説明

放電ランプおよびその放電ランプを用いた照明装置

【課題】発光管の外径寸法を大きくしたとしても製造歩留まりが良い放電ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1の備える平面視二重渦巻状の発光管10は、管中央部12と、管中央部12の両端から互いに反対方向に延設されかつ管中央部12を旋回する一対の旋回部14a,14bとを有している。
旋回部14a,14bにおける管中央部12の直近の旋回部分16a,16bを除いた旋回部全域において、頂部14a1,14b1が、旋回軸Cに直交する基準面Pに接触し、管中央部12および直近の旋回部分16a,16bが、基準面Pから離間しており、旋回部14a,14bの管外径をD、管中央部12の基準面Pからの離間距離をEとした場合に、管外径Dと離間距離Eとが、10≦D≦28、0.1≦E/D≦0.26の関係を満たすように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視二重渦巻形状の発光管を備えた放電ランプおよびその放電ランプを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面視二重渦巻形状の放電ランプ(平面二重渦巻形ランプ)は、発光管の外形が略円盤形状であるため、薄型である。したがって、灯具を薄く設計することができ、天井や壁に取り付けられるダウンライトやウォールライト用の光源として好適である。また、円形の発光面を有する面光源であるため配光分布が好ましく、店舗や住宅の照明用に好適である。このような平面二重渦巻形ランプとしては、15[W]や20[W]の低ワットタイプであって、発光管を構成するガラス管の管外径が9[mm]以下のものが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4176800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、平面二重渦巻形ランプの高ワット化を進めるために、発光管の管外径を大きく、具体的には10[mm]以上で試したところ、製造時において、発光管が割れるまたは管の断面形状が変形して、製造歩留まりが著しく低下するという問題が生じた。
この問題について、以下に詳しく説明する。
二重渦巻形ランプにおける発光管の製造では、先ず、加熱して軟化させた直管状のガラス管を、円錐体からなる成形治具に沿って巻回させて立体的な二重螺旋状に成形する。そして、立体的な二重螺旋状のガラス管を再度加熱して軟化させ、高さ方向に押し縮めることにより、平面的な二重渦巻状のガラス管を成形する。この高さ方向に押し縮める工程において、ガラス管の管外径が大きくなる程ガラス管が割れ易く、または管の断面形状が変形し易くなる傾向がある。
【0005】
これは、立体的な二重螺旋状のガラス管はバネ性を有し、ガラス管の管外径が大きいとバネ定数も大きくなり、立体的な二重螺旋状のガラス管を高さ方向に押し縮めるのにより強い力が必要であり、ガラス管を強く押圧しなければならないからである。そのため、ガラス管が割れる、または割れないとしても管の断面形状が変形するなどして、製造歩留まりの低下に繋がっている。なお、ガラス管をより加熱し、より柔らかくすることによって、ガラス管への押圧を弱めることでき、ガラス管が割れるのを抑制することはできるが、より軟化したガラス管は、ガラス管そのものの形状を維持するのが難しくなる。このため、ガラス管の断面形状が変形した不良品が発生し易くなるので、ガラス管をより柔らかくする方法が、製造歩留まりの低下の抑制に効果があるとはいえない。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑み、発光管の管外径を大きくしたとしても製造歩留まりが良い放電ランプおよびその放電ランプを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放電ランプは、管中央部と、この管中央部から互いに反対方向に延設されかつ当該管中央部を旋回中心として1周以上旋回する一対の旋回部とを有する平面視二重渦巻状の発光管を備え、前記一対の旋回部における前記管中央部に直近の旋回部分を除いた旋回部全域において、旋回軸の軸方向一方側に向けて膨出した半円筒部分の頂部が、前記旋回軸に直交する基準面に接触し、前記管中央部およびそれに直近の旋回部分が、前記基準面から前記旋回軸の軸方向他方側に離間しており、前記各旋回部の管外径をD[mm]、前記管中央部の前記基準面からの離間距離をE[mm]とした場合に、管外径Dと離間距離Eとが、
10≦D≦28
0.1≦E/D≦0.26
の関係を満たすように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の発光管によれば、発光管の管中央部が、基準面から離間しているので、発光管の製造時に、管中央部を高さ方向に押し縮める距離を短くすることができる。そのため、発光管の割れまたは管の断面形状が変形するのを抑制することができ、製造歩留まりを良くすることができる。特に、各旋回部における管外径Dに対し、管中央部の基準面からの離間距離Eの比率(E/D)を0.1以上に設定することにより、製造歩留まりを高めることができることが判明した。
【0009】
一方、比率(E/D)を大きくすれば、発光管の割れまたは管の断面形状が変形するのを抑制できるが、比率(E/D)が大きくなり過ぎると、一対の旋回部における管中央部に直近の旋回部分を除いた旋回部が、管中央部に連動して基準面から離されるため、発光管の外観品質の劣化に繋がる。
そこで、比率(E/D)の上限を定めることにより、一対の旋回部における直近の旋回部分を除いた旋回部が、基準面から離れるのを防止し、発光管の外観品質が劣化するのを抑制することとしている。特に、比率(E/D)を0.26以下に設定することにより、発光管の外観品質の劣化を抑制できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る蛍光ランプを示す平面図。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面矢視図。
【図3】旋回部が基準面から離れた状態を説明するための説明図。
【図4】発光管の製造工程を説明する説明図。
【図5】発光管の製造工程を説明する説明図。
【図6】比率(E/D)の下限を求めた実験の結果を示す図。
【図7】比率(E/D)と、製造歩留まりとの関係を説明するための図。
【図8】比率(E/D)の上限を求めた実験の結果を示す図。
【図9】比率(E/D)と、外観品質との関係を説明するための図。
【図10】第2の実施形態に係る照明装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を放電ランプの一種である蛍光ランプに適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
<蛍光ランプの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る蛍光ランプを示す平面図である。
【0012】
図1に示す蛍光ランプ1は、平面視二重渦巻状の発光管10と、発光管10を保持するホルダ20とを備えている。この蛍光ランプ1は、定格ランプ電力が25[W]以上であって、店舗・住宅照明等の天井埋込ダウンライト用、ウォールライト用等として用いられるものである。
(発光管)
発光管10は、平面視二重渦巻状に形成されたガラス管11と、ガラス管11の両端部15a,15bに配された一対の電極とを有している。
【0013】
ガラス管11は、二重渦巻状の中心に位置する管中央部12と、管中央部12から互いに反対方向に延設された一対の旋回部14a,14bとで構成されている。図1において、破線で囲まれた範囲内のガラス管部分を管中央部12とする。
旋回部14aは、管中央部12の端部13aに延設され、管中央部12の中心Oを旋回中心として、旋回半径を増加させながら渦巻状に形成されている。旋回部14bは、管中央部12の端部13bに延設され、旋回部14aと同様、管中央部12の中心Oを旋回中心として、旋回半径を増加させながら渦巻状に形成されている。本実施形態において、各旋回部14a,14bは、1.75周(1周と3/4周)旋回されており、ガラス管11全体として3.5周旋回されている。
【0014】
旋回部14aの端部15aに、上記した電極がピンチシール方式により気密封着されていて、同時に、ガラス管11内部を気密に封止している。旋回部14bの端部15bにも、旋回部14aと同様に、上記電極が気密封着されている。
ガラス管11の内部には、水銀(水銀単体、水銀と亜鉛や錫等との合金)および緩衝ガス(アルゴンガス、クリプトンガス、あるいはそれらの混合ガス等)が封入されている。また、ガラス管11の内周面には、蛍光体層が形成されている。この蛍光体層は、例えば、赤、緑、青発光の3種類の希土類の蛍光体を焼成してなる。
【0015】
次に、ガラス管11の形状について説明する。
旋回部14aは、図1に示すように、管中央部12に直近の旋回部分16aと、それ以外の旋回部分とで構成されている。この直近の旋回部分16aは、管中央部12の端部13aから図1に示すQ1の位置までであって、旋回部14aにおける管中央部12の管軸Kから旋回角α(0°≦α≦90°)内の旋回部分である。また、旋回部14bにおいても、旋回部14aと同様、管中央部12に直近の旋回部分16aと、それ以外の旋回部分とで構成されている。そして、直近の旋回部分16bは、管中央部12の端部13bから図1に示すQ2の位置までであって、旋回部14bにおける管軸Kから旋回角α(0°≦α≦90°)内の旋回部分である。
【0016】
図2は、図1におけるA−A線に沿った断面矢視図である。
旋回部14aは、旋回軸Cの軸方向の一方側(図2の下側)に膨出した半円筒部と旋回軸Cの軸方向の他方側(図2の上側)に膨出した半円筒部との組み合わせとみることができる。旋回部14aの旋回軸Cの軸方向の一方側に膨出した半円筒部の頂部を14a1で図示している。同様に、旋回部14bの旋回軸Cの軸方向の一方側に膨出した半円筒部の頂部を14b1で図示している。
【0017】
旋回部14a,14bにおける管中央部12の直近の旋回部分16a,16bを除いた旋回部全域において、頂部14a1,14b1が、旋回軸Cに直交する基準面Pに接している。ここで、旋回部14a,14bにおける管中央部12の直近の旋回部分16a,16bを除いた旋回部全域とは、旋回部14aにおけるQ1から端部15aまで、および旋回部14bにおけるQ2から端部15bまでである。
【0018】
一方、管中央部12および直近の旋回部分16bは、図2に示すように、基準面Pから旋回軸Cの軸方向の他方側に離間している。また、直近の旋回部分16aは、図2には現れていないが、直近の旋回部分16bと同様に、基準面Pから離間している。
なお、図2では、旋回部14a,14bの管外径がD[mm]、管中央部12と基準面Pとの離間距離がE[mm]で示されている。ここでの「管外径D」は、旋回部14a,14bにおける平均の管外径を意味する。また、ここでの「離間距離E」は、管中央部12における旋回軸Cの軸方向一方側の頂部12aと基準面Pとの距離を意味している。
【0019】
本実施形態において、管中央部12における管肉厚T1が0.4[mm]以上1.0[mm]であり、各旋回部14a,14bにおける管肉厚T2が0.4[mm]以上1.0
[mm]である。
また、管外径Dが10[mm]以上28[mm]以下の範囲であり、管外径Dと離間距離Eとの比率(E/D)は、次の条件を満たす。
【0020】
0.1≦E/D ・・・(条件1)
E/D≦0.26 ・・・(条件2)
この比率(E/D)が小さいと、管外径Dの大きさの割に、管中央部12を基準面Pに近づけることになるので、発光管10の製造時に、ガラス管11が割れる、またはガラス管11の断面形状が変形し易くなり、製造歩留まりが低下するおそれがある。発明者らは、後述する実験により、条件1を満たせば、ガラス管の割れおよび管の断面形状の変形が生じるのを抑制することができ、製造歩留まりが良いことを見出した。
【0021】
一方、比率(E/D)が大きいと、発光管10の製造時におけるガラス管の割れおよび管の断面形状の変形が生じるのを抑制することはできるが、比率(E/D)が大きくなるに伴い、各旋回部14a,14bが、管中央部12に連動して基準面Pから離される。そして、比率(E/D)が大きくなり過ぎると、図3に示すように、P1,P2の位置における頂部14a1,14b1が基準面Pから離されるので、外観品質が低下するという弊害が出てくる。発明者らは、後述する実験により、条件2を満たせば、旋回部14a,14bが、管中央部12に連動して基準面Pから離れるのを防止し、外観品質が低下するのを抑制できることを見出した。
(ホルダ)
図1に戻って、ホルダ20は、ガラス管11の両端部15a,15bに外嵌される有底筒状の口金部21a,21bと、これら口金部21a,21bを互いに連結する長尺板状の連結部22とを備える。
【0022】
口金部21a,21bは、Gタイプ(例えばG5タイプ等)の口金であって、底壁にそれぞれ一対のピン23a,23bを有し、互いの開口の向きが反対となる姿勢で連結部22の長手方向両端に配置されている。口金部21a,21bの開口の径は、ガラス管11の両端部15a,15bの外径よりも大きく、その開口内にガラス管11の両端部15a,15bが挿入されている。口金部21aと両端部15aとの隙間、および口金部21bと両端部15bとの隙間に、接着剤が充填され、各口金部21a,21bとガラス管11とが固着されている。この接着剤としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびセメント等が用いられる。
【0023】
連結部22は、図2に示すように、発光管10の照射側とは反対側(図2の下側)に配置されている。
上記構成の蛍光ランプ1は、定格ランプ電力30〜150[W]で点灯される。具体的な定格ランプ電力としては、例えば、30[W]、75[W]および93[W]、120[W]等が挙げられる。
<蛍光ランプの製造方法>
実施形態に係る蛍光ランプ1の製造方法について説明する。
【0024】
ここでは、発光管10の製造工程のみを詳細に説明し、他の工程についてはその説明を省略するか簡略するに留める。
図4は、直管状のガラス管から立体的な二重螺旋状のガラス管を成形する工程を説明するための図であり、図5は、立体的な二重螺旋状のガラス管から平面的な二重渦巻状のガラス管を成形する工程を説明する図である。
【0025】
図4(a)は、加工前の直管状のガラス管530を示している。図4(b)は、ガラス管530を二重螺旋状に巻回するための成形治具590を示している。成形治具590は、略円錐体形状であって、頂部に設けられた一対の係止部593,594と、錐面の頂部から裾部に掛けて、二重螺旋状に形成された誘導溝595とを有している。この成形治具590には、駆動装置(図示せず)の回転軸592が取り付けられている。
【0026】
そして、図4(c)に示すように、ガラス管530を成形治具590により巻き上げることにより、立体的な二重螺旋状のガラス管を成形する。具体的には、先ず、ガラス管530を加熱炉等で加熱して軟化させる。そして、ガラス管530の管中央部530aを成形治具590の係止部593,594間に挿入し、旋回予定部530b,530cを誘導溝595に沿って螺旋状に巻き上げる(矢印G方向)。ガラス管530の巻き付けが終了し、成形治具590から取り外したガラス管530から不要部分を除去して、図4(d)に示す立体的二重螺旋状の中間体520が作製される。
【0027】
次に、この中間体520から平面的な二重渦巻状のガラス管に変形する工程を説明する。
図5(a)は、立体的二重螺旋状の中間体520と、中間体520を高さ方向に押し縮めて変形させるための変形治具580とを示している。変形治具580は、固定板582と、固定板582の上面に立設された複数のガイド棒586と、この複数のガイド棒586を挿通する複数の孔部を有し、固定板582の上方に配置された可動板584と、固定板582の四隅に配置され、可動板584が固定板582に近づき過ぎるのを規制する規制部材589とを有している。
【0028】
中間体520は、固定板582の上面の略中央であって、中間体520の突出部522が可動板584に形成された貫通孔587の真下に配置される。このとき、可動板584の下面における貫通孔587の周辺部が中間体520の突出部522に当接されている。
このように可動板584を中間体520に当接させた状態で、中間体520を加熱する。この加熱温度は、例えば中間体520が略600[℃]になるように設定されている。これは、中間体520が600[℃]付近で塑性変形可能であり、可動板584の重さを用いて、中間体520を、高さ方向に押圧して変形させることができるからである。なお、当該加熱温度では、中間体520がガラス管の断面円形状を保持する程度の剛性を有しているので、ガラス管の断面形状が変形することはない。
【0029】
中間体520の塑性変形によって下降する可動板584が、規制部材589に当接した時点で、中間体520を高さ方向に押し縮める変形工程が完了する。このようにして、平面的な二重渦巻状のガラス管510が作製される。なお、規制部材589の高さHは、中間体520の突出部522における固定板582側外周面の頂部522aが、固定板582の上面から離間距離Eだけ離れた位置で、可動板584の下降が止まる高さに設定されている。
【0030】
図5(b)には、このようにして作製されたガラス管510が示されている。そして、このガラス管510が発光管10を構成するガラス管11として使用される。
この後、ガラス管11の両端部15a,15bに一対の電極を封着して、発光管10が作製される。
そして、さらにガラス管11の両端部15a,15bにホルダ20が取り付けられ、蛍光ランプ1が完成する。
<条件1を求めた実験>
次に、条件1を求めた実験について説明する。
【0031】
本実験では、旋回部14a,14bの管外径Dを固定して、管中央部12と基準面Pとの離間距離Eを異ならせることにより比率(E/D)が異なる複数の平面的な二重渦巻状のガラス管11を作製し、それぞれの製造歩留まりを測定した。
具体的には、管外径Dが11.5[mm]、20[mm]および25.5[mm]の3種類のガラス管11毎に、6〜7つの実施例および2〜3つの比較例を用意した。そして、実施例および比較例毎に、それぞれ20個のガラス管11を作製して、ガラス管11が割れる、または管の断面形状に変形が生じた不良品の発生件数を調べた。
【0032】
図6は、条件1を求めた実験の結果を示す図である。
図6には、実施例および比較例における、管外径D、離間距離E、比率(E/D)、不良品発生件数、製造歩留まり[%]および判定結果が示されている。
本実験において、製造歩留まりが90[%]以上の場合は、製造歩留まりが良い「○」と判定し、製造歩留まりが90[%]未満の場合は、製造歩留まりが悪い「×」と判定した。
【0033】
実験結果を見ると、図6に示すように、実施例11および比較例11では、管外径Dが11.5[mm]に設定されている。
実施例11−1は、E=1.0[mm]、E/D=0.09、不良品発生件数=2[件]、製造歩留まり=90[%]であり、判定が「○」である。
同様に、実施例11−2は、E=1.5[mm]、E/D=0.13、不良品発生件数=1[件]、製造歩留まり=95[%]、判定「○」である。以降、離間距離Eを0.5[mm]ずつ大きくした実施例11−3〜実施例11−8において不良品発生は見られず、いずれも製造歩留まりが100[%]、判定「○」である。
【0034】
一方、比較例11−1は、E=0.0[mm]、E/D=0.00、不良品発生件数=
12[件]、製造歩留まり=40[%]、判定が「×」であり、比較例11−2は、E=0.5[mm]、E/D=0.04、不良品発生件数=10[件]、製造歩留まり=50[%]、判定「×」である。
また、図6に示す、管外径Dが20[mm]のガラス管11における実施例および比較例、ならびに管外径Dが25.5[mm]のガラス管11における実施例および比較例においても、上記と同様に判定された結果が示されている。
【0035】
図7は、縦軸を製造歩留まり、横軸を比率(E/D)とし、図6に示す実施例および比較例をプロットした図である。
また、図7において、管外径Dが11.5[mm]の実施例および比較例を結ぶ線であって、比率(E/D)に対する製造歩留まりの推移を示す推移線が70で示されている。同様に、管外径Dが20[mm]における製造歩留まりの推移線が71、管外径Dが25.5[mm]における製造歩留まりの推移線が72でそれぞれ示されている。
【0036】
各推移線70〜72を見ると、比率(E/D)が0.1以上になれば、製造歩留まりが90[%]以上あり、製造歩留まりが良いことが分かる。
以上の実験の結果より、比率(E/D)が条件1を満たした場合に、発光管10の製造時にガラス管の割れおよび管の断面形状の変形が生じるのを抑制できるので、製造歩留まりが良いことが分かった。
【0037】
また、図7において、製造歩留まり90[%]を示す各管外径Dの比率(E/D)を見ると、管外径D11.5[mm]の方が、20[mm]および25.5[mm]よりも当該比率(E/D)が小さいことから、管外径Dの小さい方が、当該比率(E/D)が小さくなる傾向があると考えられる。したがって、管外径Dが11.5[mm]よりも小さい10[mm]のガラス管11において、条件1を満たした場合には、製造歩留まりが90[%]以上になると推測できる。さらに、管外径Dの20[mm]と25.5[mm]との間において、製造歩留まり90[%]を示す比率(E/D)の差は、多少であり略同等であると言えることから、管外径Dが20[mm]以上では、製造歩留まり90[%]となる比率(E/D)が0.1程度であると考えられる。したがって、管外径Dが25.5[mm]よりも大きい28[mm]のガラス管11であっても、条件1を満たした場合には、製造歩留まりが90[%]以上になると推測できる。
【0038】
本実験において、図6および図7に示す管外径Dおよび離間距離Eの各値は設計値である。なお、ガラス管の作製等ガラス加工では、製造上のばらつきは避けられないものであり、管外径Dおよび離間距離Eには±1[mm]程度のばらつきが含まれている。
また、本実験において、ガラス管11における管中央部12の管肉厚は0.4〜1.0[mm]であり、旋回部14a,14bの管肉厚は0.4〜1.0[mm]である。
【0039】
ここでの「管肉厚」とは、管中央部12における平均の管肉厚、または旋回部14a,14bにおける平均の管肉厚を意味する。
<条件2を求めた実験>
次に、条件2を求めた実験について説明する。
本実験では、上記の条件1を求めた実験と同様、旋回部14a,14bの管外径Dを固定して、管中央部12と基準面Pとの離間距離Eを異ならせることにより比率(E/D)が異なる複数の平面的な二重渦巻状のガラス管11を作製して、それぞれの外観品質を検査した。
【0040】
具体的には、管外径Dが11.5[mm]、20[mm]および25.5[mm]の3種類のガラス管11毎に、6〜7つの実施例および2〜3つの比較例を用意した。そして、実施例および比較例毎に、それぞれ20個のガラス管11を作製して、旋回部14a,14bのP1,P2(図1参照)の位置における頂部14a1,14b1(図2参照)が基準面Pから離れた件数を調べた。図1に示すように、P1は、管中央部12の端部13aから1/4周の位置を、P2は、管中央部12の端部13bから1/4周の位置をそれぞれ示している。本実験では、P1,P2の位置における頂部14a1,14b1が、基準面Pから離れたものを外観品質不良と判断している。
【0041】
図8は、条件2を求めた実験の結果を示す図である。
図8には、実施例および比較例における、管外径D、離間距離E、比率(E/D)、不良品発生件数および判定結果が示されている。
本実験において、実施例および比較例毎に用意した20個のガラス管11が、2個を超えて不良品とならない場合は、外観品質が低下しない「○」と判定し、当該20個のランプ中、3個以上のガラス管11が不良品となる場合は、外観品質が低下する「×」と判定した。
【0042】
実験結果を見ると、図9に示すように、実施例21および比較例21では、管外径Dが11.5[mm]に設定されている。
実施例21−1は、E=0.0[mm]、E/D=0.00、不良品発生件数=0[件]であり、判定が「○」である。
同様に、実施例21−2は、E=0.5[mm]、E/D=0.04、不良品発生件数=0[件]、判定「○」である。以降、離間距離Eを0.5[mm]ずつ大きくした実施例21−3〜実施例21−7において不良品発生は見られず、いずれも判定「○」である。
【0043】
一方、比較例21−1は、E=3.5[mm]、E/D=0.29、不良品発生件数=
10[件]、判定が「×」であり、以降、離間距離Eを0.5[mm]ずつ大きくした比較例21−2および比較例21−3では、いずれも不良品が発生し、判定「×」である。
また、図9に示す、管外径Dが20[mm]のガラス管11における実施例および比較例、ならびに管外径Dが25.5[mm]のガラス管11における実施例および比較例においても、上記と同様に判定された結果が示されている。
【0044】
図9は、縦軸を比率(E/D)、横軸を管外径Dとし、図9に示す実施例および比較例をプロットした図であり、判定「○」の各実施例が○印で、判定「×」の各比較例が×印で示されている。
また、図9において、管外径D毎の、判定「○」の値と、判定「×」の値との間であって、判定「○」の値を通過または近接した上限線73が引かれている。この上限線73は、各判定「○」の値を含む領域の上限を示す線であり、次の関係式で表すことができる。
【0045】
D=0.26
以上の実験の結果より、比率(E/D)が条件2を満たした場合に、発光管10の製造時に、旋回部14a,14bのP1,P2の位置における頂部14a1,14b1が、管中央部12に連動して基準面Pから離れるのを防止し、外観品質の低下を抑制することができることが分かる。
【0046】
また、図9において、管外径D毎の判定「○」における比率(E/D)の最大値を見ると、管外径Dが小さい程、当該比率(E/D)の最大値が若干大きくなっている。したがって、管外径Dが11.5[mm]よりも小さい10[mm]のガラス管11において、条件2を満たした場合には、旋回部14a,14bの1,P2の位置が基準面Pから離れるのを防止し、外観品質の低下を抑制できると推測される。なお、管外径D毎の判定「○」における比率(E/D)の最大値の差は僅かである。したがって、管外径Dが25.5[mm]よりも少しだけ大きい28[mm]のガラス管11でも、条件2を満たした場合には、旋回部14a,14bの1,P2の位置が基準面Pから離れるのを防止し、外観品質の低下を抑制できると推測される。
【0047】
本実験において、上記の条件1を求めた実験1と同様、図8および図9に示す管外径Dおよび離間距離Eの各値は設計値である。したがって、図8および図9の管外径Dおよび離間距離Eにも±1[mm]程度のばらつきが含まれている。
本実験において、ガラス管11における管中央部12および旋回部14a,14bの管肉厚は上記の条件1を求めた実験と同じである。
[第2の実施形態]
図10は、本発明に係る照明装置の一例として、上記第1の実施形態に係る蛍光ランプ1を備えた照明装置80の概略構成を示している。
【0048】
図10に示す照明装置80は、装置本体81と、装置本体81に取り付けられた一対のソケット82と、装置本体81に取り付けられた傘部83と、各ソケット82に口金部21a,21bが取り付けられた蛍光ランプ1と、蛍光ランプ1を覆う状態で装置本体81に取り付けられたカバーとを備えている。なお、図9では、蛍光ランプ1を覆うカバーが取り外された状態の照明装置80が示されている。
【0049】
各ソケット82には、取り付けレバーが設けられていて、口金部21a,21bを各ソケット82に装着した後、取り付けレバーを閉じることにより固定することができる。
上記構成の照明装置80は、上記第1の実施形態に係る蛍光ランプ1を備えることにより、定格ランプ電力が25[W]以上の比較的高ワットタイプ、かつ薄型の照明装置とすることができる。
<変形例>
以上、本発明に係る放電ランプおよびその放電ランプを備えた照明装置について、実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られない。
【0050】
例えば、発光管の外観形状は、平面視が円形のものに限定されず、平面視が四角形など多角形のものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、管中央部を中心として旋回する一対の旋回部を有する平面視二重渦巻形状の発光管を備えた放電ランプに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 蛍光ランプ
10 発光管
11 ガラス管
12 管中央部
12a 頂部
14a,14b 旋回部
14a1,14b1 頂部
14a,14b 旋回部
16a,16b 直近の旋回部分
20 ホルダ
21a,21b 口金部
22 連結部
23a,23b ピン
23a,23b 電極端子
70〜72 推移線
80 照明装置
81 装置本体
82 ソケット
83 傘部
510 ガラス管
520 中間体
530 ガラス管
580 変形治具
582 固定板
584 可動板
589 規制部材
590 成形治具
592 回転軸
593,594 係止部
C 旋回軸
D 旋回部の管外径
E 離間距離
K 管中央部の管軸
O 管中央部の中心
T1 管肉厚
T2 管肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管中央部と、この管中央部から互いに反対方向に延設されかつ当該管中央部を旋回中心として1周以上旋回する一対の旋回部とを有する平面視二重渦巻状の発光管を備えた放電ランプであって、
前記一対の旋回部における前記管中央部に直近の旋回部分を除いた旋回部全域において、旋回軸の軸方向一方側に向けて膨出した半円筒部分の頂部が、前記旋回軸に直交する基準面に接触し、
前記管中央部およびそれに直近の旋回部分が、前記基準面から前記旋回軸の軸方向他方側に離間しており、
前記各旋回部の管外径をD[mm]、前記管中央部の前記基準面からの離間距離をE[mm]とした場合に、管外径Dと離間距離Eとが、
10≦D≦28
0.1≦E/D≦0.26
の関係を満たすように設定されている
ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記管中央部の管肉厚をT1[mm]とした場合に、管肉厚T1が、
0.4≦T1≦1.0
であることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記各旋回部の管肉厚をT2[mm]とした場合に、管肉厚T2が、
0.4≦T2≦1.0
であることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放電ランプを備えていることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−251270(P2010−251270A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102495(P2009−102495)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】