説明

故障検出装置、故障検出方法

【課題】電流センサの故障を容易に検出する技術を提供する。
【解決手段】この制御装置22は、同一の電流経路46に流れる電流を計測する電流センサ24、26の故障を検出する装置である。この制御装置22は、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1の上限値Ru1であり、電流センサ26の計測値M2が計測レンジR2内である場合、計測レンジR1の上限値Ru1を用いて電流センサ24、26の故障を判別する。これによって、基準の電流値の設定等の作業が必要でなく、また、必要とされる検出範囲を確保しやすい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサの故障を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリへの充放電量を算出するために、バッテリに接続される電流経路に電流センサを設ける技術が用いられている(例えば、特許文献1)。この技術によれば、電流センサの計測値に基づいて電流経路に流れる電流量を制御することで、バッテリの充電不足や過充電を抑制することができ、バッテリの充電状態を適切に保つことができるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−322234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリの充電状態を適切に保つために、電流センサの故障を厳格に検出する技術が求められている。電流センサの故障として、例えば張り付き故障が知られている。張り付き故障とは、電流センサの計測値が、電流センサの計測レンジ内であるものの、電流経路に流れる電流量と異なる計測値を計測してしまう故障であり、例えば電流センサ自体の故障や劣化などによって発生する。
【0005】
従来の張り付き故障を検出する方法では、予め計測値に対応した基準電流値を設定しておき、計測値と基準電流値の差が規定の範囲を超えている場合に、張り付き故障が発生していることを検出する。バッテリへの充放電は、使用条件やユーザの使用方法により多くの過渡状態が起こりえる。そのため、従来の方法を用いてバッテリの充電状態を適切に保つためには、全ての過渡状態に対する基準電流値を設定しておく必要があり、設定作業が煩雑化してしまう問題が生じていた。また、過渡状態に対して複数の基準電流値から適したものを選択する必要があり、装置が複雑化してしまう問題が生じていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、電流センサの故障を容易に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は電流センサの故障を検出する故障検出装置に関し、特に、同一の電流経路に流れる電流を計測する複数の電流センサの故障を検出する故障検出装置に関する。この故障検出装置は、第1の電流センサの計測値が当該電流センサの計測レンジである第1の計測レンジの一方側の限界値であり、第1の電流センサと異なる第2の電流センサの計測値が当該電流センサの計測レンジである第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の計測レンジの一方側の限界値を用いて故障を判別する。
【0008】
尚、「第1の電流センサの計測値が第1の計測レンジの一方側の限界値である」との表現には、第1の電流センサの計測値が第1の計測レンジを一方側に超える場合も含む。つまり、上記の表現は、第1の電流センサの計測値が第1の計測レンジを一方側に超える場合には、通常第1の電流センサの計測値は第1の計測レンジの一方側の限界値を示すことが多く、上記の場合に第1の電流センサの計測値が第1の計測レンジの一方側の限界値と異なる表示が可能な場合には、その表示をも含む。
【0009】
この故障検出装置では、複数の電流センサを用いて電流センサ相互の故障を検出する。つまり、従来では、電流センサの計測値を基準電流値と比較して電流センサの故障を検出していたものを、本発明では、同一の電流経路に流れる電流を計測する複数の電流センサの計測値同士を比較することで電流センサの故障を検出する。これによって、設定作業が必要なくなり、設定作業が煩雑化することが防止される。また、適した基準値を選択する必要もなくなり、装置が複雑化することが防止される。
【0010】
同一の電流経路に複数の電流センサを設ける場合、各々の計測レンジが異なることがあり、複数の電流センサの共通部分しか故障が検出できないとなると、必要とされる検出範囲を確保し辛いことがある。
【0011】
この故障検出装置では、1つの電流センサの計測値が計測レンジの限界値である場合でも、その限界値を用いて故障を検出する。そのため、個々の電流センサの計測レンジによって電流センサの故障を検出可能な範囲が限定されてしまうことがなく、必要とされる検出範囲を確保しやすい。
【0012】
本発明の故障検出装置は、予め定められた基準値を有しており、前記第2の電流センサの計測値が、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも予め定められた基準値だけ他方側に変動した閾値よりも他方側である場合に、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの少なくとも一方が故障していると判別することが好ましい。尚、「Aよりも一方(他方)側」の表現には、Aを含む場合もあれば、Aを含まない場合もある。
【0013】
この故障検出装置では、第1の電流センサが第1の計測レンジの一方側の限界値(以下、「基準限界値」と呼ぶことがある)である場合に、その基準限界値から決定される閾値を用いて故障を検出する。
【0014】
この際、第1の電流センサと第2の電流センサは、同一の電流経路に流れる電流を計測しているものの、電流センサの個体差から測定誤差が生じることがある。この故障検出装置では、電流センサの個体差を考慮して基準値を設定することで、基準限界値を基準として、同一の電流経路に流れる電流を計測している2つの電流センサが個体差を超えて異なる計測値を計測した場合に、電流センサが故障していることを検出することができる。
【0015】
本発明の故障検出装置では、前記第2の計測レンジの一方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されており、前記第2の計測レンジの他方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも他方側に設定されていることが好ましい。この故障検出装置によれば、基準限界値よりも一方側であり、第2の計測レンジの一方側の限界値よりも他方側である範囲においても、電流センサの故障を検出することができる。
【0016】
本発明の故障検出装置は、前記第1の電流センサの計測値が前記第1の計測レンジを超えておらず、前記第2の電流センサの計測値が前記第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の電流センサの計測値と前記第2のレンジの計測値の差が予め定められた基準範囲よりも大きい場合に、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの少なくとも一方が故障していることを検出することが好ましい。
【0017】
第2の計測レンジの一方側の限界値が、基準限界値よりも一方側に設定されており、第2の計測レンジの他方側の限界値が、基準限界値よりも他方側に設定されている場合、第1の計測レンジの他方側の限界値と第2の計測レンジの他方側の限界値のうち、一方側に設定された限界値と、基準限界値の間において、第1の計測レンジと第2の計測レンジが重複することとなる。この故障検出装置では、上記の重複範囲に第1の電流センサの計測値及び第2の電流センサの計測値が含まれる場合には、これらの計測値を用いて電流センサが故障していることを検出することで、電流センサの故障を精度良く検出することができる。
【0018】
本発明の故障検出装置では、前記第2の計測レンジの一方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されており、前記第2の計測レンジの他方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されていることが好ましい。この故障検出装置によれば、計測レンジの共通部分を有しない複数の電流センサを用いて、電流センサの故障を検出することができる。
【0019】
本発明は、上記の故障検出装置によって実現される故障検出方法にも具現化される。本発明の故障検出方法は、同一の電流経路に流れる電流を計測する複数の電流センサであって、計測レンジが異なる前記複数の電流センサの故障を検出する故障検出方法に関する。この故障検出方法は、第1の計測レンジを有する第1の電流センサが計測した計測値を取得する工程と、第2の計測レンジを有する第2の電流センサが計測した計測値を取得する工程と、前記第1の電流センサの計測値が前記第1の計測レンジの一方側の限界値であり、前記第2の電流センサの計測値が前記第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の計測レンジの一方側の限界値を用いて故障を判別する工程と、を備える。
【0020】
この故障検出方法によれば、複数の電流センサを用いて電流センサ相互の故障を検出しており、設定値の設定等の作業を必要とせず、また、個々の電流センサの計測レンジによって電流センサの故障を検出可能な範囲が限定されてしまうことがなく、必要とされる検出範囲を確保しやすい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電流センサの故障を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る電力供給装置50のブロック図
【図2】実施形態1の故障検出処理を示すフローチャート
【図3】実施形態1の計測レンジR1、R2の関係を示す図
【図4】実施形態1の計測レンジR1、R2の関係を示す図
【図5】実施形態1の計測レンジR1、R2の関係を示す図
【図6】実施形態2の故障検出処理を示すフローチャート
【図7】実施形態2の計測レンジR1、R2の関係を示す図
【図8】実施形態3の故障検出処理を示すフローチャート
【図9】実施形態3の計測レンジR1、R2の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1について、図1ないし図5を用いて説明する。
1.故障検出システムの構成
図1は、本実施形態における電力供給装置50の構成を示す図である。電力供給装置50は、電気自動車内に装着され、バッテリ42から負荷44に電流経路46を介して電力を供給する。
【0024】
電力供給装置50の電流経路46には、電流経路46に流れる電流を計測する2つの電流センサ24、26が配置されている。電流センサ24、26は、ホール効果を利用した電流センサであり、各々の電流センサ24、26は、電流経路46を囲うように配置されるギャップを有する磁性体コアと、磁性体コアのギャップに配置されるホール素子と、ホール素子からの出力を増幅する増幅回路と、を備えている。電流センサ24、26は1つの電流測定装置28に設けられている。また、電流センサ24、26の磁性体コアは、お互いに異なる材料で構成されており、そのため、後述して詳細に説明するように、お互いに異なる計測レンジR1、R2を有している。
【0025】
電力供給装置50は、制御装置(故障検出装置の一例)22を備えており、制御装置22は、配線30を介して電流センサ24に接続されており、電流センサ24が計測した計測値M1を電流センサ24から取得している。また、制御装置22は、配線32を介して電流センサ26に接続されており、電流センサ26が計測した計測値M2を電流センサ26から取得している。制御装置22は、図示されていない配線によってバッテリ42に接続されており、取得した計測値M1、M2を用いてバッテリ42の充電量や充電量を制御し、バッテリ42の充電不足や過充電を抑制している。つまり、電流センサ24、26と配線30、32と制御装置22によって、バッテリ42の充電状態を適切に保つ検出システム10が構成されている。
【0026】
また、検出システム10は、当該システムに含まれる電流センサ24、26の故障を検出する検出システムを兼ねている。つまり、検出システム10では、電流センサ24、26の計測値M1、M2を用いて電流センサ24、26の故障を検出し、これによって、異常のある計測値M1、M2を用いてバッテリ42を制御し、バッテリ42の充電不足や過充電が発生してしまうことを抑制している。
【0027】
2.電流センサの故障検出処理
図2から図5を用いて、検出システム10における電流センサ24、26の故障検出処理を説明する。図2は、制御装置22で実行される設定処理を含む故障検出処理のフローチャートを示し、図3ないし図5は、電流センサ24の計測レンジR1と電流センサ26の計測レンジR2の関係を示している。本実施形態では、図3及び図4に示すように、計測レンジR2の上限値Ru2が計測レンジR1の上限値Ru1よりも大きな値に設定されており、計測レンジR2の下限値Rd2が計測レンジR1の下限値Rd1よりも小さな値に設定されている例を用いて説明を行う。
【0028】
また、本実施形態では、各電流センサ24、26の計測値Mが計測レンジRの上限値Ruを超える場合には、計測値Mとして上限値Ruを出力し、計測値Mが計測レンジRの下限値Rdを超える場合には、計測値Mとして下限値Rdを出力する例を用いて説明を行う。
【0029】
制御装置22は、一定期間毎に電流センサ24、26の故障検出処理を実行しており、故障検出処理を開始すると、電流センサ24から計測値M1を取得する(S2)とともに、電流センサ26から計測値M2を取得する(S4)。尚、計測値M1、M2の計測は、同時に行われており、計測値M1、M2は同時に電流経路46に流れる電流を測定した別々の計測値である。
【0030】
次に制御装置22は、計測値M1が計測レンジR1に含まれているか否かを判別する(S6)。図3に示すように、計測値M1が計測レンジR1に含まれている場合(S6:YES)、制御装置22は計測値M1と計測値M2の差分値Zを算出し、この差分値Zを制御装置22に予め設定されている基準範囲H(H>0)と比較する(S8)。ここで、差分値Zは、計測値M1と計測値M2の差の絶対値を意味しており、基準範囲Hは、電流センサ24、26の個体差に基づく測定誤差を考慮した値に設定されている。
【0031】
制御装置22は、差分値Zが基準範囲H以下の場合(S8:YES 図3のM2)に、電流センサ24、26の計測値M1、M2がほぼ等しいと判別する。上述したように、故障検出処理は一定期間毎に実行されているため、電流センサ24、26が同時に故障する可能性は低い。この場合、制御装置22は、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。
【0032】
また、制御装置22は、差分値Zが基準範囲Hよりも大きい場合(S8:NO 図3のM2’)に、電流センサ24、26の計測値M1、M2’に計測誤差以上の差があると判別する。この場合、制御装置22は、電流センサ24、26の少なくとも一方に故障が発生していることと判別し(S12)、電力供給装置50を停止する、音声等によってユーザに故障の発生を報知する等の対策を行う。
【0033】
一方、図4に示すように、計測値M1が上限値Ru1と等しい場合(S6:NO、S14:YES)、制御装置22は、制御装置22に予め設定されている基準値K(K≧0)を上限値Ru1から減算した閾値L1を算出し、算出した閾値L1と計測値M2を比較する(S16)。
【0034】
制御装置22は、計測値M2が閾値L1以上の場合(S16:YES 図4のM2、M2’)に、電流センサ24、26の計測値M1、M2のいずれもが、測定誤差を考慮して上限値Ru1よりも大きい値を計測したと判別する。上記の場合には、計測値M2’が上限値Ru2以上である場合も含む。この場合、上限値Ru1を基準として、電流センサ24、26が同一側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。
【0035】
また、制御装置22は、計測値M2が閾値L1よりも小さい場合(S16:NO 図4のM2’’)に、上限値Ru1を基準として、電流センサ24、26が異なる側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26の少なくとも一方が故障していると判別する(S12)。
【0036】
一方、図5に示すように、計測値M1が下限値Rd1と等しい場合(S6:NO、S14:NO)、制御装置22は、基準値Kを下限値Rd1に加算した閾値L2を算出し、算出した閾値L2と計測値M2を比較する(S16)。
【0037】
制御装置22は、計測値M2が閾値L2以下の場合(S18:YES 図5のM2、M2’)に、電流センサ24、26の計測値M1、M2のいずれもが、測定誤差を考慮して下限値Rd1よりも小さい値を計測したと判別する。上記の場合には、計測値M2’が下限値Rd1以下である場合も含む。この場合、下限値Rd1を基準として、電流センサ24、26が同一側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。
【0038】
また、制御装置22は、計測値M2が閾値L2よりも大きい場合(S18:NO 図5のM2’’)に、下限値Rd1を基準として、電流センサ24、26が異なる側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26の少なくとも一方が故障していると判別する(S12)。
【0039】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態の制御装置22では、複数の電流センサ24、26を用いて電流センサ相互の故障を検出しており、電流センサ24、26の異常を検出するために基準となる電流値を設定する等の作業を必要としない。また、本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1の限界値Ru1、Rd1である場合でも、その限界値Ru1、Rd1を用いて故障を検出する。そのため、電流センサ24の計測レンジR1によって電流センサ24、26の故障を検出可能な範囲が限定されてしまうことがなく、必要とされる検出範囲を確保しやすい。
【0040】
(2)本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測値M1が上限値Ru1であり、電流センサ26の計測値M2が上限値Ru1を用いて算出される閾値L1よりも小さい場合、同一の電流経路46に流れる電流を計測している電流センサ24、26の計測値M1、M2が、上限値Ru1を基準として、異なる側の計測値を計測していると判別する。同様に、電流センサ24の計測値M1が下限値Rd1であり、電流センサ26の計測値M2が下限値Rd1を用いて算出される閾値L2よりも大きい場合、同一の電流経路46に流れる電流を計測している電流センサ24、26の計測値M1、M2が、下限値Rd1を基準として、異なる側の計測値を計測していると判別する。このように、電流センサ24の計測値M1がいずれか一方の限界値Ru1、Rd1である場合でも、上限値Ru1又は下限値Rd1を基準として、電流センサ24、26の故障を判別することができる。
【0041】
(3)一方、本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1、R2が重複する範囲(つまり、計測レンジR1)に含まれる場合、これらの計測値M1とM2を用いて、電流センサが異常であることを検出する。これによって、上記の場合に、計測値M1、M2を用いて、電流センサ24、26の故障を精度よく判別することができる。
【0042】
(4)本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1に含まれ、電流経路46に流れる電流を正確に測定できる場合には、その計測値M1を用いて故障を判別し、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1の限界値Ru1、Rd1となり、電流経路46に流れる電流を正確に測定できない場合には、この限界値Ru1、Rd1を用いて検出範囲を区分し、これらの区分を用いて故障を判別する。
【0043】
これによって、電流センサ24がその機能に基づいて計測値M1を計測した場合には、計測値M1を用いて精度よく故障を検出することができる。また、電流センサ24がその機能に基づいて計測値M1を計測できない場合には、限界値Ru1、Rd1を用いて、一定の精度を保ちながら、一定の検出範囲を確保しやすい。
【0044】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図6又は図7を用いて説明する。図7に示すように、本実施形態の検出システム10では、計測レンジR2の下限値Rd2が計測レンジR1の上限値Ru1と下限値Rd1の間に設定されている点で実施形態1のシステムと異なる。そのため、計測値M1が計測レンジR1に含まれている場合であっても、計測値M1が計測レンジR2に含まれない場合であり、制御装置22で実行される設定処理が異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0045】
1.電流センサの故障検出処理
制御装置22は、電流センサ24、26から計測値M1、M2を取得した(S2、S4)後に、計測値M1が下限値Rd2’よりも大きく、上限値Ru1よりも小さいか否かを判別し(S22)、計測値M1が上記の条件を満たしている場合(S22:YES)、実施形態1のS8ないしS12の処理を実行する。
【0046】
一方、計測値M1が上限値Ru1と等しい場合(S22:NO、S14:YES)、実施形態1のS16の処理を実行する。また、計測値M1が下限値Rd2’と等しいか、下限値Rd2’よりも小さい場合(S22:NO、S14:NO)、制御装置22は、基準値Kを下限値Rd2に加算した閾値L3を算出し、算出した閾値L3と計測値M2を比較する(S24)。
【0047】
制御装置22は、計測値M2が閾値L3以下の場合(S24:YES 図7のM2)に、電流センサ24、26の計測値M1、M2のいずれもが、測定誤差を考慮して下限値Rd2’よりも小さい値を計測したと判別する。この場合、下限値Rd2’を基準として、電流センサ24、26が同一側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。
【0048】
また、制御装置22は、計測値M2が閾値L3よりも大きい場合(S24:NO 図7のM2’)に、下限値Rd2を基準として、電流センサ24、26が異なる側の計測値を計測したと判別し、電流センサ24、26の少なくとも一方が故障していると判別する(S12)。
【0049】
2.本実施形態の効果
本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測値M1が計測レンジR1、R2の共通範囲を超えてしまった場合でも、上限値Ru1及び下限値Rd2を用いて故障を検出する。そのため、計測レンジR1、R2の一部しか重ならない2つの電流センサ24、26を用いた場合でも、電流センサ24、26の故障を検出可能な範囲が限定されてしまうことがなく、必要とされる検出範囲を確保しやすい。
【0050】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を、図8又は図9を用いて説明する。図9に示すように、本実施形態の検出システム10では、計測レンジR2の下限値Rd2が計測レンジR1の上限値Ru1と等しい値に設定されている点で実施形態1のシステムと異なる。より詳細には、電流センサ24は負側の計測レンジR1を有する電流センサであり、電流センサ26は正側の計測レンジR1を有する電流センサであり、電流センサ24の上限値Ru1と電流センサ26の下限値Rd1が0Aで重なる。そのため、電流センサ24、26の計測レンジR1、R2には共通範囲が存在せず、制御装置22で実行される設定処理が異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0051】
1.電流センサの故障検出処理
制御装置22は、電流センサ24、26から計測値M1、M2を取得した(S2、S4)後に、取得した計測値M1と閾値L1を比較する(S32)。制御装置22は、計測値M1が閾値L1以上の場合(S32:YES)、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。
【0052】
また、制御装置22は、計測値M1が閾値L1よりも小さい場合(S32:NO)に、取得した計測値M2と閾値L3を比較する(S34)。制御装置22は、計測値M2が閾値L3以下の場合(S34:YES 図9のM2)、電流センサ24、26のいずれもが正常であると判別する(S10)。一方、計測値M2が閾値L3よりも大きい場合(S34:NO 図9のM2’)、電流センサ24、26の少なくとも一方が故障していると判別する(S12)。
【0053】
2.本実施形態の効果
本実施形態の制御装置22では、電流センサ24の計測レンジR1、R2に共通範囲が存在しない場合でも、上限値Ru1を用いて故障を検出することができ、これによって、必要とされる検出範囲を確保しやすい。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。特に、上記各実施例における構成要素中の独立請求項に記載された要素以外の要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、電流センサ24、26がお互いに異なる計測レンジRを有する例を用いて説明を行ったが、電流センサ24、26がお互いに等しい計測レンジRを有していても良い。電力供給装置50では、特定の計測レンジにおける測定精度を向上させるため、同一の電流経路に特定の計測レンジを含む同一の計測レンジを有する複数の電流センサを設ける場合がある。本発明によれば、同一の計測レンジを有する複数の電流センサの故障を容易に検出することができる。
【0056】
上記実施形態では、各電流センサ24、26の計測値Mが計測レンジRの上限値Ruを超える場合には、計測値Mとして上限値Ruを出力する例を用いて説明を行ったが、計測値Mが計測レンジRの上限値Ruを超える場合に、上限値Ruよりも大きい数値や予め決められた値を出力しても良い。この場合、制御装置22は、計測値Mとしてこれらの値を取得すると、上記実施形態において計測値M1として上限値Ru1を取得した場合の制御を実行する。
【0057】
上記実施形態では、電流センサ24、26が1つの電流測定装置28に設けられている例を用いて説明を行ったが、異なる装置に設けられていてもよい。また、電流経路46に設けられる電流センサ24、26も2つに限定されず、3つ以上設けられてもよい。この場合、それらの電流センサから2つの電流センサを選択し、その2つの電流センサにおいて上記実施形態の処理を実行することを繰り返すことで、複数の電流センサの異常を容易に検出することができる。
【0058】
また、電流センサ24、26が1つの筺体に含まれてユニット化されていても良い。すなわち、1つのユニット化された電流センサを用いて計測することで、2つの計測レンジR1、R2で電流を計測できるようになっていても良い。
【0059】
また、1つの電流測定装置28に2つの電流センサ24、26が設けられている場合、各電流センサ24、26を構成する磁性体コアとホール素子と増幅回路の少なくとも一部が2つの電流センサ24、26で共用されていても良い。
【0060】
上述の実施例において、上述の利点や効果の各々の全てが本願発明の必須の構成要件につながるものではなく、本願発明は、上述の利点や効果の各々を簡易に実現させる設計自由度を与えるものであって、少なくとも一つの利点あるいは効果を実現させるものであれば良い。
【符号の説明】
【0061】
10:検出システム、22:制御装置、24、26:電流センサ、28:電流測定装置、46:電流経路、50:電力供給装置、M:計測値、R:計測レンジ、Rd:下限値、Ru:上限値、H:基準範囲、K:基準値、L:閾値、Z:差分値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の電流経路に流れる電流を計測する複数の電流センサの故障を検出する故障検出装置であって、
第1の電流センサの計測値が当該電流センサの計測レンジである第1の計測レンジの一方側の限界値であり、第1の電流センサと異なる第2の電流センサの計測値が当該電流センサの計測レンジである第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の計測レンジの一方側の限界値を用いて故障を判別する故障検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の故障検出装置であって、
予め定められた基準値を有しており、
前記第2の電流センサの計測値が、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも予め定められた基準値だけ他方側に変動した閾値よりも他方側である場合に、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの少なくとも一方が故障していると判別する故障検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の故障検出装置であって、
前記第2の計測レンジの一方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されており、
前記第2の計測レンジの他方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも他方側に設定されている故障検出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の故障検出装置であって、
前記第1の電流センサの計測値が前記第1の計測レンジを超えておらず、前記第2の電流センサの計測値が前記第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の電流センサの計測値と前記第2のレンジの計測値の差が予め定められた基準範囲よりも大きい場合に、前記第1の電流センサと前記第2の電流センサとの少なくとも一方が故障していると判別する故障検出装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の故障検出装置であって、
前記第2の計測レンジの一方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されており、
前記第2の計測レンジの他方側の限界値は、前記第1の計測レンジの一方側の限界値よりも一方側に設定されている故障検出装置。
【請求項6】
同一の電流経路に流れる電流を計測する複数の電流センサであって、計測レンジが異なる前記複数の電流センサの故障を検出する故障検出方法であって、
第1の計測レンジを有する第1の電流センサが計測した計測値を取得する工程と、
第2の計測レンジを有する第2の電流センサが計測した計測値を取得する工程と、
前記第1の電流センサの計測値が前記第1の計測レンジの一方側の限界値であり、前記第2の電流センサの計測値が前記第2の計測レンジを超えていない場合、前記第1の計測レンジの一方側の限界値を用いて故障を判別する工程と、を備える故障検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−93343(P2012−93343A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178869(P2011−178869)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】