説明

文書内にメッセージを埋め込む方法及び読取り可能媒体上に格納される文書

【課題】ソフトコピー文書及びハードコピー文書内にメッセージを透かしとして埋め込む方法を提供することが望ましい。
【解決手段】多くのグリフを含む文書内にメッセージを埋め込むと共に、この文書の、品質が引き下げられたバージョンからメッセージを抽出する方法。メッセージの各シンボルは、2つの分離した画素セットの幾何学的関係として表され、ここで、各セット内の画素は、隣接している。文書から選択されるグリフに関連付けられる画素は、分離した画素セットと組み合わされ、埋め込みメッセージを含む変形グリフを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には文書内にメッセージを埋め込むことに関し、より詳細には、文書内のグリフにメッセージを埋め込むこと及び文書内のグリフからメッセージを抽出することに関する。
【背景技術】
【0002】
透かし
透かしは、文書内にメッセージとして埋め込まれることが多い。埋め込みメッセージは、幾つか例を挙げると、セキュリティ、プライバシー、及び著作権保護のために使用され得る。
【0003】
紙の「ハードコピー」文書のための透かしは、電子的な「ソフトコピー」透かしとは異なる。ソフトコピー文書の場合、すべての操作、すなわち透かし挿入、文書コピー、文書の品質引き下げ、及び透かし抽出は、デジタル領域、たとえばPDF文書又はPostscript文書において発生する。逆に、ハードコピー文書の場合、文書の品質引き下げは、ハードコピー領域において発生する。これは、透かしを劣化させるか、又は別の形で使用不可能にする可能性がある。ハードコピー文書における透かしは、文書がコピーされるか、スキャンされるか、ファックスされるか、又は別の形で操作されるときに品質を引き下げられる可能性がある。ハードコピー透かしは、物理的損傷(たとえばしわくちゃにされるか、又は故意に若しくは無意識に引き裂かれる)を受ける可能性もある。
【0004】
グリフ
グリフは、ここで定義されるように、基本図形オブジェクトである。グリフの最も一般的な例は、テキスト文字又は書記素である。グリフは、合字、すなわち複合文字、又は発音区別符号とすることもできる。グリフは、象形文字又は表意文字とすることもできる。用語グリフは、非文字パターン又は複数文字パターンにも使用することができる。ここで使用されるように、グリフは、何らかの任意の図形形状又は図形オブジェクトである。
【0005】
メッセージ埋め込みの課題
メディア信号、たとえば画像、ビデオ、及び音声内に、隠しメッセージを埋め込む多くの従来方法が存在する。しかしながら、隠しメッセージをソフトコピー文書及びハードコピー文書の両方に埋め込むことは、困難である。
【0006】
ハードコピー文書において、グリフは通常、構造化される。そのため、構造、たとえば間隔及び配向に対する小さな変化であっても、人間の視覚システムによって検出される可能性がある。したがって、不可視の透かしの目的のために、ハードコピー文書に対する変更は、必ず非常に小さくなければならない。さらに、ハードコピー文書は、持ち主が変わるか、引き裂かれるか又は折りたたまれると、物理的劣化を受ける可能性がある。電子バージョンの文字で検出可能であったメッセージは、印刷された文書が写真複写又はスキャンされるときに失われる可能性があり、たとえばコピー後にグレーレベルの微細な変化が無くなるであろう。
【0007】
従来のメッセージ埋め込み方法
幾つかの従来のメッセージ埋め込み方法は、テキスト文書を画像として扱い、画像ベースの透かし技法を使用する。これらの方法の1つの不利な点は、これらの方法が主に個々のテキスト文字のビットマップ表現、又は色及び影の中間階調表現に対して動作するプリンタと上手く協働しないことである。
【0008】
別の従来方法は、違いが目には知覚することができないが、スキャナによって感知することができるように、文字の色をわずかに変化させる。埋め込みメッセージは、不可視であるため、透かしを変化させることは困難である。しかしながら、この方法の不利な点は、色又はグレーレベルの小さな違いは、文書がコピーされるときに簡単に失われることである。
【0009】
別の方法は、個々の文字間、個々の単語間、又はテキストの連続する行の行間の距離を調節する。埋め込み率が低ければ、この方法は目にはほとんど不可視であり、コピーを乗り切る。しかしながら、この方法の不利な点は、埋め込み率が高くなると、文字間、単語間、又は行間の不均一な距離が可視になると共に目障りになることである。
【0010】
別の方法は、文字全体の境界上に格子状の白黒のドットパターンを配置し、文字全体を標準よりも狭くするか又は広くすることによって、ディザリング効果を用いる。しかしながら、この方法は、写真複写に対してロバストではない。これは、個々のドットパターンが小さすぎて、写真複写後に保持されないためである。
【0011】
別の方法は、テキストの位置とは無関係に、ドットの擬似ランダムパターンを文章の背景に埋め込む。ドットは比較的目立たないが、依然として簡単に除去される可能性がある。さらに、ドットは小さく、2回以上の写真複写を乗り切ることができない恐れがある。
【0012】
ダーティペーパ符号化
ダーティペーパ符号化(DPC:Dirty Paper Coding)は、「ダーティペーパへの書き込み」とも呼ばれ、何らかの副次的情報の存在下でメッセージを符号化する方法である。副次的情報は、符号化器には知られているが、復号器には知られていない。副次的情報は、通常、符号化器における何らかの干渉信号から成る。符号化器の役割は、復号器が干渉信号のいかなる知識も所有することなくメッセージを回復することが必ずできるように、所望のメッセージを符号化することである。換言すれば、復号器は、いずれの部分が実際のメッセージを構成し、いずれの部分がノイズであるのかを事前に知ることなく、「ダーティ」文書からメッセージを読み取ることができなくてはならない。これが「ダーティペーパ符号化」の名前の由来である。DPCは、複数のアンテナを用いるデジタル通信及び無線通信において伝統的に使用されている。それらの通信の一般例として、コスタプリコーディング、トムリンソン−ハラシマプリコーディング、及びベクトル摂動がある。
【0013】
DPCに基づく透かしとの関連において、透かしは、符号化されるメッセージの役割を果たし、文書は、符号化器における干渉信号の役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ソフトコピー文書及びハードコピー文書内にメッセージを透かしとして埋め込む方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、メッセージが文書の読み手に目立たないような方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、埋め込みメッセージが比較的大きくなることができるような方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、埋め込みメッセージの抽出が文書の物理的劣化に対して耐性があるような方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、メッセージを損なうことなく文書の物理的コピーを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、文書内に埋め込まれるメッセージのシンボルを、2つの分離した画素セットの幾何学的関係として表すことができるという認識からもたらされた。さらに、文書内のグリフに関連付けられる複数の画素が、少なくとも上記2つの分離した画素セットと組み合わされる場合、メッセージは文書内に埋め込まれ、このメッセージは人間の目には目立たず、物理的劣化及び写真複写に対し耐性がある。
【0020】
本発明の実施の形態は、副次的情報を使用するダーティペーパ符号化に基づく。本方法は、透かしが入れられる文書を、符号化器において既知の干渉として扱う。透かし入り文書の印刷、コピー、及びスキャンといった操作は、ノイズの多いチャネルを具現化したものとみなされる。透かし自身は、メッセージとして扱われ、既知の干渉及び未知のノイズの存在下で送信されなくてはならない。
【0021】
ノイズの多いチャネルに対抗するために、透かしが文書内に埋め込まれる前に、この透かしにエラー訂正符号を適用する。埋め込み操作は、プリントサーバ、電子メールサーバ、プリンタ内、ファックスマシン内、又はメッセージが生成されるプロセッサ内において実施することができる。推定器は、埋め込みメッセージを取り出すために、文書のコピーに対しエラー訂正復号を実施することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ソフトコピー文書及びハードコピー文書内にメッセージを透かしとして埋め込む方法、メッセージが文書の読み手に目立たないような方法、埋め込みメッセージが比較的大きくなることができるような方法、埋め込みメッセージの抽出が文書の物理的劣化に対して耐性があるような方法、およびメッセージを損なうことのない文書の物理的コピーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1による、メッセージを文書内に埋め込む方法を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1による、メッセージの埋め込みシンボルを有する、通常のサイズのグリフ及び拡大されたグリフを示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1による、シンボルを含むパケットを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1による、文書からメッセージを抽出する方法を示すブロック図である。
【図5A】本発明の実施の形態1による埋め込みメッセージの拡大図である。
【図5B】本発明の実施の形態1による埋め込みメッセージの拡大図である。
【図5C】本発明の実施の形態1による埋め込みメッセージの拡大図である。
【図5D】本発明の実施の形態1による埋め込みメッセージの拡大図である。
【図5E】本発明の実施の形態1による埋め込みメッセージの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による、文書120内にメッセージ110を埋め込む方法100を示している。メッセージは、シンボルのセット115を含む。メッセージ110のシンボル115’は、2つの分離した画素セットの幾何学的関係135として表される(130)。2つの分離した画素セット136は、幾何学的関係135の視覚的な例である。各セット136内の画素は、互いに隣接している。幾何学的関係135は、2つの分離した画素セット136’及び136’’の間の距離137と、2つの分離した画素セット136’及び136’’の相対的な角度位置とを含むことができる。角度位置は、文書120との関連で確定される。たとえば、相対的な角度位置は、水平、垂直、又はそれらの組み合わせとすることができる。3つ以上の分離した画素セットを使用してシンボル115’を表すことが可能であることに留意されたい。角度位置は、文書の座標系に従って定めることもでき、ここで左上の画素の座標は原点(0,0)である。
【0025】
幾何学的関係135は、2つの分離した画素セット136’及び136’’のそれぞれのサイズ及び形状も含むことができる。たとえば、2つの分離した画素セット136’及び136’’が、各行に2画素を有する2つの行で形成される場合、各セットのサイズは2×2であり、形状は正方形である。セット136のサイズは、通常、グリフのサイズと比較して小さい。セット136のサイズ及び形状は、エラー回復力と知覚可能性とのトレードオフをするために選択される。セット136のサイズ及び形状は、文書が受けることを予期される品質引き下げにも依拠する。たとえば、写真複写による品質引き下げの場合、サイズ及び形状は、形状の局所的な暗摂動(local dark perturbation)が小さくなる一方で、形状の局所的な光摂動(local light perturbation)が大きくなるという観測に基づいて決定される。セット136のサイズ及び形状は、文書120内のグリフ125の所定のフォント及びパイカに関して任意に選択することができることに留意されたい。
【0026】
さらに、シンボル115’は、セット136内の各画素の輝度を用いて表すこともできる。たとえば、セット136内の画素の輝度は、1に等しくすることができる。代替的に、輝度をゼロ、又はゼロと1との間の他の値にすることができる。
【0027】
文書120は、グリフセット125を含む。グリフ125’は、グリフセット125の要素である。グリフ125’に関連付けられる画素は、2つの分離した画素セット、たとえばセット136と組み合わされて(140)、文書120内に変形グリフ150を生成し、それによってメッセージ110のシンボル115’が変形グリフ150内に埋め込まれる。変形グリフ150’は、埋め込みシンボル115’を有する変形グリフ150の視覚的な例である。
【0028】
通常、画素を組み合わせるステップ140は、2つの分離した画素セット136からの画素に従って、グリフ125’に関連付けられる対応する画素の輝度を変更、たとえば統合、交換、又はマッピングする。対応する画素、たとえば画素155は、幾何学的関係135に対応する幾何学的関係を有する。したがって、対応する画素は、たとえば2つの分離した画素セット136と同じサイズ、形状、セット間の距離、及び配向を有する2つの画素セットに編成される。
【0029】
対応する画素は、文書120のグリフ125、たとえばグリフ125’に関連付けられる。たとえば、図2に示されているように、対応する画素230は、グリフ125’の形状の内部にあり、セット136のゼロ輝度を有する画素と組み合わされ、変形グリフ150を生成した。代替的に、対応する画素220は、グリフ125’の形状の外部にあるが、各対応する画素セット220における少なくとも1つの画素が、グリフ125’の形状を形成する画素に直接隣接している。通常、対応する画素は、文書120のグリフ125の垂直ストローク(stroke)又は水平ストロークのいずれかに接している。
【0030】
好ましい実施の形態では、距離210が埋め込みシンボルを確定する。距離210は、たとえば2つの分離したセット136のエッジ間又は中心間で計算される。
【0031】
この実施の形態1では、グリフ125’がシンボル115’を埋め込むのに適切であるように、文書のグリフセット125からグリフ125’を選択する(170)。たとえば、グリフ125’の形状は、少なくともl画素の長さと、少なくともw画素の幅とを有する少なくとも1つのストロークを有しなくてはならない。l画素及びw画素の値は、解像度並びにグリフのフォント及びパイカに応じて決まる。この実施の形態1では、lは28画素よりも大きく、wは5画素よりも大きい。
【0032】
方法100は、ダーティペーパ符号化(DPC)を使用する。ここで、メッセージは、副次的情報として符号化され、文書は、既知の干渉として扱われる。変更された文書の印刷、スキャン、及びコピーといった後続の操作は、ノイズの多いチャネルを具現化したものとして扱われる。この方法は、変更された文書を、ノイズの多いチャネルに対して回復力のあるものにする。このことは、ノイズの多い操作の後であってもメッセージを確実に抽出することができることを意味する。
【0033】
文書内にメッセージを埋め込んだ結果、変更された文書が読取り可能媒体に格納される(たとえば紙に印刷されるか、ハードドライブに格納されるか、又はコンピュータスクリーンに表示される)。変更された文書は、少なくとも1つのグリフを含む。また、変更された文書は、グリフに関連付けられる画素と偏った関係にある少なくとも2つの画素セットであって、この2つの分離した画素セットの幾何学的関係が文書内に埋め込まれたメッセージのシンボルを抽出するのに適切であるようにする、少なくとも2つの画素セットを有する。
【0034】
セット136のサイズは、グリフのサイズと比較して通常小さいので、埋め込みメッセージは、通常、文書の読み手に目立たない。セット136のサイズは、エラー回復力と知覚可能性とのトレードオフをするために選択される。1つのグリフ内に幾つかのシンボルを埋め込むことが可能である。しかしながら、文書が比較的多数のグリフを含む場合、それに応じて埋め込みメッセージも大きくなる。さらに、セット136の画素の輝度間のコントラスト、及びメッセージの埋め込みシンボルを有するグリフの画素セット136の境界によって、埋め込みメッセージは検出可能である。したがって、埋め込みメッセージは、文書の物理的劣化に対し耐性があり、文書を一度又は何度か写真複写した後であっても、メッセージの抽出が可能である。
【0035】
メッセージ抽出
図4は、埋め込みシンボルを有する変形グリフ410からシンボル420を抽出する方法400を示している。変形グリフ410は、元の文書120又はコピー、たとえば文書120の少なくとも一部の印刷、スキャン、電子メール、写真複写、ファックスの結果から読み出すことができる。
【0036】
変形グリフ410の画素間で、シンボル420を埋め込んでいる2つの分離した画素セット430が検出される(440)。シンボル420は、2つの分離した画素セット430から取り出された(450)幾何学的関係460に基づいて決定される(470)。
【0037】
この実施の形態1では、文書の印刷されたバージョンから埋め込みメッセージを抽出する。最初に文書をスキャンし、この文書をグレースケール画像Yに変換する。少なくとも長さl’画素及び少なくとも幅w’画素の水平ストロークを用いて、グリフの位置を求める。l’及びw’の値は、l、w、印刷解像度、及びスキャン解像度の値に基づいて選択される。そのようなグリフを特定するために、まず、閾値操作を実施することによって、グレースケール画像Yからバイナリ画像Yを取得する。幾つかの画素についてストロークが変更された文字を検出することを確実にするために、まず、Yに対してモルフォロジークロージング演算(morphological closing operation)を実施し、次に、サイズl’×w’の矩形の構造要素を用いてエロージョンを実施する。垂直ストロークの位置が決定されると、グレースケール画像Yからの対応するストロークを候補シンボルのそれぞれと相関させて、最も相関の高いシンボルを選択することによって、そのストローク内に埋め込まれているシンボルを特定する。
【0038】
本発明の実施の形態1は、任意選択でOCRエンジン445を使用する。変形グリフ410は、OCRエンジン445によって認識され、シンボル420を埋め込んでいる2つの分離した画素セット430の存在しそうな位置を検出する(440)のに役立つデータベース446からの対応する未変形グリフと比較される。
【0039】
シンボルのパケット
図3に示されているように、エラー検出及びエラー訂正を容易にするために、メッセージ内のシンボルを、任意選択でパケット300として構成することができる。文書内に埋め込まれるメッセージ内に、1つ又は複数の「パケット化シンボル」が挿入される。これによって、メッセージのシンボルは、パケット300内にグループ化される。パケット300は、ヘッダ310と、メッセージのN個のシンボル(Symbol_i)から成るセット320と、同期シンボル330とを含む。ヘッダは、「開始パケット」シンボル340と、それに続くパケット数シンボル(PCK_NUM)350とを含む。パケット内のシンボル数は、埋め込みのエラー回復力を確定する。
【0040】
この実施の形態1では、メッセージ抽出方法は、「開始パケット」シンボルを識別し、次にパケット数シンボル350を抽出する。パケット数シンボルを抽出することができない場合、パケット内に埋め込まれているシンボル320は、消失したものとして扱われる。パケット数シンボルを抽出することができる場合、シンボル320は、同期シンボル330を使用して、場合によってはエラーと共に抽出される。同期シンボル数がNと等しくない場合、パケット全体300が消失しているものと見なされる。消失及び誤りは、エラー訂正符号、たとえばリード−ソロモン復号器を使用して補正することができる。任意の他のエラー訂正符号を使用することができる。当業者であれば、アーキテクチャが、符号が代数的硬判定復号器を有するか又はグラフベースの軟判定復号器を有するかについて、何ら制限を課さないことを認識するであろう。エラー訂正符号の選択は、復号エラーの分布、復号の利便性、及びメッセージ抽出モジュールにおいて許容される計算複雑性に依拠することができる。エラー訂正符号のレートは、文書が受けることを予期される品質引き下げの量、及び所望のノイズロバスト性のレベルに基づいて選択することができる。
【0041】
図5A〜図5Eは、ハードコピー文書内に埋め込まれるメッセージ例を示している。文書は、600ドット/インチ(dpi)の解像度で、「Times New Roman」フォントにより12ptで印刷される。印刷の前に、上述したように、長さlが28画素よりも大きく、幅wが5画素よりも大きい垂直ストロークのエッジに沿って2つの画素群を追加又は除去する。文書はコピーされ、同じ解像度でスキャンされる。図5Aは、元の文書を示している。図5Bは、埋め込みメッセージを有する文書を示している。図5Cは、印刷後にスキャンされた文書を示している。図5Dは、1回のコピー操作後にスキャンされた文書を示している。図5Eは、2回のコピー操作後にスキャンされた文書を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリフセットを含む文書内にメッセージを埋め込む方法であって、
前記文書内に埋め込まれる前記メッセージのシンボルを2つの分離した画素セットの幾何学的関係として表すステップであって、各前記セット内の画素は隣接している、表すステップと、
前記文書内のグリフに関連付けられる画素を前記2つの分離した画素セットと組み合わせるステップであって、前記文書内で変形グリフを作成し、前記変形グリフ内に前記メッセージの前記シンボルが埋め込まれる、組み合わせるステップと、
を含むことを特徴とする文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項2】
前記幾何学的関係は、前記2つの分離した画素セット間のユークリッド距離を含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項3】
前記幾何学的関係は、前記2つの分離した画素セットのそれぞれのサイズを含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項4】
前記幾何学的関係は、前記文書における前記2つの分離した画素セットの相対的な角度位置を含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項5】
前記角度位置は、水平位置、垂直位置、及びそれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項6】
前記2つの分離した画素セットにおける各画素の輝度を使用して前記メッセージの前記シンボルを表すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項7】
前記文書のグリフセットから前記グリフを選択するステップであって、前記グリフが前記シンボルを埋め込むのに適切であるようにする、選択するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項8】
前記グリフの形状は、少なくともl画素の長さ及び少なくともw画素の幅を有する少なくとも1つのストロークを有することを特徴とする請求項7に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項9】
前記組み合わせるステップは、前記グリフに関連付けられる対応する画素の輝度を、前記2つの分離した画素セットからの画素の輝度にマッピングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項10】
前記対応する画素は、前記グリフの形状の内部にあることを特徴とする請求項9に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項11】
前記対応する画素は、前記グリフの形状の外部にあることを特徴とする請求項9に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項12】
前記対応する画素は、前記グリフの垂直ストロークのエッジの境界となることを特徴とする請求項9に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項13】
前記対応する画素は、前記グリフの水平ストロークのエッジの境界となることを特徴とする請求項9に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項14】
前記変形グリフ内に前記シンボルを埋め込んでいる前記2つの分離した画素セットを検出するステップと、
前記2つの分離した画素セットの前記幾何学的関係に基づいて前記メッセージの前記シンボルを求めるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項15】
前記メッセージ内に少なくとも1つのパケット化シンボルを挿入するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項16】
前記パケット化シンボルは、開始パケットシンボル、パケット数シンボル、及び同期シンボルを含む群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の文書内にメッセージを埋め込む方法。
【請求項17】
読取り可能媒体上に格納される文書であって、前記文書は、埋め込みメッセージを含み、
前記文書上にレンダリングされるグリフと、
前記文書上にレンダリングされる前記グリフに関連付けられる画素と組み合わされる少なくとも2つの分離した画素セットであって、前記2つの分離した画素セットの幾何学的関係が、前記文書内に埋め込まれているメッセージのシンボルの抽出に適切であるようにする、少なくとも2つの分離した画素セットと、
を備えることを特徴とする読取り可能媒体上に格納される文書。
【請求項18】
前記文書は、ハードコピーの形態であることを特徴とする請求項17に記載の読取り可能媒体上に格納される文書。
【請求項19】
前記文書は、紙に印刷されていることを特徴とする請求項17に記載の読取り可能媒体上に格納される文書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2010−136331(P2010−136331A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−207658(P2009−207658)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】