説明

断熱食品容器

【課題】断熱容器内の熱対流による保温性低下を防止できるようにする。
【解決手段】断熱容器1の上部開口部1Aに外蓋10を開閉自在に設け、内側に内容器5,12,13を収納する。内容器5は内容器本体16にパッキン材22を介して内蓋17を開閉自在に設ける。パッキン材22から外周方向に突出して断熱容器1の内周面2Aに接触可能な遮断壁6を設ける。断熱容器1の内周面2Aには、遮断壁6が接する内径Aの箇所の上方に接しない内径Bの箇所を有する。遮断壁6により断熱容器1内における断熱した内蓋17を備えた内容器5と内容器13側において空間を遮断して、熱対流を少なくして保温機能の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温したまま弁当を携帯する保温弁当箱などの断熱食品容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のものとして、保温弁当箱の本体を形成する断熱容器の内部に、少なくとも上段および下段からなる2つ以上の内容器を垂直方向に積み重ねて収納してなり、内容器は、内容器本体の上部開口部にパッキン材を介して内蓋が開閉自在に設けられたものである。そして、このような従来技術においてはそれぞれ円筒状の断熱容器内面と内容器の外面は一定の隙間が設定されている。
【0003】
さらに、断熱容器への容積効率が良い例えば飯器などの内容器において、内蓋の閉状態を明確にするために、内蓋の外側面に肉盛部が径方向に設けられて、この肉盛部が容器本体の内側面の凸リブを乗り越えて通過したときに、クリック感を生じせしめるものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2986886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来具術においては、断熱容器内面と内容器の外面は一定の隙間が設定されており、この隙間は、保温収納されている食品を収納した内容器からの熱対流が発生する空間となり、断熱容器開口部へ熱損失するおそれがある。
【0006】
また、クリック感のために肉盛部と凸リブとを設けたような場合、クリック感はそれぞれの部品の製造公差に大きく影響され、一定のトルク値に保持する調整が困難であった。また、断熱容器構成で、収納されるうち容器の外径と断熱容器の内径はそれぞれ仕上がり公差のため、ある程度の隙間が必要であるが、このような隙間も前述のような熱損失の原因になる。
【0007】
解決しようとする問題点は、断熱容器に食品の内容器を収納する断熱食品容器において、断熱容器内の熱対流による保温性低下を防止できるようにする点である。また、内容器の内蓋が正位置になると凹凸嵌合によるクリック感が生ずるようなもののような場合であっても、各部品の製造寸法公差を比較的低く設定できるようにする点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上部開口部に外蓋を開閉自在に設けた断熱容器に内容器を収納すると共に、該内容器は内容器本体にパッキン材を介して内蓋を開閉自在に設けた断熱食品容器において、前記パッキン材から外周方向に突出して前記断熱容器の内周面に接触可能な遮断壁を設けたことを特徴とする断熱食品容器である。
【0009】
請求項2の発明は、前記パッキン材は弾性リングからなり、前記内容器本体の上部開口部と前記内蓋に介在していることを特徴とする請求項1記載の断熱食品容器である。
【0010】
請求項3の発明は、前記断熱容器の内周面には、前記遮断壁が接しない大径部と前記遮断壁が接する小径部を有することを特徴とする請求項2記載の断熱食品容器である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、遮断壁により断熱容器内の対流空間を遮断して、熱対流を少なくして保温機能の低下を抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、遮断壁に弾性体を用いているため、断熱容器の内周面に遮断壁を変形接触させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、内容器の出し入れの際の遮断壁の接触抵抗を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施例2を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例1を示しており、保温弁当箱の本体を形成する断熱容器1は、有底円筒状の内筒2と有底円筒状の外筒3とをその口部で接合一体化して上部開口部1Aを形成しており、この上部開口部1Aは内筒2とほぼ同径な広口に形成され、そして、内筒2と外筒3間の空隙を真空断熱空間4とした真空二重構造を有している。内筒2の内径は後述する第2の内容器5の遮断壁6が配置される第1の内径Aが最小となり、該内径Aの箇所の上方においては第2の内径B(B<A)となる段を介して大径に形成されており、一方内径Aの箇所の下方において内径は同じ径Aに形成されている。また外筒3の底部には、底部材7が装着されている。さらに、断熱容器1の外筒3の上部開口部1Aの直径方向の両端に相当する2箇所に止め具8を設けている。この止め具8は基端を上部開口部の外周に固定した肩部材9に回動自在に連結した正面が略U字型形或いは略倒コ字型形に形成されている。
【0017】
断熱容器1の上部開口部1Aを塞ぐ外蓋10は、比較的浅型の有底円筒状形状を有しており、肩部材9に上方から外嵌合できるようになっており、その直径方向の両端に相当する2箇所に止め具8の受け部11が設けられている。
【0018】
上部開口部1Aを外蓋10で閉じた状態での断熱容器1の内部には、上下方向に食品収納用の第1の内容器12、前記第2の内容器5、第3の内容器13が積み重ねられて収納されている。実施例では、第1の内容器12は外蓋10の内側に収納されており、内筒2の底部に載置した第3の内容器13と、第3の内容器13上にある第2の内容器5は断熱容器1に収納されている。
【0019】
そして、第1の内容器12は有底な第1の内容器本体14の上部開口部14Aに第1の内蓋15を外嵌したものであり、第1の内蓋15は外蓋10の天面に対向している。
【0020】
第2の内容器5は有底な第2の内容器本体16の上部開口部16Aに第2の内蓋17の内底を挿入したものであり、第2の内蓋17は皿型の上板部18の下面に凹状の底板部20の上縁を突き合わせるようにして互いに接合し、両者の間に形成された空隙を空気層としたり、断熱材を充填した断熱層21を有するもので、その底板部20を第2の内容器本体16の上部開口部16Aに挿入した状態に装着されている。そして、この第2の内蓋17の外周の全周にはパッキン材である平面が円環状の弾性リング22が装着している。この弾性リング22の断面形状は内側を開口したコ字形状であって、横向きの上辺部23を上板部18の上面の縁側に嵌合すると共に、上辺部23の下に連なる上下方向向きの縦辺部24は内筒2の第1の内径Aの箇所の内周面2Aに対向しており、さらに縦辺部24の下に連なる横向きの下辺部25の内側を底板部20の側面上部に嵌合しており、外側にあらわれている下辺部25の下面における外縁側に、上部開口部16Aの縁が下方から上向きに当接するようになっている。また、底板部20の側面の下部に内側に向けて浅い凹部26が形成されていると共に、第2の内蓋17を閉じたときに該凹部26に挿入する小突起27が第2の内容器本体16の内側面に形成されており、第2の内蓋17を正位置で閉じたときに、底板部20が小突起27を乗り越え凹部26と小突起27とが嵌合してクリック感を生じることができるようになっている。
【0021】
上板部18の上面はほぼ中央部がへこんで形成されており、このへこみ部28には、上方へ突起してこの第2の内容器5を断熱容器1内より取り出すためのつまみ状の取手部29が設けられている。
【0022】
そして、縦辺部24の上部に外周方向に突出して断熱容器1の内周面2Aに接触可能な前記遮断壁6を設ける。この遮断壁6は弾性リング22に沿って全周に設けられるもので、遮断壁6の基端、すなわち縦辺部24側より、先端側、すなわち断熱容器1の内周面2A側は先細になるように形成されている。したがって、断熱容器1の中心を軸心としたとき、遮断壁6が当接する内周面2Aの第1の内径Aと、第2の内蓋17の全周に配置された遮断壁6の全幅である外径Cとは同じか、第1の内径Aより外径Cがわずかに大きく形成されている。
【0023】
第3の内容器13は有底な第3の内容器本体30の上部開口部30Aに第3の内蓋31を螺子32により着脱自在に設けたものであり、第2の内蓋17の中央に空気弁33が設けられている。
【0024】
次に、本実施例の作用について説明する。まず、第1図に示した状態より、止め具8を下方へ縦回動させて、受け部11から外す。そして、外蓋10を上方へ取り外す。
【0025】
次に、食品(図示せず)を収容した第3の内容器13、第2の内容器5、第1の内容器12を順次断熱容器1に積み重ねるように収納する。尚、第2の内容器5にあっては、第2の内容器本体16に食品を収納した後、底板部20側を第2の内容器本体16に挿入するように第2の内蓋17を閉じる際、底板部20が小突起27を乗り越えた後に凹部26と小突起27とが嵌合することでクリック感が得られ、正位置で閉蓋したことを感知することができる。
【0026】
そして、外蓋10を回動して閉蓋状態で止め具8を回動して受け部11に係止することで、外蓋10が固定される。この保温状態にあっては、第2の内蓋17に設けられた遮断壁6が第1の直径箇所の内周面2Aに接触して、遮断壁6を境界として内筒2の内部は上下に2分割され、また第2の内蓋17に断熱層21が設けられることにより、断熱容器1内にあっては第2の内蓋17より下方がほぼ密閉された断熱空間となり、この結果その下方において熱対流が生じたとしても、遮断壁6で仕切られた内筒2内の下部で小さな熱対流となり、熱対流に伴う保温性能の低下を阻止することができる。
【0027】
そして、止め具8を受け部11から外し外蓋10を開いて、上部開口部1Aから第1の内容器12、第2の内容器5、第3の内容器13を順次取り出して使用する。
【0028】
以上のように、前記実施例においては、弾性リング22の遮断壁6により、断熱容器1の対流空間を断熱容器1の上部開口部1Aまで繋がらないように遮断することができ、熱損失を抑えることができる。それにより、収納された遮断壁6より下方位置にある第2の内容器5、第3の内容器13の保温をより高く持続することができる。また、遮断壁6に弾性体を用いているため、断熱容器1の内周面2Aに遮断壁6を変形接触させることができ、不均一寸法の対流空間の遮蔽に容易に対応することができる。
【0029】
また、遮断壁6が接触する内筒2の内径部2Bを形成する第1の直径Aを、内筒2の第2の内径Bよりわずかに小さくすることで、第2の内容器5の遮断壁6の接触抵抗を軽減させることができる。第2の内容器5の収納始めの断熱容器1の上部開口部1A付近のような第2の直径の箇所Bでは、遮断壁6の接触抵抗なしに第2の内容器5をより内部へ移動することが容易にでき、第2の内容器5の最終放置位置直前で遮断壁6の直径Cより内筒2の第1の直径Aが小さくなること、また直径Cと第1の直径Aが同一寸法とすることで、遮断壁6が断熱容器1の内周面2Aと密着し断熱空間を遮断固定することになる。また、第2の内容器5は自身の弾性遮断壁6が断熱容器1に密着固定するために、携帯時に断熱容器1内で動くことがなく、特に第2の内容器5内の食品の偏りなどを防止することができる。
【0030】
さらに、実施例のように第2の内蓋17の閉蓋時に第2の内容器本体16側にある小突起27と、第2の内蓋17にある凹部26との嵌合によるクリック感の生成するような場合にあっては、第2の内容器5の上部開口部16Aは弾性リング22に接することになり、その密接度の変化に対応し弾性リング22が変形吸収することになる。よって、第2の内容器本体16と第2の内蓋17とのクリック感の乗り越えを上下方向での管理とすることにより、クリック感を安定させることができる。また、パッキン材を弾性リング22により形成し、この弾性リング22の縦辺部24に遮断壁6を突起状に設けることにより、第2の内容器本体16の上部開口部16Aが縦辺部24に当たり、弾性変形が大きくなるため、より大きな公差を吸収することができる。
【実施例2】
【0031】
図2は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2では断熱容器1に大容量の内容器5´を設けると共に、その上部に小容量の内容器12´を積み重ねて収納した場合を示しており、大容量の内容器5´の蓋17´に遮蔽壁6´を設けたものである。また外蓋10´は肩部材9に外嵌することで、取り付けできるようになっている。そして、遮蔽壁6´の一部に僅かな切り欠き34を形成することにより、大容量の内容器5´を内筒2に収納した際に、内筒2内が減圧状態となったとき、切り欠き34により上下を連通できるようにしてあることで、大気を切り欠き34を介して下方に導入して減圧状態を解消して大容量の内容器5´の取り出しを容易にできるようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように本発明に係る断熱食品容器は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 断熱容器
1A 上部開口部
2A 内周面
2B 小径部
5 第2の内容器
6 遮断壁
10 外蓋
17 第2の内蓋
22 弾性リング(パッキン材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口部に外蓋を開閉自在に設けた断熱容器に内容器を収納すると共に、該内容器は内容器本体にパッキン材を介して内蓋を開閉自在に設けた断熱食品容器において、前記パッキン材から外周方向に突出して前記断熱容器の内周面に接触可能な遮断壁を設けたことを特徴とする断熱食品容器。
【請求項2】
前記パッキン材は弾性リングからなり、前記内容器本体の上部開口部と前記内蓋に介在していることを特徴とする請求項1記載の断熱食品容器。
【請求項3】
前記断熱容器の内周面には、前記遮断壁が接しない大径部と前記遮断壁が接する小径部を有することを特徴とする請求項2記載の断熱食品容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−235934(P2011−235934A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109397(P2010−109397)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】