説明

放射線装置

呼吸に関連する円錐ビームCTスキャニングにおいて、フレーム率の改善は実際には望ましくないことが観察されてきた。このため、本件出願人は、放射線ビームと、放射線ビームの検出器であって、周期的に変化する、調査されるべき対象物を通過した後のビームの2次元イメージを取得するよう設けられた放射線ビームの検出器と、イメージを観察してサイクル中の類似する地点のイメージを選択する処理機構と、周期的にビームを照射させるよう設けられた放射線ビームの制御手段と、を備えた放射線装置を提案する。制御手段は、周波数が0.5〜5Hzの範囲内で、より好ましくは周波数が1〜3Hzの範囲内でビームを照射させることができる。このことは、理想的には、周期的な変動の周波数において6〜10回の範囲内の頻度に対応している。もしサイクルの選択された地点がサイクルの端部であるときには、これらの領域では変化率は最小となるので、役に立つこととなる。このため、2つのサイクル間のわずかな不一致は、小さな影響となるに過ぎない。概して、対象物は患者であり、周期的な変動は、患者の呼吸サイクルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独で、または放射線治療装置と連動して(例えば放射線治療装置に取り付けられて)動作する装置を含むような、放射線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐ビームコンピュータ断層撮影(CBCT)のスキャナーは一般的に知られており、患者の内部構造の有用なイメージを生成する。このようなスキャナーは診断器具として非常に有益であり、また、放射線治療装置と連動して使用し、臓器の位置のリアルタイムの位置確認を行い、治療用の放射線のリアルタイムの案内を行うこともできる。
【0003】
しかしながら、このようなスキャニングは、患者が静かにしていないときには困難を伴ってしまう。3次元の断層撮像は、複数の2次元のイメージから演算され、前提として、これらのイメージは同一の構造物のものでなければならない。もし、患者(または患者の一部)がイメージ間で移動すると、断層撮像は悪化し、および/またはイメージは不自然な結果となってしまう。当然のことながら、呼吸サイクルおよび心臓サイクルによりこのような移動は避けることができない。
【0004】
概して、より高いフレーム率を得るような装置の改善が望ましいと考えられている。このことにより、より短い時間でより多くのイメージを収集することができ、改善された3次元の断層撮像が得られ、および/または患者に必要な時間が減少する。
【0005】
呼吸による不自然な結果の問題を解決するために、出願人は、呼吸サイクルに関連するCBCTスキャニングを提案してきた。このことは、呼吸サイクルを検出してスキャナーの切換を行ったり、あるいは、患者をスキャニングしてイメージの内容から特定のイメージの周期的な位相を確かめたりすることにより行われる。国際公開公報WO2004/06464号および国際公開公報WO2004/066211号には、このようなシステムおよび特定のイメージの位相を決定するための適切なアルゴリズムが記載されている。このことにより、「誤った」位相のイメージは演算の前に破棄される。このような呼吸に関連するCBCT(RCCBCT)により、肺および/または横隔膜に近い構造物の、良好な品質のイメージが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO2004/06464号
【特許文献2】国際公開公報WO2004/066211号
【発明の開示】
【0007】
RCCBCTにおいて、フレーム率の改善は実際には望ましくないことが観察されてきた。より多くのイメージを(または同じ数をより迅速に)得る代わりに、より高いフレーム率により、単に選択アルゴリズムにより破棄されるイメージの数が増大した。このことは、イメージの質の改善またはイメージの取得に必要な時間の改善とはならず、患者は、代償となる利益を得ることなく強い放射線量を受けてしまう。
【0008】
このため、本件出願人は、放射線ビームと、放射線ビームの検出器であって、周期的に変化する、調査されるべき対象物を通過した後のビームの2次元イメージを取得するよう設けられた放射線ビームの検出器と、イメージを観察してサイクル中の類似する地点のイメージを選択する処理機構と、周期的にビームを照射させるよう設けられた放射線ビームの制御手段と、を備えた放射線装置を提案する。
【0009】
制御手段は、周波数が0.5〜5Hzの範囲内で、より好ましくは周波数が1〜3Hzの範囲内でビームを照射させることができる。このことは、理想的には、周期的な変動の周波数において6〜10回の範囲内の頻度に対応している。
【0010】
もしサイクルの選択された地点がサイクルの端部であるときには、これらの領域では変化率は最小となるので、役に立つこととなる。このため、2つのサイクル間のわずかな不一致は、小さな影響となるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による円錐ビームCTスキャナーを、その回転軸に沿って見た図である。
【図2】このようなスキャナーを含むシステムの概略図である。
【図3】本発明によるスキャナーを含む治療装置を示す図である。
【図4】本発明による放射線照射の位相整合の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態は、添付図面を参照して、以下に例示的に記載される。
【0013】
図1は、円錐ビームCTスキャナーを示す。患者10は、様々な適切な形状とすることができるようなソファ12上に支持される。ソファは、一般的には、患者の昇降および長手方向の位置の調整を可能とし、このことは、所望の態様でなされる。
【0014】
X線源14は、放射線の幅広いビーム16を照射するよう設けられている。このビーム16は、患者の治療中心部18に向かって照射されるようになっている。X線源14は、回転支持部20上で治療中心部18の周囲を回転自在となっている。回転支持部は、例えば患者10およびソファ12の周囲にあるX線源が取り付けられたリング状または環状のものとすることができ、または、C字形状のアーム、あるいはX線源を回転させることができるような他の適切な支持部、またはこれらを組み合わせたものとすることができる。
【0015】
また、回転支持部20には、2次元のフラットパネル検出器22がX線源14の反対側に取り付けられており、このフラットパネル検出器22はX線源14と同期して回転するようになっている。回転支持部がC字形状のアームを有している場合は、検出器を反対側のアームに取り付けることによってこのことが達成される。
【0016】
このため、X線源14から発せられた放射線は、患者により部分的に吸収され、減衰した信号がフラットパネル検出器22により検出される。X線源14およびフラットパネル検出器22は、一定の角度範囲を回転し、新しいイメージが取得される。このことは、十分に明確なイメージが取得されてボリュームデータが再構築されるまで繰り返して行われ、概して1回の完全な回転が行われる。
【0017】
図2は、システムを全体的に示す。図1に示すスキャナーが複数のケーブルとともに示されている。これらのケーブルは、X線源14、検出器22および回転支持部20を、複数の演算手段24、26に接続するようになっており、演算手段24、26は、イメージ、X線源の強度(等)、および回転支持部の位置を含む、生成されたデータの処理を行うようになっている。データは様々な適切な手段によって出力され、概してモニター28に表示されるが、このことに限定されることはない。そして、システムは、様々な適切な入力手段により制御される。入力手段としては、概してキーボード30として示されるが、このことに限定されることはない。
【0018】
上述のように、円錐ビームCTシステムにおける再構築されたボリュームデータ中に不自然な結果があることが見いだされる。このことは、患者の呼吸の動きに起因している。このことを解決または緩和するために、演算手段24、26により取得される投影像に、呼吸相関技術が適用される。
【0019】
このような処理を支援するため、参照符号32に示すような呼吸制御システムが設けられている。この呼吸制御システムは、投影像が取得されている間における患者の呼吸の位相を観察するようになっている。データの取得が完了すると、類似する呼吸の位相を含む投影像を、一連のセットから選択可能となっている。そして、選択された投影像は、円錐ビームCT技術を用いるボリュームデータを再構築するのに使用される。その結果、いかなる位相または位相の範囲をも選択可能となり、このことにより、必要に応じて呼吸の影響が考慮される。
【0020】
呼吸制御システムに代えて、患者の横隔膜の位置のような、呼吸の位相を決定するような投影像の特徴を使用することができる。このことは、照射の工程で使用される、関連のイメージを選択するのに用いることができる。
【0021】
ライト34およびブザー36を含む警報システムが設けられており、呼吸の規則的な振幅およびパターンを確実なものとするために、患者に対して視覚的におよび音声により指示を与えるようになっている。当然のことながら、他の警報手段を用いてもよい。(例えば)移動装置を含むような視覚的な指示による他の形態、(例えば)スピーカーや打楽器を含むような音声による他の形態、あるいは制御可能な音発生装置の他の様々な形態であってもよい。
【0022】
さらに、呼吸制御システムに代えて、イメージの位相および使用の際に選択される適切なイメージを解明するために、イメージが分析されるようになっていてもよい。このような分析の例が、国際公開公報WO2004/066211号に開示されている。この公報の内容は、参照のため本願に含まれるものとする。国際公開公報WO2004/066211号の開示内容は、本出願に関連するものであり、必要であれば本出願の補正の基礎として使用することができるというということが読者にとってわかるであろう。
【0023】
図3は、治療用の放射線40の適切な平行ビームを発するよう設けられた、治療用の放射線源38を含むシステムを示す。このようなシステムによれば、スキャニングおよび治療を同時に行うことができる。治療の間にX線源14からの放射線が照射され続ける場合は、放射線装置の出力は、患者の呼吸サイクルに基づいて、放射線源38からの治療用の放射線の照射を制御するのに用いることができるようになる。このことにより、放射線が照射される際に、腫瘍を確実に適切な位置とすることができる。
【0024】
このようなモニタリングは、当然ながら、多くのイメージが放棄されることを意味する。患者に適用される放射線量を制限するために、図4に示すように、X線源14はパルス状のものとされる。一般的な呼吸のサイクル42は、1つの周期が約4秒となっており、すなわち約0.25Hzの周波数となっている。このため、2Hzのパルス率は、1つの呼吸サイクルの間に8つのスキャン44を生成する。もし、呼吸サイクルにおける特定の地点を(任意に)選んだならば、各サイクルにおけるこの地点に近い箇所でイメージ46、48が取得されることがわかるであろう。このことは、(図4に示すように)呼吸サイクルが約0.25Hzしかなく、このためパルス率がちょうど呼吸サイクルの倍数でない場合でも適用できる。呼吸サイクルの制限の一つに対応する、呼吸サイクルにおけるある地点の選択は、この地点における変化率が小さいため、役に立つこととなる。
【0025】
当然のことながら、本発明の範囲から外れることなく、上述の実施形態に対して多くの変更を行うことができるということが理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線ビームと、放射線ビームの検出器であって、周期的に変化する、調査されるべき対象物を通過した後のビームの2次元イメージを取得するよう設けられた放射線ビームの検出器と、イメージを観察してサイクル中の類似する地点のイメージを選択する処理機構と、周期的にビームを照射させるよう設けられた放射線ビームの制御手段と、を備えた放射線装置。
【請求項2】
制御手段は、周波数が0.5〜5Hzの範囲内でビームを照射させる、請求項1記載の放射線装置。
【請求項3】
制御手段は、周波数が1〜3Hzの範囲内でビームを照射させる、請求項1記載の放射線装置。
【請求項4】
制御手段は、周期的な変動の周波数において6〜10回の範囲内の頻度でビームを照射させる、請求項1記載の放射線装置。
【請求項5】
サイクルの選択された地点はサイクルの端部である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線装置。
【請求項6】
対象物は患者である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線装置。
【請求項7】
周期的な変動は、患者の呼吸サイクルである、請求項6記載の放射線装置。
【請求項8】
実質的に、添付図面により参照されるおよび/または添付図面に示される放射線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505562(P2010−505562A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531720(P2009−531720)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009801
【国際公開番号】WO2008/043378
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】