説明

放電リアクタ

【課題】この発明は、異常放電により電極が溶融した場合でも、高圧側電極と接地電極とがショートするのを防止し、電源回路等を保護することを目的とする。
【解決手段】放電リアクタ10は、接地電極12、高圧側電極14および電源回路16を備える。高圧側電極14には、周囲の部位よりも早期に溶断する溶断部18を設ける。そして、溶断部18と電源接続部14Aとの間に位置する電極片14Bの長さLを、高圧側電極14と接地電極12との間の電極間距離Dよりも短く設定する。これにより、アーク放電等の異常放電が生じたときには、高圧側電極14を溶断部18の位置で溶断させることができる。この結果、高圧側電極14が溶断した場合でも、電源回路16側に接続された電極片14Bが接地電極12とショートするのを防止することができ、電源回路16を保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の放電によりオゾン、プラズマ等を発生させるのに好適に用いられる放電リアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1(特開2002−274814号公報)に開示されているように、放電管にパルス電圧を印加してオゾンを発生させるオゾン発生装置が知られている。この種の従来技術によるオゾン発生装置は、筒状をなす放電管の内周面に沿って設けられた接地電極と、放電管の中心軸線に沿って配置された針金状の高圧側電極とを備えている。そして、オゾン発生装置の作動時には、電源回路により発生した高電圧パルスを高圧側電極に印加し、高圧側電極と接地電極との間に放電を生じさせる。この放電により、放電管内に導入された空気中の酸素がオゾン化されるので、オゾンを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、オゾンを発生させるときに、電極間の各部位で放電が均等に生じることが好ましい。しかしながら、実際には、放電が局部的に偏って発生し、アーク放電等の異常放電が生じる場合がある。異常放電が発生すると、局部的な電流の集中等により電極の一部が溶融し、2つの電極がショートする虞れがあり、このショートによって電源回路等が故障するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、異常放電により電極が溶融した場合でも、高圧側電極と接地電極とがショートするのを防止し、電源回路等を保護することが可能な放電リアクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、筒状に形成された接地電極と、
前記接地電極の内周側に配置され、前記接地電極と所定の電極間距離を挟んで対向した状態で軸方向に延びると共に軸方向の端部側に電源接続部が設けられた高圧側電極と、
前記高圧側電極の電源接続部に接続され、前記高圧側電極と前記接地電極との間に電圧を印加する電源手段と、
前記高圧側電極の一部により形成され、前記電源接続部との間の距離が前記電極間距離よりも短くなる位置に配置されると共に、通常よりも大きな電流が流れたときに周囲の部位よりも早期に溶断する溶断部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、筒状に形成された接地電極と、
前記接地電極の内周側に配置され、前記接地電極と所定の電極間距離を挟んで対向した状態で軸方向に延びると共に軸方向の端部側に電源接続部が設けられた高圧側電極と、
前記高圧側電極の電源接続部に接続され、前記高圧側電極と前記接地電極との間に電圧を印加する電源手段と、
前記高圧側電極の一部により形成され、前記電源接続部との間の距離が前記電極間距離以上となる位置に配置されると共に、通常よりも大きな電流が流れたときに周囲の部位よりも早期に溶断する溶断部と、
前記接地電極の内周側に設けられ、前記高圧側電極の溶断部が溶断したときに当該高圧側電極が前記接地電極と接触するのを防止する絶縁体と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
第3の発明によると、前記高圧側電極には、周囲の部位よりも細幅に形成された細幅部を形成し、当該細幅部により前記溶断部を構成している。
【0009】
第4の発明によると、前記高圧側電極には、周囲の部位よりも融点が低い材料により形成された低融点部を形成し、当該低融点部により前記溶断部を構成している。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、アーク放電等の異常放電が生じた場合には、溶断部により高圧側電極の溶断位置を適切に定めることができる。即ち、溶断部は、溶断した高圧側電極のうち電源手段側に接続された部位の長さを、高圧側電極と接地電極との間の電極間距離よりも短くすることができる。よって、この部位が径方向に屈曲したとしても、接地電極とショートするのを確実に防止することができる。従って、電極溶断時には、電源手段の端子が開放状態となるだけなので、電源手段等をショートによる故障から保護することができる。
【0011】
第2の発明によれば、設計上の制約等により、高圧側電極のうち溶断部よりも電源手段側に接続された部位の長さを短尺化できない場合でも、この部位が電極溶断時に接地電極と接触するのを絶縁体によって確実に防止することができる。従って、電極溶断時には、電源手段の端子が開放状態となるだけなので、電源手段等をショートによる故障から保護することができる。
【0012】
第3の発明によれば、高圧側電極の一部を細幅化することにより、溶断部を容易に形成することができる。
【0013】
第4の発明によれば、高圧側電極の一部に融点が低い材料を用いることにより、溶断部を容易に形成することができる。また、溶断部は材料が異なるだけなので、高圧側電極の外形状、即ち、高圧側電極と接地電極との電極間距離を溶断部の位置でも一定に保持することができ、電極間の放電を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による放電リアクタを説明するための構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2による放電リアクタを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1による放電リアクタを説明するための構成図である。なお、図1は、放電リアクタを接地電極の中心軸線に沿って破断した断面図となっている。この図において、放電リアクタ10は、金属材料等により円筒状に形成された接地電極(カソード)12と、細長い金属材料等により形成された高圧側電極(アノード)14とを備えている。なお、本実施の形態では、接地電極12として筒状の金属部品を用いる場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば筒状に形成された放電管等の内周面に、金属膜等からなる接地電極を設ける構成としてもよい。
【0016】
高圧側電極14は、接地電極12の内周側に配置されており、接地電極12と離間した状態で、その中心軸線に沿って軸方向に延びている。そして、高圧側電極14は、接地電極12と径方向で対向しており、両者の電極間距離Dは所定の寸法に調整されている。また、接地電極12と高圧側電極14の軸方向長さはほぼ等しく形成されている。さらに、高圧側電極14の長さ方向の一端側には、電源接続部14Aが設けられており、この電源接続部14Aには電源回路16が接続されている。
【0017】
電源回路16は、一般的に公知なパルス発生回路により構成されており、その出力端子は、高圧側電極14の電源接続部14Aに接続されている。また、電源回路16の接地端子は、接地電極12と一緒に接地されている。そして、電源回路16は、例えば波形、周期等が調整された高電圧パルスを出力し、電極12,14間に高電圧を印加する。
【0018】
このように構成される放電リアクタ10においては、電源回路16により高圧側電極14と接地電極12との間に高電圧が印加されると、2つの電極12,14間に放電が生じる。この放電により、電極12,14間に存在する空気中の酸素がオゾン化されるので、放電リアクタ10によりオゾンを発生することができる。なお、接地電極12の内周側に空気を供給する機構、および接地電極12内で発生したオゾンを収集する機構については、一般的に公知な技術であるため、本実施の形態では、これらの機構の図示および説明を省略している。
【0019】
次に、本実施の形態の特徴事項である溶断部18について説明する。溶断部18は、高圧側電極14の一部を周囲の部位よりも細幅化することにより形成されている。即ち、溶断部18の幅寸法W1は、周囲の部位(溶断部18以外の部位)の幅寸法W2よりも細幅に形成されている(W1<W2)。このため、アーク放電等の異常放電により、通常よりも大きな電流が高圧側電極14に流れた場合には、細幅であるために電気的な抵抗値が大きい溶断部18の位置で、電流による発熱が顕著となる。従って、溶断部18は、異常放電が生じたときに周囲の部位よりも早期に溶断するように構成されている。
【0020】
また、溶断部18の形成位置は、次の条件を満たすように予め設定されている。この条件とは、高圧側電極14のうち電源接続部14Aと溶断部18との間の距離、即ち、電源接続部14Aと溶断部18との間に位置する電極片14Bの長さLが、前述した電極間距離Dよりも短いことである(L<D)。これにより、高圧側電極14が溶断部18の位置で溶断したときに、電源回路16側に接続された電極片14Bが接地電極12に向けて径方向外側に屈曲したとしても、電極片14Bは接地電極12に接触することがない。
【0021】
上記構成によれば、異常放電が生じたときには、溶断部18により高圧側電極14の溶断位置を適切に定めることができる。即ち、溶断部18は、電極溶断時に電極片14Bの長さLを電極間距離Dよりも短くすることができる。よって、電極片14Bが接地電極12とショートするのを確実に防止することができる。従って、電極溶断時には、電源回路16の出力端子側が開放状態となるだけなので、電源回路16等をショートによる故障から保護することができる。しかも、溶断部18は、高圧側電極14の一部を細幅化することにより容易に形成することができる。
【0022】
実施の形態2.
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態による放電リアクタ20は、実施の形態1とほぼ同様に構成されている。しかし、本実施の形態では、高圧側電極22を融点が異なる2種類の金属材料により形成し、また接地電極12の内周側に絶縁体26を配置しており、これらの点で実施の形態1と構成が異なっている。なお、本実施の形態では、前記実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0023】
[実施の形態2の特徴]
放電リアクタ20の高圧側電極22は、実施の形態1とほぼ同様に、電源接続部22A、電極片22B、溶断部24等を備えている。そして、溶断部24は、周囲の部位よりも細幅に形成されている。しかし、本実施の形態において、溶断部24は、例えばステンレス等の比較的融点が低い金属材料により形成されている。一方、高圧側電極22のうち溶断部24以外の部位は、例えばタングステン等の比較的融点が高い金属材料により形成されている。
【0024】
従って、実施の形態1と比較した場合に、溶断部24は、周囲の部位よりも一層早く溶断し易いように構成されている。なお、本実施の形態では、溶断部24を、低融点材料により細幅に形成するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、溶断部24を低融点材料により形成したのであれば、その幅寸法を周囲の部位と同等に形成してもよい。また、実施の形態1と同じく、溶断部24の幅寸法を周囲の部位よりも細くし、同じ材質を用いても構わないことは言うまでもない。
【0025】
また、本実施の形態において、電源接続部22Aと溶断部24との間に位置する電極片22Bの長さL′は、設計上の制約等により前記電極間距離D以上の寸法に設定されている。このため、高圧側電極22が溶断部24の位置で溶断した場合には、電極片22Bが径方向に屈曲することにより接地電極12と接触する虞れがある。そこで、本実施の形態では、接地電極12の内周側に絶縁体26を設ける構成としている。絶縁体26は、高圧側電極22の溶断時に、電極片22Bの溶断側端部と当接し、電極片22Bが接地電極12と接触するのを防止するものである。
【0026】
このため、絶縁体26は、高圧側電極22の長さ方向において、電極片22Bの溶断側端部に対応する位置に配置されている。より詳しく述べると、絶縁体26は、高圧側電極22のうち電源接続部22Aと溶断部24との間に位置する電極片22Bと径方向で対向する位置に設置するのが好ましい。また、絶縁体26は、電極溶断時に電極片22Bが自重により垂下がるのを考慮して、電極片22Bの下側に配置されている。
【0027】
このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、絶縁体26を配置したので、設計上の制約等により、電源回路16側に接続された電極片22Bを短尺化できない場合でも、電極溶断時に電極片22Bが接地電極12と接触するのを絶縁体26によって確実に防止することができる。また、本実施の形態では、高圧側電極22の一部に融点が低い材料を用いることにより、溶断部24を容易に形成することができる。しかも、例えば溶断部24を細幅に形成せず、他の部位と材料が異なるだけの構成とした場合には、高圧側電極22の外形状、即ち、高圧側電極22と接地電極12との電極間距離Dを溶断部24の位置でも一定に保持することができ、電極間の放電を安定させることができる。
【0028】
なお、前記実施の形態2では、高圧側電極22を融点が異なる2種類の材料により構成し、かつ溶断部24の配置に対応して絶縁体26を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、実施の形態1において絶縁体26を用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10,20 放電リアクタ
12 接地電極
14,22 高圧側電極
14A,22A 電源接続部
14B,22B 電極片
16 電源回路(電源手段)
18,24 溶断部
26 絶縁体
W1,W2 幅寸法
L,L′ 長さ
D 電極間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された接地電極と、
前記接地電極の内周側に配置され、前記接地電極と所定の電極間距離を挟んで対向した状態で軸方向に延びると共に軸方向の端部側に電源接続部が設けられた高圧側電極と、
前記高圧側電極の電源接続部に接続され、前記高圧側電極と前記接地電極との間に電圧を印加する電源手段と、
前記高圧側電極の一部により形成され、前記電源接続部との間の距離が前記電極間距離よりも短くなる位置に配置されると共に、通常よりも大きな電流が流れたときに周囲の部位よりも早期に溶断する溶断部と、
を備えることを特徴とする放電リアクタ。
【請求項2】
筒状に形成された接地電極と、
前記接地電極の内周側に配置され、前記接地電極と所定の電極間距離を挟んで対向した状態で軸方向に延びると共に軸方向の端部側に電源接続部が設けられた高圧側電極と、
前記高圧側電極の電源接続部に接続され、前記高圧側電極と前記接地電極との間に電圧を印加する電源手段と、
前記高圧側電極の一部により形成され、前記電源接続部との間の距離が前記電極間距離以上となる位置に配置されると共に、通常よりも大きな電流が流れたときに周囲の部位よりも早期に溶断する溶断部と、
前記接地電極の内周側に設けられ、前記高圧側電極の溶断部が溶断したときに当該高圧側電極が前記接地電極と接触するのを防止する絶縁体と、
を備えることを特徴とする放電リアクタ。
【請求項3】
前記高圧側電極には、周囲の部位よりも細幅に形成された細幅部を形成し、当該細幅部により前記溶断部を構成してなる請求項1または2に記載の放電リアクタ。
【請求項4】
前記高圧側電極には、周囲の部位よりも融点が低い材料により形成された低融点部を形成し、当該低融点部により前記溶断部を構成してなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の放電リアクタ。

【図1】
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【図2】
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