説明

新世界霊長類フレームワーク領域を用いる設計された抗体

本発明は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を有する抗体またはその抗原結合部分を提供する。フレームワーク領域は、新世界霊長類フレームワーク領域であるか、または新世界霊長類フレームワーク領域から誘導され、少なくとも1つのCDRが非新世界霊長類CDRである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を有する抗体またはその抗原結合部分に関する。フレームワーク領域は、新世界霊長類フレームワーク領域であるか、または新世界霊長類フレームワーク領域から誘導され、少なくとも1つのCDRが改変された新世界霊長類CDRまたは非新世界霊長類CDRである。
【背景技術】
【0002】
抗体(イムノグロブリン)は、哺乳動物の免疫システムにおいて重要な役割を果たす。それらは、前駆体B細胞から成熟した血漿細胞により産生される。抗体は、ジスルフィド架橋により結合した2つの同一の軽ポリペプチド鎖および2つの同一の重ポリペプチド鎖からなる。軽鎖はカッパまたはラムダ軽鎖と呼ばれ、重鎖はガンマ、ミュー、デルタ、アルファまたはイプシロンと呼ばれる。各鎖は定常および可変領域からなる。可変領域は抗体にその特異性を与える。各可変領域内には、超可変領域または相補性決定領域(CDR)があり、フレームワーク領域と呼ばれるより保存された領域が並んでいる。各可変領域内には、3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域がある。
【0003】
抗体は2機能性分子であり、重鎖および軽鎖からのN-末端可変断片は、抗原表面の特定のエピトープに対して親和性を示す3次元構造を生成するための特定の方法により互いに結合している。定常領域部分は、血清の半減期および抗体のエフェクター機能の延長に関与し、補体結合、食細胞の刺激、抗体依存性細胞毒、および顆粒球の顆粒放出のきっかけに関係する。
【0004】
ハイブリドーマ技術の進歩は、特定の特異性を有するモノクローナル抗体の生産を促進した。典型的には、かかるハイブリドーマはネズミハイブリドーマである。
【0005】
ヒト/マウスキメラ抗体が作製され、そのマウスゲノムからの抗体可変領域配列がヒトゲノムからの抗体定常領域配列と結合している。キメラ抗体は親のマウス抗体の結合特性およびヒト定常領域に関連するエフェクター機能を示す。抗体は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む宿主細胞における発現により生産される。
【0006】
このようなキメラ抗体はヒトの治療において使用されてきたが、これらのキメラ抗体に対する抗体がヒトの被提供者により生産されてきた。かかる抗キメラ抗体は、キメラ抗体による継続的治療に悪影響を及ぼす。
【0007】
ヒトモノクローナル抗体が、in vivoヒト治療のためのマウスモノクローナル抗体の改良となることが予測されるといわれてきた。旧世界霊長類(赤毛猿およびチンパンジー)からの抗体を用いてなされた研究から、これらの非ヒト霊長類抗体がヒト抗体と構造的に類似しているため、ヒトにおいて許容されると主張されてきた(Ehrlich PH et al., Clin Chem, 1988, 34:9 1681〜1688)。さらに、ヒト抗体が赤毛猿において非免疫原性であるため(Ehrich PH et al. Hybridoma, 1987, 6:151〜60)、逆もまた適用可能であり、霊長類抗体がヒトにおいて非免疫原性であると思われる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト×マウスへテロ骨髄腫とのリンパ球の融合により構成されるハイブリドーマから分泌される。
【0008】
EP 0605 442は、ヒト抗原と結合するキメラ抗体を開示する。これらの抗体は旧世界猿からの可変領域およびヒトまたはチンパンジー抗体の定常領域のすべてを含有する。これらの構成について、この参照文献において示唆される利点の1つは、マウス宿主において惹起される抗体と比較してヒトにおける免疫原性の小さい、ヒト抗原に対する旧世界猿の抗体を惹起する能力である。
【0009】
新世界霊長類(広鼻下目(infraorder-Platyrrhini))は、一般に2つの科、CallithricidaeおよびCebidaeに分けられる少なくとも53の種を有する。Callithricidaeはマーモセット類およびタマリン類からなる。Cebidaeはリスザル、ティティザル、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル、ウアカリ、サキ属、ヨザル(night or owl monkey)、およびホエザルを含む。
【0010】
進化的に離れた霊長類、例えば新世界霊長類は、ヒト抗原に対する抗体が生成されるのを許容する程度にヒトと十分に異なるだけでなく、かかる霊長類由来の抗体がヒトの体内に導入された場合に、宿主が抗抗体免疫反応を生じることのないように、ヒト抗体と類似の抗体を有する程度にヒトと十分に類似する。
【0011】
これまでの研究は、Callithrix jacchusマーモセットの発現されたイムノグロブリン重鎖レパートリーを有することを特徴とする(von Budingen H-C et al. Immunogenetics, 2001, 53:557〜563)。それらの対応するヒトIGHVと高度の配列相同性を示す6つのIGHVサブグループが同定された。フレームワーク領域は、相補性決定領域(CDR)と比較した場合、より保全されている。コモンマーモセット(C. jacchus)とヒトとの間のIGHV配列の類似の程度は、非ヒト旧世界霊長類とヒトとの間に比べて小さい。
【0012】
ドメイン抗体
ドメイン抗体(dAb)は、抗体フレームワークを用いて作製することのできる機能的結合単位であり、抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に対応する。ドメイン抗体は、約13kDaの分子量を有するか、または抗体の全サイズの10分の1より小さい。
【0013】
イムノグロブリン軽鎖はカッパまたはラムダ軽鎖と呼ばれ、重鎖はガンマ、ミュー、デルタ、アルファまたはイプシロンと呼ばれる。可変領域は抗体に特異性を与える。各抗体の可変領域内には超可変領域、さもなければ、フレームワーク領域と呼ばれる、より保存された領域が並んで位置する相補性決定領域(CDR)として知られている領域が存在する。各軽鎖および重鎖可変領域内には、3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域が存在する。
【0014】
従来の抗体とは対照的に、ドメイン抗体は細菌、酵母、および哺乳動物系においてよく発現される。小サイズのそれらは、生成物1グラム当りのより多くのモル量を可能にし、したがって効力が顕著に増大する。加えてドメイン抗体は治療製品を製造するための構成要素、例えば、2つ以上の可変ドメインを含有する構成体が2つ以上の治療目標に結合する多重標的dAb、または肺もしくは経口投与を目的としたdAbとして用いることができる。
【特許文献1】EP 0605 442
【特許文献2】WO 2004/003019
【特許文献3】PCT/GB2003/002804
【特許文献4】米国特許第4816567号
【特許文献5】米国特許第5585089号
【特許文献6】米国特許出願公開第20030039649号
【特許文献7】国際公開第93/06213号
【特許文献8】国際公開第92/01047号
【非特許文献1】Ehrlich PH et al., Clin Chem., 1988, 34:9 1681〜1688
【非特許文献2】Ehrich PH et al. Hybridoma, 1987, 6:151〜60
【非特許文献3】von Budingen H-C et al. Inmmunogenetics, 2001, 53:557〜563
【非特許文献4】Schneider H et at, Mol Phylogenet Evol., 1993 Sep;2(3):225〜42
【非特許文献5】Stern, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6808〜6812 (1990)
【非特許文献6】Kong, Y-Y. et al. Nature 397:315〜323 (1990)
【非特許文献7】Matthews, N. and M. L. Neale in Lymphokines and Interferons, a Practical Approach, 1987
【非特許文献8】M.J. Clemens, A.C. Morris and A.J. H. Gearing, eds., IRL Press, p.221
【非特許文献9】van den Beuken T et al, 2001, J. Mol. Biol, 310, 591
【非特許文献10】Ward et al, 1989, Nature 341 :544〜546
【非特許文献11】Bird et al., 1988, Science 242:423〜426
【非特許文献12】Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883
【非特許文献13】Holliger, P., et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444〜6448
【非特許文献14】Poljak, R.J., et al., 1994, Structure, 2:1121〜1123
【非特許文献15】http://www.imtech.res.in/raghava/propred
【非特許文献16】http://bio.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.html
【非特許文献17】Flower DR, Doytchinova IA. (2004) Immunoinformatics and the prediction of immunogenicity, Drug Discov Today, 9(2): 82〜90
【非特許文献18】Hammer J et al., 1994, J. Exp. Med., 180:2353
【非特許文献19】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
【非特許文献20】Jespers等の/TECHNOLOGY Vol 12 1994, 899〜903頁
【非特許文献21】McCafferty等の1990, Nature, 348:552〜554
【非特許文献22】Griffiths等の1993,EMBO J,12:725〜734
【非特許文献23】Sambrook, Fritsch and Maniatis (eds), Molecular Cloning; a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor, N.Y (1989)
【非特許文献24】R.A. Irving et al., 2001, Journal of Immunological Methods, 248, 31〜45
【非特許文献25】Sambrook, Joseph; and David W. Russell (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor, N. Y.; Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献26】Kipriyanov, S. M., et al., 1995 Human Antibodies and Hybridomas, 6:93〜101
【非特許文献27】Kipriyanov, S. M, et al, 1994 Mol. Immunol., 31: 1047〜1058
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者等は、新世界霊長類がヒトにおいて免疫原性の低いことが予測される抗体配列の供給源を提供することを見出した。
【0016】
新世界霊長類は、新世界霊長類および旧世界霊長類の分岐点に存在したイムノグロブリン配列の収納場所として選ばれた。重要な概念は、この収納場所が旧世界霊長類において見出されるイムノグロブリン配列の後の分岐に対し、原初のイムノグロブリン配列を産生することだった。かかる原初の配列はT細胞レパートリーとともに共存し、続いてヒトへ進化し、3500万年前(MYA)が旧世界霊長類と新世界霊長類の分岐点と推定された(Schneider H et at, Mol Phylogenet Evol., 1993 Sep;2(3):225〜42)。このことは、免疫学的耐性についての選択期間が遅延されたことを示し、および原初配列が、より最近に進化した、あるヘルパーT細胞のエピトープにないことが、本発明者により予測された。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明の第1の態様は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含む可変領域を有し、該フレームワーク領域が新世界霊長類フレームワーク領域であるか、または新世界霊長類フレームワーク領域から誘導され、少なくとも1つの該CDRが非新世界霊長類CDRである、抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、有効量の本発明の抗体またはその抗原結合部分と、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または希釈剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は特定の疾患または障害に関連する抗原を検出するための診断用途における、本発明の抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。
【0020】
第4の態様において、本発明は、有効量の本明細書に記載する抗体またはその抗原結合部分(あるいはその医薬組成物)であってTNF-αに結合する抗体またはその抗原結合部分を、それを必要とする対象に投与することを含む、ヒト対象におけるヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患または障害の処置方法を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様において、医薬の製造における本明細書に記載の抗体およびその抗原結合部分、ならびにそれらの医薬組成物の使用を提供する。特に、本明細書に記載の疾患または障害の処置または診断に使用する医薬の製造における使用を提供する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、細胞表面抗原またはサイトカインに結合する、設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を含み、該CDRは、抗体またはその抗原結合部分が細胞表面抗原またはサイトカインに結合するように選択される、設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0023】
本明細書による注記または明確な指示がなければ、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分は、本明細書に記載の医薬組成物において制限なく使用することができ、本明細書に記載のキットに組み込むことができる。さらに、本明細書による注記または明確な指示がなければ、本明細書に記載の抗体およびその抗原結合部分は、医薬組成物およびキットと同様に、本明細書に開示された処置および診断方法に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1の態様において、本発明は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を有し、該フレームワーク領域が新世界霊長類フレームワーク領域であるか、または新世界霊長類フレームワーク領域から誘導され、少なくとも1つの該CDRが非新世界霊長類CDRである、抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0025】
第2の態様において、本発明は、有効量の本発明の抗体またはその抗原結合部分と、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または希釈剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0026】
第3の態様において、本発明は特定の疾患または障害に関連する抗原を検出するための診断用途における、本発明の抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。
【0027】
第4の態様において、本発明は、抗体またはその抗原結合部分がTNF-αに結合する、有効量の本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分(あるいはその医薬組成物)をそれを必要とする対象に投与することを含む、ヒト対象におけるヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患または障害の処置方法を提供する。
【0028】
本発明のある実施形態において、可変領域が3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域を含有する。抗体は、ヒトにおいて予測された低い免疫原性を有するのも好ましい。
【0029】
抗体またはその抗原結合部分の可変領域は、異なる供給源からのCDRの組合せを含んでもよい。
【0030】
ある実施形態において、可変領域は、少なくとも1つのネズミCDR配列(好ましくはマウスまたはラットのいずれか)、少なくとも1つのヒトCDR配列、少なくとも1つの合成CDR配列、少なくとも1つのウサギCDR配列、少なくとも1つの改変された新世界霊長類CDR配列および2つ以上の上記の組合せ、少なくとも1つのヒトCDRおよび少なくとも1つのネズミCDR、少なくとも1つのヒトCDRおよび少なくとも1つの合成CDR、少なくとも1つのヒトCDRおよび少なくとも1つのウサギCDR、少なくとも1つのヒトCDRおよび少なくとも1つの新世界霊長類CDR、少なくとも1つのネズミCDRおよび少なくとも1つの合成CDR、少なくとも1つのネズミCDRおよび少なくとも1つのウサギCDR、少なくとも1つのネズミCDRおよび少なくとも1つの新世界霊長類CDR、少なくとも1つの合成CDRおよび少なくとも1つのウサギCDR、少なくとも1つの合成CDRおよび少なくとも1つの新世界霊長類CDR、および少なくとも1つのウサギCDRおよび少なくとも1つの新世界霊長類CDRからなる群から選択されるCDRを含む。
【0031】
好ましい形態において、可変領域は3つのネズミCDR配列、特に3つのマウスCDR配列を含む。
【0032】
別の実施形態において、可変領域は3つのヒトCDR配列を含む。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、可変領域は、4つの新世界霊長類フレームワーク領域または領域が新世界霊長類フレームワーク領域から誘導される、4つのフレームワーク領域を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗原結合部分がドメイン抗体である。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分はさらにヒトもしくは非ヒト旧世界霊長類定常領域配列またはそれらの組合せを含む。
【0035】
非ヒト旧世界霊長類の例としては、限定されないが、チンパンジー類、比類オランウータン類、マカク類およびゴリラ類を含む。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態において、dAbは、例えばヘテロ-またはホモ二量体(例えば、VH/VH、VL/VLまたはVH/VL)、ヘテロ-またはホモ三量体(例えば、VH/VH/VH、VL/VL/VL、VH/VH/VLまたはVH/VL/VL)、ヘテロ-またはホモ四量体(例えば、VH/VH/VH/VH、VL/VL/VL/VL、VH/VH/VH/VLまたはVH/VH/VL/VLまたはVH/VL/VL/VL)、あるいはより高次の他のヘテロ-またはホモ多量体として多量体化していてもよい。多量体化は抗原結合の強度を増大させることができ、ここで結合強度は多重結合部位の結合親和性の総和に関係する。
【0037】
例えば、本発明はドメイン抗体が少なくとも1つの他のドメイン抗体と連結しているドメイン抗体を提供する。各dAbは同一または異なる抗原と結合してもよい。
【0038】
dAb多量体はさらに1つまたは複数の連結しているdAbを含有していてもよく、ここで、各dAbは異なる抗原、いわゆる「二重特異的リガンド(dual-specific ligand)」を含む多重特異的リガンドに結合する。例えば、二重特異的リガンドは一対のVHドメインまたは一対のVLドメインを含有していてもよい。かかる二重特異的リガンドはDomantis Ltdの名でWO 2004/003019 (PCT/GB2003/002804)に記載されており、それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
新世界霊長類フレームワーク領域配列は、好ましくはマーモセット類、タマリン類、リスザル、ティティザル、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル、ウアカリ、サキ属、ヨザル、およびホエザルからなる群から選択される新世界霊長類からであり、最も好ましくはマーモセットである。
【0040】
好ましくはキメラ抗体またはその抗原結合部分が結合する抗原は、癌胎児性抗原、EpCAM、Lewis-Y、Lewis-Y/b、PMSA、CD20、CD30、CD33、CD38、CD52、CD154、EGF-R、Her-2、TRAILおよびVEGFレセプターを含む腫瘍関連抗原;CD3、CD4、CD25、CD40、CD49d、MHCクラスI、MHCクラスII、GM-CSF、インターフェロン-γ、IL-I、IL-12、IL-13、IL-23、TNF-α、およびIgEを含む免疫もしくは炎症疾患または免疫もしくは炎症障害に含まれる抗原;糖タンパク質IIb/IIIa、P-糖タンパク質、プリンレセプターおよびCD11a、CD1lb、CD11c、CDl8、CD56、CD58、CD62またはCD144を含有する接着レセプターを含む宿主細胞上に発現される抗原;エオタキシン(eotaxin)、IL-6、IL-8、TGF-β、C3a、C5a、VEGF、NGFおよびそれらのレセプターを含有する、サイトカイン、ケモカイン、成長因子もしくは他の可溶性生理学的調節物質またはそれらのレセプターを含む抗原;β-アミロイドおよびプリオンを含む中枢神経系疾患または障害に含まれる抗原;呼吸器合胞体ウイルスタンパク質F、炭疽毒素、ガラガラヘビ毒、およびジゴキシンを含有する、非ヒト由来抗原、例えば、微生物、ナノ微生物またはウイルスの抗原または毒素からなる抗原から選択される、天然の、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、脂質または糖脂質である抗原に結合し;キメラ抗体は、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用するか、補体もしくはキラー細胞(例えば、NK細胞)の作用により望ましくない細胞(例えば、抗CD4)を減少させる(死滅させるか排除する)ことに対し活性であるか、または細胞毒性薬として活性であるか、または食細胞のFcレセプターと結合するか、もしくはその標的の生物学的活性を中和する。
【0041】
少なくとも1つのフレームワーク領域の配列が、結合もしくは有効性を増大させるか、ヒトにおいて予測される免疫原性を低下させるように改変されているのも好ましい。本発明の抗体またはその抗原結合部分の結合もしくは有効性の増大、またはヒトにおいて予測される免疫原性の低下は、フレームワーク領域が改変されていない抗体またはその抗原結合部分に関係する。
【0042】
他の実施形態において、CDRの1つまたは複数の配列は、結合もしくは有効性を増大させるか、ヒトにおいて予測される免疫原性を低下させるように改変されている。本発明の抗体または抗原結合部分の、結合もしくは有効性の増大、またはヒトにおいて予測される免疫原性の低下は、フレームワーク領域が改変されていない抗体または抗原結合部分に関係する。
【0043】
結合の増大は、抗体またはその抗原結合部分に対するKD(Koff/Kon)の減少により示される。有効性の増大は生物学的分析により示される。例えば、抗体またはその抗原結合部分の有効性を測定するのに用いることができる分析は、TNFα-誘導L929細胞毒中和分析、IL-12誘導ヒトPHA-活性化末梢血単核細胞(PBMC)増殖分析、およびマウス脾細胞の破骨細胞分化を媒介したRANKLを含む(Stern, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6808〜6812 (1990); Kong, Y-Y. et al. Nature 397:315〜323 (1990); Matthews, N. and M. L. Neale in Lymphokines and Interferons, a Practical Approach, 1987, M.J. Clemens, A.C. Morris and A.J. H. Gearing, eds., IRL Press, p.221)。
【0044】
本明細書において用いる用語「抗体」は、4つのポリぺプチド鎖、ジスルフィド結合により相互連結された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むイムノグロブリン分子を指すものとする。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVH)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはVL)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、さらに超可変領域に分割することができ、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が組み込まれている。各VHおよびVL領域は、3つのCDRおよび4つのFRsから構成され、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0045】
本明細書において用いる用語、抗体の「抗原結合部分」とは、抗原に結合する能力を示す、1つまたは複数の成分またはイムノグロブリンの誘導体をいう。抗体の抗原結合機能は、完全な長さの抗体のフラグメントにより達成できることが示されている。用語、抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含有する2価のフラグメントである、F(ab')2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1つの腕のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)1つのVHドメインまたはVLドメイン(van den Beuken T et al, 2001, J. Mol. Biol, 310, 591)からなるdAbフラグメント (Ward et al, 1989, Nature 341 :544〜546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは分離した遺伝子によりコードされ、それらは組換え方法を用い、合成リンカーにより連結することができ、VLおよびVH域の対が、単一鎖Fv(scFv)として知られている一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖をつくる(例えば、Bird et al., 1988, Science 242:423〜426およびHuston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883参照)。かかる単一鎖Fvsはまた、用語、抗体の「抗原結合部分」に包含されるものである。単一鎖Fvsの他の形態および関連する分子、例えば2量体または3量体も包含される。2量体は、VHおよびVLドメインが単一ポリぺプチド鎖上に発現されている二価抗体であるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成には短すぎるリンカーを使用するため、ドメインを他の鎖の相補性ドメインを用いて対にし、2つの抗原結合部分を形成している(例えば、Holliger, P., et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444〜6448; Poljak, R.J., et al., 1994, Structure, 2:1121〜1123参照)。
【0046】
本発明の抗体製造方法は、例えば、米国特許第4816567号、米国特許第5585089号および米国特許出願公開第20030039649号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、を参照する当業者によく知られたものとなる。かかる方法は標準的な組換え技術の使用を必要とする。
【0047】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、ヒト宿主において予測される低い免疫原性を有するのが好ましい。
【0048】
「低免疫原性」は、治療効果を達成するのに十分な時間において、継続された抗体投与の効果を低下させるのに十分な量の抗体を受ける個体の少なくとも過半数において、抗体が抗体反応を惹起しないことを意味する。
【0049】
ヒトにおける免疫原性のレベルは、MHCクラスII結合予測プログラムPropred(http://www.imtech.res.in/raghava/propred)を用い、すべての対立遺伝子の1%閾値解析を用いて予測することができる。使用可能な他のプログラムは:
Rankpep (http://bio.dfci.harvard.edu/Tools/rankpep.html)
Epibase (Algonomics proprietary software: algonomics.com)
を含む。
【0050】
免疫原性の低減した分子は、初期のドナー分子と比較し、標的集団において高度に発現されるMHCクラスII対立遺伝子に結合すると予測されるぺプチドを含まないか、低減した数のぺプチドを含む(Flower DR, Doytchinova IA. (2004) Immunoinformatics and the prediction of immunogenicity, Drug Discov Today, 9(2): 82〜90)。
【0051】
MHCクラスII結合の機能分析は、当該タンパク質に対応する、重複するぺプチドを生成し、T細胞活性化を惹起するそれらの能力を試験するか(T細胞増殖分析)、またはレポーターぺプチドである、既知のMHCクラスII結合ぺプチドを置き換えることにより実施することができる(Hammer J et al., 1994, J. Exp. Med., 180:2353)。
【0052】
新世界霊長類フレームワーク領域に関連して本明細書で使用される用語、「から誘導される」は、新世界霊長類フレームワーク領域の配列が、天然の配列から変更されていることを意味する。典型的には、変更は米国特許第5585089号および米国特許出願公開第20030039649号に記載されているように、結合を増大させるために行うか、またはヒトにおける予測される免疫原性を低下させるために行う。用語「から誘導される」は、可変領域中に存在するフレームワーク領域の全配列が、ヒトフレームワーク配列と同一となる変更を含まない。比較のために用いることのできるデータベースは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/である。
【0053】
他の態様において、本発明は、細胞表面抗原またはサイトカインに結合する設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分を提供し、該抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を含み、該CDRは、抗体またはその抗原結合部分が細胞表面抗原またはサイトカインに結合するように選択する。
【0054】
本明細書において使用される用語「設計された」は、新世界霊長類CDRがHoogenboom等の国際公開第93/06213号およびJespers等のBIO/TECHNOLOGY Vol 12 1994, 899〜903頁、それらの全体が本明細書に組み込まれる、に記載のエピトープインプリンティング法を用いて選択されることを意味する。この方法に用いる抗体ライブラリーは、好ましくは、McCafferty等の国際公開第92/01047号, McCafferty等の1990, Nature, 348:552〜554;およびGriffiths等の1993,EMBO J,12:725〜734、それらの全体が参照として本明細書に組み込まれる、に記載の、調製され、スクリーニングされたscFvライブラリーである。
【0055】
例えば、最初のヒトVLおよびVH断片が選択されると、「様々に組み合わせた(mix and match)」実験は、好ましいVL/VH対の組合せを選択するために実施され、実験において最初に選択されたVLおよびVH断片とは異なる対がhTNF-α結合に対してスクリーニングされる。加えて、親和性をさらに改善するためおよび/またはhTNF-α結合に関するoff rate定数を低下させるために、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR3領域内で、自然な免疫反応の間、抗体の親和性成熟に関与するin vivo体細胞変異プロセスに類似するプロセスにおいて、好ましいVL/VH対のVLおよびVH断片はランダムに突然変異することができる。このin vitro親和性成熟は、VHCDR3またはVLCDR3に相補的なPCRプライマーを用い、VHおよびVL領域をそれぞれ増幅することにより達成することができ、得られるPCR生成物が、ランダム突然変異をVHおよび/またはVLCDR3領域に導入したVHおよびVL断片をコードするように、プライマーは4つのヌクレオチド塩基のランダム混合物により、ある位置において「スパイク」されている。これらランダムに突然変異を受けたVHおよびVL断片を、高親和性を示す抗原と配列の結合について再びスクリーニングすることができ、抗原結合について低いoff rateを選択することができる。
【0056】
組換えイムノグロブリンディスプレイライブラリーからの対象の抗原に結合する、抗体またはその抗原結合部分をスクリーニングおよび単離した後、選択された抗体をコードする核酸はディスプレイパッケージ(例えば、ファージゲノム)から回収することができ、標準的な組換えDNA技術により他の発現ベクターにサブクローン化することができる。必要であれば、核酸は、さらに本発明の他の形態の抗体(例えば、追加のイムノグロブリンドメインをコードする核酸、例えば追加の定常領域に連結している)を作製するために操作することができる。組み合わせたライブラリーのスクリーニングにより単離された組換えヒト抗体を発現するために、抗体をコードするDNAを、組換え発現ベクター中にクローン化し、哺乳動物宿主細胞中に導入する。
【0057】
標的とされ得る細胞表面抗原およびインプリンティングにおいて使用可能な抗体の例は、制限されないが、以下のものを含む。
【0058】
【表1】

【0059】
標的とされ得るサイトカインおよびインプリンティングにおいて使用可能な抗体の例は、制限されないが、以下のものを含む。
【0060】
【表2】

【0061】
本発明は、さらに新世界霊長類イムノグロブリン遺伝子増幅のための方法、例えば、重鎖および軽鎖可変領域遺伝子ファミリーに対し特異的なプライマーを用いる、新世界霊長類リンパ球から抽出された核酸からのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による方法に基づく。新世界霊長類キメラ組換え抗体を製造するため、増幅された可変領域を、ヒトまたは霊長類の定常領域遺伝子を含有する発現ベクター中にクローン化する。標準組換えDNA法を抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得るために用い、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に組み込み、ベクターを宿主細胞、例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis (eds), Molecular Cloning; a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor, N.Y (1989)に記載の宿主細胞中に導入する。
【0062】
好適な発現ベクターは、当業者によく知られている。イムノグロブリンを産生する新世界霊長類リンパ球は、典型的には骨髄腫細胞株との融合により不死化し、ハイブリドーマを生成する。
【0063】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。
【0064】
哺乳動物の発現システムに加え、本発明はまた非哺乳動物発現システム、例えば、誘導された植物または原核生物(細菌)の使用を検討する。かかる発現システムは当業者によく知られている。
【0065】
VH、VLおよび定常領域ドメインのレパートリーは、自然に生成するイムノグロブリン配列のレパートリーまたは合成レパートリーであってよい。自然に生成するレパートリーは、例えば、1種または複数種の新世界霊長類から採取されたイムノグロブリン発現細胞から調製されるレパートリーである。かかるレパートリーは未熟であってよく、すなわち、新生児イムノグロブリン発現細胞から調製するか、または再配列することができ、例えば成体の霊長類B細胞から調製することができる。必要であれば、天然のレパートリー、または標的抗原に結合する任意のレパートリーから同定されたクローンを、向上した結合特性を有する変異株を生成し選択するため、突然変異生成に供し、さらにスクリーニングを行う。
【0066】
イムノグロブリン可変ドメインの合成レパートリーは、クローン化された可変ドメイン中に多様性を人工的に導入することにより調製する。かかる親和性成熟技術は、当業者によく知られており、例えば、R.A. Irving et al., 2001, Journal of Immunological Methods, 248, 31〜45により記載された技術である。
【0067】
新世界霊長類抗体遺伝子の可変領域またはそれらのCDRは、核酸、例えばcDNAを供給し、抗体遺伝子の5'リーダー配列をコードするcDNA配列に相補的なプライマーを供給し、cDNAとプライマーを接触させてハイブリッド複合体を形成し、およびcDNAを増幅して新世界霊長類抗体遺伝子の可変領域(またはCDR領域)をコードする核酸を製造することによりクローン化することができる。
【0068】
本明細書の教示を考慮すれば、新世界霊長類可変領域配列が、非新世界霊長類配列の移植用のアクセプターとして使用できること、特に、CDR配列を標準的な組換え技術を用いて使用できることは、本発明の技術分野の熟練者により認識される。例えば、米国特許第5585089号は、非ヒト親抗体の高親和性を保持し、かつドナーイムノグロブリンからの1つまたは複数のCDRおよびヒトイムノグロブリンからのフレームワーク領域を含有する低免疫原性のキメラ抗体を作製するための方法を記載する。米国特許出願公開第20030039649号は、ヒト化抗体のための適切なヒトフレームワーク配列を選択する基準として、ヒト抗体の生殖細胞系列の標準的なCDR構造タイプと比較した非ヒト抗体の標準的なCDR構造タイプの使用に基づいて、非ヒト抗体およびヒト抗体のフレームワーク配列からのCDR配列を含有する低免疫原性のキメラ抗体を作製するためのヒト化方法を記載する。したがって、これらの原則は、新世界霊長類アクセプター可変領域中に、1つまたは複数の非新世界霊長類CDRを移植するのに適用することができる。
【0069】
CDR配列は、抗体から単離されたゲノムDNAから、またはデータベース、例えば、The National Centre for Biotechnology Informationタンパク質および核酸データベース、The Kabat Database of Sequences of Proteins of Immunological Interest に存在する配列から得ることができる。CDR配列はゲノムDNAまたはcDNAであってもよい。
【0070】
アクセプター可変配列中にCDR(s)を置き換える移植方法は、本発明の技術分野の熟練者によく知られている。典型的には、CDRはアクセプター可変領域配列中の、可変軽鎖および可変重鎖またはドメイン抗体の場合は単鎖のそれぞれに移植する。本発明の好ましい方法は、可変領域配列において、突然変異生成を目的としたプライマーを介するCDR1またはより好ましくはCDR2の置換を含む。該方法は、標的領域に対する望ましい突然変異をコードする合成オリゴヌクレオチドのアニーリングからなり、合成オリゴヌクレオチドはDNAのin vitro合成の開始用のプライマーとして供給し、DNAポリメラーゼによりオリゴヌクレオチドを延長し、望ましい突然変異を有する二重らせんDNAを生成し、該配列を適切な発現ベクター中に結紮し、クローン化する(Sambrook, Joseph; and David W. Russell (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor, N. Y.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0071】
さらに、抗体またはその抗原結合部分は、1つまたは複数の他のタンパク質またはぺプチドを有する抗体または抗体部分の共有または非共有の会合により形成される、より大きい免疫接着物分子の一部であってもよい。このような免疫接着物分子の例は、4量体のscFv分子を調製するためにストレプトアビジンのコア領域の使用(Kipriyanov, S. M., et al., 1995 Human Antibodies and Hybridomas, 6:93〜101)および二価およびビオチニル化したscFv分子を調製するためにシステイン残基、マーカーぺプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用を含む(Kipriyanov, S. M, et al, 1994 Mol. Immunol., 31: 1047〜1058)。Fab、F(ab')2フラグメント等の抗体部分は、全体の抗体をそれぞれパパイン消化またはペプシン消化する等の慣用の方法を用いて、全体の抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書に記載され、当業者に知られている、標準的な組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0072】
定常領域配列(Fc部分)は、好ましくはヒトまたは霊長類のイムノグロブリン配列から得る。霊長類配列は、新世界霊長類または旧世界霊長類の配列であってよい。好適な旧世界霊長類は、チンパンジー、または他のヒト科の動物、類人猿、例えばゴリラまたはオランウータンを含み、それらは系統発生学的にヒトに非常に近接しているため、ヒトの定常領域配列と高度の相同性を共有する。ヒトまたは霊長類の定常領域に対してコードする配列は、例えば、The National Centre for Biotechnology Information protein and nucleotide databases, The Kabat Database of Sequences of Proteins of Immunological Interestを含むデータベースから入手することができる。
【0073】
本発明の抗体または抗原結合部分は、ヒトまたは非ヒト抗原に結合することができる。
【0074】
好ましくは、キメラ抗体またはその抗原結合部分に結合する抗原は、癌胎児性抗原、EpCAM、Lewis-Y、Lewis-Y/b、PMSA、CD20、CD30、CD33、CD38、CD52、CD154、EGF-R、Her-2、TRAILおよびVEGFレセプターを含む腫瘍関連抗原;CD3、CD4、CD25、CD40、CD49d、MHCクラスI、MHCクラスII、GM-CSF、インターフェロン-γ、IL-I、IL-12、IL-13、IL-23、TNF-α、およびIgEを含む免疫もしくは炎症疾患または免疫もしくは炎症障害に含まれる抗原;糖タンパク質IIb/IIIa、P-糖タンパク質、プリンレセプターおよびCD11a、CD1lb、CD11c、CDl8、CD56、CD58、CD62またはCD144を含有する接着レセプターを含む宿主細胞上に発現される抗原;エオタキシン(eotaxin)、IL-6、IL-8、TGF-β、C3a、C5a、VEGF、NGFおよびそれらのレセプターを含有する、サイトカイン、ケモカイン、成長因子もしくは他の可溶性生理学的調節物質またはそれらのレセプターを含む抗原;β-アミロイドおよびプリオンを含む中枢神経系疾患または障害に含まれる抗原;呼吸器合胞体ウイルスタンパク質F、炭疽毒素、ガラガラヘビ毒、およびジゴキシンを含有する、非ヒト由来抗原、例えば、微生物、ナノ微生物またはウイルスの抗原または毒素からなる抗原から選択される、天然の、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、脂質または糖脂質である抗原に結合し;キメラ抗体は、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用するか、補体もしくはキラー細胞(例えば、NK細胞)の作用により望ましくない細胞(例えば、抗CD4)を減少させる(死滅させるか排除する)ことに対し活性であるか、または細胞毒性薬として活性であるか、または食細胞のFcレセプターと結合するか、もしくはその標的の生物学的活性を中和する。
【0075】
より好ましくは、抗原はTNFαであり、最も好ましくはヒトTNFαである。
【0076】
代わりに、抗体またはその抗原結合部分は非ヒト抗原に結合することができる。好ましくは非ヒト抗原は、呼吸器合胞体ウイルスFタンパク質、サイトメガロウイルス、ヘビ毒、およびジゴキシンからなる群から選択される。
【0077】
本明細書において用いる用語「に結合する」は、例えば、BTAcore(商標)表面プラズモン共鳴システムおよびBTAcore(商標)速度評価ソフトウェア(例えば、version 2.1)を用いる表面プラズモン共鳴分析により測定したときに、1μMまたはそれより低い解離定数(Kd)を有する抗体のイムノグロブリン可変領域による抗原の結合をいうものとする。特定の結合相互作用に対する親和または解離定数(Kd)は、好ましくは約500nMから約50pMであり、より好ましくは約500nM以下、さらに好ましくは約300nM以下、および好ましくは少なくとも約300nMから約50pM、約200nMから約50pM、およびより好ましくは少なくとも約100nMから約50pM、約75nMから約50pM、約10nMから約50pMである。
【0078】
本発明の抗体は、ヒト抗抗体反応を誘導する可能性が減少するため、ヒトの治療に有利である。
【0079】
標的抗原に結合する、本発明に従って生産された組換え抗体は、望ましい結合特異性および機能的性質(例えば、TNFαの中和はL929細胞を用いて測定することができる)を示すライブラリーメンバーを単離するために、組合せのイムノグロブリンライブラリー(例えば、ファージ表示ライブラリー)をスクリーニングすることにより同定し、単離することができる。抗原結合部分または抗体の誘導体、例えばFabs、scFvおよびVドメインまたはドメイン抗体、を用いるすべての方法は、本発明の範囲内にあることが理解される。ファージ表示技術が当該技術分野において広範囲にわたって記載されており、かかるライブラリーおよびそれらの親和性成熟生成物を生成し、スクリーニングするための方法および化合物の例は、例えば、Barbas et al, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:7978-7982; Clarkson et al., 1991, Nature, 352:624:628; Dower et al., PCT公開番号国際公開第91/17271号, 米国特許第5,427,908号, 米国特許第5,580,717号およびEP 527,839; Fuchs et al, 1991, Bio/Technology, 9:1370-1372; Garrad et al, 1991 Bio/Technology, 9:1373: 1377; Garrard el al, PCT公開番号国際公開第92/09690号; Gram et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:3576-3580; Griffiths et al., 1993 EMBO J, 12:725:734; Griffiths et al, 米国特許第5,885,793号およびEP 589,877; Hawkins et al, 1992, J Mol Biol, 226:889-896; Hay et al 1992, Hum Antibod Hybridomas, 3:81-85; Hoogenboom et al, 1991 Nuc Acid Res, 19:4133-4137; Huse et al., 1989, Science, 246:1275-1281; Knappik et al., 2000, J Mol Biol, 296:57-86; Knappik et al. PCT国際公開第97/08320号; Ladner et al., 米国特許第5,223,409号, 第5,403,484号, 第5,571,698号, 第5,837,500号およびEP 436,597; McCafferty et al., 1990, Nature. 348:552-554; McCafferty et al., PCT公開番号国際公開第92/01047号, 米国特許第5,969,108号およびEP 589,877; Salfeld et al, PCT国際公開第97/29131号, 米国仮出願第60/126,603号;およびWinter et al. PCT国際公開第92/20791号およびEP 368,684;において見出すことができる。
【0080】
本発明の抗体を発現する組換えライブラリーは、微生物、例えば酵母または細菌の表面に発現することができる(PCT公開国際公開第99/36569号および国際公開第98/49286号参照)。
【0081】
最新技術において参照されるように、選択されたリンパ球抗体法またはSLAMは、高親和性抗体を迅速に生成する別の手段である。ファージディスプレイの方法と異なり、すべての抗体は完全な2価である。新世界霊長類抗体を生成するために、新世界霊長類はヒト抗原、例えば、TNFαポリぺプチドにより免疫する。免疫した後、細胞を取り除き、個々のマイクロウェルにおいて選択的に増殖する。ウェルから上清を除き、結合および機能の両方を試験する。遺伝子配列は、後続の操作、例えばヒト化、Fabフラグメント、scFvまたはdAb生成のために回収することができる。したがって別の例は、SLAMおよびその誘導体による本発明のリガンドの誘導である(Babcook, J.S. et al 1996, Proc. Natl. Acad. Sci, USA 93; 7843-7848, 米国特許第5,627,052号およびPCT公開国際公開第92/Q2551号)。SLAMの適用、例えば、panning等の上清を試験するための他の使用も本発明の範囲内である。
【0082】
1つの発現システムにおいて、組換えぺプチド/タンパク質ライブラリーは、リボソーム上に表示される(例えば、Roberts, RW and Szostak, J.W.1997. Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 94: 12297 - 123202およびPCT公開国際公開第98/31700号参照)。このような別の例は、好ましくは、特に制限されないが免疫細胞から調製される(例えば、抗体および誘導体の)DNAライブラリーの生成およびin vitro転写、タンパク質および「免疫された」mRNAsがリボソーム上にあるライブラリーの翻訳、親和性選択(例えば、RSPに結合することによる)、mRNAの単離、逆翻訳(reverse translation)およびそれに続く増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応または関連する技術による)を含む。選択および増幅の追加のラウンドは、必要に応じて、このシステムにおいて体細胞変異の導入を介して親和性成熟に連結してもよいし、または最新技術において知られている親和性成熟の他の方法により親和性成熟に連結してもよい(R.A. Irving et al. Journal of Immunological Methods, 248, 31-45 (2001))。
【0083】
他の例は、本発明の抗体生成へのエマルジョン細分化(emulsion compartmentalisation)技術の適用を参照されたい。エマルジョン細分化において、in vitroおよび光学的スクリーニング法は、エマルジョン油滴中の水相内に存在する、翻訳されたタンパク質および配列をコードするそのヌクレオチドの共細分化(co-compartmentalisation)と組み合わされる(PCT公開国際公開第99026711号および国際公開第0040712号)。抗体の生成および選択のための主な要素は、リボソームディスプレイのin vitro方法に基本的に類似する。
【0084】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、他の機能性分子に誘導体化するか、または結合することができる。例えば、抗体または抗原結合部分は、化学的結合、遺伝子融合、非共有会合により、さもなければ別の方法により、1つまたは複数の他の分子実体、例えば、他の抗体、検出可能薬、細胞毒薬、医薬品、および/または別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)により抗体もしくはその抗原結合部分の会合を媒介できるタンパク質もしくはぺプチドに機能的に結合することができる。
【0085】
免疫毒を生成するのに通常用いる細胞毒薬は、111In、90Y等の放射性同位元素、セレン、リボヌクレアーゼ、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素等の結合ドメイン-削除微生物毒(deleted truncated microbial toxins)、カリケアマイシン(ozagamicin)、マイタンシノイド(maytansinoid)類(DM-1を含む)、アウリスタチン(auristatin)類、タキソイド(taxoid)類等のチューブリン阻害剤、リシン、エブリンI、サポリン、ゲロニン等のリボソーム不活性化タンパク質、メルファラン等のプロドラッグを含む。
【0086】
抗体またはその抗原結合部分が誘導体化されていてもよい有用な検出可能薬は、蛍光化合物を含む。蛍光検出剤の例としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン等を含む。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の検出可能な酵素により誘導体化されていてもよい。抗体が検出可能な酵素によって誘導体化されている場合、抗体は、検出可能な反応生成物を生成するために酵素が使用する試薬をさらに加えることにより検出される。抗体はビオチンを用いて誘導体化することもでき、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的な測定により検出される。
【0087】
本発明は、非PEG化抗体ポリぺプチドに関して、活性を損失すること(例えば、結合親和性の低下)なく半減期を延長し、分解に対する抵抗を増大させる、PEG化した抗体または抗体結合部位に及ぶ。
【0088】
本明細書に記載したように、抗体またはその抗原結合部分は、当該技術分野において知られている方法を用いて、半減期を延長し、分解抑制特性を向上させるのに有用なポリマー分子(好ましくはPEG)に連結することができる。本発明において利用することのできるポリマー部分は、合成または天然に生成するものであってよく、特に限定されず、直鎖もしくは分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレンもしくはポリオキシアルキレンポリマー、または分岐もしくは非分岐のポリサッカライド、例えばホモもしくはヘテロポリサッカライドを含む。本発明に用いることのできる合成ポリマーの好ましい例は、直鎖もしくは分岐鎖のポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、またはポリ(ビニルアルコール)およびその誘導体もしくは置換体を含む。本明細書に記載の抗体に連結するための特に好ましい置換されたポリマーは、メトキシ(ポリエチレングリコール)を含む置換されたPEGを含む。PEGに加えて、またはPEGの代わりに使用することのできる、天然に生成するポリマー部分は、ラクトース、アミロース、デキストランもしくはグリコーゲン、または当業者が認識しているそれらの誘導体を含む。
【0089】
ポリマー分子の誘導体化した形態は、例えば、追加部分または本明細書に記載の抗体ポリぺプチドのアミノ酸残基と相互作用することのできる反応性基を有する誘導体を含む。かかる誘導体は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル、スクシンイミジルプロピオナートポリマー、およびマレイミド、ビニルスルホン、チオール等のスルフヒドリル選択的反応性剤を含む。特に好ましい誘導体化ポリマーは、以下の式を有するPEGポリマー:PEG-O-CH2CH2CH2-CO2-NHS; PEG-O-CH2-NHS; PEG-O-CH2CH2-CO2-NHS; PEG-S-CH2CH2-CO-NHS; PEG-O2CNH-CH(R)-CO2-NHS; PEG-NHCO-CH2CH2-CO-NHS;およびPEG-O-CH2-CO2-NHS、ただし、Rは((CH2)4)NHCO2(mPEG)である、を含むが、これらの誘導体化ポリマーに限定されない。PEGポリマーは、直線状の分子または分岐であってよく、多重PEG部分は単一のポリマー中に存在する。
【0090】
反応性基(例えば、MAL、NHS、SPA、VSまたはチオール)は、直接PEGポリマーに結合するか、またはリンカー分子を介してPEGに結合してもよい。
【0091】
本発明において有用なポリマーのサイズは、500Daから60kDaの範囲とすることができ、例えば、1000Daから60kDaの間、10kDaから60kDaの間、20kDaから60kDaの間、30kDaから60kDaの間、40kDaから60kDaの間、および50kDaから60kDaの間までの範囲とすることができる。本発明に使用できるポリマー、特にPEGは、直鎖ポリマーとすることができ、または分岐構造を有していてもよい。
【0092】
本発明に有用なポリマー(PEG)分子は、当該技術分野においてよく知られている方法を用いて抗体またはその抗原結合部分に結合することができる。本発明の抗体ポリぺプチドモノマーまたはマルチマーに対するPEGまたは他のポリマー部分の結合の最初の段階は、親電子含有官能基(electrophilc-containing functional groups)によるPEGポリマーのヒドロキシ末端基の置換である。特に、PEGポリマーは、抗体ポリぺプチドモノマーまたはマルチマー中に存在するシステインまたはリジン残基に結合する。システインまたはリジン残基は自然に生成することも、人工的に抗体ポリぺプチド分子中に導入することもできる。例えば、システイン残基は組換え技術によって抗体ポリぺプチドのC末端に導入することができ、または抗体ポリぺプチド中の特定の溶媒接近可能な位置における残基は、システインまたはリジンにより置換することができる。
【0093】
抗体は、そのin vivoの半減期を延長することのできる1つまたは複数の分子に連結することができる。これらの分子は、抗原結合部分に干渉すること、または抗原結合部分の立体障害となることがないように、抗原結合部分以外の抗体上の部位において抗体に連結する。典型的には、かかる分子はin vivoにおいて自然に生成し、内因性の機構による分解または排除に抵抗するポリぺプチドである。かかる自然に生成する分子のフラグメントまたは誘導体を用いること、およびいくつかがポリぺプチドでないことは、当業者にとって自明である。半減期を延長する分子は、以下のものから選択することができる:
(a)細胞外マトリックスからのタンパク質、例えばコラーゲン、ラミニン、インテグリンおよびフィブロネクチン;
(b)血液中に見られるタンパク質、例えば、フィブリンα-2マクログロブリン、血清アルブミン、フィブリノーゲンA、フィブリノーゲンB、血清アミロイドタンパク質A、ヘプタグロビン(heptaglobin)、タンパク質、ユビキチン、ウテログロブリン、β-2ミクログロブリン、プラスミノーゲン、リゾチーム、シスタチンC、α-1-アンチトリプシンおよび膵臓kypsin阻害剤;
(c)免疫血清タンパク質、例えば、IgE、IgG、IgM;
(d)輸送タンパク質、例えば、レチノール結合タンパク質、α-1ミクログロブリン;
(e)デフェンシン、例えば、β-デフェンシン1、好中球デフェンシン1,2および3;
(f)血液脳関門または神経組織において見られるタンパク質、例えば、メラノコルチンレセプター、ミエリン、アスコルビン酸輸送体(ascorbate transporters);
(g)トランスフェリンレセプター特異的リガンド-神経医薬融合タンパク質(米国特許第5977307号参照);脳毛細血管内皮細胞レセプター、トランスフェリン、トランスフェリンレセプター、インスリン、インスリン様成長因子1(IGF1)レセプター、インスリン様成長因子2(IGF2)レセプター、インスリンレセプター;
(h)腎臓に局在するタンパク質、例えば、ポリシスチン(polycystin)、タイプIVコラーゲン、有機陰イオン輸送体K1、ハイマン抗原(Heymann's antigen);
(i)肝臓に局在するタンパク質、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、G250;
(j)血液凝固因子X;
(k)α-1アンチトリプシン
(l)HNF1α;
(m)肺に局在するタンパク質、例えば、分泌成分(IgAに結合);
(n)心臓に局在するタンパク質、例えば、HSP27;
(o)皮膚に局在するタンパク質、例えば、ケラチン;
(p)骨特異的タンパク質、例えば、骨形態形成タンパク質(BMPs)例えば、BMP-2、-4、-5、-6、-7(骨形成タンパク質(OP-1)および-8(OP-2)ともいう);
(q)腫瘍特異的タンパク質、例えば、ヒトトロホブラスト抗原、ハーセプチンレセプター、エストロゲンレセプター、カテプシン、例えばカテプシンB(肝臓および脾臓において見られる);
(r)疾患特異的タンパク質、例えば、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子)を含む活性化したT細胞上のみに発現された抗原;破骨細胞形成抑制因子(osteoprotegerin)リガンド(OPGL)Nature 402, 304-309, 1999参照;OX40(TNFレセプターファミリーの一員であり、活性化T細胞上に発現され、およびヒトT細胞白血病ウイルスタイプI(HTLV-I)産生細胞において特異的に上方制御されることが知られている共刺激(costimulatory)のみのT細胞分子-J. Immunol. 2000 Jul 1;16561);263-70;CG6512ショウジョウバ(Drosophila)、ヒトパラプレジン(paraplegin)、ヒトFtsH、ヒトAFG3L2、ネズミftsHを含むメタロプロテアーゼ(関節炎/癌に関連する);酸性線維芽細胞増殖因子(FGF- 1), 塩基性線維芽細胞増殖因子 (FGF-2)、血管内皮増殖因子/血管透過性因子(VEGF/VPF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、アンギオジェニン、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-8(IL-8)、血小板由来内皮増殖因子(PD- ECGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、ミッドカイン血小板由来増殖因子-BB(PDGF)、フラクタルカインを含む血管新生因子;
(s)ストレスタンパク質(熱ショックタンパク質);
(t)Fc トランスポート中に含まれるタンパク質;および
(u)ビタミン、例えばB12、ビオチン。
【0094】
別の態様において、本発明は、有効量の本発明の抗体またはその抗原結合部分、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または希釈剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0095】
「薬学的に許容される賦形剤または希釈剤」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、被覆、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合する同様のものを含む。薬学的に許容される担体の例は、1つまたは複数の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびそれらの組合せを含む。多くの場合において、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましい。
【0096】
用語「有効量」は、特定の疾患もしくは障害、または1つもしくは複数のその症状の処置もしくは改善、および/または疾患もしくは障害の発生の抑制もしくは低減に十分な抗体またはその抗原結合部分(抗体またはその抗原結合部分を含有する医薬組成物を含む)の量をいう。
【0097】
用語「診断上有効な量」または「診断のための有効量」およびその同義語は、特定の疾患もしくは障害および/または1つもしくは複数のその発現を診断するのに十分な抗体またはその抗原結合部分(抗体またはその抗原結合部分を含有する医薬組成物を含む)の量をいい、診断は、疾患もしくは障害の存在を同定すること、および/または疾患もしくは障害の範囲もしくは重症度を検出することを含む。しばしば、診断は疾患もしくは障害を有しない個体に対して観察される、ベースラインまたはバックグラウンドの検出レベルに関連して実施される。上記バックグラウンドまたはベースラインレベルの検出レベル(上昇した検出レベル)は、存在の指標およびいくつかの場合において状態の重症度を示す。
【0098】
処置方法および抗体またはその抗原結合部分の使用(抗体またはその抗原結合部分を含有する医薬組成物を含む)に関して用いられる場合、「それらを必要とする」個体は、処置すべき疾患もしくは障害と診断された個体、または疾患もしくは障害について以前に処置された個体であってもよい。診断方法に関して、「それらを必要とする」個体は疾患もしくは障害を有すると疑われるか、疾患もしくは障害の危険性があるか、または以前に疾患もしくは障害と診断された個体であってもよい(例えば、診断は、期間を通しておよび/または治療と連結した疾患もしくは障害の重症度のモニタリング(例えば、進行性/退行性)を含むことができる)。
【0099】
好ましくは抗体またはその抗原結合部分は、レセプター機能をブロックもしくは刺激するか、または活性可溶性生成物、例えば、1種または複数種のインターロイキン、TNFまたはC5aを中和するのが好ましい。より好ましくは、活性可溶性生成物はヒトTNF-αである。
【0100】
組成物は、液体、半固体または固体の投与形態、例えば液体溶液(例えば、注射可能な溶液および注入可能な溶液)、分散体または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソームまたは坐薬を含む種々の形態であってもよい。好ましくは、組成物は予防接種用の注射可能な溶液の形態である。投与は、静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内、経皮、髄腔内、および動脈内に行うことができる。好ましくは、投与形態は約0.001mgから10mg/kg体重の範囲での、毎日、毎週、2週間もしくは3週間毎、または毎月の投与であり、より好ましくは約0.05から約5mg/kg体重での毎週の投与である。
【0101】
組成物は、無菌注射溶液調製用の無菌粉末として製剤化されていてもよい。
【0102】
ある実施形態においては、化合物を急速放出から保護する担体、例えば、移植、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤を用いて活性化合物を調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸等の相溶性ポリマーを用いることができる。
【0103】
組成物はまた、経口投与用に製剤化することができる。この実施形態において、抗体は硬質または柔質の外殻ゼラチンカプセル中に封入するか、錠剤中に圧縮するか、または対象の食餌中に直接組み込むことができる。
【0104】
組成物は直腸投与用に製剤化してもよい。
【0105】
抗体は、in vitroまたはin vivoで、選択された細胞に結合し、かつ同定するため、またはin vivoで、選択された細胞に結合し、かつ破壊するため、in vivoで、選択された細胞に侵入し、かつ破壊するために投与することができる。代わりに、抗体を免疫性毒として用いることができ、細胞毒性剤、例えば毒性薬もしくは化学療法薬を特定の細胞タイプ、例えば腫瘍細胞に送達することができる。免疫性毒の調製は当業者によく知られている。
【0106】
好ましい実施形態において、組成物はヒトに投与される。
【0107】
本発明はまた、特定の疾患または障害に関連する抗原を検出するための診断用途における抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。
【0108】
より好ましくは、第3の態様によれば、本明細書に記載するように、本発明は、特定の疾患または障害に関連する抗原を有する対象の診断方法において、前記対象に抗体、その抗原結合部分または医薬組成物の診断上の有効量を投与することを含む、抗体またはその抗原結合部分の使用を提供する。好ましくは対象はヒトである。
【0109】
好ましくは標識されている抗体またはその抗原結合部分は、生物学的試料、例えば血清または血漿中の抗原の存在、または抗原(例えば、TNF-α)の上昇レベルを、慣用の免疫測定法、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)または組織免疫組織化学(tissue immunohistochemistry)用いて検出するために使用することができる。
【0110】
好ましくは、キメラ抗体またはその抗原結合部分に結合する抗原は、癌胎児性抗原、EpCAM、Lewis-Y、Lewis-Y/b、PMSA、CD20、CD30、CD33、CD38、CD52、CD154、EGF-R、Her-2、TRAILおよびVEGFレセプターを含む腫瘍関連抗原;CD3、CD4、CD25、CD40、CD49d、MHCクラスI、MHCクラスII、GM-CSF、インターフェロン-γ、IL-I、IL-12、IL-13、IL-23、TNF-α、およびIgEを含む免疫もしくは炎症疾患または免疫もしくは炎症障害に含まれる抗原;糖タンパク質IIb/IIIa、P-糖タンパク質、プリンレセプターおよびCD11a、CD11b、CD11c、CDl8、CD56、CD58、CD62またはCD144を含有する接着レセプターを含む宿主細胞上に発現される抗原;エオタキシン(eotaxin)、IL-6、IL-8、TGF-β、C3a、C5a、VEGF、NGFおよびそれらのレセプターを含有する、サイトカイン、ケモカイン、成長因子もしくは他の可溶性生理学的調節物質またはそれらのレセプターを含む抗原;β-アミロイドおよびプリオンを含む中枢神経系疾患または障害に含まれる抗原;呼吸器合胞体ウイルスタンパク質F、炭疽毒素、ガラガラヘビ毒、およびジゴキシンを含有する、非ヒト由来抗原、例えば、微生物、ナノ微生物またはウイルスの抗原または毒素からなる抗原から選択される、天然の、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、脂質または糖脂質である抗原に結合し;キメラ抗体は、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用するか、補体もしくはキラー細胞(例えば、NK細胞)の作用により望ましくない細胞(例えば、抗CD4)を減少させる(死滅させるか排除する)ことに対し活性であるか、または細胞毒性薬として活性であるか、または食細胞のFcレセプターと結合するか、もしくはその標的の生物学的活性を中和する。
【0111】
本発明による抗ヒトTNF-α抗体またはその抗原結合部分は、TNF-α活性の阻害が必要な細胞培養用途にも用いることができる。
【0112】
本発明はまた、それらを必要とする対象に抗体またはその抗原結合部分がTNF-αに結合する、本明細書に記載の、本発明の抗体、その抗原結合部分または医薬組成物を投与することを含む、ヒト対象におけるヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患または障害の処置方法を提供する。
【0113】
本明細書で用いる用語「ヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患または障害」は、疾患もしくは障害において、疾患もしくは障害に罹患している対象におけるTNF-αの存在が示されるか、または疾患もしくは障害に関与すると疑われるか、疾患もしくは障害の病態生理学に含まれるか、または疾患もしくは障害を悪化させる因子である、疾患もしくは障害を含むことを意味するものとする。したがって、TNF-α活性が有害な疾患もしくは障害は、TNF-α活性の阻害が疾患もしくは障害の症状および/または進行を緩和すると予測される疾患もしくは障害である。かかる疾患もしくは障害は、例えば、疾患もしくは障害に罹患している対象の生物学的液体中のTNF-αの濃度の上昇により証拠立てることができ(例えば、対象の血清、血漿、関節液等におけるTNF-α濃度の上昇)、例えば、TNF-αに対して特異的な本発明の抗体等を用いて検出することができる。
【0114】
ヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患もしくは障害は、疾患もしくは障害に罹患している対象中のTNF-αの存在が、疾患もしくは障害の病態生理に関与するか、または疾患もしくは障害を悪化させる因子であると示されるか、または疑われる疾患もしくは障害を含むことを意味する。好ましくは、ヒトTNF-α活性により特徴付けられる疾患もしくは障害は、敗血性ショック、内毒素性ショック、グラム陰性敗血症および毒素性ショック症候群を含む敗血症;関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、乾癬および痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎およびネフローゼ症候群を含む自己免疫疾患;感染による熱および筋痛症(myalgias)ならびに感染に伴う悪液質を含む感染性疾患;移植片対宿主拒絶反応;腫瘍の増殖または転移;成人呼吸窮迫症候群、ショック肺、慢性炎症性肺疾患、肺サルコイドーシス、肺線維症および珪肺症を含む肺疾患;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性大腸炎;心疾患;炎症性骨疾患、肝炎、凝固障害、熱傷、再かん流傷害、ケロイド形成および瘢痕組織形成からなる群から選択される。
【0115】
補助活性化合物を該組成物中に組み込むこともできる。抗体または抗体結合フラグメントは、1種または複数種の追加の治療剤、例えば、サイトカインまたは細胞表面分子または代わりにヒトTNF-αの産生または活性を阻害する1種または複数種の化学剤等の他の標的に結合する抗体を用いて共製剤化されてもよいし、および/または同時に、分離して、連続して投与されてもよい。
【0116】
別の態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明の抗体またはその抗原結合部分、または治療上有効な量の抗体またはその抗原結合部分を含有する医薬組成物と、包装および使用説明書とを含むキットを提供する。ある実施形態において、使用説明書は治療上有効な量の本発明の抗体またはその抗原結合部分を効果的に投与する方法についての説明を含む。
【0117】
本明細書を通して、語「含む(comprise)」またはその変形、例えば「含有する(comprises)」もしくは「含有している(comprising)」は、上記の要素、整数もしくは段階、または要素の群、複数の整数もしくは段階を含むが、他の要素、整数もしくは段階、または要素の群、複数の整数もしくは段階を除外しないことを示唆すると理解される。
【0118】
本明細書において述べたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文献のいかなる検討、作用、材料、装置、製品等も専ら本発明についての状況を提供するものである。これらの事項のいかなるまたはすべてのものは、本願の各クレームの優先日より前にオーストラリアまたは他の地において存在する、先行技術の一部を形成し、または本発明に関連する分野における技術常識であることを認めるものではない。
【0119】
本発明の性質をより明確に理解するために、それらの好ましい形態を限定されることのない以下の実施例により説明する。
【実施例1】
【0120】
マーモセットの可変領域のヒト定常領域への融合
材料および方法
遺伝子合成およびクローニング
MOG特異的マーモセット誘導化抗体のVH鎖(アクセッション番号:AAM54057, 配列番号1)を、ヒト定常領域(ヒトIgGl 重鎖CH1, ヒンジ, CH2 & CH3 ドメイン(NCBIアクセッション番号P01857等)(配列番号2))を用いて発現した。これは、遺伝子最適化技術(Gene Optimizer technology)を用いて哺乳動物細胞の発現を最適化し、および合成オリゴヌクレオチド(GeneArt, ドイツ)の組合せにより新たに(de novo)合成されたDNA配列にアミノ酸配列を逆翻訳することにより達成した。DNA配列を最適化する際に、特定の制限酵素の部位Asc fおよびTth l 111を、VH領域のさらなる操作を可能にするために含有した。遺伝子合成の後に、Kozak配列を含むすべての配列をpEE6.4 GS付属ベクター(Lonza Biologies)の多重クローニング部位中にクローン化した。MOG特異的マーモセット誘導化抗体のVL鎖(アクセッション番号:AAM54058, 配列番号3)は、ヒトカッパ軽鎖定常領域(NCBI アクセッション番号AAA58989等)(配列番号4)により発現した。軽鎖(VLカッパ)アミノ酸配列をコードするDNAは、上記の重鎖と同様に調製した。DNA配列の最適化および合成の際に、特定の制限酵素の部位Bsi WI/Rsr IIを、VL領域のさらなる操作を可能にするために含有した。遺伝子合成の後に、Kozak配列を含むすべての配列をpEE12.4 GS発現ベクター(Lonza Biologies)の多重クローニング部位中にクローン化した。安定した発現のために、2つの単一の遺伝子ベクター(pEE6.4- VH-IgG1およびpEE12.4-VL-Kappa)を組み合わせて二重遺伝子ベクターとした。これは、Not IおよびBamH Iを用い、pEE6.4骨格からの重鎖発現カセット(hCMV-MIE プロモーター, Kozak配列, マーモセットVH, ヒト定常領域およびSV40 polyA部位)を消化することにより行った。得られたフラグメントをNot IおよびBamH I部位を用い、AB 138(配列番号5および6)の重鎖および軽鎖の両方を発現するベクターを作製する、軽鎖発現カセット(hCMV-MIEプロモーター、Kozak配列、マーモセットVL、ヒトカッパ定常領域およびSV40 polyA部位)のpEE12.4-VL-カッパベクター下流中にサブクローン化した。
【0121】
トランスフェクション
各トランスフェクションについて、175μlのリポフェクトアミン2000を6ウェルプレートのウェル中の5mLのOptimem I媒体に加えた(Invitrogen カタログ番号, 11668-027および31985-062)。2番目のウェル中の70μlの発現ベクター(70μg)を5mLのOptimem I媒体に加えた。室温で5分間のインキュベーション後、2つのウェル中の内容物を互いに混合し、さらに20分間のインキュベーションを行った。この2番目のインキュベーションの後、全体のトランスフェクション混合物をCHOK1SV細胞を含有するT175組織培養フラスコに加えた。細胞を72から96時間インキュベートし、上清を採取した。上清を4000×gで5分間遠心分離し、ペレット状の細胞残屑とし、0.22μmのカートリッジフィルターを通して無菌ろ過した。
【0122】
抗体精製
上清をHiTrapプロテインAカラム(Amersham Biosciences, カタログ番号: 17-0402-01)に流速1mL/分で3回通した。次に、カラムを20mMのリン酸ナトリウムにより1mL/分で40分間洗浄した。集めたフラクションを用いて抗体を0.1Mのクエン酸pH3.5で溶出させ、直ちに1Mのトリス-HCl pH9.0で中和した。次に、抗体試料をPD-10カラム(Amersham Biosciences, カタログ番号: 17-0851-01)で脱塩した。SDS-PAGEおよびサイズ排除HPLCによる抗体の分析により、正しい分子量、組み立てられた抗体の存在および抗体の濃度を確認した。
【0123】
ウェスタンブロット分析
M26抗原、ラットMOG(ミエリン-オリゴデンドロサイト糖タンパク質)への結合を保持するためのAB138の能力をウェスタンブロットにより試験した。130mgのラット脊髄(IMVS、オーストラリア)を1.8mlのCelLytic M 細胞溶解試薬(SIGMA, C2978)中でホモジナイズし、4℃で30分間インキュベートした。さらに、溶解物を27g 1/2針で数回引き、次いで4℃、13000gで30分間遠心分離することによりホモジナイズした。ペレットおよび上清をSDS-PAGE試料緩衝液(125mMトリス-HCl pH6.8,5%SDS,0.25%ブロモフェノールブルー,25%グリセロール)中に希釈した。これとともに、200μlのCHOKISV細胞を1ml当り1×106個の生細胞において、13000×g、4℃で1分間遠沈し、200μlのCelLytic M 細胞溶解試薬(SIGMA)中に再懸濁させた。4℃および13000×gで30分間遠心分離した後、上清を適当量のSDS-PAGE試料緩衝液と混合した。すべての試料を、試料の分子量マーカーの試料とともに4〜20%のNovex pre-castゲル(Invitrogen, オーストラリア)に120Vで2時間流した。次に、ウェスタンブロット装置を用い、20%のメタノールを含む1×トリス-グリシン緩衝液(BioRad, Cat 161+-0771)中、4℃、250mAで2時間、タンパク質をPVDF(BioRad, オーストラリア)に転写した。膜を5%のスキムミルク粉末を含有するPBSを用い、室温で1時間インキュベーションすることによりブロックした。次に、膜を1×PBSで3回洗浄し、AB138を10μg/mL含有するPBSを用い、4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後1×PBSで1:5000に希釈された、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)HRPコンジュゲート(conjugate)(Sigma, オーストラリア)を用いて膜を室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、結合した抗体をECLウェスタンブロット分析システム(Amersham Biosciences Cat: RPN2109)を用いて検出した。非特異的結合事象を同定するため、AB138をアイソタイプが一致した、特異性のない陰性対照抗体(抗TNFαモノクローナル抗体)と置き換えて平行実験を行った。
【0124】
結果
タンパク質発現および精製を行った後、AB138についてウェスタンブロット分析を実施し、ラットMOGに対する結合親和性が保持されているか否かを測定した。AB138は、ラット脊髄の澄明な(cleared)溶解物中に存在する約25kDaのサイズのタンパク質に結合し、CHOKISVの澄明な溶解物中に存在しないタンパク質と結合した(図1)。陰性対照抗体は、いずれの溶解物の存在するタンパク質にも結合せず、AB138と25kDaのサイズを有するタンパク質との間の相互作用が、ヒト定常領域に関連する人工物または非特異的結合物に関係しないことを示した(図2)。このタンパク質は、単一の配列(24.9kDa)を差し引いたラットMOGの予測されたサイズと一致する。この結果は、ラットMOGに対する親和性を保持したAB138がラット脊髄溶解物中に存在し、マーモセットヒト融合抗体が抗原結合能を保持できることを示す。
【0125】
組換えDNA技術、およびELISA、Biacore分析等の結合分析において測定される、ラットMOGに結合するAB138の能力を用いてラットMOGが製造できることは、当業者により理解され得る。
【実施例2】
【0126】
人工のモノクローナル抗体
1.専門用語
ドナー配列は、新世界霊長類以外の種から誘導される任意のイムノグロブリン配列として定義される。
アクセプター配列は、新世界霊長類から誘導されるイムノグロブリン配列として定義される。
共通残基(common residue)は、ある種について入手可能なイムノグロブリン配列と比較することにより決定したとき、所与のアミノ酸位置において共通(例えば、>30%)の残基である。
非共通残基は、ある種について入手可能なイムノグロブリン配列と比較することにより判定したとき、所与のアミノ酸位置において非共通(例えば、≦30%)の残基である。
人工は、構造的結合特性が結合活性を保持するように、ドナー配列の構造的結合特性をアクセプター配列に移す方法である。
フレームワークアミノ酸は、抗体可変領域中に位置するが、CDR中には位置しないアミノ酸として定義される。
【0127】
2.略語
CDR相補性決定領域、MOG、ミエリン/オリゴデンドロサイト糖タンパク質TNFα、腫瘍壊死因子-α;VH、可変重鎖;VL、可変軽鎖;BSA、ウシ血清アルブミン。
【0128】
3.人工的方法
A.モノクローナル抗体(新世界霊長類モノクローナル抗体以外)の製造。
B.高アミノ酸配列相同性および予測される低免疫原性に基づく、新世界霊長類から誘導されるアクセプターイムノグロブリン配列の選択。
C.Kabatの番号方式によるドナーおよびアクセプターの両方のイムノグロブリン配列についてのCDRの同定("Sequences of Proteins of Immunological Interest" E. Kabat et al., U.S. Department of Health and Human Services, 1983 参照)。
D.ドナーおよびアクセプター配列の配置による、フレームワーク配列における差異の判定。
E.3次元モデル化によるドナーイムノグロブリン構造の予測、およびCDRと比較して異なるフレームワーク配列の近接の判定。下記の置換基準1&2による、アクセプター残基のドナー残基による任意の置換。
F.完全なアクセプターCDR配列の完全なドナーCDR配列による置換。
G.ドナー/アクセプターフレームワークアミノ酸配列と、生殖細胞系および利用可能なアクセプターイムノグロブリンフレームワークアミノ酸配列との比較による、共通残基の判定。下記の置換基準3&4による、アクセプター残基のドナー残基による任意の置換。
H.アクセプター可変領域およびヒト定常領域を有するキメラ抗体の産生。
I.人工的イムノグロブリンタンパク質の発現。
J.人工的イムノグロブリンタンパク質のアッセイ分析。
【0129】
置換基準:
フレームワーク配列の違いに基づく人工的な抗体の生成において、対応するドナーアミノ酸によるアクセプターアミノ酸の置換は、以下の基準に適合する位置において行うことができる:
(i)ドナー残基が、3次元モデル化に基づいて抗原との相互作用が可能であると予測される場合;
(ii)ドナー残基が、3次元モデル化に基づくドナーCDRの3.2Å以内に位置していると判定される場合;
(iii)ドナー残基が、アクセプター種イムノグロブリン配列において共通する場合;
(iv)ドナー残基が、ドナーの生殖細胞系において共通しない場合。
【0130】
人工的抗体は、ヒトの配列および予測される低免疫原性に相当するアミノ酸配列の相同性に基づいて、適切なアクセプター配列を選択することにより、ヒトにおいて非免疫原性または低免疫原性であると予測される。人工的抗体は、ドナーイムノグロブリンに類似する結合親和性を有するドナーイムノグロブリンの抗原に結合する。人工的抗体の結合親和性は、親和成熟方法によりさらに増大することができる(R. A. Irving et al. Journal of Immunological Methods, 248, 31-45 (2001))。
【0131】
ネズミ抗体AB164の抗体AB197への人工的製造
4.ドナーイムノグロブリン配列
ヒトTNF-αに対するモノクローナル抗体AB164を分泌するネズミハイブリドーマの製造をハイブリドーマ技術を用いて行い、ドナーイムノグロブリン配列(配列番号:7および8)として供給した。
【0132】
5.アクセプターイムノグロブリン配列の選択
ラットMOG(ミエリン/オリゴデンドロサイト糖タンパク質)に対するモノクローナル抗体の配列をPubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から得、アクセプター配列として使用した。このモノクローナル抗体は、一般のマーモセット(白ミミマーモセット(white-tuffed-ear marmoset))(Callithrix jacchus)、新世界霊長類から誘導した。VH鎖(アクセッション番号: AAM54057、配列番号1)およびVL鎖(アクセッション番号:AAM54058、配列番号3)のフレームワーク領域は、すべての対立遺伝子の1%の閾値分析を用いる、MHCクラスII結合予測プログラムPropred(http://www.imtech.res.in/raghava/propred)により、ヒトにおいて予測される免疫原性について試験した。MOG特異抗体のVH鎖(アクセッション番号:AAM54057、配列番号1)およびVL鎖(アクセッション番号:AAM54058、配列番号3)の配列(CDRを除く)のBLAST解析は、最も近いヒト相同体重鎖配列(アクセッション番号:AAH 19337.1、配列番号9)および軽鎖配列(アクセッション番号:BAC53922.1、配列番号10)を同定した。
【0133】
特に、この予測分析は、選択されたアクセプター重鎖可変フレームワーク領域がヒトの同等物より低免疫原性であるとみられることを示す。アクセプター重鎖可変領域は、フレームワーク、LRPEDTAVY中に1つのぺプチドを有し、それは、対立遺伝子DRB1_0101、DRB1_0102、DRB1_03O9によりコードされるMHCクラスIIに結合すると予測される。一方で、最も近いヒト相同体重鎖は3つのぺプチドをフレームワーク中に有し、それはMHCクラスIIに結合すると予測された。これは、対立遺伝子DRB1_0101、DRB1_0102およびDRB1_0309によりコードされるMHCクラスIIに結合すると予測されるぺプチドWVRQAPGQGL;対立遺伝子DRB1_0401、DRB1_0408、DRB1_0421、DRB1_0426、DRB1_1101、DRB1_1128、DRB1_1305によりコードされるMHCクラスIIに結合すると予測されるぺプチドVYMELTS、および対立遺伝子DRB1_0401、DRB1_0421、DRB1_0426によりコードされるMHCクラスIIに結合すると予測されるぺプチドLRSEDTAVYを含有する。
MOG特異的軽鎖可変フレームワーク領域および最も近いヒト相同体は非免疫原性であると予測された。
【0134】
6.ドナー/アクセプター可変領域中のCDRの同定
Kabat("Sequences of Proteins of Immunological Interest" E. Kabat el al., U.S. Department of Health and Human Services, 1983 参照)の規則を用い、AB164(配列番号7および8)のVHおよびVL鎖およびマーモセットMOG特異イムノグロブリン(配列番号1および3)のVHおよびVL鎖についてCDRを判定した(表1)。
【0135】
【表3】

【0136】
7.ドナーおよびアクセプター配列の配置
VH鎖配置
AB164およびMOG特異的イムノグロブリン(配列番号:7および1)のVH鎖に対するアミノ酸配列を配置した(図3)。残基の数は、MOG特異的イムノグロブリンVH鎖のCDR3中に位置する他のアミノ酸を有する残基の数によって異なる。2つの配列間の配列同一性は63.6%である。CDRのアミノ酸配列は、ドナーおよびアクセプター抗体の異なる抗原特異性から予想されるとおり異なる。フレームワーク領域中の配列間で22個のアミノ酸が異なる。
【0137】
VL鎖配置
AB164およびMOG特異的イムノグロブリン(配列番号:8および3)のVL鎖に対するアミノ酸配列を配置した(図4)。残基の数は、AB164のCDR1中に位置する4つの追加のアミノ酸によって異なる。2つの配列間の配列同一性は62.3%である。CDRのアミノ酸配列は、ドナーおよびアクセプター抗体の異なる抗原特異性から予想されるとおり異なる。フレームワーク領域中の配列間で23個のアミノ酸が異なる。
【0138】
8.AB164のVHおよびVL鎖の予測される3次元モデル化
SWISS-PROT3次元予測モデルソフトウェアおよびDeep View(http://swissmodel.expasy.org/)を用い、AB164のVHおよびVL鎖の3次元モデルを決定した。CDRを同定した。前述の配列による決定のように、フレームワーク領域におけるドナーおよびアクセプター配列間のアミノ酸の差異を同定し、それらのCDRへの近接を予測した(表3および4)。
【0139】
9.アクセプターCDRのドナーCDRによる置換
MOG特異的イムノグロブリンのVHおよびVL鎖のCDRをAB164のVHおよびVL鎖のCDRにより置き換えた(表2)。
【0140】
【表4】

【0141】
10.ネズミ生殖細胞およびマーモセットIg配列中の共通残基の決定ならびに人工的フレームワーク配列の選択
VH
VH領域のネズミ生殖細胞配列は、
http://www.ibt.unam.mx/vir/vh_mice_directory.html#GL.
において見ることができる。
マーモセットVH配列は、Callithrix jacchuxからのすべてのVHアミノ酸配列を調べ、これらの配列を配置することにより、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Protein&itool=toolbar
から得ることができる。位置合わせツールを用い、ネズミ生殖細胞と利用可能なCallithrix jacchux配列の両方における共通残基を、ドナーおよびアクセプター配列間のフレームワーク配列中のアミノ酸の差異が生じた各アミノ酸位置において決定した(表3)。
【0142】
【表5】

【0143】
各ネズミ生殖細胞および利用可能なマーモセットVH配列中の各位置における共通残基を決定した。特定の基準を満たす選択された位置において、アクセプターアミノ酸をドナーアミノ酸により置換し、以下の基準番号を与える:
1.ドナー残基が、3次元モデル化に基づいて抗原との相互作用が可能であると予測される場合;
2.ドナー残基が、3次元モデル化に基づいてドナーCDRの3.2Å以内にあると判定される場合;
3.ドナー残基が、アクセプター種イムノグロブリン配列において共通残基である場合;
4.ドナー残基が、ドナー生殖細胞において共通していない場合。
基準を満たさない位置において、アクセプター配列を使用し、基準をNoneとした。
注意:非共通残基は灰色の陰影を付し、置換は太字で表す。*ネズミ生殖細胞は、113位における配列データがなく、ここではマーモセットの配列を用いた。
【0144】
要約すると、アクセプター配列がドナー配列により置き換えられる、8個のフレームワークアミノ酸置換が存在した。3次元モデル化に基づいてドナー残基がドナーCDRの3.2Å以内にあると判定されたことから、アクセプター配列がドナー配列により置換される4個のアミノ酸が存在した。ドナー残基が、CDR-2に非常に近接(しかし、3.2Å以上)しているループの回転上に位置する抗原と相互作用することができると予測されたことから、2つのアミノ酸置換が行われた。さらに、ドナー残基が、利用可能なアクセプター種イムノグロブリン配列において共通することが見出されたことから、2つのアミノ酸置換が行われた。さらなる変更を97位においても行うことができた。
【0145】
VL
VL領域のネズミ生殖細胞配置は、http://www.ibt.unam.mx/vir/vk_mice_directory.html#GLvkにおいて見ることができる。
マーモセットVL領域は、Callithrix jacchux からのすべてのアミノ酸配列を調べ、これらの配列を配置することにより、http://www.ncbi.nln.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Protein&itool=toolbar から得ることができる。位置合わせツールを用い、ネズミ生殖細胞および利用可能なマーモセットイムノグロブリン配列の共通残基を、ドナーおよびアクセプター配列間のフレームワーク配列中のアミノ酸の差異に関連する各アミノ酸位置において決定した(表4)。
【0146】
【表6】

【0147】
各ネズミ生殖細胞および利用可能なマーモセットVL配列中の各位置における共通残基を決定した。各位置において、上記のようにして得られたフレームワーク配列中の差異を選択するための基準を適用した。特定の基準を満たす位置において、アクセプターアミノ酸をドナーアミノ酸により置き換え、以下の基準番号を与える:
1.ドナー残基が、3次元モデル化に基づいて抗原との相互作用が可能であると予測される場合;
2.ドナー残基が、3次元モデル化に基づいてドナーCDRの3.2Å以内にあると判定される場合;
3.ドナー残基が、アクセプター種イムノグロブリン配列において共通残基である場合;
4.ドナー残基が、ドナー生殖細胞において共通していない場合。
基準を満たさない位置において、アクセプター配列を使用し、基準をNoneとした。
注意:非共通残基は灰色の陰影を付し、置換は太字で表す。*ネズミ生殖細胞は、104位以上の配列データがなく、ここではマーモセットの配列を用いた。
【0148】
要約すると、3次元モデル化に基づいてドナー残基がドナーCDRの3.2Å以内にあると測定されたので、アクセプター配列がドナー配列により置換された、1つのフレームワークアミノ酸置換が存在した。
【0149】
材料および方法
AB164ハイブリドーマは、ヒトTNF-αにより免疫されたマウスからの脾臓細胞と、骨髄腫細胞株SP2/0-Agl4との標準的な方法による融合により産生した(Fazekas de St. Groth, S., el al. Journal of Immunological Methods 35: 1-21 (1980); Sugasawara, R., Journal of Tissue Culture Methods 12: 93-95 (1989))。
【0150】
11.モノクローナル抗体AB164のシークエンシング
全体のRNA(tRNA)を製造元の指示に従い、RNeasy Mini またはMidiカラム(QIAgen)を用いて1×107から1×108個の生細胞から抽出した。定量後、製造元の指示に従い、オリゴ(dT)プライマーおよびSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いる第1のらせんcDNA合成に対する鋳型としてtRNAを用いた。最終的に、RNase Hを用いtRNAを分解し、残存する単一らせんcDNAを末端転移酵素(terminal transferase)およびdGTP(Roche)を用い、poly-G 尾部により標識した。
【0151】
PCR反応は、ヘラクレス(Herculase)(Stratagene)、高忠実ポリメラーゼ(high fidelity polymerase)混合物を用いて行った。各場合にオリゴ(dC)をIgG1重鎖特異的フォワードプライマー(forward primer)またはカッパ軽鎖特異的リバースプライマー(reverse primer)として使用した。30サイクルのPCR反応の後、Taqポリメラーゼの存在下でインキュベートし、過剰なA塩基を加えた。得られたPCR生成物をpGemT-Easy (Promega)中にクローン化し、コンピテントTop 10 E. coli 細胞(Invitrogen).中に形質転換した。一晩培養した単一のコロニーからQIAquick Miniprepカラム(QIAgen) を用い、プラスミドを抽出し、定量した。100から500 ngを6.4pmolのpUC3 フォワードまたはpUC3リバースプライマーのいずれかにより2通りに混合し、BigDye v3.1 chemistry (AppliedBiosystems)を用いるサイクルのシークエンシングに供した。電気泳動図をABI PRISM 3700 DNAアナライザーで解析し、誘導された配列を配置した後、手動補正による異常塩基コールを行った。4つの一致する配列(2つのフォワードおよび2つのリバース)が得られると、抗体可変領域の配列を確認した。これらの配列は、AB164(配列番号: 7および8)の重鎖または軽鎖のアミノ酸配列に翻訳した。
【0152】
12.AB138(MOG特異的マーモセット由来可変領域-ヒト定常領域キメラ)およびAB103(抗TNFαネズミ可変領域-ヒト定常領域キメラ)の作製
アクセプター配列のVH領域(アクセッション番号:AAM54057、配列番号:1)をヒト定常領域(ヒトIgGI重鎖CH1、ヒンジ、CH2&CH3ドメイン(例えば、NCBIアクセッション番号PO 1857)(配列番号:2))を用いて発現させた。アクセプター配列のVL領域(アクセッション番号:AAM54058, 配列番号:3)をヒトカッパ軽鎖定常ドメイン(例えば、NCBIアクセッション番号:AAA58989)(配列番号:4)を用いて発現させた。得られたキメラ抗体はAB138(配列番号:5および6)として登録された。この抗体は、VHおよびVL鎖に変更を加えた鋳型として用いた。
完全なネズミAB164(配列番号:7および8)からのVHおよびVL領域を上記の同じヒト定常領域を用いて発現させた。キメラ抗体を登録AB103とした。
【0153】
AB103のクローニング
完全なネズミAB164(配列番号:7および8)からのVHおよびVL領域をDNA配列に逆翻訳し、該DNA配列はGeneOptimizer技術を用い、哺乳動物細胞発現を最適化し、および合成オリゴヌクレオチド(GeneArt, Germany)の結合により初めから(de novo)合成した。VH遺伝子に対し、各配列は、Asc I部位、Kozak 配列 (GCCACC)、およびヒトIgGガンマリーダー配列(アミノ酸配列MEWSWVFLFFLSVTTGVHS)を有する5'末端に並んで位置した。3'末端において、必要なアミノ酸配列を損なうことなく、Tth111I制限酵素部位を導入するため、DNA配列を操作した。VL遺伝子に対し、各配列は、Bsi WI部位、Kozak 配列 (GCCACC)、およびヒトカッパリーダー配列(アミノ酸配列MSVPTQVLGLLLLWLTDARC)を有する5'末端に並んで位置した。3'末端において、必要なアミノ酸配列を損なうことなく、Rsr II制限酵素部位を導入するため、DNA配列を操作した。de novo遺伝子合成の後、可変領域をpCRScriptベクター(Stratagene)中にクローン化し、VHおよびVL配列のそれぞれについてAsc I/Tth 1111およびBsi WI/Rsr II消化により遊離させた。PEE6,4-VH-IgG1消化のためのAsc I/Tth 1111により、およびpEE12.4-VL-カッパ消化のためのBsi WI/Rsr II により調製したAB138を発現するため、遊離した配列は、作製したベクターから誘導した単一遺伝子ベクター骨格中に結紮した。
【0154】
各遺伝子は、Promega(カタログ番号 M8221)からのLigaFast Rapid DNA Ligation Systemを用い、調製された骨格中に結紮した。結紮はOne Shot Top 10(化学的コンピテント細胞(Invtrogen カタログ番号 C4040-03)中に形質転換し、標準的技術により陽性クローンを同定した。安定な発現のために、上で概説したように、二重遺伝子ベクターを調製した(実施例1)。得られる大量のベクターを、QIAフィルターmidiprepカラム(QIAgen カタログ番号12243)を用いるmidiprepの一晩の培養により調製した。ベクターを1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)(それぞれSigma カタログ番号 E7023-500MLおよびS2889)を含有する100%エタノール中で20μg沈殿させることにより、トランスフェクション用に調製した。70%エタノールで洗浄後、ベクターを使用濃度0.5μg/μlで、40μlのT.E. pH8.0(Sigma カタログ番号. T9285-100ML)中に再懸濁した。
【0155】
13.人工的モノクローナル抗体AB197の作製
アクセプター配列として、MOG特異的イムノグロブリンを使用し、フレームワーク中のCDRおよび特定の残基をそれらのドナー配列(AB164)で置き換えることにより、人工的VHおよびVL抗体配列を決定した。これらの可変領域タンパク質配列はヒトの定常領域(配列番号:2および4)を用いて発現した。得られた人工的抗体をAB197(配列番号:11および12)として登録した。
【0156】
表5は、各抗体に対するCDR、VH/VLフレームワークおよび定常領域の種の起源を記載する。
【0157】
【表7】

【0158】
AB197のクローニング
アクセプター配列のフレームワーク中のCDRおよび所定の残基をドナー配列のそれらと置き換えることにより、人工的なVHおよびVL抗体配列を決定した(配列番号:11および12)。抗体配列をDNA配列に逆翻訳し、合成オリゴヌクレオチドの結合により、de novo合成した(GeneArt、ドイツ)。合成の際にクローニングを可能にし、かつ上述のようにAB197を発現する二重遺伝子ベクターを生成するため、関連する制限酵素部位を配列中に組み込んだ(実施例1)。
【0159】
14.AB103、AB197およびAB164の発現
AB103およびAB197のトランスフェクション
各トランスフェクションに対し、175μlのリポフェクタミン(Lipofectamine)2000を6ウェルプレートのウェル中の5mlのOptimem 1 媒体(Invitrogen カタログ番号. 11668-027および31985-062)に加えた。2番目のウェルにおいて、70μlの発現ベクター(70μg)を5mlのOptimem 1媒体に加えた。5分間室温でインキュベーションした後、2つのウェルの内容物を一緒に混合し、さらに20分間インキュベーションした。この2番目のインキュベーションの後、全体のトランスフェクション混合物をCHOKlSV 細胞を含有するT175組織培養フラスコに加えた。細胞を72から96時間インキュベートし、上清を採取した。上清を4000×gで5分間遠心分離し、ペレット状の細胞残屑とし、0.22μmのカートリッジフィルターを通して無菌ろ過した。
【0160】
ネズミモノクローナル抗体AB164の製造
AB164を発現するハイブリドーマ細胞を標準的組織培養法を用いて培養し、上清を採取し、4000×gで5分間遠心分離し、ペレット状の細胞残屑とした後、0.22μmのカートリッジフィルターを通して無菌ろ過した。
【0161】
AB103、AB197およびAB164の抗体精製
上清をHiTrapタンパク質Aカラム(Amersham Bioscicnces, カタログ番号:17-0402-01)に1ml/分の流速で3回通した。カラムを20 mMのリン酸ナトリウムで、1ml/分で40分間洗浄した。抗体を0.1 Mクエン酸pH3.5で溶出させ、集めたフラクションを1Mトリス-HCl pH9.0で直ちに中和した。次に抗体試料をPD-10カラム(Amersham Biosciences、カタログ番号:17-0851-01)で脱塩した。SDS-PAGEおよびサイズ排除HPLCによる抗体の分析により、分子量を確認し、作製した抗体の存在および抗体の濃度を確認した。
【0162】
15.アフィニティ結合分析
方法
ELISA法
TNF-α(Peprotech カタログ番号: 300-01A)を炭酸コート緩衝液(carbonate coating buffer)(10 mMのリン酸二ナトリウム、20 mMのリン酸水素ナトリウム pH9.6)で1μg/mLに希釈した。100μLのこの溶液を96ウェルプレートの各ウェルに加え、湿潤容器中、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(0.01M PBS pH7.2、0.05% Tween-20)により3回洗浄し、0.01 MのPBS pH7.2により3回洗浄した。次に、200μLのブロック緩衝液(1% w/v BSA を含む0.01M PBS pH7.2)を各ウェルに加え、湿潤容器中、プレートを25℃で1時間インキュベートすることによりウェルをブロックした。6.00μg/mLから0.0578ng/mLの範囲をカバーする滴定曲線を生成するのに十分な抗体希釈液で(1%w/v BSA、0.05% Tween-20を含む0.01M PBS pH7.2)抗体を希釈した。ウェルを抗体とともに25℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記のように洗浄した。抗体希釈液により1:2000とした抗IgG H+L抗体HRP複合体(Zymed, カタログ番号:81-71200)100μLをAB197およびAB103の結合を検出するのに用いた。抗体希釈液により1:2000とした抗ネズミイムノグロブリン抗体HRP複合体(Dako、カタログ番号:P0260)100μLをAB164の結合を検出するのに用いた。バックグラウンド吸収を測定するために抗体希釈液のみを有するウェルを用いた。湿潤容器中、25℃で1時間インキュベーションした後、上記のようにプレートを再度洗浄した。100μLのTMB基質溶液(Zymed、カタログ番号:00-2023)を各ウェルに加え、4分間発色させた。100μLの1M HClを発色反応を停止するために加え、450nm(対照:620nm)において吸光度を測定した。
【0163】
ELISAの結果
固相に被覆されたTNF-αに対するAB164、AB197およびAB103の結合を比較するためにELISAを用いた。これらの結果から、すべての抗体が0.68μg/mL以下の全EC50値を有するTNF-αに対し強い結合を示した(図5、表6)。ネズミ定常領域(AB164)のヒトIgG1定常(AB103)領域による置換えは、抗体AB164およびAB103の結合プロファイルの比較により見ることができるように、結合親和性を顕著に低下させなかった。AB197を生成するための人工のAB164は、抗体AB164およびAB197の結合プロファイルの比較により見ることができるように、TNF-α結合の顕著な低下をもたらさなかった(図5)。
【0164】
【表8】

【0165】
生細胞を使用したTNF-α細胞毒性中和アッセイ(L-929中和アッセイ)法
【0166】
L-929細胞(ATCC No: CCL-1)を10%のウシ胎児血清、50μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Sigmaカタログ番号:P0781)、2mMのL-グルタミン(Invitrogenカタログ番号:25030-081)および10μMの2-メルカプトエタノール(Invitrogenカタログ番号: 21985-023)を含有するRPMI 1640 (Invitrogenカタログ番号: 21870- 076)中で、細胞が集合の70%のレベルに到達するまで培養した。96ウェル組織培養プレートの各ウェル中に50μLの媒体を加えた。
【0167】
L-929細胞に対するTNF-αの細胞毒を検討するため、ウェル当り50μLのTNF-αの使用溶液(30ng/mL)を、3重でプレートの第1のカラムに加え、連続的な半対数(half log)希釈系列をプレートに作成し、最終濃度が9fg/mLに到達するようにした。TNF-αを用いない50μLの媒体を有する対照ウェルを同様に調製した(V=100%)。すべてのウェルに対し、5×10-5細胞/mLのL-929細胞を50μL加えた。さらに、100μLの媒体を含有し、他の細胞またはTNF-αのいずれも含まない対照ウェル(バックグラウンド)も調製した。すべてのウェルに対し、アクチノマイシンD(Sigmaカタログ番号:A1410)を40μg/mL加えた。
【0168】
TNF-αに対する人工的な抗体による中和を検討するために、中和分析を行った。10μg/mLの抗体23μLを、3重で分離プレートの第1のカラムに加え、連続的な対数(log)希釈系列をプレートに作成し、最終濃度が30.4pg/mLに到達するようにした。これらのウェルに対し、5×10-5細胞/mLのL-929細胞を50μL加えた。さらに、25μLのアクチノマイシンDをすべてのウェルに加えた。
【0169】
すべてのプレートは、5%CO2を用い、37℃で20時間インキュベートした。インキュベーション後、25μLのMTS/PES CellTiter 96 AQucous 1溶液試薬(Promegaカタログ番号:G358B)をすべてのウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。ELISAプレートリーダーを用い、492nm(対照:630nm)において吸光度を測定した。すべての反復処理の平均吸光度は、細胞およびTNFを有しない対照ウェル(バックグラウンド)の平均吸光度から差し引いた。これから、L-929細胞の%生存率を以下のように計算した:
%生存率=A492実験ウェル/A492 V=100%生存 ×100
【0170】
生細胞(L-929中和分析)の結果を用いるTNF-α細胞毒中和分析
AB164、AB197およびAB103はTNF-α誘導細胞毒を中和することができた(図6、表7)。
【0171】
【表9】

【0172】
特定の実施形態に示すように、広く記載された本発明の趣旨または範囲を外れることなく、本発明に対する多くの変形および/または修正がなされ得ることは、当業者により理解される。したがって、本実施形態は、すべての点において本発明を説明するものであって限定するものではないと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】AB138とラット脊髄溶解物(レーン2)中に存在するラットMOGとの結合およびCHOKlSV溶解物(レーン3)中に存在するラットMOGとの非結合を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含有する。
【図2】同一の試料のラット脊髄溶解物(レーン2)およびCHOKlSV溶解物(レーン3)中に存在するラットMOGに対する抗TNFαモノクローナル抗体の非特異的結合の欠如を示す図である。レーン1は分子量マーカーを含有する。
【図3】ドナーおよびアクセプターのVHアミノ酸配列の配置を示す図である。
【図4】ドナーおよびアクセプターのVLアミノ酸配列の配置を示す図である。
【図5】TNF-αに対する抗体AB164、AB103およびAB197のELISAによる結合を示すグラフである。
【図6】TNF-α誘導L-929細胞細胞毒のAB164、AB197およびAB103による中和を示すグラフである。
【配列表フリーテキスト】
【0174】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を有し、該フレームワーク領域が新世界霊長類フレームワーク領域であるか、または新世界霊長類フレームワーク領域から誘導され、少なくとも1つの該CDRが非新世界霊長類CDRである、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記可変領域が3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域を含有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記可変領域が少なくとも1つのネズミCDR配列を含有する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記可変領域が少なくとも1つのマウスCDR配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記可変領域が少なくとも1つのラットCDR配列を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
前記可変領域が少なくとも1つのヒトCDR配列を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
前記可変領域が少なくとも1つの合成CDR配列を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
前記可変領域が少なくとも1つのウサギCDR配列を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
前記可変領域が異なる供給源からのCDRの組合せを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
前記可変領域が3つのネズミCDR配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
前記3つのネズミCDR配列がマウスCDR配列である、請求項10に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
前記可変領域が3つのヒトCDR配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
前記可変領域が4つの新世界霊長類フレームワーク配列を含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
前記可変領域が4つのフレームワーク領域を含有し、該フレームワーク領域が新世界霊長類フレームワーク領域から誘導される、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗原結合部分がドメイン抗体である、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
さらにヒトまたは非ヒト旧世界霊長類定常領域配列を含有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
前記新世界霊長類フレームワーク領域が、マーモセット類、タマリン類、リスザル、ティティザル、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル、ウアカリ、サキ属、ヨザル、およびホエザルからなる群から選択される新世界霊長類に由来する、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
前記新世界霊長類がマーモセットである、請求項17に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項19】
癌胎児性抗原、EpCAM、Lewis-Y、Lewis-Y/b、PMSA、CD20、CD30、CD33、CD38、CD52、CD154、EGF-R、Her-2、TRAILおよびVEGFレセプターを含む腫瘍関連抗原;CD3、CD4、CD25、CD40、CD49d、MHCクラスI、MHCクラスII、GM-CSF、インターフェロン-γ、IL-I、IL-12、IL-13、IL-23、TNF-α、およびIgEを含む免疫もしくは炎症疾患または免疫もしくは炎症障害に含まれる抗原;糖タンパク質IIb/IIIa、P-糖タンパク質、プリンレセプターおよびCD11a、CD1lb、CD11c、CDl8、CD56、CD58、CD62またはCD144を含有する接着レセプターを含む宿主細胞上に発現される抗原;エオタキシン(eotaxin)、IL-6、IL-8、TGF-β、C3a、C5a、VEGF、NGFおよびそれらのレセプターを含有する、サイトカイン、ケモカイン、成長因子もしくは他の可溶性生理学的調節物質またはそれらのレセプターを含む抗原;β-アミロイドおよびプリオンを含む中枢神経系疾患または障害に含まれる抗原;呼吸器合胞体ウイルスタンパク質F、炭疽毒素、ガラガラヘビ毒、およびジゴキシンを含有する、非ヒト由来抗原、例えば、微生物、ナノ微生物またはウイルスの抗原または毒素からなる抗原から選択される、天然の、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、脂質または糖脂質である抗原に結合し;キメラ抗体は、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用するか、補体もしくはキラー細胞(例えば、NK細胞)の作用により望ましくない細胞(例えば、抗CD4)を減少させる(死滅させるか排除する)ことに対し活性であるか、または細胞毒性薬として活性であるか、または食細胞のFcレセプターと結合するか、もしくはその標的の生物学的活性を中和する、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合部分。
【請求項20】
前記抗原がヒトTNFαである、請求項19に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
前記少なくとも1つのフレームワーク領域の配列が、結合を増大させるように改変されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
前記少なくとも1つのフレームワーク領域の配列が、ヒトにおいて予測される免疫原性を低下させるように改変されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、またはそれらの医薬組成物、包装および使用説明書を含むキット。
【請求項24】
細胞表面抗原またはサイトカインに結合する、設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分であって、該抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも2つの相補性決定領域(CDR)および少なくとも3つのフレームワーク領域を含有する可変領域を含み、該CDRは、抗体またはその抗原結合部分が細胞表面抗原またはサイトカインに結合するように選択される、新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
CD3、CD20、CD33、EGF-R、Her-2およびCD25からなる群から選択される細胞表面抗原に結合する、請求項24に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項26】
TNFαまたはVEGFに結合する、請求項24に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項27】
前記抗原結合部分がドメイン抗体である、請求項24から26のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項28】
さらにヒトまたは非ヒト旧世界霊長類定常領域配列を含有する、請求項24から27のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項29】
前記新世界霊長類が、マーモセット類、タマリン類、リスザル、ティティザル、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル、ウアカリ、サキ属、ヨザル、およびホエザルからなる群から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項30】
前記新世界霊長類がマーモセットである、請求項29に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項31】
前記少なくとも1つのフレームワーク領域の配列が、結合を増大させるように改変されている、請求項24から30のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項32】
前記少なくとも1つのフレームワーク領域の配列が、ヒトにおいて予測される免疫原性を低下させるように改変されている、請求項24から31のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体またはその抗原結合部分。
【請求項33】
請求項24から32のいずれか一項に記載の設計された新世界霊長類抗体もしくはその抗原結合部分、またはそれらの医薬組成物、包装および使用説明書を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−504685(P2009−504685A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526322(P2008−526322)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001165
【国際公開番号】WO2007/019620
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500468537)アラーナ・テラピューティクス・リミテッド (16)
【Fターム(参考)】