説明

放電ランプ用口金を取り付ける方法および放電ランプ

放電容器(10)の端部領域を形成するシャフト(12)に口金スリーブ(26)を取り付ける際、口金スリーブを押し付けるため、少なくとも1つのビード(36)を有するクランプリング(34)を使用する。これによって口金スリーブと放電容器との力の作用結合が保証される。上記のビードにより、放電容器のシャフト(12)の形状における個別の癖が補正され、これにより、場合によってはシャフト(12)に力が過剰に加わってしまうことが回避される。また付加的に口金スリーブ(26)の下にグラファイトリング(22)に準備し、これをシャフト(12)に取り付ける。このグラファイトリング(22)にはスリットを入れることができ、またこのグラファリングはウェーブ状のプロフィールを有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1ないしは6の上位概念に記載された放電ランプ用の口金を取り付ける方法ならびに請求項9の上位概念に記載された放電ランプに関する。
【0002】
従来技術
請求項1ないしは6の上位概念に記載された放電ランプ用の口金を取り付ける方法は広く知られている。放電容器に電極を配置し、この放電容器内に設けられている電極に電極支持ロッドをはんだ付けし、この電極支持ロッドを例えば放電容器の端部領域から突き出すことによって電極支持ロッドが外部端子として使用できるようにして放電容器を作製した後、この放電容器は口金のない形状で準備される。ここでは口金スリーブを容易に放電容器に取り付けることはできない。というのうは、この放電容器の端部領域の形状を口金スリーブに完全に適合させることはできないからである。このため、上記の端部領域に口金スリーブを取り付ける前に、口金スリーブと放電容器との間の緩衝材料として使用される材料を上記の口金スリーブに被着するのである。この材料は軟らかくなければならない。このためにパテの他に、ふつう円筒形に構成される端部領域に数層に巻き付けられるグラファイトバンドを使用する。また適切なセラミック材料を被着することも、例えば上記の端部領域に巻き付けることも可能である。上記の口金スリーブは、上記の端部領域に上記の材料と共に被された後、クランプリングによって端部領域に保持される。ここで口金スリーブは、上記の端部領域に被着した材料を介して上記のクランプリングによって加えられる力を放電容器に受け渡す。上記の端部領域に被着された材料は重要な機能を有する。すなわち、上記の力を受け止めるという重要な機能を有するのである。この力が強すぎる場合には、例えば多くの場合がそうであるように放電容器がガラスから構成されていると、これが損傷してしまうことがある。石英ガラスからなる放電容器においても応力が発生し、その結果として割れ目が生じ、ひいては永続的な損傷が発生してしまう可能性がある。このような損傷を回避するためには、上記の材料が、十分な量しかも過剰ではない量で端部領域に被着されるように細心の注意をしなければならない。この際には放電容器を形成する際の個別の偏差を考慮にいれなければならない。作製過程においては、円筒形に構成される上記の端部領域の直径はやや小さいこともまたやや大きいこともある。完全な円筒形からの偏差が生じ、これによって端部領域がむしろ楕円形の断面を有することもある。上記の放電容器の端部領域をグラファイトバンドによって巻き付ける場合、上記の個別の癖をある程度補正することができる。例えば、一度目は端部領域にやや多くバンドを巻き付け、二度目にはやや少なくこれを巻き付けることができるのである。上記の放電容器の形状が個別の癖を有するため、口金の取り付けはこれまで純粋な手作業であった。作業者はその経験によって放電容器から、どのくらいの材料をまたどのようにして上記の端部領域に被着しなければならないかを見て取ることができる。
【0003】
このような理由からこれまでは、口金を取り付ける方法を自動化することは不可能であった。このため、放電ランプを作製する際の口金の取り付けには、特にコストがかかっていたのである。
【0004】
発明の説明
本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載した放電ランプ用の口金を取り付ける方法を提供して、これが自動化できるようにすることである。
【0005】
この課題は、請求項1ないしは6の上位概念の特徴を有する方法において、請求項1の特徴部分の特徴的構成による第1の側面にしたがい、また請求項6の特徴分部分の特徴的構成による第2の側面にしたかって解決される。本発明のアイデアを使用することにより、請求項9に記載した特徴的構成を有する放電ランプを提供することができる。この放電ランプの作製は、殊に自動化して行うことができる。
【0006】
本発明の第1の側面によれば、これにより、少なくとも1つのビード、すなわち実質的に液滴状の材料拡張部を有する口金スリーブにクランプリングが載置される。ビードを有するクランプリングを準備することにより、このクランプリングはフレキシブルになり、したがってその形状を適合させ、またその内径も適合させることできる。このようなクランプリングを適当に形成することにより、口金領域における放電容器の形状の変動を補正することができる。これは、上記の端部領域に被着する材料を放電容器の端部領域の個別の癖に完全に調整することができない場合、例えば、上記の材料が自動化されたプロセスにおいて上記の端部領域に被着される場合でも可能である。大き過ぎる反力が加わる場合、上記のビードによってクランプリングはたわみ、大き過ぎる力が口金スリーブおよび放電容器に加わることがない。上記のクランプリングは、放電容器の形状が所定の範囲で変化する場合であっても、この放電容器に加わる力がつねに同じになるように構成することも可能である。
【0007】
基本的に本発明を実施するために十分であるのは、有利にはクランプリングにわたって軸方向に延びるただ1つのビードを有するクランプリングである。ここでは軸方向とは、クランプリングの円形の断面に対して垂直な軸、例えばこの円の中心点に対して垂直な軸に関するものである。本発明による方法で使用されるクランプリングは有利には、その外周にわたって軸方向に延びる上記のような一連のビードを有する。多数のビードによってクランプリングの殊に高いフレキシビリティが保証され、またビードはクランプリングの外周にわたって分散されているため、例えば、放電容器の端部領域の断面と円形との局所的な偏差は、上記のクランプリングによって良好に補正されるのである。
【0008】
本発明の第2の側面によれば、上記の端部領域に取り付けられるべき材料はグラファイリングとして準備され、このグラファイトリングは、端部領域に簡単に被せることができる。上記の放電容器の口金領域と口金スリーブとの間にグラファイトリングを使用すると、放電ランプを自動化して作製することができる。グラファイトは極めて軟らかい材料であるため、上記のグラファイトリングは、クランプリングによって加えられる力を受け止めることができる。放電容器の端部領域における形状と目標形状との個別の偏差を補正することができるというグラファイトリングの能力は、上記のグラファイトリングにスリット(例えば軸方向に延びるスリット)を入れて構成し、これによってグラファイリングが、端部領域の異なる周囲長さに殊に良好に適合できるようにすることによって促進することができる。また準備したグラファイトリングは、少なくとも1つのビードを有することができ、このビードは、本発明の第1の側面におけるクランプリングのビードによって得られるのと同じ効果を有することができ、すなわちこのグラファイトリングにより、それに作用する力が補正されて分散され、この放電容器が、所定の範囲内で基本形状ないしは目標形状から偏差している場合でも実質的につねに同じ力が放電容器に作用するようになるのである。上記のグラファイトリングにおけるビードにより、力の作用による結合に有効な良好な力の伝達が保証される。
【0009】
上記の本発明による2つの側面は、有利な1実施形態において互いに組み合わせられ、グラファイトリングは上記の端部領域に取り付けられ、またビードを有するクランプリングが使用されるのである。
【0010】
本発明による放電ランプは、請求項9の上位概念に記載した基本構造において、それ自体公知のように際立った特性を有しており、上記の口金スリーブは、力の作用による結合によって上記の放電容器に接続されるのである。この力の作用による結合によって保証されるのは、その形状が基本形状から偏差する場合であってもつねに同じ力が放電容器に作用することであり、これによって放電容器の損傷を回避することができる。本発明による放電ランプは、本発明による2つの方法によって提供することが可能である。上記の力の作用による結合は、口金スリーブにクランプリングを取り付けることによって得ることができる。このクランプリングは少なくとも1つのビード(有利にはその外周にわたって軸方向に延びる一連のビード)を有し、上記の力の作用による結合は、上記の口金スリーブと端部領域との間でグラファイトリングを配置することによって形成することができる。ここでこのグラファイトリングは有利にはスリットが入れられており、付加的または択一的には有利には少なくとも1つのビードを有する。
【0011】
以下では実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1A〜1Dは、本発明による方法の有利な実施形態の種々異なるステップにおいて高圧放電ランプを作製する際のその構成を示す図である。
【図2】本発明による方法によって使用されるグラファイトリングを示す図である。
【図3】本発明による方法で使用される口金スリーブの半断面図である。
【図4】本発明による方法によって使用されるクランプリングを示す図である。
【図5】1つのビードを有するクランプリングの側面図および正面図である。
【図6】図5a,5bのクランプリングに対する測定値を標準クランプリングと比較して示す線図である。
【0013】
発明の有利な実施形態
本発明による方法は、図1Aに示した状態にある作製中の高圧放電ランプを出発点とする。この状態は、反対側に接続される円筒形の2つのシャフト12を有する放電容器10をガラスまたは石英ガラスによって形成した後、ガラス容器10に設けられている電極14および16に、電極支持ロッド18および20をはんだ付けすることによって得られる。これによってこれらのロッドが上記の電極用の外部端子として使用され、すなわちこれらの電極とのコンタクトが可能になるのである。すなわち電極支持ロッド18および20は、円筒形のシャフト12から、つまり放電容器10の2つの端部領域から飛び出しているのである。さてここで高圧放電ランプをソケットにはめ込むことができるようにする口金を準備する。上記の口金を介して電極支持ロッド18ないしは20への電気コンタクトを形成することができる。以下で説明する方法では、ただ1つの口金を放電容器10に被着する。ふつう上記の放電容器のシャフト状の両側に一つずつの口金が被着されるが、ここでは簡単にするため、一方の側だけについて説明する。
【0014】
図1Aの状態から出発して、2つのシャフト12のうちの1つには図2に斜視図で示したグラファイトリング22が取り付けられる。このグラファイトリングは、ほぼ完全に円形の断面を有しているが、軸方向に延びるスリット24を有する。グラファイトリング22の内側面も外側面もウェーブ状に設計されている。これは、軸方向に延びるビートによって得られるものであるとみなすことができる。この波形によって摩擦が増大し、これによってグラファイトリング22は殊にしっかりと放電容器10に載置することができる。ここでは、力を個々に殊に良好に補正することもできる。スリット24により、シャフト12が基本形状から偏差する放電容器10にも同じ1つのグラファイトリングを使用することができる。ここでこの放電容器は、完全には円筒形ではないかまたは目標半径とは異なる半径を有する。
【0015】
図1Bから出発すると、上記のグラファイトリングには、図3に半分だけ示した口金スリーブ26が押し込まれている。口金スリーブ26の端部領域には漏斗部28が構成されており、これは電極支持ロッド18をガイドするのに使用される。すなわちこの漏斗部は、口金スリーブ26が、電極支持ロッド18を有する放電容器10に取り付けられるのを容易にするのである。口金スリーブ26は反対側に円形状の断面を有しており、また一連の軸方向のスリット30を有する。これらのスリットにより、トング32などの個々の部分が、相応する別の部分(トング)32とは無関係に動けるようになる。したがってスリット30により、フレキシビリティが向上するのである。
【0016】
口金スリーブ26を放電容器10に固定するため、図4に詳しく斜視図で示したクランプリング34を口金スリーブ26に取り付ける。クランプリング34は、軸方向に延びる複数のビード36を有する。これらの複数のビード36を生じさせるため、クランプリング34のプロフィールをウェーブ状にする。これらの複数のビード36により、クランプリング34はフレキシブルである。放電容器10のシャフト12が殊に大きくなってしまった場合、これらのビードにより、クランプリング34は外側に向かってたわみ、シャフト12に過剰な力を及ぼさない。したがって上記のビードによって保証されるのは、クランプリング34によって口金スリーブ26と、グラファイトリング22と、シャフト12とに及ぼされる押圧力が実質的に一定になることである。これにより、図1A〜1Dによって説明した作製方法全体を自動化することができる。
【0017】
グラファイトリング22は有利には密度1.4g/cm3の純粋なグラファイトからなり、口金スリーブ26はニッケル鋼からなり、クランプリング34は黄銅(CuZn37)からなる。
【0018】
ビードなしのクランプリングを使用する際にグラファイトリング22だけを準備することによって、またはこの逆にグラファイトリング22のタイプのグラファイトリングを使用することなくビード36を有するクランプリング34だけを準備することにより、口金スリーブ26と、放電容器10のシャフト12との力の作用による結合が得られる。上で示したように2つの手段を同時に実現する場合、力の作用による結合を最適に構成することができ、また目標形状からシャフト12の形状が大きく偏差している場合であってもこれを保証することができる。
【0019】
図5aおよび5bには1つのビード42だけを有する幅Bの本発明のクランプリング40が側面図ないしは正面図で示されている。ビード42は、外側に向かって、すなわちクランプリングの内側から離れるように曲げられている。これによってランプシャフトの方向に押圧力が局所的に高まることが回避される。クランプリング40は、壁圧0.75mmのニッケル黄銅(CuZn37)からなる。
【0020】
図6には1つのビードおよび相異なる3つの幅A,B,Cを有しかつ図5aおよび5bに示したクランプリングの測定結果が、ビードのない標準クランプリングDに比較して示されている。Y軸には測定した押圧力がニュートン(N)で、またX軸にはグラファイトリングの密度がg/cm3でプロットされている。本発明によるクランプリング40の幅bは、ケースAでは15mm,ケースBでは20mmまたケースCでは25mmである。これらの測定値が示しているように上記の押圧力は、測定公差の範囲内でほぼ一定である。すなわち本発明によるクランプリング40のビード42により、比較的高い密度が補正され、ひいてはグラファイトリングのコンプライアンスが十二分に補正されている。これに対して標準クランプリングでは押圧力が、グラファイト密度の増大にしたがって上昇し、口金領域においてランプ容器が損傷してしまう危険性が高まる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ用口金を取り付ける方法において、
− 前記の放電容器(10)の内部に設けられている電極(14,16)とコンタクトし得る端部領域(12)を有する放電容器(10)を準備し、
− 材料(22)を前記の端部領域(12)に被着し、
− 当該材料(22)を有する端部領域(12)に口金スリーブ(26)を取り付け、
− クランプリング(34)を前記の口金スリーブ(26)に取り付ける形式の方法において、
少なくとも1つのビード(36)を有するクランプリング(34)を取り付けることを特徴とする、
放電ランプ用口金を取り付ける方法。
【請求項2】
クランプリング(34)を取り付け、該クランプリングは、軸方向に延びる一連のビード(36)をその外周にわたって有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の材料をグラファイトリング(22)として準備し、
当該グラファイトリングを前記の端部領域(12)に被せる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の準備したグラファイトリング(22)にスリットを設ける、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の準備したグラファイトリング(22)は少なくとも1つのビードを有する、
請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
放電ランプ用口金を取り付ける方法において、
− 前記の放電容器(10)の内部に設けられている電極(14,16)とコンタクトし得る端部領域(12)を有する放電容器(10)を準備し、
− 材料(22)を前記の端部領域(12)に被着し、
− 当該材料(22)を有する端部領域(12)に口金スリーブ(26)を取り付け、
− クランプリング(34)を前記の口金スリーブ(26)に取り付ける形式の方法において、
前記の材料をグラファイトリング(22)として準備し、
当該グラファイトリングを前記の端部領域(12)に被せることを特徴とする、
放電ランプ用口金を取り付ける方法。
【請求項7】
前記の準備したグラファイトリング(22)にスリットを設ける、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の準備したグラファイトリング(22)は少なくとも1つのビードを有する、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
放電容器(10)と口金スリーブ(26)とを有する放電ランプであって、
前記の放電容器には、当該放電容器の内部に設けられている電極(14)への電流端子が設けられている端部領域(12)が準備されており、
前記の口金スリーブは、端部領域(12)に取り付けられておりかつ電流端子に電気接続されている形式の放電ランプにおいて、
前記の口金スリーブ(26)は、力の作用による結合によって前記の放電容器(10)に接続されていることを特徴とする、
放電容器(10)と口金スリーブ(26)とを有する放電ランプ。
【請求項10】
前記の口金スリーブ(26)にクランプリング(34)が取り付けられており、
該クランプリングは、少なくとも1つのビード(36)、有利には軸方向に延びる一連のビード(36)をその外周にわたって有する、
請求項9に記載の放電ランプ。
【請求項11】
前記の口金スリーブ(26)と端部領域(12)との間にグラファイトリング(22)が配置されており、
当該のグラファイトリングは有利にはスリットが入れられており、および/または少なくとも1つのビードを有する、
請求項9または10に記載の放電ランプ。
【請求項12】
前記の放電ランプは高圧放電ランプである、
請求項9から11までのいずれか1項に記載の放電ランプ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−521434(P2011−521434A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510843(P2011−510843)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056610
【国際公開番号】WO2009/143892
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】