説明

断熱容器

【課題】省スペース大容量化に対応した冷蔵庫等の断熱容器における省エネ性向上と、箱体強度の向上を図る。
【解決手段】外被材2の表面層に吸水性の低いポリオレフィンフィルムをラミネートし、外被材2の表面に極性基を形成した真空断熱材1を冷蔵庫等の断熱容器に適用する。また、真空断熱材1の持ち込み水分量を低減し、ぬれ張力を向上することで、高性能化と硬質発泡ポリウレタン25等との接着力向上の両方を実現した冷蔵庫等の断熱容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等の冷却機器の断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー志向の高まりから、冷蔵庫,冷凍庫をはじめとした冷却機器に断熱性能の高い真空断熱材が適用されている。真空断熱材はグラスウール等を芯材として、ガスバリア性を有する外被材内部に収納し、真空排気後封止して作製される高性能な断熱材である。
【0003】
近年の省スペース大容量,省エネルギー化の消費者ニーズを受け、冷蔵庫等の外形寸法はそのままとしながらも内容積の拡大を実現するため、冷蔵庫壁厚は縮小傾向にある。そこで、接着剤の塗布厚は必要最小限としながら、真空断熱材の接着力を改善することで、箱体強度を向上することが必要となる。
【0004】
冷却機器等に真空断熱材を適用するにあたり、冷却機器等を構成する箱体との接着力が弱いと、箱体強度が低下したり、外観歪みや箱体歪みが発生したりする等、問題が生じる。
【0005】
従来は、ホットメルト等の接着剤を真空断熱材に塗布する厚みを厚くする、外被材の表面層に接着力が強いポリアミド等の基材を選定する等で対応していた(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかし、接着剤塗布量を厚くする方法では、コストが高くなるだけでなく、せん断保持力低下,断熱厚さ減少といった問題が残る。外被材にポリアミドを選定すると、ポリアミドの吸湿性により、真空断熱材の高性能化ができない。
【0007】
そこで、伸縮や屈曲に対する耐性を改善するため、金属或いは金属酸化物が蒸着されたポリオレフィン系フィルムを表面基材に選定し、該ポリオレフィン系フィルムの金属或いは金属酸化物が蒸着された面と金属或いは金属酸化物が蒸着されたガスバリア性フィルムの金属或いは金属酸化物が蒸着された面が向き合うように積層されたラミネートフィルムを外包材に用いた真空断熱構造体の例がある(特許文献2)。しかし、外被材にポリオレフィンを選定すると、真空断熱材と箱体との接着力が低く、箱体強度確保に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4006766号公報
【特許文献2】特開2009−79762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の真空断熱材では、表面基材であるポリアミドの吸水性,吸湿性が高いため、基材に吸着している水分が真空排気の阻害要因となってしまい、高性能な真空断熱材を得ることができなかった。
【0010】
また、特許文献2に記載の真空断熱材では、ポリオレフィンが極性基を持たないため、真空断熱材表面のぬれ張力(表面張力)が小さくなり、硬質発泡ポリウレタンやホットメルト接着剤等の極性を持った材料との接着力が劣るため、真空断熱材の剥がれによる不良や箱体強度低下の懸念があった。
【0011】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、断熱容器における断熱性能及び省エネルギー性能を向上,断熱容器の強度向上,断熱容器の外観歪みを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上述の課題を解決するため、例えば特許請求の範囲に記載の手段を採用する。一例として、少なくとも内箱と外箱の間に真空断熱材が設けられ、前記真空断熱材を接着剤で前記内箱又は前記外箱に固定する断熱容器において、前記真空断熱材は、芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記外被材はプラスチックラミネートフィルムにより構成され、前記外被材の最外層のプラスチックフィルムは延伸されたポリオレフィンであり、前記外被材の最外層表面に極性基を設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断熱容器における断熱性能及び省エネルギー性能を向上,断熱容器の強度向上,断熱容器の外観歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す冷蔵庫の側断面図。
【図2】本発明の一実施例を示す冷蔵庫の断面拡大図。
【図3】本発明の一実施例を示す真空断熱材の断面図。
【図4】本発明の一実施例を示す真空断熱材と外被材の断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は一例として、内箱と外箱からなり、少なくとも内箱と外箱の間に真空断熱材が設けられ、前記真空断熱材を接着剤で内箱又は外箱に固定する断熱容器において、前記真空断熱材は芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記外被材はプラスチックラミネートフィルムにより構成され、前記外被材における最外層のプラスチックフィルムは延伸されたポリオレフィンであり、前記外被材最外層の表面に極性基を設けることで、接着剤との接着力を向上するものである。
【0016】
第一に、少なくとも内箱と外箱の間に真空断熱材が設けられ、前記真空断熱材を接着剤で前記内箱又は前記外箱に固定する断熱容器において、前記真空断熱材は、芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記外被材はプラスチックラミネートフィルムにより構成され、前記外被材の最外層のプラスチックフィルムは延伸されたポリオレフィンであり、前記外被材の最外層表面に極性基を設ける。
【0017】
これにより、硬質発泡ポリウレタン等の発泡断熱体やホットメルト等の接着剤との接着力を向上することができる。また、限られた接着剤塗布量であっても、箱体強度,箱体外観に優れた冷却機器を提供することができる。
【0018】
第二に、前記外被材の最外層は二軸延伸ポリプロピレンである。外被材の最外層に吸水率の小さいポリオレフィンであり、耐傷つき性を備えた二軸延伸ポリプロピレンを用いることで、真空パック時における持ち込み水分量が低減され、真空パック前の乾燥時において水分除去をしやすくし、真空パック時により真空度を高めることができるため、真空断熱材の高性能化が可能となり、これを適用した冷却機器の断熱性能を向上できる。
【0019】
第三に、前記冷却機器または断熱容器の内容積効率は60%〜80%であることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、冷却機器または断熱容器における省スペース大容量化を実現するものである。60%未満では容量が小さく、物の収納には不便であり、80%を超えると、十分な壁厚を確保できなくなるため、断熱性能,箱体強度が低下するが、本実施例によれば、内容積効率(断熱容器の外形体積に対して、断熱壁厚等を除いた収納容積の割合)が向上する。
【0021】
第四に、接着剤は、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体(SIS)を主成分としたホットメルト接着剤であり、前記接着剤を前記真空断熱材に塗布する平均厚さが75〜100μmである。接着剤を前記真空断熱材に塗布する平均厚さを当該範囲とすることで、内容積確保のため断熱壁厚を小さくした場合においても、接着剤のせん断保持力、剥離クリープ性等の接着力を確保することで、必要な箱体強度を得ることができると共に、製造コストの低減が可能である。
【0022】
第五に、前記外被材の最外層表面におけるぬれ張力が34mN/m〜70mN/mである。前記外被材の最外層表面におけるぬれ張力(表面張力)を、硬質発泡ポリウレタン等の発泡断熱体やホットメルト等の接着剤におけるぬれ張力と同等にすることで前記真空断熱材と冷却機器箱体との接着力を向上できる。
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。尚、以下は本発明における一実施例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0024】
まず、本発明の実施例として、図1で示す断熱容器の一例である冷蔵庫について説明する。図1は本発明の一実施例を示す冷蔵庫の断面図である。
【0025】
断熱容器の一例である冷蔵庫21は、ABS樹脂を成形した内箱22と、鋼板を成形して組み合わせてなる外箱23とからなり、内部に発泡断熱材25が固まった状態で充填されている箱体と、発泡断熱材25が固まった状態で充填された扉24を備えた構造となっている。なお、扉24の内部に真空断熱材1を配設し、発泡断熱材25を充填してもよい。
【0026】
箱体は仕切り等によって2室以上に分割されており、冷蔵室28,冷凍室29,31,製氷室30,野菜室32を備えている。最上段が冷蔵室28、2段目に冷凍室(小形)29と製氷室30があり、3段目に冷凍室(大形)31、最下段が野菜室32となっている。
【0027】
冷蔵庫21は、少なくとも内箱22と外箱23の間に真空断熱材1が設けられており、具体的位置としては、冷蔵庫21における天井部,側面部,背面部及び底面部に配設されている。
【0028】
図2で示すように、真空断熱材1の表面にホットメルト等の接着剤26をロールコータ等によって塗布し、外箱23に貼り付けることで固定する。その上で、内箱22と外箱23の内部空間に硬質発泡ポリウレタンのような発泡断熱材25の原液を投入し、発泡,硬化させることで発泡断熱材25を固まった状態で隙間無く充填し、箱体を完成させる。
【0029】
天井部及び底面部に適用される真空断熱材1は、冷蔵庫21における内部形状に沿って段曲げされる。天井部には基板とそれを収める基板ケース27が配設されており、この形状に合わせて略Z形状に真空断熱材1を段曲げした。このとき、真空断熱材1が基板ケースに接触しない形状とし、真空断熱材1と基板ケースの間に発泡断熱材25が固まった状態で充填されるようにした。
【0030】
真空断熱材1と発泡断熱材25との接触面積は、真空断熱材1が基板ケースに接触する形状の場合と比べて大きくなるため、接着力の高い真空断熱材1を適用した冷蔵庫の箱体強度がより大きくなる。
【0031】
また、発泡断熱材25の原液が高流動性であるため、基板ケース27の形状に追従して発泡断熱材を隙間無く充填できると共に、基板からの熱が真空断熱材1に直接掛からないため、ヒートブリッジが軽減され、断熱性能を向上できるようになる。
【0032】
また、基板の熱によって真空断熱材1が劣化することを抑制し、長期に亘って高い断熱性能を維持することが可能となり、冷蔵庫21の省エネルギー性能が向上する。
【0033】
これにより、冷蔵庫21の内容積効率を向上するべく、壁厚を20〜50mmと薄くした場合においても、接着力を強化した真空断熱材1を冷蔵庫21に適用することで十分な箱体強度と高い断熱性能を持った冷蔵庫21を得ることができる。内容積効率とは定格内容積を外形体積で除したものであり、省スペース,大容量である程大きくなり、スペースの利用効率が高いことを意味する。なお、同様に冷凍庫,ショーケース,保冷車等の冷却機器や断熱容器にも適用が可能である。
【0034】
次に、本発明の実施例で用いられる真空断熱材1を形成する手順の一例について、図3を基に以下に記述する。図3は本発明の一実施例を示す真空断熱材の断面図である。
【0035】
まず、芯材4となるガラス繊維材等の無機繊維や有機樹脂繊維等の繊維系材料を、吸着剤5と共に内包材3に収納する。そして、芯材4を圧縮しながら、内包材3の周縁部を熱溶着や接着等により封止することで芯材4を圧縮保持する。この処理により、芯材4を外被材2にスムーズに挿入することができ、作業性が向上する。なお、内包材3を用いなくとも芯材4を外被材2にスムーズに挿入することができる場合、内包材3を用いる必要は特にない。続いて、三方が熱溶着等で接合された袋状の外被材2へ芯材4を収納する。その後、減圧を効率よく行えるように内包材3の封止部をカットして、外被材2の内部を真空排気し、外被材2の開口部を熱溶着等によって封止することにより、真空断熱材1を得ることができる。
【0036】
外被材2における芯材4を含まない部分である外被材の余剰部分2aは、芯材4を含む部分と含まない部分とを境に折り曲げ、テープ,両面テープ,接着剤等で固定してもよい。また、外被材の余剰部分2aは4辺すべてを折り曲げてもよいが、必要に応じて4辺すべてを折り曲げなくてもよい。例えば、最終封止部のみを折り曲げて固定することも可能である。
【0037】
真空断熱材1の形状は特に限定されず、適用される箇所と作業性に応じて各種形状及び厚さのものが適用可能である。例えば、多角形状,円形状,平面形状,立体形状,溝形状,凹凸形状等、あらゆる形状が含まれる。
【0038】
次に、各基材の構成,加工条件等について詳細に説明する。図4に外被材2の断面図を示す。
【0039】
外被材とは、真空断熱材1の内部を真空状態に保つために芯材を覆うものである。外被材2は外層より、表面保護層2b,ガスバリア層2c,熱溶着層2dにより構成される。そして、表面保護層2bの外側には、コロナ放電処理,フレーム処理,プラズマ処理等による表面修飾,表面改質処理が施された外被材の表面処理部6がある。
【0040】
表面保護層2bは耐傷付き性,耐衝撃性に対応するためのものであり、ガスバリア層2cはガスバリア性を確保するためのものであり、熱溶着層2dは熱溶着によって真空断熱材1の内部を密閉するためのものである。したがって、これらの目的に適うものであれば、全ての公知材料が使用可能である。
【0041】
例えば、ポリエチレンフィルム(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度),ポリプロピレンフィルム(延伸,無延伸,ハイレトルト,セミレトルト),ポリカーボネートフィルム,ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム,アイオノマーフィルム,ポリ塩化ビニルフィルム,ポリ塩化ビニリデンフィルム,ポリビニルアルコールフィルム,エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム,エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリブチレンテレフタレートフィルム,エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム,ポリアミドフィルム等があり、これらはKコートフィルム(ポリ塩化ビニリデンをコーティングし、ガスバリア性や防湿性を向上させたフィルム)であってもよい。
【0042】
外被材2の最外層表面はコロナ放電処理,フレーム処理,プラズマ処理等による表面修飾,表面改質処理を実施する。具体的には、外被材2の最外層表面にコロナ放電処理等を実施することで、表面層基材においてラジカル化等が発生し、炭化水素ラジカル等の極性基が形成される。酸素存在下ではラジカル化等の発生後、酸化が起こってカルボニル基等の極性基が形成される。極性基同士は水素結合,イオン結合等による強力な結合を形成しやすいため、表面基材における接着力が向上する。表面改質処理としては、コロナ放電処理,フレーム処理,プラズマ処理,電子線処理,紫外線処理,イオンボンバード処理等がある。また、ポリウレタン系硬化剤等のコーティング剤やアンカーコート剤を用いる方法がある。この中で、量産性(コスト,容易性,スピード等)を考慮すると、コロナ放電処理による改質が特に好ましい。また、これらの表面改質処理は、外被材2のラミネート前に処理する方法とラミネート後に処理する方法の両方があるが、特に限定されることは無い。
【0043】
外被材2の表面の接着力を判定する指標として、ぬれ張力(表面張力)が挙げられる。ぬれ張力の測定は例えば、JIS K6768に記載の方法がある。発泡断熱材25やホットメルトとの接着力を上げるには、これらのぬれ張力と同等以上である必要がある。ぬれ張力が34mN/mを下回ると、発泡断熱材25やホットメルトのぬれ性が悪くなり、接着力が低下する。また、ぬれ張力が70mN/mを上回ると、外被材2のブロッキングによる作業性の低下、不良の増大が懸念されるため、適切ではない。尚、ブロッキングとは、袋の重ね置き等によりフィルム同士が密着し、すべりにくくなったり、剥がれなくなったりすることをいう。したがって、ぬれ張力は34〜70mN/mの範囲が好ましい。特に好ましい範囲は、40〜60mN/mである。
【0044】
外被材2の具体的構成としては、表面保護層2bとして二軸延伸ポリプロピレン、ガスバリア層2cとしてアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート及びアルミニウムを蒸着したエチレン−ビニルアルコール共重合体、熱溶着層2dとして直鎖状低密度ポリエチレンを用いたラミネートフィルムが例として挙げられる。このとき、ガスバリア層2cにおける互いのアルミニウム蒸着面を貼り合わせると、ガスバリア性がより高くなる。また、各層を接着するための接着剤としては2液硬化型ポリウレタン系接着剤が用いられるが、特にこれに限定されるわけではない。例えば、代わりにアクリル系接着剤,ポリエステル系接着剤,エポキシ系接着剤,シリコン系接着剤等を用いてもよい。そして、この外被材2は熱溶着層2d同士を貼り合わせた袋として使用される。
【0045】
また、更に改善する手段として、例えば、表面保護層2bに金属または無機酸化物を蒸着することで耐衝撃性の他にガスバリア性を付加したり、ガスバリア層2cに金属蒸着または無機酸化物蒸着を有するフィルムを設けたり、あるいは金属箔を用いてもよい。用いる金属としては、アルミニウムやステンレス等が挙げられ、無機酸化物としては、シリカ蒸着等が挙げられる。
【0046】
熱溶着層2dとしては、シール性や耐ケミカルアタック性などから高密度ポリエチレン樹脂が好ましいが、この他に、低密度ポリエチレン樹脂,中密度ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂,ポリアクリルニトリル樹脂などを用いてもよい。
【0047】
外被材2の残存有機溶剤等の脱ガスを目的として、芯材4の挿入前に外被材2のエージングを施すことは有効である。このときの条件は、各種有機溶剤の除去が可能であるということから、例えば70℃以上で3時間以上の真空乾燥を行うことが望ましい。
【0048】
内包材3としては、熱溶着や接着剤等による接着が可能であり、アウトガスが発生しない袋状または容器状のものであればよい。材質は特に限定されるわけではないが、例えば、シール性や耐ケミカルアタック性に優れたポリエチレン樹脂(高密度,中密度,低密度)や、ポリプロピレン樹脂が代表的である。内包材3の厚さは芯材4を圧縮保持できる厚みとすればよく、特に限定されないが、取り扱い性やコストを考えると、20〜50μmとするのが望ましい。内包材3は芯材4の内部を減圧するため、真空排気する直前にカットする。
【0049】
芯材4は、ガラス短繊維材等の無機繊維やポリスチレン繊維等の有機繊維といった柔軟性を持つ繊維系材料を適当なサイズ,形状にカットして用いる。
【0050】
ガラス短繊維材としては、平均繊維径が3〜5μmであることが好ましい。ガラス短繊維材は平均繊維径により熱伝導率特性及びコストに大きく影響する。コストが安価である平均繊維径が5μmを超えるグラスウール等は、繊維が同一方向に配列して繊維の接触が線に近くなるために接触熱抵抗が小さくなるので、熱伝導率及び経時劣化が大きく劣る。一方、平均繊維径が2μm未満では、繊維の接触が小さくなることで接触熱抵抗は大きくなるが、1枚当たりの厚みが薄く断熱性能が劣るため、シート状の無機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことで熱伝導率と経時劣化を低減しなければならず、生産性が劣ると共にコストも高騰する。
【0051】
このように、繊維径が5μmを超えると熱伝導率が高くなってしまうため、伝熱方向に不連続で素材間の接触抵抗を有効に活用する繊維材を選定した。また、接触熱抵抗の他に熱流路がジグザグとなり、熱抵抗が増大して熱伝導率が低くなる多くの繊維材の中から、平均繊維径が3〜5μmのガラス短繊維材を選定することにより、熱伝導率や経時劣化の低減,厚み減少率の低減及び低コスト化を両立することが可能である。
【0052】
ガラス短繊維材及び有機繊維の繊維方向については、真空断熱材の厚み方向に対し水平方向に並んで配列するものが断熱性能の点で好ましい。これは垂直方向の熱伝導を低減するのに有効なためである。
【0053】
有機繊維としては、ポリスチレン繊維,ポリエチレン繊維,ポリプロピレン繊維,ポリアミド繊維,ポリエチレンテレフタレート繊維,ポリエステル繊維,ポリ乳酸繊維等の断熱性と加工性を両立できるものであれば何でもよく、特に限定されるものではないが、断熱性や曲げ強度,汎用性に優れるポリスチレン繊維を用いることが好ましい。
【0054】
有機樹脂繊維の繊維径は1〜50μmであることが好ましく、さらには1〜10μmであることが好ましい。これは平均繊維径が50μmより大きくなったとき、繊維の接触面積が大きくなって接触熱抵抗が小さくなるので、熱伝導率が大きく劣ってしまうからである。一方、平均繊維径を1μm未満とすると、繊維の接触が小さくなることで接触熱抵抗は大きくなるが、1枚当たりの厚みが薄くなってしまうため、シート状の有機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことで熱伝導率を低減しなければならず、生産性が劣ると共にコストも高騰するからである。
【0055】
また、有機樹脂を繊維化する方法としてはメルトブローン紡糸法がある。これは押出機で溶融した樹脂を極細のノズル穴から押出しながら高速のガス流体で延伸することで樹脂を繊維化し、積層するものである。溶融温度,繊維延伸時ガス流速,ノズル穴径,コレクト時コンベア速度等によって、平均繊維径,目付量等を制御可能である。その他の繊維化手段として、スパンボンド紡糸法等を用いてもよい。
【0056】
芯材4の脱水,脱ガスを目的として、外被材2への挿入前に芯材4を乾燥処理することは有効である。このときの加熱温度は最低限表面に付着した水分の除去が可能であるということから、70℃以上であることが望ましく、ガラス短繊維材の場合は芯材の含水率を極力減少させるために180℃以上で乾燥するのがより好ましく、ポリスチレン繊維の場合は70〜80℃が好ましい。その他の有機繊維については、繊維の耐熱温度以下の範囲でなるべく高い温度で乾燥するのが好ましい。このとき、真空乾燥を併用してもよい。
【0057】
吸着剤5は、アルミノ・シリケートの含水金属塩を主成分とした親水性合成ゼオライト,揮発性または疎水性の有機系ガスの吸着能力を高めた疎水性合成ゼオライト,ドーソナイト,ハイドロサルタイト,カーボンナノチューブ,カーボンナノホーン,カーボンナノファイバー,グラファイトナノファイバー等の炭素繊維体等といった、被吸着分子と吸着剤とが物理化学的な親和力で吸着を実現する物理吸着剤や、生石灰をはじめとしたアルカリ土類金属の酸化物,アルカリ金属の酸化物,金属酸化物等のガス吸着剤やバリウム−リチウム合金等の合金といった吸着性能に優れた化学反応型吸着剤を用いる。公知の吸着剤を単独あるいは併用して適用してもよい。また、形状はペレット,ビーズ,パウダー等、特に限定されるものではない。
【0058】
化学反応型吸着剤とは、主に化学反応によって被吸着分子と吸着剤とが化学結合することにより吸着を実現する吸着剤を指す。ここで言う化学結合とは、共有結合,イオン結合,金属結合,水素結合等の簡単には解離しない強い結合のことである。化学反応型吸着剤の例として、酸化カルシウム,酸化バリウム,酸化ストロンチウム等が挙げられる。
【0059】
これらの吸着剤を用いることで、真空断熱材1において真空排気し切れなかった水蒸気をはじめとするガスを吸着し、さらに真空断熱材1内部の真空度を高めることができ、真空断熱材1を高性能化する。また、芯材4から放出される水蒸気や、外被材2を通して外部より進入するガス及び外被材2自身から発生するガスを吸着し、真空断熱材1の経時劣化を低く抑えることができる。
【0060】
吸着剤5は、芯材4の内部に挿入される。この挿入により、吸着剤5が真空断熱材1の表面に突出しないため、吸着剤5の粒によって外被材2を傷つけたり破断したりすることがなく、真空断熱材1の断熱性能に対する信頼性を損なうことがない。
【0061】
このようにして作製される本発明の真空断熱材1では、真空断熱材1の断熱性能を大きく向上することができると共に、真空断熱材1の箱体に対する接着力が向上する。
【0062】
以下、本発明における実施の形態について説明する。
【0063】
(実施の形態1)
真空断熱材1を冷蔵庫21に適用する際における実施例について、図1を基に述べる。
【0064】
冷蔵庫21はABS樹脂を成形した内箱と、鋼板を成形して組み合わせてなる外箱からなり、内部に発泡断熱材25が固まった状態で充填されている箱体と、発泡断熱材25が固まった状態で充填された扉24を備えた構造となっている。扉24の内部に真空断熱材1を配設し、発泡断熱材25として、発泡断熱材25を固まった状態で充填する。箱体は仕切り等によって5室に分割されており、冷蔵室28,冷凍室29,31,製氷室30,野菜室32を備えている。冷蔵室28は2枚の回転扉を備え、その他の部屋は各1枚の引出扉を備えている。冷蔵室28扉の内側には、ポリスチレン等からなるドアポケットを3段備えており、食品やボトルを収納できるようになっている。
【0065】
冷蔵庫21は、外形寸法が幅750mm,奥行699mm,高さ1798mm,定格内容積602Lであり、最上段が冷蔵室28(内容積308L)、2段目に冷凍室29(冷凍室31に対して小形。内容積27L)と製氷室30(内容積19L)があり、3段目に冷凍室31(冷凍室29に対して大形。内容積137L)、最下段が野菜室32(内容積111L)となっている。内容積効率は64.7%である。
【0066】
また、冷蔵庫21の冷蔵室28,冷凍室29,31,野菜室32等の各室を所定の温度に冷却するために冷凍室31の背側には冷却器が備えられており、この冷却器と圧縮機と凝縮機,キャピラリーチューブとを接続し、冷凍サイクルを構成している。
【0067】
冷蔵庫21は少なくとも内箱22と外箱23の間に真空断熱材1が設けられており、具体的位置としては、冷蔵庫21における天井部,側面部,背面部及び底面部に配設されている。
【0068】
側面部及び背面部に適用される真空断熱材1については、図2で示すように、真空断熱材1の表面にホットメルト接着剤26をロールコータによって塗布し、外箱23に貼り付けることで固定する。天井部及び底面部に適用される真空断熱材1は、冷蔵庫21における内部形状に沿って段曲げされた後、両面テープ接着剤やホットメルト等の接着剤26を貼り付け、外箱23に貼り付けることで固定する。その上で、内箱22と外箱23の内部空間に発泡断熱材25の原液を投入し、発泡,硬化させることで発泡断熱材25を固まった状態で隙間無く充填し、箱体を完成させる。
【0069】
天井部には基板とそれを収める基板ケース27が配設されており、天井部に適用される真空断熱材1は、この形状に合わせて略Z形状に真空断熱材1を段曲げした。このとき、真空断熱材1が基板ケースに接触しない形状とし、真空断熱材1と基板ケースの間に発泡断熱材25が固まった状態で充填されるようにした。
【0070】
真空断熱材1と発泡断熱材25との接触面積は、真空断熱材1が基板ケースに接触する形状の場合と比べて大きくなるため、接着力の高い真空断熱材1を適用した冷蔵庫の箱体強度がより大きくなる。
【0071】
また、発泡断熱材25の原液が高流動性であるため、基板ケース27の形状に追従して発泡断熱材を隙間無く充填できると共に、基板からの熱が真空断熱材1に直接掛からないため、ヒートブリッジが軽減され、断熱性能を向上できるようになる。
【0072】
また、基板の熱によって真空断熱材1が劣化することを抑制し、長期に亘って高い断熱性能を維持することが可能となり、冷蔵庫21の省エネ性能が向上する。
【0073】
真空断熱材1は内包材3と、芯材4と、吸着剤5とからなり、内包材3,芯材4及び吸着剤5を収納し、且つガスバリア性フィルムからなる外被材2とを備えて構成される。この真空断熱材1を作製する手順を以下に示す。
【0074】
吸着剤5を芯材4の内部に設置し、これらを内包材3に収納して上下からプレスすることによって圧縮を行い、その状態で内包材3の開口部を熱溶着して封止することで芯材4を圧縮保持する。
【0075】
芯材4は内包材3への収納前に200℃の炉内で乾燥する。続いて、三方が熱溶着で溶着された袋状の外被材2へ圧縮成形された芯材4を収納する。これらは真空断熱材1の断熱性能向上のため、真空排気工程の前に100℃前後に調整された乾燥炉に通すことで水分除去する。
【0076】
乾燥工程後直ちにこれを真空チャンバ内にセットし、真空排気の直前に内包材3の開口部をカットして、真空排気を開始する。真空チャンバ内の真空度が1Paとなるまで真空排気による減圧を行い、外被材2の開口部を熱溶着によって封止することによって、真空断熱材1を得た。図3に実施の形態1で得られる真空断熱材1の一例を示す。なお、真空断熱材1作製時の温度及び湿度はそれぞれ約25℃,20%RHであった。
【0077】
以下、本発明における実施の形態1に基づいて行った実施例について説明する。
【0078】
(実施例1)
実施の形態1で述べた作製方法による冷蔵庫21において、各材料構成を以下のように選定した。
【0079】
外被材2は表面保護層2b,ガスバリア層2c、及び熱溶着層2dで構成され、それぞれ表面保護層2bとして両面がコロナ処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(20μm)、ガスバリア層2cとしてアルミニウムを蒸着(厚さ50nm)したポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)及びアルミニウムを蒸着(厚さ50nm)したエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(12μm)、熱溶着層2dとして直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(30μm)としたラミネートフィルムを用いた。各層間は2液硬化型ポリウレタン系接着剤で接着し、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムについては、アルミニウム蒸着面同士を向かい合わせる構成とした。外被材2の表面におけるぬれ張力は41mN/mであり、表面層の吸水率は0.01%であった。
【0080】
内包材3は高密度ポリエチレン樹脂フィルム(厚さ20μm)を、芯材4はガラス短繊維(グラスウール,平均繊維径約4μm)を、吸着剤5は合成ゼオライト(商品名モレキュラーシーブ,親水性,細孔径約1.3nm,平均粒度2mm,使用量約10g)を用いた。
【0081】
実施の形態1及び実施例1に記載の材料構成及び作製方法により、得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0010W/m・Kとなり、これを冷蔵庫21に適用した。
【0082】
ホットメルト接着剤26(スチレン・イソプレン系熱可塑性エラストマーを主成分とする)は軟化点約100℃,溶融粘度4000mPa・s(200℃),7500mPa・s(180℃)のものを180℃以上に加熱して溶かして用い、ロールコータにて真空断熱材1に厚さ100±10μmで塗布し、真空断熱材1を外箱23鋼板に貼り付けた。
【0083】
箱体強度の評価は冷蔵庫扉下がり量,冷蔵庫の外観異常確認,外箱平面部の波打ち(凹凸)形状の有無確認、について実施した。
【0084】
その試験方法について記載する。水平な場所に冷蔵庫21を設置し、冷蔵室28における一方の扉のドアポケットに飲料缶,ペットボトル等を収納し、合計10kgの負荷を掛け、他方の扉のドアポケットにも同様に合計20kgの負荷を掛けた。このとき、冷蔵室28の扉が荷重によって下がった量を初期扉下がり量とする。
【0085】
また、常温環境において、冷蔵室28扉を90°の開閉角度、開閉頻度10回/分とし、5万回連続で開閉を繰り返した後に扉が下がった量を試験後の扉下がり量とする。
【0086】
また、冷凍室扉(引出扉)の開閉については、各部屋に内容積の40%比重相当(内容積100Lの場合、40kg相当)の飲料缶,ペットボトル等の負荷を収納し、2万回の開閉繰返しを同様に実施した。
【0087】
冷蔵庫扉下がり量は、繰り返される扉開閉による箱体や扉の変形等の影響を見るものである。また、冷蔵庫の外観異常確認,外箱平面部の波打ち(凹凸)形状の有無確認については、箱体を−10℃に16時間放置した後に実施する。外観異常確認は、外箱,内箱における変形や割れ,亀裂等の有無を確認する。外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は、発泡断熱材25または外箱23鋼板と真空断熱材1との剥離有無を見る。外箱を外側から押したときに凹む場合、真空断熱材1が発泡断熱材25または外箱23鋼板から剥がれており、箱体強度を維持できなくなる。
【0088】
この試験を実施した結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量0.5mm、試験後の扉下がり量1.5mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。また、本実施例における箱体熱漏洩量は後述する比較例2に対し、9(指数)低減(改善)した。なお、箱体熱漏洩量については、実施例1における箱体熱漏洩量を100(指数)として表す。
【0089】
(実施例2)
実施例1の冷蔵庫21に対し、外被材2の表面におけるぬれ張力を34mN/mとして同様に評価を実施した。
【0090】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量1.0mm、試験後の扉下がり量2.0mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。また、本実施例における箱体熱漏洩量は100(指数)であり、後述する比較例2に対し、9(指数)低減(改善)した。
【0091】
(実施例3)
実施例1の冷蔵庫21に対し、外被材2の表面へのプライマー処理によって、外被材2の表面におけるぬれ張力を38mN/mとして同様に評価を実施した。プライマーコート剤はAD372MW(東洋モートン社の商品名)を用いた。
【0092】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量0.5mm、試験後の扉下がり量1.5mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。また、本実施例における箱体熱漏洩量は100(指数)であり、後述する比較例2に対し、9(指数)低減(改善)した。
【0093】
(実施例4)
実施例1の冷蔵庫21に対し、真空断熱材1にホットメルト接着剤26を厚さ75±10μmで塗布し、真空断熱材1を外箱23鋼板に貼り付けた。
【0094】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量0.5mm、試験後の扉下がり量1.5mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。また、本実施例における箱体熱漏洩量は100(指数)であり、後述する比較例2に対し、9(指数)低減(改善)した。
【0095】
(実施例5)
実施例1の冷蔵庫21に対し、冷蔵庫21は外形寸法が幅685mm,奥行699mm,高さ1798mm,定格内容積543Lであり、最上段が冷蔵室28(内容積277L)、2段目に冷凍室29(小形・内容積27L)と製氷室30(内容積19L)があり、3段目に冷凍室31(大形・内容積120L)、最下段が野菜室32(内容積100L)となっている。内容積効率は63.1%である。
【0096】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量0.5mm、試験後の扉下がり量1.0mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。
【0097】
(比較例1)
実施例1の真空断熱材1に対し、外被材2の表面にコロナ処理等の極性基を付与する処理は行わずに、ぬれ張力を31mN/mとして同様に評価を実施した。
【0098】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量2.0mm、試験後の扉下がり量3.5mmであり、変化が大きかった。また、外観に異常は無かったが、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状が見られた。
【0099】
(比較例2)
実施例1の真空断熱材1に対し、外被材2の表面保護層2bとして両面がコロナ処理された延伸ポリアミドフィルム(20μm),ガスバリア層2cとしてアルミニウムを蒸着(厚さ50nm)したポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)及びアルミニウムを蒸着(厚さ50nm)したエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(12μm)、熱溶着層2dとして直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(30μm)としたラミネートフィルムを用いた。各層間は2液硬化型ポリウレタン系接着剤で接着し、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムについては、アルミニウム蒸着面同士を向かい合わせる構成とした。外被材2の表面におけるぬれ張力は38mN/mであり、表面層の吸水率は10%であった。
【0100】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量0.5mm、試験後の扉下がり量2.0mmであり、外観に異常は無かった。また、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状は見られなかった。しかし、真空断熱材1の熱伝導率が0.0026W/m・Kとなったため、箱体熱漏洩量は109(指数)となり、本実施例の冷蔵庫21より断熱性能が劣っていた。
【0101】
(比較例3)
実施例1の冷蔵庫21に対し、真空断熱材1にホットメルト接着剤26を厚さ50±10μmで塗布し、真空断熱材1を外箱23鋼板に貼り付けた。
【0102】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量1.5mm、試験後の扉下がり量4.0mmであり、変化が大きかった。また、外観に異常は無かったが、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状が見られた。
【0103】
(比較例4)
比較例1の冷蔵庫21に対し、冷蔵庫21は外形寸法が幅685mm,奥行699mm,高さ1798mm,定格内容積543Lであり、最上段が冷蔵室28(内容積277L)、2段目に冷凍室29(小形・内容積27L)と製氷室30(内容積19L)があり、3段目に冷凍室31(大形・内容積120L)、最下段が野菜室32(内容積100L)となっている。内容積効率は63.1%である。
【0104】
その結果、本実施例における冷蔵庫21は、初期扉下がり量2.0mm、試験後の扉下がり量3.5mmであり、変化が大きかった。また、外観に異常は無かったが、外箱平面部の波打ち(凹凸)形状が見られた。
【0105】
本発明における実施例に対し、将来的に高ガスバリア,低吸水性の新規材料が開発された場合も、本発明の手法を同様に適用可能であり、実施例に記載の結果と同等かそれよりも向上することができる。
【0106】
以上より、本発明によって、省エネ性能が高く、外観歪みの少ない冷蔵庫等の冷却機器の断熱容器を得ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 真空断熱材
2 外被材
2a 外被材の余剰部分
2b 表面保護層(最外層)
2c ガスバリア層
2d 熱溶着層
3 内包材
4 芯材
4a グラスウール
4b ポリスチレン繊維
5 吸着剤
6 外被材の表面処理部
21 冷蔵庫
22 内箱
23 外箱
24 扉
25 発泡断熱材
26 ホットメルト等の接着剤
27 基板ケース
28 冷蔵室
29 冷凍室(小形)
30 製氷室
31 冷凍室(大形)
32 野菜室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内箱と外箱の間に真空断熱材が設けられ、前記真空断熱材を接着剤で前記内箱又は前記外箱に固定する断熱容器において、
前記真空断熱材は、芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記外被材はプラスチックラミネートフィルムにより構成され、前記外被材の最外層のプラスチックフィルムは延伸されたポリオレフィンであり、前記外被材の最外層表面に極性基を設けたことを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
請求項1記載の断熱容器において、前記外被材の最外層は二軸延伸ポリプロピレンであることを特徴とする断熱容器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の断熱容器において、該断熱容器の外形体積に対する収納容積である内容積効率は60%〜80%であることを特徴とする断熱容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の断熱容器において、前記接着剤は、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体(SIS)を主成分としたホットメルト接着剤であり、前記接着剤を前記真空断熱材に塗布する平均厚さが75〜100μmであることを特徴とする断熱容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の断熱容器において、前記外被材の最外層表面におけるぬれ張力が34mN/m〜70mN/mであることを特徴とする断熱容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−19475(P2013−19475A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153417(P2011−153417)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】