説明

新聞用紙及びその製造方法

【課題】古紙パルプスラリー中に含まれる炭酸カルシウムがpH調整のために添加した酸と反応し分解するという酸性抄造における問題を解消し、抄紙時の製紙用ワイヤーの摩耗について、解決すること。
【解決手段】古紙脱墨パルプを主成分とし、必要に応じて機械パルプ及び/又は化学パルプを添加したパルプスラリーをpH調整剤によって、抄紙系のpHをpH6〜9の範囲になるように調整して抄紙する新聞用紙であって、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加して、紙の灰分を8〜15重量%に調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙した坪量が40〜46g/m、白色度が55〜60%、不透明度が95〜97%、の新聞用紙が得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙及びその製造方法、就中、古紙脱墨パルプをパルプの主原料とすると共に、古紙パルプスラリーに含まれている炭酸カルシウム等の填料をそのまま填料として利用する新聞用紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、新聞用紙は表裏両面に印刷される関係上、不透明性等の高い光学特性が要求されていたが、近年、新聞用紙の軽量化、カラー印刷化が進み、更に印刷のオフセット印刷化、高速印刷化の急進と相俟って、新聞用紙に要求される光学特性や印刷適性並びに印刷作業性等の品質要求は益々厳しくなってきている。
【0003】
一方、環境保護や省資源、省エネルギーの観点から、古紙の再生利用が叫ばれており、新聞用紙についても古紙脱墨パルプの高配合率化が進んでいる。
ところが、古紙脱墨パルプの高配合率化が進むと古紙由来の填料等が古紙パルプスラリー中に混入する。
【0004】
この古紙パルプスラリー中に混入する填料は古紙に含まれていたあらゆる填料が含まれることになるが、一般的に古紙に含まれる填料は中性抄造された古紙の方が酸性抄造された古紙よりも多い。しかも、従来から出版・印刷用紙等の多くは中性抄造されており、近年の新聞用紙の中性抄造化の流れと相俟って古紙を再生する場合、中性古紙に多く含まれている炭酸カルシウム等の填料が古紙パルプスラリー中に多量に含まれることになる。
【0005】
ところが、新聞用紙の場合、一部に中性抄造化の流れがあるとは言え、現在多くは酸性領域で抄造されており、硫酸バンドや硫酸等のpH調整剤で酸性領域になるようにpH調整しており、古紙パルプスラリー中に含まれる中性填料である炭酸カルシウムは添加したpH調整剤に含まれる酸と反応して分解し、pH調整剤を多量に消費したり、硫酸カルシウムを生成してスケール化して抄紙系内に堆積する問題を引き起こしている。
【0006】
このため、既に、新聞用紙においても、中性乃至アルカリ性領域で抄造し、抄造した紙支持体の表面にサイズ剤を塗布した中性新聞用紙。(特許文献1)やpH調整剤で抄紙系を擬似中性域に調整して抄紙する擬似中性新聞用紙。(特許文献2)等が提案されている。
【特許文献1】特許第2889159号公報
【特許文献2】特開2004−256948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、新聞用紙を、中性乃至アルカリ性領域で抄造する特許文献1に記載の発明においては、中性領域で抄造されるため、古紙パルプスラリー中に含まれる炭酸カルシウムがpH調整のために添加した酸と反応し分解するという酸性抄造における問題は解消できるものの、光学特性等の改善のために、他の填料に比べ硬度が高い炭酸カルシウムを新たに添加しており、抄紙時の製紙用ワイヤーの摩耗について、未だ十分なものではなかった。
また、特許文献2に記載の擬似中性新聞用紙は、pHを擬似中性域まで下げて中性填料たる炭酸カルシウムおよび酸性サイズ剤の使用を可能にしたものであり、新たに炭酸カルシウムを添加する点では前者と同じであり、抄紙時の製紙用ワイヤーの摩耗等については解決策を示していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、古紙脱墨パルプを主成分とし、必要に応じて機械パルプ及び/又は化学パルプを添加したパルプスラリーをpH調整剤によって、抄紙系のpHをpH6〜9の範囲になるように調整して抄紙する新聞用紙であって、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加して、紙の灰分を8〜15重量%に調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙した坪量が40〜46g/m、白色度が55〜60%、不透明度が95〜97%、の新聞用紙が得られる。
また、本発明によれば、古紙脱墨パルプを主成分とし、必要に応じて機械パルプ及び/又は化学パルプを添加したパルプスラリーをpH調整剤によって、抄紙系のpHをpH6〜9の範囲になるように調整して抄紙する新聞用紙の製造方法であって、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加して、紙の灰分が8〜15重量%になるように調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙することを特徴とする新聞用紙の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抄紙系のpHを6〜9としているので、古紙パルプに含まれる炭酸カルシウムが分解することなく紙にとどめることができ、資源の有効利用を図ることができる。
しかも、炭酸カルシウムは新たに添加しないので、填料としての硬度が高い炭酸カルシウムの量を比較的少なく押さえることが出来るので、ワイヤー摩耗のトラブルを起こすことがない等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明にかかる新聞用紙は、原料パルプの主成分として、古紙脱墨パルプ(DIP)を使用する。
古紙脱墨パルプ(DIP)は、通常、新聞古紙や雑誌古紙を離解工程で離解した後、除塵工程で除塵し、脱墨工程で脱墨剤を添加し、フローテーターによってインクを浮遊分離して除去する。そして、精選工程で精選した後、漂白工程で漂白剤やアルカリ性薬品或いは脱墨剤等を添加して漂白とアルカリソーキングを行なう。
また、古紙脱墨パルプ(DIP)併せて使用する機械パルプ及び/又は化学パルプは、例えば、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプや針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)等の化学パルプから適宜選択して使用することができる。
【0011】
本発明では、原料パルプに対し、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加する。この際、紙の灰分が8〜15重量%になるように調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙することにより、新聞用紙に必要な白色度、不透明度、用紙としての物理的強度は満足できるものとする。
更に、原料パルプに炭酸カルシウムを含むので、中性抄紙におけるpH緩衝効果を得ることができ、安定したpHで抄紙することができる。また、使用する炭酸カルシウムは古紙由来の炭酸カルシウムのみであり、新たに炭酸カルシウムでは添加しないので、硬度が高い炭酸カルシウムの量は少なく抄紙する際に製紙用ワイヤーの摩耗の懸念がない。
【0012】
本発明では古紙由来の炭酸カルシウムが3〜10重量%となるようにする。炭酸カルシウムが3重量%未満では、中性抄紙におけるpH緩衝の効果が得られず、pHの変動により抄紙性が不安定になる。また、古紙由来の炭酸カルシウムが10重量%を超えると新聞用紙の物理的強度が不足したり、抄紙する際に製紙用ワイヤーの摩耗の懸念が生ずる等の不具合を回避するためである。
【0013】
古紙由来の炭酸カルシウムが3〜10重量%となるように調整する方法としては、以下に示すように1)使用する古紙を選定する。2)古紙製造工程における灰分歩留まり向上させる。等の方法が考えられる。
1)古紙パルプには種々の古紙を使用することができるが、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、色上古紙、ケント古紙、模造古紙などが使用できる。(財団法人古紙再生促進センター「古紙の統計分類と主要銘柄」による分類)一般的に、塗工紙を多く含む古紙は灰分が高くなるので、灰分は多い順に、(色上古紙=ケント古紙)>雑誌古紙>模造古紙>新聞古紙 となり、炭酸カルシウムの含有量もこの順となっている。よって、含有する炭酸カルシウム分の高い古紙を選定することにより、古紙パルプに含まれる炭酸カルシウムの含有量をコントロールすることができる。
2)従来の一般的な古紙パルプの製造方法では、古紙原料中の灰分に関係なく、離解、除塵、脱墨、漂白、洗浄の各工程を組み合わせて古紙パルプが製造されており、古紙パルプの灰分は洗浄工程で除去し、低灰分の古紙パルプを製造するのが主流であったが、本発明では、所定の灰分の古紙パルプを得るために、特定の界面活性剤を脱墨工程前に添加して古紙パルプ中の灰分を留めおく方法や古紙パルプの完成原料に凝集剤を添加して灰分量を調整する方法、或いは、これらを組み合わせて行うこともできる。
【0014】
本発明で使用するサイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸などのサイズ剤が使用できる。また、凝集剤としては、硫酸バンド、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系凝集剤などを使用する。
その他、必要に応じ、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用する。
【0015】
更に、表面サイズ剤を塗布してもよい。表面サイズ剤としては、酸化澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、スチレンマレイン酸系共重合体、スチレンアクリル酸系共重合体などの樹脂が使用できる。表面サイズ剤を塗布するための塗布装置としては、特に限定されないが、ツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーターや、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどの装置が使用される。
【0016】
本発明の新聞用紙の製造に際しては、表面サイズ剤の塗布後に、カレンダー装置により平滑化処理するのが望ましい。かかるカレンダー装置としては、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、シューカレンダーなどの一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。なお、%は特に断りのない限り、重量%を表す。
(実施例1)
新聞古紙80重量部、雑誌古紙20重量部からなる古紙から、離解、除塵、漂白、脱墨、洗浄工程を経て灰分11.7重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ90重量部とTMP10重量部をパルプ原料として使用し、中性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを7.5に調整し、ホワイトカーボン1.0重量部を添加して、紙の灰分を5.6重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して坪量43.0g/mの新聞用紙を製造した。
【0018】
(実施例2)
実施例2は、新聞古紙60重量部、雑誌古紙40重量部からなる古紙から、灰分15.1重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ80重量部とTMP20重量部をパルプ原料として使用し、中性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを7.0に調整し、ホワイトカーボン2.0重量部を添加して、紙の灰分を5.6重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して新聞用紙を製造した。
【0019】
(実施例3)
実施例3は、新聞古紙40重量部、雑誌古紙20重量部、色上古紙40重量部からなる古紙から、灰分18.2重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ70重量部とTMP30重量部をパルプ原料として使用し、中性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを8.5に調整し、カオリン5.0重量部を添加して、紙の灰分を12.4重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して新聞用紙を製造した。
【0020】
(比較例1)
新聞古紙100重量部からなる古紙から、離解、除塵、漂白、脱墨、洗浄工程を経て灰分5.2重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ90重量部とTMP10重量部をパルプ原料として使用し、中性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを8.0に調整し、ホワイトカーボン1.0重量部を添加して、紙の灰分を3.9重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して新聞用紙を製造した。
【0021】
(比較例2)
新聞古紙75重量部、雑誌古紙25重量部からなる古紙から、灰分11.1重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ60重量部とTMP40重量部をパルプ原料として使用し、酸性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを5.0に調整し、カオリン2.0重量部を添加して、紙の灰分を4.7重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して新聞用紙を製造した。
【0022】
(比較例3)
比較例2と同じ古紙を用いて、離解、除塵工程後に灰分除去工程を追加し、灰分5.5重量%の古紙脱墨パルプを製造した。この古紙脱墨パルプ80重量部とTMP20重量部をパルプ原料として使用し、酸性ロジンサイズ剤を0.5重量部添加し、硫酸バンドでpHを4.5に調整し、ホワイトカーボン1.5重量部を添加して、紙の灰分を3.2重量%に設定し、ゲートロールコーターで酸化澱粉を塗布量0.8g/m(両面合計)で塗布して新聞用紙を製造した。
【0023】
表1は実施例1〜3及び比較例1〜3の新聞用紙の特性を示すものである。なお、試験方法は次のとおりである。
灰分:JISP8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」
炭酸カルシウム含有量:炭酸カルシウムは600℃以上の燃焼温度で分解しCOが揮発するので、JISP8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」とJISP8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−900℃燃焼法」に準じて、各燃焼温度での灰分を求め、次式により炭酸カルシウム含有量を算出した。
炭酸カルシウム含有量={灰分(525℃)−灰分(900℃)}×(100/44)
※CaCOとCOとの分子量の比率:100/44
白色度:JISP8148「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」
不透明度:JISP8149「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙脱墨パルプを主成分とし、必要に応じて機械パルプ及び/又は化学パルプを添加したパルプスラリーをpH調整剤によって、抄紙系のpHをpH6〜9の範囲になるように調整して抄紙する新聞用紙であって、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加して、灰分を8〜15重量%に調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙した坪量が40〜46g/m、白色度が55〜60%、不透明度が95〜97%、の新聞用紙。
【請求項2】
古紙由来の炭酸カルシウムを3〜10重量%含有することを特徴とする請求項1記載の新聞用紙。
【請求項3】
古紙脱墨パルプを主成分とし、必要に応じて機械パルプ及び/又は化学パルプを添加したパルプスラリーをpH調整剤によって、抄紙系のpHをpH6〜9の範囲になるように調整して抄紙する新聞用紙の製造方法であって、填料として古紙由来の炭酸カルシウムと共に、新たに炭酸カルシウムを除くホワイトカーボン、二酸化チタン或いはカオリン等の填料の少なくとも一種を添加して、紙の灰分が8〜15重量%になるように調整し、サイズ剤と凝集剤を適宜添加して抄紙することを特徴とする新聞用紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−38325(P2008−38325A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240800(P2006−240800)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】