説明

断層画像生成装置、方法、及びプログラム

【課題】所定の範囲で光音響画像を生成する際に、不要なレーザ発光を抑制する。
【解決手段】超音波画像生成手段16は、プローブ11で検出された反射超音波に基づいて超音波画像を生成する。光照射範囲設定手段20は、超音波画像中に、その画像範囲よりも狭い光照射範囲を設定する。ファイバ位置制御手段21は、ファイバ位置制御モータ22を駆動して、光ファイバ23の出射端の向きを制御する。光ファイバ23の出射端からは、光源12から出射したレーザ光が、被検体に向けて所定の光照射範囲で照射される。光音響画像生成手段17は、プローブ11で検出された光音響信号に基づいて、光照射範囲設定手段20が設定した範囲で光音響画像生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層画像生成装置及び方法に関し、更に詳しくは、反射超音波に基づく超音波画像と、光音響信号に基づく光音響画像とを生成する断層画像生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
光音響画像と超音波画像とを生成可能な装置が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、超音波探触子が、超音波の送信及び受信が可能な第1のアレイ素子と、光音響波の受信が可能な第2のアレイ素子とを有する。第1のアレイ素子は、超音波探触子を移動させて走査する際の超音波探触子の移動方向(走査方向)と垂直な方向に配列した機械電気変換素子を複数有し、第2のアレイ素子は、2次元に配列した機械電気変換素子を複数有する。第1のアレイ素子と第2のアレイ素子とは、同一平面上で、かつ走査方向に並んで配置されている。特許文献1では、第1のアレイ素子の幅は、第2のアレイ素子の幅よりも広くなっており、超音波画像と光音響画像とを同じ範囲で生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2010−22816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光音響用のレーザの使用にあたっては、ファイバへのダメージや省電力低減を考慮すると、可能な限りレーザ光の照射範囲を抑制できることが好ましい。しかしながら、光音響信号はレーザ光の照射により生じることから、レーザ光の照射範囲が狭いと、光音響画像で画像化できる範囲が狭くなる。光音響画像において所望の観察対象(関心領域)が画像化されているかは光音響画像を生成してみないとわからず、所望の観察対象が画像化の範囲に入っていないときには、超音波探触子を移動しながら、観察対象が光照射範囲に入るまで、レーザ光の照射と光音響画像の生成とを繰り返し行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、ある所定の範囲で光音響画像を生成する際に、不要なレーザ発光を抑制できる断層画像生成装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光源ユニットと、光源ユニットから出射した光を、被検体に向けて所定の光照射範囲で照射する光照射部と、被検体に対して音響波の送信を行う音響波送信手段と、光の照射により被検体内で生じた光音響波、及び送信された音響波に対する反射音響波を検出する音響波検出手段と、音響波検出手段が検出した反射音響波に基づいて、光照射範囲よりも広い範囲で反射音響波画像を生成する反射音響波画像生成手段と、反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波中に、光音響画像を生成すべき範囲を設定する光照射範囲設定手段と、光照射部から、光照射範囲設定手段が設定した範囲に向けて光が照射されるように光照射部を制御する光照射範囲制御手段と、音響波検出手段が検出した光音響波に基づいて、光照射範囲設定手段が設定した範囲で光音響画像生成する光音響画像生成手段とを備えたことを特徴とする断層画像生成装置を提供する。
【0009】
本発明では、光照射範囲設定手段が、反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波画像に、光照射部から光が照射される所定の光照射範囲を重ねて表示し、ユーザに、光音響画像を生成すべき範囲の設定を促すものとすることができる。この場合、光照射範囲設定手段は、ユーザが光音響画像を生成すべき範囲を移動させる操作を行うと、該操作に応じて、表示する光照射範囲の位置を移動させてもよい。
【0010】
上記に代えて、光照射範囲設定手段が、反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波画像に基づいて、光音響画像を生成すべき範囲を設定する構成を採用することができる。この場合、光照射範囲設定手段は、観察対象と該観察対象の反射音響波画像からの抽出条件とを対応付けて記憶するテーブルを参照し、ユーザが指定した観察対象に対応する抽出条件に基づいて反射音響波画像から観察対象を抽出し、該抽出した観察対象の位置を含む範囲を光音響画像を生成すべき範囲として設定することとしてもよい。
【0011】
反射音響波画像生成手段が、セクタ走査を行って検出された反射音響波に基づいて反射音響波画像を生成するものであり、光音響画像生成手段が、光照射範囲設定手段が設定した範囲内で走査線を走査して光音響画像を生成するものである構成とすることができる。
【0012】
光照射部が、光源ユニットからの光を導光する光ファイバの出射端で構成されており、光照射範囲制御手段が、光ファイバの出射端を変位させることで光制御部を制御してもよい。
【0013】
本発明においては、生成された光音響画像と反射音響波画像とを、並べて又は合成して表示してもよい。
【0014】
音響波検出手段の検出器素子が、音響波送信手段の送信器素子を兼ねることとしてもよい。
【0015】
本願発明の断層画像生成装置は、音響波検出手段の位置を検出するための位置センサと、位置センサからの信号に基づいて音響波検出手段の位置を測定する位置測定手段とを更に含む構成とすることができる。
【0016】
上記構成を採用した場合、位置測定手段で測定された音響波検出時の音響波検出手段の位置を用いて、光音響画像生成手段及び超音波画像生成手段のうちの少なくとも一方が、三次元画像データを生成することとしてもよい。
【0017】
光源が、相互に異なる複数の波長の光を出射可能としてもよい。
【0018】
本発明は、また、被検体に対して音響波の送信を行い、該送信された音響波に対する反射音響波を検出するステップと、
検出された反射音響波に基づいて反射音響波画像を生成するステップと、
生成された反射音響波画像中に、該反射音響波画像よりも狭い範囲で光音響画像を生成すべき範囲を設定するステップと、
被検体に対し、設定された範囲に向けて光を照射するステップと、
光の照射により被検体内で生じた光音響波を検出するステップと、
検出された光音響波に基づいて、設定された範囲で光音響画像を生成するステップとを有する断層画像生成方法を提供する。
【0019】
更に、本発明は、被検体内に送信された音響波に対する反射音響波の検出結果に基づいて反射音響波画像を生成する工程と、生成された反射音響波画像中に、該反射音響波画像よりも狭い範囲で光音響画像を生成すべき範囲を設定する工程と、被検体に対して設定された範囲で光が照射されるように、被検体に対する光照射を制御する工程と、光の照射により被検体内で生じた光音響信号の検出結果に基づいて、設定された範囲で光音響画像を生成する工程とをコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の断層画像生成装置、方法、及びプログラムは、超音波画像中に、超音波画像の画像範囲よりも狭い光照射範囲を設定し、設定した範囲にレーザ光の照射を行って光音響画像を生成する。超音波画像を用いることで、被検体内の関心領域の位置を特定することができ、その関心領域が光照射範囲に入るにように光照射部を制御することで、関心領域部分を光音響画像で画像化できる。本発明では、関心領域が光照射範囲に入るまで、超音波探触子を移動しながらレーザ光の照射と光音響画像の生成とを繰り返し行う必要がないため、不要なレーザ発光を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の断層画像生成装置を示すブロック図。
【図2】(a)及び(b)は、超音波画像の生成範囲と光音響画像の生成範囲とを示すブロック図。
【図3】光照射範囲の設定時の表示画面例を示す図。
【図4】動作例を示すタイミングチャート。
【図5】光音響画像生成の際の走査線を示す図。
【図6】光音響信号の位相整合加算を示す波形図。
【図7】動作手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の第2実施形態の断層画像生成装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の断層画像生成装置を示す。断層画像生成装置10は、プローブ11、光源(光源ユニット)12、送信回路13、受信回路14、ADコンバータ15、超音波画像生成手段16、光音響画像生成手段17、画像合成手段18、画像表示手段19、光照射範囲設定手段20、ファイバ位置制御手段21、ファイバ位置制御モータ22、CPU24、タイミング制御手段25、及び操作部26を備える。
【0023】
光源12は、例えばレーザ光源として構成され、被検体に照射すべき光を出射する。レーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。光源12から出射したレーザ光は、例えば光ファイバ23などの導光手段を用いて被検体の表面付近にまで導光される。光ファイバ23の端部は、被検体に対してレーザ光を照射する光照射部を構成し、導光されたレーザ光は、光ファイバ23の出射端から所定の光照射範囲で被検体に照射される。言い換えれば、光ファイバ23の出射端から出射したレーザ光は、所定の広がりを持って被検体に照射される。ファイバ位置制御モータ22は、光ファイバ23の出射端の向きを変位させ、レーザ光の出射方向を変化させる。
【0024】
プローブ(音響波検出手段)11は、被検体に対して音響波(典型的には超音波)を出力(送信)する音響波送信手段と、被検体からの音響波を検出(受信)する音響波検出手段とを含む。音響波検出手段の検出器素子は、音響波送信手段の送信器素子を兼ねていてもよい。すなわち、1つの素子を、音響波の送信と受信との双方に用いてもよい。音響波検出手段と音響波送信手段とは、必ずしも同一のプローブに設けられている必要はなく、音響波検出手段と音響波送信手段とが別の位置に置かれる構成も可能である。
【0025】
プローブ11は、例えば、音響波検出手段の検出器素子及び音響波送信手段の送信器素子として、一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。各超音波振動子は、被検体へのレーザ光の照射後に、被検体内の測定対象物が光源12からのレーザ光を吸収することで生じた光音響波を検出する。また、各超音波振動子は、被検体内に向けて超音波を出力し、送信した超音波に対する反射超音波(反射音響波)を検出する。プローブ11には、例えばセクタ走査型の超音波探触子を用いることができる。プローブ11のタイプには特に制限はなく、プローブ11は、経膣用や経直腸用のプローブでもよく、或いは、超音波内視鏡用に使用されるマイクロコンベックスタイプの探触子でもよい。
【0026】
送信回路13は、プローブ11の複数の超音波振動子を駆動し、プローブ11から被検体に向けて超音波を送信させる。受信回路14は、プローブ11が検出した音響波(光音響波又は反射音響波)の検出信号を受信する。ADコンバータ15は、受信回路14が受信した音響波の検出信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。ADコンバータ15は、例えばADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。
【0027】
超音波画像生成手段16は、プローブ11が検出した反射音響波の検出信号(以下、反射音響信号とも呼ぶ)に基づいて、反射音響波画像(超音波画像)を生成する。光音響画像生成手段17は、プローブ11が検出した光音響波の検出信号(以下、光音響信号とも呼ぶ)信号に基づいて、光音響画像を生成する。超音波画像生成手段16は、光音響画像の生成の際に光照射部から照射されるレーザ光の照射範囲よりも広い範囲で超音波画像を生成する。光音響画像生成手段17は、レーザ光の照射範囲に相当する範囲で光音響画像を生成する。光音響画像で画像化する範囲は、超音波画像で画像化する範囲よりも狭い。
【0028】
超音波画像生成手段16は、位相整合手段161と画像構築手段162とを含む。位相整合手段161は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された反射音響信号を位相整合加算する。位相整合手段161は、例えばプローブ11が有する64ch分の超音波振動子からの反射音響信号を、超音波振動子の位置に応じた遅延時間だけ遅延させつつ加算する。位相整合加算を行うことで、走査線1ライン分の画像信号が生成される。画像構築手段162は、位相整合加算された各ラインの画像信号に対して例えば検波・対数変換などを行った上で超音波画像を生成する。
【0029】
光音響画像生成手段17は、位相整合手段171と画像構築手段172とを含む。位相整合手段171は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された光音響信号を位相整合加算する。位相整合手段171は、例えばプローブ11が有する64ch分の超音波振動子からの光音響信号を、超音波振動子の位置に応じた遅延時間だけ遅延させつつ加算する。位相整合加算を行うことで、走査線1ライン分の画像信号が生成される。画像構築手段172は、各ラインの画像信号に対して例えば検波・対数変換などを行った上で、光音響画像を生成する。
【0030】
画像合成手段18は、超音波画像生成手段16で生成された超音波画像と、光音響画像生成手段17で生成された光音響画像と合成する。画像合成手段18は、例えば超音波画像に対して光音響画像を重畳することで、画像合成を行う。画像表示手段19は、画像合成手段18で合成された画像を、表示モニタなどに表示する。あるいは画像合成を行わずに、画像表示手段19に、超音波画像と光音響画像とを切り替えて表示してもよいし、光音響画像と超音波画像とを同時に並べて表示してもよい。
【0031】
光照射範囲設定手段20は、超音波画像生成手段16が生成した超音波画像中に、光音響画像を生成すべき範囲を設定する。光照射範囲設定手段20は、例えば超音波画像生成手段16が生成した超音波画像に、光照射部からレーザ光が照射される光照射範囲を重ねて表示し、ユーザに、光音響画像を生成すべき範囲の設定を促す。ユーザは、例えば操作部26が有するトラックボールなどのポインティングデバイスなどを操作し、光照射範囲(光音響画像を生成する範囲)を移動させる。光照射範囲設定手段20は、ユーザの操作に応じて、表示する光照射範囲の位置を移動させる。
【0032】
ファイバ位置制御手段21は、光照射範囲制御手段であり、光照射部から、光照射範囲設定手段20が設定した範囲に向けてレーザ光が照射されるように、光照射部を制御する。ファイバ位置制御手段21は、例えばファイバ位置制御モータ22を駆動することで光照射部である光ファイバ23の出射端を変位させ、光照射部から出射するレーザ光の進行方向を制御する。
【0033】
CPU(Central Processing Unit)24は、断層画像生成装置10内の各部を制御する。タイミング制御手段25は、レーザ光の発光タイミングや、プローブ11から被検体に超音波を送信するタイミング、及びADコンバータ15におけるサンプリング開始タイミングなどを制御する。超音波画像生成手段16、光音響画像生成手段17、画像合成手段18、光照射範囲設定手段20、ファイバ位置制御手段21、及びタイミング制御手段25は、CPU24とは異なるハードウェアによって実現されている必要はなく、それら手段の機能を、CPU24が所定のプログラムに従って処理を実行することで実現することとしてもよい。
【0034】
タイミング制御手段25は、例えば超音波画像を生成するフレームでは、送信回路に対して超音波の送信を指示すると共に、ADコンバータ15に反射音響信号のサンプリング開始を指示する。また、反射音響信号の検出後、超音波画像生成手段16に、超音波画像生成を指示する。一方、光音響画像を生成するフレームでは、光源12に対してレーザ光照射を指示すると共に、レーザ光の発光タイミングに合わせてADコンバータ15に光音響信号のサンプリング開始を指示する。また、光音響信号の検出後、光音響画像生成手段17に、光音響画像生成を指示する。
【0035】
図2(a)及び(b)は、超音波画像の生成範囲と光音響画像の生成範囲とを示す。図2(a)は正面図であり、(b)は側面図である。プローブ11は、例えば一次元配列されたCH0からCH63までの64個の超音波振動子を有する。超音波画像の生成では、各超音波振動子に対して時間差を与えて超音波送信を行わせることで、セクタ走査を行う。超音波画像生成手段16は、セクタ走査を行って検出された反射音響信号に基づいて、図2に画像範囲30として示す範囲について、超音波画像を生成する。
【0036】
光照射部を構成する光ファイバ23の先端(出射端)は、ファイバ位置制御モータ22を駆動することで向きが変位可能になっており、出射端の向きに応じて、レーザ光の照射範囲を変えることができる。レーザ光が照射される範囲は、図2に光照射範囲31として示すように、超音波画像の画像範囲30よりも狭い。本実施形態においては、レーザ光を照射する範囲と、光音響画像を生成する範囲とが一致しているものとする。すなわち、光照射範囲31は、光音響画像の画像範囲を表しているものとする。
【0037】
ユーザは、例えば表示された超音波画像を参照することで、光音響画像により観察したい部位の位置を特定する。例えば図2では、関心領域である測定対象物の領域32が、一部、現在の光照射範囲31から外れている。このような場合、ユーザは、例えば操作部26のトラックボールを操作し、関心領域にレーザ光が照射されるように、光照射範囲31を移動させる。
【0038】
図3は、光照射範囲の設定時の表示画面例を示す。ユーザは、光照射範囲を移動させたい方向に応じてトラックボールなどを操作する。光照射範囲設定手段20は、ユーザ操作に応じて、ファイバ位置制御手段21を介してファイバ位置制御モータ22を駆動し、光照射範囲を変化させる。また、光照射範囲設定手段20は、光照射範囲の移動に対応させて、超音波画像上に表示する光照射範囲31を表すグラフィック表示を移動する。ユーザは、表示画面上で光照射範囲31内に関心領域32が入ることを確認して、所定のキーを操作し、光照射範囲を確定する。
【0039】
光照射範囲設定手段20は、ユーザが確定した光照射範囲の空間位置情報をCPU24に通知する。CPU24は、光音響画像生成手段17に対して、確定した光照射範囲の空間位置情報、言い換えれば光音響画像を生成すべき範囲の空間位置情報を通知する。光音響画像生成手段17は、例えば光照射範囲設定手段20が設定した範囲内で走査線を走査し、光音響画像を生成する。
【0040】
図4は、動作例を示すタイミングチャートである。タイミング制御手段25は、CPU24からの制御で、フレーム同期信号(a)を生成する。タイミング制御手段25は、フレーム同期信号(a)に同期して、超音波画像又は光音響画像を生成させる。超音波画像を生成するフレームと、光音響画像を生成するフレームとの比率は、任意でよい。タイミング制御手段25は、超音波画像を生成するフレームでは、送信回路13に対して超音波送信を指示し、受信回路14に対して反射超音波の受信を指示する。また、ADコンバータ15に対して、受信回路14が受信する反射超音波のサンプリング開始を指示する。ADコンバータ15が所定の期間だけ反射超音波のサンプリングを行うことで、図示しない素子データメモリに、反射超音波のサンプリングデータが格納される(b)。超音波画像生成手段16は、プローブ11の各素子で検出された反射超音波を位相整合加算し、超音波画像を生成する。
【0041】
一方、タイミング制御手段25は、光音響画像を生成するフレームの直前のフレームのフレーム同期信号の立ち上がりタイミングで、光源12にレーザ光照射を指示する(c)。光源12は、レーザ光照射の指示を受けてから、所定の時間後にレーザ光を出射する(d)。タイミング制御手段25は、受信回路14に対して光音響信号の受信を指示する。また、レーザ光の実際の出射タイミングに合わせて、ADコンバータ15に対して光音響信号のサンプリング開始を指示する。ADコンバータ15が所定の期間だけ光音響信号のサンプリングを行うことで、図示しない素子データメモリに、光音響信号のサンプリングデータが格納される(e)。光音響画像生成手段17は、プローブ11の各素子で検出された光音響信号を位相整合加算し、光音響画像を生成する。
【0042】
図5は、光音響画像生成の際の走査線を示す。プローブ11は、例えば64個の超音波振動子有している。紙面向って一番右側がCH0で、一番左側がCH63であるとする。光音響画像生成手段17は、例えば64個の超音波振動子の中央を通る走査線を光照射範囲31内に設定し、各走査線において、64ch分の光音響信号を位相整合加算する。
【0043】
図6に、光音響信号の位相整合加算を示す。位相整合加算は、時刻をt、超音波振動子の位置に応じた遅延量をtdlyi(iはch番号で0〜63)として、
【数1】

で表わすことができる。位相整合加算では、電子ステアリングを含めた位相整合加算を行う。図5では走査線が光吸収体方向にステアリングしている。その場合、CH0側の遅延量(tdly0)は、CH63側の遅延量(tdly63)よりも大きくなる。なお、超音波画像生成における位相整合加算も、光音響画像生成における位相整合加算と同様な処理となる。ただし、光音響画像生成では復路距離(片道)分の遅延量を考慮して位相整合加算を行うのに対し、超音波画像生成では往復距離の遅延量を考慮して位相整合加算を行う。
【0044】
図7は、動作手順を示す。送信回路13は、プローブ11が有する複数の超音波振動子を駆動し、プローブ11から被検体内に超音波を送信させる(ステップS1)。受信回路14は、プローブ11の各超音波振動子が検出した反射超音波を受信し、ADコンバータ15は、受信された反射超音波をAD変換する(ステップS2)。超音波画像生成手段16は、位相整合手段161により、AD変換された反射超音波のサンプリングデータに対して位相整合加算を行い(ステップS3)、画像構築手段162により、位相加算された反射超音波から超音波画像を生成する(ステップS4)。
【0045】
光照射範囲設定手段20は、超音波画像に、レーザ光の照射範囲を重ねて表示し、ユーザに光照射範囲の設定を促す。ユーザは、超音波画像を見ながら操作部26を操作し、所望の観察対象(関心領域)が光照射範囲内に入るように、光照射範囲を設定する(ステップS5)。ファイバ位置制御手段21は、ファイバ位置制御モータ22を駆動し、ユーザが設定した光照射範囲にレーザ光が照射されるように、光照射部である光ファイバ23の出射端の向きを制御する(ステップS6)。光照射範囲設定手段20は、ユーザが光照射範囲の設定を確定する操作を行うと、光照射範囲の空間情報をCPU24に通知する(ステップS7)。
【0046】
光照射範囲の設定後、タイミング制御手段25は、CPU24からの指示により、光源12に発光指令を送る。光源12は、発光指令を受け取ると、所定時間の経過後にレーザ光を出射する。出射したレーザ光は、光ファイバ23の出射端から被検体に照射される(ステップS8)。受信回路14は、プローブ11の各超音波振動子が検出した光音響信号を受信し、ADコンバータ15は、受信された光音響信号をAD変換する(ステップS9)。光音響画像生成手段17は、位相整合手段171により、AD変換された光音響信号のサンプリングデータに対して位相整合加算を行い(ステップS10)、画像構築手段172により、位相加算された光音響信号から光音響画像を生成する(ステップS11)。
【0047】
本実施形態では、光音響画像の生成の前に超音波画像の生成を行い、超音波画像中に、超音波画像の画像範囲よりも狭い光照射範囲を設定する。光音響画像の生成では、超音波画像を用いて設定した光照射範囲にレーザ光を照射し、その範囲で光音響画像を生成する。超音波画像を観察して、光音響画像で観察したい関心領域の位置を確認し、その関心領域が光照射範囲内に含まれるように光照射範囲を設定することで、関心領域部分を光音響画像で画像化することができる。特に、超音波画像に光照射範囲を重ねて表示し、ユーザ操作に従って重ねて表示する光照射範囲を移動させることで、ユーザは、光照射範囲と関心領域との位置関係を把握しながら、光照射範囲の調整を行うことができる。
【0048】
ここで、光音響画像の画像範囲を超音波画像の画像範囲と同様な範囲まで広げることを考えると、十分な強度で光音響信号を検出するためには、光源12が出射するレーザ光のレーザパワーを増大させる必要がある。光ファイバ23へのダメージや消費電力を考慮すると、大パワーのレーザ光の使用は好ましくない。本実施形態では、光照射範囲を超音波画像の画像範囲よりも狭くしているため、大パワーのレーザ光を光ファイバ23に入射する必要がなく、光ファイバ23の損傷を抑えることができると共に消費電力低減が可能である。
【0049】
一方で、光照射範囲を狭めると、光音響画像の画像範囲が狭くなる。超音波画像の画像範囲に比して光音響画像の画像範囲が狭くなると、適切に光照射範囲を設定しないと、超音波画像では観察可能な関心領域が、光音響画像で観察できなくなる。本実施形態では、超音波画像を用いて光照射範囲を設定しているため、超音波探触子を移動しながらレーザ光の照射と光音響画像の生成とを繰り返し行わなくても、関心領域にレーザ光を照射することができる。本実施形態では、簡易に関心領域にレーザ光を照射することができるため、関心領域を光音響画像で画像化する際の不要なレーザ発光を抑制することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、光照射範囲設定手段20が、ユーザ操作に応じて光照射範囲を設定することとして説明したが、これに代えて、光照射範囲設定手段20が、超音波画像又はその生成元の反射超音波に基づいて、光照射範囲(光音響画像を生成すべき範囲)を設定することとしてもよい。例えば、光照射範囲設定手段20は、超音波画像の画素値(輝度値)に基づいて関心領域を抽出し、抽出した関心領域の位置を含む範囲を光照射範囲として設定してもよい。これに代えて、又は加えて、光照射範囲設定手段20が、反射超音波からドプラー成分検出し、大きいドプラー成分が検出される領域を含む範囲を光照射範囲として設定してもよい。ユーザは、光照射範囲設定手段20が、超音波画像に基づいてどのように光照射範囲を設定するかを、設定(選択)することができる。
【0051】
光照射範囲設定手段20は、超音波画像から関心領域を抽出する際に、観察対象と、その観察対象の超音波画像からの抽出条件とを対応付けて記憶するテーブルを用いてもよい。例えば、観察対象「嚢胞」に対して、「中輝度組織部における低エコー部」を抽出条件としてテーブルに登録しておき、観察対象「腫瘍」に対して、「中輝度組織部における高エコー部」を抽出条件としてテーブルに登録しておく。ユーザが観察対象を指定すると、光照射範囲設定手段20は、指定された観察対象に対応する抽出条件をテーブルから読み出し、読み出した抽出条件に従って超音波画像から観察対象を抽出する。例えばユーザが「嚢胞」を観察対象として指定したときは、それに対応する抽出条件「中輝度組織部における低エコー部」を読み出し、その抽出条件に従って超音波画像から「嚢胞」部分を抽出すればよい。光照射範囲設定手段20が自動設定した光照射範囲に対し、更にユーザが任意に光照射範囲を調整できるようにしてもよい。
【0052】
図8は、本発明の第2実施形態の断層画像生成装置を示す。本実施形態の断層画像生成装置10aは、図1に示す第1実施形態の断層画像生成装置10の構成に加えて、位置センサ27及び位置測定手段28を更に有する。位置センサ27は、プローブ11の位置を検出するためのセンサである。位置センサ27には磁気センサを用いることができる。位置測定手段28は、位置センサ27からの信号に基づいて、音響波(光音響波又は反射音響波)の検出時のプローブ11の位置を測定する。
【0053】
プローブ11は、音響波検出手段11aと音響波送信手段11bをと含んでいる。音響波検出手段11aには、光音響用に受信帯域が広いPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの素子が用いられる。一方、音響波送信手段11bには、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの素子が用いられる。例えば音響波検出手段11aと音響波送信手段11bとが分離している場合、位置センサ27は、音響波検出手段11aに取り付けられていればよい。
【0054】
本実施形態では、超音波画像生成手段16及び光音響画像生成手段27の少なくとも一方が、位置測定手段28で測定された音響波検出時の音響波検出手段11aの位置情報を用いて三次元画像データ(ボリュームデータ)を生成することができる。例えば、位置測定手段28で測定された位置情報はCPU24に入力され、CPU24は、超音波画像生成手段16及び光音響画像生成手段17を、複数の超音波画像及び光音響画像を音響波検出時の音響波検出手段11aの位置に応じて結合させるように制御する。このようにすることで、光音響画像及び超音波画像の三次元画像データが生成できる。超音波画像生成手段16及び光音響画像生成手段17は、プローブ11の走査に同期してリアルタイムで三次元画像データを生成してもよい。あるいは、検出対象空間の走査が終わった後に、三次元画像データを生成するようにしてもよい。
【0055】
本実施形態では、光源12は、相互に異なる複数の波長のレーザ光を出射可能に構成されている。操作部26には、例えば波長選択の操作を受け付けるための波長選択スイッチが設けられている。ユーザは、例えば操作部26に設けられた波長選択スイッチを操作することで、光源12が出射可能な複数の波長の中から、被検体に照射されるレーザ光の波長を選択することができる。ユーザは、例えば観察対象部位や使用したい機能画像種類に応じてレーザ波長を選択する。複数波長の光を被検体に照射する場合、光照射範囲設定手段20は、波長ごとに、光照射範囲を設定してもよい。
【0056】
本実施形態では、位置センサ27を設け、位置測定手段28によりプローブ11の位置を測定する。音響波検出時のプローブ11の位置を測定することで、検出された音響波に基づいて生成された超音波画像及び光音響画像と被検体における位置とを対応付けることができる。そのような位置情報を用いることで、超音波画像及び光音響画像の三次元画像データを構築することができる。また、本実施形態では、光源12が複数の波長の光を出射可能に構成されており、ユーザは、任意の波長を選択して被検体に対する光照射を行わせることができる。
【0057】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の断層画像生成装置、方法、及びプログラムは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10:断層画像生成装置
11:プローブ
12:光源
13:送信回路
14:受信回路
15:ADコンバータ
16:超音波画像生成手段
17:光音響画像生成手段
18:画像合成手段
19:画像表示手段
20:光照射範囲設定手段
21:ファイバ位置制御手段
22:ファイバ位置制御モータ
23:光ファイバ
24:CPU
25:タイミング制御手段
26:操作部
27:位置センサ
28:位置測定手段
30:超音波画像の画像範囲
31:光照射範囲(光音響画像の画像範囲)
32:関心領域
161、171:位相整合手段
162、172:画像構築手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットと、
前記光源ユニットから出射した光を、被検体に向けて所定の光照射範囲で照射する光照射部と、
被検体に対して音響波の送信を行う音響波送信手段と、
前記光の照射により被検体内で生じた光音響波、及び前記送信された音響波に対する反射音響波を検出する音響波検出手段と、
前記音響波検出手段が検出した反射音響波に基づいて、前記光照射範囲よりも広い範囲で反射音響波画像を生成する反射音響波画像生成手段と、
前記反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波中に、光音響画像を生成すべき範囲を設定する光照射範囲設定手段と、
前記光照射部から、前記光照射範囲設定手段が設定した範囲に向けて光が照射されるように前記光照射部を制御する光照射範囲制御手段と、
前記音響波検出手段が検出した光音響波に基づいて、前記光照射範囲設定手段が設定した範囲で光音響画像生成する光音響画像生成手段とを備えたことを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項2】
前記光照射範囲設定手段が、前記反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波画像に、前記光照射部から光が照射される所定の光照射範囲を重ねて表示し、ユーザに、前記光音響画像を生成すべき範囲の設定を促すものであることを特徴とする請求項1に記載の断層画像生成装置。
【請求項3】
前記光照射範囲設定手段が、ユーザが前記光音響画像を生成すべき範囲を移動させる操作を行うと、該操作に応じて、前記表示する光照射範囲の位置を移動させるものであることを特徴とする請求項2に記載の断層画像生成装置。
【請求項4】
前記光照射範囲設定手段が、前記反射音響波画像生成手段が生成した反射音響波画像に基づいて、前記光音響画像を生成すべき範囲を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の断層画像生成装置。
【請求項5】
前記光照射範囲設定手段が、観察対象と該観察対象の反射音響波画像からの抽出条件とを対応付けて記憶するテーブルを参照し、ユーザが指定した観察対象に対応する抽出条件に基づいて前記反射音響波画像から観察対象を抽出し、該抽出した観察対象の位置を含む範囲を前記光音響画像を生成すべき範囲として設定するものであることを特徴とする請求項4に記載の断層画像生成装置。
【請求項6】
前記反射音響波画像生成手段が、セクタ走査を行って検出された反射音響波に基づいて反射音響波画像を生成するものであり、前記光音響画像生成手段が、前記光照射範囲設定手段が設定した範囲内で走査線を走査して光音響画像を生成するものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項7】
前記光照射部が、前記光源ユニットからの光を導光する光ファイバの出射端で構成されており、前記光照射範囲制御手段が、前記光ファイバの出射端を変位させることで前記光制御部を制御するものであることを特徴とする請求項1から6何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項8】
前記生成された光音響画像と反射音響波画像とを、並べて又は合成して表示することを特徴とする請求項1から7何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項9】
前記音響波検出手段の検出器素子が、前記音響波送信手段の送信器素子を兼ねることを特徴とする請求項1から8何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項10】
前記音響波検出手段の位置を検出するための位置センサと、
前記位置センサからの信号に基づいて前記音響波検出手段の位置を測定する位置測定手段とを更に含むことを特徴とする請求項1から9何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項11】
前記位置測定手段で測定された音響波検出時の音響波検出手段の位置を用いて、前記光音響画像生成手段及び前記超音波画像生成手段のうちの少なくとも一方が、三次元画像データを生成することを特徴とする請求項10に記載の断層画像生成装置。
【請求項12】
前記光源が、相互に異なる複数の波長の光を出射可能であることを特徴とする請求項1から11何れかに記載の断層画像生成装置。
【請求項13】
被検体に対して音響波の送信を行い、該送信された音響波に対する反射音響波を検出するステップと、
前記検出された反射音響波に基づいて反射音響波画像を生成するステップと、
前記生成された反射音響波画像中に、該反射音響波画像よりも狭い範囲で光音響画像を生成すべき範囲を設定するステップと、
被検体に対し、前記設定された範囲に向けて光を照射するステップと、
前記光の照射により被検体内で生じた光音響波を検出するステップと、
前記検出された光音響波に基づいて、前記設定された範囲で光音響画像を生成するステップとを有する断層画像生成方法。
【請求項14】
被検体内に送信された音響波に対する反射音響波の検出結果に基づいて反射音響波画像を生成する工程と、
前記生成された反射音響波画像中に、該反射音響波画像よりも狭い範囲で光音響画像を生成すべき範囲を設定する工程と、
被検体に対して前記設定された範囲で光が照射されるように、被検体に対する光照射を制御する工程と、
前記光の照射により被検体内で生じた光音響信号の検出結果に基づいて、前記設定された範囲で光音響画像を生成する工程とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate