説明

放射線療法治療において腫瘍の動きに対応する方法

放射線療法の間の腫瘍の動きを考慮に入れる方法および装置が提供される。本方法は、更新される放射線療法計画に基づく放射線療法治療を許容する。更新された放射線治療につながるそれぞれの分別放射線治療について、更新された輪郭および更新された放射線療法計画を作り出すために、放射線治療画像が取得され、自動的にセグメント分割され、次いで変形可能な位置合わせにかけられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
放射線治療は、X線放射のような放射を用いた癌腫瘍のような病気の治療である。病変組織に放射線を施す過程で、いくつかの健全な組織も放射にさらされる。健全な組織の放射への曝露は、治療に関係した合併症を引き起こすことがある。よって、病変領域に精確かつ精密に輪郭を合わせ、放射線の大半が病変組織に加えられ、周辺の健全な組織に加えられるのは最小限とすることが望ましい。
【0002】
治療される領域の精確かつ精密な輪郭(計画標的体積[planning target volume]またはPTV)は、分別治療(fractionated treatment)の間の標的の動きを取り入れる。PTVは病変組織の外形線のほか患者の設定(setup)および動き誤差に対応するためのマージンをも含むので、若干の健全な組織が放射にさらされる。放射線療法治療の過程で、患者は、長時間にわたって起こりうる分別治療を受けることがある。この期間にわたる病変組織および周辺の健全な組織の動きは不可避であり、放射にさらされる健全な組織の量を増す。動きとは、患者の物理的な動き(設定誤差)または病変組織を含む内部組織の動きおよび変形であることができる。この後者の動きおよび変形は、心臓系、呼吸系および消化系といった生理機能によって、あるいは腫瘍サイズの縮小のような治療応答の結果として引き起こされるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
呼吸および心臓の動きといった若干の動きは、腫瘍の動きを治療に組み込んで、それによりPTVの定義の改善を許容するための、4D撮像と呼吸ゲーティング(respiratory gating)または動的コリメート(dynamic collimation)との組み合わせを通じて対応できる。さらに、この情報は、呼吸サイクルの間の動きを定量化することによって、治療の過程を通じて届けられた真の線量をより精確に計算することを可能にする。しかしながら、腫瘍の動きの推定は、二次元スライス上での手動の外形設定(outlining)または対話的セグメンテーション・ツールを使った腫瘍の描出を必要とする。このプロセスはあまりに時間集約的であり、再現性を欠く。よって、放射線療法治療の過程で精確に、迅速に、信頼できる形で動きに対応する放射線療法プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、放射線療法治療の間に腫瘍の動きを考慮に入れる方法および装置に向けられる。分別片内(intra-fractional)および分別片間(inter-fractional)の動きは放射線療法計画の確度および精度に影響する。ここに開示される方法および装置は、腫瘍の動きを考慮に入れるために放射線療法計画の定期的な更新を提供する。
【0005】
ある実施形態では、放射線療法計画画像が取得される。その放射線計画画像から放射線療法計画が作り出される。次いで分別放射線療法治療が実施される。更新された放射線療法計画に基づく分別放射線療法治療について、放射線療法治療画像が取得され、自動的にセグメント分割され、次いで変形可能な位置合わせ(deformable registration)にかけられる。これは、所与の分別放射線療法治療が、腫瘍の現在のサイズおよび位置に基づいたものとなり、より精密に施されることを許容する。
【0006】
本明細書に組み込まれ、その一部をなす付属の図面において、本発明の実施形態が例示される。それは、上記の本発明の一般的な記述および下記の詳細な記述とともに、本発明の原理を例解するはたらきをする。当業者は、これらの例示的な実施形態が本発明を限定することを意図しておらず、単に本発明の原理を組み込む例を与えるものであることを理解しておくべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここに開示される放射線療法治療における腫瘍の動きを考慮に入れる方法は、放射線療法治療にかけられる腫瘍の動き推定の自動化を提供する。本方法は、腫瘍の自動化されたセグメンテーションを提供する。該セグメンテーションは次いで、同様の点を相関させて動きを考慮に入れる位置合わせアルゴリズムにおいて使用される。本方法は、PTVの精確で、迅速で、信頼できる更新を許容し、それは改良された放射線治療を許容する。放射線治療中および分別放射線治療間の腫瘍および周辺組織の図2に示されるような動きを考慮に入れることによって、病変組織および危険にさらされる周辺器官の動きを考慮に入れるよう放射線計画が更新できる。更新された放射線療法計画は、放射の、所望の標的領域へのより精密な適用を許容し、健全な組織の放射への曝露を最小限にする。
【0008】
開示される方法のある実施形態では、腫瘍の動き推定のゼロ・クリック自動化が、自動化セグメンテーション・アルゴリズムと組み合わされた変形可能な画像位置合わせアルゴリズムを使うことによって提供される。変形可能な位置合わせと自動化セグメンテーションのいかなる好適な組み合わせを使うこともできることを注意しておく。たとえば、位置合わせアルゴリズムは、いかなる変形可能なボクセル・ベースの位置合わせ方法に基づいたものでもよい。ある個別的な実施例では、たとえば、セグメンテーション・アルゴリズムは、肺小結節の自動セグメンテーションのための方法に、位置合わせ方法は変形可能なBスプラインまたは弾性体スプライン位置合わせ方法に基づいたものでよい。そのような位置合わせ方法は、“Medical Image Registration”, V. Hajnal, D. Hill, D. Hawkes(編), CRC Press, 2001に記載されている。この文献の開示全体はここに参照によって組み込まれる。好適なセグメンテーション・プロセスの例は、Wiemker and Koninklijke Philips Electronics N. V.の名で公開された“Computer-Aided Detection of Lung-Nodules”という名称の国際特許出願公開第WO2004046995A2号に記載されている。この文献の開示全体はここに参照によって組み込まれる。
【0009】
図3は、放射線療法の間に腫瘍の動きを考慮に入れることのできる装置1のある実施形態を示している。装置1は、オブジェクト9の画像6を撮影する撮像装置5およびオブジェクト9を照射する照射装置7に接続された処理ユニット3を含んでいる。当業者は、撮像装置5および照射装置7はそれぞれ、多様な異なるオブジェクトの画像を提供する装置およびオブジェクトを照射する装置でよいことを認識するはずである。たとえば、撮像装置はCT、MRI、超音波、SPECT/CT、PET/CT、X線またはその他の撮像デバイスであることができる。処理ユニット3は、ここに記載される方法またはプロセスを実行できる限り、いくつかの異なるユニットの形を取ることもできる。
【0010】
図1は、腫瘍の動きのゼロ・クリック自動化を実装するための方法の一つの可能な実施形態を示している。プロセスは10で始まり、次いで放射線療法計画画像が20で撮影される。30において、放射線療法計画が、放射線療法計画画像から作り出される。放射線療法計画は、腫瘍および任意的に周辺器官の輪郭をマップし、輪郭付けされたさまざまな領域への放射線量を規定する。この放射線療法計画は、図1の35に示されている放射線療法治療のために実施される。
【0011】
放射線療法治療分別片(fraction)は、規定される放射線量全体の一部分である。たとえば、放射線療法治療は、1か月にわたって1日当たり1分別片で、30の別個の分別片からなっていてもよい。これに関し、のちに述べるように、各放射線療法分別片は、更新された放射線療法計画に基づくことができる。しかしながら、治療毎に更新された放射線療法計画が必要とされなくてもよいことは認識しておくべきである。たとえば、更新された放射線療法計画は一つおきの放射線療法治療について、三つに一つの療法治療について、あるいは他の何らかの規則的もしくは不規則的な間隔で取得されてもよい。更新された放射線治療が取得される間隔は、腫瘍および危険にさらされる器官の動きの相対量ならびに治療がうまくいくために必要とされる精度に依存する。
【0012】
所与の放射線療法治療35について、放射線療法治療画像が40で取得される。画像は次いで50で自動的にセグメント分割される。プロセスは次いで60に進み、セグメント分割された画像に対して変形可能な位置合わせが実行される。変形可能な位置合わせは、撮像される領域の輪郭が、輪郭付けされた領域の動きに基づいて変形することを許容する。輪郭付けされた領域の動きは、患者の動きから、患者の生理系によって引き起こされる内部器官の動きから、輪郭付けされた領域の変化したサイズから、あるいはそれらの組み合わせから帰結しうる。撮像される領域の変形された輪郭付けされた領域は、放射線療法計画が、新しい、より精確な輪郭付けされた領域に基づいて更新されることを許容する。70において、放射線療法計画が更新され、分別放射線療法治療が行われる。放射線療法治療35にさらなる分別治療があれば、本方法は40にループで戻る75。さらなる分別放射線療法治療がなければ、本方法は80に進んで、放射線療法治療が完了する。
【0013】
本発明について一つまたは複数の好ましい実施形態を参照しつつ記述してきた。明らかに、本明細書を読み、理解すれば他の者にも修正および変更は思いつくであろう。付属の請求項またはその等価物の範囲にはいる限りそのようなすべての修正および変更を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】放射線療法治療における腫瘍の動きに対応する方法のプロセス・フローチャートを示す図である。
【図2】呼吸サイクルの異なるフェーズにおいて撮られた二つの三次元CTの軸スライスにおけるセグメント分割された腫瘍および肺を示す図である。
【図3】放射線療法治療において腫瘍の動きに対応できる装置の実施形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線療法治療の間の腫瘍の動きを考慮に入れる方法であって:
(a)放射線計画画像を取得する段階と、
(b)放射線療法計画を作り出す段階と、
(c)第一の組の分別放射線療法治療を実行する段階であって各分別放射線療法治療が:
(i)放射線治療画像を取得し;
(ii)放射線治療画像の自動化されたセグメンテーションを生成し;
(iii)セグメント分割された放射線治療画像の変形可能な位置合わせを実行し;
(iv)セグメント分割された放射線治療画像の変形可能な位置合わせに基づいて前記放射線療法計画を更新し;
(v)更新された放射線療法計画に基づいて放射線治療を提供することを含む段階とを有する方法。
【請求項2】
第二の組の分別放射線療法治療を実行する段階であって各分別放射線療法治療が以前の放射線療法計画に基づいて放射線治療を提供することを含む段階を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が完全な放射線療法治療をなす、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が、放射線療法治療の過程の間に入り交じって分散される(interdispersed)、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が、放射線療法治療の間のある設定された区間中に入り交じって分散される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
放射線治療画像の前記自動化されたセグメンテーションが、肺小結節の自動的なセグメンテーションのための方法に基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記セグメント分割された放射線治療画像の前記変形可能な位置合わせが、変形可能なBスプラインまたは弾性体スプライン位置合わせ方法に基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
放射線療法治療の間の腫瘍の動きを考慮に入れる装置であって:
(a)放射線計画画像を取得する手段と、
(b)放射線療法計画を作り出す手段と、
(c)第一の組の分別放射線療法治療を実行する手段であってそれぞれが:
(i)放射線治療画像を取得する手段;
(ii)放射線治療画像の自動化されたセグメンテーションを生成する手段;
(iii)セグメント分割された放射線治療画像の変形可能な位置合わせを実行する手段;
(iv)セグメント分割された放射線治療画像の変形可能な位置合わせに基づいて前記放射線療法計画を更新する手段;および
(v)更新された放射線療法計画に基づいて放射線治療を提供する手段を含む手段、とを有する装置。
【請求項9】
第二の組の分別放射線療法治療の手段であってそれぞれが以前の放射線療法計画に基づいて放射線治療を提供する手段を含む手段を有する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が完全な放射線療法治療をなす、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が、放射線療法治療の過程の間に入り交じって分散される(interdispersed)、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記第一の組の分別放射線療法治療および前記第二の組の分別放射線療法治療が、放射線療法治療の間のある設定された区間中に入り交じって分散される、請求項11記載の装置。
【請求項13】
放射線治療画像の自動化されたセグメンテーションを生成する前記手段が、肺小結節の自動的なセグメンテーションのための方法に基づくセグメンテーションのための手段を含む、請求項8記載の装置。
【請求項14】
前記セグメント分割された放射線治療画像の変形可能な位置合わせを実行する前記手段が、変形可能なボクセル・ベースの位置合わせ方法に基づいた位置合わせの手段を含む、請求項8記載の装置。
【請求項15】
放射線療法計画ツールであって:
放射線療法計画画像を受容する手段と;
前記放射線療法計画画像の諸選択領域を輪郭付けする手段と;
前記放射線療法計画画像内の輪郭付けされた各領域に放射線量を割り当てる手段と;
放射線療法治療画像を受容する手段と;
放射線療法治療画像の自動化されたセグメンテーションを生成する手段と;
セグメント分割された放射線療法治療画像の変形可能な位置合わせを実行する手段と;
セグメント分割された放射線療法治療画像の変形可能な位置合わせに基づいて輪郭付けされた諸選択領域の輪郭を調整する手段とを有するツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−501043(P2009−501043A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521015(P2008−521015)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052332
【国際公開番号】WO2007/007276
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】