に、放射線画像撮影装置1に何らかの衝撃や振動が加わっても、上記のように各光電変換素子7から読み出される電荷に各光電変換素子7の第2電極7bの近傍の電荷が重畳されることがなくなる。そのため、読み出される画像データDに、少なくともこの部分の静電気に起因するノイズが重畳されることを防止することが可能となる。
【0107】
しかし、これは、前述した特許文献4に記載されている構成と同様の構成であり、前述したように、本発明者らの研究では、このような構成だけでは、少なくとも放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わることにより画像データDにノイズが重畳される現象の発生を防止することが十分にできない場合があることが分かってきた。
【0108】
そして、本発明者らが研究を進めた結果、上記のように、センサー基板4の裏面4b、すなわちシンチレーター3に対向する側(表面4a)とは反対側の面4bに、導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46を設けると、効果的に上記の現象の発生を抑制し得ることが分かった。
【0109】
例えば、図11において、帯電防止層46の部分を空気の層とすると(すなわちこの場合はセンサー基板4の裏面4bと鉛の薄板47との間に空気が介在する状態になる。)、空気による摩擦等のため、センサー基板4の裏面4b側に例えば負の電荷が帯電する。すなわち静電気が発生する。そして、それに対応してセンサー基板4の表面4a側に例えば正の電荷が帯電する。
【0110】
そして、その状態で、各光電変換素子7からの画像データDの読み出し処理が行われる際に、放射線画像撮影装置に何らかの衝撃や振動が加わると、各光電変換素子7から読み出される電荷に、センサー基板4の表面4a側の例えば正の電荷が各光電変換素子7の第1電極7a(図12参照)から流入する等して、各光電変換素子7から読み出される電荷に重畳されてしまう。そのため、読み出される画像データDに比較的大きなノイズが重畳されてしまうと考えられ得る。
【0111】
この現象は、帯電防止層46の部分を空気の層を、例えば樹脂製のスポンジ状の緩衝材に替えても、或いは樹脂等の絶縁性の層に替えても発生することが分かっている。すなわち、センサー基板4の裏面4b側に、空気層や絶縁層等の導電性を有しない層を設ける限り、センサー基板4の裏面4b側で静電気が発生し、その静電気のために読み出される画像データDに比較的大きなノイズが重畳されると考えられる。
【0112】
一方、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のように、センサー基板4の裏面4bに導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46(図11参照)が設けられていると、センサー基板4の裏面4b側で静電気が発生することを的確に防止することが可能となる。また、仮に静電気が発生しても、帯電防止層46内で静電気すなわち正負の電荷が再結合して除去され、或いは、静電気が少なくとも帯電防止層46内に拡散されるため、電荷がセンサー基板4の裏面4b側に溜まることがなくなる。
【0113】
そのため、それに対応してセンサー基板4の表面4a側に電荷が溜まることが抑制され、或いは、電荷が発生しても、上記のように保護層44内に流入するため、画像データDの読み出し処理の際に、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わっても、上記のように各光電変換素子7から読み出される電荷に各光電変換素子7の第1電極7aの近傍の電荷が重畳されることがなくなる。そのため、読み出される画像データDに、静電気に起因するノイズが重畳されることを防止することが可能となる。
【0114】
これは、例えば、図11に示した本実施形態のように、帯電防止層46の直下に鉛の薄板47を設けず、例えば帯電防止層46の直下に樹脂製のスポンジ状の緩衝材48を設けたとしても、帯電防止層46は同様に機能する。
【0115】
また、本実施形態のように、帯電防止層46の直下に鉛の薄板47を設ければ、仮に帯電防止層46内を静電気が拡散する場合、静電気が鉛の薄板47内も流れるようになり、静電気の拡散効率が向上する。そのため、上記のように静電気により悪影響が発生することをより的確に防止することが可能となる。
【0116】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、センサー基板4とシンチレーター3との間に帯電防止機能を有する保護層44を設け、さらに、センサー基板4の裏面4b、すなわちシンチレーター3に対向する側とは反対側の面4bに導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46を設けたことにより、センサー基板4周りで静電気が発生することを的確に防止し、また、仮に静電気が発生してもそれを効果的に除去することが可能となる。
【0117】
そのため、各光電変換素子7からの画像データDの読み出し処理の際に、放射線画像撮影装置1に外部から衝撃や振動が加わっても、各光電変換素子7から読み出される電荷に静電気が混入することを的確に防止することが可能となり、読み出される画像データDに、衝撃や振動に起因するノイズが重畳されることを的確に防止することが可能となる。
【0118】
なお、放射線画像撮影装置1に外部から衝撃や振動が加わることで、静電気が信号に混入することによる悪影響は、上記のような画像データDの読み出し処理の際に発生するだけでなく、放射線画像撮影装置1における各処理の別の場面においても悪影響を及ぼし得ること分かっている。
【0119】
例えば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された後、上記のようにして各光電変換素子7からの画像データDの読み出し処理が行われるが、読み出された画像データDには、各光電変換素子7自体の熱(温度)による熱励起等により常時発生するいわゆる暗電荷(暗電流ともいう。)に起因するオフセット分が含まれている。
【0120】
そして、この暗電荷によるオフセット分をオフセットデータOとして読み出すオフセットデータOの読み出し処理が、上記の画像データDの読み出し処理の前後に行われる場合がある。そして、このオフセットデータOの読み出し処理では、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されない状態で行われること以外は、上記の画像データDの読み出し処理と同様にして処理が行われる。
【0121】
そのため、このオフセットデータOの読み出し処理の際にも、放射線画像撮影装置1に外部から衝撃や振動が加わることで静電気に起因するノイズがオフセットデータOに重畳され、オフセットデータOが異常に大きな値になるような現象が生じ得るが、放射線画像撮影装置1を本発明のように構成することで、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わっても、読み出されるオフセットデータOに、衝撃や振動に起因するノイズが重畳されることを的確に防止することが可能となる。
【0122】
また、従来の放射線画像撮影装置では、図示を省略するが、放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置との間で信号等の送受信を行いながら、互いに連携して放射線画像撮影を行うように構成されていたが、近年、放射線発生装置との間で連携をとらず、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出する技術の開発が進められている。
【0123】
そして、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成する場合にも、放射線の照射開始の検出処理の際に、センサー基板周りで静電気が発生すると、放射線画像撮影装置に衝撃や振動が加わった場合に、放射線の照射開始を誤検出し得ることが分かってきた。
【0124】
このように放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出する手法として、種々の手法が開発されているが、以下、そのうちの2つの手法について説明する。
【0125】
[検出手法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。ここで、リークデータdleakとは、図13に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各光電変換素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0126】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各光電変換素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図14に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0127】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各光電変換素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0128】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0129】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各光電変換素子7内で発生した暗電荷が各光電変換素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0130】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図15に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各光電変換素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。
【0131】
上記のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された光が、各TFT8に照射される。すると、それにより、各TFT8を介して各光電変換素子7からリークする電荷q(図15参照)がそれぞれ増加する。
【0132】
そのため、図16に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点(図16中の時刻t1参照)で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になることが分かっている。
【0133】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図16参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能となる。
【0134】
[検出手法2]
また、上記の検出手法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、上記の画像データDの読み出し処理と同様にして、放射線画像撮影前に、各光電変換素子7から画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することが可能である。
【0135】
なお、前述したように、撮影後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
【0136】
この照射開始検出用の画像データdの読み出し処理においては、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。
【0137】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、上記の検出手法1の場合(図16参照)と同様に、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された照射開始検出用の画像データdが、それ以前に読み出された照射開始検出用の画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0138】
そこで、この場合も、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された照射開始検出用の画像データdを監視するように構成し、読み出された照射開始検出用の画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能となる。
【0139】
上記のように、例えば検出手法1や検出手法2を用いて放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成する場合、センサー基板4周りで静電気が発生することを防止したり、発生した静電気を的確に除去すること等ができないと、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わった際に、読み出されるリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに比較的大きなノイズが重畳され得る。
【0140】
そのため、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線画像撮影装置1に衝撃等が加わると、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdにノイズが重畳されて、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdが閾値dleak_thや閾値dthを越えてしまう場合が生じ得る。
【0141】
そして、このようにリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdが閾値dleak_thや閾値dthを越えてしまうと、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、放射線の照射が開始されたと誤検出することになる。
【0142】
しかし、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、上記のように、センサー基板4とシンチレーター3との間に帯電防止機能を有する保護層44を設け、さらに、センサー基板4の裏面4b、すなわちシンチレーター3に対向する側とは反対側の面4bに導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層46を設けたことにより、センサー基板4周りで静電気が発生することを的確に防止し、また、仮に静電気が発生してもそれを効果的に除去することが可能となる。
【0143】
そのため、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わっても、放射線画像撮影前に読み出されるリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに、静電気に起因するノイズが重畳されることが的確に防止され、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されていなければ、読み出されるリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdが閾値dleak_thや閾値dthを越えることが防止される。
【0144】
そのため、本発明によれば、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するように構成する場合に、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動が加わっても、それにより放射線の照射開始の誤検出が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0145】
なお、本発明が上記の実施形態や変形例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0146】
1 放射線画像撮影装置
3 シンチレーター
4 センサー基板
4b 反対側の面
5 走査線
6 信号線
7 光電変換素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
44 保護層
46 帯電防止層
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
q 電荷
r 小領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の光電変換素子とが設けられたセンサー基板と、
入射した放射線を光に変換して前記光電変換素子に照射するシンチレーターと、
オン電圧を印加する前記各走査線を切り替えながら前記各走査線にオン電圧を順次印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オフ電圧が印加されると前記光電変換素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記信号線に接続され、前記光電変換素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記光電変換素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記センサー基板と前記シンチレーターとの間に、帯電防止機能を有する保護層が設けられており、
前記センサー基板の、前記シンチレーターに対向する側とは反対側の面に、導電性または帯電防止機能を有する帯電防止層が設けられていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記帯電防止層は、導電性ポリマーまたは帯電防止剤を含む樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記帯電防止層は、その表面抵抗値が10−2〜1014[Ω/m]であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記保護層は、導電性ポリマーまたは帯電防止剤を含む樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記保護層は、その表面抵抗値が10〜1014[Ω/m]であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記保護層が、複数層の重ね合わせからなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記複数層の保護層のうち少なくとも一層が、ポリイミド樹脂で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記読み出し回路に読み出し動作を行わせて、前記スイッチ手段を介して前記光電変換素子からリークした電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記光電変換素子からの照射開始検出用の画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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