説明

断熱二重容器

【課題】 外側容器と内側容器との間の断熱空間が確実に保持できて熱が伝わりにくく、かつ使用後に外側容器と内側容器とをスムーズに分離できて、それぞれが再利用できる断熱二重容器を提供する。
【解決手段】 カップ状の外側容器と、前記外側容器内に断熱空間を介して取り外し可能に固定されたカップ状の内側容器とからなる断熱二重容器であって、前記外側容器と前記内側容器は合成樹脂製であり、前記外側容器は、側面の端部に雌型周縁部を有し、前記内側容器は、側面の端部に、前記雌型周縁部に2点以上で内接する雄型周縁部を有し、前記雌型周縁部と前記雄型周縁部とが摺り合わせ構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱いコーヒーのようなホット飲料や冷たいアイスクリーム等を入れても熱の伝導性が低く、手指で容易に持ち運べる断熱二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットコーヒー等を入れた容器を手指で持っても熱く感じないように工夫された断熱二重容器としては、紙製の外側容器とプラスチックス製の内側容器とを組み合わせるものが多く開示されている。例えば、側面全面に特定の階段状リブを設けた合成樹脂製の内側容器と、紙製の外側容器とを組み合わせて互いに接着することにより、内側容器と外側容器との間に断熱空間を設け、加温状態のままでも持ち運び可能にしたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、紙製の外側容器の側面上部内側に周回する凹部を設け、プラスチックス製の内側容器の側面上部外側に周回する凸部を設け、凸部を凹部に嵌め合わせることによって内側容器を外側容器に対して固定し、断熱空間を設けている技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このように、外側容器を紙製とすることで紙の優れた断熱性能や印刷性を利用できるが、一方で紙製容器の側面の剛性が低いため一定の断熱空間を保持しにくく、手指に熱が伝わりやすいうえに、柔らかくて持ちにくいという欠点があった。また、内側容器と外側容器とを接着すると、使用後に外側容器だけを取り外して廃棄することができず、内側容器も一緒に廃棄する必要が生じてしまう。また、内側容器と外側容器との間で嵌め合い構造を構成すると、使用後に外側容器だけを取り外して廃棄しようとする場合に、取り外しにくくて作業性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開2004−189269号公報
【特許文献2】特開2004−315065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外側容器と内側容器との間の断熱空間が確実に保持できて熱が伝わりにくく、かつ使用後に外側容器と内側容器とをスムーズに分離できて、それぞれが再利用できる断熱二重容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カップ状の外側容器と、前記外側容器内に断熱空間を介して取り外し可能に固定されたカップ状の内側容器とからなる断熱二重容器であって、前記外側容器と前記内側容器は合成樹脂製であり、前記外側容器は、側面の端部に雌型周縁部を有し、前記内側容器は、側面の端部に、前記雌型周縁部に2点以上で内接する雄型周縁部を有し、前記雌型周縁部と前記雄型周縁部とが摺り合わせ構造を形成することを特徴とする断熱二重容器である。
【0006】
ここで、前記端部が、上端部であることは好ましい。また、前記端部が、下端部であることは好ましい。また、前記雌型周縁部は楕円筒形状であり、前記雄型周縁部は多角筒形状であることは好ましい。また、前記雌型周縁部は多角筒形状であり、前記雄型周縁部は楕円筒形状であることは好ましい。また、前記楕円筒が略円筒であり、前記多角筒が略正6角筒であることは好ましい。また、前記外側容器は、上端から外側に張り出したフランジ(A)を有し、前記内側容器は、上端から外側に張り出したフランジ(B)と、前記フランジ(B)の外周端から下に向かう環状下がり面と、前記環状下がり面の下端に続く内側に凸の環状凸面とを有し、前記フランジ(A)が前記環状凸面を乗り越えて嵌め合い構造を形成していることは好ましい。
【発明の効果】
【0007】
使用時には、外側容器と内側容器とを確実に固定できて断熱空間が確保される。その際、外側容器の変型が生じにくい。そのため、手指に熱が伝導しにくくかつ持ちやすい。一方で、使用後には容易かつスムーズに内側容器と外側容器とを分離でき、それぞれを再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態例について図面も参照して具体的に説明する。本発明の断熱二重容器は、上に開口を有するカップ状の外側容器と、その外側容器内に嵌め込まれて取り外し可能に固定された、やはり上に開口を有するカップ状の内側容器とからなり、内側容器と外側容器との間には、容器を持つ際に手指が触れるカップ側面に沿って断熱空間が設けられている。
【0009】
外側容器と内側容器は、共に合成樹脂製である。合成樹脂を用いることで、側面部分にリブ等の支え構造を特に有さなくとも、容器に必要とされる強度を満たすことができる。また、断熱や固定に必要な形状に容易に成形することが可能となるし、必要により断熱ホルダーを透明としたり、遮光性を持たせたり、着色したりすることも可能となる。外側容器と内側容器は、それぞれ別個に後述する成形方法で製造することができる。
【0010】
用いることができる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等が挙げられ特に制限されないが、熱可塑性樹脂を用いるのが製造の容易さの観点から好ましい。飲用に供される飲み物は熱くとも70℃程度であり、熱可塑性樹脂でも十分に対応可能な温度である。用いることができる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂など熱成形可能な樹脂を挙げることができ、中でも、耐熱性の点からはポリオレフィン系樹脂の中のポリプロピレンが、透明性の点からはポリエステル系樹脂の中のポリエチレンテレフタレートが、環境の観点からはポリ乳酸樹脂を用いるのがそれぞれ好ましい。
【0011】
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いる場合には、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいが、安価で耐熱性の高いホモポリマーを用いるのが好ましい。透明性が求められる場合には、ランダムポリマーの使用も可能である。また、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高透明性の点からA―PET用の樹脂が好ましい。ここで、A―PET用の樹脂とは、PET樹脂の中でも分子量が大きくて、JIS K7390により測定したIV値(Intrinsic Viscosty、固有粘度)も4.0〜17.0cm3/gと大きく、結晶化速度が遅いPET樹脂を言う。また、ポリ乳酸樹脂を用いる場合は、成形性・剛性の観点から、D体が10%以下で結晶性を有するポリ乳酸樹脂を用いるのが好ましい。総合的に好ましいのはポリプロピレンである。
【0012】
外側容器と内側容器に用いる合成樹脂は、同じであっても良いし異なっていても良い。異なる樹脂を用いる例としては、内側容器に耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂を用い、外側容器に剛性の高いポリスチレン系樹脂を用いるものを挙げることができる。これにより、より軽量化された断熱二重容器が得られる。また、内容物としてアイスクリーム等の低温物を入れるような場合は、耐熱性はほどほどであるが、透明性に優れるPET樹脂を用いることができる。
【0013】
内側容器と外側容器の最も薄い部分の厚みは、100μm以上とするのがよい。より好ましくは150μm以上である。この範囲で容器に必要な剛性と断熱性を得ることができる。最も厚い部分の厚みは特に制限されないが、使用樹脂量を低減化して容器重量を軽くする観点から3mm以下とするのがよい。より好ましくは2mm以下である。内側容器と外側容器の厚みは同じであっても良いし、外側容器を厚くして内側容器を薄くするようにしても良い。特に、後者のように厚みを設計することで断熱二重容器全体として必要な強度を維持しながら、必要な合成樹脂量を減らすことができる。
【0014】
外側容器はカップ形状をなしており、上に開口を有する。カップ形状は、下に向けて直径が一定かまたは小さくなる逆テーパーを有する側面と、側面に接続された底面とからなる。外側容器の側面の端部には、雌型周縁部が設けられている。雌型周縁部は、容器側面の上端部または下端部に設けられ、ほぼ鉛直の1または2以上の面からなり、開口端にほぼ平行方向に側面を一周するように設けられた帯状の面である。雌側周縁部に内接する楕円または円の径は、逆テーパーのもっとも径が小さい部分と同じか、若しくはより小さい。この雌型周縁部は、その内側が、内側容器の雄型周縁部の外側と接触して摺り合わせ構造を形成し、摩擦力により内側容器を取り外し可能に固定する。
【0015】
雌型周縁部を側面下端部に設けた外側容器10の例を図1に示す。図1(1)は、右半分が外側容器10の側面図であり、左半分は、それが鉛直面で切断された場合の断面図である。また図1(2)は、外側容器10を底面5の方から見た斜視図である。外側容器10の逆テーパーを有する側面下端部には、略水平方向の段差3を介して帯状で略円筒状のほぼ鉛直の面4が設けられており、この面4が雌型周縁部の例となる。側面2と雌型周縁部4との間は、側面2が逆テーパーを有する場合には段差3を介さずに連続していても良いが、段差3を介した方が精度面から設計や製造がより容易になって好ましい。雌型周縁部4の内側の面が、内側容器の雄型周縁部の外側の面と摺り合わせ構造を形成する。
【0016】
内側容器は、外側容器と同様に、径が一定か若しくは下に向けて径が小さくなる逆テーパーを有する側面と、側面に接続された底面とからなり、上に開口を有するカップ形状をなしている。また、内側容器の側面の端部には、雄型周縁部が設けられている。雄型周縁部は、容器側面の上端部または下端部に設けられ、1または2以上のほぼ鉛直の面からなり、開口端にほぼ平行方向に側面を一周するように設けられた帯状の面である。この雄型周縁部は、その外側において、外側容器の雌型周縁部の内側と接触して摺り合わせ構造を形成し、摩擦力により外側容器を取り外し可能に固定する。
【0017】
図1の外側容器10と組み合わせて断熱二重容器を形成できる内側容器20の例を図2に示す。図2(1)は、右半分が内側容器20の側面図であり、左半分は、それが鉛直面で切断された場合の断面図である。また図2(2)は、内側容器20を底面27の方から見た斜視図である。内側容器20の側面24は、外側容器の側面2との間に断熱空間を形成するために、側面2とほぼ同じ角度の逆テーパーを有している。内側容器20の側面下端部には、略水平方向の段差25を介してほぼ鉛直の帯状で略正六角筒形状の面26が設けられており、この面26が雄型周縁部の例となる。側面24と雄型周縁部26との間は、段差25を介さずに連続していても良いが、段差25を介した方が精度面から設計や製造がより容易になるうえ、断熱空間の厚みが側面の下部でも確保されるため好ましい。
【0018】
内側容器20は、飲み物を入れて飲用する用に適するようにするため、側面24の上端には、略水平方向外側に張り出したフランジ21と、フランジ21のさらに外側端から裾拡がりのテーパーを有する環状下がり面28とを設け、側面24とフランジ21と環状下がり面22とで囲まれた空間23内に、外側容器10の上端1が入り込む構造を有している。このように構成することで、フランジ21や環状下がり面22に口をつけて飲み物を飲用することになるから、飲用中に飲み物が断熱空間に入り込むことがなく、容器の断熱性が維持される。なお、口当たりをよくするために、側面24とフランジ21と環状下がり面28とを互いに連続した曲面としてもよい。
【0019】
外側容器に内側容器が挿入され、雄型周縁部が雌型周縁部に内接して摺り合わせ構造を形成することにより、両者はすり合わせ構造から生じる摩擦力で互いに固定される。そのため、両者はいったん固定された後も互いに取り外し可能である。雄型周縁部と雌型周縁部とは2点以上で接触することを要する。これにより互いの位置が固定可能となる。接触点の数は、好ましくは3点以上、さらに好ましくは4点以上である。両者が全周にわたって接するようにしても良いが成形に高い精度を要するようになるため、接触点は18点以下とするのが好ましく、12点以下とするのがより好ましい。もっとも好ましいのは6点である。
【0020】
より具体的には、雄型周縁部と雌型周縁部とを、楕円筒形状とそれに内接または外接する多角筒形状との組み合わせとするのが好ましい。このようにすることで、互いに複数の点で点接触することになるから、成形の精度が多少低くとも安定して摺り合わせ構造を形成できる。その際、雄型周縁部が外接する楕円の径を、雌型周縁部に内接する楕円の径と同じかまたはわずかに大きめにし、さらに雄型周縁部が多角筒形状の場合は接触点に若干の丸みを持たせることで、接触点が若干の変型を生じ、より安定して固定状態を形成することができる。このように形成された固定状態は、摩擦力によるものであるから、比較的簡単に解消することができる。
【0021】
雄型周縁部と雌型周縁部は、いずれが楕円筒形状でも多角筒形状でも良いが、断熱二重容器の外観を通常のカップと同じように見せるためには、雌型周縁部が楕円筒形状で、雄型周縁部がそれに内接する多角筒形状とするのが好ましい。
【0022】
さらに、楕円筒形状は略円筒形状であるのが好ましく、多角筒形状は、略正六角筒形状であるのが好ましい。ここに略としているのは、幾何学的に厳密な形状でなくとも良いことを意味し、具体的には、六角の角の部分が一定のRで丸くなっていたり、幾何学的に厳密な六角形や円から若干の変型が生じたりしていても良いことを意味する。製造段階では当然に誤差や変型が生じるし、また、そのような誤差や変型が生じていても機能上特に差し支えないからである。
【0023】
雄型周縁部と雌型周縁部は、略鉛直面に近い面から構成するのが好ましい。このようにすることで、摺り合わせを外す分力が生じにくくなり、摺り合わせ構造が外れにくくなる。雄型周縁部と雌型周縁部は、わずかに裾拡がりのテーパーを有していても良い。これにより嵌め合い構造となるから、より摺り合わせが外れにくくなる。なお、ここにいう略とは、厳密な鉛直面でなくとも良いことを意味する。
【0024】
雄型周縁部と雌型周縁部は、側面の上端部または下端部に揃えて設ける。側面の中央部分は、断熱二重容器を手指で持つ場合に、手指が触れる場所であり、外側容器と内側容器とが接触する部分を側面の上端部または下端部とすることで、外側容器の側面と内側容器の側面との間に一定の断熱空間を形成し、断熱性が確保される。
【0025】
図1の外側容器10と図2の内側容器20とを組み合わせた断熱二重容器30の例を図3に示す。図3(1)の右半分は側面図であり、左半分は鉛直面で切断された場合の断面図である。外側容器の側面2と内側容器の側面24は、ほぼ同じ逆テーパーを有し、側面2と側面24との間には、上端部や下端部を除いた全体に一定厚さの断熱空間31が確保されている。これにより、断熱性がより高くなる。
【0026】
また、内側容器より外側容器の逆テーパーを小さくして、カップ底部に向かって断熱空間31の厚みが大きくなるように設計してもよい。このようにすることで、内側容器に内容物を入れたときに、内容物の自重で内側容器の底部に近い部位が外側に膨らむように変型することがあり、そのような場合でも、断熱空間31の厚みが一定になるようにできる。テーパーの差は、容器材質や厚みにより異なるが、1度から10度とするのが好ましい。1度以上で内側容器の外側への膨らみが生じても断熱空間31の厚みが均一に近づき、10度以下で、容器下端に摺り合わせ部を設けた場合に一定の摺り合わせ面積が確保でき、内側容器が確実に固定されやすくなる。
【0027】
内側容器の下端部に設けられた雄型周縁部26は、外側容器の下端部に設けられた雌型周縁部4と摺り合わせ構造を形成して、摩擦力によりそれぞれの容器の相対位置を取り外し可能に固定している。図3(2)に、摺り合わせ構造を説明するためのA−A’断面図を示す。略正六角筒形状の雄型周縁部26が略円筒形状の雌型周縁部4に嵌り込んで、6つの点32〜37で内接しており、この6つの点の摩擦により両者が互いに固定されている。その際、単に摩擦で固定しているだけなので、比較的容易に取り外すことが可能である。雄型周縁部と雌型周縁部が共に、下にわずかに径が拡がるテーパーを有するようにして嵌め合い構造を形成してもよく、より内側容器と外側容器との固定状態が外れにくくなるが、一方で使用済み後に両者を分離しにくくなる。好ましくは両者をほぼ鉛直の面から構成することである。
【0028】
このように構成することで、断熱二重容器の側面部分に断熱空間が確保されて熱の伝導性が低下し、熱い飲み物を入れても手指で容易に断熱二重容器を持つことができる。その際、外側容器の強度が高いので、飲み物の重量を支えるために手指に力を入れても変型しにくく、持ちやすい。また、使用後に内側容器と外側容器を簡単に分離でき、両者を再利用できる。
【0029】
図4に、他の断熱二重容器40の例を示す。図4(1)は、右半分が側面図、左半分が鉛直面で切断された場合の断面図である。この例では、雌型周縁部50と雄型周縁部44とが、側面の上端部に位置している。また、図4(2)のC−C’断面図からわかるように、雄型周縁部44が略円筒形状で、雌型周縁部50が略正六角筒形状であり、円筒が正六角筒に内接するようになっている。また、この例では、内側容器と外側容器とが、上端部のみで接触して下端部での接触がない。そのため、断熱空間が側面のみならず底面にも形成され、手指で底面に触れても熱を感じないようになっている。
【0030】
なお、この例では、内側容器の段差45と外側容器の段差51とが接すると共に、内側容器のフランジ41の下面と外側容器の上端とが接するように記載しているが、いずれかが接して飲み物の重量を支えるようになっていればよい。
【0031】
図4の例では、図3の例と飲み口のフランジ構造は同じであるが、他のフランジ構造としても良い。その例を図5に示す。図5は、他のフランジ構造に関し、図3(3)と同様の位置の断面拡大図の例であり、内側容器の側面75とフランジ70(フランジ(B)に相当)と環状下がり面71に加え、環状下がり面71の下端に、内側に凸の環状凸部72を有している。一方、外側容器は上端から略水平方向外側に張り出したフランジ80(フランジ(A)に相当)を有している。外側容器に内側容器を挿入すると、フランジ80の外周端が環状凸部72を乗り越えて嵌め合い構造を形成し、両方の容器の固定がより確実になる。一方で、使用後の分離は行いにくくなるが、その場合は、環状凸部72の下端74を手指で押し広げて分離するようにすればよい。
【0032】
外側容器や内側容器は、必要により透明のまま用いることができ、その場合、Hazeが10%以下となるようにするのが好ましい。これにより、断熱二重容器が透明で、ガラス容器と同様に飲み物全体を外部から視認できて清潔感が得られる。Hazeを10%以下とするには、熱可塑性樹脂や熱成形方法を公知の手段により組み合わせて適宜条件を選定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂としてA−PETポリエチレンテレフタレートを用いるなどすればよい。
【0033】
次に、このような断熱二重容器の製造方法例について説明する。内側容器と外側容器は別個に製造し、その後、組み合わせて断熱二重容器とする。以下の工程は、外側容器または内側容器のいずれに関しても当てはまる。最初に、すでに上記した樹脂から適当な樹脂を選択する。ここでは熱可塑性樹脂を用いる例について説明する。選択した熱可塑性樹脂を公知の熱成形方法、例えば、Tダイによる押し出し成形やプレス成形によってシート状に成形する。この時、遮光剤、着色剤、紫外線吸収剤などを、熱可塑性樹脂に添加しても差し支えない。成形された樹脂シートの厚さは、熱可塑性樹脂によって適する厚みが異なるが、容器の成形性の点から1.0mmから5.0mm程度とするのが好ましく、より好ましくは1.1mmから4.0mmである。続いて、この樹脂シートを用いて、公知の熱成形方法、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、射出成形等によって求める形状の容器を形成し、続いてシートから切断することで、目的の容器が得られる。
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例の具体的態様に限定されるものではない。なお、Hazeは、成形前のシートを用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
【実施例1】
【0035】
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ1.5mmのポリプロピレンシート(シーダム株式会社製、6T(N))を用い、単発の圧空成形機で、図1に記載の外側容器を成形した。外側容器の最大外径は74mm、全体の高さが115mm、段差3部分の側面の外径が約52mm、雌型周縁部は、鉛直面からなる高さが約10mmで外径が約46mmの円筒形とした。雌型周縁部の段差2との接続部分を、若干のRを持たせて丸めた形とした。外側容器の厚みは約1mmであった。
【0036】
また、外側容器と同様にして図2に記載の内側容器を成形した。内側容器の最大外径は80mm、全体の高さが117mm、側面の最大内径は約68mm、段差3部分の外径が約47mm、雄型周縁部は、鉛直面からなる高さが約10mmで外接円の直径が約45mmの正六角筒の形状とした。なお、雄型周縁部と底面との接続部分及び正六角筒の角の部分を、若干のRを持たせて丸めた形とした。内側容器の全体高さの1/2の高さの部分の厚みは約500μmであった。外側容器と内側容器のHazeを測定したところ、いずれも約6%と良好な値であった。
【0037】
これらの内側容器と外側容器とを用い、内側容器を外側容器に挿入して押し込んだところ、雄型周縁部が雌型周縁部にしっかりと嵌め込まれて、摩擦力による摺り合わせ構造が形成され、目的の断熱二重容器が得られた。この断熱二重容器の外観は透明性が良好であり、これに約75℃のコーヒーを内側容器体積の8割まで注ぎ込んで、側面を手指で持ったところ、特に熱く感じる部分もなく均一な断熱性能が得られた。また、断熱二重容器をしっかりと持つことができ持ちやすい結果であった。また、断熱二重容器に直接、口をつけてコーヒーを飲んでも、コーヒーが外側容器と内側容器との間に入るような問題もなく飲むことができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】断熱二重容器の内側容器の例を示した(1)側面図と断面図、(2)斜視図である。
【図2】断熱二重容器の外側容器の例を示した(1)側面図と断面図、(2)斜視図である。
【図3】断熱二重容器の例を示した(1)側面図と断面図、(2)A−A’断面図、(3)B拡大図である。
【図4】断熱二重容器の他の例を示した(1)側面図と断面図、(2)C−C’断面図である。
【図5】断熱二重容器の他のフランジ部分の構造例を示した断面拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1 上端
2、24、46、53、75、81 側面
3、25、45、51 段差
4、50 雌型周縁部
5、27、47、54 底面
6 開口
10 外側容器
20 内側容器
21、41、70、80 フランジ
22、43 環状下がり面の下端
23 空間
26、44 雄型周縁部
28、42、71 環状下がり面
30、40 断熱二重容器
31、52 断熱空間
32〜37、60〜65 接触点
72 環状凸部
74 環状凸部の下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の外側容器と、前記外側容器内に断熱空間を介して取り外し可能に固定されたカップ状の内側容器とからなる断熱二重容器であって、前記外側容器と前記内側容器は合成樹脂製であり、前記外側容器は、側面の端部に雌型周縁部を有し、前記内側容器は、側面の端部に、前記雌型周縁部に2点以上で内接する雄型周縁部を有し、前記雌型周縁部と前記雄型周縁部とが摺り合わせ構造を形成することを特徴とする断熱二重容器。
【請求項2】
前記端部が、上端部であることを特徴とする請求項1に記載の断熱二重容器。
【請求項3】
前記端部が、下端部であることを特徴とする請求項1に記載の断熱二重容器。
【請求項4】
前記雌型周縁部は楕円筒形状であり、前記雄型周縁部は多角筒形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の断熱二重容器。
【請求項5】
前記雌型周縁部は多角筒形状であり、前記雄型周縁部は楕円筒形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の断熱二重容器。
【請求項6】
前記楕円筒が略円筒であり、前記多角筒が略正6角筒であることを特徴とする請求項4または5に記載の断熱二重容器。
【請求項7】
前記外側容器は、上端から外側に張り出したフランジ(A)を有し、前記内側容器は、上端から外側に張り出したフランジ(B)と、前記フランジ(B)の外周端から下に向かう環状下がり面と、前記環状下がり面の下端に続く内側に凸の環状凸面とを有し、前記フランジ(A)が前記環状凸面を乗り越えて嵌め合い構造を形成していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の断熱二重容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−223608(P2007−223608A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43338(P2006−43338)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000116828)旭化成パックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】