説明

数値的モデルを用いて高分子材料の材料特性をシミュレートする方法およびシステム

【課題】数値的モデルを用いて高分子材料特性を記述する方法およびシステムを開示する。
【解決手段】製品のFEMモデルが定義される。FEMモデルは、高分子材料の1つ以上のソリッドエレメントを有している。負荷下にある製品の時間進行シミュレーションにおいて、ソリッドエレメントの応力状態が変形勾配テンソルから計算される。応力状態は、Mullins効果および歪み硬化効果を含んでおり、また弾性応力、粘弾性応力および背応力を有している。エレメントが塑性変形下にあるか否かを判定する降伏曲面が定義される。塑性歪みが変形勾配テンソルを更新するために得られ、その後、変形勾配テンソルを応力状態を再計算するよう用いる。高分子材料エレメントの結果を得る時間に、更新された応力状態が降伏曲面の許容範囲にあるまで計算を継続する。数値的モデルには、高分子材料のすべての特徴が考慮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、コンピュータ支援機械工学解析に関し、特に、粘弾性、粘塑性および非線形軟化を含む変形下にある高分子材料のシミュレーションを行う方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料で形成された製品は、日々の生活においてほとんどあらゆるところに用いられている。分子が整然とした格子構造に配置される多結晶材料(例えば金属)と異なり、プラスチック、合成ゴム、ポリスチレン、シリコーン等の高分子材料などは、ランダムな配列で絡み合っているモノマー分子の長鎖から構成されている。機械負荷を受ける場合、高分子材料の機械的性質は、格子構造の材料のものとは著しく異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多結晶材料解析を取り扱う場合、分子構造が比較的均一であるので、材料の変形は、変位あるいは歪みが負荷あるいは応力に比例するフックの法則で記述できる。永久歪が起きる場合でさえ、材料の流れは、よく開発されている発達した塑性理論によって説明でき、正確に予測できる。しかしながら、高分子材料の解析は、長鎖ポリマー構造のために、遙かに複雑である。高分子材料で形成される製品を設計するために、技術者はコンピューターモデル(数値的なモデル)、例えば有限要素解析法(FEA)あるいは有限要素法(FEM)を用いて、高分子材料の特性をシミュレートする。FEMは、複雑な問題のシミュレーションを容易にするが、演算の効率および応答の予測の精度は調査される材料がどのようにモデル化されるかに大きく依存する。よく確立された材料モデルがあれば、より少ない演算リソースで正確な結果が得られよう。しかしながら、既存の材料モデルのどれも、大きなあるいは非線形的な変形下にある高分子材料の独特な特性すべてを完全には記述することができない。そのような材料モデルなしでは、数値的なシミュレーションは、効率的あるいは正確でなくなる。
【0004】
したがって、大きな、非線形的変形下にある高分子材料の応答を正確に予測するために用いることができる材料モデルを有する方法およびシステムが望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでは、本発明のいくつかの面を要約することを目的とし、いくつかの好ましい態様を簡潔に紹介するものである。ここにおいては、要約およびここでの発明の名称と同様に、簡略化あるいは省略が、ここでの目的を損なわないよう、行われている場合がある。このような簡略化あるいは省略は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0006】
概して、本発明は、ある演算環境において(例えば有限要素解析法モジュールにおいて)数値的モデルを用いて高分子材料特性を記述する方法およびシステムに関する。本発明の一の面では、製品のFEMモデルが定義される。FEMモデルは、高分子材料の1つ以上のソリッドエレメントを有している。負荷下にある製品の時間進行シミュレーションにおいて、ソリッドエレメントの応力状態が変形勾配テンソルから計算される。応力状態は、マリンス効果(Mullins効果)および歪み硬化効果を含んでおり、また弾性応力、粘弾性応力および背応力を有している。エレメントが塑性変形下にあるか否かを判定する降伏曲面が定義される。塑性歪みが変形勾配テンソルを更新するために得られ、その後、変形勾配テンソルを用いて応力状態を再計算するよう用いる。高分子材料エレメントの応答結果を得るとき、更新された応力状態が降伏曲面の許容範囲内となるまで計算反復を継続する。本発明の一の態様では、数値的モデルには、高分子材料のすべての特徴を考慮に入れる。
【0007】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付した図面を参照し、以下の本発明の実施の形態の詳細な説明を考察することによって明らかとなろう。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、面および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付した図面を考慮してより理解されよう。図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】一定応力および一定歪み下にある例示的な粘弾性材料の応力−歪み関係を示す図である。
【図1B】一定応力および一定歪み下にある例示的な粘弾性材料の応力−歪み関係を示す図である。
【図2】例示的な高分子材料の軟化硬化あるいはMullins効果を示す図である。
【図3】例示的な歪み硬化効果の応力−歪み関係を示す図である。
【図4】弾性変形勾配および塑性変形勾配において示すボディの変形を示す図である。
【図5A】本発明の一の面にかかる高分子材料をシミュレートする数値的プロセスを示すフローチャートである。
【図5B】本発明の一の面にかかる高分子材料をシミュレートする数値的プロセスを示すフローチャートである。
【図6】本発明を実行するために用いられるコンピュータの主要な部材を示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
材料が外部荷重を受ける場合、応力緩和および歪み緩和が起きる。図1Aおよび図1Bはそのような緩和挙動を概略的に示している。図1Aにおいて、印加される応力110が一定の下では、歪みは、ε*114の定常歪みに漸近的に近づく経路112にしたがって増加する。印加された応力が116で取り除かれると、歪みは元の値へと減衰する経路118にしたがうよう作用する。図1Bにおいて、印加される歪み120が一定の下では、応力は、定常歪みへと向かう減衰経路122にしたがう。このような緩和挙動は、通常の弾性モデルに粘性のエレメントを導入することによって一般にモデル化される。MaxwellモデルおよびVoigtモデルなど粘弾性モデルが、機械的負荷下にある高分子材料の挙動をシミュレートするために提案されている。しかしながら、Maxwellモデルは、時間とともに減衰する応力を正確に記述できるが(図1B)、材料が一定応力下にある場合のクリープ応答を正確に予測できない。一方、Voigtモデルは、図1Aに示すクリープ挙動を記述できるが、材料が一定歪み下にある場合の応力緩和挙動を正確に記述できない。一般化されたMaxellモデルなどの他のモデルが、線形粘弾性における応力緩和および歪み緩和の両方に対応するよう提案されている。
【0011】
高分子材料の他の特性は、応力−歪み応答が以前にその材料が受けた最大荷重に強く依存するということにある。高分子材料は、最初に通常の弾性材料のように振る舞うが、その材料が次により高い負荷を受けると、応力−歪み曲線は著しくより軟化した経路にしたがう。次の荷量が以前の最大荷重未満である場合、応力−歪み応答は安定し、その応答は安定した応力−歪み曲線の経路をまさに再び辿る。荷重が以前の最大荷重を再び超える場合、応力−歪み応答はさらに他のより軟化した経路へと変わる。この軟化効果は、その高分子材料が受けた最大荷重に依存するものであり、Mullins効果と呼ばれる。
【0012】
図2は、軟化効果すなわちMullins効果を伴う例示的な弾性材料の1セットの応力−伸長比(σ−Λ)曲線を示す。伸長比(Λ)は、伸長した長さを材料の元の長さで除した比として、すなわちΛ=ε+1(ここでεが歪み)として定義される。最初に、材料は荷重下にない。応力σおよび伸長比Λは原点241にある。負荷が印加されると、材料は243においてΛ=4である伸長状態へと続く荷重経路242にしたがう。その負荷が取り除かれると、材料は原点441へと戻る第1無負荷経路244にしたがう。次の再荷重では、243においてΛ=4である伸長状態への異なる経路252a、そして253においてΛ=6である他の伸長状態に達する経路252bにしたがう。253において無荷重とすることにより、原点241へと戻る第2無負荷経路254にしたがう。さらに他の再荷重では、253においてΛ=6である伸長状態に達する新しい経路262にしたがう。最大伸長比を超える毎に、後の荷重ではより軟化した経路にしたがう。荷重経路242および262からわかるように、262では、同じ量の伸長に要する応力はより小さくなっている。この軟化効果は、高分子材料の独特な特徴のうちの1つである。
【0013】
粘性効果特徴および軟化効果特徴のため、負荷下にある高分子材料の応答は解析することは難しい。大きな変形が含まれている場合、非線形的および他の塑性的特徴により、高分子材料応答を予測することが困難さをさらに著しく増加する。塑性変形下にある材料の特徴のうちの1つは硬化効果である。図3は、歪み硬化効果の応力−歪み関係を示す図である。材料が負荷を受ける場合、歪み−応力曲線は軌跡(trace)302にしたがう。応力状態が320における降伏点を超える場合、材料は塑性変形下にある。荷重が停止され、そして304において取り除かれると、材料は応力ゼロ状態に戻る軌跡306にしたがい、そして永久的歪みすなわち塑性歪みε0が残る。次の荷重では、歪み応答は、320における元の降伏点より高い310における降伏点を有する異なる軌跡308にしたがう。降伏点のこの増加を、一般に、硬化効果という。
【0014】
本発明の実施形態を、図4乃至図6を参照して、ここに説明する。しかしながら、当業者には、これらの図面を参照するここでの詳細な説明が、例示の目的のためであって、本発明がこれらの限られた実施形態よりも広いことは、すぐに理解されよう。以下の詳細な説明においては、シンボルの上のドットは時間に対する微分を意味し、例えば

はdF/dtを意味する。
【0015】
図5Aは、本発明の実施形態にかかる高分子材料特性をシミュレートする例示的なプロセス500を示すフローチャートである。プロセス500は、好ましくはソフトウェアで実行される。
【0016】
プロセス500は、502において製品の有限要素法(FEM)モデルを定義するようスタートする。FEMモデルは、高分子材料でモデル化された1つ以上のソリッドエレメントを備える。FEMモデルを用いる製品の時間進行シミュレーションが504において初期化される。例えば、現在のシミュレーションが0に初期化される。506において、1セットの構造的な応答がFEMモデルを用いて現在のソリューションサイクルにおいて得られる。本発明の1つの実施形態では、高分子材料エレメントの応力状態が508において計算される。ステップ508の詳細を、図5Bにおいて以下に説明する。そして、510において、現在のシミュレーション時間が、次のソリューションサイクルに向けてインクリメントされる。判断512において、時間進行シミュレーションが所定のトータルシミュレーション時間に達したか否か判定される。時間進行シミュレーションが所定のトータルシミュレーション時間に達していない場合、プロセス500は、ステップ506に戻り、判断512が真になるまで他の応答に対して以上のステップを繰り返す。そして、プロセス500は、終了する。
【0017】
図5Bは、高分子材料特性モデルに対するステップ508の詳細を示す。応力状態の計算は変形勾配テンソル(deformation gradient tensor)を決定することでスタートする。運動しているボディ構成を示す図4を参照する。座標系420において時間「t」での参照(reference)ボディ構成402を、B(X)として表示している。ここでXは参照ボディB(X)上の点である。時間「t+Δt」における参照ボディB(X)の現在の構成に対する運動(motion)はf(X)406として表される。また、時間t+Δtにおけるボディ全体はB(X’)404として表示
される。B(X)402からB(X’)404までのトータル変形勾配は、運動f(X)
の勾配である。つまり、

である。トータル運動f(X)406を2つの連続運動(塑性運動(plastic motion)fp(X)408およびそれに続く弾性運動(elastic motion)fe(z)412)の結果として視覚化することもできる。ボディの中間構成はB(z)410として表される。こうして、トータル運動f(X)は、f(X)=fe(fp(X))によってこれらの2つの運動を用いて表現することができ、トータル変形勾配Fは運動fpおよびfeから以下のように決定できる。
【0018】
【数1】

数式1において、弾性変形勾配は以下のように定義される。
【0019】
【数2】

また、塑性変形勾配は以下のように定義される。
【0020】
【数3】

【0021】
508aにおいて、各高分子材料エレメントのノード移動を用いて試験変形勾配(trial deformation gradient)が計算される。トータル変形勾配Fは微分方程式

を解くことによって得られる。ここで、Lは速度勾配(velocity gradient)である。数式1に基づいて、試験弾性変形勾配テンソル

は、トータル変形勾配Fに1つ前の塑性変形勾配の逆(inverted last−known plastic deformation gradient)としての

を乗じることによって決定される。つまり、

である。
【0022】
508bにおいて、試験弾性変形勾配に基づいて、モデルが、Mullins効果(数式4)、弾性応力(数式5)、粘弾性応力(数式6)および背応力(back stress)(数式7)を含むトータルエレメント応力を計算する。
【0023】
軟化効果(すなわちMullins効果)パラメータ(νs)は以下のレート方程式(rate equation)を解くことによって決定される。
【0024】
【数4】

ここでZおよびNは材料パラメータであり、

はνsの飽和値(saturation value)であり、

は現在の時刻までの伸長の最大値である。

ここで、

であり、AおよびBは材料定数であり、

は左Cauchy Green変形勾配(left Cauchy Green deformation gradient)

のトレース(trace)の3分の1である。
【0025】
決定された弾性変形勾配および軟化効果パラメータを用いて、弾性応力が以下のように与えられる。
【0026】
【数5】

Nおよびμは材料パラメータであり、Iは恒等テンソル(identity tensor)であり、Beは試験弾性変形勾配Feから得られた右Cauchy−Green変形テンソル(right Cauchy−Green deformation tensor)であり

eはBeの第1不変量(first invariant)であり、Kは材料の体積弾性係数であり、Jは変形勾配Feの行列式(determinant )であり、Lはランジュバン関数(Langevin function)である。応力テンソルは、また、2つの部分(偏差応力テンソルσdevおよび体積応力テンソル(volumetric stress tensor)σvol)に分解できる。
【0027】
偏差応力テンソル(deviatoric stress tensor)σdevおよび弾性変形勾配テンソルFeから、

として定義される第2Piola Kirchhoff応力Sdevが得られる。その結果として、粘弾性の応力テンソルQが以下のように決定される。
【0028】
【数6】

および
ここでパラメータτiおよびβiは粘弾性特性を記述している。
【0029】
そして、トータル応力が以下のように与えられる。

ここで

である。
【0030】
背応力は以下のように定義され計算される。
【0031】
【数7】

ここで、

は塑性右Cauchy−Green変形テンソル(plastic right Cauchy−Green deformation tensor)

の逆(inverse)であり、IpはCpのトレースである。修正応力テンソル(modified stress tensor)はトータル応力から背応力を減じることによって決定され

次に、Cauchy応力は標準プッシュフォワードオペレーション(standard push forward operation)を修正応力テンソルS*に適用することによって決定される。つまり、
【0032】
【数8】

である。ここでFeは変形勾配の弾性部分であり、

である。
【0033】
そして、有効応力テンソルσeffは、数式8における修正弾性応力テンソルσから以下のように計算される。

ここでF,G,H,L,M,Nは塑性材料パラメータである。
【0034】
材料硬化に寄与する粘弾性応力は、以下の方程式に組み込まれる。

ここでσyld 0は初期降伏応力(initial yield stress)である。硬化はパラメータWiおよびβi(i=1,2,..4)によって定義される。あるいは、硬化効果も、一般負荷曲線(general load curve)

(ここで

は有効塑性歪み(effective plastic strain))によって記述できる。
【0035】
修正弾性応力、粘弾性応力および粘塑性歪みレート

を組み合わせている降伏曲面fは以下のように定義される。
【0036】
【数9】

DおよびEは粘塑性パラメータである。
【0037】
508cにおいて、応力状態を降伏曲面fと照合する。f<0の場合、降伏は起きていない。現在のシミュレーション時間ステップにおいて大きな変形は起こっていない。プロセスはFEM時間進行シミュレーションループに戻る。f>0の場合、降伏が起きており、シミュレーションは「yes」経路にしたがい、ステップ580dへと移行する。
【0038】
580dにおいて、有効塑性歪みが降伏曲面方程数式9を満たすことによって計算される。つまり、f=0の方程式を解くことによって。このように決定された有効塑性歪み

を、以下の方程式によって508eにおいて塑性変形勾配テンソルを更新するよう用いる。
【0039】
【数10】

ここで、

および

はそれぞれ更新された塑性変形勾配テンソルおよび現在の塑性変形勾配テンソルであり、σdevは修正弾性応力テンソルσの偏差部分(deviatoric part)であり、Δtはシミュレーションにおける時間インクリメントである。
【0040】
更新された塑性変形勾配テンソル

に基づいて、508fにおいて、Mullins効果パラメータνsおよびエレメント応力状態が、508bにおける方程式と同じ方程式を用いて再計算される。次に、508gにおいて、再計算されたエレメント応力状態がチェックされる。応力状態下にある降伏曲面関数fが降伏曲面の許容範囲(tolerance)内にある場合、エレメントの完全応答解(complete response solution)が決定され、そして、プロセスはメインFEM時間進行ループに戻る。応力状態下にある降伏曲面関数fが降伏曲面の許容範囲内にない場合、プロセスはステップ508dに戻ってループすることによって継続される。
【0041】
一の側面において、本発明は、ここに説明した機能を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム600の一例を、図6に示す。コンピュータシステム600は、プロセッサ604など1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ604は、コンピュータシステム内部通信バス602に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムの点から説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピューターアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟している者には明らかになるであろう。
【0042】
コンピュータシステム600は、また、メインメモリ608好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を有しており、そして二次メモリ610を有することもできる。二次メモリ610は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ612、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどを表わす1つ以上のリムーバブルストレージドライブ614を有することができる。リムーバブルストレージドライブ614は、よく知られている方法で、リムーバブルストレージユニット618を読み取りおよび/またはリムーバブルストレージユニット618に書き込む。リムーバブルストレージユニット618は、リムーバブルストレージドライブ614によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット618は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータで使用可能な記憶媒体を有している。
【0043】
代替的な実施形態において、二次メモリ610は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム600にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット622とインタフェース620とを有することができる。そのようなものの例には、プログラムカートリッジおよびカートリッジのインタフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)と、リムーバブルメモリチップ(消去可能なプログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリ、あるいはPROMなど)および関連するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット622からコンピュータシステム600に転送することを可能にする他のリムーバブルストレージユニット622およびインタフェース620と、が含まれうる。一般に、コンピュータシステム600は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーキングおよびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって、制御され連係される。
【0044】
通信用インタフェース624も、また、バス602に接続することができる。通信用インタフェース624は、ソフトウェアおよびデータをコンピュータシステム600と外部装置との間で転送することを可能にする。通信用インタフェース624の例には、モデム、ネットワークインタフェイス(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュニケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットおよびカードなど、が含まれうる。ソフトウェアおよびデータは通信インタフェース624を介して転送される。コンピュータ600は、専用のセットの規則(つまりプロトコル)に基づいて、データネットワーク上の他の演算装置と通信する。一般的なプロトコルのうちの1つは、インターネットにおいて一般に用いられているTCP/IP(伝送コントロール・プロトコル/インターネット・プロトコル)である。一般に、通信インタフェース624は、データファイルをデータネットワーク上で伝達される小さいパケットへのアセンブリングを管理し、あるいは受信したパケット元のデータファイルへと再アセンブルする。さらに、通信インタフェース624は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいはコンピュータ600が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく受信する。この書類において、「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータが読取り可能な媒体」、「コンピュータが記録可能な媒体」および「コンピュータが使用可能な媒体」という語は、リムーバブルストレージドライブ614(例えば、フラッシュストレージドライブ)および/またはハードディスクドライブ612に組み込まれたハードディスクなどの媒体を概して意味して用いられている。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム600にソフトウェアを提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0045】
コンピュータシステム600は、また、コンピュータシステム600をアクセスモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッタなどに提供する入出力(I/O)インタフェース630を有することができる。
【0046】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ608および/または二次メモリ610にアプリケーションモジュール606として記憶される。コンピュータプログラムを、通信用インタフェース624を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム600がここに説明した本発明の特徴を実行することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ604が本発明の特徴を実行することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム600のコントローラを表わしている。
【0047】
ソフトウェアを用いて発明が実行される実施形態において、ソフトウェアをコンピュータプログラム製品に記憶でき、リムーバブルストレージドライブ614、ハードドライブ612あるいは通信用インタフェース624を用いてコンピュータシステム600へとロードすることができる。アプリケーションモジュール206は、プロセッサ604によって実行された時、アプリケーションモジュール606によって、プロセッサ604がここに説明した本発明の機能を実行する。
【0048】
所望のタスクを達成するために、I/Oインタフェース630を介したユーザ入力によってあるいはよることなしに、1つ以上のプロセッサ604によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール606を、メインメモリ608に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ604がアプリケーションモジュール606のうちの1つが実行されると、結果が演算されて二次メモリ610(つまりハードディスクドライブ612)に記憶される。解析の状況(例えば高分子材料の応力状態)が、ユーザの指示に応じてテキストあるいはグラフィック表現でI/Oインタフェース630を介してユーザに報告される。
【0049】
本発明を具体的な実施形態を参照しながら説明したが、これらの実施形態は単なる例示であって、本発明を限定するものではない。開示した例示的な実施形態に対する種々の変更あるいは変形を、当業者は思いつくであろう。例えば、高分子材料モデルを一群の方程式(数式1〜10)で示し記述したが、代わりに材料挙動の他の同等な数学的記述を用いることができる。つまり、発明の範囲は、ここで開示した具体的で例示的な実施形態に限定されず、当業者が容易に想到するあらゆる変更が、本願の精神および認識範囲そして添付の特許請求の範囲の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
402 参照ボディ構成
404 ボディ全体
406 運動
408 塑性運動
410 中間構成
412 弾性運動
420 座標系
600 コンピュータシステム
602 バス
604 プロセッサ
606 アプリケーションモジュール
608 メインメモリ
610 二次メモリ
612 ハードディスクドライブ
614 リムーバブルストレージドライブ
618 リムーバブルストレージユニット
620 インタフェース
622 リムーバブルストレージユニット
624 通信インタフェース
630 I/Oインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムを用いて高分子材料の材料特性をシミュレートする方法であって、
コンピュータシステムにインストールされたアプリケーションモジュールよって、製品の有限要素解析法(FEA)モデルを定義するステップであって、該FEAモデルは高分子材料を表す複数のソリッドエレメントを有しており、該高分子材料は弾性−塑性境界を定義する降伏曲面を有しているステップと、
前記アプリケーションモジュールによって、負荷下にある製品の時間進行シミュレーションにおいてFEAを用いて前記FEAモデルの1セットの構造的な応答を得るステップであって、前記時間進行シミュレーションは複数のソリューションサイクルを含んでいるステップと、
前記アプリケーションモジュールによって、弾性応力、粘弾性応力、背応力および軟化効果を含んでいる変形勾配テンソルに基づいてソリッドエレメントの応力状態を計算するステップと、
前記アプリケーションモジュールによって、計算された応力状態が降伏曲面外にあると判定されたとき、粘塑性変形効果を含めるよう前記応力状態を反復的に更新するステップであって、該更新された応力状態は次のソリューションサイクルにおいて他のセットの構造的な応答に用いられるステップと、
を備えており、
ソリッドエレメントの応力状態は、ユーザの指示に応じてコンピュータシステムに連結された記憶装置のファイルに保存される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記応力状態はさらに歪み硬化効果を含んでいる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記軟化効果はマリンス(Mullin's)効果を備えている方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記応力状態を反復的に更新する前記ステップは、前記アプリケーションモジュールによって、前記降伏曲面に関する所定の許容範囲を用いて前記応力状態の反復的更新の収束を判定するステップをさらに備えている方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記応力状態を反復的に更新する前記ステップは、前記アプリケーションモジュールによって、前記粘塑性変形に応じて前記降伏曲面を更新するステップを備えている方法。
【請求項6】
高分子材料の材料特性をシミュレートするコンピュータシステムであって、
1つ以上の有限要素解析(FEA)モジュールに関するコンピュータ可読コードを記憶しているメインメモリと、
前記メモリに連結される少なくとも1つのプロセッサであって、該少なくとも1つのプロセッサがメモリ内のコンピュータ可読コードを実行して、これにより、前記1つ以上のFEAアプリケーションモジュールに、
製品の有限要素解析法(FEA)モデルを定義するオペレーションであって、該FEAモデルは高分子材料を表す複数のソリッドエレメントを有しており、該高分子材料は弾性−塑性境界を定義する降伏曲面を有しているオペレーションと、
負荷下にある製品の時間進行シミュレーションにおいてFEAを用いて前記FEAモデルの1セットの構造的な応答を得るオペレーションであって、前記時間進行シミュレーションは複数のソリューションサイクルを含んでいるオペレーションと、
弾性応力、粘弾性応力、背応力および軟化効果を含んでいる変形勾配テンソルに基づいてソリッドエレメントの応力状態を計算するオペレーションと、
計算された応力状態が降伏曲面外にあると判定されたとき、粘塑性変形効果を含めるよう前記応力状態を反復的に更新するオペレーションであって、該更新された応力状態は次のソリューションサイクルにおいて他のセットの構造的な応答に用いられるオペレーションと、
を実行させ、
ソリッドエレメントの応力状態は、ユーザの指示に応じてシステムに連結された記憶装置のファイルに保存される、
システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記応力状態を反復的に更新する前記オペレーションは、前記降伏曲面に関する所定の許容範囲を用いて前記応力状態の反復的更新の収束を判定するオペレーションをさらに備えている、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記応力状態を反復的に更新する前記オペレーションは、前記粘塑性変形に応じて前記降伏曲面を更新するオペレーションを備えている、システム。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって高分子材料の材料特性をシミュレートするコンピュータ実行命令を有するコンピュータ可読媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−243197(P2011−243197A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−105790(P2011−105790)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(509059893)リバーモア ソフトウェア テクノロジー コーポレーション (29)
【Fターム(参考)】