説明

放電ランプ

【課題】1種類の蛍光体で、白色光を発光することのできる放電ランプを提供する。
【解決手段】内部に水銀を含む電離性媒体が封入された管11と、管11内に配置され、放電を生じさせるための一対の電極と、管の内壁に備えられた蛍光体層12とを有する放電ランプであって、蛍光体層12は、一対の電極間の放電により生じる紫外光および可視光のうち可視光を透過するとともに、蛍光体層12は紫外光を受けて、放電により生じる可視光とは異なる波長の可視光を発光する構成とする。例えば、蛍光体層の蛍光体微粒子の径を可視光の波長以下に設定する。これにより、放電により生じる可視光と、蛍光体層12が生じる可視光とを混合して白色発光を得ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関し、特に、内壁に蛍光体層が備えられ、水銀を含む電離性媒体が封入された白色放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極管や熱陰極管等の放電ランプは、図6に示したように、ガラス管61の内壁に、放電により生じた紫外光を可視光に変換する蛍光体層62を備えている。放電ランプの発光色が白色である場合、蛍光体層62は、発光波長が赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の蛍光体の混合物によって形成されている。蛍光体層62を構成する蛍光体の種類および混合比は、所望される発光色に対応させて適切に選択および設計される。
【0003】
特許文献1には、蛍光体の被覆量(単位面積あたりの蛍光体重量)を増加させることにより、封入ガス圧を増加させても発光量を維持でき、ランプ寿命を延ばすことができると記載されている。
【特許文献1】特開2003−77420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、白色放電ランプの蛍光体層は、R、G、Bの蛍光体をそれぞれ1種類以上混合した構造であり、その膜厚は、通常20μm前後と厚く形成されている。このため、使用される蛍光体の量および種類が多く、蛍光体のコストがかかる。
【0005】
また、通常、蛍光体層を作製するために、R、G、Bの3種類の蛍光体を適切な割合で混合したスラリーを作製し、このスラリーをガラス管内壁に塗布している。膜厚の大きな蛍光体層を形成するためには、高濃度のスラリーを作製する必要があり、例えば約20μmの膜厚の蛍光体層を形成する場合、用意するスラリーの蛍光体濃度は46%程度になる。高濃度で均一な高濃度スラリーを作製するためには、時間をかけて攪拌・分散を行う必要があり、スラリー製造工程に長時間を要する(通常約2日)。
【0006】
本発明の目的は、1種類の蛍光体で、白色光を発光することのできる放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、以下のような放電ランプが提供される。すなわち、内部に水銀を含む電離性媒体が封入された管と、管内に配置され、放電を生じさせるための一対の電極と、管の内壁に備えられた蛍光体層とを有する放電ランプであって、蛍光体層は、一対の電極間の放電により生じる紫外光および可視光のうち可視光を透過するとともに、蛍光体層は、紫外光を受けて、放電により生じる可視光とは異なる波長の可視光を発光する放電ランプである。これにより、放電により生じる可視光と、蛍光体層が生じる可視光とを混合して白色発光を得ることが可能になる。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、以下のような放電ランプが提供される。すなわち、内部に水銀を含む電離性媒体が封入された管と、管内に配置され、放電を生じさせるための一対の電極と、管の内壁に備えられた蛍光体層とを有する放電ランプであって、蛍光体層は、可視光波長よりも小さい粒子径をもつ蛍光体微粒子を含む、もしくは、可視光波長よりも小さい粒子径をもつ蛍光体微粒子からなることを特徴とする放電ランプである。これにより、放電により生じる可視光が蛍光体層を透過するため、この可視光と、蛍光体層が生じる可視光とを混合して白色発光を得ることが可能になる。
【0009】
上記第1および第2の態様において、蛍光体層は、波長600nm以上の可視光を発するものを用いることができる。また、蛍光体層は、二次粒子径が380nm以下の蛍光体微粒子を含む、もしくは、二次粒子径が380nm以下の蛍光体微粒子からなるものを用いることができる。また、蛍光体層は、一次粒子径が100nm以下の蛍光体微粒子を含む、もしくは、一次粒子径が100nm以下の蛍光体微粒子からなるものを用いることができる。また、蛍光体層の膜厚は、10μm以下に設定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明では、低圧水銀放電ランプにおける発光波長が、蛍光体の励起に従来から用いられている水銀の原子線に由来する紫外光のみならず、実際には水銀の分子線に由来する可視光にも存在することを利用する。すなわち、水銀由来の光のうち、可視光が蛍光体層を透過するのと同時に、紫外光が蛍光体によって可視光に変換される。これにより、水銀由来の可視光と、蛍光体からの可視光を合成して白色発光する放電ランプを提供するものである。
【0011】
以下、本実施の形態の放電ランプについて具体的に説明する。
本実施の形態の放電ランプは、図1に示すように、水銀を含む電離性媒体が封入されたガラス管11と、ガラス管11の内壁に配置された蛍光体層12と、ガラス管の両端に配置された一対の電極(図示せず)とを備えている。
【0012】
本実施の形態では、放電時の水銀蒸気圧が約1Pa前後となるように、水銀を含む電離性媒体の圧力を設定し、一般に低圧水銀放電ランプと呼ばれる放電ランプを構成している。しかしながら、放電時の水銀蒸気圧は約1Pa前後に限定されるものではなく、水銀を含む電離性媒体から放電時に可視光と紫外光とが発光される圧力範囲であればよい。すなわち、一般に低圧水銀放電ランプと呼ばれる、放電時の水銀蒸気圧が1〜10Paの圧力範囲のみならず、放電時の水銀蒸気圧を1〜10Paの圧力範囲に設定することも可能である。10Paは、一般に高圧水銀放電ランプと呼ばれる水銀蒸気圧の範囲に属するが、10Paの範囲までは放電時に電離性媒体から可視光と紫外光とが発光されるためである。
【0013】
水銀を含む電離性媒体としては、例えば、水銀とArおよびNeガスとを封入することができる。なお、電極の陰極形状は、一般に冷陰極と呼ばれる電極であっても、熱陰極と呼ばれるフィラメント型の電極であってもよい。
【0014】
本実施の形態の低圧水銀放電ランプを放電させると、ガラス管11の内部では、水銀の原子線に由来する波長185nmと254nmの紫外光が生じるとともに、図2に示したように、水銀の分子線に由来する波長405nm、436nm、547nm、579nmの可視光が発光される。
【0015】
蛍光体層12は、水銀由来の可視光を透過させてガラス管11の外に放出するために、蛍光体の粒子径が可視光の波長以下に設定されている。具体的には、蛍光体層12は、粒子径380nm以下の蛍光体微粒子を含む。特に、蛍光体層12を構成する蛍光体粉末は、粒子径380nm以下の蛍光体微粒子から成ることが好ましい。ここでいう粒子径380nm以下の蛍光体微粒子とは、蛍光体粉末を構成する最も小さい粒子である一次粒子が凝集または結合して形成される二次粒子の粒子径が380nm以下であることをいう。特に、二次粒子径が100nm以下であることがより好ましい。一次粒子径は、ナノ粒子と呼ばれる100nm以下であることが望ましく、50nm以下であることがより好ましい。一次粒子が二次粒子を形成していない場合には、蛍光体微粒子の一次粒子の粒子径が380nm以下であれば、ここでいう粒子径380nm以下の蛍光体微粒子に該当する。なお、本実施の形態でいう粒子径は、どのような方法で測定したものであってもよく、二次粒子または一次粒子の粒子径が実質的に上記数値であればよい。
【0016】
蛍光体層12を構成する蛍光体は、その発光波長が、水銀由来の可視光波長と合成された場合に白色光となるものを用いる。水銀由来の可視光波長は、ガス圧によって変化するが、本実施の形態の低圧水銀放電ランプの場合、水銀由来の可視光は、波長405nm、436nm、547nm、579nmの青〜緑帯域の光であるため、蛍光体層12としては、赤色帯域の光を発する蛍光体を少なくとも含む構成とする。具体的には、蛍光体層12は、600nm以上780nm以下の光を発する蛍光体を含む。赤色発光する蛍光体としては、例えば、Y:Eu3+、GeO:Mn2+、(Y,Gd)(P,V)O:Eu3+,0.5MgF・3.5MgO・GeO:Mn2+等を用いることができる。
【0017】
なお、水銀由来の青〜緑帯域の光の強度によっては、青〜緑帯域の可視光強度を高めるために、青〜緑帯域の光を発する蛍光体を蛍光体層12がさらに含む構成とすることも可能である。
【0018】
蛍光体層12の膜厚は、蛍光体による赤色光が所望する光量だけ得られるように設定する。ただし、蛍光体層12の膜厚が大きすぎると水銀由来の可視光の透過率が低下するため、透過率を考慮して膜厚を定める。例えば、膜厚は10μm以下であることが望ましい。
【0019】
つぎに、本実施の形態の放電ランプの製造方法について説明する。
まず、上記粒子径の赤色蛍光体を製造する。蛍光体組成の原料を溶媒に溶解した原料溶液を作製し、これを高周波熱プラズマ中に導入して蒸発させる。得られた上記蒸発物を冷却することにより、蛍光体の微粒子を作製する。
【0020】
得られた微粒子の結晶系を、所望の赤色発光特性が得られる結晶系に変えるために、必要に応じて熱処理をすることも可能である。この場合、熱処理は、処理後の粒子径が、可視光波長以下(例えば380nm以下)となる条件で行う。
【0021】
得られた蛍光体微粒子と、樹脂等のバインダーとを所定の溶媒に分散させて蛍光体スラリーを作製する。必要に応じて、高分子系の分散剤を添加することもできる。スラリー中の蛍光体微粒子濃度は、蛍光体層12の膜厚や塗布方法に対応させて調節する。例えば、蛍光体層12が約3μmである場合、スラリー濃度は約10wt%程度に設定する。
【0022】
得られた蛍光体スラリーを、ガラス管11の内壁に塗布後、乾燥させることにより成膜し、蛍光体層12を得る。塗布方法は、一般的な冷陰極放電ランプの蛍光体の塗布方法を用いることができる。スラリー濃度および塗布方法は、膜厚が10μm以下の所定の膜厚になるように調整する。
【0023】
この後、一般的な冷陰極放電ランプの製造方法と同様に、電極を配置し、水銀と電離性ガスとを封入する。以上により、本実施の形態の低圧冷陰極放電ランプを製造することができる。
【0024】
本実施の形態の放電ランプは、発光色は白色であるが、水銀由来の青〜緑色の可視光を利用するため、蛍光体層12としては、赤色の蛍光体を用いればよく、1種類の蛍光体で白色の放電ランプを作製することができる。よって、従来のRGBの3種類以上の蛍光体を用いる放電ランプと比較して、蛍光体の種類が1/3に低減でき、蛍光体のコストを低く抑制できる。また、蛍光体の種類のみならず、蛍光体量全体も低減できるため、蛍光体コストをさらに低減できる。
【0025】
また、蛍光体が1種類でよいため、蛍光体層12の膜厚も小さくできる(単純計算では1/3にできる)。よって、蛍光体スラリーの濃度も低濃度(例えば10wt%)でよく、従来のように3種類以上の蛍光体を用いて40%以上の濃度のスラリーを製造するために要していた時間(約2日)と比較すると、スラリー製造工程の所要時間を大幅に低減できる。
【0026】
また、蛍光体量を低減できること、蛍光体層の膜厚を薄くできること、スラリー中の蛍光体濃度を低くできることから、蛍光体層の可視光透過率を高くすることができる。よって、可視光透過率の高い蛍光体層を備えた、高効率な白色の放電ランプを作製することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、白色放電ランプの色度設定が、赤色の蛍光体層12の膜厚のみで調整することができる。よって、従来のようにRGBの3種類以上の蛍光体の混合比および膜厚で調整する場合と比較して、色度設定が容易になる。
【0028】
なお、上述したように、水銀由来の青〜緑帯域光の強度が小さい場合には、青〜緑帯域の可視光強度を高めるために、青〜緑帯域の光を発する蛍光体を蛍光体層12がさらに含む構成とすることも可能である。この場合も青〜緑帯域の光を発する蛍光体の粒径は、可視光が透過できるように赤蛍光体と同様に設定する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、蛍光体として、Y:Eu3+を用いて、上記実施形態の構成の低圧放電ランプを製造した。
【0030】
まず、Y:Eu3+蛍光体の微粒子を次のように製造した。硝酸イットリウムと硝酸ユーロピウムを蒸留水に溶解させて原料溶液を作製した。原料溶液の濃度は0.1mol/lで、原料溶液の組成は、Y:Eu=93:7(mol%)となるように調製した。この原料溶液を10cc/minの供給量で高周波熱プラズマ中に導入して蒸発させ、得られた蒸気を冷却させることでY:Eu3+蛍光体ナノ粒子を得た。ただし、高周波熱プラズマは、高周波熱プラズマ発生装置のプラズマトーチ部に備えられた高周波発振用コイルに、約4MHz、約80kVAの高周波電圧を印加し、プラズマガスとして、アルゴン60リットル/分、酸素20リットル/分の混合ガスを導入することにより発生させた。蛍光体ナノ粒子製造時の装置内圧力(系内圧力)は、50kPaとした。
【0031】
得られたナノ粒子は、結晶系が単斜晶系で粒子径が約10nm、YとEuのモル比は92:8であった。当該ナノ粒子の結晶系を立方晶系に変えるために、800℃以上で熱処理を行った。熱処理後の粒子径(一次粒子径)は約50nmに成長していた。これにより、一次粒子径が約50nm、結晶系が立方晶系のY:Eu3+のナノ粒子を得た。なお、本実施例において単斜晶系のナノ粒子の粒子径(約10nm)は、BET法(ガス吸着法による比表面積測定による粒子径評価)により測定したものである。また、立方晶系の一次粒子の粒子径(約50nm)は、BET法およびXRD法により測定したものであり、両者で同等の測定結果が得られた。
【0032】
このナノ粒子を、酢酸ブチル溶液に分散させてナノ粒子の蛍光体スラリーを作製した。スラリーの作製にはメディアミルを使用した。なお、バインダーとして、ニトロセルロースを混合した。ニトロセルロースの濃度は、混合後の蛍光体スラリーの粘度が180mPa・S(E型回転粘度計:東京計器製)になるように調製した。また、分散を促進させ、安定したスラリー液を得るために高分子系の分散剤を添加した。
【0033】
以上により、得られた蛍光体スラリーの蛍光体濃度は10wt%であった。また、スラリー中のY:Eu3+蛍光体(二次粒子)の粒子径を測定したところ、平均粒子径で340nmであった。二次粒子の粒子径(340nm)は、DLS(動的光散乱法)で測定した平均粒子径である。平均粒子径は、体積平均粒子径、個数平均粒子径ともに、同等の値を得た。
【0034】
この蛍光体スラリーを用いて冷陰極放電ランプを作製した。上記蛍光体スラリーを従来と同様の条件でガラス管に塗布することにより蛍光体層12を成膜した。得られた蛍光体層12の膜厚は3μmであった。この後、従来の冷陰極放電ランプと同じ条件にて管径2mm、長さ314mmのランプを作製した(ガス:Ar/Ne、ガス圧:60Torr、電極:Moカップ)。これにより、本実施例の冷陰極放電ランプを完成させた。
【0035】
ランプの発光特性を測定したところ、図3に示した発光スペクトルが確認された。図3により、水銀の分子線に由来する波長405nm、436nm、547nm、579nmの青〜緑色の可視光と、Y:Eu3+蛍光体に由来する612nmの赤色光とが発光されていることがわかる。よって、色度(0.33,0.32){CIE1931XYZ}の白色ランプが作製できることが確認された。
【0036】
比較例1として蛍光体を塗布せず、それ以外は本実施例と同条件でランプを作製した。この比較例1の放電ランプの発光スペクトルを測定したところ、可視光域については図2と同様であり、水銀の分子線に由来する波長405nm、436nm、547nm、579nmの青〜緑色の可視光のみが発光されていることが確認された。このランプは色度(0.24,0.29)であり、白色発光を示さなかった。
【0037】
本実施例と、比較例1のランプ特性を比較した結果、微粒子の蛍光体層12を備える本実施例のランプは、蛍光体層12を備えない比較例のランプより輝度が約20%向上することを確認した。
【0038】
また、本実施例で得られた蛍光体層12(膜厚3μm)の可視光透過率を測定した。その結果を、図4に示す。図4のように380nm〜780nmの可視波長域全域で、透過率は76%以上であり、高効率で可視光が透過することが確認された。これにより、水銀の分子線に由来する波長405nm、436nm、547nm、579nmの青〜緑色の可視光が高効率で蛍光体層12を通過し、本実施例のランプが発する白色光を構成していることが確認できた。
【0039】
また、蛍光体層12の可視光透過率との比較のために、比較例2として、従来の製造方法で蛍光体層を作製し、可視光透過率を測定した。比較例2の蛍光体層の作製に用いた蛍光体は、粒径5μmのY:Eu3+蛍光体であり、従来の製造方法により膜厚14μmに形成した。比較例2の蛍光体層の可視光透過率は、図4の通りであった。図4のように、可視光透過率は、380nm〜780nmの可視波長域全域で透過率が30%程度に過ぎなかった。よって、従来の製造方法で形成した蛍光体層(比較例2)では、水銀の分子線に由来する波長405nm、436nm、547nm、579nmの青〜緑色の可視光を十分に透過することができず、この透過光を利用して蛍光体層が発する赤色光との混合により、白色光を得ることは困難であることが確認できた。
【0040】
つぎに、本実施例で得られる蛍光体層12の透過率の膜厚依存性を測定するために、種々の膜厚の蛍光体層12を作製し、膜厚と可視光透過率との関係を測定した。その結果を図5に示す。図5からわかるように膜厚10μm以下では55%以上の高透過率が得られるが、膜厚10μmを越えると透過率が55%以下となることがわかった。よって、本実施例において蛍光体層12の膜厚は、10μm以下に設定することが望ましいことがわかった。
【0041】
比較のために、比較例3として、従来の赤蛍光体を分散させた高濃度スラリー(濃度約46%)で、種々の膜厚の蛍光体層を作製し、膜厚と可視光透過率との関係を測定した。その結果を図5に示す。比較例3の蛍光体層は、図5のように膜厚を9μmまで薄くしても可視光透過率は、50%であり可視光透過率が十分ではないことが確認された。なお、膜厚を9μm以下にすることは困難であった。よって、従来の方法で作成した比較例3の蛍光体層は、膜厚を可能な限り薄くしても、水銀の分子線に由来する青〜緑色の可視光を十分に透過することはできず、この透過光を利用して蛍光体層が発する赤色光との混合により、白色光を得ることは困難であることを確認できた。
【0042】
以上のことより、本実施例においては可視光波長以下の粒子径をもつ蛍光体を用いることにより、従来の放電ランプの蛍光体層と比較して、蛍光体層の蛍光体量を少ない範囲で、蛍光体層の膜厚を薄い範囲で、また、蛍光体層の蛍光体濃度を低い範囲で設計することを可能とし、可視光透過率を高めることができた。そして、可視光透過率の高い蛍光体層を備えることにより、水銀由来の可視光および蛍光体からの可視光を効率よく透過し、高効率な白色の放電ランプを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態の白色放電ランプの構造と発光原理を示す説明図。
【図2】本実施の形態の放電ランプのガラス管内部の発光スペクトル(可視光域)を示すグラフ。
【図3】実施例の放電ランプの発光スペクトルを示すグラフ。
【図4】実施例の放電ランプの蛍光体層12および比較例2の蛍光体層について測定した可視光透過率を示すグラフ。
【図5】実施例の放電ランプの蛍光体層12について膜厚と透過率との関係を示すグラフ。
【図6】従来の放電ランプの蛍光体層62の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0044】
11…ガラス管、12…蛍光体層、61…ガラス管、62…蛍光体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水銀を含む電離性媒体が封入された管と、前記管内に配置され、放電を生じさせるための一対の電極と、前記管の内壁に備えられた蛍光体層とを有する放電ランプであって、
前記蛍光体層は、前記一対の電極間の放電により生じる紫外光および可視光のうち可視光を透過するとともに、前記紫外光を受けて、前記放電により生じる可視光とは異なる波長の可視光を発光することを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
内部に水銀を含む電離性媒体が封入された管と、前記管内に配置され、放電を生じさせるための一対の電極と、前記管の内壁に備えられた蛍光体層とを有する放電ランプであって、
前記蛍光体層は、可視光波長よりも小さい粒子径をもつ蛍光体微粒子を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放電ランプにおいて、前記蛍光体層は、波長600nm以上の可視光を発することを特徴とする放電ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放電ランプにおいて、前記蛍光体層は、二次粒子径が380nm以下の蛍光体微粒子を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放電ランプにおいて、前記蛍光体層は、一次粒子径が100nm以下の蛍光体微粒子を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放電ランプにおいて、前記蛍光体層の膜厚は、10μm以下であることを特徴とする放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−311302(P2007−311302A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141748(P2006−141748)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】