説明

新しい発芽玄米の製造方法及びこれにより製造した発芽玄米

【課題】 この発明は、比較的簡単な操作と、短い時間でGabaの収量の多い玄米を得ることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、適度に搗精した玄米又はその粉末を35℃〜45℃で4時間以上保温することを特徴とした新しい発芽玄米の製造方法により目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玄米の発芽を利用して、玄米中にグルタミン酸を適度に保ちながら精製するγ−アミノ酪酸の含有量を増大させることを目的とした新しい発芽玄米の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(以下Gabaと略記する)は神経抑制作用や精神安定機能を有しており、血圧上昇抑制作用、脳の代謝促進作用、動脈硬化の予防、二日酔い防止、皮膚の老化防止などに効果のある機能性食品成分として注目されている。そのためGabaを富化させる方法が種々検討されており、米糠や胚芽を浸漬し富化する方法(J.Agric Food Chem、42、1122、1994年)、グルタミン酸を酵母やクロレラに作用させる方法(特開平9−238650)、お茶を嫌気的に醗酵させる方法(日本農芸化学会誌、61、817、1987年)、大豆もやしを炭酸ガスで処理する方法(食科工、36、916、1989年)、麹菌によるもの(特開平10−165191)、乳酸菌を活用する方法(Biosci Biotech Biochem、61、1168、1997年)等が報告されている。また、玄米を高圧処理することによりGabaが増加することも報告されている(食品科学工学会誌、46、323、1999年)。
【0003】
また、注目すべき発芽玄米の製造方法及び栄養強化玄米としては、以下のようなものがある。
【0004】
(1)水に溶解したミネラル類やビタミン類を発芽過程において吸収させる栄養強化玄米の発明。
【0005】
(2)オゾンを含む空気を間欠的に曝気して温水を殺菌しながら発芽する方法の発明。
【0006】
(3)焼成カキ殻カルシウム製剤、ゼオライト及び活性炭を共存させた層で濾過しながら玄米を発芽させる方法の発明。
【特許文献1】特開2000−50818
【特許文献2】特開平11−4661
【特許文献3】特開2000−321100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
日常の食生活で高血圧などの生活習慣病が予防できれば消費者のメリットは大きい。その一つとして、発芽玄米から適量のGabaを摂取する方法が考えられる。しかし、玄米を30℃前後で保温した場合、Gabaの含量を高めるためには、浸漬した状態で,70時間もの発芽時間を必要とした(秋田県総合食品研究所報告、1、85〜86頁、1999年)。そこで発芽に必要な設備を最小限に絞り、かつ玄米のGabaの含量を高めるための技術開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、適度に搗精した玄米を35℃〜45℃の温水に入れて4時間以上保温することにより、Gabaの高収量を得て、前記従来の問題点を解決したのである。
【0009】
即ちこの発明は、適度に搗精した玄米又はその粉末を35℃〜45℃で4時間以上保温することを特徴とした新しい発芽玄米の製造方法であり、適度の搗精とは、搗精歩合3%〜5%としたこものであり、保温時間は5時間〜16時間としたものである。
【0010】
また他の発明は、適度に搗精した玄米又はその粉末を35℃〜45℃で4時間以上保温して得た発芽玄米である。
【0011】
この発明において37℃においては、保温時間4時間までは急激に増加し、爾後緩徐に増加し、20時間以上増加を続ける(図2)。
【0012】
また温度を50℃にした場合には、4時間まではGaba量が増加するが、8時間以上保温してもほぼ同等のGaba量を示し、グルタミン酸量も一定である。
【0013】
前記発明において、保温温度を35℃〜45℃にしたのは、図1に示すように、この時間帯が最も収量が多いからである。
【0014】
この発明において、搗精歩合を3%〜5%としたのは、表1に示すように、Gabaの収量が多くなるからであり、表1には示されていないが、搗精歩合1%〜3%又は5%〜6%でも保温温度と時間の関係で相当の収量を示すので、搗精歩合は1%〜6%であるが、好ましくは3%〜5%とした。
【発明の効果】
【0015】
従来Gabaについて相当の収量をあげるには70時間もの保温を必要としたが、この発明によれば4時間〜20時間、好ましくは5時間〜16時間でGabaの大きな収量を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明は、搗精歩合3%の玄米を、37℃で6時間〜12時間保温した所、Gaba300nmol/ml〜480nmol/mlを得た。
【実施例1】
【0017】
この発明の実施例を説明すれば、搗精歩合3%、5%、10%の玄米(あきたこまち(登録商標))0.5gに、0.1M酢酸緩衝液(pH6.0)1mlを加え、37℃に保温した。保温後、1NHCl0.5mlを添加し、反応を停止した。
【0018】
ついで超音波とブレンダーで1分間混合した後、この混合液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、上澄水を得た。この上澄水を0.45μmのミソポアフィルターで濾過し、濾過済み試料を自動アミノ酸分析機(日本電子、JLC−500V)によりGabaおよびグルタミン酸を定量した所、表1の結果を得た。
【表1】

【実施例2】
【0019】
前記実施例1における搗精歩合を3%とし、グルタミン酸を添加し、保温時間を12時間として、温度を変化させた所、図1の結果を得た。
【0020】
即ち搗精歩合3%の場合には、37℃程度の温度が最良であった。
【実施例3】
【0021】
実施例1における搗精歩合を3%とし、グルタミン酸を添加し、温度を37℃として、保温時間を変化させた所、4時間〜12時間で、Gabaの増加が著しいことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例における好ましい温度を示すグラフ。
【図2】同じく37℃における保温時間とGaba等の収量を示すグラフ。
【図3】同じく50℃における保温時間とGaba等との収量を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適度に搗精した玄米又はその粉末を35℃〜45℃で4時間以上保温することを特徴とした新しい発芽玄米の製造方法。
【請求項2】
適度の搗精とは、搗精歩合3%〜5%としたことを特徴とする請求項1記載の新しい発芽玄米の製造方法。
【請求項3】
保温時間は5時間〜16時間としたことを特徴とする請求項1記載の新しい発芽玄米の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法により製造したことを特徴とする発芽玄米。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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