説明

断熱障子及びこれを用いた建具

【課題】断熱性能に優れた断熱障子を提供する。
【解決手段】この断熱障子は、障子枠1と、この障子枠1内に組み込んだ表裏一対の組子2A、2Bと、表側の組子2Aの表面及び裏側の組子2Bの裏面に夫々張り付けた透光性を有する障子紙3A、3Bと、表側の組子2Aと裏側の組子2Bとの間に介在させた透光性を有する面材4とを備え、表側の障子紙3Aと前記面材4との間、裏側の障子紙3Bと前記面材4との間に、断熱用空気層50、51を夫々形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば住宅屋内において内窓障子、間仕切り障子、明かり窓用障子、欄間障子等として使用される断熱障子及びこれを用いた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、障子枠内に組み込んだ組子の片面に、和紙等の障子紙を張り付けた障子が一般的に知られている。また、障子枠内に組み込んだ組子の表裏両面に、和紙等の障子紙を張り付けた太鼓張り障子も知られている。
【0003】
この種の障子は、落ちつきのある和の雰囲気を演出するとともに、外部からの視線を遮りながら外光を柔らかく採り入れるといった特有の機能性を有していることから、住宅の各種建具において広く利用されている。
【0004】
近年、住宅の高断熱化が進むにつれて、上記のような障子についても断熱性能の向上が求められている。例えば特許文献1には、太鼓張り障子の表側及び裏側にガラス板を配置した状態で、これら太鼓張り障子及びガラス板を方形枠内に組み付けることで、太鼓張り障子の障子紙間、太鼓張り障子と表側及び裏側のガラス板との間に、断熱用空気層を夫々形成した断熱障子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−82687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された断熱障子においては、太鼓張り障子の表側及び裏側に断熱用空気層を確保しながらガラス板を配置しているので、厚みが増大して大型化するとともに、重量も重くなって、取り扱い難いといった不具合があった。しかも、障子紙がガラス板で覆われていて、ガラス板が表裏面に露出していることから、和の風合いを損なうとともに、障子紙の張替え作業等も面倒になるといった不具合もあった。
【0007】
そこで、この発明は、上記不具合を解消して、複数の断熱用空気層を形成して断熱性能の向上を図りながらも、取り扱い易くて意匠性に優れ、障子紙の張替え作業等も容易に行うことができる断熱障子及びこれを用いた建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の断熱障子Sは、障子枠1と、この障子枠1内に組み込んだ表裏一対の組子2A、2Bと、表側の組子2Aの表面及び裏側の組子2Bの裏面に夫々張り付けた透光性を有する障子紙3A、3Bと、表側の組子2Aと裏側の組子2Bとの間に介在させた透光性を有する面材4とを備え、表側の障子紙3Aと前記面材4との間、裏側の障子紙3Bと前記面材4との間に、断熱用空気層50、51を夫々形成したことを特徴とする。
【0009】
具体的に、前記面材4は、複数のシート40・・を、それらシート40・・間に空気層42・・を形成するように積層してなる。また、前記障子紙3A、3B及び前記面材4が、ともに非通気性である。
【0010】
さらに、前記表裏一対の組子2A、2Bは、前記障子枠1に内嵌する外周枠22、22を夫々備え、これら組子2A、2Bの外周枠22、22によって前記面材4の周端部を挟持している。
【0011】
また、この発明の建具は、上記の断熱障子S、Sを備えていることを特徴とする。

【発明の効果】
【0012】
この発明の断熱障子においては、その内部に断熱用空気層が二重に確保されているので、従来のような一般的な障子や太鼓張り障子に比べて、断熱性能を格段に向上することができる。しかも、面材を介在させた組子に対して、障子紙を太鼓張りして、これらを障子枠内に収めたようなコンパクトな構造となっているので、従来の重厚な断熱障子と比べて薄型軽量化を図ることができ、取り扱い易い断熱障子とすることができる。さらに、障子紙が表裏面に露出して太鼓張り障子と同様の外観を呈しており、また障子紙及び面材は透光性を有しているので、落ちつきのある和の雰囲気を演出するとともに、外部からの視線を遮りながら外光を柔らかく採り入れるといった従来からの障子特有の機能性も維持することができる。さらにまた、障子紙の張替え作業等も容易に行うことができる。
【0013】
また、面材において複数の空気層を形成することで、断熱用空気層と合わせて空気層が三重以上に確保されて、断熱性能をより一層高めることができる。さらに、非通気性の障子紙及び面材を使用することで、空気の流れを確実に遮断して、断熱性能をより一層高めることができる。さらにまた、面材の周端部を、表裏の組子の外周枠によって挟持することで、面材の捲れや位置ずれを生じ難くして、断熱性能を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係る断熱障子の正面図である。
【図2】同じくその縦断面図である。
【図3】同じくその横断面図である。
【図4】障子枠内に組み込む組子、障子紙、面材の分解斜視図である。
【図5】組子の斜視図である。
【図6】面材の部分拡大断面図である。
【図7】断熱障子を備えた建具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る断熱障子Sは、例えば住宅屋内において内窓障子として用いられるものであって、図1乃至図4に示すように、方形状の障子枠1と、この障子枠1内に組み込んだ表裏一対の組子(障子骨)2A、2Bと、表側の組子2Aの表面及び裏側の組子2Bの裏面に夫々張り付けた透光性を有する障子紙3A、3Bと、表側の組子2Aと裏側の組子2Bとの間に介在させた透光性を有する面材4とを備えている。
【0016】
障子枠1は、左右一対の縦框材10、10と、これら縦框材10、10の上端部間に差し渡された上框材11と、縦框材10、10の下端部間に差し渡された下框材12とからなる。なお、各框材10、10、11、12は、例えば木製の角材からなるが、金属製の中空材を用いても良い。
【0017】
組子2A、2Bは、図5に示すように、左右方向に等間隔をあけて配置した複数の縦組子材20・・と、上下方向に等間隔をあけて配置した複数の横組子材21・・とを格子状に組み付けてなり、左右端に位置する縦組子材20、20と、上下端に位置する横組子材21、21とによって、方形状の外周枠22が構成されている。なお、各組子材20、21・・は、例えば木製の角材からなるが、金属製の角材を用いても良い。
【0018】
これら組子2A、2Bは、その外周枠22、22を障子枠1に内嵌させるようにして、障子枠1内に組み込まれている。
【0019】
障子紙3A、3Bは、例えば和紙に透明な合成樹脂製シートをラミネートしてなり、見た目が和紙でありながらも非通気性を有している。なお、障子紙3A、3Bとしては、このような樹脂サンド和紙に限らず、単なる和紙やその他の透光性を有するシート材であっても良い。
【0020】
これら障子紙3A、3Bは、方形状に形成されていて、表側の障子紙3Aは、表側の組子2Aによって区画形成された空間2a・・の表面開口部を塞ぐようにして、表側の組子2Aの表面に接着糊や両面テープを介して張り付けられ、裏側の障子紙3Bは、裏側の組子2Bによって区画形成された空間2b・・の裏面開口部を塞ぐようにして、裏側の組子2Bの裏面に接着糊や両面テープを介して張り付けられている。
【0021】
面材4は、図6に示すように、透明若しくは半透明な複数の合成樹脂製シート40・・を、それらシート40・・間に空気層42・・を形成するようにして、透明若しくは半透明な複数の合成樹脂製スペーサ41・・を介して一体的に積層してなり、非通気性を有している。
【0022】
この面材4は、方形状に形成されていて、上述した空間2a・・の裏面開口部及び空間2b・・の表面開口部を塞ぐようにして、表側の組子2Aと裏側の組子2Bとによって挟まれた状態で配されている。特に、面材4の周端部が、その全周に亘って表側の組子2Aの外周枠22と裏側の組子2Bの外周枠22とによって挟持されているので、面材4の捲れや位置ずれが生じ難くなっている。
【0023】
そして、この断熱障子Sには、表側の障子紙3Aと面材4との間に、閉塞された複数の空間2a・・からなる表側の断熱用空気層50が形成され、裏側の障子紙3Bと面材4との間に、閉塞された複数の空間2b・・からなる裏側の断熱用空気層51が形成されている。
【0024】
上記構成の断熱障子Sにおいては、その内部に断熱用空気層50、51が二重に確保されていて、さらに断熱用空気層50、51の間の面材4においても複数の空気層42・・が確保されているので、従来のような一般的な障子や太鼓張り障子に比べて、断熱性能を格段に向上することができる。しかも、非通気性の障子紙3A、3B及び面材4を使用しているので、空気の流れを確実に遮断して、断熱性能をより一層高めることができる。
【0025】
また、面材4を介在させた組子2A、2Bに対して、障子紙3A、3Bを太鼓張りして、これらを障子枠1内に収めたようなコンパクトな構造となっているので、従来の重厚な断熱障子と比べて薄型軽量化を図ることができ、取り扱い易い断熱障子Sとすることができる。
【0026】
さらに、障子紙3A、3Bが表裏面に露出して太鼓張り障子と同様の外観を呈しており、また障子紙3A、3B及び面材4は透光性を有しているので、落ちつきのある和の雰囲気を演出するとともに、外部からの視線を遮りながら外光を柔らかく採り入れるといった従来からの障子特有の機能性も維持することができる。さらにまた、障子紙3A、3Bの張替え作業等も支障なく行うことができる。
【0027】
図7は、上記の断熱障子S、Sを備えた建具の一例を示しており、この建具は、サッシ前の内窓を構成するもので、断熱障子S、Sが引き違い可能な状態で窓枠60内に取り付けられている。
【0028】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、この発明の断熱障子は、内窓障子だけでなく、間仕切り障子や明かり窓用障子、欄間障子等として用いるようにしても良い。また、上記実施形態における断熱障子は、その外形が縦長の長方形状になっていたが、例えば横長の長方形状、正方形状、円形状等のような形状であっても良い。さらに、組子の形状も格子状に限定されず、少なくとも面材と障子紙との間に断熱用空気層を確保することができれば、どのような形状であっても良い。さらにまた、面材としては、内部に空気層を有するものだけに限らず、空気層を有しないものであっても良い。
【符号の説明】
【0029】
S・・断熱障子、1・・障子枠、2A、2B・・組子、3A、3B・・障子紙、4・・面材、22・・外周枠、40・・シート、42・・空気層、50、51・・断熱用空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子枠(1)と、この障子枠(1)内に組み込んだ表裏一対の組子(2A)(2B)と、表側の組子(2A)の表面及び裏側の組子(2B)の裏面に夫々張り付けた透光性を有する障子紙(3A)(3B)と、表側の組子(2A)と裏側の組子(2B)との間に介在させた透光性を有する面材(4)とを備え、表側の障子紙(3A)と前記面材(4)との間、裏側の障子紙(3B)と前記面材(4)との間に、断熱用空気層(50)(51)を夫々形成したことを特徴とする断熱障子。
【請求項2】
前記面材(4)は、複数のシート(40)・・を、それらシート(40)・・間に空気層(42)・・を形成するように積層してなる請求項1記載の断熱障子。
【請求項3】
前記障子紙(3A)(3B)及び前記面材(4)が、ともに非通気性である請求項1又は2記載の断熱障子。
【請求項4】
前記表裏一対の組子(2A)(2B)は、前記障子枠(1)に内嵌する外周枠(22)(22)を夫々備え、これら組子(2A)(2B)の外周枠(22)(22)によって前記面材(4)の周端部を挟持した請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱障子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の断熱障子(S)(S)を備えていることを特徴とする建具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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