説明

教育装置

【課題】暗黙知(経験知)を伝承できる教育装置を得る。
【解決手段】操作者による操作に基き、教育対象業務を模擬する業務模擬装置1により、教育対象業務を模擬したときの業務模擬装置1の操作及びその手順並びに業務模擬装置1への入出力の履歴データA201を収集蓄積機能2により、収集して蓄積し、この収集蓄積手段2により蓄積された履歴データA201を復元機能4により復元して、指導者の暗黙知を蓄積し、再現することができ、暗黙知を伝承していくことを可能とすると共に、比較・判定機能8により、履歴データに基き、指導者の業務の進め方と、学習者の業務の進め方を比較して、学習者の学習を支援するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ある人間の持つノウハウ・経験知・暗黙知を、別の人間に伝承する教育装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熟練者が経験により体得したノウハウは、徒弟制という形を通じた、指導の下での体験により伝承されてきた。例えば、企業においては、指導者の下で実業務の多様な経験(OJT=On the Job Training)を繰り返すことにより、創造性が発揮できる知識として伝承されてきている。
コンピュータを用いて教育を支援するものとして、CAI(Computer Assisted Instruction)装置が広く用いられているが、これは、教科書的知識の教育を目的としており、熟練者のノウハウの伝承を対象とはしていない。
また、ノウハウをデータベース化して蓄積するしくみが提案されているが、従来、提案されているノウハウ蓄積支援装置は、文書化したり、口頭で説明を行って共同作業者に継承してきたノウハウを、カード形式で記憶し、検索できるようにしたものである。(特許文献1)
あるいは、保守シミュレーション装置において、熟練者が原子力プラントの保守作業のシミュレーションを行いながら、適宜ノウハウを登録できるようにし、また、訓練者がシミュレーションを行いながら、このノウハウに基づくガイダンスを受けることができるようにした例がある。(特許文献2)
【0003】
【特許文献1】特開平3−119452号公報(第3〜6頁、図1)
【特許文献2】特開2005−215314号公報(第5〜8頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
知識科学において、ノウハウ、すなわち経験による知識は、言語や図表・数式により表現できる「明示知」(形式知・形態知)と、これらでは表現できない「暗黙知」(経験知)に分けられる。暗黙知は、言葉では表現できない知識であるため、これを伝承するためには、暗黙知をすでに体得している指導者が、学習者に付き添って指導し続けること、つまり、「指導の下での体験」が必要であるとされている。
特許文献1及び特許文献2に示される従来の装置は、いずれも、知識を言語や図表・数式で表現して蓄積しようとするものであり、一部の「明示知」の蓄積・伝承を可能とするものであるが、「暗黙知」の蓄積・伝承を行うものではない。
【0005】
一方、教育訓練においては、各種システムの高機能化・高信頼度化によるトラブル遭遇機会や保守機会の減少により、従来、OJTを通じて習得していた知識・技術が伝承しにくい環境となっている。加えて、約670万人を数える団塊世代が一斉に退職し、企業活動に大打撃を与えるといわれる「2007年問題」においては、ベテランが今日まで培ってきた高度な技能・ノウハウの継承を途絶えさせる危険が指摘されている。
これらの状況を踏まえ、熟練者のノウハウの継承、特に、ノウハウ継承の鍵となる「暗黙知」の継承を支援するしくみの実現が望まれている。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、暗黙知(経験知)を伝承できる教育装置を得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わる教育装置においては、操作者による操作に応じて教育対象業務を模擬する業務模擬装置、この業務模擬装置で教育対象業務を模擬したときの業務模擬装置の操作及びその手順並びに業務模擬装置からの出力を含む履歴データを収集して蓄積する収集蓄積手段、この収集蓄積手段により蓄積された履歴データを復元する復元手段、及び同じ教育対象業務について業務模擬装置を操作した複数の履歴データを比較し、相違を判定する比較判定手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、以上説明したように、操作者による操作に応じて教育対象業務を模擬する業務模擬装置、この業務模擬装置で教育対象業務を模擬したときの業務模擬装置の操作及びその手順並びに業務模擬装置からの出力を含む履歴データを収集して蓄積する収集蓄積手段、この収集蓄積手段により蓄積された履歴データを復元する復元手段、及び同じ教育対象業務について業務模擬装置を操作した複数の履歴データを比較し、相違を判定する比較判定手段を備えたので、指導者の暗黙知を蓄積し、再現することができるとともに、学習者は、指導者と自身との比較を行うことにより、暗黙知を習得することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による教育装置を示す構成図である。
図1において、教育装置は、指導者や学習者などの操作者の操作に応じて教育対象業務を模擬して動作履歴を履歴データB202(第1の履歴データ)として蓄積する業務模擬装置1と、業務模擬装置1を用いたある人間の教育対象業務に対する業務模擬装置1の操作及びその手順並びに業務模擬装置1への入出力の履歴データを収集し、蓄積する収集蓄積機能2(収集蓄積手段)と、収集蓄積機能2により蓄積される履歴データA201(第2の履歴データ)と、業務模擬装置1により蓄積される履歴データB202と、履歴データA201を用いて、操作者の教育対象業務の操作・手順・入出力の履歴データを復元する復元機能4(復元手段)と、複数の人間(例えば指導者と学習者)による教育対象業務の履歴データA201及び履歴データB202を比較し、相違を判定する比較判定機能8(比較判定手段)と、これら機能の起動管理を行うシステム管理機能5とから構成される。
なお、履歴データB202は、図2に示すように、業務模擬装置1の動作ログ、入力データ、出力データを蓄積したものであり、履歴データA201は、図3に示すように、業務模擬装置の起動情報、イベント識別情報、操作者の入力情報、業務模擬装置の出力情報などを蓄積したものである。
【0010】
ここで、業務模擬装置1は、任意の教育対象業務において、教育対象業務を模擬的に実施することを可能とするもの(例えば、業務支援装置や業務対象物の模擬装置であり、機器の解析業務における解析計算装置など。)である。業務模擬装置1は、単一のものである必要はなく、複数の業務模擬装置が存在してもかまわない。
また、履歴データA201と履歴データB202は、ある教育対象業務の課題(以下、業務課題という)に対する業務実施者の解決のアプローチ方法を、操作手順、業務手順、実施事項等を示すデータの形で保存したものである。「業務手順、実施事項等」とは、例えば、機器の解析業務を例にすると、どのような条件でどのような解析をどのような順序で実施したか、また、解析の結果のどのような点をどのようなデータで確認したか、確認の結果、どのような処置を施したか、などにあたる。つまり、履歴データA201と履歴データB202を構成するデータ全体は、暗黙的に当該操作者の業務への取り組みの方法が反映されていることとなる。
なお、ある操作者がある業務課題の解決を行う過程で蓄積される、履歴データA201、履歴データB202は、各々1ファイルとは限らず、複数のファイルで構成されていても構わない。(図1では、便宜上、各一つのファイルとして記載しているが、いくつかのファイルの集まりとして履歴データA201、履歴データB202を各々構成しても良い。)
【0011】
(業務模擬装置の構成)
次に、業務模擬装置の構成について図4により説明する。
図4は、この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置を示す構成図である。
図4において、ユーザインタフェース部101は、ユーザの入力(入力デバイスの操作、音声入力など)を受け付ける入力受付処理102と、システムからユーザへの出力(表示出力、音声出力など)を処理する出力処理103を持つ。入出力処理部104は、入力データ生成処理105と出力データ生成処理106を持つ。業務模擬処理107は、当該業務模擬装置の対象となる業務の模擬を行う種々の処理であり、例えば、前述の解析計算装置であれば、種々の解析計算処理となる(この場合は、人間が手計算で行う業務を、システムが行うという意味で、業務模擬処理である)。システム管理処理108は、これらの処理の全体の起動管理を行う部分である。
入力データ生成処理105から業務模擬処理107に受け渡されるデータとして、入力データ109があり、業務模擬処理107から出力データ生成処理106に受け渡されるデータとして出力データ110がある。動作ログ111は、システムの各機能により記録されるシステムの動作ログである。
ここで、「処理」とは、あるまとまった仕事を行うプログラムの集まりの単位をいう。いくつかの「処理」が集まり、一つの「機能」を構成する。
【0012】
(復元機能の構成)
次に、復元機能の構成について図5により説明する。
図5は、この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能を示す構成図である。
図5において、復元機能4は、教育装置のシステム管理機能5から起動される。復元機能メイン処理2301は、復元機能全体のプログラムの起動管理を行う部分であり、履歴データ読み込み処理2302は、履歴データA201を読み込み、内部データに展開する処理である。出力再現処理2303は、履歴データA201から展開される内部データを用いて、業務模擬装置1の出力(画面表示出力や音声出力)の再現を行う部分である。ユーザ入力再現処理2304は、履歴データA201から展開される内部データを用いて、ユーザの操作入力や音声入力を再現する部分である。
【0013】
(比較・判定機能の構成)
次に、比較・判定機能の構成について図6により説明する。
図6は、この発明の実施の形態1による教育装置の比較・判定機能を示す構成図である。
図6において、比較・判定機能メイン処理2901は、比較・判定機能全体のプログラムの起動管理を行う。履歴データ読み込み処理2902は、履歴データを読み込み、内部データに展開する。履歴データ比較・判定処理2903は、二名の操作者(指導者と学習者)の履歴データを比較し、学習者の取り組みの適否を判定する。さらに合格処理を行う合格処理2904と、不合格処理を行う不合格処理2905を有し、さらにまた、比較判定の項目と方法を定義する比較判定基準データ2910を有している。
比較・判定機能8では、指導者の履歴データA2906、指導者の履歴データB2907と、学習者の履歴データA2908、学習者の履歴データB2909を用いる。ここで、指導者の履歴データA2906、学習者の履歴データA2908は、図1における履歴データA201のそれぞれ異なる具体的なデータとして別の符合を付けている。また、指導者の履歴データB2907、学習者の履歴データB2909は、図1における履歴データB202のそれぞれ異なる具体的なデータとして別の符合を付けている。
なお、上述では、比較・判定機能8は、履歴データAと履歴データBを用いて比較判定を行うものとして説明したが、少なくとも履歴データAを用いることにより比較判定することができる。
【0014】
次に、動作について説明する。
図7は、この発明の実施の形態1による教育装置の動作を示す説明図である。
図7において、暗黙知の蓄積6と、暗黙知の習得7があり、暗黙知の習得7には、観察による習得306と、実践による習得307がある。この観察による習得306に対応する教育装置の動作は、301の符合を付した枠内に記した内容であり、実践による習得307に対応する教育装置の動作は、302、303、304の符合を付した枠内に記した内容である。
図7に示すとおり、この教育装置の動作には、大きく二つの側面がある。第一の側面は、暗黙知(経験知)の蓄積6である。また、第二の側面は、学習者の模擬OJTによる暗黙知(経験知)の習得7である。
以下に、第一の側面について説明する。なお、第二の側面については、後述する復元機能の動作の説明のところで説明する。
第一の側面である暗黙知(経験知)の蓄積6については、暗黙知を蓄積する者(指導者とする)は、業務模擬装置1が持つ種々の機能を用いて業務課題を解決することによって行う。この際、収集蓄積機能2は、指導者の業務模擬装置1への入力操作、業務模擬装置1の動作、表示画面情報などの履歴を収集し、履歴データA201として蓄積する。業務模擬装置1が複数存在する場合は、これらの起動や操作の前後関係についても履歴データA201に蓄積する。
また、各業務模擬装置1は、利用した機能、入出力情報など、当該業務に固有の内部処理履歴情報を履歴データB202に蓄積する。
【0015】
(業務模擬装置の動作説明)
次に、業務模擬装置の動作について、図4と図8を用いて説明する。
図8は、この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の動作を示すフローチャートである。
図8は、操作者の入力に対して、ある一つの機能を実行する場合の、動作のフローチャートである。
業務模擬装置1は、入力受付処理102にて、ユーザからの入力を受け付ける入力受付(ステップ112)を実行し、入力データ生成処理105にて、入力データ109を生成する(ステップ113)。業務模擬処理107は、入力データ109を入力として、業務模擬処理(ステップ114)を行い、出力データ110を生成する(ステップ115)。出力データ生成処理106は、出力データ110を必要により編集し(ステップ116)、出力処理103にて出力処理(ステップ117)を行う。
【0016】
図8に示す一連の流れは、例えば前述の解析計算の例で言えば、解析計算に必要な数値や諸条件の入力を行い、計算結果を表示する、という一つの作業に相当する。一つの業務課題を解決するためには、計算の種別や入力条件などを変えて、この作業を何度も繰り返すことになる。
業務模擬装置1を構成する各プログラムは、これらの動作を行いながら、動作の履歴を動作ログ111に蓄積する。動作ログ111に蓄積される主な情報を図9に示す。
上述のとおり、指導者が業務模擬装置1を用いて業務課題を解決する過程を表現する履歴データには、業務模擬装置1により蓄積される履歴データB202と、収集蓄積機能2により蓄積される履歴データA201がある。履歴データB202に相当するものは、図4では、入力データ109、出力データ110、動作ログ111となる。また、これ以外に各プログラムが実行時に作成する暫定的中間ファイルも、保存しておくことにより、履歴情報として活用できる。図2に履歴データBとして蓄積される主な情報の例を示す。
【0017】
(業務模擬装置の動作を具体例で説明)
次に、業務模擬装置1の動作をわかりやすくするため、具体的な例を用いて説明する。一例として、ある機器の解析計算装置について、図10〜図16を用いて説明する。
想定する業務は、「機器の動作を決める何らかの値(「設定値」と呼ぶ)を様々な条件を考慮して検討し、経験知・暗黙知を用いて試行錯誤して決定する業務」とする。この設定値を決めるためには、様々な条件での膨大な数の計算を行う必要があるが、これを手計算で実施すると、業務効率や精度が悪いため、解析計算装置を用いて計算を実施する。この場合の解析計算装置が、業務模擬装置1である。
【0018】
図10は、この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置で想定される業務の一例の手順を示すフローチャートであり、業務模擬装置として用いられる機器の解析計算装置で想定する業務の手順を示している。
図11は、想定する機器の解析計算装置の機能一覧を示す図である。
図11のように、この解析計算装置は、計算機能209とデータ管理機能210を持つが、このうち、計算機能209を実現する部分についての構成を、図4に照らし合わせる形で記載したものが、図12である。
例えば、図10の業務の一手順である、「事前計算Bの実施(ステップ205)」を図11の事前計算B機能212を用いて行う場合の解析計算装置の動作を図12と図13を用いて説明する。
図13は、事前計算Bの実施(ステップ205)の実施における操作を示すフローチャートである。図13の太枠は操作者の操作入力、細枠は解析計算装置の出力や処理を示している。
【0019】
図13で、事前計算Bメニュー選択(ステップ232)では、システム管理処理221により表示されるメニューの中から、「事前計算B」を選択する。図14に、メニュー画面にて「事前計算B」をマウスクリックにより選択243している例を示している。
これにより、システム管理処理221は、事前計算B入力222を起動する。事前計算B入力222は、事前計算Bの計算条件などをユーザに入力させるための、入力画面を表示する(ステップ233)。図15にこの入力画面の例を示す。ユーザはこの画面上から、計算条件として条件A244や条件B245などを入力(ステップ234)し、実行釦247を押下(ステップ235)する。これにより起動される事前計算B入力データ作成処理223は、ユーザからの入力情報と、対象設備の諸元データベース226から、事前計算Bの入力データ224を作成する。(なお、対象設備の諸元データベース226は、予めユーザにより作成されているものとする。このデータベース226を作成するための機能は、図11では、対象設備条件設定機能217に相当するが、図12中では割愛している。)
【0020】
事前計算B入力データ224の生成が完了したら、事前計算B225が起動される。事前計算B225は、事前計算B入力データ224を入力として事前計算Bを行い、計算結果を事前計算B出力データ227として出力する。これらが図13の計算実行(ステップ236)に相当する。
次に、事前計算B225が終了したら、事前計算B結果表示データ作成228が起動される。事前計算B結果表示データ作成228は、事前計算B出力データ227と設備諸元データベース226から、計算結果を画面表示や印刷出力ができる情報に変換し、事前計算B結果表示229に渡す。事前計算B結果表示229は、結果を画面上に表示する。図16に事前計算B結果の表示画面例を示す。すなわち、計算結果249が図16の画面上に表示されている。これらの一連の動作が、図13では、結果表示(ステップ237)に相当する。
【0021】
ユーザは、表示された結果を確認(ステップ238)する。この確認のためには、表示させる情報の種類の選択248を状況に応じて任意に行う。このユーザの操作に対し、事前計算B結果表示229が表示出力を切り替える処理を行う。
一通りの確認が終わったら、ユーザは、次の処理を選択する(ステップ239)。次の処理とは、例えば、計算条件を変えて、もう一度事前計算Bを行う(ステップ240)、計算結果を保存する(ステップ241)、事前計算B機能を一旦終わり、別の機能を使う(ステップ242)などがある。ユーザの選択に従い、システム管理処理221は、必要な処理を起動する。
以上の操作と動作は、図10に示す業務の手順の「事前計算Bの実施」(ステップ205)の中の、1ケース(1回)の計算を実施するものである。「事前計算Bの実施」(ステップ205)では、計算結果を見ながら、新たな計算条件を検討し、複数のケースの計算を繰り返し行う。
【0022】
図13の一連の操作を行う過程で、解析計算装置内ではログを蓄積する。例えば、システム管理処理221は、システムログ230を蓄積し、事前計算B機能に関わる処理(事前計算B入力222、事前計算B入力データ作成223、事前計算B225、事前計算B結果表示データ作成228、事前計算B結果表示229)は、事前計算Bログ231を蓄積する。
この過程に対する履歴データB202に相当するものは、システムログ230、事前計算Bログ231、事前計算B入力データ224、事前計算B出力データ227、及び各処理を実行するプログラムが中間的に生成した入出力ファイルである。
【0023】
(収集蓄積機能の動作)
次に、収集蓄積機能2により、履歴を蓄積する方法について説明する。
収集蓄積機能2では、複数の業務模擬装置1の起動・終了の情報や、各業務模擬装置1のマンマシンインタフェース(操作者の入力、システムから操作者への出力のインタフェース)の情報を収集する。収集蓄積機能2による情報収集の方法を図17にて説明する。
【0024】
図17は、この発明の実施の形態1による教育装置の収集蓄積機能による情報の取得を示す図である。
図17において、1、2、201は図1におけるものと同一のものである。
収集蓄積機能2は、業務手順の収集蓄積を行う間は、常時動作していて、単一または複数の業務模擬装置1の動作を監視する。各業務模擬装置1の起動・終了情報、操作者の入力や、業務模擬装置1の表示出力などの状態変化は、イベント信号として、収集蓄積機能2に送られ、業務模擬装置1と収集蓄積機能2間での通信を行うことにより、このイベント信号に関する情報が収集蓄積機能2にて取得できる。
【0025】
次に、図18により、収集蓄積機能の処理について説明する。
図18は、収集蓄積機能の処理を示すフローチャートである。
収集蓄積機能2は、業務手順の収集蓄積を行う間は常時動作していて、業務模擬装置1からのイベント信号の受信待ち状態にある(ステップ118)(ステップ119)。イベント信号を受信すると、イベント信号の発生元の業務模擬装置1に対し、関連情報を要求し、取得する(ステップ120)。そして取得した情報を履歴データA201として蓄積する(ステップ121)。
ここでは、便宜上、履歴データ蓄積(ステップ121)の後でイベント信号受信待ち(ステップ118)へ戻る記載としているが、イベント信号受信待ち処理(ステップ118)と関係情報の要求と取得(ステップ120)、履歴ファイル蓄積(ステップ121)は、並列処理となるため、これらの処理を行っている間にも、イベント信号受信待ち処理(ステップ118)は行われている。
【0026】
図19は、収集蓄積機能で収集する主要な関連情報を示す図である。
これらの情報は、発生の前後関係と共に、履歴データA201に蓄積される。図3に履歴データAに蓄積される情報を示す。発生の前後関係の管理は、順番を示す番号によって実施する、時刻データを用いて実施する、データの並びで管理するなど様々な方法がある。
【0027】
複数の異なる業務課題について、指導者が業務模擬装置1を用いた業務課題解決を行うことにより、各々の業務課題に対応した履歴データA201と履歴データB202が蓄積される。また、同一の業務課題について、複数の人間が上記の作業を行うことにより、ひとつの業務課題について、多様な履歴データA201と履歴データB202が蓄積される。これらの履歴データA201と履歴データB202に指導者(熟練者)の暗黙知が暗黙的に含まれる。
【0028】
なお、業務課題解決に業務模擬装置1を複数用いた場合、各々の業務模擬装置1に対して履歴データB202が存在する。図20に、一つの業務課題を3つの業務模擬装置1を用いて解決する場合の、履歴データの構成を示す。
業務模擬装置1(3301)は、履歴データB−1(3302)を生成し、業務模擬装置2(3303)は、履歴データB−2(3304)を生成し、業務模擬装置3(3305)は、履歴データB−3(3306)を作成する。収集蓄積機能2は、3つの業務模擬装置を用いて当該業務課題を解決する一連の履歴を、履歴データA201に蓄積する。
【0029】
(復元機能の動作)
図7に示す教育装置の動作の第二の側面は、学習者の模擬OJTによる暗黙知(経験知)の習得7である。
復元機能4は、すでに蓄積されている履歴データA201または、履歴データA201と履歴データB202を用いて、当該履歴データを蓄積した人間の業務の進め方を再現する。
履歴データを蓄積した人間の業務の進め方の再現には、業務模擬装置1を使う場合と、使わない場合が考えられる。
【0030】
以下には、業務模擬装置を使わない場合について詳述する。
この場合には、収集蓄積機能2で蓄積した履歴データA201を用い、操作入力と出力の遷移を紙芝居のような形で画像・音声などで再現する。
図21は、復元機能の処理を示すフローチャートである。
図21において、システム管理機能5から起動された復元機能メイン処理2301は、履歴データ読み込み処理2302を起動し、履歴データを読み込み、内部データに展開する(ステップ2401)。次に、出力再現処理2303が初期状態を再現(ステップ2402)する。初期状態の再現は、図19に示した、履歴データA201に蓄積されている業務模擬装置1の出力情報1302を用い、保存されている画像データを表示したり、保存されている音声出力を内部処理で再度出力したりすることにより可能である。
【0031】
次に、この初期状態に対する、ユーザの入力を再現(ステップ2403)する。ここでは、図19に示した、履歴データA201に蓄積されている操作者の入力情報1301を用い、マウスの操作やキーボード入力を再現する。例えば、マウスの操作情報として、「画面上の座標Aから座標Bへマウスを動かして、座標Bの部分でクリックした」という情報が履歴データA201にあれば、その状態を表示することにより、再現ができる。
【0032】
キーボード入力も同様に、例えば、「画面上の座標Dにおいて、文字サイズ10ポイント、黒色で“ABCD”と入力した」という情報があれば、同じ座標にて“A”“AB”“ABC”“ABCD“と順次表示を切り替えることにより、画面上で1文字ずつの入力の再現(入力している状況の再現)ができる。あるいは、“A”を入力した状態の画像情報と“AB”を入力した状態の画像情報などが保存してあれば、この画像情報の表示の切り替えでも同様の再現は実現できる。
図22に復元表示例を示す。音声入力を再現する場合は、入力した音声(保存してある音声)を再生して出力することで可能である。(ここで再現することの目的は、他者の操作の再現であるため、第三者としてそれが観察できる状況を作ればよい。)
【0033】
ユーザの入力が再現(ステップ2403)できれば、次に、その入力に対する業務模擬装置1の出力を再現(ステップ2404)することになる。これは、初期状態再現(ステップ2402)と同じ処理により再現する。以降、ユーザの入力再現(ステップ2403)と業務模擬装置の出力再現(ステップ2404)を業務課題完了まで繰り返して行けばよい(ステップ2406)。全ての再現が終わったら(ステップ2405)復元処理は終わりとなる。
【0034】
(解析計算装置の例による復元機能の動作説明)
ここで、復元機能の動作を、前述の解析計算装置の例にて説明する。例えば、図13におけるフローチャートに従った操作の再現を行う。
まず、事前計算Bメニュー選択(図13のステップ232)の前の状態を初期画面として再現(ステップ2402)した例を図23に示す。
次に、事前計算Bメニュー選択232の操作を、ユーザの入力再現(ステップ2403)で行う。例を図24に示す。ここでは、実際の操作に従って、マウスの記号2601が画面上に現れ、「事前計算B」のメニューまで動く。そして、ここでマウスクリックの操作をし、「事前計算B」メニューが黒色2602に表示される。ここで、厳密には、マウスの記号2601が画面上に現れ、「事前計算B」のメニューまで動く、という処理がユーザの入力再現(ステップ2403)となり、これにより発生する、「事前計算B」メニューが黒色2602に表示される、という処理は、図21では業務模擬装置の出力再現(ステップ2404)となる。
【0035】
さらに、この操作にて、計算条件の入力(図13のステップ234)を行うための画面が表示される。図21では、業務模擬装置の出力再現(ステップ2404)である。この例を図25に示す。画面上で、実際に表示された位置に、表示が再現される。
以下同様に、計算条件の入力(図13のステップ234)は、ユーザの入力再現(ステップ2403)の処理により、図26のように行われる。図26で、条件のキー入力2801、2802や、釦のマウスクリック2803が同様に再現できる。
【0036】
以上の機能により、学習者は、ある業務課題について、指導者により蓄積された履歴データA201を復元し、それを観察することにより、課題への取り組み方法(解決方法)を学ぶ。これは図7に示す枠301に相当する。
あるいは、学習者自身が、業務課題を実践し、取り組み方を学ぶ。このときは、学習者が業務模擬装置1を用いてある課題に取り組み、この履歴を収集蓄積機能2が学習者の履歴データA201として蓄積する。次に、学習者自身により蓄積したこの履歴データA201と、指導者により蓄積された履歴データA201を各々復元し、取り組み方法の相違を比較検討することにより、課題への取り組み方法を学ぶ。これは図7に示す枠302と枠303に相当する。
つまり、復元機能により、図7に示す「観察による暗黙知の習得」306と、「実践による暗黙知の習得」307の一部が実現可能となる。
【0037】
(比較判定機能の動作)
次に、図7に示す「実践による暗黙知の習得」307の指導者との比較による助言(枠304)を実現するための、比較・判定機能8の動作について説明する。
図27に比較・判定機能の処理フローを示す。
図27において、比較・判定機能8が起動されると、比較・判定機能メイン処理2901が、履歴データ読み込み処理2902を起動し、4つの履歴データ2906〜2909を読み込む(ステップ308)。次に、履歴データ比較・判定処理2903で、比較判定基準データ2910に従って、指導者と学習者の履歴データの比較(ステップ9)を行い、その結果により適否判定(ステップ10)を行う。
適否判定とは、比較される側(学習者)の業務課題への取り組みが適切かどうかを判定するものである。この結果により、適切と判定された場合は、合格処理2904にて、合格処理(ステップ11)を、不適切と判定された場合は、不合格処理2905にて不合格処理(ステップ12)を実施する。
【0038】
図27のステップ10の適否判定は、図28に示すような複数の基準で行う。
図28の業務手順の適否13は、業務課題解決のために、実施すべき事項の順序が適切であるかどうか、入力データの適否14は、課題解決の過程における各種ユーザ入力が適切であるかどうか、結果の正誤15は、課題に対する最終結果および、課題解決の過程で発生する小業務単位の結果が正しいかどうか、要実施事項の過不足16は、課題解決の過程で実施すべき事項が網羅されているか、あるいは、不要なことを行っていないか、を判定するものである。
「実施すべき事項の過不足」とは、例えば、機器の解析業務を例にすると、当該業務において実施しなければならない解析計算のケース(ケースとは、解析計算の入力条件や対象機器の構成の条件などで規定される)が全て実施されているか、また、解析計算の結果で見るべき箇所の見るべき数値を見たか、無駄なケースを実施していないか、などをチェックすることである。
【0039】
この判定では、指導者と学習者の履歴が完全に一致するかどうかを判定するものではない。課題解決の過程で、必ず一致しなければならない点とそうでない点があるため、具体的な適否の判定方法は、教育対象業務の種類により決まる。つまり、実際に業務課題を(業務模擬装置1を用いず、)OJTにて解決する場合に、指導者が学習者の業務過程や結果のどのような点に着目してチェック・指導するか、に基づき、具体的な適否の判定項目と、各々の判定項目に対する判定方法(完全一致を適とするか部分一致で良いかなど)とを設定する。この判定基準は、比較判定基準データ2910として設定しておく。
【0040】
図29に比較判定基準データに含まれる主な情報を示す。一つの比較判定の実施に対して、判定ポイント3601、比較対象データ3602、判定方法3603、補助情報3604の組み合わせの情報を設定する。
すなわち、比較判定ポイントが複数あれば、比較判定基準データには、この組み合わせの情報が複数格納されていることになる。また、各情報項目に対し、説明3605と、具体的な情報の例3606を示す。この例では、前述の機器の解析業務を想定し、解析に必要な種々の計算業務の中の一つである「××解析計算」について、実施すべき事項の過不足がないか、を判定する例である。
実際の比較判定基準データでは、数値情報や文字情報の組み合わせで表現されるが、この表では、説明のため、文章で記載している。なお、比較判定基準データは、教育対象業務について共通的な基準と、課題毎の個別の基準を含むため、課題毎の個別の基準については、指導者が設定する。
【0041】
図27の不合格処理(ステップ12)では、判定結果と不適切であった内容、つまり、当該の比較判定のポイントについて、指導者の履歴データA2906、指導者の履歴データB2907と、学習者の履歴データA2908、学習者の履歴データB2909との違いをユーザに提示することにより、反省と熟考を促す。
【0042】
次に、比較・判定機能における、履歴データA201と履歴データB202の利用の方法について説明する。
図30に、比較・判定機能にて用いるという観点から見た、履歴データA201と履歴データB202により得られる情報の意味を示す。
図30において、履歴データAからは、操作者の入力情報(キーボード入力、音声入力、マウス操作)3003と、複数の業務模擬装置の起動・終了・操作手順情報(起動・終了・操作の順序)3004と、業務模擬装置の出力情報(画面・音声)3009とが得られる。
履歴データBからは、業務課題を解決する過程で、実施した事項とその順序3005と、業務課題を解決する過程で、実施した事項の内部入出力情報3006と、業務課題を解決する過程で、部分的に得られた結果3007と、業務課題を解決結果として得られた結果3008とが得られる。
【0043】
例えば、図28に示す判定基準例に対し、図30の情報がどのように用いられるかを図31に示す。図31中の符合は、図28及び図30の符合と同じものである。
各判定は、履歴データA、履歴データBの中から必要な情報を用いて行えば良いため、図31の対応が全てという意味ではない。図31は、説明のために、主としてどのような情報を用いるかということを記載しているものである。
以上の比較・判定機能により、図7に示す「実践による習得」306の指導者の助言を得る状況304を実現することができる。
【0044】
(教育装置全体の動作)
次に、教育装置全体の動作について説明する。
以上の収集蓄積機能、復元機能、比較・判定機能を組み合わせることにより、図7に示した暗黙知の蓄積6、観察による習得306、実践による習得307を実現することができる。これらの機能を持つ教育装置全体の動作の一例(上記3機能の組み合わせ方の一例)を図32のフローチャートで示す。なお、図32中の太枠は、ユーザの操作を示す。
【0045】
図32で、まず、メニュー画面からの機能選択(ステップ3701)により、知識の蓄積(暗黙知の蓄積)3717が選択されると、図1のシステム管理機能5が収集蓄積機能2を起動する(ステップ3702)。収集蓄積機能2は、前述のとおりの収集蓄積処理(ステップ3703)を実施し、この間に、ユーザは一つ以上の業務模擬装置を用いて、業務課題を解決(ステップ3716)する。一連の課題が終了したら、ユーザは、収集蓄積機能を終了させる(ステップ3704)。これにより、再度、システム管理機能5は、メニュー画面を表示する(ステップ3714)。
メニュー画面から観察による学習3718が選択された場合は、まず、観察する対象の業務課題の選択(ステップ3705)をユーザが行う。収集蓄積機能2にて、様々な業務課題に対する、様々な指導者の解決手順が履歴データA・履歴データBとして保存されているため、これらのどの課題・指導者の解決手順を観察するかを選択するためである。次に、復元機能4が起動され(ステップ3706)、選択された課題・指導者に対応する履歴データA201を用いて復元処理を行う(ステップ3707)。
【0046】
メニュー画面から実践による学習3719が選択された場合、観察による学習の場合と同様に、学習者は比較する課題・指導者の指定を行い(ステップ3708)、システム管理機能5が収集蓄積機能2を起動する(ステップ3709)。知識の蓄積の場合と同様に、収集蓄積機能2は、収集蓄積処理を実施(ステップ3710)し、この間に、学習者は一つ以上の業務模擬装置1を用いて、課題解決に挑む。
【0047】
課題が終了し、学習者が収集蓄積機能2を終了(ステップ3711)させると、比較・判定処理が起動され(ステップ3712)、比較・判定機能8が、比較判定処理(ステップ3713)を実施する。
図7の302、303に示されるように、学習者が指導者の取り組みと自身の取り組みを観察し、違いを検討したい場合は、自己の「知識の蓄積」(ステップ3717)を実施し、指導者の取り組みの観察、自己の取り組みの観察を各々「観察による学習」(ステップ3718)機能にて行えば良い。
また、図32において、「実践による学習」(ステップ3719)には、学習者の取り組みの蓄積を含めているが、この部分は、「知識の蓄積」(ステップ3717)と同様の機能である。
【0048】
この教育装置では、言語や図表・数式による表現が困難である暗黙知(経験知)を、個々の問題(特殊条件下での複雑な検討が必要な問題を含む)の解決における熟練者の取り組み手順等の集合体の形で履歴データA201、履歴データB202として蓄積し、この蓄積されたデータの元で、未熟練者が従来のOJTと同様に、観察による学習、実践による学習の両方を行っていくことで、暗黙知(経験知)を体得していくことが可能となる。
因みに、従来のOJTの主体は、未熟練者が熟練者に張り付き観察・熟考することと、熟練者の指導の下で実践、反省することである。
【0049】
(効果)
実施の形態1によれば、このように構成された教育装置を用いることにより、従来の徒弟制度やOJTにより伝承してきた熟練者の暗黙知(経験知)を、業務模擬装置を用いた模擬的なOJTにより蓄積・伝承していくことが可能となる。
従来のOJTによる学習とは、様々な問題における、熟練者の模倣・観察や、熟練者による学習者の業務成果のチェックを通じて学習者が無意識のうちに暗黙知を獲得するものであり、本教育装置によりこの過程を実現できる。
また、この装置では、学習時に指導者が傍にいなくとも良いので、学習者の都合の良いときに学習に取り組むことができ、また、少数の指導者から一度に多数の学習者へ暗黙知(経験知)を伝承することが可能である。
【0050】
さらに、この教育装置により、退職などによりすでに存在しなくなった指導者の暗黙知(経験知)を教育装置の中に蓄積することが可能となる。従来のOJTでは、存在しない指導者の暗黙知(経験知)を蓄積・習得することは困難であるが、この装置の模擬OJTでは、過去の指導者を含め、複数の指導者の暗黙知(経験知)を習得することができるという効果がある。
加えて、指導者は、業務模擬装置を用いて課題に取り組むことにより、暗黙知(経験知)の蓄積が可能であるため、特別に意識することなく、暗黙知(経験知)の蓄積ができるという効果がある。
また、本教育装置の復元機能によれば、図7に示す、指導者の取り組みの観察301と、学習者自身の取り組みとの比較観察303は、業務模擬装置が存在しない環境(例えば業務模擬装置が計算機上で動作するソフトウエアであるとすれば、業務模擬装置のソフトウエアが存在しない計算機の上)でも再現できるため、より多くの学習者により、熟練者の業務履歴の再現による学習が可能である。
【0051】
また、教育装置により比較・判定を行うことにより、学習者自身のみでは理解できない相違点についても、装置が提示することができるため、学習効果が大きくなるという効果がある。
また、学習者自身の思い込みによる誤った解釈を避けることが可能となる。
さらに、複数の学習者に対して、同等の基準で判定することができるため、複数の学習者の到達レベル評価に用いることができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1では、ある業務課題についての学習者の履歴データを蓄積し終わった後に、履歴データの比較・判定を行うものとしたが、実施の形態2では、学習者が業務模擬装置を用いてある単一の業務課題に取り組んでいる途中で、学習者の履歴データを蓄積しながら、他の(指導者の)履歴データの復元や、学習者の履歴データと指導者の履歴データとの比較・判定を逐次実施することができるようにした。
図33は、この発明の実施の形態2による教育装置の動作を示す説明図である。
図33には、図7と同様の実施の形態2における装置の動作と機能が示されている。
図34は、この発明の実施の形態2による教育装置の比較判定処理の小業務・ステップを示すフローチャートである。
図35は、この発明の実施の形態2による教育装置の動作を示すフローチャートである。
図36は、この発明の実施の形態2による教育装置の比較判定処理を示すフローチャートである。
【0053】
次に、動作について説明する。
比較・判定は、業務課題の解決の過程を細分化した小業務あるいはステップごとに実施し、その時点で、合格処理または不合格処理を実施する。
図34を用いて、小業務・ステップの説明を行う。
図34において、一つの業務課題解決の中で実施すべき小業務とは、例えば、フローチャートに示す対象設備条件設定(ステップ3902)、事前計算Aの実施(ステップ3903)、事前計算Bの実施(ステップ3904)、検証計算Cの実施(ステップ3905)などがあり、例えばステップ3903のさらに細かいステップとして、計算の実施1(ステップ3906)、計算の実施2(ステップ3907)、データベースの変更(ステップ3908)、計算の実施3(ステップ3909)がある。
【0054】
次に、図35により教育装置の動作について説明する。
図35の場合は、メニュー画面(ステップ4001)で当該機能(仮に「指導による学習」とする)を選択(ステップ4002)し、実践による学習と同様に、比較する課題の指定(ステップ4009)を実施する。この場合、収集蓄積機能2の起動(ステップ4003)と、比較・判定処理の起動(ステップ4004)の両方が行われる。
これらの機能が動作している状態で、収集蓄積機能2による収集蓄積処理(ステップ4005)が行われ、学習者は、業務模擬装置1を用いた課題解決を実施し、この課題解決の細分化した過程で、比較・判定機能8は、比較・判定処理(ステップ4006)を実施する。学習者の課題解決が終了したら、収集蓄積機能2による収集蓄積処理を終了(ステップ4007)し、比較・判定処理を終了する(ステップ4008)。
【0055】
次に、図36を用いて比較・判定処理(ステップ4006)の詳細な処理フローを説明する。
図36で、ステップ9の履歴データの比較、及びステップ10の適否判定は、業務課題の解決の過程を細分化した小業務あるいはステップごとに実施し、その時点で、ステップ11の合格処理またはステップ12の不合格処理を実施する。
ステップ12の不合格処理では、不適切であった内容(指導者の履歴データとと学習者の履歴データとの違い)をユーザに提示し、正しい方法(業務模擬装置の操作)の再試行(ステップ17)を促す。ユーザの再試行(ステップ17)について、再度、比較・判定処理が行われ、これが適切であれば、合格となり、次の小業務・ステップの比較・判定処理に進む(ステップ18)。
【0056】
比較・判定処理をどのタイミングで実施するか、については、例えば、比較判定タイミング定義データなどにて設定しておく。このデータにて、区切りとなる操作を設定しておき、その操作入力があったタイミングで、当該操作までの履歴について、学習者の履歴データA・履歴データBと、指導者の履歴データA・履歴データBとで比較する。
例えば、図34の例で、「事前計算A」「事前計算B」の各メニュー選択を区切りの操作としておけば、事前計算Aの実施(ステップ3903)の前に実施しておくべきことについての比較・判定ができる。比較判定タイミング定義データは、当該業務について共通的なタイミングと、課題毎の個別のタイミングを含むため、課題毎の個別のタイミングについては、指導者が設定する。
【0057】
実施の形態2によれば、学習者の経験が浅い場合でも、早期に間違いを発見することができ、学習効果が更に高まるという効果がある。すなわち、実際のOJTにおいて、新人には指導者がつきっきりで細かくチェックし、軌道修正していくという方法をとるが、これをこの実施の形態2により模擬することができる。
また、誤りが早期に発見されることから、結果的に誤りが多発する学習の場合は、実施の形態1と比較して、手戻りが少なくてすむため、短時間で学習を行うことが可能となる。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態2では、比較判定機能による比較・判定処理を、逐次実施することとしたが、実施の形態3は、この比較・判定処理を任意のタイミングで実施できるようにした。
【0059】
実施の形態3では、ユーザ(学習者)が業務模擬装置1を用いて課題に取り組んでいる間の任意のタイミングで、比較・判定処理結果を問い合わせることにより、その時点までの業務ステップについての比較・判定処理を行い、合格処理または不合格処理を実施する。
【0060】
実施の形態3によれば、学習者が疑問または不安を感じた段階で、学習者の意図に従い、判定を行うことができ、学習意欲が向上し、学習効果の向上につながる。
【0061】
実施の形態4.
比較判定機能による比較・判定処理を行う方法として、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3の異なる方法があるが、実施の形態4は、学習時にこれらの方法を選択することができる選択機能(選択手段)を設けることにより、より高い教育効果を得るようにした。
例えば、業務課題の解決過程が比較的複雑でない場合は、実施の形態2により、正しい取り組みを逐一(ある程度局所的に)学習していくのが適しており、一方、業務課題の解決過程が複雑な場合は、業務課題解決の全体の取り組み方法を大局的に学習することが有効であり、実施の形態1のタイミングでの判定が適していると考えられる。実施の形態4は、これらを予め選択できるようにしたものである。
【0062】
実施の形態4によれば、比較判定機能による比較・判定処理を行うタイミングを学習時に学習者が予め選択できるようにすることで、業務課題の難易度に適した教育が可能となる。
【0063】
実施の形態5.
実施の形態5は、実施の形態1〜実施の形態4において、収集蓄積機能2により蓄積される履歴データを変更(編集)できる編集機能(編集手段)を付加する。
これにより、特に、指導者の履歴データに明らかに誤りがある場合に、再度の収集蓄積を行う必要がなく、短時間でデータの修正が可能となる。
【0064】
実施の形態6.
図37は、この発明の実施の形態6による教育装置の不合格処理の結果表示の段階を示す図である。
図37において、ステップ19〜22により不合格処理の不適切内容を段階的に表示する。
【0065】
実施の形態1〜実施の形態4における比較・判定処理の結果の不合格処理では、実施の形態1に記載した通り、判定結果と不適切であった内容、つまり、指導者の履歴データA・履歴データBと、学習者の履歴データA・履歴データBとの違いをユーザに提示し、反省と熟考を促すが、実施の形態6は、比較判定機能により、このときの不適切内容の提示を、段階的に行い、徐々に詳細になるように複数の段階で提供するようにし、学習効果をさらに高めるようにした。
【0066】
図37では、まず、全体の中のどの部分の業務が不適切であったかの表示を行う(ステップ19)。例えば、「▲▲の事前計算部分に誤りがあります」等である。
次に、ユーザの操作により内容を詳細化し、どの基準の判定が不適切であったかの表示を行う(ステップ20)。例えば「▲▲の事前計算部分の手順が不適切です」「▲▲の事前計算部分で実施すべきケースが網羅されていません」「▲▲の事前計算部分の●●ケースの入力が不適切です」などである。ここでいう「基準」とは、例えば図28に示したものを指す。
さらに、ユーザの操作により、さらに詳細な表示を行う(ステップ21)。「▲▲の事前計算部分の●●ケースの入力データ:××データが間違っています」などである。
さらにまた、ユーザ操作により、最終的に正解を表示する(ステップ22)。
【0067】
実施の形態6によれば、段階的に不適切内容の表示を行うことにより、学習者の熟考・反省の機会が増え、学習効果を高めることができる。
【0068】
実施の形態7.
図38は、この発明の実施の形態7による教育装置を示す構成図である。
図38において、1、2、4、5、8、201、202は図1におけるものと同一のものである。図38では、復元機能4に履歴データA201と、履歴データB202が入力されている。
【0069】
実施の形態1では、復元機能4は、業務模擬装置1を使わない方法により、履歴データを用いて人間の業務の進め方を再現した。実施の形態7は、業務模擬装置1を用いて再現するものである。
復元機能4を、業務模擬装置1を使って再現するように構成し、復元機能4は、履歴データA201及び履歴データB202を用いて、忠実に時間的に業務模擬装置1で入出力を再現するようにする。
【0070】
実施の形態7によれば、復元機能により、業務模擬装置を用いて人間の業務の進め方を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の実施の形態1による教育装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による教育装置の履歴データBを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による教育装置の履歴データAを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1による教育装置の比較・判定機能を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1による教育装置の動作を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の動作ログの内容を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置で想定される業務の手順を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の機能一覧を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の計算関係機能を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の事前計算Bの実施における操作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置のメニュー画面を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の事前計算Bの入力画面を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態1による教育装置の業務模擬装置の事前計算Bの結果表示画面を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態1による教育装置の収集蓄積機能による情報の取得を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態1による教育装置の収集蓄積機能の処理を示すフローチャートである。
【図19】この発明の実施の形態1による教育装置の収集蓄積機能で収集する主要な関連情報を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態1による教育装置の複数の業務模擬装置を用いた場合の履歴データの構成を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能の処理を示すフローチャートである。
【図22】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能のキーボード入力の復元表示例を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能により再現された初期画面を示す図である。
【図24】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能により再現されたユーザ入力を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能により再現された業務模擬装置の出力を示す図である。
【図26】この発明の実施の形態1による教育装置の復元機能により再現された計算条件入力を示す図である。
【図27】この発明の実施の形態1による教育装置の比較判定機能の処理を示すフローチャートである。
【図28】この発明の実施の形態1による教育装置の比較判定機能の判定基準を示す図である。
【図29】この発明の実施の形態1による教育装置の比較判定基準データに含まれる主な情報を示す図である。
【図30】この発明の実施の形態1による教育装置の比較判定処理における履歴データの利用を示す図である。
【図31】この発明の実施の形態1による教育装置の比較判定処理における判定基準に対する履歴データの用い方を示す図である。
【図32】この発明の実施の形態1による教育装置の全体動作を示すフローチャートである。
【図33】この発明の実施の形態2による教育装置の動作を示す説明図である。
【図34】この発明の実施の形態2による教育装置の比較判定処理の小業務・ステップを示すフローチャートである。
【図35】この発明の実施の形態2による教育装置の動作を示すフローチャートである。
【図36】この発明の実施の形態2による教育装置の比較判定処理を示すフローチャートである。
【図37】この発明の実施の形態6による教育装置の不合格処理の結果表示の段階を示す図である。
【図38】この発明の実施の形態7による教育装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 業務模擬装置、2 収集蓄積機能、
201 履歴データA、202 履歴データB、
4 復元機能、5 システム管理機能、8 比較・判定機能、
101 ユーザインタフェース部、102 入力受付処理、103 出力処理、
104 入出力処理部、105 入力データ生成処理、
106 出力データ生成処理、107 業務模擬処理、
108 システム管理処理、109 入力データ、110 出力データ、
111 動作ログ、2301 復元機能メイン処理、
2302 履歴データ読み込み処理、2303 出力再現処理、
2304 ユーザ入力再現処理、
2901 比較・判定機能メイン処理、2902 履歴データ読み込み処理、
2903 履歴データ比較・判定処理、2904 合格処理、
2905 不合格処理、2906 指導者の履歴データA、
2907 指導者の履歴データB、2908 学習者の履歴データA、
2909 学習者の履歴データB、2910 比較判定基準データ。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者による操作に応じて教育対象業務を模擬する業務模擬装置、この業務模擬装置で上記教育対象業務を模擬したときの上記業務模擬装置の操作及びその手順並びに上記業務模擬装置からの出力を含む履歴データを収集して蓄積する収集蓄積手段、この収集蓄積手段により蓄積された上記履歴データを復元する復元手段、及び同じ教育対象業務について上記業務模擬装置を操作した複数の上記履歴データを比較し、相違を判定する比較判定手段を備えたことを特徴とする教育装置。
【請求項2】
操作者による操作に応じて教育対象業務を模擬して動作履歴を第1の履歴データとして蓄積する業務模擬装置、この業務模擬装置で上記教育対象業務を模擬したときの上記業務模擬装置の操作及びその手順並びに上記業務模擬装置からの出力を含む第2の履歴データを収集して蓄積する収集蓄積手段、この収集蓄積手段により蓄積された上記第2の履歴データを復元する復元手段、及び同じ教育対象業務について上記業務模擬装置を操作した複数の上記第1及び第2の履歴データを比較し、相違を判定する比較判定手段を備えたことを特徴とする教育装置。
【請求項3】
操作者による操作に応じて教育対象業務を模擬して動作履歴を第1の履歴データとして蓄積する業務模擬装置、この業務模擬装置で上記教育対象業務を模擬したときの上記業務模擬装置の操作及びその手順並びに上記業務模擬装置からの出力を含む第2の履歴データを収集して蓄積する収集蓄積手段、この収集蓄積手段により蓄積された上記第1及び第2の履歴データを復元する復元手段、及び同じ教育対象業務について上記業務模擬装置を操作した複数の上記第1及び第2の履歴データを比較し、相違を判定する比較判定手段を備えたことを特徴とする教育装置。
【請求項4】
上記比較判定手段は、上記収集蓄積手段による上記履歴データの蓄積と並行して、上記比較判定を実施することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の教育装置。
【請求項5】
上記比較判定手段による比較判定を操作者の指示による任意のタイミングで行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の教育装置。
【請求項6】
上記比較判定手段による比較判定を行うタイミングを予め選択する選択手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の教育装置。
【請求項7】
上記比較判定手段は、上記比較判定の結果、履歴データの相違を段階的にユーザに提示することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の教育装置。
【請求項8】
上記収集蓄積手段により蓄積された上記履歴データを編集する編集手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の教育装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2007−233159(P2007−233159A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56383(P2006−56383)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】