説明

放射線絞り装置及び当該絞り装置を有する放射線治療装置

【課題】 絞り体をスムーズ且つ確実に支持し、小型で信頼性が高く比較的安価な絞り装置、及び当該絞り装置を具備する放射線治療装置を提供すること。
【解決手段】 放射線が前記被検体に照射される領域である放射線照射野を成形するための放射線絞り装置であって、第1の方向に沿って密に隣接して配列され、それぞれが第1の方向に貫通する所定形状の穴部を有し、この第1の方向に略直交する第2の方向に沿って移動可能な複数の絞り体と、複数の絞り体のすべての所定形状の穴部を貫通するシャフトと、シャフトの表面に設けられ耐摩耗性を有する表面部材と、を有する。シャフトにより、各穴部の周縁部における接点において複数の絞り体を支持しながら、複数の絞り体のそれぞれを、移動ユニットにより第2の方向に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療や放射線による非破壊検査を行う装置において、放射線が照射される領域である照射野を正確に成形するための放射線絞り装置、及びこれを具備する放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置とは、患部を含む所定領域に電離放射線を照射して患部組織を死滅させることで患部治療を可能とするものである。この装置を用いて行われる放射線治療としては、術後治療、術中治療、非侵襲治療等の種々のものがある。術後治療とは、被検体を切開し、患部の悪性腫瘍を摘出し、縫合した後に体外から放射線を照射して手術で摘出しきれなった残存腫瘍細胞を死滅させるものである。術中治療とは、手術中に切開した状態のままで摘出した残存腫瘍細胞に放射線を直接的に照射するものである。非侵襲治療とは、切開せず被検体表面から患部に向けて放射線を照射し、組織を死滅させるものである。近年の放射線治療装置は、コンピュータ技術及び医療技術の進歩により、治療対象に多くの放射線量を照射し、周囲の正常組織にはできるだけ少ない放射線量を照射することができるようになっている。これにより、従来に比して副作用が少なく侵襲が少ない(又は非侵襲な)治療法として注目を集めつつある。
【0003】
この様な放射線治療装置にあっては、放射線を患部に照射するというその性質上、被検体への放射線被曝を低減させる対策が講じられている。その一つとして、患部(治療部位)に限定的に放射線を照射するように、その照射野を制限するための多分割絞り装置が備えられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
図15は、従来の多分割絞り装置の一例を説明するための図である。同図に示すように、従来の多分割絞り装置においては、放射線源Sを挟んだ一対の絞り体100A、100Bが一方向(図ではX軸方向)に沿って複数設けられている。各絞り体100A、100Bは、X軸方向と略垂直なY軸方向に沿って移動可能(すなわち、互いに接近、離反可能)となっており、それぞれを所定の位置に移動させることで、任意形状の照射野を形成することができる。
【0005】
ところで、絞り体100A、100Bは、例えばタングステン等の放射線を遮断可能な重金属で形成されている。従って、その自重は大きなものとなり、その支持手法には工夫を要する。絞り体の従来の支持機構としては、例えば各々の絞りブロックを溝付きローラで支持するもの(例えば、特許文献3、4参照)、各絞り体の両側面に複数の断面V字(U字)状の溝を設け、この溝に複数のボールと複数のリテーナおよび両端にスプリングを配置して各々の隣り合う絞りブロック同士で支持するもの等がある(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2004−275243号公報、
【特許文献2】特開2002−210026号公報
【特許文献3】特開平6―210012号公報
【特許文献4】特願昭63―267324号公報
【特許文献5】特開2001−066397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の放射線治療装置においては、次のような問題がある。
【0007】
まず、溝付きローラで絞り体を支持する方法は、ラジアル方向は転がり接触となるが、スラスト方向は滑り摩擦となり、摩耗により期間が経つにつれて信頼精度が落ちる可能性がある。また、絞りブロックはタングステン等の重金属で構成しているため溝付きローラを大径化する必要があり、そのため絞り装置は患者方向に延長して大型化され、患者が受ける圧迫感を増すことになる。また、放射線源と患者との間に所要に応じて標準的補助器具例えばブロックトレイ等を納めるに足りる十分なスペースを確保するのが困難となるものである。さらに、絞りブロックを細分化した場合、各絞りブロックに3個以上の溝付きローラを配置しなければならないため、多数のローラを配置することになり、スペースをとるし、組立、調整もやりにくいという欠点がある。
【0008】
また、上各絞り体の両側面に設けた複数の断面V字(U字)状の溝を利用する方法はでは、構造的に部品点数が多く、組立工数もかかるため価格が高いという問題がある。また、転がり接触のため、駆動力が軽くガタが発生しやすいなどの問題もある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、絞り体をスムーズ且つ確実に支持し、小型で信頼性が高く比較的安価な絞り装置、及び当該絞り装置を具備する放射線治療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の視点は、放射線源と被検体との間に配置され、前記放射線源からの放射線が前記被検体に照射される領域である放射線照射野を成形するための放射線絞り装置であって、第1の方向に沿って密に隣接して配列され、それぞれが前記第1の方向に貫通する所定形状の穴部を有し、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動可能な複数の絞り体と、前記複数の絞り体のすべての前記所定形状の穴部を貫通するシャフトと、前記シャフトの表面に設けられ耐摩耗性を有する表面部材と、を有し、前記各穴部の周縁部における接点において前記複数の絞り体を支持する支持ユニットと、前記複数の絞り体のそれぞれを前記第2の方向に沿って移動させることで、前記放射線照射野を成形する移動ユニットと、を具備する放射線絞り装置。
【0012】
本発明の第2の視点は、被検体に対して放射線を照射するための放射線源と、前記放射線源と前記被検体との間に配置され、前記放射線源からの放射線が前記被検体に照射される領域である放射線照射野を成形するための放射線絞り装置であって、第1の方向に沿って密に隣接して配列され、それぞれが前記第1の方向に貫通する所定形状の穴部を有し、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動可能な複数の絞り体と、前記複数の絞り体のすべての前記所定形状の穴部を貫通するシャフトと、前記シャフトの表面に設けられ耐摩耗性を有する表面部材と、を有し、前記各穴部の周縁部における接点において前記複数の絞り体を支持する支持ユニットと、を有する放射線絞り装置と、前記複数の絞り体のそれぞれを前記第2の方向に沿って移動させることで、前記放射線照射野を成形する移動ユニットと、前記移動手段を制御する制御ユニットと、を具備する放射線治療装置。
【発明の効果】
【0013】
以上本発明によれば、を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1及び第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
図1は、本実施形態に係る放射線治療装置1の外観図を示している。同図に示すように、本放射線治療装置1は、放射線源からの放射線を被検体へ照射する放射線照射装置10と、被検体Pを載置して放射線の照射部位の位置決めをする治療台20と、放射線照射装置10および治療台20を始め、放射線治療装置を構成する各機器を有機的に制御する制御装置(図示せず)を具備している。
【0017】
放射線照射装置10は、固定架台11、回転架台12、照射ヘッド13、絞り装置14を有している。固定架台11は床に据付られており、回転架台12はこの固定架台11に回転可能に支持される。照射ヘッド13は、回転架台12の一端から横方向へ延びた先端部に設けられ、照射される放射線の形状を成形し放射線照射野を決定するための絞り装置14とを有している。この絞り装置14の構成については、後で詳しく説明する。
【0018】
回転架台12は、回転中心軸Hの周りに略360度にわたって回転可能である。また、絞り装置14も、照射ヘッド13から照射される放射線の照射軸Iの周りに回転可能となっている。なお、回転架台12の回転中心軸Hと放射線の照射軸Iとの交点をアイソセンタ(isocenter)ICと称している。また、回転架台12は、放射線の固定照射はもとより、それ以外の各種の照射態様例えば、回転照射、振子照射、間欠照射などに対応した回転が可能なように構成されている。
【0019】
治療台20は、上部機構21、天板22、昇降機構23、下部機構24を有しており、アイソセンタICを中心とする円弧に沿って、矢印G方向に所定角度範囲にわたって回転可能に床に設置されている。天板22は被検体Pを載置するための寝台板であり、上部機構21に支持される。上部機構21は、天板22を矢印eで示す前後方向と、矢印fで示す左右方向に移動させる機構を備えている。また、上部機構21は、昇降機構23に支持されている。この昇降機構23は、例えばリンク機構で構成されるもので、矢印dで示す上下方向にそれ自体が昇降することによって、上部機構21および天板22を所定範囲だけ昇降させるものである。さらに、昇降機構23は、下部機構24に支持されている。この下部機構24は、アイソセンタICから距離L離れた位置を中心として、矢印Fで示す方向に昇降機構23を回転させる機構を備えている。よって、昇降機構23とともに、上部機構21および天板22が矢印F方向に所定角度回転可能である。
【0020】
なお、治療に際して被検体Pの位置決めや絞り装置14による放射線照射野の設定などは、医師などの医療スタッフDによって行われる。
【0021】
(絞り装置)
次に、絞り装置14の構成について詳しく説明する。放射線治療を実施する際には、悪性腫瘍などの治療部位にのみ放射線を集中的に照射して、正常組織にダメージを与えないようにすることが重要である。この絞り装置14は、正常組織に極力放射線が照射されないように放射線照射野を規制(制限)するためのものであり、放射線の照射軸Iの周りに回転可能に、照射ヘッド13に組み込まれている。
【0022】
なお、本実施形態においては、以下に述べる様に円弧形状の複数の絞り体を有する多分割絞り装置を例とする。しかしながら、本発明の技術的思想はこれに拘泥されず、複数の絞り体を有する多分割絞り装置、例えば矩形状の複数の絞り体を有する多分割絞り装置についても適用可能である。以下、図2乃至図5を参照しながら、絞り装置14の構成について詳しく説明する。
【0023】
図2は、絞り装置14の一側面を示した図であり、図3は、図2に略垂直な方向に位置する他の側面を示した図である。なお、実際の放射線治療装置1においては、絞り装置14は所定の筐体を有しているが、説明の便宜上、図2、図3においてはこれを図示していない。
【0024】
絞り装置14は、第1の絞り体140A、140B、それぞれがリーフ形状を有する第2の絞り体141Ak、141Bk(ただし、kは1≦k≦nを満たす自然数)、第1の駆動装置142A、142B、第2の駆動装置143Ak、143Bk1(ただし、kは1≦k≦nを満たす自然数)、後述する新たな支持機構を有している。
【0025】
第1の絞り体140A、140Bは、それぞれ第2の絞り体141Ak、141Bkに比して放射線源Sに近い側に設けられており、タングステンなどの重金属を素材とする単体である。第1の絞り体140Aと第1の絞り体140Bは、端面を放射線の照射軸Iを間にして第1の方向(図3では、Y方向)に沿って対峙させるように対向配置され、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って矢印Xの方向へ移動して、互いに接近、離反するように、第1の駆動装置142A、142Bによって駆動されるようになっている。
【0026】
第2の絞り体141Ak、141Bkは、第1の絞り体140A、140Bに比して放射線源Sから遠い側に設けられており、タングステンなどの重金属を素材とする複数の絞り体(多分割絞り体)である。第2の絞り体141Akと第2の絞り体141Bkは、上記第1の方向とは略直交する第2の方向(図2では、X方向)に沿って端面を放射線の照射軸Iを間にして対峙させるように対向配置され、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って矢印Yの方向へ移動して、互いに接近、離反するように、第2の駆動装置143A、143Bによって駆動されるようになっている。また、n個の第2の絞り体141A1〜An(及びn個の第2の絞り体141B1〜Bn)は、その間から放射線漏れが発生しないよう密に隣接させてX方向に沿って配列される。
【0027】
図4は、第2の絞り体141Ak、141Bk及び第2の駆動装置143Ak、143Bkを放射線源S側から見た図である。同図に示すように、第2の絞り体141A1〜141An、141B1〜141Bには、それぞれに対応させた駆動装置143A1〜143An、143B1〜143Bnが設けられている。従って、各第2の絞り体141A1〜141An、141B1〜141Bは、各駆動装置143A1〜143An、143B1〜143Bnによって独立に、放射線源Sを中心に含む同心円に沿う円弧状の軌道面に沿って矢印Y方向に接近、離反するように駆動されるようになっている。
【0028】
従って、第1の絞り体140A、140Bを、X方向に互いに接近、離反するように移動させるとともに、第2の絞り体141Ak、141Bkのそれぞれを個別にY方向に互いに接近、離反するように移動させることを組合せることによって、例えば図5に示すような、治療部位の任意形状に近似させた不規則形状の放射線照射野Uを形成することができる。
【0029】
また、本絞り装置14は、複数の第2の絞り体141Ak、141Bkをスムーズ且つ確実に支持するための新たな支持機構を有している。
【0030】
図5は、本絞り装置14が有する第2の絞り体141Ak、141Bkの支持機構を説明するための図である。同図に示すように、本絞り装置14の第2の絞り体141Ak、141Bkのそれぞれには、利用線錘外(すなわち、放射線の遮蔽に使用する部分外)に形成された円弧状の軌道用長穴Lが形成されている。この軌道用長穴Lは、放射線源およびその有為な点S(放射線源)を中心とした円弧状の形状を持ち、X方向に沿って各第2の絞り体141Ak、141Bkに形成される長穴である。
【0031】
また、本絞り装置14は、各第2の絞り体141Akを貫通する表面部材144A及び各第2の絞り体141Bkを貫通する表面部材144Bを有している。この表面部材144A、144Bは、シャフト145A、145Bと、当該シャフト145A、145B外側に設けられた耐摩耗性のブッシュ146A、146B(又はベアリング、カラー素材等)を有している。
【0032】
この表面部材144A(144B)は、軌道用長穴Lの周縁部において第2の絞り体141Ak(141Bk)と接触し、その接点において各絞り体141Ak(141Bk)を支持する。また、第2の絞り体141Ak(141Bk)の内縁部147Ak(147Bk)及び外縁部148Ak(148Bk)は、凸形状に形成されており、利用線錘外に設けられた耐摩耗性のくし状の特殊合金による支持部材(図示せず)によって支持されている。従って、各絞り体141Ak(141Bk)のラジアル方向及びスラスト方向の荷重は、軌道用長穴Lを貫通する表面部材144A(144B)、内縁部147Ak(147Bk)及び外縁部148Ak(148Bk)と嵌号するくし状の部材により、合計三点において支持されることになる。
【0033】
なお、耐摩耗性のブッシュ146A(146B)およびくし状の支持部材は、一体形状でも分割形状でも同様に実施できる。組合せにより、くし状の支持部材またはシャフト145A(145B)を補助用にしても同様に実施できる。また、くし状の支持部材と各絞り体141Ak(141Bk)の勘合部、内縁部147Ak(147Bk)、外縁部148Ak(148Bk)に凹状の溝を設けても同様に実施できる。さらに、ボールを使用した転がり接触によっても同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に、第2の絞り体141Ak、141Bkの移動動作について説明する。第2の絞り体141Ak(141Bk)の外側端部には歯が切られている。この第2の絞り体141Ak(141Bk)の外側端部の歯には、図5に示すようにシャフト150Ak(150Bk)を介して駆動装置143Ak(143Bk)の駆動歯車151Ak(151Bk)が噛み合わされている。この駆動歯車151Ak(151Bk)は、シャフト150Ak(150Bk)を介して、駆動源であるモータ152Ak(152Bk)からウォームギヤ153Ak(153Bk)などの駆動力伝達機構を介して駆動される。なお、駆動量を検出するために、ポテンショメータ154Ak(154Bk)やエンコーダ155Ak(155Bk)が配置されており、これらは絞り体141Ak(141Bk)の位置検出装置として機能する。よって、ポテンショメータ154Ak(154Bk)やエンコーダ155Ak(155Bk)からの情報を基に、モータ152Ak(152Bk)は放射線治療装置1本体の制御装置によって制御され、141Ak(141Bk)が所望の位置に設定される。
【0035】
なお、表面部材144A(144B)は、その表面を耐摩耗性の材質としている。このため、上記機構によって第2の絞り体141Ak(141Bk)が移動する際、磨耗が少なく長期に渡り安定した精度で維持でき、滑り接触による適度な抵抗により絞り体141Ak(141Bk)のガタを最小限に抑えることができる。
【0036】
また、表面部材144A(144B)は、各絞り体141Ak(141Bk)の軌道用長穴Lを貫通した状態で設けられる。このため、軌道用長穴Lの端部が絞り開閉のイン、アウト方向のメカリミットを兼ねることができる。その結果、絞り体141Ak(141Bk)は、別途メカリミットに適合させるための形状を有する必要がなく、その形状を簡素化し部品点数を減らすことが可能となる。
【0037】
なお、上記説明においては、図6に示すような円弧形状の複数の絞り体141Ak、141Bkを有する多分割絞り装置を例とした。従って、軌道用長穴Lの形状は、第2の絞り体141Ak、141Bkの円弧形状(又は、移動軌跡)に対応したものとなっている。これに対し、例えば、例えば図7に示すような照射軸に対して略垂直な面を有する多面体(図7では、矩形状)の複数の絞り体を有する多分割絞り装置の場合には、軌道用長穴Lは、同図に示すような矩形状のものとなる。また、第2の絞り体141Ak、141Bkの形状に拘泥されることなく、くし状の支持部材と各絞り体141Ak(141Bk)の勘合部の形状は、図8(a)、図8(b)に示すように勘合形状は、V字状でもU字状でも構わない。さらに、補助として、第2の絞り体141Ak、141Bkのラジアル方向に沿って、その内縁部147Ak(147Bk)及び外縁部148Ak(148Bk)に小径のローラを間隔をあけて配置し、ボール機構と組合わせて絞り体141Ak、141Bkを支持するようにしてもよい。
【0038】
また、第2の絞り体141Ak、141Bkを細分化すると、駆動装置143Ak、143Bkの配置(特に、駆動歯車151Ak、151Bkの配置)が困難となる。この様な場合には、例えば図9に示すように、駆動装置143Ak、143Bk等を2重構造にして配置することにより、最少容積で納めることが可能となる。また、図10に示すように、1軸を3重にしても同様に実施することができる。
【0039】
また、第2の絞り体141Ak、141Bkを細分化に伴って、駆動装置143Ak、143Bkと電源とを接続するためのケーブルの本数も増える。係る場合には、次の様な構成によってコンパクトなケーブル収納を行うことを可能とし、回転範囲を増やした場合でも絞り装置14のスムーズな動作を可能とする。
【0040】
図11は、絞り装置14を放射線照射面側から放射線照射装置10に向かって眺めた図であり、絞り装置14の一部分を構成する絞り体フレーム40が示されている。この絞り体フレーム40には、その中央部分に放射線源Sからの放射線を通過させるための照射窓41が設けられている。
【0041】
絞り体フレーム40外縁周部分には軌道レール42が設けられている。この軌道レール42は絞り装置14が放射線照射装置10に対して所定角度内で回動する場合の、その所定角度と同じだけの中心角の開きを有している。この中心角にて絞り体フレーム40の外縁周部分に当該絞り体フレーム40と同心円上に展開している。
【0042】
この軌道レール42上にケーブル処理機構44が配置されており、軌道レール42に軌道を案内されて円周方向に移動可能にされている。ケーブル処理機構44には、第2の絞り体141Akに対応する第1のケーブル45Aと、第2の絞り体141Bkに対応する第2のケーブル45Bとの2本が、長手方向に移動自在に通されている。
【0043】
図12は図11にて示した構成を側面から示したものである。絞り体フレーム40の下部には回転架台フレーム46が配置されている。回転架台フレーム46から見て、絞り体フレーム40は所定角度内において回動する。この回動の中心は回転架台フレーム46と絞り体フレーム40の円形状の中心軸と合致している。また、軌道レール42は前出の絞り体フレーム40のみならず、この回転架台フレーム46にも同様に設けられている。設けられる位置は回転架台フレーム46の外周縁部であり、所定の中心角や半径は、前出の絞り体フレーム46に設けられた軌道レール42と同じである。
【0044】
この様な構成において、第1のケーブル45Aの長手方向の動きにより、図示していない回転ローラが受動的に動き、第2のケーブル45Bもこれに連動して動くことになる。軌道レール42によって第1のケーブル45A及び第2のケーブル45Bが案内され、所定位置に収納されることになる。
【0045】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0046】
本放射線絞り装置、又は放射線治療装置によれば、シャフト状の支持部によってリーフ状の各絞り体を軌道用長穴からも支持する構成となっている。従って、例えば各絞り体の周縁部による支持に加えて、重心に近い位置で各絞り体を支持する構成となっている。その結果、重金属からなる各絞り体を、従来に比して安定した状態で支持することができ、信頼性が高い絞り動作を実現することができる。
【0047】
また、各絞り体を重心に近い位置で支持するシャフト状の支持部は、その表面が
耐摩耗性の材質としているため、磨耗が少なく長期に渡り安定した精度で維持でき、滑り接触による適度な抵抗により各絞り体のガタを最小限に抑えることができる。
【0048】
また、各絞り体に設けられた軌道用長穴と、当該軌道用長穴を貫通するように設けられるシャフト状の支持部が付加される主構成であるため、各絞り体毎の支持部品も必要とせず、従来に比して小型で安価な絞り装置を実現することができる。また、調整、修理においける作業負担も少なくすることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、シャフト145A(145B)に対し表面部材144A(144B)が回転可能な構成を有する絞り装置14、及び当該絞り装置14を具備する放射線照射装置10について説明する。
【0050】
図13は、本絞り装置14が有する表面部材144A(144B)及びシャフト145A(145B)を説明するための図である。同図に示すように、表面部材144A(144B)は、シャフト145A(145B)に対して回転可能な構成になっている。また、第2の絞り体141Ak(141Bk)は、軌道用長穴Lの周縁部において表面部材144A(144B)と接触し支持されている。従って、例えば第2の絞り体141Ak(141Bk)がラジアル方向に移動する場合には、表面部材144A(144B)はシャフト145A(145B)を中心として回転しながら、常に異なる位置を接触しつつ軌道用長穴L内を移動する。
【0051】
なお、この様な表面部材144A(144B)及びシャフト145A(145B)の回転機構は、例えば基準値+0.05の直径を有する表面部材144A(144B)に、同基準値−0.05の内径を持つシャフト145A(145B)を圧入することで実現することができる。
【0052】
図14は、本絞り装置14が有する表面部材144A(144B)及びシャフト145A(145B)の他の例を示した図であり、シャフト145A(145B)の長手方向に垂直な平面による表面部材144A(144B)及びシャフト145A(145B)の断面図である。同図に示すように、表面部材144A(144B)は、内輪144A1(144B1)、外輪144A2(144B2)、ボール144A3(144B3)を有している。また、シャフト145A(145B)は、内輪144A1(144B1)内に嵌着されている。従って、係る構成においても、シャフト145A(145B)が第2の絞り体141Ak(141Bk)に対して相対的に移動する場合には、表面部材144A(144B)を、シャフト145A(145B)を中心として回転させつつ、軌道用長穴L内を移動させることができる。
【0053】
以上述べた本絞り装置によれば、シャフトが第2の絞り体に対して相対的に移動する場合には、シャフトを中心として表面部材を回転させることができる。そのため、表面部材と第2の絞り体とが常に同じ接点において接触することを避けることができる。その結果、長期の使用やハードな使用によっても、磨耗が少なく長期に渡り安定した精度で維持でき、滑り接触による適度な抵抗により各絞り体のガタを最小限に抑えることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上本発明によれば、絞り体をスムーズ且つ確実に支持し、小型で信頼性が高く比較的安価な絞り装置、及び当該絞り装置を具備する放射線治療装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る放射線治療装置1の外観図を示している。
【図2】図2は、本実施形態に係る放射線治療装置1が有する絞り装置14の一側面を示した図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る絞り装置14を図2に略垂直な方向に位置する他の側面から見た図である。
【図4】図4は、第2の絞り体141Ak、141Bk及び第2の駆動装置143A、143Bを放射線源S側から見た図である。
【図5】図5は、治療部位の任意形状に近似させた不規則形状の放射線照射野Uの一例を示している。
【図6】図6は、本実施形態に係る絞り装置14が有する第2の絞り体の支持機構を説明するための図である。
【図7】図7(a)は、円弧形状を有する第2の絞り体141Ak、141Bkに形成される軌道用長穴Lの形状を説明するための図である。図7(b)は、矩形形状を有する第2の絞り体141Ak、141Bkに形成される軌道用長穴Lの形状を説明するための図である。
【図8】図8(a)、図8(b)は、第2の絞り体141Ak、141Bkの周縁部の支持部材との勘合部形状を説明するための図である。
【図9】図9は、絞り体141Ak、141Bkを細分化した場合の絞り装置14の一例を説明するための図である。
【図10】図10は、絞り体141Ak、141Bkを細分化した場合の絞り装置14の他の例を説明するための図である。
【図11】図11は、第1の実施形態に係る絞り装置14を放射線照射面側から放射線照射装置10に向かって眺めた図である。
【図12】図12は、図11にて示した構成を側面から示したものである。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る絞り装置14が有する表面部材144A(144B)及びシャフト150Ak(150Bk)を説明するための図である。
【図14】図14は、第2の実施形態に係る絞り装置14が有する表面部材144A(144B)及びシャフト150Ak(150Bk)の他の例を示した図である。
【図15】図15は、従来の多分割絞り装置の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1…放射線治療装置、10…放射線照射装置、11…固定架台、12…回転架台、13…照射ヘッド、14…絞り装置、20…治療台、21…上部機構、22…天板、23…昇降機構、24…下部機構、140A、140B…第1の絞り体、141Ak、141Bk…第2の絞り体、142A、142B…第1の駆動装置、143Ak、143Bk1…第2の駆動装置、144A、144B…支持部、145A、145B…シャフト、146A…ブッシュ、147Ak、147Bk…内縁部、148Ak(148Bk)…外縁部、150Ak、150Bk…シャフト、151Ak、151Bk…駆動歯車、152Ak、152Bk…モータ、153Ak、153Bk…ウォームギヤ、154Ak、154Bk…ポテンショメータ、155Ak、155Bk…エンコーダ、L…軌道用長穴、P…被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と被検体との間に配置され、前記放射線源からの放射線が前記被検体に照射される領域である放射線照射野を成形するための放射線絞り装置であって、
第1の方向に沿って密に隣接して配列され、それぞれが前記第1の方向に貫通する所定形状の穴部を有し、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動可能な複数の絞り体と、
前記複数の絞り体のすべての前記所定形状の穴部を貫通するシャフトと、前記シャフトの表面に設けられ耐摩耗性を有する表面部材と、を有し、前記各穴部の周縁部における接点において前記複数の絞り体を支持する支持ユニットと、
前記複数の絞り体のそれぞれを前記第2の方向に沿って移動させることで、前記放射線照射野を成形する移動ユニットと、
を具備することを特徴とする放射線絞り装置。
【請求項2】
前記所定形状の穴部は、前記複数の絞り体に対応する形状又は前記複数の絞り体の移動軌跡に対応する形状を有することを特徴とする請求項1記載の放射線絞り装置。
【請求項3】
前記第2の方向は、前記放射線源を中心とする円の円周方向であり、
前記複数の絞り体は、前記放射線源を中心とする円の円弧に対応する形状を有すること、
を特徴とする請求項2記載の放射線絞り装置。
【請求項4】
前記第2の方向は、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して略垂直な方向であり、
前記複数の絞り体は、前記照射軸に対して略垂直な面を有する多面体であること、
を特徴とする請求項2記載の放射線絞り装置。
【請求項5】
前記支持ユニットは、前記第2の方向に関する前記穴部の端部において前記絞り体と接触することで、前記移動ユニットによる前記絞り体の前記第2の方向に関する移動限界を規定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の放射線絞り装置。
【請求項6】
前記表面部材は、前記シャフトに対して回転可能であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の放射線絞り装置。
【請求項7】
前記表面部材は、ボールベアリングであることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の放射線絞り装置。
【請求項8】
被検体に対して放射線を照射するための放射線源と、
前記放射線源と前記被検体との間に配置され、前記放射線源からの放射線が前記被検体に照射される領域である放射線照射野を成形するための放射線絞り装置であって、第1の方向に沿って密に隣接して配列され、それぞれが前記第1の方向に貫通する所定形状の穴部を有し、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動可能な複数の絞り体と、前記複数の絞り体のすべての前記所定形状の穴部を貫通するシャフトと、前記シャフトの表面に設けられ耐摩耗性を有する表面部材と、を有し、前記各穴部の周縁部における接点において前記複数の絞り体を支持する支持ユニットと、を有する放射線絞り装置と、
前記複数の絞り体のそれぞれを前記第2の方向に沿って移動させることで、前記放射線照射野を成形する移動ユニットと、
前記移動手段を制御する制御ユニットと、
を具備することを特徴とする放射線治療装置。
【請求項9】
前記所定形状の穴部は、前記複数の絞り体に対応する形状又は前記複数の絞り体の移動軌跡に対応する形状を有することを特徴とする請求項8記載の放射線治療装置。
【請求項10】
前記第2の方向は、前記放射線源を中心とする円の円周方向であり、
前記複数の絞り体は、前記放射線源を中心とする円の円弧に対応する形状を有すること、
を特徴とする請求項9記載の放射線治療装置。
【請求項11】
前記第2の方向は、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して略垂直な方向であり、
前記複数の絞り体は、前記照射軸に対して略垂直な面を有する多面体であること、
を特徴とする請求項9記載の放射線治療装置。
【請求項12】
前記支持ユニットは、前記第2の方向に関する前記穴部の端部において前記絞り体と接触することで、前記移動ユニットによる前記絞り体の前記第2の方向に関する移動限界を規定する請求項8乃至11のうちいずれか一項記載の放射線治療装置。
【請求項13】
前記表面部材は、前記シャフトに対して回転可能であることを特徴とする請求項8乃至12のうちいずれか一項記載の放射線治療装置。
【請求項14】
前記支持ユニットは、ボールベアリングであることを特徴とする請求項8乃至12のうちいずれか一項記載の放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−271956(P2006−271956A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23577(P2006−23577)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】