説明

故障検知装置、故障検知方法、及び倒立移動体。

【課題】故障したセンサを簡便に特定することができる故障検知装置、故障検知方法、及び倒立移動体を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる故障検知装置は、倒立移動体に設けられたジャイロセンサの故障を検出する故障検知装置であって、第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力する第1のピッチセンサ111と、第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力する第2のピッチセンサ112と、第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力する第3のピッチセンサ211と、第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号乃至第3検出信号を用いて、第1乃至第3のピッチセンサのうち故障しているセンサを特定するCPU121と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障検知装置、故障検知方法、及び移動体に関し、特に詳しくは、センサの故障を検知する故障検知装置、故障検知方法、及びそれを用いた倒立移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立移動体では、車体の傾斜角速度を検出するためのジャイロセンサが設けられている(特許文献1)。特許文献1では、倒立移動体において、制御構成要素の故障を識別するために、制御構成要素の故障を他の制御構成要素の出力と比較している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−517340号公報
【特許文献2】特開2004−301512号公報
【特許文献3】特開2004−286529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献2には、角速度センサの故障検出に関する方法が開示されている。特許文献2では、1つの軸にジャイロセンサを2つ配置して、それぞれの出力を比較している。特許文献2の方法では、2つの角速度センサは180°対向させて配置されている。そして、2つの角速度センサの加算信号を参照値と比較して、故障診断を行っている。
【0005】
特許文献3には、多軸ジャイロセンサの故障を判断する方法が開示されている。この方法ででは、2つのジャイロセンサを設け、鉛直成分、及び水平成分毎に、第1及び第2のジャイロセンサが検出する角速度を比較している。しかしながら、これらの方法では、故障した角速度センサを特定することができないという問題点がある。
特許文献4には
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便に故障した角速度センサを特定することができる故障検知装置、故障検知方法、及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様にかかる故障検知装置は、倒立移動体に設けられたセンサの故障を検知する故障検知装置であって、第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力する第1角速度センサと、前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力する第2角速度センサと、第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力する第3角速度センサと、第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、前記第1角速度センサ、第2角速度センサ、及び第3角速度センサのうち故障している角速度センサを特定する判定部と、を備えたものである。このようにすることで、簡便に、故障した角速度センサを特定することができる。
【0008】
本発明の第2の態様にかかる故障検知装置は、上記の故障検知装置であって、前記第2角速度センサが、前記第1角速度センサと同じ方向の角速度を検出して、検出した角速度を反転させることで、前記第2検出信号を出力しているのである。
【0009】
本発明の第3の態様にかかる故障検知装置は、上記の故障検知装置であって、前記1角速度センサと前記第2角速度センサとが、対向配置されているのである。
【0010】
本発明の第4の態様にかかる故障検知装置は、上記の故障検知装置であって、前記第1角速度センサからの第1検出信号、及び第2角速度センサからの第2検出信号が入力される第1プロセッサと、前記第3角速度センサからの第3検出信号が入力され、前記第1プロセッサと相互通信可能な第2プロセッサとを有するのである。
【0011】
本発明の第5の態様にかかる故障検知装置は、上記の故障検知装置であって、前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第4検出信号を前記第2プロセッサに出力する第4角速度センサをさらに備えるのである。
【0012】
本発明の第6の態様にかかる故障検知装置は、上記の故障検知装置であって、前記第1の軸周りの角独度が、ピッチ角速度であることを特徴とするのである。
【0013】
本発明の第7の態様にかかる倒立移動体は、上記の故障検知装置を備え、前記1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、姿勢を検出するものである。
【0014】
本発明の第8の態様にかかる故障検知方法は、倒立移動体に設けられたセンサの故障を検出する故障検知方法であって、第1角速度センサが第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力するステップと、前記第1の軸に設けられた第2角速度センサによって、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力するステップと、第3角速度センサによって、第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力するステップと、第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、前記第1角速度センサ、第2角速度センサ、及び第3角速度センサのうち故障している角速度センサを特定するステップと、を備えたものである。
【0015】
本発明の第9の態様にかかる故障検知方法は、上記の故障検知方法であって、前記第2角速度センサが、前記第1角速度センサと同じ方向の角速度を検出して、検出した角速度を反転させることで、前記第2検出信号を出力しているものである。
【0016】
本発明の第10の態様にかかる故障検知方法は、上記の故障検知方法であって、前記1角速度センサと前記第2角速度センサとが、対向配置されているものである。
【0017】
本発明の第11の態様にかかる故障検知方法は、上記の故障検知方法であって、前記第1角速度センサからの第1検出信号、及び第2角速度センサからの第2検出信号を第1プロセッサに出力し、前記第3角速度センサからの第3検出信号を第2プロセッサに出力し、
前記第1プロセッサと第2プロセッサが相互通信することで、故障している角速度センサを特定するものである。
【0018】
本発明の第12の態様にかかる故障検知方法は、上記の故障検知方法であって、前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第4検出信号を第4角速度センサが前記第2プロセッサに出力するものである。
【0019】
本発明の第13の態様にかかる故障検知方法は、上記の故障検知方法であって、前記第1の軸周りの角独度が、ピッチ角速度であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、故障したセンサを簡便に特定することができる故障検知装置、故障検知方法、及び倒立移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】故障検知装置の基本的なシステム構成を示すブロック図である。
【図2】故障検知装置における第1及び第2のピッチセンサの配置を示す図である。
【図3】故障検知装置における第1及び第2のピッチセンサの具体的配置例を示す図である。
【図4】故障検知装置における第1及び第2のピッチセンサの具体的配置例を示す図である。
【図5】センサの別の配置例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1にかかる故障検知装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態1にかかる故障検知装置のセンサの具体的構成を示す図である。
【図8】実施の形態1にかかる故障検知装置のセンサの具体的配置例を示す図である。
【図9】センサで検出した角速度の信号波形を示す図である。
【図10】センサで検出した角速度の信号波形を示す図である。
【図11】本発明の実施形態2にかかる故障検知装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態3にかかる故障検知装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施形態4にかかる故障検知装置の構成を示すブロック図である。
【図14】故障検知装置を搭載する倒立移動体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る移動体の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0023】
(基本システム)
本実施の形態にかかる故障検知装置の基本システムに付いて、図1を用いて説明する。図1は、故障検知装置の基本構成を示すブロック図である。図1に示すように、故障検知装置のシステム100は、センサユニット110と、CPU(Central Processing Unit)121と、モータ122とを備えている。センサユニット110には、ジャイロセンサであり、第1のピッチセンサ111と、第2のピッチセンサ112と、ロールセンサ113と、ヨーセンサ114とが設けられている。
【0024】
故障検知装置は、倒立制御によって移動する倒立移動体に取り付けられている。故障検知装置は、センサユニット110に設けられた第1のピッチセンサ111、及び第2のピッチセンサ112の故障を検知する。なお、センサユニット110は、ピッチ角速度、ロール角速度、及びヨー角速度を測定して、倒立移動体の姿勢等を検出するために設けられたジャイロセンサである。従って、故障検知装置のシステム100は、ジャイロセンサを含んでいる。そして、CPU121が倒立移動体の姿勢を制御するため、モータ122を制御する。
【0025】
第1のピッチセンサ111と、第2のピッチセンサ112は、Y軸周りの角速度、すなわち、ピッチ角速度を検出する。ロールセンサ113は、X軸周りの角速度、すなわち、ロール角速度を検出する。ヨーセンサ114は、Z軸周りの角速度、すなわち、ヨー角速度を検出する。なお、各軸周りの角速度センサとしては、例えば振動型ジャイロを用いることができる。
【0026】
センサユニット110からの検出信号は、CPU121に入力される。CPU121は、センサユニット110からの検出信号や、ユーザの操作による操作信号を用いて、モータ122に指令値を出力する。モータ122は指令値に応じて、回転する。そして、モータ122が駆動されることによって、移動体の車輪や関節等が回転する。これにより、移動体が倒立制御されて、移動する。なお、移動体には、車輪や関節等に応じた数のモータ122が設けられている。例えば、同軸2輪の倒立車輪型移動体の場合、車輪用のモータ122が2つ設けられている。
【0027】
ここで、センサユニット110に設けられている第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサとは、図2に示すように、Y軸周りにおいて、反対方向の角速度を検出する。すなわち、第1のピッチセンサ111で検出される角速度と、第2のピッチセンサ112で検出される角速度は、絶対値が同じで、符号が異なっている。ここで、第1のピッチセンサ111から出力される信号を第1ピッチ信号とし、第2のピッチセンサ112から出力される信号を第2ピッチ信号とする。第1ピッチ信号は、Y軸周りの一方の方向の角速度を示し、第2ピッチ信号は、Y軸周りでその反対方向の角速度を示している。
【0028】
具体的には、図3に示すように、第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112が背中合わせとなるように、対向配置する。すなわち、第1のピッチセンサ111と、第2のピッチセンサ112を180°反転して配置する。こうすることで、第2ピッチ信号は、第1ピッチ信号を反転した信号となる。
【0029】
CPU121は、第1ピッチ信号と第2ピッチ信号とを比較する。そして、センサユニット110が故障しているか否かを判定する。正常時には、第1ピッチ信号と第2ピッチ信号の合算値は0になり、故障発生時には、第1ピッチ信号と第2ピッチ信号の合算値が発散する。このため、合算値としきい値を比較する。あるいは、合算値を積算していき、積算値をしきい値と比較する。この比較結果によって、故障か否かを判別することができる。
【0030】
そして、センサユニット110が故障している場合、倒立移動体の動作を停止する。故障した場合でも、搭乗者が速やかに降車することができる。さらに、搭乗中に故障した場合でも、より安全に降車することができる。
【0031】
なお、上記の説明では、第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112を背中合わせに配置したが、センサの配置はこれに限られるものではない。第1のピッチセンサ111からの第1ピッチ信号と、第2のピッチセンサ112からの第2ピッチ信号とが正負反転した信号であればよい。従って、一方のピッチ信号を電気的に反転させることも可能である。この場合、図4に示すように、第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112とが同じ向きで配置される。そして、第1のピッチセンサ111、及び第2のピッチセンサ112からの一方の出力に、反転器を設ける。こうすることで、第2のピッチセンサ112が第1のピッチセンサ111からの第1ピッチ信号と反転した第2ピッチ信号を出力する。
さらに、別のセンサの配置例について、図5を用いて説明する。図5は、センサの配置を模式的に示す上面図である。図5では、2つのピッチセンサと2つのロールセンサが同一平面上に配置されている。基板230の実装面には、第1のピッチセンサ111、及び第2のピッチセンサ112のセンサチップが配置されている。同様に、第1のロールセンサ113と第2のロールセンサ116のセンサチップが基板230の実装面に配置されている。
第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112は、同一タイプのセンサチップであり、実装面上において、180°反転した状態で配置されている。従って、図5では、第1ピッチセンサ111の一番ピン(説明のため、図5中の白丸で図示)の位置が左上となり、第2ピッチセンサ112の一番ピンの位置が右下となっている。第1ピッチセンサ111と第2ピッチセンサ112が反転したピッチ角速度ωxを検出し、出力される検出信号は、正負反転した値となる。第1ピッチセンサ111と第2ピッチセンサ112から出力される検出信号を合算することによって、故障を検知することができる。
同様に、第1のロールセンサ113と第2のロールセンサ116は、同一タイプのセンサチップであり、実装面上において、180°反転した状態で配置されている。これにより、第1ロールセンサ113と第2ロールセンサ116が反転したロール角速度ωyを検出し、出力される検出信号は、正負反転した値となる。第1ロールセンサ113と第2ロールセンサ116から出力される検出信号を合算することによって、故障を検知することができる。
【0032】
実施の形態1.
本実施の形態にかかる故障検知装置について、図6を用いて説明する。図6は、故障検知装置の全体構成を示すブロック図である。なお、上記の基本システムで説明した内容と重複する内容については、説明を適宜省略する。故障検知装置は、第1のシステム100と、第2のシステム200とを備えている。そして、第1のシステム100には、第1のピッチセンサ111と、第2のピッチセンサ112と、ロールセンサ113と、CPU121と、モータ122と、が設けられている。第2のシステム200には、第3のピッチセンサ211と、第4のピッチセンサ212と、ヨーセンサ214と、CPU221と、モータ222と、が設けられている。第1のシステム100は、図1で示したシステム100から、ヨーセンサ114が取り除かれた構成となっている。また、第2のシステム200は、図1で示したシステム100から、ロールセンサ113が取り除かれた構成となっている。このように、それぞれのシステムのセンサユニットには、3つの角速度センサが設けられている。
【0033】
CPU121とCPU221は、図1で示した故障検知置と同様に、故障検知を行う。具体的には、CPU121は、第1のピッチセンサ111からの第1ピッチ信号と、第2のピッチセンサ112から第2ピッチ信号とに基づいて、故障検知を行う。これにより、第1のピッチセンサ111、又は第2のピッチセンサ112が故障したか否かが判定される。CPU221は、第3のピッチセンサ211からの第3ピッチ信号と、第4のピッチセンサ212から第4ピッチ信号とに基づいて、故障検知を行う。これにより、第3のピッチセンサ211、又は第4のピッチセンサ212が故障したか否かが判定される。
【0034】
さらに、CPU121とCPU221間で相互通信している。このため、第1のピッチセンサ111〜第4のピッチセンサ212のいずれが故障したかを特定することができる。すなわち、故障したシステムのうちのいずれのピッチセンサが故障したかを検出することができる。例えば、第1ピッチ信号と第2ピッチ信号の合算値に基づいて、CPU121が第1のピッチセンサ111、又は第2のピッチセンサ112が故障したことを検知する。この場合、正常な第3ピッチ信号、第4ピッチ信号と、第1ピッチ信号、第2ピッチ信号を比較する。こうすることで、第1ピッチ信号、及び第2ピッチ信号のいずれが異常なピッチ角速度を示しているかを判定することができる。これにより、故障したピッチセンサを簡便に特定することができる。ジャイロセンサの信頼性を向上することができる。さらに、故障したセンサが特定されているため、部品の故障、交換を速やかに行うことができる。また、故障時であっても、正常なピッチセンサからのピッチ角速度のみを制御に用いることができる。このため、故障が発生した場合でも、姿勢制御を停止する必要がなくなる。よって、姿勢制御を継続することができ、利便性を向上することができる。
【0035】
なお、ロール角速度と、ヨー角速度は、CPU121とCPU221間で相互通信している。これにより、CPU121、及びCPU221のそれぞれに、3軸周りの角速度が入力される。すなわち、CPU121には、ヨーセンサ214からのヨー信号が入力され、CPU221には、ロールセンサ113からのロール信号が入力される。よって、CPU121、及びCPU221のそれぞれが倒立移動体の3軸の姿勢を検出することができる。CPU121、及びCPU221は、姿勢に応じた指令値をモータ122、及びモータ222に出力する。
【0036】
次に、実際のジャイロセンサユニットについて、図7を用いて説明する。図7に示すように、例えば、基板230などに6つの角速度センサを取り付ける。基板230に、第1のピッチセンサ111、第2のピッチセンサ112、ロールセンサ113、第1のピッチセンサ211、第2のピッチセンサ212、ヨーセンサ214が搭載される。このとき、図8に示すように、第1のピッチセンサ111、及び第3のピッチセンサ211は、同じ向きで取り付ける。第2のピッチセンサ112、第2のピッチセンサ212は、第1のピッチセンサ111、及び第3のピッチセンサ211に対して、反対向きに取り付ける。これにより、第1のピッチセンサ111、及び第3のピッチセンサ211は、Y軸周りの正転方向の角速度を検出し、第2のピッチセンサ112、及び第4のピッチセンサ212は、Y軸周りの反転方向の角速度を検出する。これにより、簡便にY軸周りの両方向の角速度を検出することができる。もちろん、全てのピッチセンサを同じ向きに配置して、電気的に第2検出信号、及び第4検出信号を反転させてもよい。
【0037】
次に、センサユニットから出力される検出信号の波形に付いて、図9、及び図10を用いて説明する。図9は、第1のシステム100における検出信号の波形を示す図であり、図10は、第2のシステム200における検出信号の波形を示す図である。ここでは、第1ピッチ信号Pitch1と第3ピッチ信号Pitch3が正になるような回転を与えたときの測定結果を示している。正常時には、図9に示すように、第1ピッチ信号Pitch1と、第2ピッチ信号Pitch2とが反転した波形となる。同様に、正常時には、図10に示すように、第3ピッチ信号Pitch3と、第4ピッチ信号Pitch4とが反転した波形となる。異常時には、この関係がくずれる。すなわち、第1のシステム100側に故障が発生した場合、第1ピッチ信号Pitch1と、第2ピッチ信号Pitch2の反転波形がくずれる。一方、第2のシステム200側に故障が発生した場合、第3ピッチ信号Pitch3と、第4ピッチ信号Pitch4の反転波形がくずれる。
【0038】
このため、第1ピッチ信号Pitch1と、第2ピッチ信号Pitch2を比較して、第1システム100の異常を検知する。同様に、第3ピッチ信号Pitch3と、第4ピッチ信号Pitch4を比較して、第2システム200の異常を検知する。これにより、故障を速やかに検知することができる。さらに、故障を検知した場合、第1のシステム100と第2のシステム200が相互通信を行い、故障したシステムのピッチセンサからのピッチ信号と、故障していないシステムのピッチセンサからのピッチ信号を比較する。こうすることで、故障したピッチセンサを特定することができる。例えば、第1ピッチ信号Pitch1と、第3ピッチ信号Pitch3を比較し、第2ピッチ信号Pitch2と、第4ピッチ信号Pitch4を比較する。このように、第1ピッチ信号〜第4ピッチ信号を用いることで、故障したピッチセンサを特定することができる。
【0039】
本実施の形態では、少ない素子で、倒立制御に最も重要なピッチセンサの故障を特定することができる。これにより、簡便な構成で、安全性をより向上することができる。すなわち、1つのピッチセンサが故障した場合もで、そのピッチセンサを特定することができる。よって、その他のピッチセンサを用いれば、安全を確保するための特別な制御が不要となる。もちろん、ロールセンサ、及びヨーセンサを複数設け、故障したセンサを特定するようにしてもよい。これにより、信頼性を向上することができる。
【0040】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる故障検知システムについて、図11を用いて説明する。図11に示すように、第1のシステム100、及び第2のシステム200のそれぞれが3つのピッチセンサを有している。第1のシステム100に設けられた3つのピッチセンサを、第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112と第5のピッチセンサ115とする。同様に、第2のシステム200に設けられた3つのピッチセンサを、第3のピッチセンサ211と、第4のピッチセンサ212と、第6のピッチセンサ215とする。各システムに3つのピッチセンサを設けることで、CPU121とCPU221のそれぞれが、センサ故障を検出することができる。換言すると、CPU121とCPU221の相互通信なしで、故障したピッチセンサを特定することができる。また、それぞれのシステムで、故障したピッチセンサを特定することができるため、信頼性を向上することができる。
【0041】
例えば、第1のピッチセンサ111、第2のピッチセンサ112のうちの一方のピッチ信号を電気的に反転して、2つのピッチ信号の合算値を求める。同様に、第2のピッチセンサ112、第5のピッチセンサ115のうちの一方のピッチ信号を電気的に反転して、2つのピッチ信号の合算値を求める。さらに、第5のピッチセンサ115、第1のピッチセンサ111のうちの一方のピッチ信号を電気的に反転して、2つのピッチ信号の合算値を求める。1つのピッチセンサが故障した場合、3つの合算値のうち、2つの合算値が発散する。CPU121は、発散した2つの合算値に共通するピッチセンサが故障していると判定する。換言すると、発散していない合算値に対応する2つのピッチセンサが正常なピッチセンサとなり、それ以外のピッチセンサが故障していると特定される。このように、第1のシステム100に3つのピッチセンサを設置することで、CPU121が故障したピッチセンサを特定することができる。同様に、CPU221も3つのピッチ信号から、故障したピッチセンサを特定することができる。このように、3つのピッチセンサからのピッチ信号をそれぞれ比較することで、故障したピッチセンサを特定することができる。もちろん、本実施の形態においても、ジャイロセンサユニットにロールセンサ、及びヨーセンサを設けてもよい。
【0042】
実施の形態3.
本実施の形態にかかる故障検知装置について、図12を用いて説明する。本実施の形態にかかる故障検知装置では、実施の形態2で示した第1のシステム100と同様に、3つのピッチセンサを有する第1のシステム100が設けられている。ここで、3つのピッチセンサを実施の形態2の第1のシステム100と同様に、第1のピッチセンサ111、第2のピッチセンサ112、第5のピッチセンサ115とする。さらに、本実施形態では、実施の形態2で示した第1のシステム100に加えて、CPU131とモータ132が設けられている。CPU121は、モータ122に指令値を出力し、CPU131はモータ132に指令値を出力する。すなわち、本実施の形態では、1つのシステムにおいて、2つのモータ122、132に指令値を出力する構成に、故障検知装置を適用したものである。なお、上記の説明を重複する内容については、適宜説明を省略する。
【0043】
第1のピッチセンサ111、及び第2のピッチセンサ112からのピッチ信号は、CPU121に入力される。第5のピッチセンサ115からのピッチ信号は、CPU131に入力される。第1のピッチセンサ111からの第1ピッチ信号は、第2のピッチセンサ112から第2ピッチ信号に対して、反転している。従って、第1のピッチセンサ111と第2のピッチセンサ112の故障を検知することができる。さらに、CPU121とCPU131は相互通信している。よって、CPU121、及びCPU132の少なくとも一方は、第5のピッチセンサ115からの第5ピッチ信号を第1ピッチ信号、及び第2ピッチ信号と比較している。よって、故障したピッチセンサを特定することができる。すなわち、3つのピッチセンサからのピッチ信号を用いることで、故障したピッチセンサを特定することができる。
【0044】
例えば、第1ピッチ信号と第2ピッチ信号の合算値が発散すると、第1のピッチセンサ111、又は第2のピッチセンサ112の故障が検知される。第1ピッチ信号、及び第2ピッチ信号のそれぞれを、正常な第5のピッチセンサ115からの第5ピッチ信号と比較する。こうすることで、第1のピッチセンサ111、及び第2のピッチセンサ112のいずれが故障したかを特定することができる。第1ピッチ信号と第2ピッチ信号の合算値が発散していない場合、第5ピッチ信号を第1ピッチ信号、及び第2ピッチ信号のそれぞれと比較する。これにより、第5ピッチ信号が正常か否かを判定することができる。そして、第5ピッチ信号の異常が検知されると、第5のピッチセンサ115が故障したと判定される。このように、3つのピッチセンサからのピッチ信号をそれぞれ比較することで、故障したピッチセンサを特定することができる。よって、ピッチセンサの数を少なくすることができる。
【0045】
実施の形態4.
本実施の形態にかかる故障検知装置について、図13を用いて説明する。本実施の形態にかかる故障検知装置では、第1のシステム100と第2のシステム200が設けられている。そして、第1のシステム100、及び第2のシステム200のそれぞれに6つのセンサが設けられている。すなわち、第1のシステム100、及び第2のシステム200のそれぞれに、各軸のセンサが2個ずつ設けられている。そして、各軸周りのセンサの故障を検知するとともに、故障したセンサを特定する。なお、上記の説明を重複する内容については、適宜説明を省略する。
【0046】
第1のシステム100には、第1のピッチセンサ111と、第2のピッチセンサ112と、第1のロールセンサ113と、第2のロールセンサ116と、第1ヨーセンサ114と、第2ヨーセンサ117が設けられている。第2のシステム200には、第3のピッチセンサ211と、第4のピッチセンサ212と、第3のロールセンサ213と、第4のロールセンサ216と、第3のヨーセンサ214と、第4のヨーセンサ217が設けられている。従って、実施の形態1の構成に対して、第2のロールセンサ116と、第1のヨーセンサ114と、第2のヨーセンサ117と、第3のロールセンサ213と第4のロールセンサ216と、第4のヨーセンサ217が追加された構成になっている。
【0047】
このように、第1のシステム100が各軸に対して2個の角速度センサを有している。これにより、各軸の各速度センサの故障を検知することができる。すなわち、上記のように、2つのピッチ信号のうちの一方を反転して、合算することによって、ピッチセンサの故障を検知することができる。同様に、第1のロールセンサ113と第2のロールセンサ116の一方からのロール信号を反転して、合算することによって、ロールセンサの故障を検知することができる。さらに、第1のヨーセンサ114と第2のヨーセンサ117の一方からのヨー信号を反転して、合算することによって、ヨーセンサの故障を検知することができる。同様に、第2のシステム200においても、故障検知が行われる。
【0048】
さらに、第1のシステム100のCPU121と第2のシステム200のCPU221が相互通信を行う。こうすることで、故障したセンサを特定することができる。上記のように、第1のシステム100におけるピッチ信号と、第2のシステム200におけるピッチ信号を比較することで、故障したピッチセンサを特定することができる。同様に、第1のシステム100におけるロール信号と、第2のシステム200におけるロール信号を比較することで、故障したピッチセンサを特定することができ、第1のシステム100におけるヨー信号と、第2のシステム200におけるヨー信号を比較することで、故障したヨーセンサを特定することができる。
【0049】
このように、各システムに6個のセンサを配置することで、それぞれの軸に対して、センサの故障を検知することができる。さらに、2つのシステムが相互通信することで、3軸のそれぞれに対して、故障したセンサを特定することができる。
【0050】
上記のように、本発明の実施形態にかかる故障検知装置は、倒立移動体に設けられたジャイロセンサの故障を検出するものである。そして、故障検知装置は、第1の軸周りに
第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力する第1角速度センサと、前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力する第2角速度センサと、第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力する第3角速度センサと、を備えている。そして、故障検知装置は、第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、前記第1角速度センサ、第2角速度センサ、及び第3角速度センサのうち故障している角速度センサを特定する判定部を備えている。判定部は、CPU等のプロセッサとすることができる。
【0051】
故障検知装置において、2つピッチセンサを対称配置して、正側のピッチ信号と、負側のピッチ信号を出力するようにしてもよい。あるいは、ピッチ信号を電気的に反転して、正側のピッチ信号と、負側のピッチ信号を出力するようにしてもよい。さらには、これらを組み合わせて、正側のピッチ信号と、負側のピッチ信号を出力するようにしてもよい。
【0052】
本実施形態にかかる故障検知装置は、倒立移動体、特には、搭乗型移動体に好適である。例えば、倒立移動体において、異常が発生した場合でも、安全に搭乗者が降車できるようにすることが好ましい。倒立移動体の場合、その機構上の不安定性から、ジャイロセンサの故障を速やかに検知する必要がある。上記の故障検知装置を用いることで、速やかに故障を検知することができる。さらに、本実施の形態では、故障したピッチセンサを特定している。よって、1つのピッチセンサが故障した場合でも、他のピッチセンサからのピッチ信号を用いることで、動作を安定させることができる。なお、上記の説明ではピッチセンサの故障を検出する構成としてが、ロールセンサのみ、あるいは、ヨーセンサのみの故障を検知するようにしてもよい。あるいは、3軸のうち、全軸のセンサ、あるいは2軸のセンサの故障を検知するようにしても良い。
【0053】
図14は、故障検知装置を有する倒立移動体を示す図である。図1に示すように、倒立移動体300は、ホイール301、プラットホーム302、ハンドル303、グリップ304から構成され、ユーザ305を搬送する。このような2輪倒立ロボットは倒立移動体の典型である。ユーザ305がハンドル303を操作することによって、加速、又は減速する。そして、プラットホーム302には、ジャイロセンサの故障を検知する故障検知装置306が収納されている。
【0054】
例えば、実施の形態1にかかる故障検知装置がプラットホーム302に搭載されている。そして、ピッチセンサ111、ピッチセンサ112、ピッチセンサ211、ピッチセンサ212によって、ピッチ角速度を検出する。これにより、プラットホーム302の傾斜角度を検出することができ、姿勢を検出することができる。そして、左右のホイール301を制御するために、モータ122、及びモータ222を駆動する。これにより、モータ122、及びモータ222の駆動力がホイール301に与えられる。よって、左右のホイール301が回転して、倒立移動体300が倒立制御される。ユーザ305のハンドル操作に応じて、倒立移動体300が移動する。もちろん、ロール角速度、ヨー角速度を用いて姿勢を検出して、その姿勢に応じて制御を行っても良い。さらには、故障検知装置を搭載する移動体の構成は、特に限られるものではない。例えば、ユーザが座る搭乗席を有る移動体でもよい。さらには、車輪型の移動体にかぎらず、脚式の移動体であってもよい。
【0055】
上記の実施の形態1〜4は、適宜組み合わせて用いても良い。以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を本発明の範囲において容易に変更、追加、返還することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 第1のシステム
111 ピッチセンサ
112 ピッチセンサ
113 ロールセンサ
114 ヨーセンサ
115 ピッチセンサ
116 ロールセンサ
117 ヨーセンサ
121 CPU
122 モータ
200 第1のシステム
211 ピッチセンサ
212 ピッチセンサ
213 ロールセンサ
214 ヨーセンサ
215 ピッチセンサ
216 ロールセンサ
217 ヨーセンサ
221 CPU
222 モータ
300 倒立移動体
301 ホイール
302 プラットホーム
303 ハンドル
304 グリップ
305 ユーザ
306 故障検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立移動体に設けられたセンサの故障を検知する故障検知装置であって、
第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力する第1角速度センサと、
前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力する第2角速度センサと、
第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力する第3角速度センサと、
第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、前記第1角速度センサ、第2角速度センサ、及び第3角速度センサのうち故障している角速度センサを特定する判定部と、を備えた故障検知装置。
【請求項2】
前記第2角速度センサが、前記第1角速度センサと同じ方向の角速度を検出して、検出した角速度を反転させることで、前記第2検出信号を出力している請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項3】
前記1角速度センサと前記第2角速度センサとが、対向配置されている請求項1に記載の故障検知装置。
【請求項4】
前記第1角速度センサからの第1検出信号、及び第2角速度センサからの第2検出信号が入力される第1プロセッサと、
前記第3角速度センサからの第3検出信号が入力され、前記第1プロセッサと相互通信可能な第2プロセッサとを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の故障検知装置。
【請求項5】
前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第4検出信号を前記第2プロセッサに出力する第4角速度センサをさらに備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の故障検知装置。
【請求項6】
前記第1の軸周りの角独度が、ピッチ角速度であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の故障検知装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の故障検知装置を備え、
前記1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、姿勢を検出する倒立移動体。
【請求項8】
倒立移動体に設けられたセンサの故障を検出する故障検知方法であって、
第1角速度センサが第1の軸周りの第1の方向の角速度を検出して、第1検出信号を出力するステップと、
前記第1の軸に設けられた第2角速度センサによって、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第2検出信号を出力するステップと、
第3角速度センサによって、第1の軸周りの第1の方向の角速度を示す第3検出信号を出力するステップと、
第1検出信号と第2検出信号との比較結果に基づいて故障を検知し、第1検出信号、第2検出信号、及び第3検出信号を用いて、前記第1角速度センサ、第2角速度センサ、及び第3角速度センサのうち故障している角速度センサを特定するステップと、を備えた故障検知方法。
【請求項9】
前記第2角速度センサが、前記第1角速度センサと同じ方向の角速度を検出して、検出した角速度を反転させることで、前記第2検出信号を出力している請求項8に記載の故障検知方法。
【請求項10】
前記1角速度センサと前記第2角速度センサとが、対向配置されている請求項8に記載の故障検知方法。
【請求項11】
前記第1角速度センサからの第1検出信号、及び第2角速度センサからの第2検出信号を第1プロセッサに出力し、
前記第3角速度センサからの第3検出信号を第2プロセッサに出力し、
前記第1プロセッサと第2プロセッサが相互通信することで、故障している角速度センサを特定する請求項8乃至10のいずれか1項に記載の故障検知方法。
【請求項12】
前記第1の軸に設けられ、前記第1の軸周りの第1の方向と反対の第2の方向の角速度を示す第4検出信号を第4角速度センサが前記第2プロセッサに出力する請求項8乃至11のいずれか1項に記載の故障検知方法。
【請求項13】
前記第1の軸周りの角独度が、ピッチ角速度であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の故障検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−68189(P2012−68189A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214859(P2010−214859)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)