説明

放電ランプ

【課題】封止管内のガラス部材のクラックを防止し、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止し、長い使用寿命を得る。
【解決手段】放電ランプは、放電容器1と、封止管12の内部の柱状のガラス部材7と、ガラス部材7の発光管11側の端面に対向して配置された金属製の集電板5と、先端が発光管11内に伸び、先端に電極2が設けられ、電極2とは反対側の後端側が集電板5の中心に形成された貫通孔に挿通されて集電板5に固定された内部リード棒3と、よりなり、内部リード棒3の後端側の基端は、集電板5の端面より突出し、ガラス部材7と集電板5との間に金属体Mが配置され、金属体Mは、内部リード棒3の基端が挿入される空隙を有し、集電板5の端面より突出した内部リード棒3の基端の突出長は、金属体Mに設けられた空隙の内部リード棒3の基端が突出する方向の長さより短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関するものであり、さらに詳しくは、特に大電流用に適した気密封止構造を有する放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電ランプ、例えば、水銀ランプは、一般に、ランプより放射される紫外線を利用する分野、例えば光化学産業分野、半導体デバイスの製造分野、その他の分野で広く用いられている。
【0003】
大電流用の高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプにおいては、発光ガスの主成分である水銀の封入量が大きくて点灯時の発光管内ガス圧が非常に高く、しかも、発熱量が大きく、従って、特に気密封止部のガラスにおいては耐熱性および耐圧性が大きいことが必要とされる。そして、点灯中においては発光管内の水銀が完全に蒸発していることが必要であり、このため点灯中の発光管内においては水銀の凝縮が生じるような低い温度部分がないことが必要である。
【0004】
このようなことから、従来の高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプにおいては、封止管を形成するガラスを給電用のリード棒に直接溶着することにより、封止管の気密封止を達成するいわゆるロッドシール構造ではなく、封着用の金属箔を用いたいわゆる箔シール構造が採用されている。
【0005】
図7は、箔シール構造を有する高圧水銀ランプの一例を示す説明図である。1は、発光管11とこれに続く封止管12とからなる放電容器である。この放電容器1の発光管11内に電極2が配置され、この電極2は内部リード棒3によって支持されている。内部リード棒3は内部リード棒3を保持するガラス製の保持用筒体4によって封止管12内に保持されている。
【0006】
そして、内部リード棒3の電極2とは反対側の後端側は、モリブデン等の高融点金属からなる集電板5の貫通孔に挿通されて集電板5に溶接されており、この集電板5の発光管11側の面に給電用金属箔6が溶接されている。給電用金属箔6は円柱状のガラス部材7の外周において、その周方向に離間して、当該ガラス部材7の軸方向に帯状に例えば5枚配置されている。
【0007】
そして、給電用金属箔6は、集電板5に溶接された方向と反対側の他端部において、皿状の金属部材8に溶接されており、この金属部材8を介して外部リード棒9と電気的に接続されている。
外部リード棒9は、外部リード棒9を保持するガラス製の保持用筒体41で保持され、金属部材8を貫通し、この金属部材8に溶接されて、ガラス部材7に形成された孔71に挿入されている。
【0008】
そして、ガラス部材7と集電板5との間にモリブデン製の金属箔M1が配置されており、内部リード棒3を保持する保持用筒体4と集電板5との間にモリブデン製の金属箔M2が配置されている。
金属箔M1は、図8(a)に示すように、貫通孔を有さない円盤状の金属箔であって、その直径は集電板5の直径とほぼ同じである。
金属箔M2は、図8(b)に示すように、中心に内部リード3が貫通する貫通孔が形成されたリング状の金属箔であって、その直径は集電板5の直径とほぼ同じである。
なお、他方の封止管部も、同様の構造なので説明を省略する。
【0009】
上記のように構成された放電容器1の発光管11内に電極2を位置するように挿入配置する。そして、この放電容器1を、ガラス旋盤などにより周方向に回転させながら、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理して、この封止管12の内周とガラス部材7の外周とを給電用金属箔6を介して気密に溶着させる。
さらに、保持用筒体4と対向する部分の封止管12のガラスも加熱処理して、この封止管12の内周と保持用筒体4と溶着させる。
なお、他方の封止管部も、同様の構造なので説明を省略する。
【0010】
封止管12の加熱処理工程において、ガラス部材7と集電板5が接すると、それぞれの部材の膨張係数の違いによって、ガラス部材7に微細なクラックが生じることがあるので、ガラス部材7と集電板5が接触しないように、ガラス部材7と集電板5との間に金属箔M1を配置している。
同じように、封止管12の加熱処理工程において、内部リード3を保持する保持用筒体4と集電板5が接すると、それぞれの部材の膨張係数の違いによって、保持用筒体4に微細なクラックが生じることがあるので、保持用筒体4と集電板5が接触しないように、保持用筒体4と集電板5との間に金属箔M2を配置している。
なお、ランプによっては、保持用筒体4と集電板5との間に金属箔M2を配置しない構造のランプも存在する。
【0011】
しかしながら、ガラス部材7と集電板5との間に金属箔M1を配置した構造であっても、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理する工程において、場合によってはガラス部材7の金属箔M1と接している部分にクラックが入り、点灯中に、クラックが成長し、最終的に、発光管11内のガスがリークしたり、封止管12が破壊されるということがあった。
【0012】
これは、図9に示すように、内部リード棒3の電極2とは反対側の後端側は、集電板5の貫通孔に挿通されて集電板5に溶接されるものであるが、内部リード棒3の後端側の基端3aと集電板5の端面5aとを一致させることが難しく、内部リード棒3の基端3aが集電板5の端面5aより突出して溶接される場合がある。
このような構造の場合、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理する工程において、この突出した内部リード棒3の基端3aが金属箔Mをガラス部材7側に押し圧し、押し圧された部分のガラス部材7にクラックが入るものであった。
【特許文献1】特開2000−149873公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、封止管内に配置されたガラス部材にクラックが発生することを防止し、最終的に、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止でき、長い使用寿命を得ることができる放電ランプを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の放電ランプは、発光管の両端に封止管が連設された放電容器と、前記封止管の内部に配置された柱状のガラス部材と、前記封止管の内部であって、前記ガラス部材の発光管側の端面に対向して配置された金属製の集電板と、先端が前記発光管内に伸びて、その先端に電極が設けられ、電極とは反対側の後端側が前記集電板の中心に形成された貫通孔に挿通されて前記集電板に固定された内部リード棒と、前記内部リード棒の外周と前記封止管の内周との間に配置された内部リード棒を保持するガラス製の保持用筒体と、前記ガラス部材の外周に沿って伸び、一端部が前記集電板に接続され、他端部が外部リード棒に電気的に接続された給電用金属箔とよりなる放電ランプにおいて、前記内部リード棒の後端側の基端は、前記集電板の端面より突出しており、前記ガラス部材と前記集電板との間に金属体が配置され、前記金属体は、前記内部リード棒の基端が挿入される空隙を有し、前記集電板の端面より突出した前記内部リード棒の基端の突出長をL1、前記金属体に設けられた空隙の前記内部リード棒の基端が突出する方向の長さをL2とすると、L1<L2であることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の放電ランプは、請求項1に記載の放電ランプであって、特に、前記金属体は、中心に貫通孔が形成された複数のリング状の金属箔が積層されたものであって、前記それぞれの金属箔の貫通孔が重なりあって連通孔が形成され、前記連通孔が前記金属体に設けられた空隙になっていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の放電ランプは、請求項1に記載の放電ランプであって、特に、前記金属体は、平坦部と、当該平坦部の周辺が前記集電板の方向に折り曲げられた折り曲げ部と、からなる金属箔であって、前記金属箔の平坦部における内部リード棒側の表面と、前記金属箔の折り曲げ部の内縁によって凹部が形成され、前記凹部が前記金属体に設けられた空隙になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明の放電ランプによれば、集電板の貫通孔に内部リード棒の後端側が溶接され、この集電板と封止管の内部に配置された柱状のガラス部材との間に金属体が配置されているので、この金属体によって、ガラス部材と集電板を接することがなく隔離することができる。さらに、金属体は、内部リード棒の後端側の基端が挿入される空隙を有し、内部リード棒の基端は、集電板の端面より突出しており、集電板の端面より突出した内部リード棒の基端の突出長をL1、金属体に設けられた空隙の前記内部リード棒の基端が突出する方向の長さをL2とすると、L1<L2であるので、封止管の外部からバーナー等を用いて加熱処理する際に、内部リード棒の後端側の基端が集電板の端面から突出した状態になっていても、内部リード棒の基端とガラス部材が接触しない構造になっているので、内部リード棒の基端がガラス部材を押し圧することがないので、ガラス部材にクラックが発生することを防止しでき、最終的に、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止でき、長い使用寿命を得ることができる。
【0018】
さらに、請求項2に記載の本発明の放電ランプによれば、金属体は、中心に貫通孔が形成された複数のリング状の金属箔が積層されたものであって、それぞれの金属箔の貫通孔が重なりあって連通孔が形成され、この連通孔が金属体に設けられた空隙になっており、この空隙に、集電板の端面より突出した内部リード棒の基端が挿入されているので、簡単な構造でありながら、確実に、ガラス部材に内部リード棒の基端が当接することを防止できる。
さらに、請求項3に記載の本発明の放電ランプによれば、金属体は、平坦部と、この平坦部の周辺が集電板の方向に折り曲げられた折り曲げ部と、からなる金属箔であって、この金属箔の平坦部における内部リード棒側の表面と金属箔の折り曲げ部の内縁によって凹部が形成され、この凹部が前記金属体に設けられた空隙になっており、この空隙に、集電板の端面より突出した前記内部リード棒の基端が挿入されているので、簡単な構造でありながら、確実に、ガラス部材に内部リード棒の基端が当接することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の放電ランプを図を用いて説明する。
図1は、本発明の放電ランプの断面図である。
1は、発光管11とこれに続く封止管12とからなる放電容器である。この放電容器1の発光管11内に電極2が配置され、この電極2は、先端が発光管11内に伸びる内部リード棒3の先端に設けられている。
内部リード棒3は、当該内部リード棒3の外周と封止管12の内周との間に配置されたガラス製の保持用筒体4の貫通孔に挿入されて封止管12内に保持されている。
内部リード棒3の電極2とは反対側の後端側は、モリブデン等の高融点金属からなる集電板5の中心に形成された貫通孔に挿通されて集電板5に溶接されて固定されている。
【0020】
封止管11の内部には円柱状のガラス部材7が配置されている。
集電板5は、封止管12の内部であって、ガラス部材7の発光管11側の端面に対向して配置されている。
ガラス部材7は、集電板5と対向する面が平面状になっている。
この集電板5の発光管11側の面に給電用金属箔6の一端側が溶接され、この給電用金属箔6は円柱状のガラス部材7の外周に沿って軸方向に伸びており、例えば、当該ガラス部材7の周方向に離間して帯状に5枚配置され、給電用金属箔6の集電板5に溶接された方向と反対側の他側は、皿状の金属部材8に溶接されており、この金属部材8を介して外部リード棒9電気的に接続されている。
なお、集電板5の側面に給電用金属箔6の一端側が溶接されていてもよい。
【0021】
外部リード棒9は、外部リード棒9を保持するガラス製の保持用筒体41で保持され、金属部材8を貫通し、この金属部材8に溶接されて、ガラス部材7に形成された孔71に挿入されている。
【0022】
そして、ガラス部材7と集電板5との間に金属体Mが配置されており、内部リード棒3を保持する保持用筒体4と集電板5との間にモリブデン製の金属箔M2が配置されている。
金属体Mは後段で詳細に説明する。
金属箔M2は、図8(b)に示すように、中心に内部リード3が貫通する貫通孔が形成されたリング状の金属箔であって、その直径は集電板5の直径とほぼ同じである。
なお、他方の封止管部も、同様の構造なので説明を省略する。
なお、ランプによっては、保持用筒体4と集電板5との間に金属箔M2を配置しない場合もある。
【0023】
次に、金属体Mの機能について詳細に説明する。
図2は、ガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
図2に示すように、ガラス部材7と集電板5との間に金属体Mが配置されており、この金属体Mは、集電板5の外径、ガラス部材7の集電板5側の端面の直径と略同じ外径10mmで、中心に内部リード棒の後端側の基端の外径よりも大きい内径5mmの貫通孔Pが形成されており、厚み0.05mmのモリブデン製の1枚の金属箔である。
【0024】
また、図2に示すように、集電板5の端面5aと内部リード棒3の基端3aとを一致させることが難しく、僅かに、内部リード棒3の基端3aが集電板5の端面5aより突出するものであり、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1とすると、L1は0.033mmである。
さらに、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L2は0.05mmである。このL2の長さは、1枚の金属箔の厚みである。
つまり、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L1<L2の関係を満たすものである。
【0025】
この結果、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理して、ガラス部材7と封止管12を溶着する際に、金属体Mをガラス部材7と集電板5との間に配置することにより、この金属体Mでガラス部材7と集電板5を完全に隔離し接触することを阻止し、しかも、集電板5の端面5aより内部リード棒3の基端3aが突出しても、突出した部分の基端3aがガラス部材7に当接しないので、ガラス部材7にクラックが発生することを防止でき、最終的に、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止でき、長い使用寿命を得ることができる。
なお、金属体M、集電板5、ガラス部材7の組み合わせとしては、例えば、金属体M、集電板5の外径と、ガラス部材7の集電板5側の端面の直径が略同じ15mmで、金属体Mの貫通穴の内径が6mmとなっている組み合わせでも同様の効果が得られる。また、例えば、金属体M、集電板5の外径と、ガラス部材7の集電板5側の端面の直径が略同じ30mmで、金属体Mの貫通穴の内径が6mmとなっている組み合わせでも同様の効果が得られる。
【0026】
図3は、本願発明の放電ランプの他の実施例である、ガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図であり、図4は、図3に示す金属体を構成する金属箔のみ取り出した斜視図である。
図3に示すように、ガラス部材7と集電板5との間に金属体Mが配置されており、この金属体Mは、中心に、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aが挿入される空隙Kを有している。
金属体Mは、図4に示す中心に貫通孔Pが形成されたリング状の金属箔Maを3枚積層した構造である。
集電板5はモリブデン製の金属板であって、厚み2mm、外径10mmで中心に内部リード3が相通される内径5mmの貫通孔が形成されている。
金属箔Maは、図4に示すように、集電板5の外径と、ガラス部材7の集電板5側の端面の直径と略同じ外径10mmで、中心に内径5mmの貫通孔Pが形成されており、厚み0.015mmのモリブデン製の金属箔である。
図3に示すように、金属体Mは、3枚の金属箔Maの貫通孔Pが重なりあって連通孔となっており、この連通孔が金属体Mに設けられた空隙Kとなっている。
【0027】
また、図3に示すように、集電板5の端面5aと内部リード棒3の基端3aとを一致させることが難しく、僅かに、内部リード棒3の基端3aが集電板5の端面5aより突出するものであり、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1とすると、L1は0.033mmである。
さらに、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L2は0.045mmである。
図3では、説明のために、それぞれの金属箔Maの間には空隙が形成されているように描かれているが、実際には空隙はなく金属箔Maは密着しており、このL2の長さは、3枚の金属箔Maの合計の厚みと等しいものである。
つまり、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L1<L2の関係を満たすものである。
【0028】
この結果、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理して、ガラス部材7と封止管12を溶着する際に、金属体Mをガラス部材7と集電板5との間に配置することにより、この金属体Mでガラス部材7と集電板5を完全に隔離し接触することを阻止し、しかも、集電板5の端面5aより内部リード棒3の基端3aが突出しても、突出した部分の基端3aの基端面3aがガラス部材7に当接しないので、ガラス部材7にクラックが発生することを防止しでき、最終的に、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止でき、長い使用寿命を得ることができる。
【0029】
なお、上記の実施例では、金属体Mは、貫通孔Pを有する金属箔Maを3枚積層した構造であるが、集電板5の端面5aより突出する内部リード棒3の基端3aの長さに応じて、金属箔Maの積層枚数を適宜変更してもよい。
【0030】
図5は、他の実施形態の金属体を用いた場合のガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
図5では、集電板5の端面5aより突出する内部リード棒3の基端3aの長さL1より、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さL2の方が長い構造であり、図8(a)に示すような貫通孔がない円盤状の金属箔M1を、複数積層された金属箔Maのうち最も集電板5に近い金属箔Maの集電板5側に配置したものである。
このような放電ランプでは、封止管を加熱処理する際に、その貫通孔がない金属箔M1は、内部リード棒3の基端3aによって、空隙K内に入り込むように変形する。
しかし、L1<L2であるため、その貫通孔がない金属箔M1が変形しても、内部リード棒3の基端3aとガラス部材7が確実に接触しない構造になり、ガラス部材7にクラックが発生することを防止できる。
【0031】
なお、図示はしないが、図8(a)に示すような貫通孔がない円盤状の金属箔M1を、図3に示す金属箔Maの間に配置しても、封止管を加熱処理する際に、その貫通孔がない金属箔M1は、内部リード棒3の基端3aによって、空隙K内に入り込むように変形するが、金属体Maの合計の厚み(この場合、金属体Maが全て密着すると金属体Maに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さL2と同じになる)L2が、集電板5の端面5aより突出する内部リード棒3の基端3aの長さL1よりも大きいため、内部リード棒3の基端3aとガラス部材7が確実に接触しない構造になり、ガラス部材7にクラックが発生することを防止できる。
【0032】
図6は、本願発明の放電ランプの他の実施例である、ガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
図6に示すように、ガラス部材7と集電板5との間に金属体Mが配置されており、この金属体Mは、1枚の金属箔Mbの周辺を折り曲げ加工した構造である。
集電板5はモリブデン製の金属板であって、厚み2mm、外径10mmで中心に内部リード3が相通される内径5mmの貫通孔が形成されている。
ガラス部材7は、その集電板5側の端面の直径が10mmである。
金属箔Mbは、平坦部Mb1と、この平坦部Mb1の周辺が集電板の方向に折り曲げられた折り曲げ部Mb2からなるものであり、平坦部Mb1における内部リード棒3側の表面Mb10と折り曲げ部Mb2の内縁Mb20によって凹部K2が形成され、この凹部K2に、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aが挿入されている。
この金属箔Mbは、厚みが0.10mm、外径が10mm、折り曲げ部Mb2の内縁mb20の開口径が7mmである。
【0033】
また、図6に示すように、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1とすると、L1は0.033mmである。
さらに、金属体Mに設けられた空隙Kである凹部K2の内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L2は0.045mmである。この実施例の場合、L2の長さは、平坦部Mb1の表面Mb10から折り曲げ部Mb2の内縁Mb20の集電板5側の先端部との間の長さのことである。
つまり、集電板5の端面5aより突出した内部リード棒3の基端3aの突出長をL1、金属体Mに設けられた空隙Kの内部リード棒3の基端3aが突出する方向の長さをL2とすると、L1<L2の関係を満たすものである。
この結果、内部リード棒3の基端3aが集電板5の端面5aより突出しても、その基端3aの突出した部分は、金属箔Mbの凹部K2に挿入され、内部リード棒3の基端3aがガラス部材7には当接しない状態になっている。
【0034】
この結果、封止管12の外部からバーナー等を用いて加熱処理して、ガラス部材7と封止管12を溶着する際に、金属体Mをガラス部材7と集電板5との間に配置することにより、この金属体Mでガラス部材7と集電板5を完全に隔離し接触することを阻止し、しかも、集電板5の端面5aより内部リード棒3の基端3aが突出しても、突出した部分の基端3aがガラス部材7に当接しないので、ガラス部材7にクラックが発生することを防止しでき、最終的に、発光管のガスリークを防止し、封止管の破損を防止でき、長い使用寿命を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明の放電ランプの説明図である。
【図2】本願発明の放電ランプのガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
【図3】本願発明の放電ランプのガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
【図4】図3に示す金属体を構成する金属箔のみ取り出した斜視図である。
【図5】本願発明の放電ランプのガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図である。
【図6】本願発明の放電ランプの他の実施例である、ガラス部材と金属体と集電板と内部リード棒のみを取り出して示す拡大断面図であり
【図7】従来の放電ランプの説明図である。
【図8】図7に示す放電ランプの金属箔のみ出した斜視図である。
【図9】集電板と内部リードの固定構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 放電容器
11 発光管
12 封止管
2 電極
3 内部リード棒
4 保持用筒体
5 集電板
6 給電用金属箔
7 ガラス部材
8 金属部材
9 外部リード棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の両端に封止管が連設された放電容器と、
前記封止管の内部に配置された柱状のガラス部材と、
前記封止管の内部であって、前記ガラス部材の発光管側の端面に対向して配置された金属製の集電板と、
先端が前記発光管内に伸びて、その先端に電極が設けられ、電極とは反対側の後端側が前記集電板の中心に形成された貫通孔に挿通されて前記集電板に固定された内部リード棒と、
前記内部リード棒の外周と前記封止管の内周との間に配置された内部リード棒を保持するガラス製の保持用筒体と、
前記ガラス部材の外周に沿って伸び、一端部が前記集電板に接続され、他端部が外部リード棒に電気的に接続された給電用金属箔とよりなる放電ランプにおいて、
前記内部リード棒の後端側の基端は、前記集電板の端面より突出しており、
前記ガラス部材と前記集電板との間に金属体が配置され、
前記金属体は、前記内部リード棒の基端が挿入される空隙を有し、
前記集電板の端面より突出した前記内部リード棒の基端の突出長をL1、
前記金属体に設けられた空隙の前記内部リード棒の基端が突出する方向の長さをL2とすると、
L1<L2である
ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記金属体は、中心に貫通孔が形成された複数のリング状の金属箔が積層されたものであって、
前記それぞれの金属箔の貫通孔が重なりあって連通孔が形成され、
前記連通孔が前記金属体に設けられた空隙になっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記金属体は、平坦部と、当該平坦部の周辺が前記集電板の方向に折り曲げられた折り曲げ部と、からなる金属箔であって、
前記金属箔の平坦部における内部リード棒側の表面と、前記金属箔の折り曲げ部の内縁によって凹部が形成され、
前記凹部が前記金属体に設けられた空隙になっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−80165(P2010−80165A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245369(P2008−245369)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】