説明

断面計測装置、断面計測方法および断面計測プログラム

【課題】トンネルの所望の断面を容易に計測できるようにすることを目的とする。
【解決手段】三次元点群算出部110は距離方位点群191aと位置情報191bとに基づいて三次元点群192を算出する。三次元点群表示部120は三次元点群192を表示して計測断面の指定を利用者に促す。計測断面情報入力部130は指定された計測断面の情報を入力する。計測断面算出部141は計測断面情報193に基づいて計測断面式101を算出する。三次元点群抽出部142は計測断面式101に基づいて計測断面近くの点群を三次元点群192から抽出する。近傍点群抽出部143は、計測断面が間に位置する2つの近傍点を抽出点群102から複数組抽出する。計測断面点群算出部144は2つの近傍点を結んだ線と計測断面との交点を計測断面点として複数算出する。計測断面表示部150は指定された断面の計測結果として計測断面点群194を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル断面などの計測に用いる断面計測装置、断面計測方法および断面計測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル断面を計測する手法として、トータルステーションや三次元レーザを定点に設置して計測する手法が用いられている。
この手法では、トータルステーションや三次元レーザの設置場所を何度も変えなければ、広範囲を高密度に計測することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/099915号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kichiro Ishikawa,Jun−ichi Takiguchi,Takashi Fujishima,Yoichi Tanaka,“Development of vehicle−mounted road surface 3D measurement system”,23rd International Symposium on Automation and Robotics in Construction,2006,Japan
【非特許文献2】J.Meguro,J.Takiguchi,R.Kurosaki,T.Hashizume,“Development of an Autonomous Mobile Surveillance System Using a Network−based RTK−GPS”,IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA2005),April 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば、トンネルの所望の断面を容易に計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の断面計測装置は、
特定物の三次元形状を表すデータであって三次元座標値で示される三次元点を複数含むデータを三次元点群として記憶する三次元点群記憶部と、
前記特定物の特定の断面を表す情報を断面情報として入力装置から入力する断面情報入力部と、
前記断面情報入力部に入力された断面情報に基づいて、前記三次元点群記憶部に記憶される三次元点群から前記特定の断面に近い2つの三次元点であって前記特定の断面が間に位置する2つの三次元点を2つの近傍点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて複数組抽出する近傍点抽出部と、
前記近傍点抽出部により複数組抽出された2つの近傍点に基づいて、2つの近傍点を結んだ線と前記特定の断面との交点の三次元座標値を断面点としてCPUを用いて複数算出する断面点算出部と、
前記断面点算出部により算出された複数の断面点を前記特定の断面の形状を表す断面点群として記憶する断面点群記憶部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、トンネルの所望の断面を容易に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における断面計測装置100の機能構成図。
【図2】実施の形態1における計測車両200を示す図。
【図3】実施の形態1におけるトンネルのレーザ計測点を示す図。
【図4】実施の形態1におけるトンネルのレーザ計測点を示す図。
【図5】実施の形態1における断面計測装置100の三次元点群192により表されるトンネル内部を示す図。
【図6】トータルステーションの計測点群により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図。
【図7】三次元レーザの計測点群により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図。
【図8】実施の形態1における断面計測装置100の三次元点群192により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図。
【図9】三次元レーザの計測点群により表されるトンネル内部を示す図。
【図10】実施の形態1における断面計測方法を示すフローチャート。
【図11】実施の形態1における位置姿勢標定方法を示す図。
【図12】実施の形態1における計測断面指定画面を示す図。
【図13】実施の形態1における断面計測処理(S140)のフローチャート。
【図14】実施の形態1における計測断面表示画面を示す図。
【図15】実施の形態1における断面計測方法で得られた計測断面点群194と他の方法で得られた計測点群との比較図。
【図16】実施の形態1における断面計測装置100のハードウェア資源の一例を示す図。
【図17】実施の形態2における性状計測装置300の機能構成図。
【図18】実施の形態2におけるトンネル性状画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
特定物(例えば、トンネル)の断面を三次元点群を用いて計測する断面計測装置について説明する。
【0010】
図1は、実施の形態1における断面計測装置100の機能構成図である。
実施の形態1における断面計測装置100の機能構成について、図1に基づいて以下に説明する。
【0011】
断面計測装置100は、三次元点群算出部110、三次元点群表示部120、計測断面情報入力部130(断面情報入力部の一例)、計測断面算出部140、計測断面表示部150および断面計測記憶部190(三次元点群記憶部、断面点群記憶部の一例)を備える。
【0012】
断面計測記憶部190は、断面計測装置100で使用されるデータを記憶する。
後述する距離方位点群191a、位置情報191b、三次元点群192、計測断面情報193および計測断面点群194(断面点群の一例)は、断面計測記憶部190に記憶されるデータの一例である。
【0013】
距離方位点群191aは、レーザスキャナにより計測されたデータであり、レーザスキャナから対象までの距離および方位で示される距離方位点を複数含むデータである。
実施の形態1では「トンネル」を対象として説明する。
【0014】
位置情報191bは、距離方位点群191aの計測位置を示すデータである。
【0015】
三次元点群192は、距離方位点群191aを計測された対象の三次元形状を表すデータであり、三次元座標値で示される三次元点を複数含むデータである。
【0016】
計測断面情報193は、利用者により計測対象として指定された断面(特定の断面の一例)(以下「計測断面」という)を表す情報である。
【0017】
計測断面点群194は、計測断面の形状を表す三次元点群である。
【0018】
距離方位点群191a〜計測断面点群194についての詳細を後述する。
【0019】
三次元点群算出部110は、距離方位点群191aと位置情報191bとに基づいて、三次元点群192をCPU(Central Processing Unit)を用いて算出する。
【0020】
三次元点群表示部120は、三次元点群192を表示装置に表示する。
【0021】
計測断面情報入力部130は、利用者に指定された計測断面情報193を入力装置から入力する。
【0022】
計測断面算出部140は、三次元点群192と計測断面情報193とに基づいて、計測断面点群194を算出する。
【0023】
計測断面算出部140は、計測断面算出部141、三次元点群抽出部142、近傍点群抽出部143(近傍点抽出部の一例)および計測断面点群算出部144(断面点算出部の一例)を備える。
【0024】
計測断面算出部141は、計測断面情報193に基づいて、計測断面を表す式を計測断面式101としてCPUを用いて算出する。
【0025】
三次元点群抽出部142は、計測断面式101に基づいて、計測断面から所定の距離内に位置する複数の三次元点をCPUを用いて三次元点群192から抽出する。
以下、三次元点群抽出部142により抽出される複数の三次元点を「抽出点群102」という。
【0026】
近傍点群抽出部143は、計測断面式101に基づいて、計測断面に近い2つの三次元点であって計測断面が間に位置する2つの三次元点をCPUを用いて抽出点群102から複数組抽出する。
以下、近傍点群抽出部143により抽出される複数組の三次元点を「近傍点群103」という。
【0027】
例えば、近傍点群抽出部143は、計測断面を境として一方に位置する第1の三次元点と、抽出点群102に含まれる複数の三次元点のうち第1の三次元点が位置しない方に位置すると共に第1の三次元点から近い三次元点である第2の三次元点とを一組の近傍点として抽出する。
【0028】
三次元点群192は、ライン状に並ぶ三次元点で示されるスキャンライン(ライン点群の一例)を複数含む。
例えば、近傍点群抽出部143は、第1の三次元点を含まないスキャンラインから第2の三次元点を抽出する。
【0029】
計測断面点群算出部144は、計測断面式101と近傍点群103とに基づいて、各組の2つの近傍点を結んだ線と計測断面との交点の三次元座標値をCPUを用いて複数算出する。
以下、計測断面点群算出部144により算出される複数の三次元座標値を「計測断面点群194」という。計測断面点群194は計測断面の形状を表す。
【0030】
計測断面表示部150は、計測断面点群194を計測結果として表示装置に表示する。
【0031】
次に、距離方位点群191a、位置情報191bおよび三次元点群192について説明する。
【0032】
図2は、実施の形態1における計測車両200を示す図である。
距離方位点群191aと位置情報191bとは、図2に示すような計測車両200により取得される。
【0033】
計測車両200は、天板に二台のレーザスキャナ210、三台のGPS受信機220および一台のジャイロ230が設置されている。また、計測車両200は、車輪にオドメトリが取り付けられている(図示省略)。
レーザスキャナ210は、レーザレーダ、LRF(レーザレンジファインダ)ともいう。
ジャイロ230は、FOG(Fiber Optic Gyro)ともいう。
【0034】
レーザスキャナ210は、レーザの出射面を左右180度に振りながら、レーザを出射すると共に対象に反射して戻ってきたレーザを受信する。そして、レーザスキャナ210は、レーザを出射した時刻と、レーザを出射した「方位」と、レーザを出射してから受信するまでの時間に基づく「距離」とを「距離方位点」として計測する。
レーザスキャナ210により計測された複数の距離方位点が距離方位点群191aである。
【0035】
二台のレーザスキャナ210のうち一台は、上向き約30度に傾けて設置され、計測車両200の天板より上に位置する対象を計測する。もう一台は、下向き約30度に傾けて設置され、計測車両200の天板より下に位置する対象を計測する。
【0036】
以下、レーザスキャナ210が出射面を左右180度に1回振って得る距離方位点群(または距離方位点群に対応する三次元点群)を「スキャンライン」という。
【0037】
図3および図4は、実施の形態1におけるトンネルのレーザ計測点を示す図である。
計測車両200でトンネル内を走行することにより、トンネルの形状を表す距離方位点群(図3、図4におけるレーザ計測点)を得ることができる。トンネルの距離方位点群はトンネルを斜めに輪切りした複数の円弧を平行に並べた形状(かまぼこ状)を表す。一つのスキャンラインは、一つの円弧を表す。
【0038】
図2に戻り、計測車両200の説明を続ける。
【0039】
三台のGPS受信機220はそれぞれGPS衛星から発信される測位信号を観測し、観測結果に基づいて三次元座標値を測位する。以下、GPS受信機220により得られる三次元座標値や測位信号などの情報を観測情報という。観測情報は時刻に対応付けられている。
【0040】
一台のジャイロ230は、計測車両200の3軸の角速度(ロール角、ピッチ角およびヨー角の角速度)を計測する。計測値は時刻に対応付けられている。
【0041】
車輪に取り付けられたオドメトリは、車輪の回転速度を計測する。計測値は時刻に対応付けられている。
【0042】
位置情報191bは、GPS受信機220により得られた観測情報、ジャイロ230により計測された3軸の角速度およびオドメトリにより計測された車輪の回転速度を含んだデータである。
【0043】
三次元点群192は、距離方位点群191aと位置情報191bとに基づいて生成されるデータであり、各距離方位点に対応する三次元座標値を示す。
【0044】
図5は、実施の形態1における断面計測装置100の三次元点群192により表されるトンネル内部を示す図である。
三次元点群192を三次元座標値に基づいて表示すると、図5のようにトンネルが表される。
三次元点群192は比較的高い密度で取得されるため、トンネルに設置された照明やケーブルや消化器などの存在を三次元点群192から把握することが可能である。
【0045】
断面計測装置100は、三次元点群192に基づいて対象(例えば「トンネル」)の任意の断面を表す計測断面点群194を生成する。
【0046】
計測断面点群194のような計測点群を得る方法として、トータルステーションまたは三次元レーザを使用する方法がある。
しかし、これらの方法は、トータルステーションや三次元レーザを定点に設置して測量する方法であるため、広範囲のデータを取得することが困難である。
また、計測車両200による計測に比べて時間や費用もかかる。
トンネル内の計測を行う場合、交通の妨げにもなる。また、トンネル内での長時間の計測作業により、計測者の健康にも好ましくない。
【0047】
図6は、トータルステーションの計測点群により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図である。
計測者は、トータルステーションを定点に設置し、トータルステーションを用いて1点ずつ測量を行う。このため、トータルステーションを用いてトンネル全体を計測することは困難であり、図6のようにトンネルの一部の計測点群しか得ることができない。
【0048】
図7は、三次元レーザの計測点群により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図である。
三次元レーザは、設置された定点から周囲に向けてレーザを照射し、距離方位点群を得る。このため、定点付近の計測点群の密度は高いが、定点から離れた場所の計測点群の密度は低い。
三次元レーザを用いて複数地点で計測する場合、各地点の計測で得られた計測点群を重ね合わせる処理が必要になる。
【0049】
図8は、実施の形態1における計測車両200の三次元点群192により表されるトンネルを斜め上方を視点にして示した図であり、図7と同じアングルでトンネルを示している。
三次元点群192は、トンネルを走行する計測車両200からの計測により得られるため、図8に示すようにトンネル全体を比較的高い密度で表す。
密度の低い一部の部分は、工事用のシートなどの障害物によって計測を妨げられた部分である。
【0050】
図9は、三次元レーザの計測点群により表されるトンネル内部を示す図である。
三次元レーザには、図9に示すように設置地点を計測できないという欠点もある。
【0051】
次に、三次元点群192に基づいて計測断面点群194を生成する方法について説明する。
【0052】
図10は、実施の形態1における断面計測方法を示すフローチャートである。
実施の形態1における断面計測方法について、図10に基づいて以下に説明する。
【0053】
断面計測装置100の各「〜部」は、以下に説明する処理をCPUを用いて実行する。
【0054】
まず、断面計測方法の概要について説明する。
【0055】
三次元点群算出部110は、距離方位点群191aと位置情報191bとに基づいて三次元点群192を算出する(S110)。
三次元点群表示部120は三次元点群192を表示して計測断面の指定を利用者に促し(S120)、計測断面情報入力部130は指定された計測断面の情報(計測断面情報193)を入力する(S130)。
計測断面算出部140は、三次元点群192および計測断面情報193に基づいて計測断面点群194を算出する(S140)。
計測断面表示部150は、指定された断面の計測結果として計測断面点群194を表示する(S150)。
【0056】
次に、断面計測方法の詳細について説明する。
【0057】
<S110>
三次元点群算出部110は、位置情報191bに基づいて、距離方位点群191aを計測時の位置姿勢値を標定する。位置姿勢値は、計測車両200の三次元座標値(x、y、z)と三次元姿勢角(ロール角、ピッチ角、ヨー角)とを示す。
【0058】
位置情報191bには、GPS受信機220により得られた観測情報、ジャイロ230により計測された三軸の角速度およびオドメトリにより計測された車輪の回転速度とが含まれる。
【0059】
但し、トンネル内では測位信号を受信できないため、トンネル内を走行中の観測情報は位置情報191bに含まれない。
【0060】
そのため、三次元点群算出部110は、計測断面情報入力部130およびオドメトリの計測値を用いるストラップダウン方式により、トンネル内での位置姿勢値を算出する。
三次元点群算出部110は、トンネル出入り口での位置姿勢値に基づいて、トンネル内での位置姿勢値を補正する。三次元点群算出部110は、トンネル中心の誤差を最大にしてトンネル出入り口に近づくにつれ誤差を小さくするように、トンネル内での位置姿勢値をスムージング(補正)する。
【0061】
図11は、実施の形態1における位置姿勢標定方法を示す図である。
三次元点群算出部110は、トンネル出入り口での位置姿勢値を図11に示すようにして標定する。
【0062】
三次元点群算出部110は、GPS受信機220の観測情報に基づいて位置および速度を算出し(S111)、ジャイロ230およびオドメトリの計測値を用いてストラップダウン方式により位置および速度を算出する(S112)。
そして、三次元点群算出部110は、ストラップダウン方式の算出値に含まれる誤差をEKF(拡張カルマンフィルタ)を用いて補正値として算出し(S113)、ストラップダウン方式の算出値を補正する(S114)。
【0063】
補正により得られた位置が標定値である。姿勢角もEKFを用いて同様に標定される。
【0064】
三次元点群算出部110は、上記の方法により標定したトンネル内での位置姿勢値と距離方位点群191aとに基づいて、三次元点群192を算出する。
三次元点群192の算出には同時刻の位置姿勢値および距離方位点が用いられる。
位置姿勢値を基点として距離方位点で示される方位に距離方位点で示される距離だけ離れた地点が三次元点である。
【0065】
図10に戻り、断面計測方法の説明を続ける。
【0066】
S110の後、処理はS120に進む。
【0067】
<S120>
三次元点群表示部120は、三次元点群192を表示装置901に表示して計測断面の指定を利用者に促す。
【0068】
図12は、実施の形態1における計測断面指定画面を示す図である。
三次元点群表示部120は、例えば図12に示すように、三次元点群192を表示装置901に表示する。
図12において、三次元点群192は上から見たトンネルを表している。
【0069】
図10に戻り、断面計測方法の説明を続ける。
【0070】
S120の後、処理はS130に進む。
【0071】
<S130>
利用者は表示された三次元点群192に対して計測したい断面を入力装置を用いて指定し、計測断面情報入力部130は指定された断面の情報を計測断面情報193として入力する。
【0072】
例えば、利用者は、マウスを用いて画面上の2点(図12の「P1」「P2」)を指定する。三次元点群表示部120は、指定された2点を結んで線を引く。この2点を結んだ線を含んだ垂直面が計測断面となる。
計測断面情報入力部130は、指定された2点の画面内での位置(画素)を特定し、特定した位置に対応する三次元座標値を算出し、算出した三次元座標値を計測断面情報193とする。計測断面情報入力部130により算出される三次元座標値は三次元点群192と同じ座標系の値であり、高さの値が所定値(例えば、トンネル内の地面高の値)である。
【0073】
S130の後、処理はS140に進む。
【0074】
<S140:断面計測処理>
計測断面算出部140は、三次元点群192および計測断面情報193に基づいて、計測断面点群194を算出する。
【0075】
図13は、実施の形態1における断面計測処理(S140)のフローチャートである。
実施の形態1における断面計測処理(S140)について、図13に基づいて以下に説明する。
【0076】
まず、断面計測処理(S140)の概要について説明する。
【0077】
計測断面算出部141は、計測断面情報193に基づいて計測断面式101を算出する(S141)。
三次元点群抽出部142は、計測断面式101に基づいて、計測断面近くの点群を三次元点群192から抽出する(S142)。
近傍点群抽出部143は、計測断面が間に位置する2つの近傍点を抽出点群102から複数組抽出する(S143)。
計測断面点群算出部144は、2つの近傍点を結んだ線と計測断面との交点を計測断面点として複数算出する(S144)。
【0078】
次に、計測断面生成処理(S140)の詳細について説明する。
【0079】
<S141>
計測断面算出部141は、計測断面情報193に基づいて、計測断面を表す方程式を計測断面式101として算出する。
【0080】
例えば、計測断面情報193が計測断面(垂直面)を通る線上の2点「P1」「P2」を示す場合、計測断面算出部141は、以下のようにして計測断面式101を算出する。
【0081】
P1、P2、P3を通る平面Aは一般的に式(1)で表される。
【0082】
【数1】

【0083】
平面AをXZ軸に垂直な面とすると、平面Aは式(1)を展開した式(2)で表される。
【0084】
【数2】

【0085】
計測断面算出部141は、計測断面情報193に示される2点「P1」「P2」に基づいて、計測断面式101として式(2)を算出する。
【0086】
S141の後、処理はS142に進む。
【0087】
<S142>
三次元点群抽出部142は、計測断面式101に基づいて、計測断面近くの点群を三次元点群192から抽出点群102として抽出する。
【0088】
例えば、三次元点群抽出部142は、計測断面Aと平行な2つの平面であって計測断面Aが間に位置する2つの平面C、Bの間に位置する点群を抽出点群102として以下のように抽出する。
以下、計測断面Aを上記の式(2)で表される垂直面とする。
【0089】
計測断面Aから距離「D」だけ離れた平面Cは、式(3)で表される2点「E」「F」を含む。
【0090】
【数3】

【0091】
平面Cは式(3)に基づいて式(4)で表される。
【0092】
【数4】

【0093】
同様に、計測断面Aから距離「−D」だけ離れた平面Bは式(5)で表される。
【0094】
【数5】

【0095】
(a)計測断面Aと平面Cとの間に位置する点群および(b)計測断面Aと平面Bとの間に位置する点群は式(6)の条件を満たす。
【0096】
【数6】

【0097】
計測断面算出部141は、式(6)を満たす点群を抽出点群102として抽出する。
【0098】
計測断面A、平面B、平面Cおよび三次元点群192の関係を図3および図4に示す。
レーザ計測点が三次元点に相当する。平面Bと平面Cとの間に位置する複数のレーザ計測点が抽出点群102である。
【0099】
S142の後、処理はS143に進む。
【0100】
<S143>
近傍点群抽出部143は、図4において、計測断面Aと平面Cとの間に位置する近傍点Spnmと計測断面Aと平面Bとの間に位置する近傍点Sp(n+1)mとを一組として、抽出点群102から複数組の近傍点を抽出する。抽出される複数組の近傍点が近傍点群103である。
【0101】
近傍点Spの添え字「n」「n+1」(n:1、2、・・・)は、スキャンラインを示す。
近傍点Spの添え字「m」は、レーザのスキャン角度(照射角度)を示す。
【0102】
近傍点Sp(n+1)mは、計測断面Aと平面Bとの間に含まれる点のうち近傍点Spnmとスキャンラインが異なり近傍点Spnmから最も近い点である。
【0103】
図13に戻り、断面計測処理(S140)の説明を続ける。
【0104】
S143の後、処理はS144に進む。
【0105】
<S144>
計測断面点群算出部144は、各組み合わせの2つの近傍点「Spnm」「Sp(n+1)m」を結んだ線と計測断面Aとの交点を近傍点群103に含まれる近傍点の組み合わせ毎に算出する。算出される交点(図4の「Pc」)が計測断面点であり、算出される複数の計測断面点が計測断面点群194である。
【0106】
2点「P’」「P’’」を通る直線Lは式(7)で表される。
【0107】
【数7】

【0108】
平面Dと直線Lとの交点Cpは式(8)で表される。
【0109】
【数8】

【0110】
計測断面点群算出部144は、近傍点「Spnm」「Sp(n+1)m」を点「P’」「P’’」に当てはめると共に計測断面Aを平面Dに当てはめ、式(8)により計測断面点(交点Cp)を算出する。
【0111】
S144により、断面計測処理(S140)は終了する。
【0112】
図10に戻り、断面計測方法の説明を続ける。
【0113】
S140の後、処理はS150に進む。
【0114】
<S150>
計測断面表示部150は、計測断面点群194を計測断面の計測結果として表示装置901に表示する。
【0115】
図14は、実施の形態1における計測断面表示画面を示す図である。
計測断面表示部150は、例えば図14に示すように、計測断面点群194を表示装置に表示する。
【0116】
図10において、S150により断面計測方法は終了する。
【0117】
上記の断面計測方法により、利用者が計測したい断面を計測断面点群194で表すことができる。
【0118】
図15は、実施の形態1における断面計測方法で得られた計測断面点群194と他の方法で得られた計測点群との比較図である。
図15において、断面計測装置100を用いて得られた計測断面点群194を「丸」、トータルステーションを用いて得られた計測点群を「四角」、三次元レーザを用いて得られた計測点群を「三角」で示している。
断面計測装置100を用いて得られる計測断面点群194は、図15に示すように、トータルステーションや三次元レーザを用いる定点測量と同じくらい精度が高い。
【0119】
図16は、実施の形態1における断面計測装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
図16において、断面計測装置100は、CPU911(マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、ドライブ装置904、プリンタ装置906、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。ドライブ装置904は、FD(Flexible・Disk・Drive)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital・Versatile・Disc)などの記憶媒体を読み書きする装置である。
【0120】
通信ボード915は、有線または無線で、LAN(Local Area Network)、インターネット、電話回線などの通信網に接続している。
【0121】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
【0122】
プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが含まれる。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。すなわち、プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものであり、また「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0123】
ファイル群924には、実施の形態において説明する「〜部」で使用される各種データ(入力、出力、判定結果、計算結果、処理結果など)が含まれる。
【0124】
実施の形態において構成図およびフローチャートに含まれている矢印は主としてデータや信号の入出力を示す。
【0125】
実施の形態において「〜部」として説明するものは「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、ハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで実装されても構わない。
【0126】
実施の形態1では、例えば、以下のようなトンネル断面計測装置について説明した。
MMS(モービルマッピングシステム)(計測車両200および断面計測装置100)は、GPS/INS自己位置標定器(INS:Inertial Navigation
System)とレーザレーダを搭載し、車体周辺の三次元点群を取得する。このMMSをトンネルに適用し、三次元点群からトンネルの断面形状を取得する。
これによって、より短時間に、高精度なトンネル断面形状を得ることができる。
【0127】
MMSで得られるトンネル三次元点群データは離散的ではあるが、その取得原理から、レーザレーダの同一角度で得られた点が概略トンネル長手方向に列状に並ぶ。また、同一時刻で得られた点がトンネル輪切り方向に並ぶ。
このMMSで取得したトンネル三次元点群データを使用し、任意に指定された断面とレーザレーダの同一角度で得られた点列(点群列)との三次元的な交点を求める。具体例としては、点群列のうち断面に一番近い点と二番目に近い点とで直線式を求め、断面の平面式との交点を幾何学的に求める。これによって、トンネル任意断面の取得が可能となる。
【0128】
トンネルは断面を計測する対象の一例である。断面計測装置100はトンネル以外を対象にして断面を計測しても構わない。
【0129】
また、三次元点群192は他の装置で生成され、断面計測装置100は他の装置で生成された三次元点群192を用いて断面計測を行っても構わない。
【0130】
実施の形態2.
トンネルの性質や状態を評価する性状計測装置について説明する。
【0131】
図17は、実施の形態2における性状計測装置300の機能構成図である。
実施の形態2における性状計測装置300の機能構成について、図17に基づいて以下に説明する。
【0132】
性状計測装置300は、性状計測部310、性状表示部320および性状計測記憶部390を備える。
【0133】
性状計測記憶部390は、性状計測装置300で使用するデータを記憶する。
三次元点群391、設計情報392および性状情報393は、性状計測記憶部390に記憶されるデータの一例である。
【0134】
三次元点群391は、実施の形態1で説明した三次元点群192(または、計測断面点群194)と、各三次元点に対応する距離方位点に示されるレーザの照射方位と、当該距離方位点を計測時の断面計測装置100の位置姿勢値とを示す。
設計情報392は、トンネルの設計値(例えば、トンネルの断面の形状を表す設計値)を示す情報である。
性状情報393は、現在のトンネルが設計値通りであるか否かを示す情報である。
【0135】
性状計測部310は、三次元点群391と設計情報392とに基づいて、性状情報393をCPUを用いて算出する。
例えば、性状計測部310は、三次元点毎に、三次元点に対応するレーザの照射方位および計測車両200の位置姿勢値とに基づいて、三次元点に対応する設計値を設計情報392から取得する。取得される設計値は、断面計測装置100の位置姿勢値を基点としてレーザの照射方位にあるトンネル部分の三次元座標値である。
性状計測部310は、設計値から三次元点を引いた差を三次元点の誤差として算出する。各三次元点の誤差が性状情報393である。
【0136】
性状表示部320は、性状情報393を表示装置に表示する。
【0137】
図18は、実施の形態2におけるトンネル性状画面を示す図である。
性状表示部320は、例えば、図18に示すように性状情報393を表示する。
【0138】
トンネル性状画面は、性状情報393を表した色分布図を表す。
色分布図は、トンネル入口から長手方向の距離を横軸に示している。例えば、目視で点検したトンネルの性状を製図した目視点検図などを同時に確認したいときは、トンネル性状画面を上下2段に分け、上段に色分布図、下段に目視点検図を配置し、上下で同時にトンネルの同じ位置を表すことも可能である。
【0139】
色分布図は、縦軸に角度を示している。設計円弧の中心からトンネル頂部方向を「0度」、トンネルの真横方向を「90度」「−90度」とし、トンネルの円弧を180度で表している。なお、縦軸は頂部からの円弧の距離にしてもよい。
【0140】
性状表示部320は、色分布図内で各三次元点に対応する部分を三次元点の誤差の大小に基づいて着色する(例えば、白黒、RGBまたはフルカラー)。性状表示部320は、その他の部分には周囲の着色部分に基づいてグラデーションを付ける。
例えば、誤差が無い部分を「黒」にし、誤差が大きいほど「白」に近づける。
また例えば、誤差が無い部分を「赤(R)」にし、プラスの誤差が大きいほど「緑(G)」に近づけ、マイナスの誤差が大きいほど「青(B)」に近づける。
【0141】
性状計測装置300のハードウェア構成は、実施の形態1で説明した断面計測装置100と同様である。
【0142】
実施の形態1で説明した断面計測装置100は、性状計測装置300の構成を備えてもよい。
【0143】
実施の形態2により、トンネルの性状を把握し易くすることができる。
但し、性状計測する対象はトンネル以外であっても構わない。
【符号の説明】
【0144】
100 断面計測装置、101 計測断面式、102 抽出点群、103 近傍点群、110 三次元点群算出部、120 三次元点群表示部、130 計測断面情報入力部、140 計測断面算出部、141 計測断面算出部、142 三次元点群抽出部、143 近傍点群抽出部、144 計測断面点群算出部、150 計測断面表示部、190 断面計測記憶部、191a 距離方位点群、191b 位置情報、192 三次元点群、193 計測断面情報、194 計測断面点群、200 計測車両、210 レーザスキャナ、220 GPS受信機、230 ジャイロ、300 性状計測装置、310 性状計測部、320 性状表示部、390 性状計測記憶部、391 三次元点群、392 設計情報、393 性状情報、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 ドライブ装置、906 プリンタ装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定物の三次元形状を表すデータであって三次元座標値で示される三次元点を複数含むデータを三次元点群として記憶する三次元点群記憶部と、
前記特定物の特定の断面を表す情報を断面情報として入力装置から入力する断面情報入力部と、
前記断面情報入力部に入力された断面情報に基づいて、前記三次元点群記憶部に記憶される三次元点群から前記特定の断面に近い2つの三次元点であって前記特定の断面が間に位置する2つの三次元点を2つの近傍点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて複数組抽出する近傍点抽出部と、
前記近傍点抽出部により複数組抽出された2つの近傍点に基づいて、2つの近傍点を結んだ線と前記特定の断面との交点の三次元座標値を断面点としてCPUを用いて複数算出する断面点算出部と、
前記断面点算出部により算出された複数の断面点を前記特定の断面の形状を表す断面点群として記憶する断面点群記憶部と
を備えたことを特徴とする断面計測装置。
【請求項2】
前記断面計測装置は、さらに、
前記断面情報に基づいて、前記三次元点群記憶部に記憶される三次元点群から前記特定の断面から所定の距離内に位置する複数の三次元点を抽出点群としてCPUを用いて抽出する三次元点群抽出部を備え、
前記近傍点抽出部は、前記三次元点群抽出部により抽出された抽出点群から複数組の近傍点を抽出する
ことを特徴とする請求項1記載の断面計測装置。
【請求項3】
前記近傍点抽出部は、前記特定の断面を境として一方に位置する第1の三次元点と、前記抽出点群に含まれる複数の三次元点のうち前記第1の三次元点が位置しない方に位置すると共に前記第1の三次元点から近い三次元点である第2の三次元点とを一組の近傍点として抽出する
ことを特徴とする請求項2記載の断面計測装置。
【請求項4】
前記三次元点群は、ライン状に並ぶ三次元点で示されるライン点群を複数含み、
前記近傍点抽出部は、前記第1の三次元点を含まないライン点群から前記第2の三次元点を抽出する
ことを特徴とする請求項3記載の断面計測装置。
【請求項5】
断面情報入力部は、特定物の特定の断面を表す情報を断面情報として入力装置から入力し、
近傍点抽出部は、前記断面情報入力部に入力された断面情報に基づいて、前記特定物の三次元形状を表すデータであり三次元座標値で示される三次元点を複数含むデータである三次元点群から前記特定の断面に近い2つの三次元点であって前記特定の断面が間に位置する2つの三次元点を2つの近傍点としてCPU(Central Processing Unit)を用いて複数組抽出し、
断面点算出部は、前記近傍点抽出部により複数組抽出された2つの近傍点に基づいて、2つの近傍点を結んだ線と前記特定の断面との交点の三次元座標値を断面点としてCPUを用いて複数算出し、
断面点群記憶部は、前記断面点算出部により算出された複数の断面点を前記特定の断面の形状を表す断面点群として記憶する
ことを特徴とする断面計測方法。
【請求項6】
請求項5記載の断面計測方法をコンピュータに実行させる断面計測プログラム。
【請求項7】
前記断面計測装置は、さらに、
前記特定の断面の設計値を記憶する性状計測記憶部と、
前記性状計測記憶部に記憶された設計値と前記断面点群との差を性状情報としてCPUを用いて算出する性状計測部と、
前記性状計測部により算出された性状情報を表示装置に表示する性状表示部と
を備えたことを特徴とする請求項1〜4記載の断面計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−249709(P2010−249709A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100436(P2009−100436)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)