説明

放水圧力制御装置、方法及びプログラム

【課題放水銃と電動弁との配管距離が相違しても安定した放水圧力制御を可能とする。
【解決手段】 連続制御処理部40は、圧力センサ30の検出圧力Pと火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力Poとの圧力偏差ΔPを検出し、圧力偏差ΔPが所定範囲を超える範囲では圧力偏差をなくすように電動弁11の開度を制御信号により連続制御する。間欠制御処理部42は、圧力偏差ΔPが所定範囲内では、圧力偏差をなくすように圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により電動弁11の開度を制御する。間欠制御信号のインターバル期間はインターバル期間調整部52により必要に応じて設定変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒区域の火災を走査型火災検出器で検出して消火用水を放水する放水銃システムの放水圧力制御装置、方法及びプログラムに関する。

【背景技術】
【0002】
従来、競技場、展示会場などの広い監視区域を有する施設の消火設備として放水銃システムが設置されている。放水銃システムは、走査型火災検出器による光学的な水平及び垂直走査により監視区域を監視しており、火災の炎によるエネルギーによる受光信号から火災を検出して制御対象となる火源位置を演算し、放水銃を水平旋回により火源位置に指向させ、火源までの距離に応じた放水圧力の制御で消火用水を散水して消火するようにしている。
【0003】
放水銃の放水圧力制御は、放水銃の放水圧力を圧力センサで検出し、火源までの距離に基づいて設定された目標放水圧力との偏差を零とするように、放水銃に対し加圧消火用水を供給する配管に設けた電動弁の開度をフィードバック制御している。
【0004】
更に従来の放水圧力制御にあっては、電動弁の開度のフィードバック制御により圧力偏差が規定範囲に収束してきた場合、それまでの連続的な制御から間欠的な制御に切替え、安定的に放水圧力を目標放水圧力に制御するようにしている。この間欠的な放水圧力制御は、オン期間とオフ期間をもつ間欠制御信号を繰り返し出力することで電動弁の開度を制御しており、間欠制御信号のオン期間とオフ期間は圧力偏差に比例して変化させている。

【特許文献1】特公平5−21588号公報
【特許文献2】特開2004−248934号公報
【特許文献3】特開2004−261478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の放水圧力制御にあっては、放水銃と電動弁の間の配管距離が設備により異なっており、このような設置環境において放水銃に設けた圧力センサにより放水圧力を検出して電動弁を制御した場合、電動弁の開度を変化させてから放水銃から実際に放水する圧力センサで検出した検出圧力との間に配管距離に依存した若干の時間差が生ずるため、配管距離によっては目標圧力と検出圧力の圧力偏差が零に収束せずにハンチングし、電動弁の開度が不安定になり、安定した放水圧力の制御が困難になる恐れがあった。
【0006】
本発明は、放水銃と電動弁との配管距離が相違しても安定した放水圧力制御を可能とする放水圧力制御装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、放水圧力制御装置を提供する。本発明の放水圧力制御装置は、警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、放水銃の放水圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出圧力と前記火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出し、圧力偏差が所定範囲を超える範囲では圧力偏差をなくすように電動弁の開度を制御信号により連続制御し、圧力偏差が所定範囲内では圧力偏差をなくすように圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により電動弁の開度を制御する制御部と、間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、制御部は、間欠制御信号のオン期間、オフ期間及びインターバル期間を圧力偏差に比例して変化させる。また制御部は、所定範囲内での圧力偏差に応じて変化する係数を設定し、係数を固定設定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間に乗じて前記圧力偏差に応じたオン期間、オフ期間及びインターバル期間を決定する。
【0009】
制御部は、所定範囲を決める閾値を与える圧力偏差に対応して係数の最大値を設定すると共に、圧力偏差零に対応して係数の最小値を設定し、最大値と最小値の間で圧力偏差に応じて係数を変化させる。
【0010】
本発明は、放水銃装置の放水圧力制御方法を提供する。本発明は、警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、放水銃の放水圧力を検出する圧力センサとを備えた放水銃システムの放水圧力制御方法に於いて、
圧力センサの検出圧力と前記火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出する偏差検出ステップと、
圧力偏差が所定範囲を超える範囲では、圧力偏差をなくすように電動弁の開度を制御信号により連続制御する連続制御ステップと、
圧力偏差が所定範囲内では、圧力偏差をなくすように圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により電動弁の開度を制御する間欠制御ステップと、
必要に応じて間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整ステップと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明は、放水銃制御盤のコンピュータにより実行されるプログラムを提供する。本発明のプログラムは、警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、放水銃の放水圧力を検出する圧力センサとを備えた放水銃システムの制御盤のコンピュータに、
圧力センサの検出圧力と火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出する偏差検出ステップと、
圧力偏差が所定範囲を超える範囲では、前記圧力偏差をなくすように電動弁の開度を制御信号により連続制御する連続制御ステップと、
圧力偏差が前記所定範囲内では、圧力偏差をなくすように圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により電動弁の開度を制御する間欠制御ステップと、
必要に応じて前記間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整ステップと、
を実行させる。
【0012】
なお、本発明の放水圧力制御方法及びプログラムの詳細は、本発明の放水圧力制御装置と基本的に同じになる。

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧力偏差が規定範囲内に収束した際に行われる電動弁の間欠制御について、オン期間とオフ期間をもつ間欠制御信号につき、オフ期間に続いて待ち時間として機能するインターバル期間を新たに設定したため、オン期間での電動弁の開度制御で配管距離に依存した時間遅れをもって放水銃の放水圧力が変化しても、オフ期間に加えてインターバル期間が付加されたことで、その間に放水銃の圧力変化が制御後の値に静定し、静定後に次の間欠制御に移行することで、目標圧力に収束せずにハンチングすることを確実に防止し、放水圧力を目標圧力に確実に安定させることができる。
【0014】
また間欠制御信号のインターバル期間を調整自在としているため、放水銃と電動弁の配管距離が設計段階と現場段階で相違していたような場合にも、制御プログラムのパラメータを設計レベルに戻って修正するといった煩雑な手法を必要とせず、現場で必要に応じてインターバル期間を調整することで、安定した放水圧力制御を実現できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明が適用される放水銃システムの説明図である。図1の放水銃システムは競技場や展示会場などの施設に設置され、所定の警戒区域に対し、この例では例えば4台の放水銃10を設置している。放水銃10に対応して、警戒区域を監視する火災検出器12が例えば4台設置されている。火災検出器12は警戒区域に対し、光学的な水平及び垂直走査により火源を検出し、火源位置を示す水平走査角及び垂直走査角を火災断定信号と共に出力する。
【0016】
放水銃10に対しては、ポンプ室に設置されたポンプ22からの排水管26が接続されている。ポンプ22はポンプ制御盤24により制御される。また、ポンプ室に設置されたエアーコンプレッサ28から空気配管29が接続されている。放水銃10に対する配水管26には電動弁11が設けられている。また、電動弁11の1次側には遠隔開閉弁13が設けられている。
【0017】
放水銃10のそれぞれに対しては放水銃制御盤14と現場操作盤16が設けられ、更に中央監視センタには中央制御盤18と中央操作卓20が設けられている。電動弁11、遠隔開閉弁13、更に放水銃10に設けている後の説明で明らかにする圧力センサは、それぞれ対応して設置された放水銃制御盤14に接続され、放水銃制御盤14に設けた放水圧力制御部による電動弁11の開閉制御で、放水銃10からの放水圧力を火源までの放水距離に対応した目標放水圧力となるように制御する。
【0018】
空気配管29からの加圧空気は、放水銃10から消火用水を放水する際に消火用水の周囲に噴き込まれ、空気と水を混合することによって、低い放水圧力及び少ない放水量で十分な放水距離と広い散水範囲を確保できるようにしている。また放水銃10は、架台に対しモータ駆動により水平旋回することができ、垂直方向については所定の放水角に固定設定されている。
【0019】
火災検出器12で検出された火源についての火災断定信号及び火源位置を示す水平走査角と垂直走査角は中央監視盤18に送られ、警戒区域における火源の3次元座標位置が求められ、更に火源に対し放水制御を行う放水銃10の選択が行われ、選択した放水銃10と火源との距離が求められ、この距離に応じた目標放水圧力が、選択された放水銃10の放水銃制御盤14に送られて放水制御に使用される。
【0020】
図2は本発明による放水圧力制御装置の機能構成のブロック図である。図2において、放水圧力制御装置15は図1の放水銃制御盤14に設けられており、装置を構成するハードウェアとしては例えばコンピュータが使用される。放水圧力制御装置15の制御対象となる放水銃10には圧力センサ30が設置されており、給水配管26から供給された放水圧力を検出して放水圧力制御装置15に入力している。
【0021】
放水圧力制御装置15には、放水圧力サンプリング部32、目標放水圧力設定部34、圧力偏差演算部36、偏差比較部38、連続制御処理部40、間欠制御処理部42が設けられている。更に間欠制御処理部42には、係数設定部44、間欠制御期間演算部46、間欠制御信号出力部48、間欠制御期間テーブル50及びインターバル期間調整部52が設けられている。更に、偏差比較部38に対しては偏差範囲調整部54が設けられている。
【0022】
放水圧力制御装置15に設けた放水圧力サンプリング部32は、放水銃10に設けた圧力センサ30からの圧力検出信号をサンプリングして、デジタルデータとしての検出圧力Pに変換して出力する。目標放水圧力設定部34は、中央制御盤18から放水銃10により放水する火源までの距離に応じた目標放水圧力Poが設定される。
【0023】
圧力偏差演算部36は、目標放水圧力設定部34から出力された目標放水圧力Poと、放水圧力サンプリング部32から出力された圧力センサ30の検出圧力Pとの圧力偏差ΔP(=Po−P)を演算して出力する。
【0024】
偏差比較部38は、圧力偏差演算部36より出力される圧力偏差ΔPの値を予め定めた閾値±Pthと比較し、圧力偏差ΔPが閾値±Pthを超えている場合には連続制御モードを設定し、連続制御処理部40による制御処理を有効とする。一方、圧力偏差が閾値±Pth以内にあるときは、間欠制御モードを設定して、間欠制御処理部42の制御処理を有効とする。
【0025】
連続制御処理部40は、圧力偏差演算部36から出力された圧力偏差ΔPを零とするように制御信号を出力して、電動弁11の開度を制御する。即ち、圧力偏差ΔPがプラスであれば電動弁11を閉方向に制御して圧力を低下させ、一方、圧力偏差ΔPがマイナスであれば電動弁11を開方向に制御して放水圧力を増加させ、放水銃10の圧力センサ30による検出圧力Pを目標放水圧力Poに向かわせる。
【0026】
間欠制御処理部42は、連続制御処理部40によるフィードバック制御で圧力偏差ΔPが予め定めた所定閾値±Pthの範囲内に収束しているときに動作し、電動弁11の開度を間欠的に制御し、これによって圧力偏差ΔPを0とするようにフィードバック制御する。
【0027】
図3は図2の間欠制御処理部42で生成する間欠制御信号のタイミング説明図である。図3は1回の間欠制御信号であり、まず間欠制御演算タイミングTcの期間に亘り、そのときの圧力偏差ΔPに基づいて、オン期間Ton、オフ期間Toff、及びインターバル期間Tintを演算するようにしている。
【0028】
間欠制御演算タイミングTcに続いて、演算結果として得られた期間(時間)に従い、オン期間Tonの間、圧力偏差がプラスであれば電動弁11を閉制御するパルス的な制御信号を出力し、またそのときの圧力偏差がマイナスであれば電動弁11を開制御するパルス的な信号を出力する。
【0029】
続いて、オン期間Tonと同じ時間を持つオフ期間Toffの間、電動弁11の制御信号の出力を停止する。更に本発明にあっては、オフ期間Toffが経過した後のインターバル期間Tintの間も制御信号の出力を停止する。したがって、オン期間Tonにより電動弁11を開または閉とするための制御信号をパルス的に出力した後、オフ期間Toffにインターバル期間Tintを加えた期間に亘り、電動弁11の制御を停止することになる。
【0030】
この結果、オン期間Tonに亘る電動弁11の開制御信号または閉制御信号による弁開度による放水圧力の変化は、オフ期間Toffとインターバル期間Tintを加えた制御停止期間の間に開度に応じた変化を生じて静定し、静定した状態で次の間欠制御信号を出力するための間欠制御演算タイミングによる処理に移行することになる。
【0031】
図4は圧力センサ30の検出圧力Pを時間軸に対し一定割合で増加させた場合の、図2の放水圧力制御装置15から出力される放水圧力制御信号のタイムチャートである。
【0032】
図4(A)は放水圧力制御装置15における制御特性であり、偏差比較部38によって圧力偏差ΔP=0に対し所定の閾値±Pthにより、その外側に連続制御域A1,A2を設定し、その内側に間欠制御域B1,B2を設定している。
【0033】
ここで図4(A)のように、圧力偏差ΔPを時間軸に対し直線的に変化させるためには、例えば図2の目標放水圧力設定部34に対する目標放水圧力PoをPo=0とした状態で、圧力センサ30からの検出圧力Pを時間軸に対し直線的に増加させればよい。もちろん、この処理はシミュレーションとして行う。
【0034】
図4(A)のような圧力偏差ΔPの変化に対し、圧力偏差ΔPが閾値−Pthより小さい連続制御域A1にあっては、図2の連続制御処理部40が動作し、図4(B)の放水圧力制御信号は電動弁11を開制御とするプラス電圧を継続的に出力している。
【0035】
圧力偏差ΔPが閾値−Pthを超えると間欠開制御域B1に入り、図2の間欠制御処理部42が動作し、圧力偏差−ΔPの大きさに比例したオン期間とオフ期間を持つ間欠制御信号を出力する。なお図4(B)の間欠制御信号は、説明を簡単にするため、図3におけるインターバル期間Pintは0としている。間欠開制御域B1で出力するオン期間とオフ期間を持つ放水制御信号は、圧力偏差−ΔPが小さくなる程、オン期間とオフ期間の間隔が比例的に短くなっている。
【0036】
圧力偏差ΔPがΔP=0を超えると間欠閉制御域B2に移行し、図4(B)の放水制御信号は電動弁11を閉制御するためのマイナス電圧に切り替わり、このときの圧力偏差ΔPの大きさに応じたオン期間とオフ期間を持つ間欠制御信号を繰り返し出力する。この場合には圧力偏差ΔPが時間の経過と共に増加していることから、オン期間とオフ期間を持つ間欠制御信号の周期は時間軸の変化に対し順次増加している。
【0037】
更に圧力偏差ΔPが閾値+Pthを超えると連続閉制御域A2に入り、図2の連続制御処理部40が動作し、電動弁11を閉方向に制御するため、マイナス電圧となる放水圧力制御信号を連続的に出力することになる。
【0038】
図5は、図2の間欠制御処理部42において、図3に示した間欠制御信号の各区間の計算に使用する係数と圧力偏差の関係を示した説明図である。
【0039】
図5(A)は横軸に圧力偏差ΔPをとり、縦軸に0〜1.0の範囲で変化する係数Kをとっている。間欠制御は、圧力偏差ΔPの絶対値が0〜Pthの範囲であることから、この範囲について圧力偏差ΔPの変化に対し直線的に増加する係数Kの特性60を設定している。ここで、圧力偏差ΔPが閾値Pthのとき係数KはK=1.0と最大値となり、一方、圧力偏差ΔP=0で係数Kは例えばK=0.1と最小値を示しており、特性直線60は最小値K=0.1と最大値K=1.0を結んだ直線の特性となる。
【0040】
実際の装置にあっては、図5(A)の特性直線60による圧力偏差ΔPと係数Kの関係を、一定間隔の圧力偏差の変化に対する係数Kの値をもつテーブルデータとして準備し、対応する圧力偏差に対応する係数を読み出して使用する。
【0041】
ここで図2の間欠制御処理部42にあっては、間欠制御期間テーブル50に係数K=1としたときの図3に示す間欠制御信号におけるオン期間Ton、オフ期間Toff及びインターバル期間Tintの値を固定的に設定している。
【0042】
このため間欠制御期間演算部46にあっては、係数設定部44により入力した圧力偏差ΔPから、例えば図5(A)の特性直線60に基づいて作成されたテーブルを参照して係数Kを求め、この係数Kを間欠制御期間演算部46において間欠制御期間テーブル50に固定設定されたオン期間Ton、オフ期間Toff及びインターバル期間Tintに掛け合わせて、演算結果(KTon)(KToff)(KTint)を求め、この演算結果に基づき、間欠制御信号出力部48から、演算した期間を持つオン期間、オフ期間及びインターバル期間の間欠制御信号を電動弁11に出力することになる。
【0043】
更に図2の実施形態にあっては、間欠制御期間テーブル50に固定設定しているインターバル期間Tintにつき、インターバル期間調整部52によってその大きさを必要に応じて調整変更することができる。このインターバル期間調整部52によるインターバル期間Tintの調整は、図1の放水銃制御盤14に設けている操作部を使用して担当者が必要に応じて任意に調整することができる。
【0044】
例えば図3におけるK=1のときのオン期間Ton及びオフ期間ToffはそれぞれTon=Toff=3秒であり、これに対しインターバル期間Tintは例えば0〜10秒の範囲で任意に変更することができる。
【0045】
またインターバル期間Tintを自由に調整可能とすると、設計上の電動弁11と放水銃10との間の配管距離との関連が取れないことから、設計上の配管距離に対応した標準インターバル期間を定め、これに対し時間的に短いインターバル期間と時間的に長いインターバル期間の3つを設定し、標準インターバル期間でハンチングが起きた場合には、いずれか一方のインターバル期間に切替え調整して対応するようにしてもよい。
【0046】
図5(B)は図2の放水圧力制御装置15に設けた偏差範囲調整部54で連続制御と間欠制御を切り分ける圧力偏差の閾値を切替可能とした場合の特性図である。図5(B)にあっては、圧力偏差ΔPに対する閾値をPth1,Pth2,Pth3の3段階に切替可能としており、それぞれの閾値における係数KをK=1.0として、圧力偏差ΔP=0のときの係数値K=0.1と結んだ特性直線60−1,60−2,60−3の3つの特性を持たせ、このいずれかの特性を選択できるようにしている。
【0047】
この図5(B)の特性切替え、即ち連続制御域と間欠制御域を切り替える圧力偏差範囲の切替えにより、間欠制御域の幅を狭めたり広げたりすることで、例えば放水銃10と電動弁11との間の配管距離に起因したハンチング防止などの対応調整が可能となる。これは本発明によるインターバル期間による調整では対応できないような場合に行うことになる。
【0048】
図6は図2の放水圧力制御装置15による制御処理のフローチャートである。図6において、放水圧力制御処理は、ステップS1で選択した放水銃と火源までの目標距離に対応した目標放水圧力Poを設定した後、ステップS2で放水開始指示の有無をチェックしている。放水開始指示があると、図1に示した選択された放水銃10の配水管26に設けている遠隔開閉弁13が開制御され、同時にポンプ制御盤24によるポンプ22の運転で消火用水が加圧供給されており、加圧消火用水は開制御された遠隔開閉弁13を通って電動弁11に供給され、放水銃10から放水される。
【0049】
ステップS2で放水開始指示を判別すると、ステップS3に進み、圧力センサ30の検出放水圧力Pを読み込んだ後、ステップS4で圧力偏差ΔPを算出する。続いてステップS5で圧力偏差は閾値±Pth以内か否かチェックする。外れている場合にはステップS6に進み、連続制御モードを設定し、ステップS7で圧力偏差ΔPに応じて電動弁の開度をフィードバック制御する。そしてステップS12で放水停止指示をチェックした後、放水停止指示がなければステップS3に戻って処理を繰り返す。
【0050】
ステップS6による連続制御モードの設定による処理中に、ステップS5で圧力偏差が閾値±Pthの範囲内に入ると、ステップS8に進み、間欠制御モードを設定する。間欠制御モードにあっては、ステップS9で圧力偏差ΔPに応じた係数Kを決定した後、ステップS10で、固定設定したオン時間Ton、オフ時間Toff及びインターバル時間TintにステップS9で決定した係数Kを乗算する計算を行う。
【0051】
そしてステップS11で、演算されたオン時間に亘り電動弁11に対し、そのときの偏差がプラスであれば閉制御信号を、マイナスであれば開制御信号となる制御信号を出力した後、オフ期間及びインターバル期間に亘り制御信号の出力を停止する。間欠制御モードにあっては、ステップS8〜S11、S12、S3〜S5の処理を繰り返す。
【0052】
この間欠制御モードによる放水圧力の制御により放水銃の放水圧力は目標圧力に安定的に制御され、検出された火源に対し正確に消火用水を散布することができる。間欠制御モードによる放水制御中にステップS12で放水停止指示があると、一連の処理を終了する。
【0053】
また本発明は図1の放水銃制御盤14に設けたコンピュータにより実行される放水圧力制御プログラムを提供するものであり、このプログラムは図6に示した放水圧力制御処理の内容を持つ。また放水銃制御盤14に設けた本発明の放水圧力制御プログラムを実行するコンピュータのハードウェア資源としては、CPUのバスにメモリや通信ボードなどが接続され、CPUによりメモリ上に展開されたプログラムを実行することになる。
【0054】
なお本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される放水銃システムの説明図
【図2】本発明による放水圧力制御装置の機能構成のブロック図
【図3】図2の間欠制御処理部で生成する間欠制御信号のタイミング説明図
【図4】圧力センサの検出圧力Pを一定割合で増加させた場合の図2の放水圧力制御信号のタイムチャート
【図5】図2の間欠制御処理で間欠制御信号の期間計算に使用する係数と圧力偏差の関係を示した説明図
【図6】図2の放水圧力制御処理のフローチャート
【符号の説明】
【0056】
10:放水銃
11:電動弁
12:火災検出器
13:遠隔開閉弁
14:放水銃制御盤
15:放水圧力制御装置
16:現場操作盤
18:中央制御盤
20:中央操作卓
22:ポンプ
24:ポンプ制御盤
26:配水管
28:エアーコンプレッサ
29:空気配管
30:圧力センサ
32:放水圧力サンプリング部
34:目標放水圧力設定部
36:圧力偏差演算部
38:偏差比較部
40:連続制御処理部
42:間欠制御処理部
44:係数設定部
46:間欠制御期間演算部
48:間欠制御信号出力部
50:間欠制御期間テーブル
52:インターバル期間調整部
54:偏差範囲調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、
前記放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、
前記放水銃の放水圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの検出圧力と前記火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出し、前記圧力偏差が所定範囲を超える範囲では前記圧力偏差をなくすように前記電動弁の開度を制御信号により連続制御し、前記圧力偏差が前記所定範囲内では前記圧力偏差をなくすように前記圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により前記電動弁の開度を制御する制御部と、
前記間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整部と、
を備えたことを特徴とする放水圧力制御装置。

【請求項2】
請求項1記載の放水圧力制御装置に於いて、前記制御部は、前記間欠制御信号のオン期間、オフ期間及びインターバル期間を圧力偏差に比例して変化させることを特徴とする放水圧力制御装置。

【請求項3】
請求項1記載の放水圧力制御装置に於いて、前記制御部は、前記所定範囲内での圧力偏差に応じて変化する係数を設定し、前記係数を固定設定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間に乗じて前記圧力偏差に応じて変化するオン期間、オフ期間及びインターバル期間を決定することを特徴とする放水圧力制御装置。

【請求項4】
請求項3記載の放水圧力制御装置に於いて、前記制御部は、前記所定範囲を決める閾値を与える圧力偏差に対応して前記係数の最大値を設定すると共に、圧力偏差零に対応して前記係数の最小値を設定し、前記最大値と最小値の間で前記圧力偏差に応じて前記係数を変化させることを特徴とする放水圧力制御装置。

【請求項5】
警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、前記放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、前記放水銃の放水圧力を検出する圧力センサとを備えた放水銃システムの放水圧力制御方法に於いて、
前記圧力センサの検出圧力と前記火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出するステップと、
前記圧力偏差が所定範囲を超える範囲では、前記圧力偏差をなくすように前記電動弁の開度を制御信号により連続制御する連続制御ステップと、
前記圧力偏差が前記所定範囲内では、前記圧力偏差をなくすように前記圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により前記電動弁の開度を制御する間欠制御ステップと、
必要に応じて前記間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整ステップと、
を備えたことを特徴とする放水圧力制御方法。

【請求項6】
請求項5記載の放水圧力制御方法に於いて、前記間欠制御ステップは、前記間欠制御信号のオン期間、オフ期間及びインターバル期間を圧力偏差に比例して変化させることを特徴とする放水圧力制御方法。

【請求項7】
請求項5記載の放水圧力制御方法に於いて、前記間欠制御ステップは、前記所定範囲内での圧力偏差に応じて変化する係数を設定し、前記係数を固定設定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間に乗じて前記圧力偏差に応じたオン期間、オフ期間及びインターバル期間を決定することを特徴とする放水圧力制御方法。

【請求項8】
請求項7記載の放水圧力制御方法に於いて、前記間欠制御ステップは、前記所定範囲を決める閾値を与える圧力偏差に対応して前記係数の最大値を設定すると共に、圧力偏差零に対応して前記係数の最小値を設定し、前記最大値と最小値の間で前記圧力偏差に応じて前記係数を変化させることを特徴とする放水圧力制御方法。

【請求項9】
警戒区域の火源位置に向けて消火用水を散布する放水銃と、前記放水銃に加圧消火用水を供給する配管に設けられた電動弁と、前記放水銃の放水圧力を検出する圧力センサとを備えた放水銃システムの制御盤のコンピュータに、
前記圧力センサの検出圧力と前記火源位置までの放水距離に応じて設定した目標圧力との圧力偏差を検出するステップと、
前記圧力偏差が所定範囲を超える範囲では、前記圧力偏差をなくすように前記電動弁の開度を制御信号により連続制御する連続制御ステップと、
前記圧力偏差が前記所定範囲内では、前記圧力偏差をなくすように前記圧力偏差に応じて決定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間をもつ間欠制御信号により前記電動弁の開度を制御する間欠制御ステップと、
必要に応じて前記間欠制御信号のインターバル期間を設定変更する調整ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【請求項10】
請求項9記載のプログラムに於いて、前記間欠制御ステップは、前記間欠制御信号のオン期間、オフ期間及びインターバル期間を圧力偏差に比例して変化させることを特徴とするプログラム。

【請求項11】
請求項9記載のプログラムに於いて、前記間欠制御ステップは、前記所定範囲内での圧力偏差に応じて変化する係数を設定し、前記係数を固定設定したオン期間、オフ期間及びインターバル期間に乗じて前記圧力偏差に応じたオン期間、オフ期間及びインターバル期間を決定することを特徴とするプログラム。

【請求項12】
請求項11記載のプログラムに於いて、前記間欠制御ステップは、前記所定範囲を決める閾値を与える圧力偏差に対応して前記係数の最大値を設定すると共に、圧力偏差零に対応して前記係数の最小値を設定し、前記最大値と最小値の間で前記圧力偏差に応じて前記係数を変化させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−223440(P2006−223440A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38928(P2005−38928)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】