説明

文書編集支援システム、文書編集支援方法及び文書編集支援プログラム

【課題】自然言語文の文書作成に適した文書編集支援が可能な文書編集支援システム、文書編集支援方法及び文書編集支援プログラムを提供する。
【解決手段】文書編集支援システムは、対象物の撮影により得られた医用画像を解析し、該医用画像における対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とを取得する医用画像解析部14と、モニタに表示された医用画像の領域が操作部の操作によって指定された場合に、解析結果保持部16に保持された部位の領域と部位名称とに基づいて、指定された領域に対応する部位を表す部位名称の候補をモニタに表示させる表示制御部18と、モニタに表示された部位名称の候補のいずれかが操作部の操作によって指定された場合に、該指定された部位名称を含む文節を生成する文節生成部24と、文書の編集中において、生成された文節を文書に追加する編集部30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書の編集、特に、医師による電子カルテや読影レポート等の文書の編集を支援する文書編集支援システム、文書編集支援方法、及び、文書編集支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子カルテや、CT(Computed Tomography)画像、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像、レントゲン写真に対する所見及び診断のレポートである読影レポート等には、記述内容に患者の疾患の部位や状態が含まれる。しかし、これらの部位や状態が誤って記述されることがあり、このような誤りは、医療事故の要因の1つとなり得る。
【0003】
CTやMRIは、人体を特定の面で等間隔にスライスしたような画像群を表示させるものである。しかし、人体は立体構造を有するため、画像上の位置を解剖学上の部位名と対応付けるためには高度なスキルを要し、医師が疾患の部位を間違えて把握する場合がある。また、CT画像、MRI画像、レントゲン写真は、原寸大で表示されていない場合があり、縮尺が表示されるような場合であっても、医師は、疾患の部位の大きさを直観的に把握することができず、例えば本来1mmと記述すべきところを1cmと記述してしまうような場合があった。更に、人体はほぼ左右対称であるため、CT画像等が左右反対に表示されても、医師が気づかずに、左右を取り違えて把握する場合もある。また、疾患部位は同時に2箇所以上にそれぞれ別の種類で存在することがあり得るが、医師がそれぞれの疾患部位を取り違えて記述してしまう場合もある。
【0004】
また、MRI画像については、様々な種類(T1強調像、T2強調像、拡散強調像等)があり、その他の画像についても、コントラストや撮像条件によって、様々な種類がある。しかし、それぞれの画像は対象物が同一であるために類似しており、多くの場合、医師は、読影時にはそれらを同時に参照するので、画像の種類を間違えて把握することがあった。
【0005】
上述したような問題に対して、特許文献1に記載された技術は、読影対象の画像と正常例の画像とを同時に表示して読影を支援する。また、特許文献2及び特許文献3に記載された技術は、医用画像の所定位置が指定された場合に、その位置に対応する部位の名称を提供する。
【特許文献1】特開2001−275986号公報
【特許文献2】特開2003−260030号公報
【特許文献3】特開2003−33327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の手法は、医師による文書編集を必ずしも十分に支援しているとはいえない。具体的には、医師は、所見を自然言語文で作成するが、この際、読影対象の画像から部位の名称等が提供されるのみでは、助詞等の入力が必要となり煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、上述した問題を解決するものであり、自然言語文の文書作成に適した文書編集支援が可能な文書編集支援システム、文書編集支援方法及び文書編集支援プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の文書編集支援システムは、対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とを対応付けて保持する第1の保持手段と、表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、前記第1の保持手段に保持された前記対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する第1の取得手段と、前記第1の取得手段により取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる第1の表示制御手段と、前記第1の表示制御手段によって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加手段とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、利用者が表示された画像における対象物の領域を指定するという、直感的な行為がなされた場合に、対象物の指定領域に対応する部位名称のみならず、当該部位名称を含んだ文節が編集中の文書に追加される。
【0010】
同様の観点から、本発明の文書編集支援システムは、前記生成手段が、予め定められた文節の形式を表す文節パターンに前記指定された部位名称を挿入することにより文節を生成するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記対象物の画像に該画像の属性を表す情報であるメタ情報が対応付けられており、前記画像のメタ情報を取得する第2の取得手段を有し、前記生成手段が、前記第2の取得手段によって取得されたメタ情報に対応する語句を含む文節を生成するようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、更に、画像の属性に対応する語句を含んだ文節が編集中の文書に追加され、自然言語文の文書作成がより容易になる。
【0013】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記第2の取得手段が、撮影法が異なる同一の部位を含む複数の画像のそれぞれに対応するメタ情報を取得し、前記生成手段が、前記第2の取得手段によって取得されたメタ情報毎に、該メタ情報に対応する語句を含む文節を生成するようにしてもよい。
【0014】
この構成によれば、複数の画像のそれぞれの属性に対応する語句を含んだ文節が編集中の文書に追加され、画像毎の自然言語文の文書作成がより容易になる。
【0015】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記部位名称を含む文節によって修飾されるべき語句を予め定められた語句群から取得する第3の取得手段と、前記第3の取得手段によって取得された語句を前記生成手段によって生成された文節に付加する付加手段とを有するようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、部位名称を含む文節によって修飾される語句についても、文節に付加され、自然言語文の文書作成がより容易になる。
【0017】
また、本発明の文書編集支援システムは、操作ユニットの複数の操作のそれぞれと語句との対応関係を示すテーブルを有し、前記第3の取得手段が、前記テーブルを参照して操作ユニットの操作に対応した語句を前記部位名称を含む文節によって修飾されるべき語句として取得するようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、利用者の直感的な操作によって、部位名称を含んだ文節によって修飾される語句が迅速に編集中の文書に追加される。
【0019】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記部位名称を含む文節が追加された文書、前記文節に含まれる部位名称によって表される部位を含む画像、及び、該画像において前記文節に含まれる部位名称で表される部位の領域を関連付けた情報である文書画像関連情報を保持する第2の保持手段と、前記第2の保持手段によって保持された文書画像関連情報に含まれる文書及び画像を表示画面に表示させるとともに、該表示された画像において指定された領域に対応する部位名称を含む文を特定して表示させる第2の表示制御手段とを有するようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、関連付けられた文書と画像とが表示されるとともに、更に、画像において指定された領域に対応する部位名称を含む文が表示されるため、文の読み手となる利用者は、画像とともに当該画像の指定された領域に対応する部位名称についての記述を容易に取得することが可能となる。
【0021】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記表示された前記文書画像関連情報に含まれる文又は画像における領域が指定された場合に、前記指定された文に含まれる部位名称、又は、前記指定された領域に対応する部位を表す部位名称を含む文節が追加された文書を含む文書画像関連情報を検索する第1の検索手段と、前記第1の検索手段による検索により得られた文書画像関連情報に含まれる文書及び画像の少なくともいずれかを前記表示画面に表示させる第3の表示制御手段とを有するようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、利用者は、互いに関連する複数の文書画像関連情報を取得し、文書画像関連情報に含まれる文書の読解や画像の認識、新たな文書の作成において、他の文書画像関連情報に含まれる文書や画像を役立てることができる。
【0023】
同様の観点から、本発明の文書編集支援システムは、検索キーが入力された場合に、該検索キーを含む文書画像関連情報を検索する第2の検索手段と、前記第2の検索手段による検索により得られた文書画像関連情報に含まれる文書及び画像の少なくともいずれかを前記表示画面に表示させる第4の表示制御手段とを有するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明の文書編集支援システムは、前記部位名称と前記画像の撮影法との関連度を算出する関連度算出手段を有し、前記生成手段が、前記関連度が所定値以上である前記部位名称及び撮影法を含む文節を生成するようにしてもよい。
【0025】
この構成によれば、部位名称と画像の撮影法との関連度を考慮して、適切な文節を生成することができる。
【0026】
本発明の文書編集支援方法は、表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、保持手段に保持された対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる表示制御ステップと、前記表示制御ステップによって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成ステップと、前記生成ステップによって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加ステップとを有することを特徴とする。
【0027】
本発明の文書編集支援プログラムは、表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、保持手段に保持された対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる表示制御ステップと、前記表示制御ステップによって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成ステップと、前記生成ステップによって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、利用者が表示された画像における対象物の領域を指定するという、直感的な行為に応じて、対象物の指定された領域に対応する部位名称のみならず、当該部位名称を含んだ文節が編集中の文書に追加され、自然言語文の文書作成が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、文書編集支援システムとしてのパーソナルコンピュータ(PC)のハードウェア構成を示す図である。図1に示す文書編集支援システムとしてのPC100は、内部バス107に接続されたCPU101、メモリ102、ハードディスクドライブ(HDD)103、キーボード等の入力装置やマウス等の指示装置を含む操作ユニットとしての操作部105、表示画面上に表示するモニタ106によって構成される。
【0030】
図2は、PC100によって構成される文書編集支援システムの機能ブロック図である。図2に示す文書編集支援システムは、医師によって作成される所見や読影レポートとなる文書の編集を支援するものであり、医用画像保持部12、医用画像解析部14、第1の保持手段に対応する解析結果保持部16、第1乃至第4の表示制御手段及び提供手段に対応する表示制御部18、第1の取得手段に対応する部位特定部22、生成手段、第2の取得手段及び関連度算出手段に対応する文節生成部24、文節パターン保持部26、画像メタ情報保持部28、追加手段、第3の取得手段及び付加手段に対応する編集部30、座標取得部32、第2の保持手段に対応する文書画像関連情報保持部34、第1及び第2の検索手段に対応する検索部36により構成される。これら各機能ブロックは、図1のハードウェア構成においては、CPU101が操作部105の操作に応じて、HDD103から読み出してメモリ102に記憶させた所定のプログラム、例えば後述するフローチャートの手順等に対応するプログラムを実行することによって実現される。
【0031】
医用画像保持部12は、所見や読影レポートの作成対象となるMRI画像等の医用画像を保持する。医用画像は、当該医用画像に含まれる情報である検査IDと画像IDとによって一意に特定される。医用画像解析部14は、医用画像保持部12に保持された医用画像を読み出して解析することにより、対象物の各部位について、当該部位の領域と当該部位を表す部位名称とを取得する。医用画像の解析には、例えば、特開2003−33327号公報に記載された、対象物の病変を発見し、その位置と状態を出力するシステムを用いることができる。解析結果保持部16は、医用画像と、当該医用画像に対応する対象物の各部位の領域及び部位名称とを対応付けて解析結果として保持する。図3は、解析結果に含まれる部位名称及び部位領域の一例を示す図である。部位名称及び部位領域は、検査ID及び画像IDが付加され、これら検査ID及び画像IDを含む医用画像に対応付けられる。部位領域は、例えば、医用画像に対応する2次元空間上の座標により特定され、各座標を結んだ閉領域で表される。
【0032】
解析結果保持部16に、医用画像と、対象物の各部位の領域及び部位名称とが対応付けて保持されると、医師によって作成される所見や読影レポートとなる文書の編集支援が可能となる。以下、フローチャートを参照しつつ、文書の編集支援の動作を説明する。図4は、文書編集支援システムの動作を示すフローチャートである。
【0033】
表示制御部18は、利用者である医師による操作部105(例えばキーボード)の操作に応じて、医用画像保持部12に保持された医用画像を読み出し、当該医用画像をモニタ106に表示させる制御を行う(S101)。図5(a)は、医用画像の一例である頭部のMRI画像を示す図である。表示制御部18は、更に、表示した医用画像に含まれる検査ID及び画像IDを取得し、解析結果保持部16に保持された解析結果のうち、これら検査ID及び画像IDを含む医用画像、換言すれば、表示されている医用画像を有するものを取得して部位特定部22へ出力する。
【0034】
次に、部位特定部22は、医師による操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作によって、モニタ106の表示画面に表示されている医用画像に対応する対象物の領域が指定されたか否かを判定する(S102)。例えば、図5(b)に示す医用画像では、対象物である頭部における「×」のマーク201の領域が指定されている。
【0035】
領域を指定する操作がなされた場合、部位特定部22は、その指定された領域に対応する部位名称の候補を取得する処理を行う(S103)。具体的には、座標取得部32は、医師による操作部105の操作に応じて、表示中の医用画像における指定された領域の座標を取得し、部位特定部22へ送る。部位特定部22は、この表示中の医用画像における指定された領域の座標と、表示制御部18からの解析結果に含まれる各部位領域の座標と比較する。そして、部位特定部22は、表示制御部18からの解析結果に含まれる各部位領域のうち、表示中の医用画像における指定された領域と重複するものを特定する。更に、部位特定部22は、特定した部位領域に対応付けられている部位名称を、指定された領域に対応する部位名称の候補として表示制御部18へ送る。表示制御部18は、これらの部位名称の候補を、医用画像とともにモニタ106に表示させる制御を行う。例えば、図5(c)は、医用画像とともに、部位名称候補の一覧202が示されている。
【0036】
次に、部位特定部22は、部位名称候補が指定されたか否かを判定する(S104)。具体的には、部位特定部22は、医師による操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作によって、モニタ106に一覧形式で表示されている部位名称の候補のうち、医師が適切であると考えるものが指定された場合には、その指定された部位名称が指定されたと判定する。部位名称が指定された場合、部位特定部22は、取得した部位名称、換言すれば、医師が指定した部位名称と、解析結果において当該部位名称に対応付けられている部位の領域及び医用画像と、医師が指定した領域とを文節生成部24へ送る。
【0037】
画像メタ情報保持部28は、撮影法や縮尺(%)等の医用画像の属性を表す情報を含む画像メタ情報を保持する。図5は、画像メタ情報の一例を示す図である。画像メタ情報は、医用画像と同様に、検査IDと画像IDとによって一意に特定される。文節生成部24は、部位特定部22からの医用画像、部位の領域及び部位名称を取得すると、当該医用画像と同一の検査ID及び画像IDを有する画像メタ情報を、画像メタ情報保持部28から取得する(S105)。
【0038】
文節パターン保持部26は、文節パターンを保持している。図7は、文節パターンの一例を示す図である。これら文節パターンにおいて、[ ]は、部位名称や画像メタデータが挿入される部分である。文節生成部24は、文節パターン保持部26に保持されている文節パターンを取得する。更に、文節生成部24は、取得した文節パターンの[ ]に部位特定部22からの部位名称や、画像メタ情報保持部28から取得した画像メタ情報に対応する語句を挿入することによって、文節を生成する(S106)。
【0039】
一方、S104において部位名称が指定されなかったと判定された場合、具体的には、モニタ106に一覧形式で表示されている部位名称のうち、医師が適切であると考えるものが指定されなかった場合、あるいは、S103において、部位特定部22が指定された領域に対応する部位の名称を取得することができなかった場合には、文節生成部24は、医師による操作部105(例えばキーボード)の操作に応じて、文節を生成する(S107)。
【0040】
S106及びS107における文節生成の後、文節生成部24は、生成した文節、その生成した文節に含まれる部位名称、当該部位名称に対応付けられている部位領域及び医用画像、生成した文節に含まれる画像メタ情報、医師が指定した領域を、編集部30へ出力する。編集部30は、これら文節、部位名称、部位領域、医用画像、画像メタ情報、医師が指定した領域を入力すると、文節を編集中の所見や読影レポートに追加する(S108)。
【0041】
例えば、医師によって部位名称「右視床」が指定され、画像メタ情報に含まれる撮影法に関する情報が「T1強調像」であり、文節パターンが「[撮影法]で[部位名称]に」である場合には、文節生成部24は、部位名称「右視床」を文節パターンの[部位名称]に挿入するとともに、画像メタ情報に対応する語句「T1強調像」を文節パターンの[撮影法]に挿入して、文節「T1強調像で右視床に」を生成し、更に、編集部30は、この文節を編集中の所見や読影レポートに追加することによって、「T1強調像で右視床に高信号領域が見られます。」等の文を作成する。なお、編集部30は、文節によって修飾される名詞(ここでは「高信号領域」)については、予め出現頻度が高いと判断されている複数の語句群を保持しておき、プルダウン形式等によってモニタ106に表示させ、医師が指定した語句が挿入されるようにしてもよい。
【0042】
このように、本実施形態の文書編集支援システムは、医師がモニタ106に医用画像とともに表示された、当該医用画像における対象物の領域を操作部105の操作によって指定するという、直感的な操作がなされた場合に、その操作に応じて、対象物の指定された領域に対応する部位名称のみならず、当該部位名称を含んだ文節が編集中の所見や読影レポートに追加され、自然言語文である所見や読影レポートの作成が容易になる。
【0043】
ところで、所見や読影レポートの作成においては、医師は、複数の撮影法で同一部位を撮影して得られた医用画像を同時に参照する場合が多い。このような場合、文書編集支援システムは、医用画像のそれぞれに対応する文節を生成することができる。具体的には、表示制御部18は、同一部位を撮影して得られた医用画像のいずれかがモニタ106に表示させる制御を行うとともに、解析結果保持部16に保持された解析結果のうち、表示されている医用画像を有する解析結果を取得して部位特定部22へ出力する。更に、表示制御部18は、解析結果保持部16に保持された解析結果のうち、表示されている医用画像を有する解析結果内の部位名称と同一の部位名称を有する解析結果を取得して部位特定部22へ出力する。
【0044】
次に、部位特定部22は、医師による操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作によって、モニタ106に表示されている医用画像に対応する対象物の領域が指定された場合、その指定された領域に対応する部位名称を取得する処理を行う。具体的には、部位特定部22は、医師による操作部105の操作に応じて、表示中の医用画像において指定された領域の座標を取得し、表示中の医用画像を含む解析結果内の各部位領域の座標と比較する。そして、部位特定部22は、表示制御部18からの各部位領域のうち、表示中の医用画像において指定された領域と重複するものを特定する。更に、部位特定部22は、特定した部位領域に対応付けられている部位名称を取得し、表示制御部18へ送る。
【0045】
表示制御部18は、これらの部位名称を部位名称の候補として、医用画像とともにモニタ106に表示させる制御を行う。その後、医師による操作ユニットとしての操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作によって、モニタ106に一覧形式で表示されている部位名称のうち、医師が適切であると考えるものが指定された場合、部位特定部22は、その部位名称、換言すれば、医師が指定した部位名称と、当該部位名称を有する解析結果における医用画像と、当該部位名称に対応する部位領域と、医師が指定した領域とを文節生成部24へ送る。これにより、文節生成部24は、医師が指定した部位名称と、同一部位の撮影によって得られた複数の医用画像と、当該医用画像のそれぞれにおいて医師が指定した部位名称に対応する部位領域と、医師が指定した領域とを取得することができる。
【0046】
文節生成部24は、部位特定部22からの医用画像、部位の領域、部位名称、医師が指定した領域を取得すると、医用画像毎に、当該医用画像と同一の検査ID及び画像IDを有する画像メタ情報を、画像メタ情報保持部28から取得するとともに、文節パターン保持部26に保持されている文節パターンを取得する。そして、文節生成部24は、医用画像毎に、取得した文節パターンの[ ]に部位特定部22からの部位名称や、画像メタ情報保持部28から取得した画像メタ情報に対応する語句を挿入することによって、文節を生成する。更に、編集部30は、医用画像毎に生成された文節を編集中の所見や読影レポートに追加する。
【0047】
例えば、同一部位の撮影によって得られ、撮影法が「T1強調像」及び「T2強調像」である2つの医用画像が存在し、医師によって部位名称「右視床」が指定され、画像メタ情報に含まれる撮影法に関する情報が「T1強調像」あるいは「T2強調像」と、縮尺に関する情報が「75」であり、文節パターンが「[撮影法]で[部位名称]に[大きさ]の」である場合を考える。この場合、文節生成部24は、部位名称「右視床」を文節パターンの[部位名称]に挿入するとともに、画像メタ情報に含まれる撮影法に関する情報に対応する語句「T1強調像」あるいは「T2強調像」を文節パターンの[撮影法]に挿入する。更に、文節生成部24は医師が指定した領域と画像メタ情報に含まれる縮尺に関する情報とに基づいて、医師が指定した領域の大きさを算出し、その大きさに対応する語句(ここでは「直径約2mmの範囲」)を文節パターンの[大きさ]に挿入する。これにより、撮影法が「T1強調像」である医用画像に対応する文節「T1強調像で右視床に直径約2mmの範囲の」と、撮影法が「T2強調像」である医用画像に対応する文節「T2強調像で右視床に直径約2mmの範囲の」とが生成される。そして、編集部30は、これらの文節を編集中の所見や読影レポートに追加することによって、図8(a)に示す「T1強調像で右視床に直径約2mmの範囲の高信号領域が見られます。」、図8(b)に示す「T2強調像で右視床に直径約2mmの範囲の高信号領域が見られます。」等の医用画像毎の文を作成する。これにより、同一部位の撮影によって得られる医用画像毎の自然言語文である所見や読影レポートの作成が容易になる。
【0048】
また、編集部30は、図9に示すように、文節によって修飾される名詞(対応語句)と、医師による操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作、具体的には、右クリック、左クリック、移動等の操作とを対応付けたテーブル(対応テーブル)を保持しておき、医師による操作部105の操作がなされた場合には、その操作に対応する名詞を編集中の所見や読影レポートの文に、文節の修飾先となる名詞を挿入するようにしてもよい。例えば、文節「T1強調像で右視床に」が得られ、更に医師が、ポインティングデバイスを右クリックして、2回以上円を描くように移動させた場合には、図9によれば、関連語句として「高信号領域」が得られ、例えば、「T1強調像で右視床に高信号領域が見られます。」等の文が作成される。これにより、医師の直感的な操作によって、部位名称を含んだ文節によって修飾される語句が迅速に編集中の所見や読影レポートに追加される。
【0049】
再び、図2に戻って説明する。編集部30は、医用画像毎に、当該医用画像、文節を含む文、部位名称、部位領域、画像メタ情報、医師が指定した領域を対応付けて、文書画像関連情報として、文書画像関連情報保持部34に保持させる。その後、表示制御部18は、医師による操作部105(例えばマウス等のポインティングデバイス)の操作に応じて、文書画像関連情報保持部34に保持された文書画像関連情報を読み出し、当該文書画像関連情報に含まれる医用画像や文をモニタ106に表示させる制御を行う。
【0050】
図10は、文書画像関連情報の表示の一例を示す図である。図10の表示には、同一部位の撮影によって得られた複数の医用画像211及び212と、所見220とが含まれている。この表示は、医用画像211に対応する文書画像関連情報と、医用画像212に対応する文書画像関連情報とによって得られる。医師が操作部105を操作して、医用画像211の所定位置を指定すると、表示制御部18は、医用画像211に対応する文書画像関連情報に基づいて、医用画像211において指定された部位に対応する部位領域を特定する。また、表示制御部18は、医用画像212に対応する文書画像関連情報に基づいて、医用画像211において指定された部位に対応する、医用画像212における部位領域を特定する。更に、表示制御部18は、所見220において、医用画像211に対応する文書画像関連情報内の特定した部位領域に対応する文節を含む文222に下線を付して強調表示する。更に、表示制御部18は、所見220において、医用画像212に対応する文書画像関連情報内の特定した部位領域に対応する文節を含む文224を太字にしたり、色を変えて強調表示する。これにより、医師は、医用画像の所定領域に対応する部位名称についての記述を容易に取得することが可能となる。
【0051】
検索部36は、医師による操作部105の操作に応じて文書画像関連情報保持部34に保持された文書画像関連情報を検索し、モニタ106に表示されている医用画像や所見等に関連する文書画像関連情報を取得する。具体的には、表示されている文書画像関連情報における医用画像の領域が指定された場合には、検索部36は、その医用画像と同一の撮影法によって得られ、且つ、指定された領域に対応する部位を表す部位名称を含む文を有する文書画像関連情報、指定された領域に対応する部位を表す部位名称を含む文を有する文書画像関連情報等を検索により取得する。また、表示されている文書画像関連情報における文が指定された場合には、検索部36は、指定された文に含まれる部位名称を含む文を有する文書画像関連情報等を検索により取得する。あるいは、医用画像の撮影法、部位名称、部位の大きさ、文に含まれる自立語(小結節状、斑状、高信号、ラクナ梗塞、白質梗塞、虚血、多発性脳血管障害、信号変化)等が検索キーとして指定された場合には、検索部36は、当該検索キーを含む文を有する文書画像関連情報を検索により取得する。
【0052】
検索により取得された文書画像関連情報は、表示制御部18へ出力され、当該表示制御部18は、入力した文書画像関連情報に含まれる医用画像や文をモニタ106に表示させる制御を行う。これにより、医師は、書画像関連情報に含まれる文書の読解や画像の認識、新たな所見や読影レポートの作成に他の文書画像関連情報に含まれる文書や画像を役立てることができる。
【0053】
また、文節生成部24は、予め部位名称と医用画像の撮影法との関連度を算出し、保持しておくようにしてもよい。図11は、部位名称と撮影法との関連度の一例を示す図である。そして、文節生成部24は、文節を生成する際に、部位名称と撮影法との関連度が予め定められた、あるいは、機械学習手法によって定められた所定の閾値以上である場合にのみ、文節パターンにこれら部位名称と撮影法とを挿入する。例えば、部位名称と撮影法との関連度が図11で示され、閾値が0.5である場合には、部位名称「小脳」と撮影法「T2強調像」との組み合わせを文節パターンに挿入した文節は生成されない。これにより、関連度の低い部位名称と撮影法とを含む不適切な文節が生成されることが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、説明したように、本発明に係る文書編集支援システム、文書編集支援方法及び文書編集支援プログラムは、自然言語文の文書作成に適した文書編集支援が可能であり、文書編集支援システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】文書編集支援システムのハードウェア構成を示す図である。
【図2】文書編集支援システムの機能ブロック図を示す図である。
【図3】部位名称及び部位領域の一例を示す図である。
【図4】文書編集支援システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】医用画像及び部位名称候補一覧の一例を示す図である。
【図6】画像メタデータの一例を示す図である。
【図7】文節パターンの一例を示す図である。
【図8】文節を含む文の一例を示す図である。
【図9】操作と対応語句との対応テーブルの一例を示す図である。
【図10】文書画像関連情報の表示の一例を示す図である。
【図11】部位名称と撮影法との関連度の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
12 医用画像保持部
14 医用画像解析部
16 解析結果保持部
18 表示制御部
22 部位特定部
24 文節生成部
26 文節パターン保持部
28 画像メタ情報保持部
30 編集部
32 座標取得部
34 文書画像関連情報保持部
36 検索部
100 PC
102 メモリ
103 HDD
105 操作部
106 モニタ
107 内部バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とを対応付けて保持する第1の保持手段と、
表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、前記第1の保持手段に保持された前記対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる第1の表示制御手段と、
前記第1の表示制御手段によって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加手段とを有することを特徴とする文書編集支援システム。
【請求項2】
前記生成手段は、予め定められた文節の形式を表す文節パターンに前記指定された部位名称を挿入することにより文節を生成することを特徴とする請求項1に記載の文書編集支援システム。
【請求項3】
前記対象物の画像に該画像の属性を表す情報であるメタ情報が対応付けられており、
前記画像のメタ情報を取得する第2の取得手段を有し、
前記生成手段は、前記第2の取得手段によって取得されたメタ情報に対応する語句を含む文節を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の文書編集支援システム。
【請求項4】
前記第2の取得手段は、撮影法が異なる同一の部位を含む複数の画像のそれぞれに対応するメタ情報を取得し、
前記生成手段は、前記第2の取得手段によって取得されたメタ情報毎に、該メタ情報に対応する語句を含む文節を生成することを特徴とする請求項3に記載の文書編集支援システム。
【請求項5】
前記部位名称を含む文節によって修飾されるべき語句を予め定められた語句群から取得する第3の取得手段と、
前記第3の取得手段によって取得された語句を前記生成手段によって生成された文節に付加する付加手段とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の文書編集支援システム。
【請求項6】
操作ユニットの複数の操作のそれぞれと語句との対応関係を示すテーブルを有し、
前記第3の取得手段は、前記テーブルを参照して操作ユニットの操作に対応した語句を前記部位名称を含む文節によって修飾されるべき語句として取得することを特徴とする請求項5に記載の文書編集支援システム。
【請求項7】
前記部位名称を含む文節が追加された文書、前記文節に含まれる部位名称によって表される部位を含む画像、及び、該画像において前記文節に含まれる部位名称で表される部位の領域を関連付けた情報である文書画像関連情報を保持する第2の保持手段と、
前記第2の保持手段によって保持された文書画像関連情報に含まれる文書及び画像を表示画面に表示させるとともに、該表示された画像において指定された領域に対応する部位名称を含む文を特定して表示させる第2の表示制御手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の文書編集支援システム。
【請求項8】
前記表示された前記文書画像関連情報に含まれる文又は画像における領域が指定された場合に、前記指定された文に含まれる部位名称、又は、前記指定された領域に対応する部位を表す部位名称を含む文節が追加された文書を含む文書画像関連情報を検索する第1の検索手段と、
前記第1の検索手段による検索により得られた文書画像関連情報に含まれる文書及び画像の少なくともいずれかを前記表示画面に表示させる第3の表示制御手段とを有することを特徴とする請求項7に記載の文書編集支援システム。
【請求項9】
検索キーが入力された場合に、該検索キーを含む文書画像関連情報を検索する第2の検索手段と、
前記第2の検索手段による検索により得られた文書画像関連情報に含まれる文書及び画像の少なくともいずれかを前記表示画面に表示させる第4の表示制御手段とを有することを特徴とする請求項7又は8に記載の文書編集支援システム。
【請求項10】
前記部位名称と前記画像の撮影法との関連度を算出する関連度算出手段を有し、
前記生成手段は、前記関連度が所定値以上である前記部位名称及び撮影法を含む文節を生成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の文書編集支援システム。
【請求項11】
表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、保持手段に保持された対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる表示制御ステップと、
前記表示制御ステップによって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成ステップと、
前記生成ステップによって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加ステップとを有することを特徴とする文書編集支援方法。
【請求項12】
表示画面に表示された対象物の画像において領域が指定されたときに、保持手段に保持された対象物の画像における該対象物の各部位の領域と、該部位を表す部位名称とから、前記指定された領域に対応する候補としての部位名称を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された部位名称の候補を前記表示画面に表示させる表示制御ステップと、
前記表示制御ステップによって前記表示画面に表示された部位名称の候補から指定された部位名称を含む文節を生成する生成ステップと、
前記生成ステップによって生成された文節を編集すべき文書に追加する追加ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする文書編集支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−108079(P2008−108079A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290541(P2006−290541)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】