説明

散水消雪装置

【課題】大きな貯水槽を必要とせず、地下水の使用を最小限に止めて効率よく消雪を行うことができる散水消雪装置を提供することを目的としている。
【解決手段】道路下及び道路近接地の少なくともいずれかの地下に設けられた貯水槽と、道路に散水された消雪用水を前記貯水槽に回収する消雪用水回収路と、貯水槽の貯水を道路に設けられた散水口に送る貯水送水配管と、地下水をくみ上げて、前記散水口から散水される消雪用水の不足量補充用及び貯水送水配管を流れる回収水の昇温用のいずれかの用途に地下水を前記貯水送水配管に供給する地下水供給手段とを備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪が道路上に積もらないように効率良く融かすことができる散水消雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
北陸地方などのように、積雪の多いが地下水の豊富な地方では、図6に示すように、比較的一定温度(15℃程度)である地下水100を道路200上に散水することにより車道や歩道などの道路200の雪を融かし、道路200上に雪が積もらないようにして交通の円滑化を図っている。また、一部の地域では、地下水の代わりに河川水を用いている場合もある。
しかしながら、地下水を冬季に大量にくみ上げると、地盤沈下の問題が発生している(添付資料参照、金沢の地盤沈下)。また、青森県では指定地域の地下水くみ上げ禁止、その他地方でも条例で厳しく規制している。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、消雪に用いた消雪用水を循環利用するシステムが既に提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、上記の先に提案されたシステムでは、消雪によって低温化した回収された消雪用水を太陽熱、地上熱、地下熱等を用いて暖めることによって効率よい消雪を図るように工夫されている。
【0004】
しかし、太陽熱や地熱を利用して消雪用水を効率よく暖めるには、熱源との接触時間を長くしなければならないため、貯水槽の厚みを薄くするか、貯水槽の深さを浅いものにしなければならず、貯水槽の設置に膨大な面積が必要になる。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−125124号公報
【特許文献2】特開平9−111731号公報
【特許文献3】特開平11−181730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて、大きな貯水槽を必要とせず、地下水の使用を最小限に止めて効率よく消雪を行うことができる散水消雪装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる散水消雪装置は、道路下及び道路近接地の少なくともいずれかの地下に設けられた貯水槽と、道路に散水された消雪用水を前記貯水槽に回収する消雪用水回収路と、貯水槽の貯水を道路に設けられた散水口に送る貯水送水配管と、地下水をくみ上げて、前記散水口から散水される消雪用水の不足量補充用及び貯水送水配管を流れる回収水の昇温用のいずれかの用途に地下水を前記貯水送水配管に供給する地下水供給手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明において、貯水槽は、特に限定されないが、例えば、貯水の少なくとも一部を地中に浸透可能に形成されていてもよい。
また、貯水槽は、流入水を底の一部に設けられた異物貯まり部に導く誘導構造を内部に備えるとともに、貯水送水配管の入口が前記異物貯まり部から離れた位置に設けられている構成とすることが好ましい。
【0009】
また、上記のような貯水槽としては、例えば、積水化学工業社製の商品名レインステーションなど市販のユニット組立式のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明にかかる散水消雪装置は、道路下及び道路近接地の少なくともいずれかの地下に設けられた貯水槽と、道路に散水された消雪用水を前記貯水槽に回収する消雪用水回収路と、貯水槽の貯水を道路に設けられた散水口に送る貯水送水配管と、地下水をくみ上げて、前記散水口から散水される消雪用水の不足量補充用及び貯水送水配管を流れる回収水の昇温用のいずれかの用途に地下水を前記貯水送水配管に供給する地下水供給手段とを備えているので、地下水の使用量を必要最小限に止めることができるとともに、貯水槽も小型化することができる。
【0011】
また、貯水槽を貯水の少なくとも一部を地中に浸透可能に形成されている構成とすれば、貯水の一部を地下水の補給に使用でき、地下水供給手段から貯水送水配管への地下水供給量を増やすことができる。
【0012】
さらに、貯水槽を、流入水を底の一部に設けられた異物貯まり部に導く誘導構造を内部に備えるとともに、貯水送水配管の入口が前記異物貯まり部から離れた位置に設けられている構成とすれば、フィルタなどを設けなくても、回収水中のごみや砂礫等の異物を異物貯まり部に貯めて、貯水送水配管に入り込まないようにすることができ、維持管理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる散水消雪装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0014】
図1に示すように、この散水消雪装置Aは、貯水槽1と、貯水送水配管2と、地下水供給手段3とを備えている。
貯水槽1は、図2に示すように、道路4の側溝41に沿った地下に埋設されていて、合成樹脂製の多数の傾斜板11と、この傾斜板11を支持する脚部材12とを全ての傾斜板11が集水枡42側から点検口18側に向かって下り勾配となるように積み重なることによって貯水空間14が形成され、底に異物貯まり部となる凹部13が設けられている。
また、貯水空間14の底及び下部は、非透水性樹脂シート15で覆われ、上部は透水性樹脂シート16で覆われている。
【0015】
貯水槽1の貯水は、貯水槽1の集水枡42側で凹部13から離れた位置に設けられた貯水送水配管2の入口17からポンプPを介して貯水送水配管2に送られるようになっている。
貯水送水配管2は、第1バルブ21と、第2バルブ22とを途中に備え、消雪用水散水管23に貯水槽1の貯水を送り、道路4上に散水するようになっている。
【0016】
第1バルブ21は、図示していないが、地上から手動または自動で操作可能に設けられていて、冬場の消雪時以外は閉じられるようになっている。
第2バルブ22は、地上から手動または自動で操作可能に設けられていた3方弁であって、地下水供給手段3に連結されている。
【0017】
地下水供給手段3は、第2バルブ22に接続される地下水供給配管31と、図示していないが、井戸に設けられたポンプとから構成されていて、第2バルブ22を切り替えることによって井戸の地下水を第2バルブ22の部分から貯水送水配管2に送り込み、消雪用水散水管23から地下水を、道路4上に噴射散水させるようになっている。
消雪用水散水管23から道路4上に散水された消雪用水Wは、道路4上の雪を融かしながら、消雪用水回収路となる側溝41、集水枡42、流入管43を介して貯水槽1に回収されるようになっている。
【0018】
この散水消雪装置Aは、上記のようになっており、最初に従来設備の通り地下水供給手段3を用いて地下水を井戸よりくみ上げ、消雪用水散水管23から道路4上に散水する。従来装置であれば、散水された水はそのまま側溝41から下水管へ排出されていくが、本発明では、側溝41から貯水槽1内に流入し、一旦貯水槽1内で貯水され、地下土中の温度が積雪地でも比較的高いため貯水槽1内に貯水されている間に地中熱により暖められる。
そして、貯水槽1内に規定量以上の消雪用水が貯水されると、地下水供給手段3を用いて地下水を井戸よりくみ上げを停止し、第2バルブ22を切り替えて貯水槽1の貯水を消雪用水Wとして使用し、基本的には、使用した消雪用水Wを貯水槽1に回収し、再び消雪用水Wとして使用するようになっている。
【0019】
一方、通常使用時において、蒸発等で回収される消雪用水Wの量が減少することがあると、第2バルブ22を切り替えて、地下水供給手段3から地下水を補給して使用することが出来る。また、積雪量が多く循環する消雪用水Wの量が多くなり、通常より貯水の温度低下がある場合も、冬場でも15℃程度と水温の高い地下水を必要に応じて補給することにより、消雪用水Wの温度を上げることができる。
したがって、地下水の使用量を必要最小限に止めて効率よく消雪を図ることができる。
【0020】
また、貯水槽1に回収された消雪用水Wは、傾斜板11の傾斜によって点検口18側に向かって誘導されるため、回収された消雪用水W中に含まれるごみや砂礫等が点検口18近傍の凹部13内に貯まる。そして、貯水送水配管2の入口17が点検口18近傍の凹部13から離れた位置に設けられているので、フィルタなどを設けなくても、回収水中のごみや砂礫等の異物を凹部13に貯めて、貯水送水配管2に入り込まないようにすることができ、維持管理が容易になる。
さらに、貯水槽1の貯水空間14の上端部が透水性樹脂シート16で覆われているので、昇温のため、地下水を多量に補給した場合でも、貯水槽1の上端部側に貯まった貯水の一部が透水性樹脂シート16越しに地中に浸透して地下水涵養を図ることができる。
また、積雪時以外には、貯水槽1に雨水を貯水すれば、治水や利水を図ることもできる。
【0021】
図3は、本発明にかかる散水消雪装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この散水消雪装置Bは、貯水槽1に貯水の水位を測定するレベル計LSおよび貯水の水温を測定する温度計TSが設けられ、レベル計LSで測定された水位及び温度計TSで測定された水温がコンピュータ装置等の自動制御装置8に送られ、水位が規定の水位以下あるいは水温が規定の温度以下になったと判断されると、自動的に第2バルブ22を切り替えるとともに、地下水供給手段3のポンプを作動させて井戸の地下水を第2バルブ22の部分から貯水送水配管2に送り込み、水位が規定の水位を越え、かつ、水温が規定の温度を越えたと判断されると、自動的に第2バルブ22を切り替えるとともに、地下水供給手段3のポンプを停止させて、貯水を貯水送水配管2に供給させるようにした以外は、上記の散水消雪装置Aと同様になっている。
【0022】
図4は、本発明にかかる散水消雪装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この散水消雪装置Cは、大型の貯水槽1aを道路4に近隣の公園や駐車場等の地下に設けるとともに、集水枡42に流れ込んだ消雪用水Wを集水管46で集め、集水管46から貯水槽1a内に流入するようにした以外は、上記散水消雪装置Aと同様になっている。
【0023】
すなわち、道路下においては、スペースに限りがあるので、小さな貯水槽しか設けることができないが、公園や駐車場の下などに設けることによって、大型の貯水槽1aを設けることができる。
そして、大型の貯水槽1aを設けることによって、貯水を消火用や非常時の水としても使用できる効果があり、さらに道路下の場合よりも滞留時間が長いので水温の上昇が期待できる。また、流出抑制効果としては、道路下のものより効果が大である。
なお、貯水槽1aは、図5に示すように、凹部13が貯水槽1aの中央部に設けられていて、傾斜板11がこの中央部の凹部13に向かって流入した流入水を誘導するようになっている。
【0024】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、貯水槽が合成樹脂製の傾斜板と脚部材を積み重ねて、貯水空間を形成するとともに、貯水空間の周囲を非透水性樹脂シートで囲むことによって形成されていたが、コンクリート製でも構わない。
また、貯水槽内にヒータを設けて貯水の温度を上昇させることでより融消雪能力を向上させることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる散水消雪装置の第1の実施の形態を説明する模式図である。
【図2】図1の散水消雪装置の貯水槽部分の断面図である。
【図3】本発明にかかる散水消雪装置の第2の実施の形態を説明する模式図である。
【図4】本発明にかかる散水消雪装置の第3の実施の形態を説明する模式図である。
【図5】図4の散水消雪装置の貯水槽部分の断面図である。
【図6】従来の散水消雪装置を説明する模式図である
【符号の説明】
【0026】
A,B,C 散水消雪装置
W 消雪用水
1,1a 貯水槽
11 傾斜板
13 凹部(異物貯まり部)
17 入口
2 貯水送水配管
3 地下水供給手段
4 道路
41 側溝(消雪用水回収路)
42 集水枡(消雪用水回収路)
43 流入管(消雪用水回収路)
46 集水管(消雪用水回収路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路下及び道路近接地の少なくともいずれかの地下に設けられた貯水槽と、道路に散水された消雪用水を前記貯水槽に回収する消雪用水回収路と、貯水槽の貯水を道路に設けられた散水口に送る貯水送水配管と、地下水をくみ上げて、前記散水口から散水される消雪用水の不足量補充用及び貯水送水配管を流れる回収水の昇温用のいずれかの用途に地下水を前記貯水送水配管に供給する地下水供給手段とを備えていることを特徴とする散水消雪装置。
【請求項2】
貯水槽が、貯水の少なくとも一部を地中に浸透可能に形成されている請求項1に記載の散水消雪装置。
【請求項3】
貯水槽が流入水を底の一部に設けられた異物貯まり部に導く誘導構造を内部に備えるとともに、貯水送水配管の入口が前記異物貯まり部から離れた位置に設けられている請求項1または請求項2に記載の散水消雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−235772(P2009−235772A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82900(P2008−82900)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】