説明

教材提示順序制御装置及び同制御プログラム

【課題】提示順序の設定を人手によることなく自動で行なうとともに、提示順序の設定自由度の高い教材提示を可能とする教材提示順序制御装置を提供する。
【解決手段】教材提示順序制御装置80は、所定の初期選択条件に基づいて、複数の教材のうちの一つを選択する初期教材選択部81と、複数の教材の相互の関連度を格納した関連度テーブル100に基づいて、初期教材選択部81により選択された教材に続いて提示する教材を順次選択する次教材選択部82とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばe−ラーニングやモバイル学習等において、教材を適切な順序で提示するための技術に関し、特に、学習者の興味を継続させるような順序で教材を選択して提示するための教材提示順序制御装置及び同制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
学習に際して、教材、例えば暗記すべき単語、文、文章、習得すべき課題、解くべき問題等を適切な順序で学習者に提示することは、学習者のモチベーションの維持や学習効果の確保のために重要である。
【0003】
例えば、相互に全く無関係な問題を連続して提示するよりは、関連性のある問題を連続して提示する方が、学習者は要領を会得しやすいことから学習効果は大きいと考えられる。反面、関連性のある問題のみでは、飽きを生じやすい。
【0004】
そこで、教材提供側では、関連性のある問題を連続して提示したり、時には関連性のない問題を連続的に提示したりできるように、提示順序の設定自由度の大きいことが望まれる。また、そのための問題選択の制御はできるだけ容易に実現することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、このような教材の提示順序は予め人手で決められているか、提示すべき問題をランダムに選択している。人手により教材の提示順序の決定作業を行なうのは大変であり効率が良くないし、提示順序の設定の自由度に劣るというような問題がある。ランダムに問題を選択する場合、分野ごとというような制約を付すことはできるが、やはり問題間の関連を勘案した順序で問題を提示することは不可能である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、提示順序の設定を人手によることなく自動で、かつ学習者の興味を維持できるように適切に行なうことができる教材提示順序制御装置およびコンピュータプログラムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、提示順序の設定の自由度が高く、自動的に、かつ学習者の興味を維持できるように適切に行なうことを可能とする教材提示順序制御装置およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に従った教材提示順序制御装置は、所定の初期選択条件に基づいて、複数の教材のうちの一つを選択するための初期教材選択手段と、複数の教材の相互の関連度を格納した関連度テーブルに基づいて、前記初期教材選択手段により選択された教材に続いて提示する教材を順次選択するための次教材選択手段とを含む。
【0009】
選択手段は、関連度テーブルに基づいて、先の教材に続いて提示する次の教材を選択する。関連度テーブルは自動的に作成可能であるから、教材の提示順序の設定が人手によることなく自動で行われることとなり、効率が良い上、コスト削減にもつながる。また、テーブルの内容を適切に修正することにより、提示順序を自在に設定することができるから、提示順序の設定自由度を格段に向上できる。
【0010】
上記の教材提示制御装置において、選択手段は、関連度テーブルに基づいて、先に提示された教材との間で所定の条件を充足する関連度を持つ教材を次の教材として選択するための手段を含んでも良い。
【0011】
提示された教材と所定の条件を充足する関連度を持つ教材が次に提示される。連続して提示される教材間に所定の関係が成立することとなり、学習者の興味を維持することができる。
【0012】
選択手段が、関連度テーブルに基づいて、先に提示された教材との間の関連度が所定のしきい値と予め定める関係を充足する教材を次の教材として選択するようにしても同様の効果が得られる。
【0013】
また、各教材の提示回数を記録するためのカウンタをさらに含み、選択手段は、カウンタにより記録された提示回数が一定の値に達していない教材から次の教材を選択するための手段を含むようにしても良い。
【0014】
カウント値が一定に達した教材についてはもはや選択されないことになり、同一の教材が繰り返して提示されるのを防止できる。
【0015】
また、教材の関連度のとり得る値は、予め定める第1の値および第1の値と異なる第2の値を含み、教材相互が所定の関係を充足しているときは両教材の関連度が第1の値とされ、充足していないときには関連度が第2の値とされ、選択手段は、先に提示された教材との関連度が第1の値である教材を次の教材として選択するための手段を含むようにしても良い。
【0016】
関連度が第1の値である教材が連続して提示されるので、適切な関連をもつ教材の関連度が第1の値となるような関連度テーブルを予め準備しておけば、自動的に適切な関連をもつ教材が連続して提示されることになる。
【0017】
2つの教材が関連しているかどうかについては、例えば、教材が単語を提示する問題であるときには、2つの単語のうちの一方の末尾と他方の先頭の文字または発音が一致しているとき、または2つの単語が同義、類義、反義のとき、または2つの単語に派生関係があるとき、または2つの単語の対訳が同じとき、両教材の関連度を第1の値とし、それ以外は第2の値とする方法がある。
【0018】
また、教材が文を提示する問題であり、任意の二つの教材の関連度が、各教材を構成する文の間で算出される所定の類似度、例えばタニモト係数、により示されるようにしてもよい。
【0019】
類似度により示された関連度に基づいて、互いに類似した文が連続するように教材提示順序が決定される。
【0020】
また、関連度テーブルの任意の部位に、関連度に代えて予め定められた記号が設けられており、選択手段は、先に提示された教材に対応する関連度として関連度テーブル内で検出されたこの記号に基づいて、次の教材の選択と異なる処理を実行するようにしてもよい。この記号により、教材の連続的な提示を停止して別の処理を挿入したり、教材の提示を終了したりすることができる。
【0021】
本発明の他の局面に従ったコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されると、上記いずれかの教材提示順序制御装置としてコンピュータを動作させるコンピュータプログラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に述べる本発明の実施の形態は、コンピュータおよびコンピュータ上で動作するソフトウェアにより実現される。もちろん、以下に述べる機能の一部又は全部を、ソフトウェアでなくハードウェアで実現することも可能である。
【0023】
図1に、本実施の形態で利用されるコンピュータシステム20の外観図を、図2にコンピュータシステム20のブロック図を、それぞれ示す。なおここに示すコンピュータシステム20はあくまで一例であり、この他にも種々の構成が可能である。
【0024】
図1を参照して、コンピュータシステム20は、コンピュータ40と、いずれもこのコンピュータ40に接続されたモニタ42、キーボード46、およびマウス48を含む。コンピュータ40にはさらに、CD−ROM(Compact Disc Read−Only Memory)ドライブ50と、FD(Flexible Disk)ドライブ52とが内蔵されている。
【0025】
図2を参照して、コンピュータシステム20はさらに、コンピュータ40に接続されるプリンタ44を含むが、これは図1には示していない。またコンピュータ40はさらに、CD−ROMドライブ50およびFDドライブ52に接続されたバス66と、いずれもバス66に接続された中央演算装置(Central Processing Unit:CPU)56、コンピュータ40のブートアッププログラムなどを記憶したROM(Read−Only Memory)58、CPU56が使用する作業エリアおよびCPU56により実行されるプログラムの格納エリアを提供するRAM(Random Access Memory)60、および後述する教材と関連度テーブルとを格納したハードディスク54を含む。
【0026】
以下に述べる実施の形態のシステムを実現するソフトウェアは、たとえば、CD−ROM62のような記録媒体上に記録されて流通し、CD−ROMドライブ50のような読取装置を介してコンピュータ40に読込まれ、ハードディスク54に格納される。CPU56がこのプログラムを実行する際には、ハードディスク54からこのプログラムを読出してRAM60に格納し、図示しないプログラムカウンタによって指定されるアドレスから命令を読出して実行する。CPU56は、処理対象のデータをハードディスク54から読出し、処理結果を同じくハードディスク54に格納する。
【0027】
コンピュータシステム20の動作原理自体は周知であるので、ここではその詳細については繰り返さない。
【0028】
なお、ソフトウェアの流通形態は上記したように記憶媒体に固定された形には限定されない。たとえば、ネットワークを通じて接続された他のコンピュータからデータを受取る形で流通することもあり得る。また、ソフトウェアの一部が予めハードディスク54中に格納されており、ソフトウェアの残りの部分をネットワーク経由でハードディスク54に取込んで実行時に統合するような形の流通形態もあり得る。
【0029】
一般的に、現代のプログラムはコンピュータのオペレーティングシステム(OS)によって提供される汎用の機能を利用し、それらを所望の目的にしたがって組織化した形態で実行することにより前記した所望の目的を達成する。したがって、以下に述べる本実施の形態の各機能のうち、OSまたはサードパーティが提供する汎用的な機能を含まず、それら汎用的な機能の実行順序の組合せだけを指定するプログラム(群)であっても、それらを利用して全体として所望の目的を達成する制御構造を有するプログラム(群)である限り、それらが本発明の技術的範囲に含まれることは明らかである。
[装置の説明]
本実施の形態のプログラムを教材提示順序制御装置80とみなして機能的に示したのが図3のブロック図である。図3を参照して、ハードディスク54には、N個の教材Ii(i∈{0,1,…,N−1})が予め蓄積されている。さらに、各教材IiとIjの間の関連度Rij∈Rが予め計算され、各教材IiとIjの相互間の関連度テーブル100としてテーブル化されてハードディスク54に記憶されている。関連度テーブルの一例を図4に示す。関連度テーブルについては図4を参照して後述する。
【0030】
教材提示順序制御装置80は、ハードディスク54に記憶された教材の中から最初に提示すべき教材を選択するための初期教材選択部81と、現在選択され学習者に対して提示された問題と、ハードディスク54に記憶された関連度テーブルとに基づいて、次に学習者に提示すべき教材でかつ所定回数(n回とする。)以上提示されていないものを選択し、図示しない出力部に与えるための次教材選択部82と、次教材選択部82が教材の提示回数を計数する際に使用するカウンタ83とを含む。
【0031】
図4を参照して、本実施の形態では、ハードディスク54に記憶された関連度テーブル100は、N行N列の行列形式となっている。図4においては、列方向(縦方向)には先に(M番目に)提示される教材の番号が、行方向(横方向)には次に(M+1番目に)提示される教材の番号が示されている。すなわち、この関連度テーブル100のi行j列には、2つの教材Ii(先に提示される教材)とIj(後に提示される教材)との関連度Rijの値が格納されている。本実施の形態では、教材IiとIjとが関連しているときには関連度Rijが1に、関連していないときは関連度Rijが0に、それぞれ設定される。
【0032】
図4に示す例では、各教材が自分自身との間に持つ関連度は1となっているが、関連度の定義によってこの値は0にも1にもなり得る。自分自身との間の関連度が1となる場合、自分自身を続けて選択して無限ループを生じる危険性があるので注意しておく必要がある。
【0033】
この実施の形態では、各教材Iiは学習対象の外国語の単語を出題し、その訳語を問う問題を想定している。教材の関連度としてはいわゆるシリトリ方式を採用し、2つの単語のうち、教材(単語)Iiの末尾の文字(または発音)と教材(単語)Ijの先頭の文字(または発音)とが一致しているとき、両者は相互に関連しているものとして関連度Rijを1に、一致していないときは0に設定する。
【0034】
また、例えば特定の教材(例えば教材Ij)で学習を終了させようとする場合、関連度Rjx(xは0〜N−1の任意の数)の全ての値を−1に設定する。先の教材Iiを提示後、テーブル100を参照して次に提示すべき教材として教材Ijを選択した場合、この教材Ijに対応する関連度がすべて−1となるので、教材Ijで学習を強制的に終了する。つまり、この実施の形態では関連度−1は停止記号として用いられている。
【0035】
勿論、停止記号は−1に限定されることはないし、1行の値をすべて−1とせず、特定の一つの関連度のみを−1としておいてもよい。この場合には、関連度1または−1を同一視して次の教材を選択した後、選択された教材の関連度が−1であった場合に処理を終了すればよい。
【0036】
また、関連度Rijの代わりに、0、1以外の特定の識別記号を適当に書き込んでおき、その識別記号を選択した場合には、一時的に息抜き用の内容(例えばアニメーションなど)を提示した後に、その識別記号に対応する教材を選択して学習に復帰するようにしても良い。
【0037】
なお、単語学習の際の関連度の他の設定の仕方として、シソーラスを参照して、2つの単語IiとIjが同義、類義、反義のときは関連度Rijを1に、そうでないときは0に設定するようにしてもよい。また、単語辞書を参照して、2つの単語IiとIjの間に派生関係(例えば形容詞と名詞の関係等)があるときは関連度Rijを1に、そうでないときは0に設定してもよい。また、対訳辞書を参照して、2つの単語IiとIjの対訳が同じとき(例えば英語に関してその和訳が同じであるとき)、両教材の関連度Rijを1とし、それ以外は0としても良い。
【0038】
初期教材選択部81は、ハードディスク54に蓄積されている教材Iiの中から、初期教材を選択するものである。初期教材の選択は、本実施の形態では、利用者により指定されたジャンルの問題のうちから適当に(例えば乱数により)選択するようにする。
【0039】
次教材選択部82は、初期教材選択部81で初期教材が選択されると、以後、関連度テーブル100を参照して、続いて提示する教材を選択決定していく機能を持つ。具体的には、予め決められた条件に従い、図4に示す関連度テーブル100を参照しながら、教材の提示順序を決定していく。例えば、関連度Rijが1の教材を提示するという条件のもとでは、初期教材として与えられた教材Iiに対して、関連度が1である教材を関連度テーブルのIiの行から検索する。例えば教材IiとIj、または教材IiとIkとの関連度がともに1であれば、次に提示する教材としてIjまたはIkのいずれかを選択する。関連度1の教材が複数存在する場合には、降順あるいは昇順に選択するとか、ランダムに選択するというように予め設定しておけばよい。関連度−1となる教材が選択されたときにはその時点で処理を終了させる。何らかの事情により学習をできるだけ早く停止させたい場合には、関連度が1となる複数の教材に関し、その次の教材との関連度を先読みし、先読みした関連度が−1となる教材を選択するようにしても良い。
【0040】
次教材選択部82は、教材Ikを選択しこれが出力されると、列方向のIkの位置から行方向に関連度Rkmが1となる教材Imが存在すれば、これを次に提示する教材として選択する。複数あるときは前述したとおり、何らかの選択条件にしたがって次の問題を選択する。以下同様である。
【0041】
カウンタ83は、次教材選択部82により次に提示される教材として選択された回数、換言すれば提示された回数を、図5に示すようなカウンタテーブル110にて教材毎にカウントするものである。本実施の形態では、選択回数(提示回数)が所定の回数(n回)に達した教材については、もはや次の提示教材として選択しない。この構成により、同じ教材だけが偏って提示されるのを避ける配慮がなされている。
【0042】
[プログラムの制御構造]
次に、図3に示した教材提示順序制御装置80の機能をコンピュータを用いて実現するためのプログラムの制御構造を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、ステップ202において所定の選択方法にしたがって初期教材Iiを選択する。選択された初期教材はステップ204において出力部へ送信され、出力部からさらにパーソナルコンピュータやモバイル機器等に送信され学習者に対し提示される。
【0044】
次に、初期教材Iiに対して関連度1の教材が存在するか否かを、関連度テーブル100を参照して検索する(ステップ206)。初期教材Iiに対して関連度1の教材が存在すれば(ステップ206の判断がYES)、ステップ208に進み、存在しなければ(ステップ206の判断がNO)、ステップ216に進む。
【0045】
ステップ208において、関連度1の教材が複数個存在する場合には、何らかの選択方法にしたがってそのうちの一つを選択する。この後ステップ210に進む。
【0046】
ステップ210では、初期教材Iiに対して選択された関連度1の教材(教材Ijとする。)が、既にn回以上提示されているか否かをカウンタテーブル110から判断する。この教材Ijがn回以上提示されていれば(ステップ210の判断がYES)、ステップ206に戻り、教材Ijと関連度1となるような次の候補を関連度テーブル100を用いて探す。教材Ijがn回以上提示されていなければ(ステップ210の判断がNO)、この教材Ijを次教材として選択し(ステップ212)、出力部へ送信する(ステップ214)。そして、ステップ206に戻り、次の提示教材を選択するため、教材Ijとの関連度が1の教材を検索する。以下同様の処理を繰返し、関連する教材がシリトリ方式で提示される。
【0047】
一方、ステップ216では、関連度テーブル100のうち、直前に提示された問題に対応する行に格納された関連度がすべて−1か否かを判断する。関連度がすべて−1の場合には(ステップ216の判断がYES)、処理を強制停止する(ステップ218)。関連度が全て−1でない場合には(ステップ216の判断がNO)、関連度がすべて0であり関連する教材が存在しないことから、ステップ202に戻り、初期教材の選択から処理を再開する。
【0048】
[動作]
上記した教材提示順序制御装置80は以下のように動作する。図3を参照して、まずハードディスク54に教材と関連度テーブル100とが準備される。学習者からのリクエストに応じて初期教材選択部81が最初の教材をハードディスク54に格納された教材から選択し、出力部と次教材選択部82とに与える。
【0049】
次教材選択部82は、初期教材選択部81から与えられた教材の番号に基づいて、ハードディスク54に記憶された関連度テーブルの中の、当該教材に対応する行に格納された関連度の中で1となるものが存在するか否かを判定する。1となるものが一つだけ存在する場合には、次教材選択部82はその関連度1が存在している列に対応する教材を次の教材として一旦選択する。1となる関連度が複数個存在する場合、次教材選択部82は所定の選択方式にしたがってその中の一つを選択し、その関連度が存在している列に対応する教材を次の教材として一旦選択する。
【0050】
次教材選択部82はさらに、こうして一旦選択した教材について、これまでに選択(提示)した回数がn回以上か否かをカウンタ83を参照して決定する。選択した回数がn回以上の場合、この教材を提示することは中止する。n回未満であればこの教材を選択して出力部に与え、カウンタ83のこの教材に対応するカウントに1加算する。
【0051】
次に、実際に選択されたか否かにかかわらず、次教材選択部82により次の教材の候補として選択された教材に対応する行に格納された関連度の中で1となるものが存在するか否かを関連度テーブル100を参照して判定する。以下、既に説明したのと同様の方法にしたがって次の教材の選択を行なう。
【0052】
関連度テーブル100の、選択した教材に対応する行に格納された値が全て−1である場合には、教材提示順序制御装置80は処理を中止し、問題の提示は終了する。この際、問題の提示が終了したことを示すメッセージを出力部を介して学習者に送出するようにしてもよい。
【0053】
以上が教材提示順序制御装置80の動作の概略である。
【0054】
なお、図6に示した実施の形態では、関連度が1の教材を次に提示する教材として選択したが、逆に関連度0の教材を次の教材として選択しても良い。この場合は、前後で関連性のない教材が提示されることになる。関連度として0、1だけでなく、より多段階の値を用いるようにしてもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、選択した教材候補が既にn回以上提示されている場合にはその教材の提示を行なわないものとしたが、1回でも提示された教材は、次の提示教材として選択されない設定としても良い。この場合には、各教材は1回のみ提示されることになり多くの種類の教材を提示することができる。
[他の実施の形態]
図7は、この発明の他の実施の形態に係る関連度テーブルを示す。この関連度テーブル120は、教材Iiが文の場合を示しており、関連度はタニモト係数によって計算されている。
【0056】
タニモト係数は、教材Iiの文と教材Ijの文との構成単語の積集合のサイズ(要素数)を和集合のサイズ(要素数)で除した値である。具体的には、2つの教材が例えば「Do you have the time?」という文と「Do you have time?」という文であった場合、構成単語の和集合は「Do」、「you」、「have」、「the」、「time」でありその要素数は5、積集合は「Do」、「you」、「have」、「time」であり、その要素数は4である。したがってタニモト係数は4/5となる。タニモト係数により、文内容の類似性を表現できる。タニモト係数が1の場合、類似度は最大となり同義に近い文と見なすことができる。自分自身との間ではタニモト係数は1となる。この場合、図4に示すものと同様、自分自身を繰返す無限ループに陥る危険性があるので、それを防止するための方策をとっておく必要がある。
【0057】
また、この関連度テーブル120においても、教材提示を強制的に停止させるために、任意の箇所に意図的に関連度−1を設定しておいても良い。
【0058】
この関連度テーブル120を用いる場合でも、実施の形態1の装置80をそのまま使用することができる。次教材選択部82は、初期教材選択部81で初期教材が選択されると、以後続いて提示する教材を選択決定していく。具体的には、予め決められた条件に従い、図7に示す関連度テーブル120を参照しながら、教材の提示順序を決定していく。例えば、関連度Rijが最大の教材を提示するという条件の場合には、初期教材として与えられた教材Iiに対して、関連度Rijが最大である教材を関連度テーブルのIiの行から検索する。例えば教材Ijとの関連度が最大であれば、次に提示する教材として教材Ijを選択する。最大の関連度の教材が複数存在する場合には、任意のものを選んでもよいし、何らかの第2の基準(例えば文の長短など)にしたがっていずれかを選択するようにしてもよい。
【0059】
教材Ijが提示されると、関連度テーブル120のうち、教材Ijに対応する行の中で関連度が最大の教材を検索していき、これを次に提示する教材として選択する。
【0060】
また、関連度Rijが最大の教材を選択するのではなく、予め設定したしきい値よりも関連度が大きな教材の中から任意の教材を選択するようにしてもよい。
【0061】
この実施の形態においても、選択回数(提示回数)がn回に達した教材については、もはや次の提示教材として選択されないように設定しても良いし、1回でも提示された教材は、次の提示教材として選択されない設定としても良い。
【0062】
この実施の形態を実現するためのプログラムフローチャートは、図6のステップ206において、関連度が最大の教材の有無を判断すること以外は第1の実施の形態のそれと同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
なお、上記した実施の形態では、学習者が一人であることを想定しているが、プログラムで上記装置を実現可能であることからも明らかなように、複数のプログラムを並列で動作させることにより、同一の関連度テーブルを用いて複数の学習者に異なる系列の問題を与えることも可能である。
【0064】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施の形態の教材提示順序制御プログラムを実行するコンピュータシステムの外観図である。
【図2】図1のコンピュータシステムのブロック図である。
【図3】この発明の一実施の形態の教材提示順序制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】関連度テーブルを示す図である。
【図5】カウンタテーブルを示す図である。
【図6】図3の教材提示順序制御装置による次教材の選択処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】他の実施形態の関連度テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0066】
40 コンピュータ
80 教材提示順序制御装置
81 初期教材選択部
82 次教材選択部
83 カウンタ
100,120 関連度テーブル
110 カウンタテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の初期選択条件に基づいて、複数の教材のうちの一つを選択するための初期教材選択手段と、
複数の教材の相互の関連度を格納した関連度テーブルに基づいて、前記初期教材選択手段により選択された教材に続いて提示する教材を順次選択するための次教材選択手段とを含む、教材提示順序制御装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記関連度テーブルに基づいて、先に提示された教材との間で所定の条件を充足する関連度を持つ教材を次の教材として選択するための手段を含む、請求項1に記載の教材提示順序制御装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記関連度テーブルに基づいて、先に提示された教材との間の関連度が所定のしきい値と予め定める関係を充足する教材を次の教材として選択するための手段を含む、請求項1に記載の教材提示順序制御装置。
【請求項4】
各教材の提示回数を記録するためのカウンタをさらに含み、
前記選択手段は、前記カウンタにより記録された提示回数が一定の値に達していない教材から次の教材を選択するための手段を含む、請求項1に記載の教材提示順序制御装置。
【請求項5】
教材の関連度のとり得る値は、予め定める第1の値および前記第1の値と異なる第2の値を含み、
教材相互が所定の関係を充足しているときは両教材の関連度が前記第1の値とされ、充足していないときには関連度が前記第2の値とされており、
前記選択手段は先に提示された教材との関連度が前記第1の値である教材を次の教材として選択するための手段を含む、請求項1に記載の教材提示順序制御装置。
【請求項6】
教材が文を提示する問題であり、任意の二つの教材の関連度が、各教材を構成する文の間で算出される所定の類似度により示されている、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の教材提示順序制御装置。
【請求項7】
前記関連度テーブルの任意の部位に、関連度に代えて予め定められた記号が設けられており、
前記選択手段は、先に提示された教材に対応する関連度として前記関連度テーブル内で検出された前記予め定められた記号に基づいて、次の教材の選択と異なる処理を実行する、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の教材提示順序制御装置。
【請求項8】
コンピュータにより実行されると、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の教材提示順序制御装置としてコンピュータを動作させる、コンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−126241(P2006−126241A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310550(P2004−310550)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「大規模コーパスベース音声対話翻訳技術の研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】