説明

散気装置および排水処理装置

【課題】ガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる技術を提供する。
【解決手段】散気装置は、ガス流路を内部に形成するパイプ部であって、排水処理装置に組み込まれた状態を上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分であるパイプ部を備える。パイプ部は、排水処理装置に組み込まれた場合に下面と上面との少なくとも一方を形成する部分であって、外面が平面状に形成された平面部分と、平面部分に形成された、ガス吐出用の複数の吐出孔と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気装置および排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水処理装置には、水処理槽への酸素の供給、水処理槽の内部の撹拌等のために、散気装置が設けられている。散気装置としては、例えば、ガス(例えば、空気)の吐出のための複数の吐出孔を有する散気装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3734171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、散気装置の複数の吐出孔からのガスの吐出が不均等になる可能性があった。このような不均等は、種々の原因に起因して生じ得る。例えば、散気装置における吐出孔の形成位置のズレに起因して、複数の吐出孔の間での高さのバラツキが大きくなり、この結果、ガスの吐出が不均等になる場合があった。
【0005】
本発明の主な利点は、ガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
排水処理装置用の散気装置であって、
ガス流路を内部に形成するパイプ部であって、前記排水処理装置に組み込まれた状態を上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、前記第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分であるパイプ部を備え、
前記パイプ部は、
前記排水処理装置に組み込まれた場合に下面と上面との少なくとも一方を形成する部分であって、外面が平面状に形成された平面部分と、
前記平面部分に形成された、ガス吐出用の複数の吐出孔と、
を有する、散気装置。
【0008】
この構成によれば、ガス吐出用の複数の吐出孔が、外面が平面状に形成された平面部分に形成されているので、外面が曲面状に形成された部分に吐出孔が形成される場合と比べて、吐出孔の形成位置のズレを小さくすることができる。この結果、複数の吐出孔からのガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の散気装置であって、
前記平面部分は、前記排水処理装置に組み込まれた場合に、略水平な面を形成する、
散気装置。
【0010】
この構成によれば、外面が水平面に対して傾斜して形成された部分に吐出孔が形成される場合と比べて、吐出孔の形成位置のズレに対する吐出孔の高さのズレを小さくすることができる。この結果、複数の吐出孔からのガスの吐出が、吐出孔の位置ズレに起因して不均等になる可能性を低減できる。
【0011】
[適用例3]
適用例2に記載の散気装置であって、
前記パイプ部は、前記排水処理装置に組み込まれた場合に略水平な第1方向に延びる第1部分と、前記第1方向と交差する略水平な第2方向に延びる第2部分と、を含む、
散気装置。
【0012】
この構成によれば、散気装置を排水処理装置に組み込む際に、第1部分の延びる方向と第2部分の延びる方向との両方が略水平になるように散気装置を配置すれば、容易に、平面部分を略水平に配置することができる。この結果、排水処理装置内で散気装置が傾くことに起因してガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。
【0013】
[適用例4]
排水処理装置であって、
排水を処理する水処理槽と、
前記水処理槽に設けられた散気装置と、
を備え、
前記散気装置は、ガス流路を内部に形成するパイプ部であって、上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、前記第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分であるパイプ部を備え、
前記パイプ部は、
下面と上面との少なくとも一方を形成する部分であって、外面が平面状に形成された平面部分と、
前記平面部分に形成された、ガス吐出用の複数の吐出孔と、
を有する、
排水処理装置。
【0014】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、散気装置、散気装置を備える水処理装置、散気装置を備える排水処理装置、散気装置を利用した被処理水の処理方法、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としての散気装置100を示す説明図である。
【図2】吐出孔の高さの説明図である。
【図3】散気装置100を適用した排水処理装置1000の一部分を示す分解斜視図である。
【図4】継ぎ手150に対する散気装置100の方向の調整を示す概略図である。
【図5】散気装置の別の実施例を示す説明図である。
【図6】排水処理装置への散気装置100Wの組み付け例を示す概略図である
【図7】散気装置の別の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、この発明の実施の形態を実施例と変形例とに基づいて説明する。
【0017】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての散気装置100(「散気管100」とも呼ぶ)を示す説明図である。この散気装置100は、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエチレン等)で形成された中空状の部材(パイプ部材)である。図1(A)は、散気装置100を上方から下方に向かって見た上面図であり、図1(B)は、散気装置100を下方から上方に向かって見た下面図であり、図1(C)は、散気装置100のA−A断面図である。この断面は、パイプ部材の延びる方向と垂直な断面である。図中のZ方向は、鉛直上方向を示し、X方向とY方向とは、互いに垂直な水平方向を示している。これらの方向(X、Y、Z)は、散気装置100を排水処理装置(図示せず)に組み込んだ状態での方向を示している。以下、図中のXの矢印の方向を「+X方向」とも呼び、Xの矢印の反対方向を「−X方向」とも呼ぶ。YとZとのそれぞれについても、同様である。
【0018】
図1(A)に示すように、散気装置100は、上方から見て略矩形の環状(但し、一部が欠けている)を成すように、第1端101から第2端102まで水平面に沿って延びる中空状の部材(パイプ部材)である。具体的には、散気装置100は、第1端101から+Y方向に向かって延びる第1部分100aと、第1部分100aの+Y方向側の端から−X方向に延びる第2部分100bと、第2部分100bの−X方向側の端から−Y方向に延びる第3部分100cと、第3部分100cの−Y方向側の端から+X方向に延びる第4部分100dと、第4部分100dの+X方向側の端から+Y方向に延びて第2端102に至る第5部分100eと、を含む。
【0019】
図1(C)に示すように、散気装置100の断面形状は、下面の一部分である平下面部分120が水平な平面状に形成された、中空の略円形状である。ここで、「散気装置の下面」とは、鉛直下方向から上方向に向かって散気装置を見たときに見える外面部分を意味している。一方、「散気装置の上面」とは、鉛直上方向から下方向に向かって散気装置を見たときに見える外面部分を意味している。散気装置100の平下面部分120よりも上の部分は、略円弧状の部分110で形成されている。
【0020】
図1(B)では、平下面部分120がハッチングで示されている。図示するように、本実施例では、平下面部分120は、散気装置100の第1端101から第2端102までの全周に亘って形成されている。図1(B)、図1(C)に示するように、平下面部分120には、複数の吐出孔200が形成されている。本実施例では、吐出孔200は、散気装置100の5つの部分100a〜100eのそれぞれに、設けられている。それら複数の吐出孔200は、下方から上方(換言すれば、上方から下方)に向かって見た場合に、互いに重ならない位置に配置されている。
【0021】
本実施例では、散気装置100は、排水処理装置内の被処理水中に沈む位置に配置される。散気装置100の第1端101と第2端102とには、ブロワに通じる配管が接続される(詳細は後述)。ブロワから供給されたガス(例えば、空気)は、複数の吐出孔200のそれぞれから被処理水中に吐出される。
【0022】
図1(A)に示すように、第1端101の近傍と第2端102の近傍とのそれぞれには、マーク100pが形成されている。本実施例では、マーク100pは、散気装置100の上面に形成された、小さい凸形状の部分である。これらのマーク100pは、端101、102に接続される配管の向きを合わせる(調整する)ために用いられる(詳細は、後述)。
【0023】
図2は、吐出孔の高さの説明図である。図2(A)は、比較例の散気装置100Xの断面を示し、図2(B)は、実施例の散気装置100の断面を示している。ここで、図示された断面は、パイプ部材の延びる方向と垂直な断面である。比較例の散気装置100Xも、中空状の部材(パイプ部材)である。ただし、実施例とは異なり、散気装置100Xの断面形状(特に外面の断面形状)は円形状である。また、図2(A)には、散気装置100Xの中心軸100Xaxが示され、図2(B)には、散気装置100の中心軸100axが示されている。図示された中心軸は、断面形状(輪郭形状)の重心を辿ってパイプ部材に沿って延びる軸である。
【0024】
図2(A)に示すように、比較例の散気装置100Xの下面120Xには、吐出孔200Xが形成されている。この吐出孔200Xは、散気装置100Xの中心軸100Xaxの真下(すなわち、散気装置100Xの最も低い位置)に形成されている。図中には、吐出孔200から円周方向にズレて形成された吐出孔202X(「変位孔202X」とも呼ぶ)も示されている。図示するように、変位孔202Xは、吐出孔200Xから円周方向にズレているので、変位孔202Xの高さは、吐出孔200Xよりも、高さ差分dHXだけ高い位置に配置される。
【0025】
このように、互いに位置(特に高さ)の異なる複数の吐出孔が形成された散気装置100Xが被処理水中に配置されると、低い位置の吐出孔200Xよりも高い位置の変位孔202Xから多くのガスが吐出される。この結果、複数の吐出孔の間でガスの吐出が不均等になり得る。
【0026】
このような吐出孔の位置ズレは、ドリル等の孔あけ工具を用いて散気装置100Xに吐出孔200Xを形成する場合に生じやすい。孔あけ工具を用いて吐出孔200Xを形成する場合には、散気装置100Xの円筒状の表面に、工具(例えば、ドリル刃)が押し当てられる。円筒状の表面、すなわち、凸状の頂点に、押し当てられた工具は、表面上を滑りやすい。この結果、散気装置100Xに多数の吐出孔200Xを形成する場合には、位置のズレた変位孔202Xが形成され易い。
【0027】
図2(B)に示すように、実施例の散気装置100では、吐出孔200は、中心軸100axの真下に形成されている。上述したように、平下面部分120は、平面状に形成されている。従って、比較例の散気装置100Xのように曲面に吐出孔を形成する場合と比べて、工具(例えば、ドリル刃)は、平下面部分120上を、滑りにくい。この結果、吐出孔200の形成の位置ズレを小さくすることができる。この結果、複数の吐出孔200からのガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。
【0028】
また、図2(B)には、吐出孔200からズレて形成された吐出孔202(「変位孔202」とも呼ぶ)も示されている。上述したように、平下面部分120は水平である。従って、比較例の散気装置100Xにおける高さ差分dHXと比べて、吐出孔200と変位孔202との間に高さの差dHは、小さい(実施例では、平下面部分120が水平であるので、差dHはゼロである)。この結果、変位孔202のように位置ズレが生じた場合であっても、複数の吐出孔200からのガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。また、吐出孔200の形成位置の公差を粗くすることが可能である。この結果、散気装置100を製造する際の作業性を向上でき、また、コストを低減することができる。
【0029】
また、図1に示すように、本実施例の散気装置100は、水平なX方向に延びる部分100b、100d(「第1種部分グループ100G1」とも呼ぶ)と、X方向と直交する水平なY方向に延びる部分100a、100c、100e(「第2種部分グループ100G2」とも呼ぶ)と、を含んでいる。この結果、散気装置100を排水処理装置に組み込む際に、第1種部分グループ100G1が水平に延び、第2種部分グループ100G2も水平に延びるように、散気装置100を配置すれば、平下面部分120を水平に配置することができる。この結果、散気装置100が傾いて取り付けられる可能性を容易に低減できる。
【0030】
なお、散気装置100の5つの部分100a〜100eは、本発明における「パイプ部」の一例である。
【0031】
図3は、散気装置100を適用した排水処理装置1000の一部分を示す分解斜視図である。図中には、好気濾床槽300が示されている。好気濾床槽300は、X方向と平行な第1仕切板310と、第1仕切板310からY方向に延びる第2仕切板320とを含む複数の板で囲まれた水処理槽である。好気濾床槽300は、さらに、第1仕切板310からY方向に延びる第3仕切板330によって生物濾過部300aと接触曝気部300bとに区分されている(図中では、第3仕切板330の輪郭が点線で示されており、第3仕切板330の後ろの部分が透けて見えている)。生物濾過部300aの下部は、下部ネット304で仕切られ、生物濾過部300aの上部は、上部ネット302で仕切られている。上部ネット302と下部ネット304とで挟まれた空間内には、図示しない多数の粒状の担体が配置されている。これらの担体は、固形物を濾過する。下部ネット304の下には、散気装置100とは異なる別の散気装置190が配置されている。この散気装置190には、ブロワ500に通じる給気管354が接続されている(給気管354とブロワ500との間には、バルブ等の他の部材が設けられ得る)。ブロワ500は、この散気装置190からガスを吐出して生物濾過部300aを撹拌(洗浄)することが可能である。
【0032】
接触曝気部300bには、図示しない接触材が配置されている。散気装置100は、この接触材の下に配置されている。散気装置100には継ぎ手150が接続されている。この継ぎ手150は、略十字型の継ぎ手である。この継ぎ手150は4つの接続部150a〜150dを有している。第1接続部150aは、+Y方向を向き、第2接続部150bは、−Y方向を向いている。第1接続部150aには第1端101が接続され、第2接続部150bには第2端102が接続されている。第3接続部150cは、−Y方向から上方に向かって傾斜した方向(斜め上方向)を向いており、ブロワ500に通じる給気管350が接続されている(給気管350とブロワ500との間には、バルブ等の他の部材が設けられ得る)。ブロワ500は、給気管350、継ぎ手150を介して散気装置100からガス(ここでは、空気)を吐出することによって、接触材(図示せず)に付着した微生物に酸素を供給する。
【0033】
継ぎ手150の第4接続部150dは、鉛直下方向を向いており、鉛直下方向に向かって延びるパイプ352が接続されている。このパイプ352の下端は、接触曝気部300bの底面(図示せず)に接触している。パイプ352は、接触曝気部300bにおける散気装置100の高さを規定する。なお、継ぎ手150の第4接続部150dは、他の接続部150a〜150cと連通していなくてもよい。
【0034】
通常時には、接触曝気部300bでは、散気装置100から吐出されたガスによって上向流が生じる。接触曝気部300bの上部では、被処理水が、第3仕切板330を乗り越えて、生物濾過部300aに移流する。生物濾過部300aでは、下向流が生じる。生物濾過部300aの下部では、被処理水が、第3仕切板330の下を通って、接触曝気部300bに移流する。このように、生物濾過部300aと接触曝気部300bとの間で、被処理水が循環する。上述した生物濾過部300aの洗浄(逆洗)は、定期的に、短時間に行われる(例えば、1日1回15分)。なお、生物濾過部300aの散気装置190として、接触曝気部300bの散気装置100と同じ構造の散気装置を採用してもよい。
【0035】
なお、本実施例では、継ぎ手150は、給気管350に接続され、給気管350は、第1仕切板310に固定される。この結果、継ぎ手150の4つの接続部150a〜150dのそれぞれの方向(排水処理装置1000に対する方向)は、予め決められた方向を向く。第1接続部150aと第2接続部150bとを通るラインは、水平方向を向く。第3接続部150cは、−Y方向から上方に向かって傾斜した方向(斜め上方向)を向く。第4接続部150dは、鉛直下方向を向く。
【0036】
このように、排水処理装置1000に組み込まれた状態の継ぎ手150の配置方向が決まっているので、継ぎ手150に対する散気装置100の方向が適切な方向となるように、継ぎ手150に散気装置100を接続すれば、平下面部分120を水平にすることができる。具体的には、散気装置100における、X方向に延びる第1種部分グループ100G1(図1)と、Y方向に延びる第2種部分グループ100G2と、のそれぞれが、第4接続部150dと直交する方向に延びるように、継ぎ手150に対する散気装置100の方向を調整すればよい。これにより、継ぎ手150(散気装置100)を排水処理装置1000に組み込んだ場合に、散気装置100からのガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。
【0037】
図4は、継ぎ手150に対する散気装置100の方向の調整を示す概略図である。図中には、継ぎ手150の第1接続部150aと、散気装置100の第1端101とが示されている。図4(A)に示すように、第1接続部150aには、内部が略円筒状に形成された開口150arが設けられており、この開口150arに、第1端101が挿入される。本実施例では、第1端101も略円筒状に形成されている。従って、図4(B)に示すように、第1端101を開口150arに挿入した状態で、第1端101の中心軸101axを中心に、継ぎ手150に対して散気装置100を回転させることが可能である。
【0038】
本実施例では、第1接続部150aの上面には、マーク100pと同様の形状のマーク150pが形成されている。図4(C)に示すように、継ぎ手150に対する散気装置100の方向が適切な方向を向いている場合に、マーク150pとマーク100pとが同じ方向側に位置するように、それらのマーク100p、150pが配置されている。従って、マーク150pがマーク100pに最も近づくように、継ぎ手150に対して散気装置100を回転させることによって、継ぎ手150に対する散気装置100の方向を適切な方向に合わせることができる。
【0039】
なお、本実施例では、散気装置100(および継ぎ手150)が排水処理装置1000に適切に組み込まれた状態で、マーク100p、150pがZ方向(鉛直上方向)側に位置することとしている。ただし、マーク100p、150pは、他の方向側に配置されてもよい。
【0040】
以上、第1端101の近傍のマーク100pについて説明したが、第2端102の近傍のマーク100pについても、同様である。すなわち、第2端102の近傍のマーク100pと、第2接続部150bに設けられたマーク(図示せず)とを用いることによって、継ぎ手150に対する散気装置100の方向を適切な方向に合わせることができる。
【0041】
B.別の実施例:
図5は、散気装置の別の実施例を示す説明図である。図5(A)は、散気装置100Vの断面図を示している。この散気装置100Vの形状は、図1の散気装置100の天地を反転させた形状と同じである。散気装置100Vの断面形状は、上面の一部分である平上面部分120Vが水平な平面状に形成された、中空の略円形状である。そして、平上面部分120Vに複数の吐出孔200Vが形成されている。散気装置100Vの平上面部分120Vよりも下の部分は、略円弧状の部分110Vで形成されている。このように、散気装置の平面部分は、散気装置の上面を形成する部分であってもよい。そして、吐出孔が、散気装置の上面の平らな部分に形成されてもよい。この場合も、吐出孔の位置ズレを容易に抑制できる。なお、この散気装置100Vを、図3の散気装置100の代わりに用いてもよい。
【0042】
図5(B)は、散気装置の別の実施例(散気装置100W)の断面図を示している。この散気装置100Wの形状は、図1の散気装置100の上面の一部分121(平上面部分121と呼ぶ)を水平な平面状に形成して得られる形状と、同じである。平上面部分121は、平下面部分120と同様に、散気装置の一端から他端まで形成されている(図示省略)。散気装置100Wの断面形状は、下面の一部分(平下面部分120)と、上面の一部分(平上面部分121)とのそれぞれが、水平な平面状に形成された、中空の略円形状である。平下面部分120には、複数の吐出孔200が形成されているが、平上面部分121には、吐出孔は形成されていない(ただし、平下面部分120と平上面部分121との両方、または、平上面部分121のみに、吐出孔200が形成されてもよい)。この散気装置100Wを、図3の散気装置100の代わりに用いてもよい。
【0043】
図6は、排水処理装置への散気装置100Wの組み付け例を示す概略図である。図6(A)には、散気装置100Wと、基準形成部600とが示されている。基準形成部600は、排水処理装置の水処理槽(例えば、図3の好気濾床槽300)に固定された部材であり、水平な下ライン600sを形成する。散気装置100Wは、平上面部分121が下ライン600sと接触した状態で、排水処理装置に固定される。上方から下方に向かって見た場合には、下ライン600sが平上面部分121を横切るように、基準形成部600の下方に散気装置100Wが配置される。
【0044】
図6(B)、図6(C)は、下ライン600sを利用して平上面部分121の向きが調整される様子を示している。下ライン600s(すなわち、水平)に対して、平上面部分121が傾いた状態で、散気装置100Wが配置され得る。ここで、散気装置100Wを下ライン600sに向かって(上方に向かって)押しつけることによって、平上面部分121を下ライン600sに接触させることができる(図6(C))。この結果、平上面部分121(すなわち、平下面部分120)が水平になる。このように、散気装置100Wを基準形成部600に押しつけることによって、容易に、散気装置100Wの向きを適切な向きに調整することができる(すなわち、平下面部分120を水平にすることができる)。そして、平下面部分120が水平な状態で、散気装置100Wを排水処理装置に固定すればよい。
【0045】
なお、基準形成部600は、排水処理装置に固定された任意の部材であってよい。例えば、基準形成部600は、図3の下部ネット304の一部であってよい。また、基準形成部は、水平なラインと水平な面との少なくとも一方を形成する任意の部材であってよい。それらの水平なライン、又は、水平な面は、図6(A)に示すように基準形成部の下面を形成してもよく、この代わりに、基準形成部の上面を形成してもよい。いずれの場合も、基準形成部の水平なライン又は水平な面に散気装置の平らな面が接触した状態で、散気装置を排水処理装置に固定することによって、散気装置の向きを適切な向きに合わせることができる。例えば、水平ライン(又は、水平面)が基準形成部の上面を形成する場合には、平下面部分120を基準形成部の水平ライン(又は水平面)に押しつけることによって、散気装置100Wの向きを調整することができる。また、散気装置100Wに限らず、他の種々の散気装置(例えば、図1の散気装置100や図5(A)の散気装置100V)の組み付けに、基準形成部を用いてよい。
【0046】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
変形例1:
上記各実施例において、吐出孔が形成される平らな面部分(例えば、図1の平下面部分120)は、連続した1つの領域でなくてもよく、互いに離れた複数の領域に分割されてもよい。図7は、別の実施例の散気装置100Zを示す説明図である。図7は、図1(B)と同様に、散気装置100Zを下方から上方に向かって見た下面図を示している。図7の実施例では、平らな下面部分(「平下面部分120Z」と呼ぶ)が、吐出孔200毎に、離散的に形成されている。散気装置100Zの他の構成は、上述の散気装置100の構成と、同じである。また、図7の実施例では、複数の平下面部分120Zは、同一平面上(ここでは、水平面上)に配置されている。なお、図7の実施例において、1つの連続な平下面部分120Zに、複数の吐出孔200が形成されてもよい。いずれの場合も、散気装置100Zは、上述の第1実施例の散気装置100と同じ種々の効果を奏する。
【0048】
いずれの場合も、散気装置を水処理槽内の底部に配置する場合に吐出孔(特に、散気装置の下面の吐出孔)が水処理槽の底面によって塞がることがないように、散気装置には、水処理槽の底面と散気装置の吐出孔との間の隙間を保つスペーサを設けてもよい。スペーサは、例えば、図3のパイプ352のような脚であってよい。また、スペーサは、散気装置のパイプの一部分であって吐出孔が形成された平面部分よりも太い部分であってもよい(例えば、図7の散気装置100Zでは、パイプにおける平下面部分120Zの形成されていない部分は、平下面部分120Zよりも下方(−Z方向)に突出しているので、スペーサとして機能し得る)。また、スペーサは、水処理槽の底面に限らず、吐出孔と任意の他の部材との間の隙間を保つ部材であってよい。いずれの場合も、スペーサの構成は、水処理槽内の他の部材と接触することによって、吐出孔と他の部材との間の隙間を保つ任意の構成であってよい。
【0049】
変形例2:
散気装置(パイプ部)の断面形状は、略円形状に限らず、吐出孔が設けられた部分の外面が平面状に形成された任意の形状であってよい。例えば、断面形状が、任意の多角形(例えば、三角形や四角形)であってもよい。
【0050】
ここで、吐出孔の形成された平面は、厳密な水平ではなく、略水平であってよい。「平らな面が略水平である」とは、以下の状態を意味する。すなわち、平らな面が水平面に対して若干傾斜している場合に、平らな面における最も高い位置を「最高位置」と呼び、平らな面における最も低い位置を「最低位置」と呼ぶ。ここで、最高位置に最も近い1つの吐出孔を、最高位置に移動させ、最低位置に最も近い1つの吐出孔を、最低位置に移動させた状態を考える(例えば、元の吐出孔を塞いで、最高位置と最低位置に同じ大きさの孔を開ければよい)。このような状態においても、全ての吐出孔(最高位置の吐出孔と最低位置の吐出孔とを含む)からガスが吐出されるならば、平らな面は略水平である、ということができる。ここで、吐出孔からガスが吐出されるか否かの判定は、以下のように行われる。すなわち、散気装置が排水処理装置の水処理槽に組み込まれ、その水処理槽の水位が規定範囲(設計範囲)内の最高水位である状態で、規定の(設計に従った)ブロワを用いて全ての吐出孔からガスを吐出することができるか否かを観察すればよい。なお、平面と水平面との成す角度は、6度以下が好ましく、4度以下が特に好ましく、2度以下が最も好ましい。
【0051】
だたし、平面が、略水平ではなく、水平面に対して大きく傾斜していてもよい。この場合も、平らな面に吐出孔が設けられるので、孔あけ工具を用いて吐出孔を形成する際の位置ズレが抑制される。この結果、複数の吐出孔からのガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。なお、平面が水平面に対して大きく傾斜している場合には、複数の吐出孔の高さが同じとなるように、散気装置が構成されていることが好ましい。
【0052】
変形例3:
排水処理装置に散気装置が組み込まれた状態で、上方から下方に向かって見た散気装置の形状は、略矩形状に限らず、第1の位置から、第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分を含む他の任意の形状であってよい。例えば、閉じたループ形状(例えば、円形状または楕円形状)であってもよく、L字状またはV字状であってもよく、真っ直ぐな棒状であってもよい。いずれの場合も、上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びるパイプ部を用いて散気装置を構成すれば、水処理槽内における被処理水の流れを遮ることを抑制しつつ、水処理槽内における広い範囲にガスを供給することができる。
【0053】
ここで、散気装置(中空部材)のパイプ部は、略水平な第1方向に延びる第1部分と、第1方向と交差する略水平な第2方向に延びる第2部分とを、含むことが好ましい。こうすれば、散気装置を排水処理装置に組み込む際に、第1部分の延びる方向と第2部分の延びる方向との両方が略水平になるように散気装置を配置することによって、散気装置の平面部分を略水平に配置することができる。この結果、排水処理装置内で散気装置が傾くことに起因してガスの吐出が不均等になる可能性を低減できる。
【0054】
なお、「第1部分が略水平な方向に延びる」とは、散気装置が排水処理装置の水処理槽に組み込まれ、その水処理槽の水位が規定範囲(設計範囲)内の最高水位である状態で、規定の(設計に従った)ブロワを用いて全ての吐出孔からガスを吐出することができる範囲内において、第1部分の延びる方向が厳密に水平でなくてもよいことを意味している。なお、第1部分の延びる方向と水平方向との成す角度は、6度以下が好ましく、4度以下が特に好ましく、2度以下が最も好ましい。「第2部分が略水平な方向に延びる」についても、同様である。
【0055】
変形例4:
上述の各実施例の散気装置(例えば、散気装置100、100V、100W、100Z)に、図4で説明したマーク100pを適用してもよい。ここで、マーク100p、150pの構成は、小さい凸形状の部分に限らず、目視で認識可能な任意の構成であってよい。例えば、マーク100p、150pが、いわゆるケガキ線であってもよく、小さい凹部であってもよく、また、着色剤によって設けられた印であってもよい。
【0056】
変形例5:
上記各実施例において、散気装置は、任意の方法で形成されてよい。例えば、成形型を用いた成形(例えば、ブロー成形または射出成形)によって散気装置を一体的に形成してもよい。この代わりに、複数の部品を接続することによって散気装置(例えば、図1の散気装置100)を形成してもよい。
【0057】
変形例6:
排水処理装置に散気装置を固定する方法は、任意の方法であってよい。例えば、図1の実施例において、第1部分100aを支持する第1支持具(例えば、いわゆるアーム部材)と、第2部分100bを支持する第2支持具とを用いて散気装置100を排水処理装置に固定してもよい。この場合には、第1支持具の高さが第2支持具の高さと同じとなるように、それらの支持具を排水処理装置に固定すればよい。
【0058】
変形例7:
上記各実施例の散気装置は、種々の排水処理装置の種々の処理水槽に適用してよい。一般には、水処理槽に対する酸素の供給や水処理槽内の撹拌(逆洗)などのためにガス(例えば、空気)の吐出を用いる任意の水処理槽に、散気装置を適用してよい。例えば、接触曝気槽や担体流動槽等の好気処理槽や、嫌気濾床槽等の嫌気処理槽や、担体濾過槽に散気装置を適用してもよい。また、排水処理装置の処理フローは、任意の処理フローであってよい。
【符号の説明】
【0059】
100、100V、100W、100X、100Z...散気装置(散気管)
100a...第1部分
100b...第2部分
100c...第3部分
100d...第4部分
100e...第5部分
100G1...第1種部分グループ
100G2...第2種部分グループ
100ax、100Xax...中心軸
101...第1端
102...第2端
110...略円弧状の部分
120、120Z...平下面部分
120X...下面
150...継ぎ手
150a...第1接続部
150b...第2接続部
150c...第3接続部
150d...第4接続部
190...散気装置
200、200X...吐出孔
202、202X...変位孔(吐出孔)
300...好気濾床槽
300a...生物濾過部
300b...接触曝気部
302...上部ネット
304...下部ネット
310...第1仕切板
320...第2仕切板
330...第3仕切板
350...給気管
352...パイプ
354...給気管
500...ブロワ
600...基準形成部
1000...排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理装置用の散気装置であって、
ガス流路を内部に形成するパイプ部であって、前記排水処理装置に組み込まれた状態を上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、前記第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分であるパイプ部を備え、
前記パイプ部は、
前記排水処理装置に組み込まれた場合に下面と上面との少なくとも一方を形成する部分であって、外面が平面状に形成された平面部分と、
前記平面部分に形成された、ガス吐出用の複数の吐出孔と、
を有する、散気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の散気装置であって、
前記平面部分は、前記排水処理装置に組み込まれた場合に、略水平な面を形成する、
散気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の散気装置であって、
前記パイプ部は、前記排水処理装置に組み込まれた場合に略水平な第1方向に延びる第1部分と、前記第1方向と交差する略水平な第2方向に延びる第2部分と、を含む、
散気装置。
【請求項4】
排水処理装置であって、
排水を処理する水処理槽と、
前記水処理槽に設けられた散気装置と、
を備え、
前記散気装置は、ガス流路を内部に形成するパイプ部であって、上方から下方に向かって見た場合に、第1の位置から、前記第1の位置とは重ならない第2の位置まで延びる部分であるパイプ部を備え、
前記パイプ部は、
下面と上面との少なくとも一方を形成する部分であって、外面が平面状に形成された平面部分と、
前記平面部分に形成された、ガス吐出用の複数の吐出孔と、
を有する、
排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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