説明

放射線量の遡及的計算、及び改善された治療プランニング

結合型磁気共鳴(MR)・放射線治療システム10は、ボア型磁石12を含む。該磁石は、放射線ビームが該磁石を貫いて半径方向に進行することを可能にする磁石放射線透過領域16を有する。また、分割型傾斜磁場コイル18が、磁石放射線透過領域16に整列された傾斜磁場コイル放射線透過領域20を含む。前記磁石に沿って配置された放射線源24が、磁石放射線透過領域16及び傾斜磁場コイル放射線透過領域20を介して検査領域14に放射線ドーズを投与する。投与量ユニット66が、標的ボリューム30及び少なくとも1つの非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を、標的ボリューム30及び該少なくとも1つの非標的ボリュームの処置前、処置中及び/又は処置後の画像表現に基づいて決定する。計画作成プロセッサ60が、決定された実際の放射線量に基づいて、放射線治療計画の少なくとも1つの残りの放射線ドーズを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、放射線治療の改善された計画及び送達のための方法及びシステムに関する。本出願は特に、MRイメージング(MRI)と放射線照射とを同時に行うことが可能な結合型の磁気共鳴撮像・放射線治療システムに適用されるが、その他の撮像モダリティ若しくはスペクトロスコピーモダリティ、又はその他の種類の治療にも適用され得る。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、腫瘍学における一般的な治療技術であり、治療効果を達成するため、すなわち、癌性組織を根絶するために、或る線量(ドーズ)の高エネルギーガンマ線、粒子ビーム又はその他の放射線が患者の身体に送達される。この線量は、幾つかの理由により、分割され、すなわち、数週間の期間に分散される。放射線ビームは標的(ターゲット)などへの経路上の健常組織中を進行するので、分割により、その部分同士の間に非効率な癌組織が修復することを許すことなく、治療中にダメージを受けた健常組織が回復することが可能にされる。
【0003】
治療効果を維持しながら、望ましくないダメージを最小限にするため、治療に先立って、分割スケジュールを最適なビーム形状及び方向とともに詳述する治療計画が作成される。典型的に、腫瘍及び周囲組織の例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像といった静止ボリューム(容積)画像が取得される。コンピュータ化された計画作成システムが、自動的あるいは半自動的に、標的ボリューム、健常な周囲組織、例えば脊髄若しくは分泌腺などの損傷リスクのある敏感な領域、例えば骨などの放射線遮断組織若しくは放射線減衰組織などを輪郭描写する。そして輪郭データを用いて、計画作成システムは、放射線量の配分及び分割スケジュールを放射線ビームの向き及び形状とともに詳細に記述する最適な治療計画を決定する。
【0004】
放射線治療に先立ち、標的ボリュームの例えば蛍光透視画像、x線画像又はこれらに類する画像が、標的ボリューム位置を放射線治療座標系に揃えるようにして撮影され、現在の治療計画の精度が検証される。位置決め精度、器官の位置の日々の変化、呼吸、鼓動、腫瘍サイズの増大/縮小、及び例えば膀胱の充満などのその他の生理的過程により、治療計画は治療過程の間に精度を失い得る。このような不確かさを考慮して、意図した治療効果を達成するため、現行手法は、静止ボリューム画像から決定された標的ボリュームより僅かに大きいボリュームに照射する必要がある。このやり方は、健常組織へのダメージを増大させ、余分な副作用を生じさせ得る。現在の治療計画が有意に変化する場合、例えば、標的ボリュームのサイズが治療によって縮小した場合、それを取り消して新たな治療計画を生成することができるが、これは時間を消費するものとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、上述及びその他の問題を解決する新たな改善されたMRIベース画像誘導放射線治療ドーズプランニングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、放射線量送達のための方法は、複数の放射線ドーズを含む放射線治療計画を生成することを含む。標的ボリューム及び非標的ボリュームの処置前画像表現が取得され、該処置前画像表現に基づいて、前記標的ボリューム及び少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置が決定される。複数の放射線ビーム軌道と少なくとも1つの放射線ビーム形状とを含む放射線ドーズが投与される。前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された実際の放射線量が、決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定される。
【0007】
他の一態様によれば、磁気共鳴誘導型放射線治療装置は、検査領域内に静磁場を生成するボア型磁石を含み、該ボア型磁石は、放射線ビームが該ボア型磁石を貫いて、その中に配置された被検体へと半径方向に進行することを可能にする磁石放射線透過領域を有するように構成される。当該磁気共鳴誘導型放射線治療装置はまた、磁石放射線透過領域に整列された傾斜磁場コイル放射線透過領域を含む間隙を画成する分割型傾斜磁場コイルを含み、該分割型傾斜磁場コイルは、選択された傾斜磁場パルスを撮像領域に印加するように構成される。無線周波数(RF)コイルが、検査領域内の被検体内に磁気共鳴を誘起して操作し、且つ/或いは検査領域からの磁気共鳴データを収集するように構成される。放射線源が、ボア型磁石に沿って配置され、磁石放射線透過領域及び傾斜磁場コイル放射線透過領域を介してボア型磁石のアイソセンターへ放射線ビームを送信するように位置付けられる。スキャナコントローラが、画像表現を生成するように傾斜磁場コイル及びRFコイルを制御する。
【発明の効果】
【0008】
1つの利点は、健常組織の放射線被曝が低減されることにある。
【0009】
以下の詳細な説明を読んで理解することで、本発明の更なる利点が当業者に認識されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、様々な構成要素及びその配置、並びに様々なステップ及びその編成の形態を取り得る。図面は、単に好適実施形態を例示するためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【図1】結合型磁気共鳴(MR)・放射線治療システムを示す概略図である。
【図2】放射線治療のための一手法を示すフローチャートである。
【図3】放射線ドーズ送達のための他の一手法を示すフローチャートである。
【図4】放射線ドーズ送達のための他の一手法を示すフローチャートである。
【図5】放射線ドーズ送達のための他の一手法を示すフローチャートである。
【図6】放射線ドーズ送達のための他の一手法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照するに、結合型磁気共鳴(MR)・放射線治療システム10は、検査領域14内に時間的に均一なB磁場を生成する主磁石12を含んでいる。主磁石は、環状あるいはボア型の磁石、C字状のオープン磁石、その他の設計のオープン磁石、又はこれらに類するものとし得る。該磁石は、例えばガンマ線、x線又は粒子ビームなどの放射線ビームが該磁石を通過することを可能にする磁石放射線透過領域16を含んでいる。一実施形態において、主磁石12はボア型磁石である。磁石放射線透過領域16は、放射線ビームがボアのアイソセンターを通る半径方向に進行することを可能にするよう、円周方向に配置されている。主磁石に隣接配置された傾斜磁場コイル18が、磁気共鳴信号を空間エンコーディングすること、又は磁化スポイリング磁場勾配を生成することなどのために、B磁場に対して選択された軸に沿って磁場勾配を生成するよう機能する。傾斜磁場コイル18は、磁石放射線透過領域16に整列された傾斜磁場コイル放射線透過領域20を含んでおり、それにより、主磁石12及び傾斜磁場コイル18を通り抜けて検査領域14内の被検体22まで、予測可能なように、すなわち、放射線透過領域16、20の全体での吸収が一定であるように、放射線ビームが進行することが可能にされている。傾斜磁場コイル18は、3つの直交する方向(典型的に、軸方法すなわちz方向、横方向すなわちx方向、及び縦方向すなわちy方向)における磁場勾配を作り出すように構成された複数のコイルセグメントを含み得る。
【0012】
放射線ビームは、主磁石12に沿って配置され且つ放射線透過領域16、20に隣接して配置された例えば線形加速器などの放射線源24を発生源とする。アブソーバ26が、不所望方向に進行する放射線源24からの放射線を吸収する。コリメータ28が、治療を標的ボリューム30に局在化させるように放射線ビームを整形する助けとなる。一実施形態において、コリメータは、放射線ビームの幾何学形状を調節する例えば多葉コリメータ(multi-leaf collimator;MLC)などの調整可能なコリメータである。MLCの複数のリーフ(葉)は、被検体の周りの放射線ビームの各角度位置から標的ボリューム30の形状に合致させるよう放射線ビームを共形整形することを可能にする。
【0013】
放射線源24とアブソーバ26とコリメータ28とを有する放射線源アセンブリ32は、レールシステム34に取り付けられている。レールシステム34は、放射線源アセンブリを放射線透過領域16、20の周囲で複数の位置まで回転させることを可能にし、それにより、対応する数の放射線ビーム軌道が可能にされる。他の例では、放射線源アセンブリは、連続体の上で、その断面及び強度をも調整しながら、連続的に移動することができる。認識されるように、例えば固定式レールシステム、非固定式レールシステム、単一レールシステム、多レールシステム、Cアーム、又はこれらに類するものなど、その他の位置決めシステム及び方法も意図される。一実施形態において、放射線源アセンブリはボア型磁石12の周りで360°回転可能である。しかしながら、臨床実践において、そのような広い範囲は必ずしも必要でない。他の一実施形態において、放射線透過領域16、20の周囲に、各放射線源アセンブリが1つの実質的に固定された軌道を有する複数の放射線源アセンブリが配置される。この構成は、放射線治療セッションの継続時間を短縮することを可能にし、より大型あるいは心配な被検体に有利になり得る。なお、放射線源アセンブリ及びレールシステムは、主磁石又は傾斜磁場コイルに干渉しないよう、あるいは干渉されないよう、非強磁性材料から構築されることができる。
【0014】
例えば全身無線周波数コイルなどの無線周波数(RF)コイルアセンブリ40が、検査領域に隣接して配置される。RFコイルアセンブリは、被検体の整列された双極子に磁気共鳴を励起するための無線周波数パルスを生成する。無線周波数コイルアセンブリ40はまた、撮像領域から生じる磁気共鳴信号を検出するよう機能する。全身コイルは、単一のコイルであってもよいし、アレイの部分としての複数のコイル素子を有していてもよい。RFコイルアセンブリは、放射線透過領域16、20を覆い隠さないように構成され、あるいは、放射線透過領域16、20に隣接して放射線透過であるように構成される。
【0015】
被検体の磁気共鳴データを収集するため、被検体は検査領域14内、好ましくは、主磁場のアイソセンター又はその付近に配置される。スキャンコントローラ42が勾配コントローラ44を制御する。勾配コントローラ44は、傾斜磁場コイルに、選択された磁気共鳴イメージング又はスペクトロスコピーのシーケンスに適当な選択傾斜磁場パルスを、撮像領域に印加させる。スキャンコントローラ42はまたRF送信器46を制御し、RF送信器46は、RFコイルアセンブリに、磁気共鳴励起・操作Bパルスを生成させる。スキャンコントローラ42はまた、全身コイル又は局部RFコイルに接続されたRF受信器48を、該コイルから磁気共鳴信号を受信するように制御する。
【0016】
受信器48からの受信データは、データバッファ50に一時的に格納され、磁気共鳴データプロセッサ52によって処理される。磁気共鳴データプロセッサは、画像再構成及び磁気共鳴スペクトロスコピーなどを含む技術的に知られた様々な機能を実行することができる。再構成された磁気共鳴画像、スペクトロスコピー読み出し結果、及びその他の処理されたMRデータは、画像メモリ56に格納され、グラフィックユーザインタフェース58上に表示される。グラフィックユーザインタフェースはまた、スキャンのシーケンス及びプロトコルを選択することなどのためにスキャンコントローラ42を制御するよう臨床医が使用可能なユーザ入力装置を含んでいる。
【0017】
放射線治療を受け入れるのに先立ち、計画作成プロセッサ60が、自動的に、あるいはユーザ誘導によって、分割された放射線治療計画を生成する。各治療計画は、複数の部分又は複数の放射線ドーズを含んでいる。各放射線ドーズは、規定の放射線量、複数の放射線ビーム軌道、及び少なくとも1つの放射線ビーム形状(断面)を含む。放射線治療に使用される放射線の量は、グレイ(Gy)単位で測定され、治療される腫瘍の種類、大きさ及び病期に応じて変化する。例えば、60Gyの放射線量を要求する放射線治療計画は、30回の2Gyの放射線投与計画に分割されることができ、各放射線投与計画が週に5日、トータル6週間で施される。各セッションにおいて、放射線は例えば20軌道といった複数の軌道に配分され、それらの軌道に沿って、そのセッションの線量のうちの等量部分又は可変量部分が送達される。典型的に、大人用の放射線投与計画は1.8−2.0Gyであり、子供用では1.5−1.8Gyである。
【0018】
放射線ビームの軌道及び形状を決定するため、検出ユニット62が、より詳細に後述するように、画像処理技術及び/又はボリューム記述モデルを用いて高解像度3D画像から標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭を決定することによって、それらのボリュームを検出する。画像処理技術は、自動あるいは半自動でのセグメント分割、エッジ検出、又は主成分分析などの如何なる組み合わせを含んでいてもよく、また、検出を更に促進するために、ボリュームの形状、テクスチャ又は動きを記述するモデルと組み合わされてもよい。決定された輪郭は、後の使用のため、検出ユニット62それ自体内のメモリに記憶される。一実施形態において、高解像度3D画像表現は、結合型MR・放射線治療システム10によって取得されたMR画像表現であり、輪郭描写のために画像メモリ56から取り出される。他の例では、高解像度3D画像表現は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)、x線、x線蛍光透視、超音波、又はこれらに類するものなどの、その他の撮像モダリティを用いて取得されてもよい。
【0019】
計画作成プロセッサ60は、決定された輪郭を用いて、個々の放射線ドーズを生成し、それらを当該プロセッサそれ自体内のメモリに格納する。例えば放射線遮断組織若しくは放射線減衰組織などの特定の非標的ボリューム、並びに組織、器官若しくは分泌腺のような敏感な組織は、放射線を受けるのを避けるべきである。計画作成プロセッサは、非標的ボリュームを不所望なダメージから救いながら標的ボリュームの放射線被曝を最大化するビーム軌道を決定する。残念ながら、これらのボリュームの位置及び形状は、例えば呼吸、膀胱容量、肺の膨張/収縮、体重増加/減少、腫瘍サイズ、器官の位置の日常変化、又はこれらに類するものなどの多数の生理的変化によって、日々変動する。僅かに大きい領域に照射することによってオーバー補償すること、又は完全に新しい治療計画を生成することに代えて、各治療に後に標的ボリューム及び非標的ボリュームの各部分に送達された線量を決定することによって、現在の治療計画を更新することが可能である。送達された放射線量に基づいて、それに続く放射線ドーズ、又はその後のドーズの全てを変更することができる。
【0020】
図2を参照するに、一態様において、放射線量が送達された後、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の線量が、処置前画像に基づいて決定される。放射線量の投与に先立ち、スキャナコントローラ42が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの3D処置前画像表現を取得するようにMRシステムを制御する。処置前画像は、検出ユニット62が標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定するための低解像度3D画像表現とし得る。計画作成プロセッサ60は、現在の標的ボリューム30の位置を放射線源アセンブリ32の座標系にアライメント(位置合わせ)する。必要に応じて、アライメントを容易にするために、外科的に埋め込まれたマーカ及び/又はランドマーク(目印)が使用され得る。放射線コントローラ64が、現在の放射線ドーズに従ったビーム軌道及び形状で処置(治療)を施すために、放射線源アセンブリ32、すなわち、その回転位置、MLC28のリーフ、及び放射線源24を制御する。処置後、投与量ユニット66が、現在のビーム軌道と、現在のビーム形状と、処置前画像表現から決定された輪郭及び/又は位置とを用いて、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を決定する。計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームに送達された実際の放射線に従って、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを更新する。
【0021】
図3を参照するに、第2の態様において、放射線量が送達された後、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の線量が、処置前画像と処置後画像とに基づいて決定される。放射線量の投与後、スキャナコントローラ42が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの処置後画像表現を取得するようにMRシステムを制御する。検出ユニット62が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定する。投与量ユニット66が、現在のビーム軌道と、現在のビーム形状と、処置前画像表現と処置後画像表現との間での、決定された輪郭及び/又は位置の変化とに基づいて、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を決定する。処置前画像表現内での標的ボリューム30及び非標的ボリュームの位置と、処置後画像表現内でのそれらとを比較することにより、決定される実際の線量の精度が向上され得る。計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームに送達された実際の放射線に従って、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを更新する。
【0022】
図4を参照するに、第3の態様において、放射線量が送達された後、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の線量が、処置前画像と動きモデルとに基づいて決定される。放射線量の投与に先立ち、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの3D処置前画像表現を取得し、且つ例えば呼吸センサ、ECGセンサ又はこれらに類するものなどの外部センサ68から動き信号を取得するように、スキャナコントローラ42がMRシステムを制御する。検出ユニット62が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定するとともに、外部センサからの信号に基づいて動きモデルのパラメータを決定する。動きモデルは、処置中の標的ボリューム30及び非標的ボリュームの位置を予測するものである。計画作成プロセッサ60は、現在の標的ボリューム30の位置を放射線源アセンブリ32の座標系にアライメントする。必要に応じて、アライメントを単純化するために、外科的に埋め込まれたマーカ及び/又はランドマークが使用され得る。放射線コントローラ64が、現在の放射線ドーズに従ったビーム軌道及び形状で処置を施すために、放射線源アセンブリ32、すなわち、その回転位置、MLC28のリーフ、及び放射線源24を制御する。処置後、投与量ユニット66が、現在のビーム軌道と、現在のビーム形状と、処置前画像表現から決定された輪郭及び/又は位置と、決定された動きモデルとを用いて、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を決定する。処置中の標的ボリューム30及び非標的ボリュームの位置を予測することにより、決定される実際の線量の精度が向上され得る。計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームに送達された実際の放射線に従って、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを更新する。
【0023】
図5を参照するに、第4の態様において、放射線量が送達された後、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の線量が、処置前画像と複数の3D処置中画像とに基づいて決定される。放射線量の投与に先立ち、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの3D処置前画像表現を取得するように、スキャナコントローラ42が結合型MR・放射線治療システム10を制御する。検出ユニット62が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定し、それらから、計画作成プロセッサ60が、現在の標的ボリューム30の位置を放射線源アセンブリ32の座標系にアライメントする。必要に応じて、アライメントを単純化するために、外科的に埋め込まれたマーカ及び/又はランドマークが使用され得る。放射線コントローラ64が、現在の放射線ドーズに従ったビーム軌道及び形状で処置を施すために、放射線源アセンブリ32、すなわち、その回転位置、MLC28のリーフ、及び放射線源24を制御する。処置中に、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの複数の3D処置中画像表現を取得するように、スキャナコントローラ42が結合型MR・放射線治療システム10を制御する。処置後、検出ユニット62が、処置中画像表現から標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定する。投与量ユニット66が、現在のビーム軌道と、現在のビーム形状と、処置前画像表現及び処置中画像表現から決定された輪郭及び/又は位置とを用いて、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を決定する。処置中に標的ボリューム30及び非標的ボリュームの実際の位置を周期的にモニタすることにより、決定される実際の線量の精度が向上され得る。遅めの時間尺度の3D処置中画像表現によって、呼吸運動を説明することができる。計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームに送達された実際の放射線に従って、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを更新する。
【0024】
図6を参照するに、第5の態様において、放射線量が送達された後、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の線量が、処置前画像と複数の2D/1D処置中画像とに基づいて決定される。複数の2D処置中画像間の短めの時間間隔、及び複数の1Dナビゲータパルス間の更に短い時間間隔により、より速いボリュームの脈動運動を説明することができる。放射線量の投与に先立ち、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの3D処置前画像表現を取得するように、スキャナコントローラ42が結合型MR・放射線治療システム10を制御する。検出ユニット62が、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定し、それらから、計画作成プロセッサ60が、現在の標的ボリューム30の位置を放射線源アセンブリ32の座標系にアライメントする。必要に応じて、アライメントを単純化するために、外科的に埋め込まれたマーカ及び/又はランドマークが使用され得る。放射線コントローラ64が、現在の放射線ドーズに従ったビーム軌道及び形状で処置を施すために、放射線源アセンブリ32、すなわち、その回転位置、MLC28のリーフ、及び放射線源24を制御する。処置中に、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの複数の2D/1D処置中画像表現を取得するように、スキャナコントローラ42が結合型MR・放射線治療システム10を制御する。処置後、検出ユニット62が、2D/1D処置中画像表現から標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定する。投与量ユニット66が、現在のビーム軌道と、現在のビーム形状と、処置前画像表現及び処置中画像表現から決定された輪郭及び/又は位置とを用いて、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を決定する。処置中に、より速い時間分解能で、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの実際の位置をモニタすることにより、決定される実際の線量の精度が向上され得る。計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームに送達された実際の放射線に従って、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを更新する。他の例では、検出ユニット62は、2D/1D処置中画像表現に基づいて動きモデルを決定し、該動きモデルが、実際の放射線量を決定するために使用される。
【0025】
一実施形態において、計画作成プロセッサ60は、残りの放射線治療計画、すなわち、その後の放射線ドーズの少なくとも1つ又は全てを自動的に更新する。他の一実施形態において、放射線計画は、例えば医師又は臨床医といったユーザの誘導の下で更新される。医師は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの輪郭及び位置を、グラフィックユーザインタフェース58上で確認する。治療計画を決定する際に使用される高解像度画像表現、処置前画像表現、処置中画像表現、及び処置後画像表現は、ボリュームの輪郭及び位置を描写して、グラフィックユーザインタフェース58上に表示される。入力装置を用いて、医師は標的ボリューム30と、非標的ボリューム、すなわち、敏感な組織又は器官などとを特定することができる。
【0026】
他の一実施形態において、計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの全ての画像表現をレジストレーション(見当合わせ)し、レジストレーションされた画像表現を、医師による評価のために、グラフィックユーザインタフェース58上に表示する。治療計画中の複数時点の全体を通してのボリュームへの変化に基づいて、医師は、現在の治療計画を進めるべきか、治療計画の残りの放射線ドーズを更新すべきか、あるいは治療計画を取り消すべきかを選択することができる。他の例では、計画作成プロセッサ60は、標的ボリューム30及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を、医師による評価のため、治療計画を決定する際に使用された高解像度画像表現、処置前画像表現、処置中画像表現、及び処置後画像表現のうちの1つにレジストレーションされたカラーマップの強度として表示する。
【0027】
他の一実施形態において、MR画像表現のコントラストを高めるために、例えばガドリニウム(Gd)ベースの造影剤、超常磁性体酸化鉄(super-paramagnetic iron oxide;SPIO)及び微小SPIO(ultra-small SPIO;USPIO)ベースの造影剤、又はマンガン(Mn)ベースの造影剤など、造影剤が被検体22内に導入される。造影剤は、輪郭検出及びモデルパラメータの精度を向上させることができる。造影剤は、放射線治療計画を生成するための高解像度ボリューム画像表現を取得するのに先立って投与されるとともに、放射線治療計画を更新するための処置前画像表現を取得するのに先立って投与される。
【0028】
好適実施形態を参照して本発明を説明した。以上の詳細な説明を読んで理解した当業者は、変更及び変形に気付くであろう。本発明は、添付の請求項の範囲又はその均等範囲に入る限りにおいて、そのような全ての変更及び変形を含むものとして解されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射線ドーズを含む放射線治療計画を生成するステップ;
標的ボリューム及び非標的ボリュームの処置前画像表現を取得するステップ;
前記処置前画像表現に基づいて、前記標的ボリューム及び少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定するステップ;
複数の放射線ビーム軌道と少なくとも1つの放射線ビーム形状とを含む放射線ドーズを投与するステップ;及び
前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された実際の放射線量を、決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定するステップ;
を有する放射線量送達のための方法。
【請求項2】
前記放射線ドーズを投与するステップに先立って、前記標的ボリュームの決定された位置を、放射線源アセンブリの座標系にアライメントするステップ、
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定された前記実際の放射線量に基づいて、生成された前記放射線治療計画のうちの少なくとも1つの残りの放射線ドーズを更新するステップ、
を更に含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
放射線ドーズを投与するステップの後に、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの処置後画像表現を取得するステップ;
前記処置後画像表現に基づいて、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定するステップ;及び
前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、前記処置前画像表現及び前記処置後画像表現の双方から決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定するステップ;
を更に含む請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
外部センサから動き信号を取得するステップ;
前記処置前画像表現から決定された前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置と、取得された前記動き信号とに基づいて、動きモデルを決定するステップ;及び
前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状と、決定された前記動きモデルとに基づいて決定するステップ;
を更に含む請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
放射線ドーズを投与するステップ中に、前記標的ボリューム及び非標的ボリュームの複数の処置中画像表現を取得するステップ;
前記処置中画像表現に基づいて、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定するステップ;及び
前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、前記処置前画像表現及び前記処置中画像表現から決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定するステップ;
を更に含む請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の処置中画像表現は、前記標的ボリューム及び少なくとも1つの非標的ボリュームの3次元(3D)画像表現、2次元(2D)画像表現及び1次元(1D)画像表現のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの残りの放射線ドーズを更新するステップは、自動的あるいは半自動的に実行される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記標的ボリューム及び非標的ボリュームの各ボクセルに送達された前記実際の放射線量を表示するステップ、
を更に含む請求項3乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサ。
【請求項11】
放射線治療装置及び磁気共鳴(MR)スキャナを制御するプロセッサを、請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法を実行するように制御するコンピュータプログラム、を格納したコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項12】
検査領域内に静磁場を生成するボア型磁石であり、放射線ビームが該ボア型磁石を貫いて、その中に配置された被検体へと半径方向に進行することを可能にする磁石放射線透過領域を有するように構成されたボア型磁石;
前記磁石放射線透過領域に整列された傾斜磁場コイル放射線透過領域を含む間隙を画成する分割型の傾斜磁場コイルであり、選択された傾斜磁場パルスを前記検査領域に印加するように構成された傾斜磁場コイル;
前記検査領域内の被検体内に磁気共鳴を誘起して操作し、且つ/或いは前記検査領域からの磁気共鳴データを収集するように構成された無線周波数(RF)コイル;
前記ボア型磁石に沿って配置された放射線源であり、前記磁石放射線透過領域及び前記傾斜磁場コイル放射線透過領域を介して前記ボア型磁石のアイソセンターへ前記放射線ビームを送信するように位置付けられる放射線源;及び
画像表現を生成するように前記傾斜磁場コイル及び前記RFコイルを制御するスキャナコントローラ;
を有する磁気共鳴(MR)誘導型放射線治療装置。
【請求項13】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法を実行するようにプログラムされたプロセッサベースのコントローラ、
を更に含む請求項12に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項14】
複数の放射線ドーズを含む放射線治療計画を生成する計画作成ユニット;
処置前MR画像表現から標的ボリューム及び少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定する検出ユニット;
複数の放射線ビーム軌道と少なくとも1つの放射線ビーム形状とを含む放射線ドーズを前記標的ボリュームに投与するように放射線源アセンブリを制御する放射線コントローラ;及び
前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各ボクセルに送達された実際の放射線量を、決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定する投与量ユニット;
を更に含む請求項12又は13に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項15】
前記計画作成ユニットは、前記放射線ドーズを投与することに先立って、前記標的ボリュームの決定された位置を前記放射線源アセンブリの座標系にアライメントする、請求項14に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項16】
前記計画作成ユニットは、決定された前記実際の放射線量に基づいて、生成された前記放射線治療計画のうちの少なくとも1つの残りの放射線ドーズを更新する、請求項14又は15に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項17】
前記検出ユニットは、処置後MR画像表現から前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定し;且つ
前記投与量ユニットは、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、前記処置前MR画像表現及び前記処置後MR画像表現の双方から決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定する;
請求項14乃至16の何れか一項に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項18】
動き信号を生成する外部センサを更に含み;
前記投与量ユニットは、前記処置前MR画像表現から決定された前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置に基づいて、動きモデルを決定し;且つ
前記投与量ユニットは、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状と、決定された前記動きモデルとに基づいて決定する;
請求項14乃至17の何れか一項に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項19】
前記検出ユニットは、前記放射線ドーズの投与中に取得された複数の処置中MR画像表現から、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの輪郭及び位置を決定し;且つ
前記投与量ユニットは、前記標的ボリューム及び前記少なくとも1つの非標的ボリュームの各領域に送達された前記実際の放射線量を、前記処置前MR画像表現及び前記処置中MR画像表現から決定されたそれらの輪郭及び位置と、前記放射線ビーム軌道と、前記少なくとも1つの放射線ビーム形状とに基づいて決定する;
請求項14乃至18の何れか一項に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。
【請求項20】
前記複数の処置中画像表現は、前記標的ボリューム及び少なくとも1つの非標的ボリュームの3次元(3D)画像表現、2次元(2D)画像表現及び1次元(1D)画像表現のうちの少なくとも1つである、請求項14乃至19の何れか一項に記載の磁気共鳴誘導型放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506519(P2013−506519A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532686(P2012−532686)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054189
【国際公開番号】WO2011/042820
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】