説明

放電発光ランプ

【課題】 放電発光ランプとして、耐圧強度及び耐衝撃強度に優れ、製作が容易であり、特性的に安定して信頼性の高いものを安価に量産できるものを提供する。
【解決手段】 縦断面アーチ形の畝状隆起部10を設けた成形ガラス基板1と平坦状基板2とが相互に突き合わせた周縁部1a,2aで封着され、畝状隆起部10の内側に放電空間3が構成され、放電空間3内に配置する陰極の電子源6と陽極の透明電極膜7間の放電により、蛍光体層8が発光するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種照明用の高輝度ランプや紫外線ランプ等に利用される放電発光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電発光による照明用ランプとして、極めて多種多様な形態及び発光方式のものが知られているが、蛍光灯を代表として、薄肉ガラスからなる筒状の放電管に電極を封着一体化したものが一般的である。
【0003】
しかるに、従来のこの種の照明用ランプは、概して構造的に脆弱であり、内部が放電空間として高真空になるにも関わらず耐圧強度に乏しい上、種々の物品が当たったり外力を受けた際に簡単に破損することから、強度面からの用途の制約が大きいという難点があり、また構造的に放電管として均質なものを安定的に製作することが困難であり、これによって特性のばらつきを生じ易く、且つ量産性に劣るために製造コストが高く付くという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の情況に鑑み、放電発光ランプとして、耐圧強度及び耐衝撃強度に優れ、しかも製作が容易である上、特性的に安定して信頼性の高いものを安価に量産できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る放電発光ランプは、図面の参照符号を付して示せば、縦断面アーチ形の畝状隆起部10,20を設けた成形ガラス基板1,21と平坦状基板2,22とが相互に突き合わせた周縁部1a,2a、21a,22aで封着され、前記畝状隆起部10,20の内側に放電空間3,23が構成され、この放電空間3,23内に配置する電極(透明電極膜7,電子源6,25)間の放電によって発光するように構成されてなるものとしている。
【0006】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の放電発光ランプにおいて、放電空間3,23内に畝状隆起部10,20の長手方向に沿って、陰極リード5,26に接続した線状の電子源6,25が張設され、前記両基板1,2、21,22の少なくとも一方の該放電空間3,23に臨む内面に、透明電極膜7を介して蛍光体層8が形成されると共に、該透明電極膜7に陽極リード9,27が接続され、両電極間の放電に伴う電子線励起によって蛍光体層8が発光する構成としている。
【0007】
請求項3の発明は、上記請求項1の放電発光ランプにおいて、放電空間3,23内に稀ガス又は水銀蒸気が封入され、放電によって紫外線を放射する構成としている。
【0008】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの放電発光ランプにおいて,複数本の前記畝状隆起部20…が放射状に配置すると共に、この放射状の中心部で畝状隆起部20…同士の放電空間23が連通してなる構成としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る放電発光ランプでは、縦断面アーチ形の畝状隆起部を設けた成形ガラス基板と平坦状基板との封着により、畝状隆起部の内側に放電空間を構成するから、該放電空間が形態的に耐圧及び耐衝撃強度の大きい構造部分に取り囲まれたものとなり、もって内部の高真空に対する真空耐圧を充分に確保できると共に、物品の衝当や外力の負荷による破損も生じにくく、特に苛酷な環境条件下で使用される照明用等のランプとして優れた適性を備える。また、この放電発光ランプにあっては、畝状隆起部を設けた成形ガラス基板は板ガラスの原材からの加熱ブレスにより、サイズ及び品質の両面で均質なものを安定的に量産可能である上、両側基板は突き合わせた周縁部をフリットガラスを介して封着するだけで放電空間を有する容器状に一体化できるから、当該ランプを容易に組立製作できると共に、特性にばらつきがなく信頼性の高いものを安価に量産できるという利点がある。
【0010】
請求項2の発明によれば、上記の放電発光ランプとして、電子線励起によって高輝度の蛍光発光が得られ、且つ高性能で品質的に安定したものを低コストで提供できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、上記の放電発光ランプにおいて、特に紫外線ランプとして有用なものが提供される。
【0012】
請求項4の発明によれば、上記の放電発光ランプとして、放射状パターンの畝状隆起部から高指向性で高輝度の発光を生じ得るものが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る放電発光ランプの実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1〜図3は第一実施形態の放電発光ランプL1を、図4〜図6は第二実施形態の放電発光ランプL2をそれぞれ示す。
【0014】
第一実施形態の放電発光ランプL1は、図1及び図2に示すように、縦断面アーチ形で長手方向に沿う畝状隆起部10を有する透明な細長い成形ガラス基板1と、透明ガラス製で細長い平坦状基板2とが、相互に突き合わせた周縁部1a,2aにおいてフリットシール4を介して封着され、両基板1,2間で畝状隆起部10の内側に放電空間3が構成されている。
【0015】
しかして、放電空間3内の長手方向両側には各々両基板1,2の狭間から外部へ導出する陰極リード5と一体の陰極用支持片5aが立設され、両陰極用支持片5a,5a間に線状の電子源6が放電空間3の略中心に沿うように張設されている。また、放電空間3に臨む両基板1,2の内面には透明電極膜(ITO)7を介して蛍光体層8が形成され、該透明電極膜7には両基板1,2の狭間から外部へ導出する陽極リード9が接続されている。なお、各陰極リード5は、陽極との絶縁のために、図3に示すように平坦状基板2の内面側で透明電極膜7を設けていない領域に配設されている。
【0016】
成形ガラス基板1は、板ガラス原材の加熱プレスによって畝状隆起部10を有する形状に成形したものであり、図1に示すように、該畝状隆起部10の一端側に排気管取付孔11が形成されている。そして、この排気管取付孔11には、両基板1,2をフリットシール4を介して封着する際に、図1の如く排気管12を同様のフリットシールを介して挿嵌し、加熱焼成によって固着するようになっている。
【0017】
なお、図1で示す排気管12は溶断封着して短くなった形であり、取付当初は長いものである。また、フリットシール4は、両基板1,2とよび排気管7のガラス素材よりも低融点のガラスフリットをビヒクルに混合したペースト材であり、ペースト形態で接着力を有し、焼成によって溶剤が蒸発して溶融ガラス化する。
【0018】
この放電発光ランプL1の製作においては、予め両基板1,2の放電空間3に臨む内面側に各々透明電極膜7及び蛍光体層8を塗布形成すると共に、平坦状基板2上に陰極リード5,5及び電子源6と陽極リード9を配置し、封着・接着部にフリットシール4を塗着した状態で両基板1,2を接合すると共に排気管取付孔11に排気管12を挿嵌し、この組み付け状態で加熱焼成してフリットシール4を溶融ガラス化することにより、全体を一体化する。しかるのち、排気管12より放電空間3内の空気を所定の真空度まで吸引排気し、次いで該排気管12より放電空間3内へ所要の放電ガスを導入した上で、該排気管12をガスバーナー等で炙って溶断封着する。
【0019】
第二実施形態の放電発光ランプL2は、図4及び図5に示すように、縦断面アーチ形の6本の畝状隆起部20…が中心部で合体して放射状に配置した略円板状の成形ガラス基板21と、透明ガラス製で円板状の平坦状基板22とが、相互に突き合わせた周縁部21a,22aにおいてフリットシール4を介して封着され、両基板21,22間で畝状隆起部20…の内側全体に連通した放電空間23を構成している。
【0020】
しかして、放電空間23内には、放射状に配置した畝状隆起部20…が合体した中心部に中央側電子源支持体24aが立設されると共に、各畝状隆起部20の末端近傍に末端側電子源支持体24bが立設され、中央側電子源支持体24aと各末端側電子源支持体24bの間に線状の電子源25…が張設されている。しかして、これら電子源25…は中央側電子源支持体24aの部分で相互に接続し、また図4及び図6に示すように、一箇所の末端側電子源支持体24が両基板21,22の狭間から外部へ導出する陰極リード26に一体化している。
【0021】
また、放電空間23に臨む両基板21,22の内面には透明電極膜(ITO)7を介して蛍光体層8が形成され、1本の畝状隆起部20の末端近傍において、両基板21,22の狭間から外部へ導出する陽極リード27が該透明電極膜7に接続している。なお、図6に示すように、陰極リード26が平坦状基板22の内面側で透明電極膜7を設けていない領域に配設されていることは言うまでもない。
【0022】
成形ガラス基板21は、第一実施形態の場合と同様に、板ガラス原材の加熱プレスによって放射状に配置した畝状隆起部20…を有する形状に成形したものであり、図4に示すように、1本の畝状隆起部20の末端には図4の如く排気管28を挿嵌するための排気管取付孔(図示省略)が形成されている。
【0023】
この放電発光ランプL2の製作においても、前記第一実施形態の放電発光ランプL1の場合と同様に、予め両基板21,22の放電空間23に臨む内面側に各々透明電極膜7及び蛍光体層8を塗布形成すると共に、平坦状基板22上に中央側電子源支持体24a、末端側電子源支持体24b…、電子源25、陰極リード26及び陽極リード27を配置し、封着・接着部にフリットシール4を塗着した状態で両基板21,22を接合すると共に排気管28を挿嵌し、この組み付け状態で加熱焼成してフリットシール4の溶融ガラス化によって全体を一体化する。そして、排気管28より放電空間23内の空気を所定の真空度まで吸引排気したのち、該排気管28より放電空間23内へ所要の放電ガスを導入し、該排気管28を溶断封着する。
【0024】
なお、第一実施形態における両基板1,2ならびに第二実施形態における両基板21,22の厚さは、2〜8mm程度に設定される。また、透明電極膜7の厚さは、薄過ぎては充分な電気導通が得られず、逆に厚過ぎては光透過率が悪化するため、充分な電気導通と85%以上の光透過率を確保する上で150〜1500Å程度が好適である。更に、蛍光体層8の厚さは10〜100μm程度とするのがよい。一方、放電空間3,23の真空度は10-5torr以上がよい。また、電子源6,25には熱陰極と冷陰極のいずれをも用い得る。
【0025】
上記の第一実施形態及び第二実施形態の放電発光ランプL1,L2では、陰極リード5,26と陽極リード9,27との間に所定の電圧を印加して放電させた際、電子源6,25から放射された電子が透明電極膜7上の蛍光体層8に衝突し、蛍光体の励起によって畝状隆起部10,20…側の表面と平坦状基板2,22側の表面の両方から発光する。なお、畝状隆起部10,20側では曲面からの指向性を有する発光となる。
【0026】
これら放電発光ランプL1,L2では、放電空間3,23が形態的に耐圧及び耐衝撃強度の大きい縦断面アーチ形の畝状隆起部10,20の内側に構成されるから、内部の高真空に対する真空耐圧を充分に確保できると共に、物品の衝当や外力の負荷による破損も生じにくく、特に苛酷な環境条件下で使用される照明用等のランプとして優れた適性を備える。また、これら放電発光ランプL1,L2にあっては、畝状隆起部10,20を設けた成形ガラス基板1,21は板ガラスの原材からの加熱ブレスにより、サイズ及び品質の両面で均質なものを安定的に量産可能である上、両側基板1,2、21,22は突き合わせた周縁部をフリットシール4を介して封着するだけで、内側に放電空間3,23を持つ形に一体化できる。従って、これら放電発光ランプL1,L2は、容易に組立製作できると共に、特性にばらつきがなく信頼性の高いものを安価に量産できる。
【0027】
しかして、第一実施形態の放電発光ランプL1は、全体が棒状のシンプルな形状であるから、広範な用途に使用できるが、高輝度で頑丈なランプとしてトンネル内や地下通路等の照明用として好適である。また、第一実施形態の放電発光ランプL2は、放射状に配置した畝状隆起部20…からの発光であるため、車両のヘッドライト、サーチライト、信号灯等への適用が期待される。
【0028】
なお、前記第一及び第二実施形態では畝状隆起部10,20の凸曲面と反対側の平坦ガラス面との両方から発光する構成を例示したが、透明電極膜7及び蛍光体層8を両基板の一方の内面側のみに形成することにより、凸曲面側と平坦面側の一方側のみから発光する構成とすることも可能である。しかして、成形ガラス基板の凸曲面側からのみ発光する構成では、平坦状基板として不透明なセラミック板を使用できる。また、成形ガラス基板の畝状隆起部の形状は、前記第一実施形態のような直線状や第二実施形態のような放射状に限らず、円弧状、円環状、三角形状、四角形以上の多角形状、ジグザグ状等、様々なパターンに設定できる。
【0029】
更に、蛍光体層8を設けずに、放電空間3,23に放電ガスとして、放電によって紫外域の光を発生し得る水銀蒸気やキセノンの如き希ガスを封入すれば、殺菌消毒や光硬化型樹脂のキュア等に好適な紫外線ランプとなる。また、蛍光体層8を両基板の一方の内面全体又は一部に設けた形で、同様の放電ガスを封入して紫外線ランプとすれば、紫外線放射時に蛍光体層8からの発光も生じるから、この発光を紫外線ランプのオン・オフの判別に利用できる。その他、本発明の放電発光ランプは、前記の蛍光体による発光や紫外線放射を行うもの以外でも、放電を利用した発光を行うランプ全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態に係る放電発光ランプの斜視図である。
【図2】同放電発光ランプの縦断正面図である。
【図3】同放電発光ランプにおける平坦状基板の内面側の平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る放電発光ランプの平面図である。
【図5】同放電発光ランプの側面図である。
【図6】図4のA−A線の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1,21 成形ガラス基板
1a,21a 周縁部
2,22 平坦状基板
2a,22a 周縁部
3,23 放電空間
4 フリットシール
5,26 陰極リード
6,25 電子源
7 透明電極膜
8 蛍光体層
9,27 陽極リード
10,20 畝状隆起部
12,28 排気管
L1,L2 放電発光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断面アーチ形の畝状隆起部を設けた成形ガラス基板と平坦状基板とが相互に突き合わせた周縁部で封着され、前記畝状隆起部の内側に放電空間が構成され、この放電空間内に配置する電極間の放電によって発光するように構成されてなる放電発光ランプ。
【請求項2】
放電空間内に畝状隆起部の長手方向に沿って、陰極リードに接続した線状の電子源が張設され、前記両基板の少なくとも一方の該放電空間に臨む内面に、透明電極膜を介して蛍光体層が形成されると共に、該透明電極膜に陽極リードが接続され、両電極間の放電に伴う電子線励起によって蛍光体層が発光する請求項1記載の放電発光ランプ。
【請求項3】
放電空間内に稀ガス又は水銀蒸気が封入され、放電によって紫外線を放射する請求項1に記載の放電発光ランプ。
【請求項4】
複数本の前記畝状隆起部が放射状に配置すると共に、この放射状の中心部で畝状隆起部同士の放電空間が連通してなる請求項1〜3のいずれかに記載の放電発光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−185687(P2006−185687A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376651(P2004−376651)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000114927)ヤマト電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】