説明

放射線遮蔽用モルタル、これを用いた放射線遮蔽板及び放射線遮蔽容器

【課題】放射性物質を含む汚泥等を収容し長期間に亘ってそれ自体に損傷を生じさせることなく、生活圏から隔離し、放射線を遮蔽すること。
【解決手段】不定形炭素等を除去したCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽用容器である。その肉厚内に鉛板を配してある。水100mLに塩化アンモニウム6.19g及びペンタエリトリトール1.76gを溶解させた第1の溶液と、水50mLにジシアンジアミド1.75gを溶解させた第2の溶液とを混合して第3の溶液を作成し、この第3の溶液に、プロピレングリコール0.02g、CNT5g及び水850mLを加えて撹拌した後に濾過し、不定形炭素成分を除去したCNT分散液を得る。セメント15kgと砂45kgを混合した空練りモルタル60kgに、透明なCNT分散液1000mLを加えて混練し、放射線遮蔽用モルタルを作成し、これで成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原発事故等で放出され敷地外に広く放出された放射性のセシウムやヨウ素又はそれらの崩壊によって生じた放射性のバリウムやキセノンから放射されるベータ線やガンマー線を遮蔽することができる放射線遮蔽用モルタル、これを用いた放射線遮蔽板及び放射線遮蔽容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような趣旨の放射線遮蔽用モルタル、これを用いた放射線遮蔽板及び放射線遮蔽容器については従来の技術を容易に見出しがたいが、中性子の遮蔽をも目的とする高レベルの放射線を遮蔽する放射線遮蔽用コンクリートに関する提案は見出される。
【0003】
特許文献1の発明は、JIS A 5308に規定されるスラッジ固形分を含有して成る放射線遮蔽用コンクリートである。そして、前記スラッジ固形分の配合量は50kg/m 以上であり、かつ前記スラッジ固形分の含水率は5重量%以上であるべきであるとされる。
【0004】
従ってこの特許文献1の発明の放射線遮蔽用コンクリートは、水分含有率の高いスラッジ固形分を含有しているので、中性子線の遮蔽効果が高く、また比重も一般のコンクリートに比較して低下してはいないので、ガンマー線の遮蔽性能も維持されるものであるとされる。これはスラッジ固形分を採用したという点のみが特有の技術であり、それ以外に特別な技術は存在していない。
【0005】
特許文献2の発明は、放射性物質を密封した密封体の周囲を取り囲み、前記密封体から発せられる放射線を遮蔽する放射線遮蔽用コンクリート中に、放射線の放射方向に対して平行又は垂直でない角度αをなして、コンクリートより質量の大きい材質からなるひび割れ誘発目地材を埋設する放射線遮蔽用コンクリートの製造方法である。
また以上において、前記ひび割れ誘発目地材は、その一端が密封体と対向しない側の放射線遮蔽用コンクリートの壁面に位置し、かつその一端に対向する他端が外壁面から放射線遮蔽用コンクリートの厚み方向における、該厚みの15〜50%に位置し、角度αが、放射線の放射方向とひび割れ誘発目地材における一端との交差角であって、30〜50°であるものである。
またひび割れ誘発目地材は、鉛、ステンレス、鋼のいずれかよりなるものである。
更に以上の方法で作成される放射線遮蔽用コンクリートである。
【0006】
従ってこの特許文献2の発明の放射線遮蔽用コンクリートは、密封されている放射性物質から発せられる崩壊熱によって、その内外に温度差が生じ、この温度差によって外壁側の引張応力及び内壁側の圧縮応力が生じ、これによるひび割れの問題が生じるが、これを解決しようとするものであり、解決手段として前記のような材質のひび割れ目地材を前記のような態様で配したものである。
【0007】
特許文献3の発明の放射線遮蔽用コンクリートは、少なくともハイアルミナセメント、電融アルミナからなる細骨材及び粗骨材を含有してなるものである。
そして以上の放射線遮蔽用コンクリートは、更にホウ素含有化合物を含有し、該ホウ素含有化合物がコレマナイトであり、前記粗骨材が電融アルミナからなり、前記ハイアルミナセメントのブレーン比表面積が4000〜5000cm /gである等のものである。
【0008】
従ってこの特許文献3の発明の放射線遮蔽用コンクリートは、放射線を発する施設からの放射線を遮蔽し、内部の中性子核反応による放射化を抑制しようとするものである。ホウ素化合物をハイアルミナセメント等に組み合わせることにより、放射線遮蔽効果に優れると共に放射化し難いコンクリートとすることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−94990号公報
【特許文献2】特開2000−304893号公報
【特許文献3】特開2007−303953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、原発の事故等で放出され、地上、側溝内又は建物上等に堆積した放射性物質をその除染のために地表の削り取り、その他の手段でそれらの場所から除去した場合に、それらの放射性物質を含む汚泥を閉じ込め、長期間に亘って、それ自体に損傷を生じさせることもなく、該放射性物質を含む汚泥を生活圏から隔離保管することができる、放射線を効率的に遮蔽できる放射線遮蔽用モルタル、これを用いた放射線遮蔽板及び放射線遮蔽容器を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1は、CNT(カーボンナノチューブ)を配合したモルタルで作成した放射線遮蔽用モルタルである。
【0012】
本発明の2は、本発明の1の放射線遮蔽用モルタルにおいて、
CNTをモルタルに、重量比で、モルタル:CNT=100:0.0080〜0.015の割合で配合したものである。
【0013】
本発明の3は、本発明の1又は2の放射線遮蔽用モルタルにおいて、
前記CNTとして不定形炭素を含む黒色炭素成分を除去したそれを採用したものである。
【0014】
本発明の4は、本発明の3の放射線遮蔽用モルタルにおいて、
水に塩化アンモニウム及びペンタエリトリトールを、重量比で、水:塩化アンモニウム:ペンタエリトリトール=100:6.04〜6.34:1.72〜1.80の割合で混合して作成した第1の溶液と、
水にジシアンジアミドを、重量比で、水:ジシアンジアミド=50:1.71〜1.79の割合で混合して作成した第2の溶液とを、
前記第1の溶液と第2の溶液とが、重量比で、第1の溶液:第2の溶液=100:47.8〜48.0の割合になるように混合して第3の溶液を作成し、
この第3の溶液にCNT及び希釈水を、重量比で、第3の溶液:CNT:希釈水=150:5:850の割合で混合して撹拌・濾過することで、CNTから不定形炭素を含む黒色炭素分を除去したものである。
【0015】
本発明の5は、本発明の4の放射線遮蔽用モルタルにおいて、
前記第3の混合溶液にCNT及び希釈水に加えてプロピレングリコールを、重量比で、第3の溶液:CNT:希釈水:プロピレングリコール=150:5:850:0.02の割合で混合して撹拌・濾過することで、CNTから不定形炭素を含む黒色炭素分を除去したものである。
【0016】
本発明の6は、本発明の1、2、3、4又は5の放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽板である。
【0017】
本発明の7は、本発明の1、2、3、4又は5の放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器である。
【0018】
本発明の8は、本発明の6の放射線遮蔽板において、
表面又は裏面若しくは内部に鉛板を配したものである。
【0019】
本発明の9は、本発明の7の放射線遮蔽容器において、
外面又は内面若しくは内部に鉛板を配したものである。
【0020】
本発明の10は、本発明の8の放射線遮蔽板において、
前記鉛板の厚さを0.3〜2.0mmの範囲で設定するものである。
【0021】
本発明の11は、本発明の9の放射線遮蔽容器において、
前記鉛板の厚さを0.3〜2.0mmの範囲で設定するものである。
【0022】
本発明の12は、本発明の6、8又は10の放射線遮蔽板において、
硫黄と石炭灰と鉄粉とを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉=25:45:30の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を表面又は裏面若しくはその双方にコーティングしたものである。
【0023】
本発明の13は、本発明の7、9又は11の放射線遮蔽容器において、
硫黄と石炭灰と鉄粉とを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉=25:45:30の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を外面又は内面若しくはその双方にコーティングしたものである。
【0024】
本発明の14は、本発明の6、8又は10の放射線遮蔽板において、
硫黄と石炭灰と鉄粉とジシクロペンタジエンとを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉:ジシクロペンタジエン=25:45:30:1.25の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を表面又は裏面若しくはその双方にコーティングしたものである。
【0025】
本発明の15は、本発明の7、9又は11の放射線遮蔽容器において、
硫黄と石炭灰と鉄粉とジシクロペンタジエンとを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉:ジシクロペンタジエン=25:45:30:1.25の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を外面又は内面若しくはその双方にコーティングしたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の1の放射線遮蔽用モルタルによれば、容易にこれを作成可能であり、かつ作成したそれは、原発事故等で放射された放射性物質を含む汚泥等の放射線を遮蔽する十分な遮蔽能力を有するとともに、そのような比較的多量の水分を含む汚泥等に長期間に亘って接触しても容易にひび割れ等の損傷を生じさせないものでもある。
【0027】
詳細には、モルタルは特定の種類のそれに限定されず、自由に選択可能である。一般的に使用されるポルトランドセメントと細骨材からなるモルタルにCNTを混合し、適量の水を加えて混練することにより容易に作成できるものである。なお、CNTは、単層及び多層のそれの混合CNTを用いる。
【0028】
また以上のように作成された本発明の1の放射線遮蔽用モルタルによれば、これによって成形した部材の表面から不定形炭素を含む黒色炭素成分が出てきてしまう不都合はあるが、CNTを含むことにより、放射線の遮蔽能力は十分なものとなり、かつモルタル中に分散したCNTが強化材として機能するため、放射性物質を含有し、水分を含んだ汚泥がこれに長期間に亘って接触しても、ひび割れなどの劣化が生じ難くなるものである。それ故、この放射線遮蔽用モルタルで容器等を作成し、その中に放射性物質を含んだ汚泥等を収納した場合には、その厚さを従来のコンクリート等により構成した容器より十分薄く構成しても、それ以上の放射線遮蔽効果を得ることができる。
【0029】
本発明の2の放射線遮蔽用モルタルによれば、本発明の1のそれと同様の効果を、より確実に得ることができる。
【0030】
本発明の3の放射線遮蔽用モルタルによれば、その作成は、本発明の1と同様であるが、得られる放射線遮蔽用モルタルは、前記不定形炭素を含む黒色炭素分が除去されているので、その表面はモルタル本体の本来の色調であり、手で触って汚れるような物ではなくなる。従ってこれで容器等を作成した場合には、その保管とか移動の際の取り扱いがしやすいものとなる。放射線遮蔽能力に関しては、CNTから不定形炭素等の不純物が除外される結果、それを含む物と比べて、若干のその向上が認められる。強度等も同様であり、不定形炭素等を含む物より向上が認められ、放射性物質を含む含水汚泥等に長期に亘って接触しても容易にひび割れ等が発生することもない。
【0031】
本発明の4の放射線遮蔽用モルタルによれば、簡単にかつ確実に不定形炭素を含む黒色炭素成分を除去し、殆どCNTのみをモルタルに混合することが可能になる。これによって作成した黒色炭素成分を含む問題が解決され、黒色炭素成分を含まないCNTを用いた既述の利点も当然に得られることになる。
【0032】
本発明の5の放射線遮蔽用モルタルによれば、本発明の4の放射線遮蔽用モルタルで生じうる問題を容易に解決することができる。本発明の4の放射線遮蔽用モルタルは、前記したように、優れたものであるが、用いる一部の化学物質にそれが漏れると人体に悪影響を及ぼす虞のあるジシアンジアミドを含んでいる。これによる悪影響を少量のプロピレングリコールを添加することで、容易に解決している。
【0033】
本発明の6の放射線遮蔽板によれば、前記本発明の1〜5の放射線遮蔽モルタルのいずれかで作成するものであるから、いずれによって作成したものであれ、従来のコンクリートやモルタルで作成した物に比較してより薄い板に作成して、より高い放射線遮蔽効果を得ることができる。それぞれの放射線遮蔽モルタルの有する効果を有するものとなる。主たる効果である放射線の遮蔽効果及びそれ自体の強度向上効果のいずれもが向上した物となっている。例えば、放射線遮蔽効果に関して、セシウム137から放射されるガンマー線の透過線量を1/10にする厚さで比較すると、本発明の6の放射線遮蔽板は、普通コンクリートによる放射線遮蔽板の厚さと比較して、約70%の厚さでそれが可能となる(なお、セシウム137は、それ自体はガンマー線を放射しないが、ベータ崩壊して生じたバリウム137mがガンマー線を放射するので、便宜的にそのように表示する。以下も同様である。)。
【0034】
本発明の7の放射線遮蔽容器は、本発明の6の放射線遮蔽板に代えて放射線遮蔽容器に構成したものであるから、その効果の殆どが本発明の6の放射線遮蔽板と同様である。生活圏から隔離すべく閉じた空間内に放射性廃棄物等を閉じ込めることが出来る点のみが異なるものである。
【0035】
本発明の8の放射線遮蔽板によれば、これが、本発明所定の放射線遮蔽モルタルで作成する板材の表裏面に鉛板を接合し又は内部に鉛板を埋設したものであるため、更に高い放射線遮蔽効果を発揮するものとなる。必要に応じて、一層の高い放射線遮蔽効果を、薄い鉛板を組み合わせることにより、重量の増加を最小限度に抑え、かつ厚さを極めて薄く保持しながら、確保することができるものである。
【0036】
本発明の9の放射線遮蔽容器は、本発明の8の放射線遮蔽板に代えて放射線遮蔽容器に構成したものであるから、その効果の殆どは本発明の8の放射線遮蔽板と同様である。生活圏から隔離すべく、閉じた空間内に放射性汚染物を閉じ込めることが出来る点のみが異なるものである。
【0037】
本発明の10の放射線遮蔽板によれば、所定の放射線遮蔽モルタル製の板材に配する鉛板の厚さを0.3〜2.0mmの間で適正に調整することで、当該の放射線遮蔽板自体の厚さを一定に保持しながら、放射線遮蔽能力を適正に調整し、これによって隔離しようとする放射性汚染物等に対応することができる。
【0038】
本発明の11の放射線遮蔽容器は、本発明の10の放射線遮蔽板に代えて放射線遮蔽容器に構成したものであり、生活圏から隔離すべく、閉じた空間内に放射性物質を含んだ汚泥等の放射性汚染物を閉じ込めることが出来る点を除いては、その効果は本発明の10の放射線遮蔽板と同様である。
【0039】
本発明の12の放射線遮蔽板又は本発明の13の放射線遮蔽容器によれば、いずれもその表面に施す塗布材の作用により、放射線の遮蔽率が若干向上し、防水機能及び耐久性も向上する。放射線の遮蔽率は、2mmの厚さでコーティングした場合で約5%の向上である。また不定形炭素を含む黒色炭素分を除去していないCNTを使用した場合は、その黒色炭素分が板又は容器の表面から徐々に外部に出てしまうことがあるが、このコーティングによってこれも完全に防止できる。更に前記黒色炭素分を除去するための一部の化学物質としてジシアンジアミドを用いた場合であっても、このコーティングによってその健康阻害作用はほぼ完全に防止できることにもなる。
【0040】
本発明の14の放射線遮蔽板又は本発明の15の放射線遮蔽容器によれば、それぞれの表裏面又は内外面に配する塗布材を、他の効果を完全に維持しながら難燃性にすることができる。また硫黄臭を減少させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は実施例1の放射線遮蔽容器の概略平面図、(b)は正面概略断面図。
【図2】(a)は実施例4の放射線遮蔽容器の概略平面図、(b)は正面概略断面図。
【図3】(a)は実施例5の放射線遮蔽容器の概略平面図、(b)は正面概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0043】
この実施例1は、モルタルにCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽用容器に関する。
【0044】
セメント15kgと細骨材(砂)45kgを均一に混合した空練りモルタルに、CNT0.005kgを混合し、更に若干空練り後、該CNT混合モルタル60.005kgに水1Lを加えて撹拌し、放射線遮蔽用モルタルを作成した。
前記セメントとしては最も一般的なポルトランドセメントを使用し、前記細骨材である砂は、篩にかけて2mm以下の粒径に調整したものを使用した(以下の他の実施例においても同様)。前記CNTは、製造の過程で生じた不定形炭素等の黒色炭素成分を含むそれであり、かつ単層及び多層のそれが混合状態になっているものを採用した(以下の他の実施例においても同様)。
【0045】
こうして作成したフレッシュモルタルである前記放射線遮蔽用モルタルを予め作成しておいた、図示しない容器本体用及び蓋体用の型枠に打ち込んで、図1(a)、(b)に示すような放射線遮蔽容器1を作成した。これは、公知の通常のモルタル製品を作成するのと同様の手順によって行ったものである。
【0046】
この実施例1の放射線遮蔽容器1は、容器本体1aと蓋体1bとからなる。容器本体1aは、図1(a)、(b)に示すように、有底の円筒状であり、上部開口部の周囲には二段の段差部が形成してある。この容器本体1aの直径は500mm、高さは470mm、底部の厚さ及び周側部の厚さはいずれも50mmに構成したものである。
【0047】
また蓋体1bは、直径500mmの円板状の本体の下面中央に、前記容器本体1aの上部開口部の周囲に構成した二段の段差部に対応する二段の段差部を周囲に備えた突部が構成してあり、該蓋体1bを前記容器本体1aの上部に配置すると、その下面中央の突部が、該容器本体1aの上部開口部に嵌合状態となるようになっている。この蓋体1bはその上面から下面中央の突部の下面までの厚さを50mmに構成してある。周囲の容器本体1aの上縁に載る部分の厚さは30mmになっている。
【0048】
この実施例1の放射線遮蔽容器は、その表面は黒色である。手で触れると若干手が黒色に汚れる。黒色成分は不定形炭素等の黒色炭素分である。肉厚部の厚さが50mmと薄いので、放射線遮蔽容器としては非常に軽量のものとなった。
またこの実施例1の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、32.7%であった。
【実施例2】
【0049】
この実施例2は、モルタルにCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器に関し、実施例1のそれと、材料、その配合割合、手順及び作成する放射線遮蔽容器の形状等のいずれに関しても同様に行ったものである。実施例1と異なるのは作成する放射線遮蔽容器の容器本体の底部及び周側部の厚さと、蓋体の上面から下面中央の突部の下面までの厚さのみであり、具体的には、実施例1のそれらが50mmであるのに対して、実施例2のそれらは70mmとし、20mmほど厚くした点だけである。
【0050】
この実施例2の放射線遮蔽容器は、実施例1のそれと同様にその表面は黒色である。手で触れると若干手が黒色に汚れる。また同様に黒色成分は不定形炭素等の黒色炭素分である。実施例1のそれよりは厚いが、放射線遮蔽用容器としては、厚さが70mmと十分に薄いので、やはり放射線遮蔽容器としては非常に軽量のものとなった。
またこの実施例2の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、36.4%であった。
【実施例3】
【0051】
この実施例3は、モルタルに不定形炭素等を除去したCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器に関する。
【0052】
先ずCNTから不定形炭素等の不要な黒色炭素成分を除去する。
水100mLに塩化アンモニウム6.19g及びペンタエリトリトール1.76gを溶解させた第1の溶液と、水50mLにジシアンジアミド1.75gを溶解させた第2の溶液とを混合して第3の溶液を作成し、この第3の溶液に、プロピレングリコール0.02gと共に、CNT5g及び水850mLを加えてよく撹拌した後に濾過する。こうして不要な黒色の成分が除去され、透明なCNT分散液が得られる。
【0053】
前記濾過は濾紙を使用して行ったもので、粗大な不定形炭素成分等を除去したものである。
【0054】
他方、セメント15kgと細骨材(砂)45kgを均一に混合した空練りモルタルを準備し、この空練りモルタル60kgに、前記透明なCNT分散液1000mLを加えて十分に混練し、放射線遮蔽用モルタルを作成した。
【0055】
こうして作成したフレッシュモルタルである前記放射線遮蔽用モルタルを予め作成しておいた、図示しない容器本体用及び蓋体用の型枠に打ち込んで、実施例2と全く同一寸法形状の放射線遮蔽容器を作成した。この場合も、公知のモルタル製品を作成するのと同様の手順によって行ったものである。
【0056】
この実施例3の放射線遮蔽容器は表面がモルタル色である。使用したCNTから不定形炭素等の黒色炭素成分が除去されているので、手で触れても汚れるような虞は全くない。黒色炭素成分の除去にジシアンジアミドを用いているが、プロピレングリコールを更に配合することで、その人の健康に対する悪影響を回避できるようにしている。またこの実施例3の放射線遮蔽用容器は、実施例2のそれと同様に、厚さが70mmと十分に薄いので非常に軽量のものとなった。
またこの実施例3の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、39.5%であった。
【実施例4】
【0057】
この実施例4は、モルタルにCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器であって、その肉厚内に鉛板を配したものに関する。
【0058】
セメント15kgと細骨材(砂)45kgを均一に混合した空練りモルタルに、CNT0.005kgを混合し、更に若干空練り後、該CNT混合モルタル60.005kgに水1Lを加えて撹拌し、放射線遮蔽用モルタルを作成した。
【0059】
こうして作成したフレッシュモルタルである前記放射線遮蔽用モルタルを予め作成しておいた、図示しない容器本体用及び蓋体用の型枠にそれぞれ打ち込んで放射線遮蔽用容器2を構成する容器本体2a及び蓋体2bを成形する。それぞれの外形寸法は、実施例1のそれらと全く同様である。上記の容器本体用及び蓋体用のそれぞれの型枠には、予め1mmの厚さの鉛板2cを配置しておき、図2(a)、(b)に示すように、鉛板2cは、容器本体2aにおいては、その内部、より具体的には周側部2a1の内側及び底部2a2の内側に埋設状態に、蓋体2bにおいては、その内部、より具体的には厚み方向の中間付近に埋設状態に、それぞれなるように配置する。
【0060】
このように成形したこの実施例4の放射線遮蔽容器2の容器本体2a及び蓋体2bは、いずれも実施例1及び2のそれらと同様に、表面が黒色である。
またこの実施例4の放射線遮蔽容器2は、容器本体2a及び蓋体2bの内部に鉛板2cを埋設したものであるが、鉛板2cは厚さが1mmであり、容器本体2a及び蓋体2bはいずれも厚さが50mmと十分に薄いので非常に軽量のものとなった。
更にこの実施例4の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は79.2%であった。
【実施例5】
【0061】
この実施例5は、モルタルにCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器であって、その肉厚内に鉛板を配し、かつ内外面にコーティングを施したものに関する。
【0062】
放射線遮蔽用モルタルの作成及び鉛板を埋設した放射線遮蔽容器の容器本体及び蓋体の成形までは実施例4と全く同様に行う。このように成形した放射線遮蔽容器4は、図3(a)、(b)に示すとおりであり、容器本体3a及び蓋体3bは、成形時点ではいずれも表面が黒色である。そしてこのように成形した容器本体3aの内外面及び蓋体3bの内外面には、下記のコーティングを行う。
【0063】
硫黄250g、石炭灰450g、鉄粉300g及びジシクロペンタジエン12.5gを混合し、均一に撹拌した上で、これを加熱用容器中に入れて140℃に加熱し、溶融状態になった混合液をコンプレッサで圧力をかけて送り出し、前記容器本体3aの内外面及び蓋体3bの内外面を噴射装置でコーティングする。コート3dの厚さは2~3mmとする。なお、前記石炭灰及び鉄粉はいずれも2mm以下に粒径を揃えたものである。
【0064】
この実施例5の放射線遮蔽容器3は表面がほぼ茶褐色となっている。表面は、硫黄等よりなるコート材の色である。このコート材は120℃程度に加熱した場合はねずみ色であるが、徐々に温度を上げると茶褐色になる。この実施例5では140℃に加熱したので茶褐色になっていた。使用した放射線遮蔽用モルタルは、CNTから黒色炭素成分を除去していないので、黒色になっていたが、これは完全に被覆され、外部に漏れる虞は全くないものとなっている。またこのコート材によるコート3dは、非常に耐久性が高く、密度が高いので、外部との隔離が確実になり、コーティングによってモルタル表面の酸化が長期に亘って回避できる。防水性も向上する。
【0065】
またこの実施例5の放射線遮蔽用容器は、容器本体3a及び蓋体3bの内部に鉛板3cを埋設したものであるが、鉛板3cは厚さが1mmであり、容器本体3a及び蓋体3bはいずれも厚さが50mmと十分に薄いので非常に軽量のものとなった。
更にこの実施例5の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は84.4%であった。
【実施例6】
【0066】
この実施例6は、モルタルにCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽用容器であって、その肉厚内に鉛板を配し、かつ内外面にコーティングを施したものに関する。
【0067】
この実施例6は、実施例5と殆ど同一であり、異なるのは放射線遮蔽容器の容器本体の底部及び周側部の厚さと、蓋体の上面から下面中央の突部の下面までの厚さのみであり、具体的には、実施例5のそれらがいずれも50mmであるのに対して、実施例6のそれらは70mmであり、20mmほど厚い点のみである。
【0068】
この実施例6の放射線遮蔽容器は作用効果の面でも実施例5のそれと殆ど同様である。以下には異なる点のみ示す。
この実施例6の放射線遮蔽容器は、容器本体及び蓋体の厚さが70mmと実施例5のそれより厚くなったが、コンクリートによって作成される一般のそれと比較すれば、十分に薄いので非常に軽量のものである。
更にこの実施例6の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は93.0%であった。
【実施例7】
【0069】
この実施例7は、モルタルに不定形炭素等を除去したCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽用容器であって、その肉厚内に鉛板を配したものに関する。
【0070】
先ずCNTから不定形炭素等の不要な黒色炭素成分を除去する。
水100mLに塩化アンモニウム6.19g及びペンタエリトリトール1.76gを溶解させた第1の溶液と、水50mLにジシアンジアミド1.75gを溶解させた第2の溶液とを混合して第3の溶液を作成し、この第3の溶液に、プロピレングリコール0.02gと共に、CNT5g及び水850mLを加えてよく撹拌した後に濾過する。こうして不要な黒色の成分を除去され、透明なCNT分散液が得られる。
【0071】
前記濾過は濾紙を使用して行ったもので、粗大な不定形炭素成分等を除去したものである。
【0072】
他方、セメント15kgと細骨材(砂)45kgを均一に混合した空練りモルタルを準備し、この空練りモルタル60kgに、前記透明なCNT分散液1000mLを加えて十分に混練し、放射線遮蔽用モルタルを作成した。
【0073】
こうして作成したフレッシュモルタルである前記放射線遮蔽用モルタルを予め作成しておいた、図示しない容器本体用及び蓋体用の型枠にそれぞれ打ち込んで放射線遮蔽容器を構成する容器本体及び蓋体を成形する。それぞれの外形寸法は、実施例4、5のそれらと全く同様である。従って、ここでは、同一の符号を使用して説明する。上記の容器本体用及び蓋体用のそれぞれの型枠には、予め1mmの厚さの鉛板2cを配置しておき、実施例4に関する図2(a)、(b)に示すように、鉛板2cは、容器本体2aにおいては、その内部、より具体的には周側部2a1の内側及び底部2a2の内側に埋設状態に、蓋体2bにおいては、その内部、より具体的には厚み方向の中間付近に埋設状態に、それぞれなるようにしたものである。
【0074】
こうして作成された実施例7の放射線遮蔽容器2は表面がモルタル色である。使用したCNTから不定形炭素等の黒色炭素成分が除去されているからであり、接触しても汚れることはない。黒色炭素成分の除去にジシアンジアミドを用いているが、プロピレングリコールを更に配合して人の健康に対する悪影響を回避できるようにしている。
またこの実施例7の放射線遮蔽用容器2は、内部に鉛板2cを配してあるが、それは1mmの厚さのものに過ぎず、これ自体の厚さも50mmと十分に薄いので非常に軽量のものとなっている。
またこの実施例7の放射線遮蔽容器2は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、84.1%であった。
【実施例8】
【0075】
この実施例8は、モルタルに不定形炭素等を除去したCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器であって、その肉厚内に鉛板を配したものに関する。
【0076】
この実施例8は、実施例7と殆ど同一であり、異なるのは放射線遮蔽容器の容器本体の底部及び周側部の厚さと、蓋体の上面から下面中央の突部の下面までの厚さのみであり、具体的には、実施例7のそれらがいずれも50mmであるのに対して、実施例8のそれらは70mmであり、20mmほど厚い点のみである。
【0077】
この実施例8の放射線遮蔽容器は作用効果の面でも実施例7のそれと殆ど同様である。以下には異なる点のみ示す。
この実施例8の放射線遮蔽容器は、容器本体及び蓋体の厚さが70mmと実施例7のそれより厚くなったが、コンクリートによって作成される一般のそれと比較すれば、十分に薄いので非常に軽量のものである。
更にこの実施例8の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は93.4%であった。
【実施例9】
【0078】
この実施例9は、モルタルに不定形炭素等を除去したCNTを配合した放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器であって、その肉厚内に鉛板を配し、かつ内外面に表面を保護するコーティングを施したものに関する。
【0079】
実施例9の放射線遮蔽容器は、実施例7の放射線遮蔽容器を作成し、その容器本体及び蓋体の双方の内外面に以下のコーティングを施したものである。
【0080】
硫黄250g、石炭灰450g、鉄粉300g及びジシクロペンタジエン12.5gを混合し、均一に撹拌した上で、これを加熱用容器中に入れて145℃に加熱し、溶融状態になった混合液をコンプレッサで圧力をかけて送り出し、前記容器本体の内外面及び蓋体の内外面に噴射装置でコーティングを施す。コーティング厚さは2~3mmとする。なお、前記石炭灰及び鉄粉はいずれも2mm以下に粒径を揃えたものである。
【0081】
この実施例9の放射線遮蔽容器は、実施例5のそれと同様に、表面がほぼ茶褐色となっている。表面は、以上の硫黄等よりなるコート材の色である。この実施例9では145℃に加熱したので茶褐色になっていた。使用した放射線遮蔽用モルタルは、CNTから黒色炭素成分を除去しているので、黒色成分が外部に出てくる問題はないが、表面が完全に被覆され、コート材によってモルタル表面の酸化が長期に亘って回避できる。このコート材によるコートは、非常に耐久性が高く、密度が高いので、外部との隔離が確実になるのがその理由である。防水性も向上する。
【0082】
この実施例9の放射線遮蔽容器は、容器本体及び蓋体の厚さが70mmあるが、コンクリートによって作成される一般のそれと比較すれば、十分に薄いので非常に軽量のものである。
更にこの実施例9の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は96.1%であった。
【0083】
<比較例1>
この比較例1は一般的なモルタルで作成した放射線遮蔽用容器に関する。
セメント15kgと細骨材(砂)45kgを均一に混合した空練りモルタルに、水1Lを加えて撹拌し、フレッシュモルタルを作成した。
前記セメントとしては、実施例1〜9で使用したのと同様の最も一般的なポルトランドセメントを使用し、前記細骨材である砂も、実施例1〜9で使用したものと同様に、篩にかけて2mm以下の粒径に調整したものを使用した。
【0084】
こうして作成した前記フレッシュモルタルを予め作成しておいた、図示しない容器本体用及び蓋体用の型枠に打ち込んで、実施例1のための図1(a)、(b)に示す放射線遮蔽容器1と全く同様の外形寸法の比較例1の放射線遮蔽容器を作成した。これは、公知の通常のモルタル製品を作成するのと同様の手順によって作成したものである。
【0085】
この比較例1の放射線遮蔽容器は、実施例1〜9のそれと同様に、容器本体と蓋体とからなる。実施例1のそれと、前記のように全く同一の外形寸法であるから、容器本体は、有底の円筒状であり、上部開口部の周囲には二段の段差部が形成してある。この容器本体の直径は500mm、高さは470mm、底部の厚さ及び周側部の厚さはいずれも50mmに構成したものである。
【0086】
また蓋体は、直径500mmの円板状の本体の下面中央に、前記容器本体の上部開口部の周囲に構成した二段の段差部に対応する二段の段差部を周囲に備えた突部が構成してあり、該蓋体を前記容器本体の上部に配置すると、その下面中央の突部が、該容器本体の上部開口部に嵌合状態となるようになっている。この蓋体はその上面から下面中央の突部の下面までの厚さを50mmに構成してある。周囲の容器本体の上縁に載る部分の厚さは30mmになっている。
【0087】
またこの比較例1の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、20%であった。
【0088】
<比較例2>
この比較例2は一般的なモルタルで作成した放射線遮蔽容器であって、比較例1の放射線遮蔽容器とはその一部の寸法のみが異なるものである。すなわち、放射線遮蔽容器を構成する容器本体の厚さ、より具体的には、その周側部と底部の厚さが、比較例1では、50mmであるのに対し、比較例2では、70mmであり、放射線遮蔽容器を構成する他の要素である蓋体の厚さが、比較例1では、50mmであるのに対して、比較例2では、70mmであることである。他の寸法は全て同一である。
【0089】
この比較例2の放射線遮蔽容器は、後記放射線遮蔽試験に従って試験した結果、ガンマー線に対するその放射線遮蔽率は、25%であった。
【0090】
<放射線遮蔽試験>
試験方法:測定対象汚泥の放射する放射線量を室外の一定地点の一定高さ位置で測定し、その測定値から予め測定しておいた該一定地点の該一定高さ位置の空間線量の値を減算し、得られた値を測定対象汚泥の放射線量(汚泥放射線量)とする。
前記測定対象汚泥を収納した放射線遮蔽容器を前記室外の一定地点の一定高さ位置に配置し、その外部の所定位置で、放射線量を測定し、その測定値から予め測定しておいた該一定地点の該一定高さ位置の空間線量の値を減算し、得られた値を放射線遮蔽容器を透過した測定対象汚泥の放射線量の値(透過放射線量)とする。
放射線遮蔽容器の放射線遮蔽率は、
放射線遮蔽率=(汚泥放射線量−透過放射線量)/汚泥放射線量×100
で求めた。
【0091】
以上において、
基準となる測定対象汚泥は、福島第1原発の排水路空採取した汚泥であり、用いた放射線測定装置は、環境放射線モニタ PA-1000 Radi(株式会社堀場製作所)である。この放射線測定装置の仕様は、以下の表1に示すとおりである。









【0092】
【表1】

【0093】
<考察>
実施例1、2は、一定割合でCNTを配合したモルタルで作成した放射線遮蔽容器であり、これをCNTを配合していない比較例1、2と比較すると、前者の方が遮蔽率が高く、後者の方が低いことから、CNTを配合することにより、モルタルの放射線遮蔽能力が向上することが分かる。
【0094】
またCNTから不定形炭素等の黒色炭素成分を除去すると、当然、これを配合したモルタルで作成した放射線遮蔽容器はモルタル色となり、触れても黒色に汚れるようなことはなくなるが、そのように作成した実施例3の放射線遮蔽容器の放射線遮蔽率と、不定形炭素等を除去しないCNTを配合したモルタルで作成した実施例2の放射線遮蔽容器とを比較すると(両者は肉厚部の厚さを含む寸法形状の全てが一致している)、実施例3のそれの方が約3%程遮蔽率が高い。モルタルに配合するCNT中の不純物が減少することにより、遮蔽率が向上することになったと理解できる。
【0095】
実施例6の放射線遮蔽容器と実施例9の放射線遮蔽容器とは、後者が不定形炭素を除去したCNTを配合したモルタルを用いているのに対して、前者は除去しないCNTを配合したモルタルを用いている点が異なるのみである。後者の方が遮蔽率が3%程向上しているのは以上と符合する。
【0096】
また硫黄等よりなるコート材は、密度が高く、耐久性が極めて高いものであり、これを施すと、放射線遮蔽容器の表面が保護され、これによってその酸化が長期に亘って防止され、防水性も向上するが、このコートを施した実施例5の放射線遮蔽容器の放射線遮蔽率と、同一寸法形状のこのコートを施していない実施例4の放射線遮蔽容器のそれとを比較すると、実施例5の方が5%程高い。すなわち、このコートによって放射線遮蔽率が向上することが分かる。
【0097】
また実施例8の放射線遮蔽容器と、実施例9の放射線遮蔽容器とは、前記コートの有無のみがその違いであるが、それらの放射線遮蔽率を比較すると、ここでもコートを付することによって3%に近い放射線遮蔽率の向上が認められる。
【0098】
実施例1の放射線遮蔽容器と実施例2の放射線遮蔽容器、実施例5の放射線遮蔽容器と実施例6の放射線遮蔽容器、及び実施例7の放射線遮蔽容器と実施例8の放射線遮蔽容器は、それぞれそれらを構成する容器本体の周側部及び底部の厚さ並びに蓋体の厚さのみが異なる、すなわち、それぞれ前者が50mmであるのに対して後者が70mmである点のみが異なる。それぞれの放射線遮蔽率について、前者のそれと後者のそれとを比較すると、当然の結果であるが、いずれも厚さの厚い後者の方が遮蔽率が高い結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、放射線遮蔽用モルタル、放射線遮蔽板及び放射線遮蔽容器の製造分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 放射線遮蔽容器
1a 容器本体
1b 蓋体
2 放射線遮蔽容器
2a 容器本体
2a1 周側部
2a2 底部
2b 蓋体
2c 鉛板
3 放射線遮蔽容器
3a 容器本体
3b 蓋体
3c 鉛板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNTを配合したモルタルで作成した放射線遮蔽モルタル。
【請求項2】
CNTをモルタルに、重量比で、モルタル:CNT=100:0.0080〜0.015の割合で配合した請求項1の放射線遮蔽用モルタル。
【請求項3】
前記CNTとして不定形炭素を含む黒色炭素分を除去したそれを採用した請求項1又は2の放射線遮蔽用モルタル。
【請求項4】
水に塩化アンモニウム及びペンタエリトリトールを、重量比で、水:塩化アンモニウム:ペンタエリトリトール=100:6.04〜6.34:1.72〜1.80の割合で混合して作成した第1の溶液と、
水にジシアンジアミドを、重量比で、水:ジシアンジアミド=50:1.71〜1.79の割合で混合して作成した第2の溶液とを、
前記第1の溶液と第2の溶液とが、重量比で、第1の溶液:第2の溶液=100:47.8〜48.0の割合になるように混合して第3の溶液を作成し、
この第3の溶液にCNT及び希釈水を、重量比で、第3の溶液:CNT:希釈水=150:5:850の割合で混合して撹拌・濾過することで、CNTから不定形炭素を含む黒色炭素分を除去することとした請求項3の放射線遮蔽用モルタル。
【請求項5】
前記第3の混合溶液にCNT及び希釈水に加えてプロピレングリコールを、重量比で、第3の溶液:CNT:希釈水:プロピレングリコール=150:5:850:0.02の割合で混合して撹拌・濾過することで、CNTから不定形炭素を含む黒色炭素分を除去した請求項4の放射線遮蔽用モルタル。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5の放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽板。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5の放射線遮蔽用モルタルで作成した放射線遮蔽容器。
【請求項8】
表面又は裏面若しくは内部に鉛板を配した請求項6の放射線遮蔽板。
【請求項9】
外面又は内面若しくは内部に鉛板を配した請求項7の放射線遮蔽容器。
【請求項10】
前記鉛板の厚さを0.3〜2.0mmの範囲で設定する請求項8の放射線遮蔽板。
【請求項11】
前記鉛板の厚さを0.3〜2.0mmの範囲で設定する請求項9の放射線遮蔽容器。
【請求項12】
硫黄と石炭灰と鉄粉とを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉=25:45:30の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を表面又は裏面若しくはその双方にコーティングした請求項6、8又は10の放射線遮蔽板。
【請求項13】
硫黄と石炭灰と鉄粉とを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉=25:45:30の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を外面又は内面若しくはその双方にコーティングした請求項7、9又は11の放射線遮蔽容器。
【請求項14】
硫黄と石炭灰と鉄粉とジシクロペンタジエンとを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉:ジシクロペンタジエン=25:45:30:1.25の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を表面又は裏面若しくはその双方にコーティングした請求項6、8又は10の放射線遮蔽板。
【請求項15】
硫黄と石炭灰と鉄粉とジシクロペンタジエンとを、重量比で、硫黄:石炭灰:鉄粉:ジシクロペンタジエン=25:45:30:1.25の割合で混合し、その混合物を120〜150℃に加熱・撹拌し、生じた流動体を外面又は内面若しくはその双方にコーティングした請求項7、9又は11の放射線遮蔽容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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