説明

散気装置

【課題】複数の散気部を有する散気装置において、ブロー水の供給により各散気部を適切に洗浄する。
【解決手段】散気用の給気配管1と、給気配管1のヘッダー管100の長手方向で間隔をおいて設けられる複数の散気部2と、給気配管1に散気用の空気を供給する給気手段3と、給気配管1にブロー水を供給するブロー水供給手段4と、給気配管1に高圧空気を供給する高圧空気供給手段5とを備え、各散気部2は、吸い上げノズル管20とその上端に接続される散気板21を有する散気装置において、給気配管1のヘッダー管100内でブロー水が所定水位まで貯水されたことを検知する貯水検知手段Aを設けた。貯水検知手段Aによる貯水検知に基づきブロー水の注水制御を行うことができるので、給気配管1内の圧力に関わりなく、常に給気配管1内での貯水量を一定にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設の曝気槽などに設けられる散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設では、汚水中の窒素化合物や炭素化合物を除去するために、微生物による分解・吸着作用を利用した活性汚泥法が用いられている。活性汚泥中の微生物が活動するためには微生物に酸素を与える必要があり、このため、下水処理施設の曝気槽には散気装置が設置され、この散気装置から水中に空気(酸素)が供給される。
【0003】
この散気装置は、微細な通気孔が多数形成された散気板を備え、この散気板を通じて水中に空気(微細気泡)を放出するものであるが、装置を長期間にわたって運転するうちに汚れ成分が散気板に付着し、通気孔が目詰まりを起こすという問題がある。このような目詰まりを起こす汚れ成分の多くは微生物により形成されるスライムであるが、このスライムの付着力は強く、空気圧を高めても容易には剥離・除去できない。
【0004】
上記のような散気板の目詰まりを防止するために、特許文献1には、装置内にブロー水(洗浄水)を供給して散気板の定期的な洗浄を行えるようにした散気装置が示されている。この散気装置は、散気用の給気配管と、この給気配管の長手方向で間隔をおいて設けられる複数の散気部と、給気配管に散気用の空気を供給する給気手段と、給気配管にブロー水を供給するブロー水供給手段と、給気配管に高圧空気を供給する高圧空気供給手段を備えるとともに、各散気部は、給気配管の上部管壁を貫通し、下端が給気配管内に位置し、上端が給気配管外に位置する吸い上げノズル管と、この吸い上げノズル管の上端に接続される散気板を有する。
このような散気装置において定期的に行われる散気板の洗浄では、ブロー水供給手段から給気配管内にブロー水(洗浄水)を供給して管内に貯水した後、高圧空気供給手段から高圧空気を給気配管に供給する。この高圧空気により、給気配管内のブロー水が吸い上げノズル管を経て散気板から押し出され、このブロー水により散気板の洗浄がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−172583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される散気装置では、給気配管内へのブロー水注入量は時間で調整するため、ブロー毎の注入量は一定である。しかし、ブロー水注入中にも冠水したノズル管(吸い上げノズル管)からはブロー水の揚水が始まっており、給気配管内の圧力によって、この揚水量が異なるため、注入終了時の給気配管内の貯水量が毎回異なってしまう。貯水量が十分でないと、高圧空気を供給した時にブロー水を押し出すための圧力が得られず、散気板を十分に洗浄することができない。
【0007】
したがって本発明の目的は、給気配管の長手方向で間隔をおいて複数の散気部を有する散気装置において、ブロー水の供給により各散気部の散気板を適切に洗浄することができる散気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]散気用の給気配管(1)と、該給気配管(1)の水平状のヘッダー管(100)の長手方向で間隔をおいて設けられる複数の散気部(2)と、前記給気配管(1)に散気用の空気を供給する給気手段(3)と、前記給気配管(1)にブロー水を供給するブロー水供給手段(4)と、前記給気配管(1)に高圧空気を供給する高圧空気供給手段(5)とを備え、前記各散気部(2)は、給気配管(1)のヘッダー管(100)の上部管壁を貫通し、下端が給気配管(1)内に位置し、上端が給気配管(1)外に位置する吸い上げノズル管(20)と、該吸い上げノズル管(20)の上端に接続される散気板(21)を有する散気装置において、
前記給気配管(1)のヘッダー管(100)内でブロー水が所定水位まで貯水されたことを検知する貯水検知手段(A)を設けたことを特徴とする散気装置。
【0009】
[2]上記[1]の散気装置において、貯水検知手段(A)が、ブロー水供給手段(4)から給気配管(1)にブロー水を供給する供給管であって、先端部(70)がヘッダー管(100)の内部空間の所定高さに位置するブロー水供給管(7)と、該ブロー水供給管(7)を流れるブロー水の流量を測定する流量計(6)とからなることを特徴とする散気装置。
[3]上記[1]又は[2]の散気装置において、貯水検知手段(A)による貯水検知に基づき、ブロー水供給手段(4)からのブロー水の供給を停止する制御手段(8)を有することを特徴とする散気装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の散気装置は、給気配管(1)のヘッダー管(100)内でブロー水が所定水位まで貯水されたことを検知する貯水検知手段(A)を備え、この貯水検知手段(A)による貯水検知に基づきブロー水の注水制御を行うことができるので、給気配管(1)内の圧力に関わりなく、常に給気配管(1)内でのブロー水の貯水量を一定にすることができ、この状態で高圧空気供給手段(5)から高圧空気を給気配管(1)内に供給することにより、常に同じ条件で散気板(21)をブロー洗浄することができる。このため各散気部(2)の散気板(21)を適切にブロー洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の散気装置の一実施形態を模式的に示す全体説明図
【図2】図1の実施形態において、1つの散気部を部分的に示す一部切欠側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明の散気装置の一実施形態を示すものであり、図1は全体説明図、図2は1つの散気部を部分的に示す一部切欠側面図である。
この散気装置の基本構成は、特許文献1に示される装置と同様であり、1は散気用の給気配管、2は給気配管1の長手方向で間隔をおいて設けられる複数の散気部、3は給気配管1に散気用の空気を供給する給気手段、4は給気配管1にブロー水を供給するブロー水供給手段、5は給気配管1に高圧空気を供給する高圧空気供給手段である。また、xは散気装置が設置される下水処理施設の曝気槽(活性汚泥法による反応槽)である。
【0013】
前記給気配管1は、複数の散気部2が設けられる水平状のヘッダー管100と、このヘッダー管100の途中に立設される垂直状のライザー管(導入管部)と、このライザー管101の上端と給気手段3を連絡する管部102からなる。
前記散気部2は、給気配管1を構成するヘッダー管100に長手方向で間隔をおいて設けられる。各散気部2は、給気配管1のヘッダー管100の上部管壁を貫通し、下端がヘッダー管100内に位置し、上端がヘッダー管100の上方に位置する吸い上げノズル管20と、この吸い上げノズル管20の上端に接続される散気板21を有している。
このように各散気部2が吸い上げノズル管20を備えるのは、給気配管1のヘッダー管100内を満水にしなくてもブロー水を散気板21に供給できるようにするためである。ヘッダー管100内を満水にすると、給気配管内にブロー水が残留しやすく、管路が細くなるため散気に支障を生じるおそれがある。
【0014】
前記散気板21は、内部が中空の板状体であり、空気が放出される上面の部分は、通常、微細な通気孔やスリットが多数形成された金属薄板で構成されるが、膜タイプなどのものでもよい。
前記吸い上げノズル管20は、給気配管1のヘッダー管100内のブロー水の水位が低くてもブロー水の吸い上げができるようにするため、その下端がヘッダー管100の内底部近傍に位置している。一般に、ヘッダー管100の内底部からの吸い上げノズル管20の下端の高さは0〜10mm程度が適当である。吸い上げノズル管20の下端面200は、管内にブロー水を取り込み易くするために傾斜状に構成され、吸い上げノズル管20は、その傾斜した下端面200がブロー水流れ方向の上流側を向くように、ヘッダー管100に固定されている。この下端面200の垂直方向に対する傾斜角度θは10〜85°、好ましくは30〜80°程度が適当である。
この吸い上げノズル管20の上端には前記散気板21が接続され、両者の内部が連通している。
【0015】
前記給気手段3は、例えば、ブロアーなどで構成され、散気用の空気を給気配管1(ライザー管101の上部)に供給する。
前記ブロー水供給手段4は、例えば、水の貯留槽と送水ポンプなどで構成され、ブロー水供給管7を通じて給気配管1にブロー水を供給する。ブロー水供給手段4から延びるブロー水供給管7は、給気配管1を構成するライザー管101内に挿入され、ライザー管101内を上部から下方に導かれ、その先端部70(ブロー水吐出口)が、ヘッダー管100の内部空間の所定高さに位置している。この所定高さとは、散気板21を洗浄する際に必要なヘッダー管100内でのブロー水の貯水レベルwである。
【0016】
前記高圧空気供給手段5は、例えば、空気圧縮機とこの空気圧縮機から吐出される圧縮空気を貯留する空気槽などを備え、高圧空気(散気用の空気よりも高圧の空気)を高圧空気供給管9を通じて給気配管1(導入管部101の上部)に供給する。
その他図面において、10は給気配管1を構成するライザー管101の上部に接続される放風管であり、この放風管10は、ブロー水供給時に給気配管1内の圧力を下げ、ブロー水供給中の吸い上げノズル管20からのブロー水排出量を減らすことによって、ブロー水供給時間を短縮するためのものである。また、11は給気配管1の管部102に設けられる逆止弁、12はブロー水供給管7に設けられる開閉弁、13は高圧空気供給管9に設けられる開閉弁、14は放風管10に設けられる開閉弁である。
【0017】
以上のような散気装置の基本構造において、給気配管1(ヘッダー管100)内でブロー水が所定水位まで貯水されたことを検知するための貯水検知手段Aが設けられている。この実施形態では、ブロー水供給管7の途中にブロー水流量を測定する流量計6が設けられており、これらブロー水供給管7(先端部70がヘッダー管100の内部空間の所定高さに位置するブロー水供給管)と流量計6が貯水検知手段Aを構成している。
また、8は制御手段(制御装置)であり、この制御手段8は、ブロー水供給手段4によるブロー水の注水及びその停止と、開閉弁12,13,14の開閉などを制御する。ブロー水の注水時には、制御手段8に流量計6によるブロー水流量の測定データが送られ、この流量計6で測定されたブロー水流量の変化に基づき、すなわち貯水検知手段Aによる貯水検知に基づき、ブロー水供給手段4によるブロー水の注水が停止される。
【0018】
このような本発明の散気装置では、通常運転時には、開閉弁12,13を閉にして、給気手段3から散気用の空気が給気配管1に供給され、この空気は各散気部2において吸い上げノズル管20を経て散気板21から水中に放出される。このような散気装置の連続運転中、定期的(例えば、数時間〜数日毎)に散気板21のブロー洗浄が行われる。この散気板21のブロー洗浄では、開閉弁12を開にし、ブロー水供給手段4から給気配管1内にブロー水(洗浄水)を供給してヘッダー管100内に貯水した後、開閉弁13を開にし、高圧空気供給手段5から高圧空気を給気配管に供給する。この高圧空気によりヘッダー管100内のブロー水が吸い上げノズル管20を経て散気板21から短時間で押し出され、このブロー水により散気板21の洗浄がなされる。なお、給気配管1に供給された高圧空気は、逆止弁11により上流側(給気手段3側)に逃げないようにしてある。
【0019】
ブロー水供給手段4から給気配管1内にブロー水(洗浄水)を注水する場合、ブロー水はほぼ一定の流量で注水されるが、注水が進んでヘッダー管100内のブロー水が貯水レベルwに達すると、ブロー水供給管7の先端部70が冠水する。この結果、これまでブロー水供給管7の先端部70から空気中に噴き出ていたブロー水が水中に噴き出るため、圧力損失が高くなり、ブロー水供給管7を流れるブロー水の流量が減少する。このブロー水流量の変化は流量計6で検知される。つまり、貯水検知手段Aによって、給気配管1のヘッダー管100内でブロー水が貯水レベルwまで貯水されたことが検知される。その検知に基づき制御手段8はブロー水供給手段4からの注水を停止する。これにより、給気配管1内の圧力に関わりなく、常に給気配管1内でのブロー水の貯水量を一定にすることができ、この状態で高圧空気供給手段5から高圧空気を給気配管1内に供給することにより、常に同じ条件で散気板21をブロー洗浄することができる。
【0020】
ブロー水としては、純粋な水以外に、微生物を死滅させる効果を有する成分を含む水を使用することができ、これにより、微生物の増殖を効果的に抑制することができる。微生物を死滅させる効果を有する成分には特に制限はないが、例えば、抗菌物質又は酸化物質、より具体的には、次亜塩素酸ナトリウム、逆性石鹸、酸、アルカリ、オゾン、二酸化塩素、炭酸アルカリ金属などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
なお、貯水検知手段Aは、本実施形態ではブロー水供給管7と流量計6で構成したが、ヘッダー管100内の水面位置を測定する他の手段(例えば、超音波式水位計や電極式水位計など)を使用してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 給気配管
2 散気部
3 給気手段
4 ブロー水供給手段
5 高圧空気供給手段
6 流量計
7 ブロー水供給管
8 制御手段
9 高圧空気供給管
10 放風管
11 逆止弁
12,13,14 開閉弁
20 吸い上げノズル管
21 散気板
70 先端部
100 ヘッダー管
101 ライザー管
102 管部
200 下端面
A 貯水検知手段
x 曝気槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散気用の給気配管(1)と、該給気配管(1)の水平状のヘッダー管(100)の長手方向で間隔をおいて設けられる複数の散気部(2)と、前記給気配管(1)に散気用の空気を供給する給気手段(3)と、前記給気配管(1)にブロー水を供給するブロー水供給手段(4)と、前記給気配管(1)に高圧空気を供給する高圧空気供給手段(5)とを備え、前記各散気部(2)は、給気配管(1)のヘッダー管(100)の上部管壁を貫通し、下端が給気配管(1)内に位置し、上端が給気配管(1)外に位置する吸い上げノズル管(20)と、該吸い上げノズル管(20)の上端に接続される散気板(21)を有する散気装置において、
前記給気配管(1)のヘッダー管(100)内でブロー水が所定水位まで貯水されたことを検知する貯水検知手段(A)を設けたことを特徴とする散気装置。
【請求項2】
貯水検知手段(A)が、ブロー水供給手段(4)から給気配管(1)にブロー水を供給する供給管であって、先端部(70)がヘッダー管(100)の内部空間の所定高さに位置するブロー水供給管(7)と、該ブロー水供給管(7)を流れるブロー水の流量を測定する流量計(6)とからなることを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項3】
貯水検知手段(A)による貯水検知に基づき、ブロー水供給手段(4)からのブロー水の供給を停止する制御手段(8)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の散気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−187522(P2012−187522A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53589(P2011−53589)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】