説明

散気装置および散気システム

【課題】設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが出来、かつ、加圧空気送付
用パイプへの取り付けが容易な散気装置を提供すること。
【解決手段】弾性多孔体2、弾性多孔体2を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体3、弾性多孔体2を支持体3に一体に固定する固定部材1からなり、支持体3が弾性多孔体2を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取付部からなる散気装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理を中心とした有機性排水処理システムに使用するエアレーションタンクに設置される散気装置及びそれを利用した散気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの下水処理場の、エアレーションタンク中に設置される散気装置には、散気板が設置されている。
【0003】
従来は、磁器製の散気板が使用されていたが、その後軽くて作業性がよく、気泡の大きさを容易に変えられ、製造が容易で価格の安いプラスチックの散気板も作られるようになった。これらは、磁器製の散気板とのリプレースを考慮して、磁器製の散気板と同一寸法のものが使用されており、プラスチック散気板は、磁器製散気板用の散気板ホルダーをそのまま用いて容易に交換できる。
【0004】
さらに、この高分子多孔体で出来た散気板や散気筒に代わって、超微細気泡型のメンブレンディフューザーが、その高性能によって使用されるようになってきた。
【特許文献1】特開2003−024974号公報
【特許文献2】特開2003−001290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでに提案されているメンブレンディフーザーでは、ディスク型やチューブ型であるため、設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが出来なかった。また、特許文献1には長方形状のメンブレンディフーザーが開示されているが、パイプへの取り付け構造が複雑である。
【0006】
本発明は、設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが出来、かつ、加圧空気送付用パイプへの取り付けが容易な散気装置、及びその散気装置を利用した散気システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、 角型弾性多孔体、弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されている散気装置である。
【0008】
本発明の角型弾性多孔体は、弾性を有する材料を成型して得られた弾性体に多数の微細な通気孔を加工して得られるものであり、その形状は上から見た時に角型(正方形、長方形、ひし形等)であり、全体の形状は開口部を有する箱型である。散気操作が行なわれていない時、つまり、加圧空気送付用のパイプからの加圧空気が、弾性多孔体の下方に供給されていないときには、弾性多孔体の上部平面部が充分な厚みを有していることが好ましいが、有していなくても、支持体を配置することにより弾性体の強度保持や形状保持を行なうことができる。
【0009】
この支持体には、加圧空気送付用パイプから送られる加圧空気を、弾性多孔体下面へ導くためのオリフィスが貫通している。このオリフィスは、散気装置において、弾性多孔体のほぼ中央に位置することが好ましい。加圧時には、オリフィスを通った加圧空気により弾性多孔体が上方へ膨張することにより、微細な孔が開口し微細気泡が発生する。
【0010】
この支持体は、弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部を有している。ここで、支持部は上記角型弾性多孔体の下方に設置されて多孔体を支持するものであり、その形状、特に上から見た時の形状は、上記弾性多孔体と同じであることが好ましい。支持部は弾性多孔体内に配置されている。
【0011】
取り付け部は、上記支持部の下方において、支持部に接続して配置され、弾性多孔体を加圧空気送付用のパイプへ取り付けるためのものである。この取り付け機構は限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0012】
また本発明においては、弾性多孔体を支持体に一体に固定するために固定部材が用いられる。この固定部材は、弾性多孔体およびその下方に配置された支持体を固定し、弾性多孔体と支持体の境界を液密に保つものであり、例えば、角型弾性多孔体と角型支持体の端部周縁を覆うような形状を有し、この固定部材を上記周縁の周囲に密着させて固定することができる。
【0013】
請求項2の発明は、角型弾性多孔体が、箱の開口部の周縁部に内側へ向いたフランジ部を有し、多孔体が支持部を包み込んでいる上記の散気装置である。
支持体の支持部が箱内に配置されるだけでなく、多孔体がフランジ部を有することで、弾性多孔体が支持部を包み込むことができ、支持部と弾性多孔体の間の密着性や気密性を向上させることができる。
請求項3の発明は、取り付け部が、上部半円筒部と下部半円筒部からなり、かつ上部半円筒部と下部半円筒部が合わされた状態で、散気装置が取り付けられる位置の加圧空気送付用パイプを外から密着して囲む形状である、上記の散気装置である。
【0014】
この発明においては、取り付け部が上部半円筒部と下部半円筒部からなる。上部半円筒部は上記支持部に一体に接続されているのが好ましく、接続の方法としては支持部と上部半円筒部を最初から一体に成型するか、あるいは、それぞれ別体として形成された支持部と上部半円筒部にネジを形成しておき、それらを嵌合させることにより接続することも可能である。
【0015】
上部半円筒部と下部半円筒部は、それぞれ円筒形状の一部からなる形状を有し、かつ、それらを互いの端部において組み合わせて接続した時に円筒形状となることが好ましい。上部半円筒部と下部半円筒部の両端部の接続方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0016】
さらに、これらの上部および下部半円筒部が接続されたときに形成される円筒部は、加圧空気送付用のパイプの内、パイプからの空気排出用の穴が設けられた部分において、上記支持体に設けられたオリフィスと前記空気排出用の穴が連通するように、パイプを外から密着して囲む。
【0017】
請求項4の発明は、取り付け部と支持部の間にさらに脚部を有し、脚部が取り付け部および支持部に一体に接続されている、上記の散気装置である。
【0018】
この脚部は、例えば縦長に形成された円筒状の部材で、その内部において、パイプの空気排出穴および支持体のオリフィスに連通する位置にオリフィスを有することが好ましい。脚部を有することにより、パイプと微細気泡の発生位置の間の距離を調整することができ、設置場所の形状に合わせた散気装置の設置が可能となる。また脚部は、脚部および上部半円筒部のそれぞれの端部に設けられたネジ構造により、上部半円筒部に接続することも可能である。
【0019】
上記に記載の散気装置において、弾性多孔体は、弾性を有する材料を所望の形状に成型して得られるものであり、多孔体の材質は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ポリウレタン、クロロプレンゴム、二トリルゴム、フッ素ゴム(例えば、登録商標バイトン,PTFE)、パーフルオロエラストマーなどのゴムから選ぶことができる。これらの中でも、特にエチレンプロピレンゴムが、膜強度が強く、耐熱性、耐水性に優れているため、好ましい。また、耐薬品性の点でフッ素ゴム、パーフルオロエラストマーが好ましい。
【0020】
また弾性多孔体は、その通気孔を有する面の厚さが0.1〜3.0mmであり、1平方メートルあたり1万個〜100万個の微細な通気孔を有することが好ましい。これらの通気孔は、上部平面部を貫通している微細な通気孔であり、散気される微細な気泡を放出する為の孔である。通気孔を有する面の厚みは、0.1〜3.0mmであることが好ましく、より好ましくは、0.4〜2.0mmである。
【0021】
この範囲より薄いと膜強度が保たれないため好ましくなく、またこの範囲より厚いと、通気時の圧力損失が大きくなる為好ましくない。連通孔の数は、1平方メートルあたり1万個〜100万個であり、より好ましくは、10万〜100万個である。この範囲より多いと膜の強度が落ちる可能性があり、また、発泡した泡同士がぶつかり合い、大きくなるため、好ましくなく、またこの範囲より少ないと、泡の数が、少なくなり、本来の目的を達しない為、好ましくない。
【0022】
さらに、前記通気孔を有する面については、その厚みが、角型形状の中心部において大きく、かつ中心から外周に向かって徐々に小さくなるように、制御されていることが好ましい。弾性多孔体が下方より加圧される時、多くの場合は通気孔を有する面の中央下方に配置されたオリフィスから行なわれることが多く、その場合中央に近い位置にある通気孔程圧力を受けやすくなり、大きな孔が開くことになる。全面に渡って厚みが同じであると、中央ほど大きな孔となり、大きな気泡が中央から多く発生し、周囲に近いところでは、小さな気泡が少量しか発生しなくなってしまい、効率的な微細気泡の生成ができず、その結果有効発泡面積が低下したりエアレーションタンク中での酸素移動効率が低下したりしてしまう。
【0023】
上記のように厚みを制御することにより、中央が厚みが大きく周囲に近いほど厚みが小さくなるので、中央と周囲に近い部分が受ける圧力の大きさの差をなくすことが出来、その結果全面に渡って均一な大きさの気泡を、均等な割合で発生させることが可能となる。上記のような厚みの制御は、例えば、圧縮成型法において、金型の寸法を精度よく管理することによって行なうことができる。
【0024】
上記支持体の材質は、鋼板、ステンレス板、FRP、ABS等のエンジニアリングプラスチック、及びPP、塩ビ等のプラスチックから選ばれる1つ以上であることが好ましい。
【0025】
上記固定部材の材質は、弾性多孔体の外周部を上方から押さえ込む力が、弾性多孔体と固定部材の間の接触面全体に均一にかかるように、鋼板、ステンレス板、ポリサルフォンやFRP等のエンジニアリングプラスチックであることが好ましい。必要に応じ、固定部材と弾性多孔体を接着剤にて固定することも可能である。
【0026】
請求項6の発明は、上記に記載の散気装置が、加圧空気送付用のパイプに2つ以上取り付けられ、かつ各散気装置が互いに隙間なく接して並べられている散気システムである。
【0027】
上記散気装置の2つ以上を、加圧空気送付用パイプに取り付ける際、パイプに設ける加圧空気排出用の穴の位置、弾性多孔体の大きさ、等を調整すること、例えば、設置される2つ以上の散気装置の弾性多孔体の大きさをすべて同一のサイズにすることにより、パイプ上に2つ以上の散気装置が互いに隙間なく接して並ぶように取り付けることができる。
【0028】
エアレーションタンクの形状、特に平面形状に合った形状となるように弾性多孔体を複数並べることが可能になる。このような配置にすることで設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが可能となる。
【0029】
従来ディスク型散気装置においてはパイプに接続する際、脚部に設けられたネジをパイプに設けられたネジに嵌合させるのが一般的であったために、各散気装置を回転させて取り付ける必要があり、手間がかかっていた。本発明においては、上記のように散気装置を加圧空気送付用のパイプに取り付ける際に、従来のディスク型散気装置におけるように散気装置自体を回転させる必要がなく、上部および下部の半円筒部を、パイプを外から密着して囲むだけで取り付けることができるので、作業が容易になる。
【0030】
また本発明の散気装置の好ましい態様は以下のとおりである。
【0031】
好ましい態様における弾性多孔体は、上部平面部、壁部、下部平面部からなるものであり、上部平面部を上から見た時の形が正方形や長方形であり、全体の形状が立方体あるいは直方体であることが好ましい。
【0032】
上部平面部は、弾性多孔体の上面を形成する。壁部は上部平面部の端部、つまり上部平面部の全周縁において、上部平面部につながって縦方向の壁部を形成する。下部平面部は、壁部の下端部の全長において、壁部に内向きフランジ状につながって弾性多孔体の下面を形成する。これら上部平面部、壁部、下部平面部は、それぞれ別の工程で成型した後一体化してもよいし、あるいは、弾性多孔体全体を1つの工程で成型してもよい。上部平面部と壁部、及び壁部と下部平面部の間の角度が、90度でかつ、上部平面部と下部平面部が平行であり、弾性多孔体の形状が直方体となることが好ましい。この場合、上部平面部と壁部からなる開口部を有する箱(箱型形状)内に、支持部を配置することができる。
【0033】
また下部平面部は、上部平面部の垂直方向下方にあることが好ましい。垂直方向下方にあるとは、弾性多孔体を上から見た時、下部平面部の一部または全部が、上部平面部と重なる状態を言う。
【0034】
好ましい態様においては、弾性多孔体の上部平面部、壁部、及び下部平面部により形成される空間内に、弾性体を支持する支持部が配置されている。
【0035】
支持部の形状はより効果的に支持するために、散気用弾性多孔体の上部平面部、壁部、及び下部平面部により形成される空間内に配置した時に、その空間のほぼすべてを満たす大きさ、形状のものであることが好ましい。例えば、平面部と、平面部の端部、好ましくは、全周縁において上部平面部につながる縦方向の壁部からなる箱型のもの(上から見た時の形状が、正方形または長方形)が使用される。多孔体の下部平面部がフランジ状に、支持体の支持部の壁部下面を下から包み込むことができる。
【0036】
さらに、好ましい態様においては、多孔体の下部平面部に突起部が形成され、かつ、突起部と対向する支持部の面に、前記突起部に嵌合する溝部が形成されていることが好ましい。突起部およびそれに勘合する溝部を形成し嵌合させることで、弾性多孔体と支持部の間の密着度を高めることができる。
【0037】
突起部は下部平面部の上面に、形成されることが好ましい。その場合、支持部の壁部の下面が下部平面部の上面に対向しており、下部平面部の上面に形成された突起部が支持部の壁部の下面に形成された溝部に嵌合している。これらの突起部及び溝部の断面形状は、U字状であることが好ましい。これらの突起部及び溝部は、支持部の壁部の下面に、全周にわたって設けられていることが好ましいが、場合によっては一部のみでもよい。
【0038】
好ましい態様においては、弾性多孔体を周囲から押圧する固定部材をさらに有する。この固定部材は、弾性多孔体を押さえ込み、また横方向への広がりを防止するための押さえ部材で、弾性多孔体を水平方向の周囲から、特に弾性多孔体の壁部を外側から押圧することが好ましい。弾性多孔体の周囲に連続、または不連続で取り付けられる。均一な押さえを得るためには、連続的に取り付けることが望ましい。
【0039】
好ましい態様においては、より効果的に固定するために、固定部材は上部平面部、壁部及び下部平面部からなり、上部平面部が弾性多孔体の上部平面部を上から押圧し、壁部が弾性多孔体の壁部を側面から押圧し、かつ、下部平面部が弾性多孔体の下部平面部を下から押圧する形状であることが好ましい。
【0040】
固定部材は、上部平面部と、平面部の端部、好ましくは、全周縁において上部平面部につながる縦方向の壁部、および、壁部の下端周縁において壁部につながる下部平面部からなるものが好ましい。また上部及び下部平面部が、中央部に孔の開いた○字状であり、断面がコ字型の形状であることがより好ましい。特に弾性多孔体の上部平面部に、散気のための微細な通気孔を有する場合、その上方には固定枠がないことが好ましいからである。全体の形状が箱型のもの(上から見た時の形状が、正方形または長方形)が好ましい。
【0041】
さらに好ましい態様においては、支持体は、支持部、支持部の中央下方に接続されている脚部、脚部の下方にネジ構造で接続されている上部半円筒部、および上部半円筒部に楔構造で接続されている下部半円筒部からなる。支持部の中央、脚部の中央および、上部半円筒部の中央にはそれぞれオリフィスが形成され、かつそれらは、加圧空気送付用のパイプに設けられた空気排出用の穴と連通している。
【0042】
散気装置をパイプに取り付ける際には、上部半円筒部のオリフィスがパイプの穴に合うように散気装置をパイプの上に置き、パイプの下方に置いた下部半円筒部と、上部半円筒部を、楔構造で接続することにより、散気装置をパイプの周囲に密閉状態に取り付けることが出来る。
【0043】
散気操作においては、加圧空気送付用のパイプから送られる加圧空気により、下方より弾性多孔体が加圧され、微細な連通孔を通る時に空気が微細な気泡となり、散気されることになる。
【発明の効果】
【0044】
上記のような構造の散気装置を用いることにより、設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが出来、かつ、加圧空気送付用パイプへの取り付けが容易な散気装置、及びその散気装置を利用した散気システムが得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を図面により具体的に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0046】
図1は、本発明の固定部材の一例を示す斜視図である。図2は、本発明の弾性多孔体の一例を示す、斜視図および断面図である。図3は、本発明の支持体の一例を示す、斜視図および断面図である。図4は、本発明の散気装置の一例を示す断面図である。図5は、本発明の散気システムの一例を示す斜視図である。
【0047】
図2において、弾性多孔体2は、上部平面部2−1、壁部2−2、及び下部平面部2-5からなり、上部平面部2−1と壁部2−2により開口部を有する箱が形成される。上部平面部2−1の全周縁において、壁部2−2が上部平面部2−1につながっており、下部平面部2−5は、壁部2−2の下端部(周縁)の全長において、壁部2−2にフランジ状につながっている。上部平面部の形状は長方形であり、その厚みは2mmである。上部平面部2−1には、微細な連通孔2−6が渦巻状に16,000個形成されている。この時、上部平面部2-1の面積は0.09平方メートルであるので、1平方メートル当たりの個数は、18万個となる。
【0048】
また、下部平面部2−5の上面には断面U字状の突起部2−3が下部平面部2−5の全長に渡り一体に成型されている。この弾性多孔体2は、EPDMからなるものであり、圧縮成型法で成型される。
【0049】
図3において、ABS樹脂からなる支持体3は、平面部3−1と壁部3−2からなり、平面部3−1の全周縁において、壁部3−2が平面部3−1につながっている。平面部3−1の形状は長方形であり、その中央にオリフィス3−7を有している。壁部3−2の下面には、その全長に渡り、断面U字状の溝部3−3が形成されている。またこの支持体の大きさ、形状は、図2に示した弾性多孔体の内部空間(上部平面部2−1、壁部2−2、及び下部平面部2−5により形成される空間)と同じ大きさであり、支持体3を上記空間に嵌め込んだ時、上部平面部2−1と壁部2−2からなる、開口部を有する箱の中に、平面部3−1と壁部3−2からなる支持体が配置される。平面部3−1の上面が上部平面部2−1の下面に、壁部3−2の外面が壁部2−2の内面に、また、壁部3−2の下面が下部平面部2−5の上面に接する。さらに突起部2−3は溝部3−3に嵌合して、弾性多孔体2と支持体3が密着して一体化される。弾性多孔体2が支持体3を包み込んでいる。
【0050】
さらに、支持体3は、平面部3−1の中央下面において平面部3−1に一体に形成された脚部3−8、脚部3−8の下方において脚部3−8に一体に形成された上部半円筒部3−4を有している。脚部3−8は縦方向の円筒形状を有している。平面部3−1および脚部3−8は、その中央に縦方向に貫通するオリフィス3−7を有している。このオリフィスは、加圧空気送付用のパイプ(図示せず)に設けられた空気排出穴からの加圧空気を、弾性多孔体2の上部平面部2−1の下面に供給するためのものである。さらに上部半円筒部3−4の下方には、下部半円筒部3−5が配置され、3−4と3−5とからなるパイプの取り付け部は、3−4の端部に設けられたフランジ部に、3−5の端部に設けられた楔型部を嵌め込むことにより、加圧空気送付用のパイプの周りにおいて一体化される。3−6はOリングである。
【0051】
図1において、固定部材1は、2つの枠部1−1、1−2および2つの楔型留め具1−3からなる。枠部1−1、1−2は、上部平面部、壁部、下部平面部からなる、断面形状コ字型の部材である。散気装置においては、弾性多孔体2の内部空間に支持体3の支持部をはめ込んだ後、1−1と1−2を、弾性多孔体2の周囲で図示した向きに合わる。そのままでは一体化されていないため、2つの楔型留め具1−3を、1−1、1−2の端部に形成されたフランジ部に嵌め合わせて一体化し、固定部材を弾性多孔体の周囲に固定する。
【0052】
図4は、上記本発明の弾性多孔体2、支持体3および固定部材1を有する散気装置4を示すものである。散気装置4は、図5に示すように加圧空気送付用のパイプ5の上に設置し、散気システム10とすることができる。散気装置4は、支持体3が着脱自在の上部半円筒部3−4と下部半円筒部3−5を有しているため、上部半円筒部3−4と下部半円筒部3−5において、容易にパイプ5に取り付けることができる。
【0053】
また図5は、図4に示した、弾性多孔体2、支持体3および固定部材1からなる散気装置4を、加圧空気送付用のパイプ5に2つ以上取り付け、かつ各散気装置が互いに隙間なく接して並べられて構成されている散気システムの一例を示すものである。このシステムでは、各散気装置の固定部材1の1辺が、隣接する散気装置の固定部材1の1辺と隙間なく、かつ接して配置されているので、微細気泡の有効発泡面積を大きくすることができる。
【0054】
次に、図1〜図5とは異なる実施形態の散気装置等について、図6〜図10により説明する。
【0055】
図6により、本発明の散気装置を説明する。図6は、散気装置40の縦断面図である。
散気装置40は、図4に示す散気装置4と同様に、弾性多孔体2、支持体3、固定部材とが組み合わされ、一体になっている。但し、固定部材は、第1固定部材(平面形状が額縁状のもの)15、第2固定部材(図8(a)のもの)11の2つが組み合わされている。支持体3は、脚部58の外周面に、図9(a)で示すものと同様にネジ部59を有している。
【0056】
弾性多孔体2は、支持体3の外形と合致した箱状のものであり、端部近傍には環状突起17を有している。そして、環状突起17と第2固定部材11との対向面の間には、プラスチック製の環状板16が配置されている。第2固定部材11により、上下方向から押圧したとき、環状突起17は押し潰されて環状板16に密着され、更に環状板16と第2固定部材11の内側下面が密着され、気密状態となる。
【0057】
散気装置40は、図9(b)で示すような第2支持体60、図4で示すような下部半円筒部3-5と組み合わせることで、図4に示す散気装置4と類似した外観の散気装置となる。
【0058】
図7(a)は、図6の散気装置40の平面図である。図6は、図7(a)のA-A線の断面図である。
【0059】
図1に示す固定部材1は、2つの枠部1−1、1−2と、2つの留め具1−3を用い、図5に示すように、弾性多孔体2の全周を包囲して固定するものであるが、図7に示す固定方法では、弾性多孔体2の全周縁には第1固定部材15が嵌められており、その周囲の全部ではなく、四隅を含む部分を別途固定するものである。
【0060】
図7(a)では、四隅が固定部材31〜34で固定され、残部の各辺が図8(b)に示すような固定部材35〜38で固定されている。固定部材31〜34の構造は、図7(b)のものと同一構造である。
図7(b)では、四隅が固定部材11〜14で固定されている。図8(a)に示すような固定部材11〜14は、平面形状がL字状、2方向からの正面(又は側面)形状が長方形のもので、支持体3、弾性多孔体2、第1固定部材15、環状板16を組み合わせたものの角部に固定部材11〜14を嵌め込んで固定する。
【0061】
図7(c)では、四隅が固定部材21〜24で固定されている。固定部材21〜24は、図7(b)のものと同じ構造のものであるが、角部を含むより広い範囲を固定できるようになっている。
【0062】
図7(a)〜(c)の固定部材は、嵌め込んだとき、周囲から押圧できるように、材質や寸法を調整することが好ましい。例えば、固定部材の材質としては、ステンレス等の金属や、剛性プラスチック等を用い、支持体3、弾性多孔体2、第1固定部材15、環状板16を組み合わせたものの外側寸法と固定部材の内側寸法が同程度になるようにすれば、図7(a)のように弾性多孔体2の角部に図8(a)に示す固定部材31〜34を嵌め込んだとき、角部は、上下方向と2つの直交する側面方向から押圧支持される。
【0063】
次に、図9により、支持体(2つに分割されたものを組み立てる形態)について説明する。図9(a)は、分割された一方の支持体の縦断面図、図9(b)は、分割された他方の支持体の縦断面図であり、図3に示す支持体3が2つに分割でき、組み立てられるようにした構造のものに相当する。
【0064】
第1支持体50は、弾性多孔体に対応した平面形状の平面部51、壁部52、溝部53、オリフィス57、脚部58を有している。下方の外周面にはネジ部59(雄ネジ又は雌ネジ)を有している。
【0065】
第2支持体60は、上部半円筒部61、半円筒のフランジ62、筒部63を有している。筒部63の内周面には、ネジ部65が設けられており、ネジ部65はネジ部59に対応するネジ山を有している。
【0066】
本実施形態の支持体は、第1支持体50と第2支持体60をネジ合わせて一体化することにより、1つの支持体にするものである。具体的には、第2支持体60のネジ部65内に第1支持体50のネジ部59をねじ込んで行く。最終的な外観は、図4に示す散気装置4と類似した外観の散気装置となる。
【0067】
次に、図10により、本発明の散気装置100を説明する。図10は、図9の散気装置(但し、第2支持体60と下部半円筒部3−5は除いている)をホルダ101に固定した形態の断面図である。この形態では、図6で散気装置をパイプに取り付けるのに用いた支持体をそのまま用いて、散気装置をホルダに取り付けることが可能となっている。
図10の散気装置は、ホルダ101の段部102上に配置され、ボルト105、ナット106、金具107の組み合わせにより、段部102に固定されている。103は脚部、104は給気口、108は散気室である。
次に、散気装置100を曝気槽内に浸漬したときの動作を説明する。空気源から給気管(図示せず)を通して空気を送り、給気口104から放出すると、放出された空気は散気室108内に拡散充満して、内圧を高める。内圧の高まりにより、支持体3のオリフィス3-7において弾性多孔体2が押圧され、オリフィス3-7から近い部分から遠い部分に向かって上方に膨張変形する。
この弾性多孔体2の膨張変形により、弾性多孔体2と支持体3との間に隙間が生じ、この隙間を通って空気が供給され、膨張して大きくなった弾性多孔体2の小孔から微少な泡となって曝気槽内の被処理水に放出される。
このような散気過程において、上記したとおり、各部材の接触面は密着され、完全にシールされているため、空気が小孔以外から放出されることが防止されると共に、散気室108内の圧力が高められているので、小孔から散気室108内に水が侵入することもない。このため、散気時において、供給した空気の全量が多孔膜材から放出されることになる。
よって、散気装置の作動と停止を繰り返した場合であっても、長期間、安定した散気運転をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の固定部材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の弾性多孔体の一例を示す、斜視図および断面図である。
【図3】本発明の支持体の一例を示す、斜視図および断面図である。
【図4】本発明の散気装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の散気システムの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の散気装置の一例を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の散気装置の平面図である。
【図8】(a)、(b)は、弾性多孔体を固定する固定部材の斜視図である。
【図9】本発明の支持部材の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の散気装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 固定部材
1−1、1−2 固定部材の枠部
1−3 固定部材の楔型留め具
2 弾性多孔体
2−1 弾性多孔体の上部平面部
2−2 弾性多孔体の壁部
2−3 突起部
2−5 弾性多孔体の下部平面部
2−6 微細な連通孔
3 支持体
3−1 支持体の平面部
3−2 支持体の壁部
3−3 溝部
3−4 上部半円筒部
3−5 下部半円筒部
3−6 Oリング
3−7 オリフィス
3−8 脚部
4 散気装置
5 加圧空気送付用のパイプ
10 散気システム
11〜14,21〜24,31〜38 固定部材
50 第1支持体
60 第2支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型弾性多孔体、弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されている散気装置。
【請求項2】
角型弾性多孔体が、箱の開口部の周縁部に内側へ向いたフランジ部を有し、多孔体が支持部を包み込んでいる請求項1記載の散気装置。
【請求項3】
取り付け部が、上部半円筒部と下部半円筒部からなり、かつ上部半円筒部と下部半円筒部が合わされた状態で、散気装置が取り付けられる位置の加圧空気送付用パイプを外から密着して囲む形状である、請求項1または2に記載の散気装置。
【請求項4】
取り付け部と支持部の間にさらに脚部を有し、脚部が取り付け部および支持部に一体に接続されている、請求項1−3いずれかに記載の散気装置。
【請求項5】
脚部が、ネジ構造により上部半円筒部に接続されている、請求項4記載の散気装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の散気装置が、加圧空気送付用のパイプに2つ以上取り付けられ、かつ各散気装置が互いに隙間なく接して並べられている散気システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−38198(P2007−38198A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311403(P2005−311403)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】