整流装置および整流器の取り付け方法
【課題】高精度の加工が不要な整流装置および整流器の取り付け方法を提供すること。
【解決手段】本発明の整流器の取り付け方法は、次の工程を備える。(a)流路(1)の内壁(11)に対向する外周面を有する枠状のスペーサ(20)を整流器(2)の取り付け位置(14)に挿入する工程、(b)スペーサ(20)の内周を少なくとも覆う形状を有する整流体(22)を挿入する工程、および(c)スペーサ(20)の外周面と流路(1)の内壁(11)との間に固定用流動体(5)を供給する工程を備える。かかる構成によれば、スペーサを流路に挿入した後に固定用流動体を供給して固定するので、加工精度の低さに基づく移動や振動を防止可能である。
【解決手段】本発明の整流器の取り付け方法は、次の工程を備える。(a)流路(1)の内壁(11)に対向する外周面を有する枠状のスペーサ(20)を整流器(2)の取り付け位置(14)に挿入する工程、(b)スペーサ(20)の内周を少なくとも覆う形状を有する整流体(22)を挿入する工程、および(c)スペーサ(20)の外周面と流路(1)の内壁(11)との間に固定用流動体(5)を供給する工程を備える。かかる構成によれば、スペーサを流路に挿入した後に固定用流動体を供給して固定するので、加工精度の低さに基づく移動や振動を防止可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路において流量を検出する流れセンサの上流側に設置して流体を整流する整流器を備えた整流装置および整流器の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計は、流体の流路に設置された流れセンサにより流体の流量を計測する装置である。正確な流量を測定するためには、流れセンサの上流において気体の偏流や乱れを整流することが重要である。このため、流路において流れセンサの上流に整流器を設けることが考案されてきた。
【0003】
例えば、特開2005−24080号公報には、両面に突起部と窪み部との対を形成したリンク状のスペーサと整流体である金網とを交互に積層して構成される整流器が開示されている(特許文献1)。また、特開2004−093159号公報には、流路に段差を設け、円筒ねじを用いて整流器を段差に押しつけて固定する考案が提案されていた(特許文献2)。これらの整流器を用いれば、流体が整流体である金網で整流されるので、流量計が正確な流量を測定することができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24080号公報
【特許文献2】特開2004−093159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2005−24080号公報に記載の整流器では、個々のスペーサが確実に組み付けられるようにするため、スペーサの突起部および窪み部を高い精度で形成しなければなかった。このため加工に係るコストの上昇が避けられなかった。
【0006】
また、上記特開2004−093159号公報に記載の整流器では、整流器の支持力がばねの付勢力に依存し、寸法公差がばらつくと付勢力、すなわち整流器の支持力がばらつくことになる。このため、支持力がばらつかないようにスペーサや流路の加工精度を上げておく必要がある。また、ばねを利用するためには流路にばねの付勢力を受けるフランジが必要であり、そのフランジの強度を上げるように加工しなければならなかった。これらのことは、整流器の製品コストを確実に上昇させることになっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、高精度の加工が不要な整流器を備えた整流装置および整流器の取り付け方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様である整流装置は、流体が流通する流路が設けられた流路ブロックと、流路に設けられ、流体を整流するための整流器と、を備え、整流器は、流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと、前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体と、が組み合わされて構成されており、少なくとも前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間は、固定材で固定されている。
【0009】
上記第1の態様の発明によれば、スペーサと整流体とで構成された整流器が流路の内壁に固定材によって固定されている。ここで、個々のスペーサを流路に挿入可能とするためには、スペーサの外周径を流路の内周径より若干小さくしておく必要がある。しかし、スペーサの加工精度が低いと、流路の内壁とスペーサの外周面との間隙が大きくなりすぎる。間隙が大きすぎると、スペーサが固定されずに固定材の偏在により振動したり、曲がって固定されたりしてしまう。また、個々のスペーサがバラバラにならないようにするには、各スペーサに突起部および窪み部を設けて互いを組み付ける必要があるが、このような加工にも高い精度が必要である。この点、かかる構成によれば、流路に挿入したスペーサを固定材が固定するので、スペーサの加工精度が高くなくても、個々のスペーサが移動したり振動したりする不都合を悉く防止可能である。
【0010】
なお、「固定材」とは、例えば、固化前には適度な流動性を有する固定用流動体として存在し、整流器を構成するスペーサの外周面と流路の内壁との間に供給されるもので、供給後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサの移動を抑制する機能を奏するものをいう。
【0011】
また、本発明の上記整流装置は、流路に流路センサを設けた流量計を備えていてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様である整流器の取付方法は、以下の工程を備えることを特徴とする、流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法である。
(a)流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサを流路の取り付け位置に挿入する工程、
(b)スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体を流路に挿入する工程、
(c)スペーサの外周面と流路の内壁との間に固定用流動体を供給する工程。
【0013】
上記第2の態様の発明によれば、スペーサと整流体とが個別に流路に挿入され、固定用流動体により流路の内壁に固定される。固定用流動体とは、供給時に適度な流動性を備え、その後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサの移動を抑制する機能を奏するものをいう。ここで、個々のスペーサを流路に挿入可能とするためには、スペーサの外周径を流路の内周径より若干小さくしておく必要がある。しかし、スペーサの加工精度が低いと、流路の内壁とスペーサの外周面との間隙が大きくなりすぎる。間隙が大きすぎると、スペーサが固定されずに固定用流動体の偏在により振動したり、曲がって固定されたりしてしまう。また、個々のスペーサがバラバラにならないようにするには、各スペーサに突起部および窪み部を設けて互いを組み付ける必要があるが、このような加工にも高い精度が必要である。この点、かかる構成によれば、流路に挿入したスペーサを固定用流動体にて固定するので、スペーサの加工精度が高くなくても、個々のスペーサが移動したり振動したりする不都合を悉く防止可能である。
【0014】
また本発明の第3の態様である整流器の取付方法は、以下の工程を備えることを特徴とする、流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法である。
(a)流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサとスペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体とを重ね合わせて整流器を形成する工程、
(b)整流器における各スペーサの外周面に固定用流動体を供給する工程、
(c)固定用流動体が供給された整流器を流路の取り付け位置に挿入する工程。
【0015】
上記第3の態様の発明によれば、スペーサと整流体とにより整流器を形成した後に外周面に固定用流動体を供給してから整流器が流路に挿入され、流路の内壁に固定される。ここで、上記第2の態様と同じく、スペーサの加工精度が低いと、整流器が移動したり振動したりする。この点、かかる構成によれば、固定用流動体が供給された整流器を流路に挿入して固定するので、加工精度の悪さに基づく移動や振動といった不都合を悉く防止可能である。特に、第3の態様の発明によれば、整流器を形成した後に流路に挿入するため、挿入作業が容易に行えるという利点を有する。
【0016】
本発明は、所望により、以下のような態様を適用することが可能である。
1)上記第1の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられていてもよい。かかる構成によれば、少なくとも窪み部が固定材が充填されるので、スペーサおよび整流器を固定することが可能である。
【0017】
2)上記第2の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられており、固定用流動体を供給する工程では、この窪み部に固定用流動体を供給することは好ましい。かかる工程によれば、少なくとも窪み部に固定用流動体が充填されるので、スペーサおよび整流器を固定することが可能である。
【0018】
3)上記第3の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられており、前記スペーサと整流体とを重ね合わせる工程では、複数の前記スペーサにおける前記窪み部が連なる向きで前記スペーサを重ね合わせ、前記固定用流動体を供給する工程では、連なった複数のスペーサの窪み部に固定用流動体を供給することは好ましい。かかる工程によれば、連なった窪み部に固定用流動体を供給するので必要最小限の流動体の分量で済む。また、挿入する際にも固定用流動体が窪み部に保持され、流路の内壁に付着することを防止できる。
【0019】
4)上記第1の態様の発明において、固定材を、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂のいずれかとすることができる。熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いる場合には加熱処理または光照射処理により、また熱可塑性樹脂を用いる場合には放熱処理によって、それぞれ流動性を有する固定材を硬化させてスペーサまたは整流器を確実に流路の内壁に固定することが可能である。
【0020】
5)上記第2の態様または第3の態様の発明において、固定用流動体を熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂とし、スペーサまたは整流器を挿入する工程の後に、さらに、固定用流動体に対して熱または光を加える工程を備えることは好ましい。かかる工程によれば、加熱処理または光照射処理により固定用流動体を硬化させてスペーサまたは整流器を確実に流路の内壁に固定することが可能である。
【0021】
6)上記第2の態様または第3の態様の発明において、固定用流動体を熱可塑性樹脂としてもよい。かかる工程によれば、固定用流動体をスペーサまたは整流器に供給してから流路の所定位置に挿入し放熱によって固定用流動体が冷却されることにより確実にスペーサまたは整流器を固定することが可能である。
【0022】
7)整流体の間に複数のスペーサが配置されるようにスペーサおよび整流体を挿入したり、整流器を構成したりしてもよい。本発明の整流器の取り付け方法によれば、スペーサの数を適宜調整して、最適な形態の整流器を提供することが可能である。本発明による整流装置は、少なくとも整流器の両端にはスペーサが配置されるので、整流体を確実に押さえることができる。
【0023】
なお、上記第2の態様の発明において、スペーサを挿入するたびに固定用流動体を供給するか、一部のまたは総てのスペーサを流路に挿入してから固定用流動体を供給するかは任意である。また、上記第3の態様の発明において、整流器を流路に挿入してからさらに固定用流動体を供給することを妨げない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スペーサに高精度の加工を必要とせず、コストを大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態における整流器が取り付けられた整流装置の構造を説明する断面図。
【図2】実施形態1におけるスペーサおよび整流体の平面図。(A)はスペーサの平面図、(B)は整流体の平面図。
【図3】スペーサと整流体とが組み合わされた様子を示す平面図。
【図4】実施形態1におけるガイド部材を配置する工程の例を示す断面図。
【図5】実施形態1におけるスペーサを挿入する工程を説明する断面図。
【図6】実施形態1における整流体を挿入する工程を説明する断面図。
【図7】実施形態1におけるスペーサおよび整流体からなる組を積層する工程を説明する断面図。
【図8】実施形態1における最後のスペーサを挿入する工程を説明する断面図。
【図9】実施形態1における整流器の構成が整った様子を説明する断面図。
【図10】実施形態1における固定用流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図11】実施形態1における固定用流動体を固化させる工程を説明する断面図。
【図12】実施形態1の変形例であり、スペーサを挿入する毎に固定用流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図13】実施形態2における整流器を形成する工程を説明する斜視図。
【図14】実施形態2における整流器を仮押さえする工程を説明する斜視図。
【図15】実施形態2における固定量流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図16】実施形態2における整流器を挿入する工程を説明する断面図。
【図17】実施形態2における固定用流動体を固化させる工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、本発明の第1の態様に係る整流装置を第2の態様に係る整流器の取り付け方法で製造する場合に関する。
図1に、本実施形態における整流装置の構造を説明する断面図を示す。図1は、整流装置100の軸方向断面図である。
【0028】
(整流装置の構造)
図1に示すように、本実施形態における整流装置100は、流路ブロック1に整流器2が取り付けられて構成されている。さらに整流装置100には、オプショナルな構成である流量計3が取り付けられている。
【0029】
流路ブロック1には、流体が流通する流路10を提供する流路提供部材である。流路ブロック1は、流路10を形成する内壁11に、後に説明するスペーサ20を挿入して所定の位置に設置可能な形状を備えていればよく、その構造に限定はない。例えば、流路ブロック1の断面の外形形状は、矩形形状であっても円形形状であっても、その他の形状であってもよい。また流路ブロック1の内径形状、すなわち流路10の断面形状は、円形であっても楕円形であっても、矩形その他の多角形形状であってもよい。流路10の内壁11には、整流器2の取り付け位置14を規定することになる段差部12が設けられている。段差部12の内径は後述する整流器2のスペーサ20の外周径より若干大きく設定されている。
【0030】
整流器2は、流路10に設けられ、流体を整流するための整流手段であり、流路10の取り付け位置14に設置される。整流器2は、スペーサ20と整流体22とが組み合わされて構成されている。図2に示すように、スペーサ20は、流路10の内壁に対向する外周面201を有する枠状部材である。整流体22は、スペーサ20の内周を少なくとも覆う形状を有する整流手段である。後述するように、少なくともスペーサ20の外周面202と流路10の内壁との間は、固定用流動体が固化した固定材で固定されている。
【0031】
図1に示すように、整流器2を設ける流路10の内壁11における取り付け位置14は、典型的には、整った流体の流れを必要とする手段の上流となる。整った流体の流れを必要とする手段は、例えば、流量を計測する流量計等の計測手段が挙げられる。流量計等の計測手段は、流体の流速を正確に測定するため、流体の流れに脈流や渦等が存在しない整った流れである必要があるからである。よって、所望により、流量装置100をこのような計測手段を含んだ構成とすることが可能である。図1に示す整流装置100は、計測手段である流量計3を備えている。流路ブロック1には、流量計3の上流側における流路10の内壁11に段差部12が形成されており、整流器2はこの段差部12を取り付け位置14としている。
【0032】
流量計3は、オプショナルな構成である上記計測手段の例示であり、例えば、流れセンサ31、測定回路基板32、および回路素子33を備えている。流れセンサ31は、流路10の内壁11に取り付けられる、公知技術に基づき流体の速度を検出する検出手段である。測定回路基板32は、トランジスタや集積回路等の回路素子33が設けられており、流れセンサ31からの検出信号に基づき流体の流量を演算可能に構成されている。
【0033】
なお、整流対象とする流体としては、気体のみならず、液体であってもよい。気体としては、燃焼ガス、空気、窒素、アルゴン、炭酸等が挙げられ、液体としては、オイル、水やアルコール等が挙げられる。
【0034】
図2に本実施形態1におけるスペーサ20および整流体22の平面図を示す。図2(A)はスペーサ20の平面図であり、図2(B)は整流体22の平面図である。
図2(A)に示すように、スペーサ20は、流路10の内壁11に対向することになる外周面201および内周面203を有する枠状部材である。本実施形態では流路10の断面が円形形状を呈することから、スペーサ20は、平面視において、図2(A)に示すようなリング形状を有している。スペーサ20は、流路10の内壁11の内径より若干小さい外周径を備えることにより、流路10に挿入可能に構成されている。具体的には、スペーサ20の外周径は、製造工程における寸法誤差の範囲を考慮して設定する。例えば、スペーサ20の外周径が最も大きくなるような寸法誤差を生じたとしても流路10に挿入可能な程度の大きさに留める。また、スペーサ20の外周径が最も小さくなるような寸法誤差を生じたとしても、スペーサ20の外周面201と流路10の内壁11との間の摩擦によって、スペーサ20が流路10の内部で倒れることのない程度の小ささに留める。
【0035】
スペーサ20の内周径の径は、流体の流れうる流路径を規定する。スペーサ20の内周径は、段差部12が設けられていない流路10の内径とほぼ等しいことが好ましい。このような内径に設定しておけば、複数のスペーサ20の内周面203の連なりと流路10の内壁11との間に大きな段差が存在しなくなり、流路10を流れる流体の流れを乱さないからである。また、スペーサ20の厚み、すなわち軸方向の幅は、任意に設定可能である。外周面201の幅は、スペーサ20によって互いに隔てられる複数の整流体22の間のピッチを規定するようになっている。
【0036】
スペーサ20の外周面201には、オプショナルな構造として、後に説明する固定用流動体5(図10参照)を保持するための窪み部202が複数設けられている。図2(A)に示す例では、窪み部202が4つ設けられているが、その個数に制限はない。窪み部202の深さに制限は無く、固定用流動体5を暫定的に保持しうる形態であればよい。
【0037】
スペーサ20は、種々の加工方法により製造可能であるが、例えば、板金のプレス加工や樹脂成型により形成することができる。例えば、プレス加工の場合は、厚みが0.5mmの板材(代表的にはステンレス鋼)を、プレス金型を用いてプレス加工し、外径11mm、内径9mmのリング状のスペーサ20を製作可能である。
【0038】
図2(B)に示すように、整流体22は、微細流路が多数形成された整流機能を付与する整流手段である。整流体22としては、網目構造体やハニカム構造体が適用可能であり、本実施形態では、低コストで整流機能を付与しうる金網を適用している。金網の網目のピッチは、流体に対して整流作用を生じさせるように適宜調整されている。
【0039】
整流体22は、種々の加工方法により製造可能であるが、例えば、整流体22に網目構造体を適用する場合には、プレス加工で形成することができる。例えば、厚みが0.05〜0.2mmの金網を上述したスペーサ20の外周径と内周径との間の径を有するように円形に打ち抜いて、整流体22を形成することが可能である。また、必要に応じて、整流体22における金網の編み目の向きを識別するための切り込みが設けられていてもよい。このような識別用の切り込みは、整流体22における金網の編み目の向きが基準方向に対して直角であるか、または、45°傾斜しているか等を識別するためのマーカとして機能するものである。
図3に、スペーサ20と整流体22とを組み合わせた場合の平面図を示す。図3に示すように、整流体22は、スペーサ20と組み合わされることによって、一段の整流器を構成することになる。このようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを複数段、積層することによって、図1に示すような、本実施形態1の整流器2が構成される。すなわち、本実施形態1における整流器2は、図3に示すようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを複数段積層し、最後にスペーサ20を組み合わせて総ての整流体22を挟み込んだ構造体として、流路10の取り付け位置14に設置される。なお、図1に示される整流器2は、図3に示すようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを、I−I断面で切断した場合の様子を示している。
【0040】
なお、図3に示すように、整流体22の直径は、スペーサ20の外周面201に設けられた複数の窪み部202の底部(内周側面)を結んだ円の直径よりも大きく、スペーサ20の外周面201の直径よりも小さい寸法であることが好ましい。このような直径に形成された整流体22であれば、固定用流動体5が窪み部202に充填されてスペーサ20が流路10に固定される場合に窪み部202に突出した整流体22の端部にも固定用流動体5が接触する。よって、固定用流動体5の固化に伴って整流体22も固定用流動体5によって仮固定されることが期待できる。
【0041】
(取り付け方法)
次に図4〜図11を参照しながら、本実施形態1における整流器2の取り付け方法を説明する。なお、今後の流路10の軸方向断面図は、図3に示すII−II断面で整流器2を切断した場合の様子を示す。
【0042】
本実施形態1の整流器の取り付け方法では、以下の各工程を備える。
(1)ガイド部材13を配置する工程(図4)、
(2)スペーサ20を流路10に挿入する工程(図5)、
(3)整流体22を挿入する工程(図6)、
(4)上記工程(2)と工程(3)とを繰り返す工程(図7〜図9)、
(5)固定用流動体5を供給する工程(図10)、および、
(6)固定用流動体5を硬化させる工程(図11)。
【0043】
上記工程のうち、上記(1)工程はオプショナルな工程である。上記(4)において、上記(2)工程および上記(3)工程の繰り返しの回数は、整流器2の段数に応じて設定すればよい。上記(5)工程は、上記(2)工程を実施するたびに適用しても、上記(4)のように複数回の(2)工程を繰り返した後に適用してもよい。また上記(6)工程は固定用流動体の種類に応じて必要になる、オプショナルな工程である。
【0044】
<(1)ガイド部材13を配置する工程>
まず、必要に応じて、図4に例示するように、ガイド部材13を流路10に配置する。ガイド部材13は、スペーサ20を取り付け位置14まで誘導する誘導手段である。ガイド部材13は、流路10の取り付け位置14の最も奥(段差部12の段の位置)に一方の端部が当接するまで挿入された場合に、反対側の端部が流路10の開口部から突出する程度の長さであることが好ましい。またガイド部材13は、スペーサ20に設けられる窪み部202に対応した幅を有することが好ましい。ガイド部材13の材料には限定はない。ガイド部材13は、スペーサ20に設けられる窪み部202の数まで配置することが可能であるが、少なくとも1つ配置すればよい。当該実施形態では、スペーサ20に窪み部材202が4つ設けられているので、1〜4本のガイド部材13を設けることが可能である。当該実施形態では、スペーサ20の対向する一対の窪み部202を誘導可能なように、2つのガイド部材13を挿入する。ガイド部材13は、図4に示すように、延在方向を前記流路の軸方向(図4の白抜き矢印の方向)に流路10の内壁11に沿って挿入される。なお、取り付け位置14の段にガイド部材13の一端を仮固定可能な差込孔を設けてもよい。差込孔によりガイド部材13を安定的に仮配置できる。
【0045】
<(2)スペーサ20を流路10に挿入する工程>
次に、図5に示すように、スペーサ20を挿入して、流路10の取り付け位置14に仮置きする。取り付け位置14は、図1で説明したように、流量計3の上流側の段差部12に設けられている。挿入時、ガイド部材13にスペーサ20の窪み部202を当接させて、ガイド部材13に沿って滑らせるようにしてスペーサ20を流路10の内部に挿入する。図5に示すように、軸方向が鉛直になるように流路10を設置しておくとスペーサ20を挿入させ易い。
【0046】
なお、スペーサ20の挿入は、ガイド部材13を使用しないでも可能である。例えば整流ブロック1において、流路10の開口部から取り付け位置14までの距離が短く構成されているのであれば、流路10の開口部からスペーサ20を流路10内部に落としこんで配置してもよい。若干曲がったり内壁11に引っかかったりした場合には流路10に振動を与えれば正しい位置に配置される。また、複数のスペーサ20における窪み部202の位置がずれた場合には、流路10に棒状の部材を差し込んで、スペーサ20を回転させて窪み部202が連なるようにすればよい。さらに、挿入のための搬送手段を用いることも可能である。例えば、スペーサ20の内周面203を外周面201方向に押圧するような把持部材を使用することが可能である。挿入時には、このような把持部材を拡げてスペーサ20の内周面203を押圧した状態で把持部材を流路10に挿入し、取り付け位置14までスペーサ20を搬送する。解放時には、把持部材を閉じてスペーサ20の内周面203の押圧を解き、スペーサ20を取り付け位置14に仮置きして把持部材を引き抜く。
【0047】
<(3)整流体22を挿入する工程>
次に、図6に示すように、整流体22を流路10に挿入して、先に挿入したスペーサ20に組み合わせる。整流体22の挿入は、流路10の開口部から取り付け位置14までの距離が短い場合であれば、流路10の開口部から整流体22を流路10内部に落とし込めばよい。また、例えば整流体22の網目に差し込むことが可能な箒状体が先端部に設けられた搬送部材や、整流体22を磁力で仮接着する磁性体が先端部に設けられた搬送部材を使用することも可能である。なお、整流体22を単体で挿入する代わりに、整流体22をスペーサ20とからなる組をひとまとまりとして流路10に挿入してもよい。
【0048】
<(4)工程(2)と工程(3)とを繰り返す工程>
その後、図7に示すように、スペーサ20および整流体22からなる組を所望の段数になるまで繰り返し挿入する。具体的に、二段目以降のスペーサ20も、ガイド部材13に沿って、または、上記把持部材等を利用して一段目のスペーサ20の位置まで搬送される。整流体22についても同様に挿入される。これにより後段のスペーサ20および整流体22が配置される。それ以降のスペーサ20の挿入、整流体22の挿入は、上記工程と同様に実施すればよい。
【0049】
スペーサ20と整流体22とからなる組を所望の段数だけ積層したら、図8に示すように、最後の段の整流体22を挟み込むように最後のスペーサ20を挿入する。この工程により、図9に示すような整流器2としての構成が完成する。最後のスペーサ20を挿入したら、総てのガイド部材13を図9に示す白抜き矢印の方向に引き抜く。図9に示すように、本実施形態では、スペーサ20および整流体22からなる組を3段積層した整流器2を例示しているが、整流器2の段数に制限はない。
【0050】
<(5)固定用流動体5を供給する工程>
整流器2を構成するスペーサ20と整流体22とが配置されたら、図10に示すように、固定用流動体5を供給する。固定用流動体5は、例えば、ディスペンサ4のような供給手段により供給する。図10に示すように、ディスペンサ4の先端をスペーサ20の窪み部202に当接させ固定用流動体5を供給する。固定用流動体5は、ディスペンサ4の供給圧力により複数段のスペーサ20の窪み部202の並びに沿って充填されていく。
【0051】
ここで、固定用流動体5としては種々のものを適用可能である。供給時に適度な流動性を備えており、その後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサ20の移動を抑制するものであればよい。例えば、固定用流動体5として、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂等を適用可能である。熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂は、加熱処理または光照射処理により重合反応を生じ、硬化する樹脂であり、硬化後に熱を加えたり溶媒を供給したりしても、溶け出さない性質を有する。例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を使用可能である。また、熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化し冷えると硬化する性質を有する樹脂である。熱可塑性樹脂としては、スチロール樹脂(ポリスチレン)、塩化ビニール樹脂、 ポリプロピレン樹脂、 ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等を適用可能である。例えば、ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分とした有機溶剤を含まない固形の接着剤であり、取り扱いが容易であり、本発明の固定用流動体5として好ましい。ホットメルト接着剤は、加熱溶融して塗布し、冷却により固化し接着が完了する。また接着剤5として、反応性接着剤を使用してもよい。反応性接着剤としては、例えば、二液アクリル接着剤を用いることが可能である。
【0052】
<(6)固定用流動体5を硬化させる工程>
図11は、固定用流動体5として熱硬化性樹脂を用いた場合の固化工程を例示している。図11に示すように、固定用流動体5として熱硬化性樹脂を供給した場合、流路ブロック1の外周から整流器2の取り付け位置14に熱6を付与して固定用流動体5を硬化させる。流路ブロック1の材質が金属である場合には、熱伝導性が高いため、流路ブロック1の外周からの熱が効率よく伝導し、固定用流動体5を確実に硬化させることが可能である。
【0053】
なお、固定用流動体5として光硬化性樹脂を用いた場合には、流路ブロック1が透明材料、例えばガラスや透明な樹脂で形成されていることが好ましい。流路ブロック1の外側から光を照射して固定用流動体5を硬化させるためである。
【0054】
また、固定用流動体5として熱可塑性樹脂を用いた場合は、当該硬化工程は特に必要がない。固定用流動体5を供給した後に冷却されるに従って固定用流動体5が自ら硬化していくからである。但し、流路ブロック1の外側から冷却するという積極的な工程を付加することで、固定用流動体5の硬化を促進し、また、硬化を確実にすることが可能である。
【0055】
なお、上記工程では、流路10の取り付け位置14に整流器2を配置してから固定用流動体5を付与していたが、これに限らない。例えば、図12の変形例に示すように、スペーサ20を一段設置するたびに、ディスペンサ4により固定用流動体5を適量、窪み部202の付近に供給するようにしてもよい。このような工程では、速乾性の接着剤を用いることが好ましい。速乾性の接着剤を用いれば、スペーサ20を一段設置するたびにスペーサ20が強固に固定される。速乾性の接着剤としては、例えば、アルキル-α-シアノアクリレートを主成分とする瞬間接着剤を利用可能である。
【0056】
上記したように、本実施形態1によれば、図1に示すように、スペーサ20と整流体22との積層構造体である整流器2を流路10の内壁11に確実に固定することが可能である。例えば、図1に示すように、スペーサ20が4段、整流体22が3段からなる整流器2は、流路10の軸方向の幅が2.0mm(0.5mm×4)のブロック体として構成される。
【0057】
なお、上記実施形態1では、スペーサ20一段について整流体22を一段組み合わせていたが、スペーサ20複数段について整流体22を一段組み合わせてもよい。整流体22の間に複数のスペーサ20を介在させて、整流体22の間の距離を調整することが可能である。整流器2の整流機能には、整流体22を構成する網目の構造の他に、複数段備える整流体22の間の距離も影響する。そのため、最適な整流機能を得るために必要な段数だけ、整流体22一段に対して介在させるスペーサ20の段数を変更することが可能である。
【0058】
<実施形態1における利点>
以上、本実施形態1によれば、スペーサ20と整流体22とを個別に挿入して固定用流動体5を供給することにより、整流器2を流路10に確実に取り付けることが可能である。
【0059】
特に固定手段として固定用流動体5を用いているので、スペーサ20の加工精度が低く、流路10の内壁11とスペーサ20の外周面201との間隙が大きかったとしても、固定用流動体5がスペーサ20を固定する。これにより、スペーサ20が固定されずに、流体の流れ次第で整流器2が振動したり、スペーサ20が曲がって固定されたり、する不都合を悉く回避可能である。
【0060】
また上記実施形態1によれば、固定用流動体5に対して熱または光を加える工程を備えるので、固定用流動体5に熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いた場合にスペーサ20を確実に固定することが可能である。
【0061】
また上記実施形態1によれば、固定用流動体5に熱可塑性固定用流動体を用いた場合に、加熱した固定用流動体5をスペーサ20に供給してから流路10に挿入しさえすれば、放熱によって固定用流動体5が冷却されることにより確実にスペーサ20を固定することが可能である。
【0062】
また上記実施形態1によれば、整流体22の間に複数のスペーサ20を配置することが可能である。よって、整流体22の間の距離を介在させるスペーサ20の段数で任意に調整して、最適な形態の整流器を提供することが可能である。
【0063】
また上記実施形態1によれば、整流器2の最両端にはスペーサ20が配置されるので、スペーサ20間に介装される整流体22を確実に押さえることができる。
【0064】
上記実施形態1によれば、スペーサ20の外周面201に窪み部202が設けられているので、窪み部202に十分な量の固定用流動体5を充填させてスペーサ20を確実に固定することが可能である。
【0065】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、本発明の第1の態様に係る整流装置100を本発明の第3の態様に係る整流器の取り付け方法で製造する場合に関する。
本実施形態2における取り付け後の整流器2の形態は、上記実施形態1において図1を参照しながら説明したとおりであるため、その説明を省略する。
【0066】
次に図13〜図17を参照しながら、本実施形態2における整流器2の取り付け方法を説明する。本実施形態2の整流器の取り付け方法では、以下の各工程を備える。
(1)整流器2を形成する工程(図13)、
(2)整流器2を仮押さえする工程(図14)、
(3)整流器2に固定用流動体5を供給する工程(図15)、
(4)整流器2を流路10に挿入する工程(図16)、および、
(6)固定用流動体5を硬化させる工程(図17)。
【0067】
上記工程のうち、上記(2)工程はオプショナルな工程である。上記(3)工程は、上記(1)工程で形成した整流器2を流路10に挿入する前に実施しても、流路10に挿入した後に実施してもよい。また上記(6)工程は固定用流動体の種類に応じて必要になる、オプショナルな工程である。
【0068】
<(1)整流器2を形成する工程>
まず図13に示すように、スペーサ20と整流体22とを組み合わせて整流器2を形成する。整流体22とそれに隣接する整流体22との間には、一段または複数段のスペーサ20を介在させる。
【0069】
<(2)整流器2を仮押さえする工程(図14)>
スペーサ20と整流体22とが組み合わせることにより整流器2としての組み合わせが形成されたら、固定用流動体5を供給する前に全体を仮押さえする。例えば、図14に示すように、一対の押さえ部材210で整流器2の外周面を狭持する。仮押さえにより、次工程で、スペーサ20が動いたり、整流体22がずれたりしないようになる。押さえ部材210は、固定用流動体5を供給するための窪み部202の連なりが露出するような位置から整流器2を押さえる必要がある。本実施形態2では、スペーサ20の外周面201に4つ設けられた窪み部202のうち、対向する2つに固定用流動体5を供給することとする。このため、図14では、固定用流動体5を供給する予定の窪み部202とは異なる窪み部202を中心とした所定の範囲の外周面201を押さえ部材210で狭持している。但し、整流器2の組み合わせにずれが生じないなら、このような押さえ部材210を用いなくてもよい。
【0070】
<(3)整流器2に固定用流動体5を供給する工程>
次いで図15に示すように、整流器2を構成するスペーサ20の窪み部202に固定用流動体5を供給する。整流器2の外周面において、窪み部202が一つの溝となるように連なる。この連なった窪み部202にディスペンサ4から固定用流動体5を塗布する。固定用流動体5の種類については、上記実施形態1で説明したとおりであるため、その説明を省略する。
【0071】
<(4)整流器2を挿入する工程>
次いで、図16に示すように、固定用流動体5を塗布した整流器2を整流ブロック1に設けられた流路10の取り付け位置14まで挿入する。このとき、流路10の内壁11には、上記実施形態1と同様に段差部12が設けてあるので、段差部12の段に当接するまで整流器2を挿入すればよい。ここで、本実施形態2では、整流器2を構成してから整流ブロック1の流路10に挿入するため、ガイド部材等を用いずに整流器2を挿入し設置可能である。例えば、押さえ部材210で仮押さえをしながら流路10の開口部まで整流器2を搬送し、押さえ部材210の仮押さえを開放して整流器2を流路10の内部に挿入させることが可能である。
【0072】
<(6)固定用流動体5を硬化させる工程>
固定用流動体5に熱硬化性樹脂を用いた場合には、固定用流動体5に熱を付与して固化させる。例えば、図17に示すように、整流ブロック1の外周から整流器2の取り付け位置14に熱6を付与して固定用流動体5を硬化させる。その詳細については、上記実施形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0073】
なお、上記工程では、固定用流動体5を塗布してから整流器2を流路10に挿入していたが、整流器2を流路10に先に挿入してから、固定用流動体5を供給するようにしてもよい。この場合、例えば、上記実施形態1において図10を参照しながら説明したように、取り付け位置14に仮固定された整流器2に対してディスペンサ4から一定の供給圧力を加えながら固定用流動体5を供給することになる。
【0074】
以上、実施形態2によれば、固定用流動体5により整流器2を固定するために、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0075】
特に実施形態2によれば、スペーサ20と整流体22とにより整流器2を形成した後に整流器2を流路10に挿入するようにしたので、整流器2の挿入が容易であり、短時間に取り付け位置14へ仮固定することが可能である。
【0076】
(その他の変形例)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用することが可能である。例えば、上記実施形態の説明では、段差部12が形成された流路10の内壁11に整流器2を設置する場合を例示したが、これに限られない。例えば、流路10に段差部12を有しない整流ブロック1に整流器2を設置する場合でも、本発明を適用して固定用流動体5による固定が可能である。
【0077】
また、上記実施形態において示した、スペーサ20の外周径や整流体22の網目の粗さや線径についての具体的寸法は、例示に過ぎず、整流対象とする流体の特徴に応じて適宜設定すればよい。同様に、図面に示したスペーサ20や整流体22の形状は例示にすぎない。
【0078】
また、上記実施形態では、流路10の断面形状が円形である場合を例示したがこれに限られない。例えば、断面形状は、楕円形であったり矩形であったり多角形であったりしてもよい。但し、スペーサ20や整流体22の平面形状を、これら流路10の断面形状に対応させて変形させる必要がある。
【0079】
ここで、流路10およびスペーサ20を矩形状に形成した場合、スペーサ20の角部の曲率を大きく形成すれば、流路10と整流体22との間に固定用流動体5を流し込む間隙を形成することができる。このようなスペーサ20は、外周面201に窪み部202を設けなくても、スペーサ20を流路10に好適に仮固定することができる。
【0080】
また、上記実施形態における整流体22は、整流手段の例示にすぎず、他の構成を提供してもよい。例えば、板金をパンチングして多孔構造を形成したパンチングメタル構造、プレートを所定のマスクを介してエッチングすることにより多孔構造を形成したエッチングプレートを利用することができる。また、金属粒子の焼結体、スポンジ、繊維状の構造体、ハニカム構造体を整流体として用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の整流器の取り付け方法は、流路の一部に整流構造を設ける必要のある場合に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…流路ブロック、2…整流器、3…流量計、4…ディスペンサ、5…固定用流動体(固定材)、6…熱、7…グラインダ、10…流路、11…内壁、12…段差部、13…ガイド部材、14…取り付け位置、20…スペーサ、22…整流体、31…センサ、32…測定回路基板、33…回路素子、71…表面、201…外周面、202…窪み部、203…内周面、100…整流装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路において流量を検出する流れセンサの上流側に設置して流体を整流する整流器を備えた整流装置および整流器の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計は、流体の流路に設置された流れセンサにより流体の流量を計測する装置である。正確な流量を測定するためには、流れセンサの上流において気体の偏流や乱れを整流することが重要である。このため、流路において流れセンサの上流に整流器を設けることが考案されてきた。
【0003】
例えば、特開2005−24080号公報には、両面に突起部と窪み部との対を形成したリンク状のスペーサと整流体である金網とを交互に積層して構成される整流器が開示されている(特許文献1)。また、特開2004−093159号公報には、流路に段差を設け、円筒ねじを用いて整流器を段差に押しつけて固定する考案が提案されていた(特許文献2)。これらの整流器を用いれば、流体が整流体である金網で整流されるので、流量計が正確な流量を測定することができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24080号公報
【特許文献2】特開2004−093159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2005−24080号公報に記載の整流器では、個々のスペーサが確実に組み付けられるようにするため、スペーサの突起部および窪み部を高い精度で形成しなければなかった。このため加工に係るコストの上昇が避けられなかった。
【0006】
また、上記特開2004−093159号公報に記載の整流器では、整流器の支持力がばねの付勢力に依存し、寸法公差がばらつくと付勢力、すなわち整流器の支持力がばらつくことになる。このため、支持力がばらつかないようにスペーサや流路の加工精度を上げておく必要がある。また、ばねを利用するためには流路にばねの付勢力を受けるフランジが必要であり、そのフランジの強度を上げるように加工しなければならなかった。これらのことは、整流器の製品コストを確実に上昇させることになっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、高精度の加工が不要な整流器を備えた整流装置および整流器の取り付け方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様である整流装置は、流体が流通する流路が設けられた流路ブロックと、流路に設けられ、流体を整流するための整流器と、を備え、整流器は、流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと、前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体と、が組み合わされて構成されており、少なくとも前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間は、固定材で固定されている。
【0009】
上記第1の態様の発明によれば、スペーサと整流体とで構成された整流器が流路の内壁に固定材によって固定されている。ここで、個々のスペーサを流路に挿入可能とするためには、スペーサの外周径を流路の内周径より若干小さくしておく必要がある。しかし、スペーサの加工精度が低いと、流路の内壁とスペーサの外周面との間隙が大きくなりすぎる。間隙が大きすぎると、スペーサが固定されずに固定材の偏在により振動したり、曲がって固定されたりしてしまう。また、個々のスペーサがバラバラにならないようにするには、各スペーサに突起部および窪み部を設けて互いを組み付ける必要があるが、このような加工にも高い精度が必要である。この点、かかる構成によれば、流路に挿入したスペーサを固定材が固定するので、スペーサの加工精度が高くなくても、個々のスペーサが移動したり振動したりする不都合を悉く防止可能である。
【0010】
なお、「固定材」とは、例えば、固化前には適度な流動性を有する固定用流動体として存在し、整流器を構成するスペーサの外周面と流路の内壁との間に供給されるもので、供給後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサの移動を抑制する機能を奏するものをいう。
【0011】
また、本発明の上記整流装置は、流路に流路センサを設けた流量計を備えていてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様である整流器の取付方法は、以下の工程を備えることを特徴とする、流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法である。
(a)流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサを流路の取り付け位置に挿入する工程、
(b)スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体を流路に挿入する工程、
(c)スペーサの外周面と流路の内壁との間に固定用流動体を供給する工程。
【0013】
上記第2の態様の発明によれば、スペーサと整流体とが個別に流路に挿入され、固定用流動体により流路の内壁に固定される。固定用流動体とは、供給時に適度な流動性を備え、その後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサの移動を抑制する機能を奏するものをいう。ここで、個々のスペーサを流路に挿入可能とするためには、スペーサの外周径を流路の内周径より若干小さくしておく必要がある。しかし、スペーサの加工精度が低いと、流路の内壁とスペーサの外周面との間隙が大きくなりすぎる。間隙が大きすぎると、スペーサが固定されずに固定用流動体の偏在により振動したり、曲がって固定されたりしてしまう。また、個々のスペーサがバラバラにならないようにするには、各スペーサに突起部および窪み部を設けて互いを組み付ける必要があるが、このような加工にも高い精度が必要である。この点、かかる構成によれば、流路に挿入したスペーサを固定用流動体にて固定するので、スペーサの加工精度が高くなくても、個々のスペーサが移動したり振動したりする不都合を悉く防止可能である。
【0014】
また本発明の第3の態様である整流器の取付方法は、以下の工程を備えることを特徴とする、流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法である。
(a)流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサとスペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体とを重ね合わせて整流器を形成する工程、
(b)整流器における各スペーサの外周面に固定用流動体を供給する工程、
(c)固定用流動体が供給された整流器を流路の取り付け位置に挿入する工程。
【0015】
上記第3の態様の発明によれば、スペーサと整流体とにより整流器を形成した後に外周面に固定用流動体を供給してから整流器が流路に挿入され、流路の内壁に固定される。ここで、上記第2の態様と同じく、スペーサの加工精度が低いと、整流器が移動したり振動したりする。この点、かかる構成によれば、固定用流動体が供給された整流器を流路に挿入して固定するので、加工精度の悪さに基づく移動や振動といった不都合を悉く防止可能である。特に、第3の態様の発明によれば、整流器を形成した後に流路に挿入するため、挿入作業が容易に行えるという利点を有する。
【0016】
本発明は、所望により、以下のような態様を適用することが可能である。
1)上記第1の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられていてもよい。かかる構成によれば、少なくとも窪み部が固定材が充填されるので、スペーサおよび整流器を固定することが可能である。
【0017】
2)上記第2の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられており、固定用流動体を供給する工程では、この窪み部に固定用流動体を供給することは好ましい。かかる工程によれば、少なくとも窪み部に固定用流動体が充填されるので、スペーサおよび整流器を固定することが可能である。
【0018】
3)上記第3の態様の発明において、スペーサの外周面に、窪み部が少なくとも1つ設けられており、前記スペーサと整流体とを重ね合わせる工程では、複数の前記スペーサにおける前記窪み部が連なる向きで前記スペーサを重ね合わせ、前記固定用流動体を供給する工程では、連なった複数のスペーサの窪み部に固定用流動体を供給することは好ましい。かかる工程によれば、連なった窪み部に固定用流動体を供給するので必要最小限の流動体の分量で済む。また、挿入する際にも固定用流動体が窪み部に保持され、流路の内壁に付着することを防止できる。
【0019】
4)上記第1の態様の発明において、固定材を、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂のいずれかとすることができる。熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いる場合には加熱処理または光照射処理により、また熱可塑性樹脂を用いる場合には放熱処理によって、それぞれ流動性を有する固定材を硬化させてスペーサまたは整流器を確実に流路の内壁に固定することが可能である。
【0020】
5)上記第2の態様または第3の態様の発明において、固定用流動体を熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂とし、スペーサまたは整流器を挿入する工程の後に、さらに、固定用流動体に対して熱または光を加える工程を備えることは好ましい。かかる工程によれば、加熱処理または光照射処理により固定用流動体を硬化させてスペーサまたは整流器を確実に流路の内壁に固定することが可能である。
【0021】
6)上記第2の態様または第3の態様の発明において、固定用流動体を熱可塑性樹脂としてもよい。かかる工程によれば、固定用流動体をスペーサまたは整流器に供給してから流路の所定位置に挿入し放熱によって固定用流動体が冷却されることにより確実にスペーサまたは整流器を固定することが可能である。
【0022】
7)整流体の間に複数のスペーサが配置されるようにスペーサおよび整流体を挿入したり、整流器を構成したりしてもよい。本発明の整流器の取り付け方法によれば、スペーサの数を適宜調整して、最適な形態の整流器を提供することが可能である。本発明による整流装置は、少なくとも整流器の両端にはスペーサが配置されるので、整流体を確実に押さえることができる。
【0023】
なお、上記第2の態様の発明において、スペーサを挿入するたびに固定用流動体を供給するか、一部のまたは総てのスペーサを流路に挿入してから固定用流動体を供給するかは任意である。また、上記第3の態様の発明において、整流器を流路に挿入してからさらに固定用流動体を供給することを妨げない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スペーサに高精度の加工を必要とせず、コストを大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態における整流器が取り付けられた整流装置の構造を説明する断面図。
【図2】実施形態1におけるスペーサおよび整流体の平面図。(A)はスペーサの平面図、(B)は整流体の平面図。
【図3】スペーサと整流体とが組み合わされた様子を示す平面図。
【図4】実施形態1におけるガイド部材を配置する工程の例を示す断面図。
【図5】実施形態1におけるスペーサを挿入する工程を説明する断面図。
【図6】実施形態1における整流体を挿入する工程を説明する断面図。
【図7】実施形態1におけるスペーサおよび整流体からなる組を積層する工程を説明する断面図。
【図8】実施形態1における最後のスペーサを挿入する工程を説明する断面図。
【図9】実施形態1における整流器の構成が整った様子を説明する断面図。
【図10】実施形態1における固定用流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図11】実施形態1における固定用流動体を固化させる工程を説明する断面図。
【図12】実施形態1の変形例であり、スペーサを挿入する毎に固定用流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図13】実施形態2における整流器を形成する工程を説明する斜視図。
【図14】実施形態2における整流器を仮押さえする工程を説明する斜視図。
【図15】実施形態2における固定量流動体を供給する工程を説明する断面図。
【図16】実施形態2における整流器を挿入する工程を説明する断面図。
【図17】実施形態2における固定用流動体を固化させる工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、本発明の第1の態様に係る整流装置を第2の態様に係る整流器の取り付け方法で製造する場合に関する。
図1に、本実施形態における整流装置の構造を説明する断面図を示す。図1は、整流装置100の軸方向断面図である。
【0028】
(整流装置の構造)
図1に示すように、本実施形態における整流装置100は、流路ブロック1に整流器2が取り付けられて構成されている。さらに整流装置100には、オプショナルな構成である流量計3が取り付けられている。
【0029】
流路ブロック1には、流体が流通する流路10を提供する流路提供部材である。流路ブロック1は、流路10を形成する内壁11に、後に説明するスペーサ20を挿入して所定の位置に設置可能な形状を備えていればよく、その構造に限定はない。例えば、流路ブロック1の断面の外形形状は、矩形形状であっても円形形状であっても、その他の形状であってもよい。また流路ブロック1の内径形状、すなわち流路10の断面形状は、円形であっても楕円形であっても、矩形その他の多角形形状であってもよい。流路10の内壁11には、整流器2の取り付け位置14を規定することになる段差部12が設けられている。段差部12の内径は後述する整流器2のスペーサ20の外周径より若干大きく設定されている。
【0030】
整流器2は、流路10に設けられ、流体を整流するための整流手段であり、流路10の取り付け位置14に設置される。整流器2は、スペーサ20と整流体22とが組み合わされて構成されている。図2に示すように、スペーサ20は、流路10の内壁に対向する外周面201を有する枠状部材である。整流体22は、スペーサ20の内周を少なくとも覆う形状を有する整流手段である。後述するように、少なくともスペーサ20の外周面202と流路10の内壁との間は、固定用流動体が固化した固定材で固定されている。
【0031】
図1に示すように、整流器2を設ける流路10の内壁11における取り付け位置14は、典型的には、整った流体の流れを必要とする手段の上流となる。整った流体の流れを必要とする手段は、例えば、流量を計測する流量計等の計測手段が挙げられる。流量計等の計測手段は、流体の流速を正確に測定するため、流体の流れに脈流や渦等が存在しない整った流れである必要があるからである。よって、所望により、流量装置100をこのような計測手段を含んだ構成とすることが可能である。図1に示す整流装置100は、計測手段である流量計3を備えている。流路ブロック1には、流量計3の上流側における流路10の内壁11に段差部12が形成されており、整流器2はこの段差部12を取り付け位置14としている。
【0032】
流量計3は、オプショナルな構成である上記計測手段の例示であり、例えば、流れセンサ31、測定回路基板32、および回路素子33を備えている。流れセンサ31は、流路10の内壁11に取り付けられる、公知技術に基づき流体の速度を検出する検出手段である。測定回路基板32は、トランジスタや集積回路等の回路素子33が設けられており、流れセンサ31からの検出信号に基づき流体の流量を演算可能に構成されている。
【0033】
なお、整流対象とする流体としては、気体のみならず、液体であってもよい。気体としては、燃焼ガス、空気、窒素、アルゴン、炭酸等が挙げられ、液体としては、オイル、水やアルコール等が挙げられる。
【0034】
図2に本実施形態1におけるスペーサ20および整流体22の平面図を示す。図2(A)はスペーサ20の平面図であり、図2(B)は整流体22の平面図である。
図2(A)に示すように、スペーサ20は、流路10の内壁11に対向することになる外周面201および内周面203を有する枠状部材である。本実施形態では流路10の断面が円形形状を呈することから、スペーサ20は、平面視において、図2(A)に示すようなリング形状を有している。スペーサ20は、流路10の内壁11の内径より若干小さい外周径を備えることにより、流路10に挿入可能に構成されている。具体的には、スペーサ20の外周径は、製造工程における寸法誤差の範囲を考慮して設定する。例えば、スペーサ20の外周径が最も大きくなるような寸法誤差を生じたとしても流路10に挿入可能な程度の大きさに留める。また、スペーサ20の外周径が最も小さくなるような寸法誤差を生じたとしても、スペーサ20の外周面201と流路10の内壁11との間の摩擦によって、スペーサ20が流路10の内部で倒れることのない程度の小ささに留める。
【0035】
スペーサ20の内周径の径は、流体の流れうる流路径を規定する。スペーサ20の内周径は、段差部12が設けられていない流路10の内径とほぼ等しいことが好ましい。このような内径に設定しておけば、複数のスペーサ20の内周面203の連なりと流路10の内壁11との間に大きな段差が存在しなくなり、流路10を流れる流体の流れを乱さないからである。また、スペーサ20の厚み、すなわち軸方向の幅は、任意に設定可能である。外周面201の幅は、スペーサ20によって互いに隔てられる複数の整流体22の間のピッチを規定するようになっている。
【0036】
スペーサ20の外周面201には、オプショナルな構造として、後に説明する固定用流動体5(図10参照)を保持するための窪み部202が複数設けられている。図2(A)に示す例では、窪み部202が4つ設けられているが、その個数に制限はない。窪み部202の深さに制限は無く、固定用流動体5を暫定的に保持しうる形態であればよい。
【0037】
スペーサ20は、種々の加工方法により製造可能であるが、例えば、板金のプレス加工や樹脂成型により形成することができる。例えば、プレス加工の場合は、厚みが0.5mmの板材(代表的にはステンレス鋼)を、プレス金型を用いてプレス加工し、外径11mm、内径9mmのリング状のスペーサ20を製作可能である。
【0038】
図2(B)に示すように、整流体22は、微細流路が多数形成された整流機能を付与する整流手段である。整流体22としては、網目構造体やハニカム構造体が適用可能であり、本実施形態では、低コストで整流機能を付与しうる金網を適用している。金網の網目のピッチは、流体に対して整流作用を生じさせるように適宜調整されている。
【0039】
整流体22は、種々の加工方法により製造可能であるが、例えば、整流体22に網目構造体を適用する場合には、プレス加工で形成することができる。例えば、厚みが0.05〜0.2mmの金網を上述したスペーサ20の外周径と内周径との間の径を有するように円形に打ち抜いて、整流体22を形成することが可能である。また、必要に応じて、整流体22における金網の編み目の向きを識別するための切り込みが設けられていてもよい。このような識別用の切り込みは、整流体22における金網の編み目の向きが基準方向に対して直角であるか、または、45°傾斜しているか等を識別するためのマーカとして機能するものである。
図3に、スペーサ20と整流体22とを組み合わせた場合の平面図を示す。図3に示すように、整流体22は、スペーサ20と組み合わされることによって、一段の整流器を構成することになる。このようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを複数段、積層することによって、図1に示すような、本実施形態1の整流器2が構成される。すなわち、本実施形態1における整流器2は、図3に示すようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを複数段積層し、最後にスペーサ20を組み合わせて総ての整流体22を挟み込んだ構造体として、流路10の取り付け位置14に設置される。なお、図1に示される整流器2は、図3に示すようなスペーサ20と整流体22との組み合わせを、I−I断面で切断した場合の様子を示している。
【0040】
なお、図3に示すように、整流体22の直径は、スペーサ20の外周面201に設けられた複数の窪み部202の底部(内周側面)を結んだ円の直径よりも大きく、スペーサ20の外周面201の直径よりも小さい寸法であることが好ましい。このような直径に形成された整流体22であれば、固定用流動体5が窪み部202に充填されてスペーサ20が流路10に固定される場合に窪み部202に突出した整流体22の端部にも固定用流動体5が接触する。よって、固定用流動体5の固化に伴って整流体22も固定用流動体5によって仮固定されることが期待できる。
【0041】
(取り付け方法)
次に図4〜図11を参照しながら、本実施形態1における整流器2の取り付け方法を説明する。なお、今後の流路10の軸方向断面図は、図3に示すII−II断面で整流器2を切断した場合の様子を示す。
【0042】
本実施形態1の整流器の取り付け方法では、以下の各工程を備える。
(1)ガイド部材13を配置する工程(図4)、
(2)スペーサ20を流路10に挿入する工程(図5)、
(3)整流体22を挿入する工程(図6)、
(4)上記工程(2)と工程(3)とを繰り返す工程(図7〜図9)、
(5)固定用流動体5を供給する工程(図10)、および、
(6)固定用流動体5を硬化させる工程(図11)。
【0043】
上記工程のうち、上記(1)工程はオプショナルな工程である。上記(4)において、上記(2)工程および上記(3)工程の繰り返しの回数は、整流器2の段数に応じて設定すればよい。上記(5)工程は、上記(2)工程を実施するたびに適用しても、上記(4)のように複数回の(2)工程を繰り返した後に適用してもよい。また上記(6)工程は固定用流動体の種類に応じて必要になる、オプショナルな工程である。
【0044】
<(1)ガイド部材13を配置する工程>
まず、必要に応じて、図4に例示するように、ガイド部材13を流路10に配置する。ガイド部材13は、スペーサ20を取り付け位置14まで誘導する誘導手段である。ガイド部材13は、流路10の取り付け位置14の最も奥(段差部12の段の位置)に一方の端部が当接するまで挿入された場合に、反対側の端部が流路10の開口部から突出する程度の長さであることが好ましい。またガイド部材13は、スペーサ20に設けられる窪み部202に対応した幅を有することが好ましい。ガイド部材13の材料には限定はない。ガイド部材13は、スペーサ20に設けられる窪み部202の数まで配置することが可能であるが、少なくとも1つ配置すればよい。当該実施形態では、スペーサ20に窪み部材202が4つ設けられているので、1〜4本のガイド部材13を設けることが可能である。当該実施形態では、スペーサ20の対向する一対の窪み部202を誘導可能なように、2つのガイド部材13を挿入する。ガイド部材13は、図4に示すように、延在方向を前記流路の軸方向(図4の白抜き矢印の方向)に流路10の内壁11に沿って挿入される。なお、取り付け位置14の段にガイド部材13の一端を仮固定可能な差込孔を設けてもよい。差込孔によりガイド部材13を安定的に仮配置できる。
【0045】
<(2)スペーサ20を流路10に挿入する工程>
次に、図5に示すように、スペーサ20を挿入して、流路10の取り付け位置14に仮置きする。取り付け位置14は、図1で説明したように、流量計3の上流側の段差部12に設けられている。挿入時、ガイド部材13にスペーサ20の窪み部202を当接させて、ガイド部材13に沿って滑らせるようにしてスペーサ20を流路10の内部に挿入する。図5に示すように、軸方向が鉛直になるように流路10を設置しておくとスペーサ20を挿入させ易い。
【0046】
なお、スペーサ20の挿入は、ガイド部材13を使用しないでも可能である。例えば整流ブロック1において、流路10の開口部から取り付け位置14までの距離が短く構成されているのであれば、流路10の開口部からスペーサ20を流路10内部に落としこんで配置してもよい。若干曲がったり内壁11に引っかかったりした場合には流路10に振動を与えれば正しい位置に配置される。また、複数のスペーサ20における窪み部202の位置がずれた場合には、流路10に棒状の部材を差し込んで、スペーサ20を回転させて窪み部202が連なるようにすればよい。さらに、挿入のための搬送手段を用いることも可能である。例えば、スペーサ20の内周面203を外周面201方向に押圧するような把持部材を使用することが可能である。挿入時には、このような把持部材を拡げてスペーサ20の内周面203を押圧した状態で把持部材を流路10に挿入し、取り付け位置14までスペーサ20を搬送する。解放時には、把持部材を閉じてスペーサ20の内周面203の押圧を解き、スペーサ20を取り付け位置14に仮置きして把持部材を引き抜く。
【0047】
<(3)整流体22を挿入する工程>
次に、図6に示すように、整流体22を流路10に挿入して、先に挿入したスペーサ20に組み合わせる。整流体22の挿入は、流路10の開口部から取り付け位置14までの距離が短い場合であれば、流路10の開口部から整流体22を流路10内部に落とし込めばよい。また、例えば整流体22の網目に差し込むことが可能な箒状体が先端部に設けられた搬送部材や、整流体22を磁力で仮接着する磁性体が先端部に設けられた搬送部材を使用することも可能である。なお、整流体22を単体で挿入する代わりに、整流体22をスペーサ20とからなる組をひとまとまりとして流路10に挿入してもよい。
【0048】
<(4)工程(2)と工程(3)とを繰り返す工程>
その後、図7に示すように、スペーサ20および整流体22からなる組を所望の段数になるまで繰り返し挿入する。具体的に、二段目以降のスペーサ20も、ガイド部材13に沿って、または、上記把持部材等を利用して一段目のスペーサ20の位置まで搬送される。整流体22についても同様に挿入される。これにより後段のスペーサ20および整流体22が配置される。それ以降のスペーサ20の挿入、整流体22の挿入は、上記工程と同様に実施すればよい。
【0049】
スペーサ20と整流体22とからなる組を所望の段数だけ積層したら、図8に示すように、最後の段の整流体22を挟み込むように最後のスペーサ20を挿入する。この工程により、図9に示すような整流器2としての構成が完成する。最後のスペーサ20を挿入したら、総てのガイド部材13を図9に示す白抜き矢印の方向に引き抜く。図9に示すように、本実施形態では、スペーサ20および整流体22からなる組を3段積層した整流器2を例示しているが、整流器2の段数に制限はない。
【0050】
<(5)固定用流動体5を供給する工程>
整流器2を構成するスペーサ20と整流体22とが配置されたら、図10に示すように、固定用流動体5を供給する。固定用流動体5は、例えば、ディスペンサ4のような供給手段により供給する。図10に示すように、ディスペンサ4の先端をスペーサ20の窪み部202に当接させ固定用流動体5を供給する。固定用流動体5は、ディスペンサ4の供給圧力により複数段のスペーサ20の窪み部202の並びに沿って充填されていく。
【0051】
ここで、固定用流動体5としては種々のものを適用可能である。供給時に適度な流動性を備えており、その後に固化し、または、固化せずとも粘度が上昇し、スペーサ20の移動を抑制するものであればよい。例えば、固定用流動体5として、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂等を適用可能である。熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂は、加熱処理または光照射処理により重合反応を生じ、硬化する樹脂であり、硬化後に熱を加えたり溶媒を供給したりしても、溶け出さない性質を有する。例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を使用可能である。また、熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化し冷えると硬化する性質を有する樹脂である。熱可塑性樹脂としては、スチロール樹脂(ポリスチレン)、塩化ビニール樹脂、 ポリプロピレン樹脂、 ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等を適用可能である。例えば、ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分とした有機溶剤を含まない固形の接着剤であり、取り扱いが容易であり、本発明の固定用流動体5として好ましい。ホットメルト接着剤は、加熱溶融して塗布し、冷却により固化し接着が完了する。また接着剤5として、反応性接着剤を使用してもよい。反応性接着剤としては、例えば、二液アクリル接着剤を用いることが可能である。
【0052】
<(6)固定用流動体5を硬化させる工程>
図11は、固定用流動体5として熱硬化性樹脂を用いた場合の固化工程を例示している。図11に示すように、固定用流動体5として熱硬化性樹脂を供給した場合、流路ブロック1の外周から整流器2の取り付け位置14に熱6を付与して固定用流動体5を硬化させる。流路ブロック1の材質が金属である場合には、熱伝導性が高いため、流路ブロック1の外周からの熱が効率よく伝導し、固定用流動体5を確実に硬化させることが可能である。
【0053】
なお、固定用流動体5として光硬化性樹脂を用いた場合には、流路ブロック1が透明材料、例えばガラスや透明な樹脂で形成されていることが好ましい。流路ブロック1の外側から光を照射して固定用流動体5を硬化させるためである。
【0054】
また、固定用流動体5として熱可塑性樹脂を用いた場合は、当該硬化工程は特に必要がない。固定用流動体5を供給した後に冷却されるに従って固定用流動体5が自ら硬化していくからである。但し、流路ブロック1の外側から冷却するという積極的な工程を付加することで、固定用流動体5の硬化を促進し、また、硬化を確実にすることが可能である。
【0055】
なお、上記工程では、流路10の取り付け位置14に整流器2を配置してから固定用流動体5を付与していたが、これに限らない。例えば、図12の変形例に示すように、スペーサ20を一段設置するたびに、ディスペンサ4により固定用流動体5を適量、窪み部202の付近に供給するようにしてもよい。このような工程では、速乾性の接着剤を用いることが好ましい。速乾性の接着剤を用いれば、スペーサ20を一段設置するたびにスペーサ20が強固に固定される。速乾性の接着剤としては、例えば、アルキル-α-シアノアクリレートを主成分とする瞬間接着剤を利用可能である。
【0056】
上記したように、本実施形態1によれば、図1に示すように、スペーサ20と整流体22との積層構造体である整流器2を流路10の内壁11に確実に固定することが可能である。例えば、図1に示すように、スペーサ20が4段、整流体22が3段からなる整流器2は、流路10の軸方向の幅が2.0mm(0.5mm×4)のブロック体として構成される。
【0057】
なお、上記実施形態1では、スペーサ20一段について整流体22を一段組み合わせていたが、スペーサ20複数段について整流体22を一段組み合わせてもよい。整流体22の間に複数のスペーサ20を介在させて、整流体22の間の距離を調整することが可能である。整流器2の整流機能には、整流体22を構成する網目の構造の他に、複数段備える整流体22の間の距離も影響する。そのため、最適な整流機能を得るために必要な段数だけ、整流体22一段に対して介在させるスペーサ20の段数を変更することが可能である。
【0058】
<実施形態1における利点>
以上、本実施形態1によれば、スペーサ20と整流体22とを個別に挿入して固定用流動体5を供給することにより、整流器2を流路10に確実に取り付けることが可能である。
【0059】
特に固定手段として固定用流動体5を用いているので、スペーサ20の加工精度が低く、流路10の内壁11とスペーサ20の外周面201との間隙が大きかったとしても、固定用流動体5がスペーサ20を固定する。これにより、スペーサ20が固定されずに、流体の流れ次第で整流器2が振動したり、スペーサ20が曲がって固定されたり、する不都合を悉く回避可能である。
【0060】
また上記実施形態1によれば、固定用流動体5に対して熱または光を加える工程を備えるので、固定用流動体5に熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いた場合にスペーサ20を確実に固定することが可能である。
【0061】
また上記実施形態1によれば、固定用流動体5に熱可塑性固定用流動体を用いた場合に、加熱した固定用流動体5をスペーサ20に供給してから流路10に挿入しさえすれば、放熱によって固定用流動体5が冷却されることにより確実にスペーサ20を固定することが可能である。
【0062】
また上記実施形態1によれば、整流体22の間に複数のスペーサ20を配置することが可能である。よって、整流体22の間の距離を介在させるスペーサ20の段数で任意に調整して、最適な形態の整流器を提供することが可能である。
【0063】
また上記実施形態1によれば、整流器2の最両端にはスペーサ20が配置されるので、スペーサ20間に介装される整流体22を確実に押さえることができる。
【0064】
上記実施形態1によれば、スペーサ20の外周面201に窪み部202が設けられているので、窪み部202に十分な量の固定用流動体5を充填させてスペーサ20を確実に固定することが可能である。
【0065】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、本発明の第1の態様に係る整流装置100を本発明の第3の態様に係る整流器の取り付け方法で製造する場合に関する。
本実施形態2における取り付け後の整流器2の形態は、上記実施形態1において図1を参照しながら説明したとおりであるため、その説明を省略する。
【0066】
次に図13〜図17を参照しながら、本実施形態2における整流器2の取り付け方法を説明する。本実施形態2の整流器の取り付け方法では、以下の各工程を備える。
(1)整流器2を形成する工程(図13)、
(2)整流器2を仮押さえする工程(図14)、
(3)整流器2に固定用流動体5を供給する工程(図15)、
(4)整流器2を流路10に挿入する工程(図16)、および、
(6)固定用流動体5を硬化させる工程(図17)。
【0067】
上記工程のうち、上記(2)工程はオプショナルな工程である。上記(3)工程は、上記(1)工程で形成した整流器2を流路10に挿入する前に実施しても、流路10に挿入した後に実施してもよい。また上記(6)工程は固定用流動体の種類に応じて必要になる、オプショナルな工程である。
【0068】
<(1)整流器2を形成する工程>
まず図13に示すように、スペーサ20と整流体22とを組み合わせて整流器2を形成する。整流体22とそれに隣接する整流体22との間には、一段または複数段のスペーサ20を介在させる。
【0069】
<(2)整流器2を仮押さえする工程(図14)>
スペーサ20と整流体22とが組み合わせることにより整流器2としての組み合わせが形成されたら、固定用流動体5を供給する前に全体を仮押さえする。例えば、図14に示すように、一対の押さえ部材210で整流器2の外周面を狭持する。仮押さえにより、次工程で、スペーサ20が動いたり、整流体22がずれたりしないようになる。押さえ部材210は、固定用流動体5を供給するための窪み部202の連なりが露出するような位置から整流器2を押さえる必要がある。本実施形態2では、スペーサ20の外周面201に4つ設けられた窪み部202のうち、対向する2つに固定用流動体5を供給することとする。このため、図14では、固定用流動体5を供給する予定の窪み部202とは異なる窪み部202を中心とした所定の範囲の外周面201を押さえ部材210で狭持している。但し、整流器2の組み合わせにずれが生じないなら、このような押さえ部材210を用いなくてもよい。
【0070】
<(3)整流器2に固定用流動体5を供給する工程>
次いで図15に示すように、整流器2を構成するスペーサ20の窪み部202に固定用流動体5を供給する。整流器2の外周面において、窪み部202が一つの溝となるように連なる。この連なった窪み部202にディスペンサ4から固定用流動体5を塗布する。固定用流動体5の種類については、上記実施形態1で説明したとおりであるため、その説明を省略する。
【0071】
<(4)整流器2を挿入する工程>
次いで、図16に示すように、固定用流動体5を塗布した整流器2を整流ブロック1に設けられた流路10の取り付け位置14まで挿入する。このとき、流路10の内壁11には、上記実施形態1と同様に段差部12が設けてあるので、段差部12の段に当接するまで整流器2を挿入すればよい。ここで、本実施形態2では、整流器2を構成してから整流ブロック1の流路10に挿入するため、ガイド部材等を用いずに整流器2を挿入し設置可能である。例えば、押さえ部材210で仮押さえをしながら流路10の開口部まで整流器2を搬送し、押さえ部材210の仮押さえを開放して整流器2を流路10の内部に挿入させることが可能である。
【0072】
<(6)固定用流動体5を硬化させる工程>
固定用流動体5に熱硬化性樹脂を用いた場合には、固定用流動体5に熱を付与して固化させる。例えば、図17に示すように、整流ブロック1の外周から整流器2の取り付け位置14に熱6を付与して固定用流動体5を硬化させる。その詳細については、上記実施形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0073】
なお、上記工程では、固定用流動体5を塗布してから整流器2を流路10に挿入していたが、整流器2を流路10に先に挿入してから、固定用流動体5を供給するようにしてもよい。この場合、例えば、上記実施形態1において図10を参照しながら説明したように、取り付け位置14に仮固定された整流器2に対してディスペンサ4から一定の供給圧力を加えながら固定用流動体5を供給することになる。
【0074】
以上、実施形態2によれば、固定用流動体5により整流器2を固定するために、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0075】
特に実施形態2によれば、スペーサ20と整流体22とにより整流器2を形成した後に整流器2を流路10に挿入するようにしたので、整流器2の挿入が容易であり、短時間に取り付け位置14へ仮固定することが可能である。
【0076】
(その他の変形例)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用することが可能である。例えば、上記実施形態の説明では、段差部12が形成された流路10の内壁11に整流器2を設置する場合を例示したが、これに限られない。例えば、流路10に段差部12を有しない整流ブロック1に整流器2を設置する場合でも、本発明を適用して固定用流動体5による固定が可能である。
【0077】
また、上記実施形態において示した、スペーサ20の外周径や整流体22の網目の粗さや線径についての具体的寸法は、例示に過ぎず、整流対象とする流体の特徴に応じて適宜設定すればよい。同様に、図面に示したスペーサ20や整流体22の形状は例示にすぎない。
【0078】
また、上記実施形態では、流路10の断面形状が円形である場合を例示したがこれに限られない。例えば、断面形状は、楕円形であったり矩形であったり多角形であったりしてもよい。但し、スペーサ20や整流体22の平面形状を、これら流路10の断面形状に対応させて変形させる必要がある。
【0079】
ここで、流路10およびスペーサ20を矩形状に形成した場合、スペーサ20の角部の曲率を大きく形成すれば、流路10と整流体22との間に固定用流動体5を流し込む間隙を形成することができる。このようなスペーサ20は、外周面201に窪み部202を設けなくても、スペーサ20を流路10に好適に仮固定することができる。
【0080】
また、上記実施形態における整流体22は、整流手段の例示にすぎず、他の構成を提供してもよい。例えば、板金をパンチングして多孔構造を形成したパンチングメタル構造、プレートを所定のマスクを介してエッチングすることにより多孔構造を形成したエッチングプレートを利用することができる。また、金属粒子の焼結体、スポンジ、繊維状の構造体、ハニカム構造体を整流体として用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の整流器の取り付け方法は、流路の一部に整流構造を設ける必要のある場合に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…流路ブロック、2…整流器、3…流量計、4…ディスペンサ、5…固定用流動体(固定材)、6…熱、7…グラインダ、10…流路、11…内壁、12…段差部、13…ガイド部材、14…取り付け位置、20…スペーサ、22…整流体、31…センサ、32…測定回路基板、33…回路素子、71…表面、201…外周面、202…窪み部、203…内周面、100…整流装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路が設けられた流路ブロックと、
前記流路に設けられ、前記流体を整流するための整流器と、を備え、
前記整流器は、
前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと、前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体と、が組み合わされて構成されており、
少なくとも前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間は、固定材で固定されている、
整流装置。
【請求項2】
前記固定材は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂のいずれかである、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項3】
前記整流器は、
複数個の前記スペーサと1以上の前記整流体とが組み合わされて構成されており、
少なくとも両端部には、前記スペーサが配置されている、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項4】
前記スペーサの前記外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられている、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項5】
流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法であって、
(a)前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサを前記流路の取り付け位置に挿入する工程と、
(b)前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体を前記流路に挿入する工程と、
(c)前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間に固定用流動体を供給する工程と、
を備えることを特徴とする整流器の取り付け方法。
【請求項6】
前記スペーサの外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられており、
前記(a)工程の前に、さらに、
前記窪み部に対応した幅を有するガイド部材を少なくとも1つ、延在方向を前記流路の軸方向と平行にして前記流路の内壁に沿って配置する工程を備え、
前記(a)工程では、前記ガイド部材に前記窪み部を沿わせて前記スペーサを前記流路に挿入する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項7】
前記固定用流動体は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であり、
前記(c)工程の後に、さらに、
前記固定用流動体に対して熱または光を加える工程を備える、
請求項5または6に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項8】
前記固定用流動体は、熱可塑性樹脂である、
請求項5または6に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項9】
1回または複数回の前記(a)工程と、前記(b)工程と、を複数回繰り返してから前記(a)工程を実施する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項10】
1回または複数回の前記(a)工程、前記(c)工程、および前記(b)工程を複数回繰り返してから前記(a)工程と前記(c)工程とを実施する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項11】
流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法であって、
(a)前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体とを重ね合わせて整流器を形成する工程と、
(b)前記整流器における各前記スペーサの前記外周面に固定用流動体を供給する工程と、
(c)前記固定用流動体が供給された前記整流器を前記流路の取り付け位置に挿入する工程と、
を備えることを特徴とする整流器の取り付け方法。
【請求項12】
前記スペーサの外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられており、
前記(a)工程では、複数の前記スペーサにおける前記窪み部が連なる向きで前記スペーサを重ね合わせ、
前記(b)工程では、連なった前記複数のスペーサの前記窪み部に前記固定用流動体を供給する、
請求項11に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項13】
前記固定用流動体は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であり、
前記(c)工程の後に、前記固定用流動体に対して熱を加える工程をさらに備える、
請求項11または12に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項14】
前記固定用流動体は、熱可塑性樹脂である、
請求項11または12に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項15】
前記(a)工程は、1個または複数個の前記スペーサと前記整流体とからなる組を積層して前記整流器を形成する、
請求項11に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項1】
流体が流通する流路が設けられた流路ブロックと、
前記流路に設けられ、前記流体を整流するための整流器と、を備え、
前記整流器は、
前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと、前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体と、が組み合わされて構成されており、
少なくとも前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間は、固定材で固定されている、
整流装置。
【請求項2】
前記固定材は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂のいずれかである、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項3】
前記整流器は、
複数個の前記スペーサと1以上の前記整流体とが組み合わされて構成されており、
少なくとも両端部には、前記スペーサが配置されている、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項4】
前記スペーサの前記外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられている、
請求項1に記載の整流装置。
【請求項5】
流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法であって、
(a)前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサを前記流路の取り付け位置に挿入する工程と、
(b)前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体を前記流路に挿入する工程と、
(c)前記スペーサの前記外周面と前記流路の内壁との間に固定用流動体を供給する工程と、
を備えることを特徴とする整流器の取り付け方法。
【請求項6】
前記スペーサの外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられており、
前記(a)工程の前に、さらに、
前記窪み部に対応した幅を有するガイド部材を少なくとも1つ、延在方向を前記流路の軸方向と平行にして前記流路の内壁に沿って配置する工程を備え、
前記(a)工程では、前記ガイド部材に前記窪み部を沿わせて前記スペーサを前記流路に挿入する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項7】
前記固定用流動体は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であり、
前記(c)工程の後に、さらに、
前記固定用流動体に対して熱または光を加える工程を備える、
請求項5または6に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項8】
前記固定用流動体は、熱可塑性樹脂である、
請求項5または6に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項9】
1回または複数回の前記(a)工程と、前記(b)工程と、を複数回繰り返してから前記(a)工程を実施する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項10】
1回または複数回の前記(a)工程、前記(c)工程、および前記(b)工程を複数回繰り返してから前記(a)工程と前記(c)工程とを実施する、
請求項5に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項11】
流路を通流する流体を整流する整流器の取り付け方法であって、
(a)前記流路の内壁に対向する外周面を有する枠状のスペーサと前記スペーサの内周を少なくとも覆う形状を有する整流体とを重ね合わせて整流器を形成する工程と、
(b)前記整流器における各前記スペーサの前記外周面に固定用流動体を供給する工程と、
(c)前記固定用流動体が供給された前記整流器を前記流路の取り付け位置に挿入する工程と、
を備えることを特徴とする整流器の取り付け方法。
【請求項12】
前記スペーサの外周面には、窪み部が少なくとも1つ設けられており、
前記(a)工程では、複数の前記スペーサにおける前記窪み部が連なる向きで前記スペーサを重ね合わせ、
前記(b)工程では、連なった前記複数のスペーサの前記窪み部に前記固定用流動体を供給する、
請求項11に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項13】
前記固定用流動体は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であり、
前記(c)工程の後に、前記固定用流動体に対して熱を加える工程をさらに備える、
請求項11または12に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項14】
前記固定用流動体は、熱可塑性樹脂である、
請求項11または12に記載の整流器の取り付け方法。
【請求項15】
前記(a)工程は、1個または複数個の前記スペーサと前記整流体とからなる組を積層して前記整流器を形成する、
請求項11に記載の整流器の取り付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−64278(P2011−64278A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216114(P2009−216114)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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