説明

救急車

【課題】処置室内外において、内装装備、医療装備等を適切に配備して、救命隊員等が救命活動をより効率的に行なうことができる救急車を提供する。
【解決手段】処置室8内のスライドドア4側の出入口4a近傍に洗浄装置9を配置し、スライドドア5側の開放部5aに救助用資器材収納部12及び酸素ボンベ収納部13を形成し、処置室8内のスライドドア5側の側壁面の後端上部に換気扇19を配置する。処置室内8のスライドドア5側の側壁面下部に搬送用資器材収納装置20を配置し、処置室8内のスライドドア5側の側壁面中間部にスライドレール26及び資器材支持板27を、資器材収納装置の上面にスライドレール28及び資器材載置板29を配設して成る救急資器材設置装置25を配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置室内に座席、収納庫、換気扇、洗浄装置等の各種内装装備、保護用資器材、救命用資器材、監視用資器材、搬送用資器材等の各種医療装備等を配備した救急車に関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故、急性疾患等が発生した場合には、救急車が緊急出動して現場に向かい、救命隊員等が負傷者、患者等の救命活動を行なう。現場においては、負傷者、患者等を車載用ストレッチャ、スクープストレッチャ、バックボード等の搬送用資器材に載せて搬送し、救急車のバックドアから処置室内に搬入する。
【0003】
そして、救急病院等に向かう途中で、処置室内において、包帯、ガーゼ、止血帯、消毒薬、消毒器等の保護用資器材、人工呼吸器、酸素吸入器、吸引器等の救命用資器材、血圧計、心電図モニタ、患者監視装置等の監視用資器材等を使用し、負傷者、患者等を救命するために緊急処置を施す。
【0004】
救命隊員等がこのような救命活動を効率的に行なうことができるように、従来、救急車の処置室内には、座席、収納庫、換気扇、洗浄装置等の各種内装装備、保護用資器材、救命用資器材、監視用資器材、搬送用資器材等の各種医療装備等を適切に配備している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−104337号公報
【0006】
例えば、従来の救急車では、救助用資器材、酸素ボンベ等は処置室内の収納庫に収納して配備し、換気扇は救急車のルーフ後端部に配備し、洗浄装置は処置室内の右側壁面下部に配備していた。
【0007】
又、保護用資器材、救命用資器材、監視用資器材は右側壁面中間部に固定するか、右側壁面下部に配設した収納棚の上面に固定して配備し、搬送用資器材はその収納棚に立て掛けて配備していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の救急車では、救助用資器材、酸素ボンベ等を処置室内の収納庫に収納していたから、使用時又は交換時に、救助用資器材、酸素ボンベ等を処置室外に持ち出し、再度、それらを処置室内に持ち込む必要があり、時間がかかると共に、重労働でもあった。
【0009】
又、換気扇を救急車のルーフ後端部に配備していたから、空気の吸入音によって救急処置をしている負傷者、患者に悪影響を及ぼす虞があり、又、吸入される空気が付添人の頭部付近を流れ、不快感を与える虞があった。
【0010】
さらに、洗浄装置を処置室内の右側壁面下部に配備していたから、救命隊員、付添人等が手を洗浄する際に、右側壁面まで移動する必要があるが、右側壁面近傍には補助座席、防振ベッド等が配備されているので、移動は極めて面倒であった。
【0011】
又、保護用資器材、救命用資器材、監視用資器材を右側壁面中間部、又は、右側壁面下部に配設した収納棚の上面に固定していたから、救急処置時に、救命隊員が身体又はその一部を移動して使用、監視する場合もおこり、甚だ不便であった。
【0012】
さらに、搬送用資器材を右側壁面下部に配置した収納棚に立て掛けていたから、救命隊員は、処置室内で搬送用資器材の固定部材を解除した後、バックドアから取り出さねばならず、又、右側壁面下部に収納する際も面倒であった。
【0013】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、救急車の処置室内及び室外において、各種内装装備、各種医療装備等をより適切に配備して、救命隊員等が救命活動をより効率的に行なうことができる救急車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の救急車は、処置室内の一方のスライドドア側の出入口近傍に洗浄装置を配置し、他方のスライドドア側の開放部に救助用資器材収納部及び酸素ボンベ収納部を形成し、処置室内の他方のスライドドア側の側壁面の後端上部に換気扇を配置したことを特徴とする。
【0015】
前記救急車は、さらに、処置室内の前記他方のスライドドア側の側壁面下部に、回動自在かつ係止自在とした正面扉部と周囲の各壁面部とにより収納空間を画成し、後端部を開放部とすると共に前記バックドアに近接させた、搬送用資器材を収納する搬送用資器材収納装置を配置してもよい。
【0016】
又、前記救急車は、さらに、処置室内の前記他方のスライドドア側の側壁面中間部にスライドレール及びこれに係合自在かつ摺動自在とした資器材支持部材を配設し、資器材収納装置の上面にスライドレール及びこれに係合自在かつ摺動自在とした資器材載置部材を配設して成る救急資器材設置装置を配置してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の救急車の好適な実施形態について、その構成及び作用、効果を併せて、図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の救急車1は、図1に示すように、前側部両側に前後方向に回動するフロントドア2,3、中間部両側に前後方向に滑動するスライドドア4,5、後端部に上下方向に回動するバックドア6を配設してある。
【0019】
救急車1は、図2乃至5に示すように、車内の前側部に運転室7、後側部に処置室8を画成してあり、処置室8内の左側においては、スライドドア4側の出入口4a近傍に洗浄装置9を配置し、出入口4aの後方に前向座席10及び横向座席11を配置してある。
【0020】
ここで、洗浄装置9をスライドドア4側の出入口4a近傍に配置したから、救命隊員、付添人等は、出入口4aから処置室8に入る際に直ちに手を洗浄することができ、一々右側壁面まで移動する必要はなく、極めて便利である。
【0021】
又、図3に示すように、スライドドア5側の開放部5aに救助用資器材収納部12及び酸素ボンベ収納部13を形成し、救助用資器材収納部12に救助用資器材14を、酸素ボンベ収納部13に酸素ボンベ15を収納してある。
【0022】
ここで、救助用資器材収納部12は、後記縦型収納庫16の外側壁面に凹部を形成したものであるから、後記縦型収納庫16の外側壁面によって処置室8とは仕切られていることになる。
【0023】
又、酸素ボンベ収納部13は、隔壁13aによって処置室8と仕切られているが、隔壁13aには窓部13bを形成してあるから、窓部13bを介して処置室8内から酸素ボンベ15のバルブ等は操作できるようになっている。
【0024】
上記のように、救助用資器材14及び酸素ボンベ15をスライドドア5側の開放部5aに収納したから、救命隊員等は処置室8外に出て、スライドドア5を滑動させて開放すれば、救助用資器材14又は酸素ボンベ15を使用又は交換することができ、処置室8外に持ち出し、持ち込む必要はないから、作業を迅速に行なうことができると共に、労力も大幅に軽減される。
【0025】
さらに、図2乃至5に示すように、処置室8内の右側においては、前側部に縦型収納庫16を配備し、この後方に補助座席17及び防振ベッド18を配備してある。又、右側壁面の後端上部に換気扇19を配置してある。
【0026】
ここで、換気扇19を右側壁面の後端上部に配置したから、吸入される空気の影響は殆どなくなり、空気の吸入音によって救急処置をしている負傷者、患者に悪影響を及ぼす虞れはなく、又、吸入される空気が付添人の頭部付近を流れ、不快感を与える虞もない。
【0027】
処置室8内の右側壁面には、図2乃至5に示すように、各種救急資器材、その収納装置等を配備してあり、右側壁面下部には搬送用資器材収納装置20を配置してある。
【0028】
搬送用資器材収納装置20は、図2に示すように、回動自在かつ係止自在とした正面扉部21と周囲の各壁面部とによって収納空間22を画成し、後端は開放端部23とすると共に、バックドア6に近接させてある。
【0029】
よって、搬送用資器材収納装置20によれば、正面扉部21を前方に回動して傾斜状態に保持し、収納空間22を開放することによって、スクープストレッチャ、バックボード等の搬送用資器材24を斜め上方に持ち上げ、取り出すことができると共に、開放端部23から後方に引き出すことによって、直ちにバックドア6から処置室8外に取り出すことができる。
【0030】
尚、前記収納空間22を仕切る、回動自在とした仕切壁部を配設し、この仕切壁部を前記正面扉部21と協働するように構成して、複数の搬送用資器材24を収納することができ、又、同時に取り出すことができるようにしてもよい。
【0031】
又、右側壁面中間部及び前記搬送用資器材収納装置20の上面には、図2乃至5に示すように、救急資器材設置装置25を配置してある。
【0032】
救急資器材設置装置25は、図2に示すように、右側壁面中間部にスライドレール26及び資器材支持板27を配設し、前記搬送用資器材収納装置20の上面にスライドレール28及び資器材載置板29を配設してある。
【0033】
よって、救急資器材設置装置25によれば、救急バック等の保護用資器材、人工呼吸器等の救命用資器材、心電図モニタ等の監視用資器材30を資器材支持板27又は資器材載置板29に固定し、スライドレール26又は28に係合させることによって、救急資器材を摺動させて所望位置に固定することができると共に、救急資器材を新規に設置する時、交換する時においても、作業は極めて容易である。
【0034】
尚、前記資器材支持板27、前記資器材載置板29に代えて、複数のブラケットから成る資器材支持部材、資器材載置部材を構成し、これらに資器材を支持又は載置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の救急車の外観斜視図である。
【図2】本発明の救急車の左方から視た内部透視図である。
【図3】本発明の救急車の右方から視た内部透視図である。
【図4】本発明の救急車の概略内部構造を示す平面透視図である。
【図5】本発明の救急車の概略内部構造を示す側面透視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 救急車
4 スライドドア
4a 出入口
5 スライドドア
5a 開放部
6 バックドア
8 処置室
9 洗浄装置
12 救助用資器材収納部
13 酸素ボンベ収納部
19 換気扇
20 搬送用資器材収納装置
21 正面扉部
22 収納空間
23 開放端部
24 搬送用資器材
25 救急資器材設置装置
26 スライドレール
27 資器材支持板
28 スライドレール
29 資器材載置板
30 監視用資器材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部両側に前後方向に滑動するスライドドアを配設し、後端部に上下方向に回動するバックドアを配設して成る救急車において、処置室内の一方のスライドドア側の出入口近傍に洗浄装置を配置し、他方のスライドドア側の開放部に救助用資器材収納部及び酸素ボンベ収納部を形成し、処置室内の他方のスライドドア側の側壁面の後端上部に換気扇を配置したことを特徴とする救急車。
【請求項2】
さらに、処置室内の前記他方のスライドドア側の側壁面下部に、回動自在かつ係止自在とした正面扉部と周囲の各壁面部とにより収納空間を画成し、後端部を開放部とすると共に前記バックドアに近接させた、搬送用資器材を収納する搬送用資器材収納装置を配置したことを特徴とする請求項1に記載の救急車。
【請求項3】
さらに、処置室内の前記他方のスライドドア側の側壁面中間部にスライドレール及びこれに係合自在かつ摺動自在とした資器材支持部材を配設し、資器材収納装置の上面にスライドレール及びこれに係合自在かつ摺動自在とした資器材載置部材を配設して成る救急資器材設置装置を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の救急車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−111142(P2007−111142A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303739(P2005−303739)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(591159055)トヨタテクノクラフト株式会社 (19)
【Fターム(参考)】