説明

斜張橋の斜材ケーブル除雪装置

【課題】 特に、斜張橋の斜材ケーブルのうち、主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの除雪を効率的に行うことができる装置を提供することである。
【解決手段】 主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの各々に配置され、正面形状が逆U形の本体(12)を備え、本体が、斜材ケーブルの上部分と左右側部分を覆うように、斜材ケーブルに堅固に固定されており、本体の内部に、開放部を有する空洞(12a)が形成され、空洞の開放部が、一方の側に微小な隙間のスリット(14)が形成されるように、プレート(16)で被覆されており、本体の空洞内に供給した圧縮空気をスリットから面状に噴出させることにより、斜材ケーブルに付着した雪氷を除去するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、斜張橋の斜材ケーブルに付着した雪氷を除去するための斜材ケーブル除雪装置に関する。より詳細には、本発明は、斜張橋の斜材ケーブルのうち、主塔側に近接した部分に付着した雪氷を除去するための斜材ケーブル除雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
斜張橋は、国内においても多数の施工例がある橋梁の型式であり、主塔から延びた斜材ケーブルによって主桁を支持することを特徴としている(図2(a)参照)。斜張橋は、積雪寒冷地では、斜材ケーブルへの雪の付着が問題となっており、付着した雪が凍結して落下し、走行車両に当たった事例も報告されている。
【0003】
従来、斜張橋の斜材ケーブルに付着した雪の除去は、斜材ケーブル1本毎に筒状の雪取り装置を取り付け、主塔上端に設置したウインチで雪取り装置を引き上げることにより行われていたが、作業効率が悪いため、本発明者らは、斜材ケーブルに付着した雪氷を効果的に除去することができる装置を開発した(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特願2004−6196号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている除雪装置は、幸いにも好評をもって迎えられたが、この装置では、斜材ケーブルのうち、主塔との取付け部付近の除雪を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、斜張橋の斜材ケーブルのうち、主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの除雪を効率的に行うことができる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の斜張橋の斜材ケーブル除雪装置は、主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの各々に配置され、正面形状が逆U形の本体を備え、前記本体が、斜材ケーブルの上部分と左右側部分を覆うように、斜材ケーブルに堅固に固定されており、前記本体の内部に、開放部を有する空洞が形成され、前記開放部が、一方の側に微小な隙間のスリットが形成されるように、プレートで被覆されており、前記本体の前記空洞内に供給した圧縮空気を前記スリットから面状に噴出させることにより、斜材ケーブルに付着した雪氷を除去するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の斜張橋の斜材ケーブル除雪装置は、前記請求項1の装置において、斜張橋の主塔の頂部に配置された第2本体を更に備え、前記第2本体の内部に、開放部を有する空洞が形成され、前記開放部が、一方の側に微小な隙間のスリットが形成されるように、プレートで被覆されており、前記第2本体の前記空洞内に供給した圧縮空気を前記スリットから面状に噴出させることにより、主塔の頂部に付着した雪氷を除去するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の斜張橋の斜材ケーブル除雪装置は、前記請求項1又は2の装置において、前記本体及び前記第2本体が、全体として矩形の横断面をもち、前記スリットに隣接した部分に、第1傾斜面及び第2傾斜面がそれぞれ設けられており、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面が互いに連続しており、前記スリットの位置する部分から見て、前記第2傾斜面の傾斜角度が前記第1傾斜面の傾斜角度よりも大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載の斜張橋の斜材ケーブル除雪装置は、前記請求項1から3までのいずれか1項の装置において、前記各本体に圧縮空気を供給する送気管のうち、前記各本体に隣接した部分に、前記各本体への圧縮空気の供給を遮断するバルブがそれぞれ配置されており、前記バルブの開閉を制御することにより、圧縮空気が各斜材ケーブルに沿って断続的に噴出するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、斜張橋の斜材ケーブルのうち、主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの除雪を効率的に行うことができる。また、斜張橋の主塔頂部に降り積もった雪を効率的に除去することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る斜材ケーブル除雪装置について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る斜材ケーブル除雪装置を概略的に示した全体図である。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る斜材ケーブル除雪装置は、主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの各々に配置された本体12を備えている。
【0013】
本体12は、図3(b)に示されるように、正面形状が逆U形を有しており、斜材ケーブルの上部分と左右側部分(即ち、雪が積もる部分)を覆うように、取付具(図示せず)によって斜材ケーブルに堅固に固定されている。本体12の内部には、開放部を有する空洞12aが形成されている。空洞12aの開放部は、一方の側に微小な隙間のスリット14が形成されるように、プレート16で被覆されている。
【0014】
図3(c)を参照してより詳細に説明すると、本体12の空洞12aの開放端の両側に位置する部分のうち、スリット14が位置する側の高さを僅かに低くしておき、プレート16で空洞12aの開放端を被覆することにより、高さが低くなっている側にスリット14が形成されることとなる。本体12の空洞12aのスリット14が形成されている側には、プレート16を支持するための支持部12bを一定間隔で設けるのが好ましい(図4参照)。本体12及びプレート14は、合成樹脂材料や金属材料等の適当な材料で形成してよい。なお、図3に示す例では、プレート16は、ボルト16aによって本体12に堅固に固定されている。
【0015】
本体12は、全体として矩形の横断面をもち、スリット14に隣接した部分に、第1傾斜面12c、及び第2傾斜面12dが設けられている(図3(c)参照)。第1傾斜面12cと第2傾斜面12dは、互いに連続しており、スリット14の位置する部分から見て、第2傾斜面12dの傾斜角度は、第1傾斜面12cの傾斜角度よりも大きい。
【0016】
本体12の空洞12aには、後述するように、圧縮空気が供給されるようになっている。空洞12aに供給された圧縮空気は、スリット14から面状に噴出される。第1傾斜面12c及び第2傾斜面12dに負圧が発生するため、スリット14を通過する空気は、図5に示されるように、第1傾斜面12c及び第2傾斜面12dに引き寄せられ、周囲の空気を取り込んで空気量を増しながら、スリット14の方向と直交する方向Wに流れる。
【0017】
なお、図6に示されるように、図3に示される向きとは異なる向きに、本体12を配置してもよい。この場合にも、斜材ケーブルの長さ方向に沿って空気流Wが形成されるが、図3に示される場合と比較して、斜材ケーブルからの距離が大きくなる。
【0018】
斜材ケーブル除雪装置10は又、本体12に圧縮空気を供給するためのコンプレッサ18と、コンプレッサ18と各本体12とを接続する送気管20とを備えている。各本体12に隣接した送気管20の部分には、本体12に圧縮空気を供給し又は供給遮断するバルブ22がそれぞれ配置されている。
【0019】
斜材ケーブル除雪装置10は更に、降雪を検知するセンサ24と、装置10の作動を制御する制御ユニット26とを備えている。制御ユニット26は、センサ24で降雪を検知すると、コンプレッサ18を作動させるとともに、送気管20に配置されている各バルブ22に開閉信号を出すように構成されている。制御ユニット26は、コンピュータを利用した通常の型式のものでよい。なお、図1において参照符号28は、空気貯蔵タンクを示している。
【0020】
次に、以上のように構成された斜材ケーブル除雪装置10の使用について説明する。センサ24によって降雪が検知されると、制御ユニット26は、コンプレッサ18を作動させ、送気管20を通して本体12に圧縮空気を供給する(その状態では、全てのバルブ22は閉鎖されている)。次いで、1つのバルブ(本項での説明上、「第1バルブ」という。本項では、別のバルブを以下「第2バルブ」、「第3バルブ」、・・・、「第nバルブ」という)のみを開放して、第1バルブに対応する本体12から圧縮空気を噴出させて斜材ケーブルの除雪を行った後に第1バルブを閉鎖する。次いで、第2バルブを開放し、別の斜材ケーブルに対して同様の作業を行った後に第2バルブを閉鎖する。次いで、第3バルブを開放し、更に別の斜材ケーブルに対して同様の作業を行った後に第3バルブを閉鎖する。以上を繰り返すことによって、全ての斜材ケーブルの除雪を実施することができる。なお、除雪の状況によっては、第nバルブに対応する斜材ケーブルの除雪を行った後に、再び最初に戻って、第1バルブに対応する斜材ケーブルの除雪を行ってもよい。
【0021】
好ましくは、斜材ケーブル除雪装置10は、主塔頂部の除雪を行う部分を備えている。図7は、斜材ケーブル除雪装置10を主塔頂部の除雪に適用する形態を示した図である。この形態では、リング状の本体12′が取付具(図示せず)によって主塔頂部の支柱に堅固に固定されているが、本体12′は、本体12と実質的に同一の構成を有している。すなわち、本体12′の内部に、開放部を有する空洞12′aが形成され、空洞の開放部が、一方の側に微小な隙間のスリット14′が形成されるように、プレート16′で被覆されており、本体12′の空洞12′a内に供給した圧縮空気がスリット14′から面状に放射方向外方に噴出するようになっている(図7(c)のW参照)。なお、本体12′に圧縮空気を供給するためのコンプレッサ(図示せず)は、主塔頂部の内部に配置されている。
【0022】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0023】
本発明の装置は、平行な2本の斜材ケーブルが張られている型式の斜張橋(図2(b)参照)にも、或いは1本の斜材ケーブルが張られている型式の斜張橋(図2(c)参照)にも、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る斜材ケーブル除雪装置を概略的に示した全体図である。
【図2】図2(a)は一般的な斜張橋の全体図、図2(b)は平行な2本の斜材ケーブルが張られている型式の斜張橋を示した平面図、図2(c)は1本の斜材ケーブルが張られている型式の斜張橋を示した平面図である。
【図3】図3(a)は図1の部分3aの拡大図、図3(b)は図3(a)の線3b−3bに沿って見た図、図3(c)は図3(b)の線3c−3cに沿って見た断面図である。
【図4】図3(b)の線4−4に沿って見た図である。
【図5】本体のスリットから噴出する空気の流れを説明するための図である。
【図6】本体の別の配置形態を示した図であって、図6(a)は図3(a)と同様な図、図6(b)は図6(a)の線6b−6bに沿って見た断面図である。
【図7】図7(a)は図1の部分7aの拡大図、図7(b)は図7(a)の線7a−7aに沿って見た図、図7(c)は図7(b)の線7b−7bに沿って見た断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 斜材ケーブル除雪装置
12、12′ 本体
14、14′ スリット
16、16′ プレート
18 コンプレッサ
20 送気管
22 バルブ
24 センサ
26 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜張橋の斜材ケーブルに付着した雪氷を除去するための斜材ケーブル除雪装置であって、
主塔との取付け部付近の斜材ケーブルの各々に配置され、正面形状が逆U形の本体を備え、
前記本体が、斜材ケーブルの上部分と左右側部分を覆うように、斜材ケーブルに堅固に固定されており、前記本体の内部に、開放部を有する空洞が形成され、前記開放部が、一方の側に微小な隙間のスリットが形成されるように、プレートで被覆されており、 前記本体の前記空洞内に供給した圧縮空気を前記スリットから面状に噴出させることにより、斜材ケーブルに付着した雪氷を除去するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
斜張橋の主塔の頂部に配置された第2本体を更に備え、
前記第2本体の内部に、開放部を有する空洞が形成され、前記開放部が、一方の側に微小な隙間のスリットが形成されるように、プレートで被覆されており、前記第2本体の前記空洞内に供給した圧縮空気を前記スリットから面状に噴出させることにより、主塔の頂部に付着した雪氷を除去するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記本体及び前記第2本体が、全体として矩形の横断面をもち、前記スリットに隣接した部分に、第1傾斜面及び第2傾斜面がそれぞれ設けられており、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面が互いに連続しており、前記スリットの位置する部分から見て、前記第2傾斜面の傾斜角度が前記第1傾斜面の傾斜角度よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記各本体に圧縮空気を供給する送気管のうち、前記各本体に隣接した部分に、前記各本体への圧縮空気の供給を遮断するバルブがそれぞれ配置されており、前記バルブの開閉を制御することにより、圧縮空気が各斜材ケーブルに沿って断続的に噴出するように構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−316476(P2006−316476A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139211(P2005−139211)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
【出願人】(504016352)株式会社リテック (3)
【出願人】(598094517)株式会社双葉工業社 (1)
【出願人】(505108443)東浜商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】