説明

散気装置

【課題】より耐久性の高い散気装置を提供する。
【解決手段】角型弾性多孔体2、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体3、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材23、24からなる散気装置40であり、前記支持体3が、前記角型弾性多孔体2を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、前記角型弾性多孔体2が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体2内に配置されており、前記固定部材23、24が、前記角型弾性多孔体2の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を固定するものであり、前記四隅部分の幅が前記辺の幅よりも大きくなるように設定されている散気装置40とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理を中心とした有機性排水処理システムに使用するエアレーションタンクに設置される散気装置及びそれを利用した散気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの下水処理場の、エアレーションタンク中に設置される散気装置には、散気板が設置されている。
【0003】
従来は、磁器製の散気板が使用されていたが、その後軽くて作業性がよく、気泡の大きさを容易に変えられ、製造が容易で価格の安いプラスチックの散気板も作られるようになった。これらは、磁器製の散気板とのリプレースを考慮して、磁器製の散気板と同一寸法のものが使用されており、プラスチック散気板は、磁器製散気板用の散気板ホルダーをそのまま用いて容易に交換できる。
【0004】
さらに、この高分子多孔体で出来た散気板や散気筒に代わって、超微細気泡型のメンブレンディフューザーが、その高性能によって使用されるようになってきた。
【0005】
しかしながら、これまでに提案されているメンブレンディフーザーでは、ディスク型やチューブ型であるため、設置面積当たりの有効発泡面積を大きくすることが出来なかった。また、特許文献1には長方形状のメンブレンディフーザーが開示されているが、パイプへの取り付け構造が複雑である。
【特許文献1】特開2003−024974号公報
【特許文献2】特開2003−001290号公報
【特許文献3】特開2007−38198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は、先に特許文献1、2の課題を解決できる発明として、特許文献3の発明を出願している。
【0007】
本願発明は、特許文献3の発明に改良を加え、耐久性がより高められた散気装置とそれを用いた散気システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
1.角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記四隅部分の幅が前記辺の幅よりも大きくなるように設定されている、散気装置。
2.角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記両面側の四隅を固定する部分に対角線方向に突き出された突出部が設けられている、散気装置。
3.角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記四隅部分の幅が前記辺の幅よりも大きくなるように設定されており、かつ前記両面側の四隅を固定する部分に対角線方向に突き出された突出部が設けられている、散気装置。
4.請求項1〜3のいずれか1項に記載の散気装置が、加圧空気送付用のパイプに2つ以上取り付けられ、かつ各散気装置が互いに隙間なく接して並べられている散気システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の散気装置は、長期間運転を継続したときの耐久性が高められている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の散気装置の基本的構造は、特許文献3(特開2007−38198号公報)に記載の発明と同じであり、角形弾性多孔体を固定するための固定部材の形状及び構造のみが異なるものである。よって、まずは図1、図2により、本発明の基礎となる特開2007−38198号公報に記載の発明を説明する。図1は、従来技術の散気装置の一実施形態の平面図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図1は、特開2007−38198号公報の図7(c)に相当するものであり、図2は、同公報の図6に相当するものである。
【0011】
散気装置40は、弾性多孔体2、支持体3、固定部材21、22、23、24とが組み合わされ、一体になっている。
【0012】
弾性多孔体2は、支持体3の外形と合致した箱状のものであり、端部近傍には環状突起17を有している。そして、環状突起17と固定部材21〜24との対向面の間には、プラスチック製の環状板16が配置されている。固定部材21〜24により、上下方向(厚さ方向)から押圧したとき、環状突起17は押し潰されて環状板16に密着され、更に環状板16と第2固定部材11の内側下面が密着され、気密状態となる。
【0013】
第1支持体50は、弾性多孔体に対応した平面形状の平面部51、壁部52、溝部53、オリフィス57、脚部58を有している。下方の外周面にはネジ部59(雄ネジ又は雌ネジ)を有している。
【0014】
第2支持体60は、上部半円筒部61a、下部半円筒部61b、半円筒のフランジ62a、62b、筒部63を有している。筒部63の内周面には、ネジ部65が設けられており、ネジ部65はネジ部59に対応するネジ山を有している。
【0015】
本実施形態の支持体は、第1支持体50と第2支持体60をネジ合わせて一体化することにより、1つの支持体にするものである。具体的には、第2支持体60のネジ部65内に第1支持体50のネジ部59をねじ込んで行く。
【0016】
次に、図3に示す本発明の散気装置の一実施形態を説明する。図3は、図1に相当する平面図であり、断面図の構造は、固定部材21〜24を除いて、図2と同じである。
【0017】
固定部材21、22、23、24は、角型弾性多孔体2の一面側の四隅21a、22a、23a、24aと他面側(厚さ方向の反対面側)の四隅(図示せず)を含む周囲を固定している。このとき、少なくとも四隅とその近傍が固定されていればよい。
【0018】
四隅21a、22a、23a、24aの幅wは、四隅を除いた辺部分の幅wよりも大きくなるように設定されている。このwとwの関係は、w/w=1.1〜2.0程度に設定することができる。
【0019】
散気装置40の作動時、角型弾性多孔体2の中心部方向に力が加えられるため、角型弾性多孔体2全体が中心部方向に引っ張られるようになる。このため、長期間の運転を継続していると、角型弾性多孔体2の周辺部、特に四隅が引っ張られ、散気装置40全体が僅かではあるが椀状に変形する。このような変形が継続されると、角型弾性多孔体2の四隅と固定部材21〜24の四隅との間に隙間が生じて、そこから、気泡が漏れ出るおそれもある。しかし、図3のような形態にすることで、このような問題が発生するおそれが解消され、装置自体の耐久性を高めることができる。
【0020】
次に、図4、図5に示す本発明の散気装置の一実施形態を説明する。図4は、図1に相当する平面図であり、図5は、図2に相当する断面図(一部断面図)であり、断面図の構造は、固定部材21〜24を除いて、図2と同じである。
【0021】
固定部材21、22、23、24は、角型弾性多孔体2の一面側の四隅と他面側(厚さ方向の反対面側)の四隅(一部は図示せず)を含む周囲を固定している。このとき、少なくとも四隅とその近傍が固定されていればよい。
【0022】
固定部材21、22、23、24は、角型弾性多孔体2の一面側の四隅には、対角線方向に突き出された突出部21a、22a、23a、24aが設けられており、他面側の四隅には、対角線方向に突き出された突出部21b(21aと厚さ方向に対向する位置の突出部であり、図示していない)、22b(22aと厚さ方向に対向する位置の突出部であり、図示していない)、23b、24bが設けられている。固定部材21、22、23、24における突出部の幅と他の辺の幅との関係は、図3に示すwとwと同じ関係にすることができる。
【0023】
散気装置40の作動時、角型弾性多孔体2の中心部方向に力が加えられるため、角型弾性多孔体2全体が中心部方向に引っ張られるようになる。このため、長期間の運転を継続していると、角型弾性多孔体2の周辺部、特に四隅が引っ張られ、散気装置40全体が僅かではあるが椀状に変形する。このような変形が継続されると、角型弾性多孔体2の四隅と固定部材21〜24の四隅との間に隙間が生じて、そこから、気泡が漏れ出るおそれもある。しかし、図4、図5のような四隅に突出部を有する形態にすることで、このような問題が発生するおそれが解消され、装置自体の耐久性を高めることができる。
【0024】
本発明の散気装置は、図3に示すように固定部材21〜24の四隅の幅を大きくし、かつ図4、図5に示すように固定部材21〜24の四隅に突出部を設けた形態にすることもできる。
【0025】
本発明の散気システムは、本発明の散気装置を用い、特開2007−38198号公報の図5に示すような形態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術の散気装置の平面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】本発明の散気装置の平面図。
【図4】本発明の別実施形態の散気装置の平面図。
【図5】図4の部分断面図。
【符号の説明】
【0027】
2 角型弾性多孔体
21、22、23、24 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記四隅部分の幅が前記辺の幅よりも大きくなるように設定されている、散気装置。
【請求項2】
角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記両面側の四隅を固定する部分に対角線方向に突き出された突出部が設けられている、散気装置。
【請求項3】
角型弾性多孔体、前記角型弾性多孔体を下方から支持しかつ加圧空気用のオリフィスを有する支持体、及び、弾性多孔体を支持体に一体に固定する固定部材からなる散気装置であり、
前記支持体が、前記角型弾性多孔体を下方から支持する支持部と、支持部に接続された加圧空気送付用のパイプへの取り付け部からなり、
前記角型弾性多孔体が、開口部を有する箱型形状を有し、前記支持部が前記弾性多孔体内に配置されており、
前記固定部材が、前記角型弾性多孔体の両面側の少なくとも四隅とその近傍の辺を厚さ方向に固定するものであり、前記四隅部分の幅が前記辺の幅よりも大きくなるように設定されており、かつ前記両面側の四隅を固定する部分に対角線方向に突き出された突出部が設けられている、散気装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の散気装置が、加圧空気送付用のパイプに2つ以上取り付けられ、かつ各散気装置が互いに隙間なく接して並べられている散気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−262032(P2009−262032A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113405(P2008−113405)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】