説明

断熱箱体

【課題】真空断熱材を用いて断熱を行うものであり、断熱性が低下しにくくした断熱箱体を提供する。
【解決手段】本発明の断熱箱体を構成する板状部19には、内側板22と外側板23からなる2重の金属板20と、2重の金属板20の間に形成される断熱層配置空間27に配置される真空断熱材25と発泡樹脂部26を有している。そして、真空断熱材25の表面25a、裏面25bの両面には、接着剤が塗布されており、一方の面は金属板20と接着され、他方の面は発泡樹脂部26と接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側面と外側面が金属板で構成され、内側面と外側面の金属板の間に断熱材を有する断熱箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物を船舶や貨物列車などを用いて輸送する場合、コンテナに貨物を積み込んで行われている。そして、輸送の際に貨物の冷蔵や冷凍しなければならないものの場合には、低温輸送用の保冷コンテナ(断熱箱体)が用いられる。
【0003】
保冷コンテナは、貨物を積み込む内部空間がほぼ密閉状とすることができるものであり、また、内部空間の温度を低温に保つために、冷凍機などの低温環境を維持する手段が設けられている。そして、保冷コンテナの壁や天井などには断熱層が設けられ、内部空間と外部との間に温度差がある場合にも、熱の出入りを小さくすることができるような構造となっている。
【0004】
保冷コンテナは、通常、直方体の箱状であり、壁や天井などの各面に板状部が設けられている。この板状部の構造は2重の金属板を有しており、2重の金属板同士の間に断熱材を配置している構造となっており、内部空間と外部との間で熱の出入りを小さくするようにしている。この断熱材は発泡性の樹脂などを充填して形成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−72881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保冷コンテナなどの断熱箱体は、輸送や保管の際に、断熱箱体同士を積み重ねる場合がある。そのため、所定の荷重が上側から作用しても壊れることがないようにする必要がある。また、輸送中の振動などにより、より大きな荷重が作用することがある。さらに、保冷コンテナなどの断熱箱体を船や貨物列車などに積み込んだり船や貨物列車などから降ろしたりする際に、衝撃力によって断熱箱体が破損するおそれがあるので、この衝撃力によって破損しない強度を有する必要がある。
【0006】
そのため、保冷コンテナなどの断熱箱体において、壁や天井に設けられる2重の金属板は、折り曲げたり湾曲させたりして変形部を形成して、金属板が変形しにくい形状となっている。
【0007】
一方で、圧縮されても空隙を維持することのできる芯材と、この芯材を包む袋材を有し、袋材内を真空にして製作される真空断熱材は、特に断熱性に優れるものである。そして、このような真空断熱材を2重の金属板の間に配置することができれば、保冷コンテナなどの断熱箱体の断熱性をより向上させることができる。
【0008】
真空断熱材は板状の部材であり、保冷コンテナなどの断熱箱体に真空断熱材を使用する場合には、2重の金属板の間に配置して製作することが考えられる。しかし、上記したように、断熱箱体の使用時には大きな力がかかるため、金属板がねじれたり撓んだりすることがあり、このような場合、真空断熱材と金属板との間や、真空断熱材と後から充填される発泡樹脂との間がずれてしまうおそれがあり、このような場合には断熱性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、真空断熱材を用いて断熱を行うものであり、断熱性が低下しにくくした断熱箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の断熱箱体は、真空断熱材の両面には接着剤が塗布されて、真空断熱材の一方の面は金属板と接着され、他方の面は発泡樹脂部と接着したものである。
【0011】
これによって、断熱箱体の使用時に真空断熱材がずれにくくなり、断熱性の低下が発生しにくい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱箱体によれば、真空断熱材を用いて断熱を行うことができ、また、断熱性の低下が発生しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
請求項1に記載の断熱箱体の発明は、板状部と、前記板状部によって囲まれる内部空間とを備え、前記板状部は、内側板と外側板からなる2重の金属板と、前記金属板の間に配置される発泡樹脂部及び真空断熱材とを有し、前記内側板の内側に前記内部空間が形成されるものであり、前記真空断熱材の両面には接着剤が塗布されて、前記真空断熱材の一方の面は前記金属板と接着され、他方の面は前記発泡樹脂部と接着されていることを特徴とするものであり、断熱箱体の使用時に真空断熱材がずれにくくなり、断熱性の低下が発生しにくい。また、真空断熱材のずれにより生じる空間部に水分が侵入し、ウレタンなどの発泡樹脂部の劣化を起こす可能性が少なくなる。
【0014】
請求項2に記載の断熱箱体の発明は、請求項1に記載の発明における真空断熱材が、内側板と接着されているものであり、断熱箱体の使用時の真空断熱材の劣化が発生しにくい。
【0015】
請求項3に記載の断熱箱体の発明は、請求項1または2に記載の発明における金属板には、折り曲げまたは湾曲によって形成された変形部と、平面部とが設けられ、真空断熱材は平面部に配置されて接着されているものであり、断熱箱体が高強度となり、真空断熱材の配置が行いやすい。
【0016】
請求項4に記載の断熱箱体の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明に加えて、内部空間には温度調節装置が配置され、前記内部空間内を所定の温度に制御することができるものであり、貨物の温度を安定させることができる。
【0017】
なお、本発明は、内側板と外側板に金属板を用いているが、金属板でなくても、樹脂板でも、同様の効果が得られる。
【0018】
また、本発明は、内側板と外側板との間に発泡樹脂部及び真空断熱材を有する板状部によって内部空間が形成される断熱箱体であるが、内箱と外箱との間に発泡樹脂部及び真空断熱材を有する断熱箱体であっても構わない。
【0019】
以下、本発明の断熱箱体の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものでない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態1における断熱箱体の斜視図である。図2は、図1に示す断熱箱体のA−A断面図である。図3は、図2に示す断熱箱体のB部の拡大断面図である。図4は、(a)は本発明の実施の形態1の断熱箱体に用いる真空断熱体を示す斜視図、(b)は(a)のC−C矢視断面斜視図、(c)は(a)の真空断熱体のひれ部を折曲した状態を示す斜視図である。図5は、同実施の形態の断熱箱体の板状部(側板部)の内側板に真空断熱材を貼り付けた状態を示す拡大断面図である。図6は、同実施の形態の断熱箱体の板状部(側板部)の内側板の拡大断面図である。
【0021】
本発明の実施の形態1における断熱箱体1は、図1に示されるように、直方体の箱状であって板状部19を有している。板状部19は6面に設けられ、全て長方形状であり、上側に配置される天板部10、下側に配置される底板部11と、4枚の側板部12とが設けられている。そして、板状部19によって囲まれる空間である内部空間13が内部に形成されている。また、板状部19は枠材30に固定されている。
【0022】
天板部10及び底板部11の形状はほぼ同じであり、対向する1組の辺である長辺15が、他の二辺である短辺16よりも長く、細長い長方形状となっている。また、短辺16側に配置される側板部12は、開閉可能な扉部17となっており、必要に応じて開閉することができる。内部空間13に貨物を積み込んだり取り出したりする場合には扉部17を開け、輸送する場合には、扉部17は閉じられる。そして、扉部17を閉じた状態では、内部空間13がほぼ密閉状となる。
【0023】
また、図1、図2に示されるように、断熱箱体1の内部空間13には、温度調節装置18が設けられている。温度調節装置18は、内部空間13内の温度を所定の温度に維持することができるものであり、具体的には冷凍機である。そして、断熱箱体1を用いて輸送する場合には、必要に応じて温度調節装置18を稼働させ、内部空間13の温度を所定の温度で維持させることができる。
【0024】
側板部12の構造は、図3に示されるように、内側板22及び外側板23により構成される2重の金属板20と、真空断熱材25及び発泡樹脂部26により構成される断熱層21とからなっている。そして、断熱層21は、内側板22及び外側板23の間に形成される断熱層配置空間27に配置されている。
【0025】
内側板22及び外側板23は、平板の鋼板が用いられている。この鋼板の材質は、アルミやステンレスなどの耐腐食性に優れる材質のものを用いることができる。
【0026】
また、内側板22及び外側板23には、図1、図3に示すように、上下方向に延びる直線状の変形部28が形成されている。変形部28は、折り曲げて形成される部分であり、断熱層配置空間27側が突出するように形成され、外部が凹んだ形状となっている。そして、変形部28以外の部分は平面状である平面部29となり、後述するように、真空断熱材25は平面部29に接着されている。変形部28の形成はプレスなどにより行うことができる。内側板22及び外側板23の変形部28は、それぞれ複数形成されており、横方向に並んでいる。
【0027】
なお、変形部28は折り曲げる方法以外にも、湾曲によって形成することもできる。
【0028】
変形部28は所定の間隔を設けるようにして、複数形成され、全体に配置されている。したがって、内側板22及び外側板23に、変形部28に沿う方向(上下方向)に圧縮力が作用した場合や、変形部28が湾曲する方向に曲げ応力が加わった場合に、より高強度となる。
【0029】
内側板22の変形部28と、外側板23の変形部28は、上下方向に延びるように形成されており、これらの方向は平行な関係となっている。
【0030】
真空断熱材25は、図4(a),(b)の様に、繊維材を圧縮成形した芯材43をガスバリア性を有する外被材41,42で覆い、当該外被材41,42で覆われた内部を減圧したものである。
【0031】
外被材41,42は、ガスバリア層、熱溶着層及び保護層を有する長方形状のシートである。そして、ガスバリア層はアルミニウムなどの金属箔や、金属または無酸化物の蒸着されたフィルムである。熱溶着層は、当該ガスバリア層の内面側に、無延伸ポリプロピレン等のフィルムを熱溶着層として積層したものである。そして、保護層は、ガスバリア層の外面側に、ナイロンやポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを積層したラミネートフィルムである。
【0032】
芯材43は、圧縮されても空隙を維持することのできるものであり、繊維材などを用いて形成される。芯材43を繊維材を用いて形成する場合には、グラスウールやグラスファイバーなどの無機繊維が好ましい。また、芯材43には、繊維材以外の材料を用いても良い。
【0033】
そして、真空断熱材25は、外被材41,42を重ね合わせて三辺(三方)を加熱溶着して一辺を開口状として袋状とし、芯材43を袋内に挿入し、さらに、開口部分から袋内を減圧した状態で開口部分を加熱溶着して封止される。
【0034】
このようにして、製作された真空断熱材25には、図4(a)に示すように、外被材41,42の各辺に重ね合わせて加熱溶着される部分である、4ヵ所のひれ部25c,25d,25e,25fが形成される。そして、図4(c)に示すように、このひれ部25c,25d,25e,25fが折り返される。なお、このひれ部25c,25d,25e,25fの折り返しを行わないものを用いることもできる。
【0035】
発泡樹脂部26は、流動状の樹脂を充填しながら発泡硬化させることができるものを用いて成形するものであり、充填することのできる空間に合わせた形状とすることができる。発泡樹脂部26に用いられる材料としては、ウレタン樹脂材料が用いられるが他の材料でもよい。
【0036】
図5、図6には、側板部12の断面図であり、これらの図を用いて断熱箱体1の側板部12を形成の方法を説明する。
【0037】
まず、真空断熱材25の表面25a、裏面25bの両面に接着剤を塗布して接着層50a,50bを形成する。この接着剤の種類は限定されるものでないが、発泡樹脂部26にウレタン樹脂材料を用いた場合は、真空断熱材25の表面25aと発泡樹脂部26との接着面の接着層50aにウレタン系接着剤を用いと、真空断熱材25の表面25aと発泡樹脂部26との接着性が良い。
【0038】
そして、表面25a、裏面25bの両面に接着剤を塗布された真空断熱材25を、内側板22の断熱層配置空間27側に貼り付ける。また、真空断熱材25が貼り付けられる位置は、変形部28を避けるようにして平面部29に配置される。このとき、裏面25bが内側板22と接着される。
【0039】
本実施の形態の真空断熱材25は、内側板22に貼り付けられているが、外側板23の断熱層配置空間27側に貼り付けることもでき、さらに、内側板22側、外側板23側の両方に取り付けることもできる。なお、断熱箱体1の使用の際には、通常、外部は高温になりやすく、内部は冷却されるので、内側板22に真空断熱材25を貼り付けた方が真空断熱材25の劣化などが発生しにくい。
【0040】
なお、内側板22及び外側板23の内側の面(断熱層配置空間27側の面)に、あらかじめ接着剤を塗布しておき、発泡樹脂部26と、内側板22及び外側板23との間の強度を高強度とすることができる。
【0041】
真空断熱材25を取り付けた後、内側板22と外側板23は所定の間隔となるような状態で固定され、図5に示される状態とする。この固定は、枠材30に溶接するなどして行われる。そして、内側板22と外側板23との間に形成される断熱層配置空間27に、流動状の樹脂を充填しながら発泡硬化させて発泡樹脂部26が形成される(図6)。断熱層配置空間27に流動状の樹脂を充填する場合には、内側板22や外側板23などに設けられる注入孔(図示せず)から注入される。そして、注入された樹脂が発泡しながら硬化して、断熱層配置空間27に合わせるような形状となり、断熱層配置空間27には隙間が形成されない状態となる。
【0042】
また、真空断熱材25の表面25a、裏面25bの両面には接着剤が塗布されており、接着層50a,50bが形成されて、真空断熱材25は、内側板22や発泡樹脂部26との間において接着強度が高くなる。
【0043】
本実施の形態の断熱箱体1の、天板部10、底板部11及び他の側板部12の構造ついても、上記した側板部12と同様の構造が採用されており、同様な方法で製作され、これらの板状部19を用いて箱状とし、内部空間13が形成される。なお、天板部10や底板部11の変形部28は、短辺16に平行となる方向に延びるように形成されている。
【0044】
さらに、温度調節装置18を、扉部17が設けられる側板部12とは反対側付近の内部空間13に配置して、断熱箱体1が完成する。
【0045】
本実施の形態の断熱箱体1では、真空断熱材25が、内側板22と外側板23との間に形成される断熱層配置空間27に配置されているので、断熱性を向上させることができる。また、真空断熱材25の表面25a、裏面25bの両面には接着剤が塗布されているので、真空断熱材25は、金属板20(内側板22)及び発泡樹脂部26のいずれとの間においても接着強度が高くなり、断熱箱体1の使用の際に、真空断熱材25がずれにくくなり、断熱性の低下を防止することができる。
【0046】
なお、上記した実施の形態の断熱箱体1では、天板部10、底板部11及び4枚の側板部12の板状部19の全てが、真空断熱材25の両面に接着剤が塗布されて、真空断熱材25の裏面25bが金属板20と接着され、表面25aが発泡樹脂部26と接着したものであるが、この構造を採用する板状部19を一部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる断熱箱体は、真空断熱材の両面には接着剤が塗布されて、真空断熱材の一方の面は金属板と接着され、他方の面は発泡樹脂部と接着したものであるので、断熱箱体の使用時に真空断熱材がずれにくくなり、断熱性の低下が発生しにくい。したがって、船舶による貨物輸送、鉄道や道路による貨物輸送の保冷コンテナに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱箱体の斜視図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図2のB部拡大断面図
【図4】(a)は本発明の実施の形態1の断熱箱体に用いる真空断熱体を示す斜視図、(b)は(a)のC−C矢視断面斜視図、(c)は(a)の真空断熱体のひれ部を折曲した状態を示す斜視図
【図5】同実施の形態の断熱箱体の板状部(側板部)の内側板に真空断熱材を貼り付けた状態を示す拡大断面図
【図6】同実施の形態の断熱箱体の板状部(側板部)の拡大断面図
【符号の説明】
【0049】
1 断熱箱体
13 内部空間
18 温度調節装置
19 板状部
20 金属板
22 内側板
23 外側板
25 真空断熱材
26 発泡樹脂部
28 変形部
29 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と、前記板状部によって囲まれる内部空間とを備え、
前記板状部は、内側板と外側板からなる2重の金属板と、前記金属板の間に配置される発泡樹脂部及び真空断熱材とを有し、前記内側板の内側に前記内部空間が形成されるものであり、前記真空断熱材の両面には接着剤が塗布されて、前記真空断熱材の一方の面は前記金属板と接着され、他方の面は前記発泡樹脂部と接着されていることを特徴とする断熱箱体。
【請求項2】
真空断熱材は、内側板と接着されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱箱体。
【請求項3】
金属板は平板を用いて形成されるものであって、折り曲げまたは湾曲によって形成された変形部と、平面部とが設けられ、真空断熱材は平面部に配置されて接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱箱体。
【請求項4】
内部空間には温度調節装置が配置され、前記内部空間内を所定の温度に制御することができることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131318(P2007−131318A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325698(P2005−325698)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】