説明

新聞用紙

【課題】資源の循環使用により低コスト化が図られ、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性及びインク乾燥性にも優れ、高い不透明度で裏抜けが少ない新聞用紙を提供すること。
【解決手段】パルプに填料が内添されてなる新聞用紙であって、該パルプに、少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含有され、該填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されていることを特徴とする、新聞用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙に関する。さらに詳しくは、資源の循環使用により低コスト化が図られ、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性及びインク乾燥性にも優れ、高い不透明度で裏抜けが少なく、特に高速オフセット輪転印刷に好適な新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題から、環境保護、資源保護、ゴミ削減を目的として、最近ではオフィスから発生する廃事務用紙を、例えばビル全体で回収しようとする動きも見られ、古紙パルプを使用した再生紙の利用が益々増加すると共に、紙への古紙配合率も増加している。
【0003】
また、省資源、輸送費の削減、原材料費の削減の観点から、各用紙の軽量化が年々進んでいる。さらに、製紙工場では古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と、紙への古紙配合率の増加が進むと共に、紙の生産効率向上のため、紙製造工程の生産スピードが益々高速化している。このような状況下、新聞用紙においても需要は軽量化と古紙の高配合化の方向に進んでいる。例えば、新聞配達時の重量負担を増大させることなく1部あたりの頁数を増加させるために新聞用紙の軽量化が進む一方、環境問題に対応するために古紙配合率の増加が進み、さらにはオフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化等も進んでいる。
【0004】
ところが、前記のごとき古紙配合率の増加やオフセット輪転印刷機の高速化、紙面のカラー化により、新聞用紙には新たな種々の問題が顕在化してきている。
【0005】
古紙配合率の増加に伴い、従来新聞古紙を主体に用いられてきた原料において、塗工層を有するチラシ古紙や塗工印刷用紙の含有量が増加し、従来の原料木材由来の樹脂ピッチ以外にラテックス等の合成ゴムや合成樹脂由来の合成ピッチが顕著に増加している。また近年の紙面のカラー化に伴う高精細な印刷面を得るために多用される塗工手段が、合成ピッチの増加に拍車をかけている。
【0006】
前記合成ピッチは、粘着性を帯び易く、オフセット輪転印刷機の高速化において、断紙の主たる原因となっている。
【0007】
従来、ピッチ分の除去について、ディンキングパルプの製造段階で粘着異物(ピッチ)を除去する方法として、例えば古紙パルプの製造時に粘着物除去剤を添加する方法(特許文献1参照)、古紙パルプに高密度化剤及び凝集剤を添加する方法(特許文献2参照)、パルプスラリー中の粘着物に磁性体を結合させる方法(特許文献3参照)等が提案されている。
【0008】
しかしながら、前記方法は、いずれも古紙処理段階で新たな薬品を添加することで粘着異物の発現を抑制するものであるため、操作が煩雑になると共に、薬品添加による生産コストの上昇を来たすといった問題を有する。
【特許文献1】特開2003−20584号公報
【特許文献2】特開2002−201579号公報
【特許文献3】特開平10−298882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、石膏ボード工場においては、建築用材として使用される石膏ボードの廃材や端材の発生に対し、従来、埋め立て処分や焼却炉での焼却処分を行ってきたものの、近年に至り、埋め立て処分場が枯渇し、社会的な制約によって新たな処分場の確保も困難な状況に陥っている。また埋め立て処分においては、石膏ボードを構成する紙が腐敗して悪臭を放つといった問題が生じ、焼却処分においては、硫黄分が煙突から放出され、硫酸ミストが発生するといった問題が生じている。このため、廃石膏ボードの処理が益々困難になっており、その対応策の早急な立案が望まれている。
【0010】
また廃石膏ボードの発生量は、年々増加する傾向にあり、石膏ボード工場にとって、このような廃石膏ボードの再資源化、有効利用は重大な課題となっている。
【0011】
前記廃石膏ボードは、紙を主たる構成成分とするものの、多量の硫酸カルシウム(石膏)を含有するため、燃焼しても多量の燃焼灰(無機物)が残り、減容化の効果は低い。そこで、この燃焼灰をセメント原料や土壌改良剤として活用する等の努力もなされてはいるが、これらの方法において燃焼灰はあくまでも助剤であるため、多量の使用は見込めず、結局、大部分の燃焼灰は前記のごとき埋め立て処分されることになる。
【0012】
廃石膏ボード由来のパルプ分と硫酸カルシウムとを有効活用する方法として、廃石膏ボードを水溶液に分散させ、原料パルプと紙の内添填料として使用することも考えられるが、多量の硫酸カルシウムを含有する廃石膏ボードは、そもそも水溶液への離解・分散が困難であるとともに、含有する硫酸カルシウムがストレーナーやスクリーンの目詰まりを起こし、操業が困難になるといった問題も発生する。
【0013】
このように、従来の方法では、廃石膏ボードの再資源化は極めて困難であり、さらにこれらの方法で得られる硫酸カルシウムは、製紙用の顔料、填料としては品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
【0014】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来は燃焼して減容化を図ったうえで、多くは埋め立て処分されてきた廃石膏ボード、中でも該廃石膏ボードから石膏分を回収分離した後の石膏ボード古紙から原料を回収し、かつ該石膏ボード古紙由来の硫酸カルシウム(石膏)を填料として用いることで、資源の循環使用により低コスト化が図られ、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性及びインク乾燥性にも優れ、高い不透明度で裏抜けが少なく、特に高速オフセット輪転印刷に好適な新聞用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
パルプに填料が内添されてなる新聞用紙であって、
前記パルプに、少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含有され、
前記填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されていることを特徴とする、新聞用紙
に関する。
【0016】
なお、本明細書において、「廃石膏ボード」とは、建材等として用いられる紙と硫酸カルシウム(石膏)との複合体からなる石膏ボードの廃材や、石膏ボード端材等のことをいい、また「石膏ボード古紙」とは、該廃石膏ボードから石膏を回収分離した後の、表面に硫酸カルシウム(石膏)が付着した石膏ボード原紙を多量に含む残渣物のことをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、資源の循環使用により低コスト化が図られ、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等も少なく、しかもインク吸収性及びインク乾燥性にも優れ、高い不透明度で裏抜けが少なく、特に高速オフセット輪転印刷に好適な新聞用紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態)
本発明の新聞用紙は、パルプに填料が内添されており、該パルプに、少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含有され、該填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されている。
【0019】
まず、本発明に用いられるパルプについて説明する。本発明の新聞用紙を構成するパルプには、少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含まれる。
【0020】
本発明においては、このように少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプを含む古紙パルプを主たる原料として用いても、後述する填料として内添される硫酸カルシウムの作用により、樹脂ピッチや合成ピッチによる問題が発生することがなく、資源の有効利用に大きく寄与し、低コスト化を図ることができる。特に新聞用紙は古紙としての回収率が高く、再資源化の優等生といわれるものであり、本発明により、新聞用紙の循環使用をより促進することが可能となる。
【0021】
石膏ボード古紙由来の古紙パルプは、例えば、石膏ボード古紙を含む古紙原料を、少なくとも離解工程、粗選工程、脱墨工程、精選工程、脱水濃縮工程及び晒工程を含む古紙処理工程に供して得られるものであることが好ましい。
【0022】
特に、前記粗選工程にて、例えば穴径が1.0〜2.0mmのホールスクリーンを用いること、さらにはスリット幅が0.2〜0.5mmのスリットスクリーンを組み合わせて用いることが好ましい。粗選工程でこのようなスクリーンを用いることで、過大な硫酸カルシウムやパルプ繊維に固着した硫酸カルシウムを好適に選別することができる。また、例えば前記脱墨工程を浮選処理方法にて行い、浮選処理における泡の発生を、泡径が5〜50mmとなるようにすることが、不要な石膏分を効率よく系外に排出することができる点から、より好ましい。
【0023】
前記したように、粗選工程におけるスクリーン処理、さらには脱墨工程における所定径の泡による浮選処理を組み合わせることで、過大や過小の硫酸カルシウムを系外に効率よく排出することが可能になり、紙質強度の低下や、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、印刷白抜け等が極めて少なく、しかもインク吸収性及びインク乾燥性にも非常に優れ、より高い不透明度で裏抜けが極めて少なく、高速オフセット輪転印刷にさらに好適な新聞用紙を得ることができる。
【0024】
本発明では、前記石膏ボード古紙由来の古紙パルプの他に、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプを、1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0025】
パルプ全量中の古紙パルプの割合は、50〜100質量%であることが好ましいが、より省資源化及び低コスト化が実現される点から、さらには60〜100質量%、特に70〜100質量%であることが好ましい。
【0026】
なお、石膏ボード古紙由来の古紙パルプは、その原料である石膏ボード古紙のパルプ全量に対する割合が、2質量%以上、さらには3質量%以上となるように、また50質量%以下、さらには45質量%以下となるように、調整して用いられることが好ましい。該石膏ボード古紙由来の古紙パルプの量が2質量%未満とあまりにも少ないと、省資源化の効果、石膏ボード古紙由来の古紙パルプに固着した硫酸カルシウムによる効果が得られ難く、かえって操作が煩雑になる恐れがある。逆に石膏ボード古紙由来の古紙パルプの量が50質量%を超えてあまりにも多いと、古紙パルプ処理における硫酸カルシウムの系外除去が困難になり、工程内の汚損が生じたり、操業が不安定になる恐れがある。
【0027】
さらに本発明では、前記石膏ボード古紙由来の古紙パルプを含む古紙パルプの他にも、新聞用紙の構成成分であるパルプとして、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ等の、公知の種々のパルプがあげられ、本発明の目的を阻害しない限り、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を適宜調整して使用することができる。
【0028】
本発明の新聞用紙は、前記パルプに填料が内添され、該填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されており、該硫酸カルシウムは、石膏ボード古紙由来の石膏からなるものであることが好ましい。
【0029】
石膏ボード古紙由来の石膏からなる硫酸カルシウムは、比重が約2.3と比較的重いものであるので、例えば離解工程にて高濃度パルパーで過大な粒子を細かく砕き、粗選工程にて、例えば穴径が1.0〜2.0mmのホールスクリーンを用いて処理すること、さらにはスリット幅が0.2〜0.5mmのスリットスクリーンを組み合わせて用いて処理することにより、選択的に系外へ排出することができる。
【0030】
前記粗選工程でのスクリーン処理にて系外に排出された硫酸カルシウムは、比較的粒度が大きく、再び石膏ボード用の原料として循環利用される。なお、脱墨工程で排出された硫酸カルシウムは、比較的粒径が微細で、内添時に流失されたり、得られる新聞用紙の紙質強度を低下させる場合があるので、その使用量があまり多くなりすぎないように調整することが好ましい。
【0031】
本発明では、前記粗選工程で系外に排出した硫酸カルシウムに、さらに湿式粉砕等の微粒化処理を施して得られるものも好適に使用することができる。またさらに、該硫酸カルシウムは、分級工程等に供したものであってもよい。
【0032】
一方、系内に残留する硫酸カルシウムは、古紙パルプ繊維に物理的または化学的に固着されており、その平均粒子径は0.2〜10μmと比較的小さく、古紙パルプ中に含有される微細な樹脂ピッチや合成ピッチを吸着し、精選工程で系外に除去される。さらに、このような系内に残留する硫酸カルシウムを用いた場合には、樹脂分の凝集によるピッチトラブルが防止され、印刷設備汚れが殆ど起こらず、低コストかつ高い操業性で新聞用紙を製造することができ、しかも従来と同等以上の高い不透明度や優れた紙力が新聞用紙に付与され、裏抜け、断紙も少なくなるといった利点がある。
【0033】
系内に残留する硫酸カルシウムの量は、例えば高濃度パルパーでの離解処理条件、粗選工程での除去効率により適宜調整することができる。
【0034】
なお、本発明においては、石膏ボード古紙由来の石膏からなる硫酸カルシウムについて、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における体積平均粒子径を0.2〜10μmに調整することで、抄紙機の汚損や磨耗をさらに抑制することができるといった利点もある。
【0035】
本発明に用いられる填料としては、前記硫酸カルシウムの他に、新聞用紙の内添用填料として通常使用される、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれた少なくとも1種を適宜併用することもできる。
【0036】
少なくとも硫酸カルシウムを含む填料の配合量には特に限定がないが、あまりにも少ないと、填料、特に硫酸カルシウムによるピッチの抑制効果が充分に発現されない恐れがあるので、紙灰分で3質量%以上、さらには4質量%以上となるように調整することが好ましく、またあまりにも多いと、新聞用紙の紙力が低下する恐れがあるので、紙灰分で15質量%以下、さらには13質量%以下となるように調整することが好ましい。
【0037】
さらに本発明においては、パルプに填料を内添して得られたパルプスラリーに、例えば澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤;ロジン、澱粉、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、中性ロジン等の内添サイズ剤;ポリアクリルアミドやその共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留まり向上剤;染料、顔料等の色素といった通常の紙に用いる添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0038】
前記パルプ及び填料、並びに必要に応じて添加剤からパルプスラリーを調製し、例えばpH等の条件を調整してツインワイヤー型抄紙機、長網型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙することにより、新聞用紙を製造することができる。
【0039】
なお、前記抄紙時のpHは、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を添加し、アルミニウムを介して樹脂成分を繊維に定着させるか、あるいは樹脂成分の凝集体を形成させて樹脂成分を紙支持体に取り込むことにより、製造工程での樹脂成分の付着を防ぐためには、アルミニウムイオン種のカチオン性が最も活性なpH4以上、6未満の範囲とするのが一般的である。ところが、本発明にて使用する石膏ボード古紙由来の古紙パルプは、例えば従来同じ古紙処理工程を経て製造されるので、pHが6以上と高く、高pH化による安定性やpH調整を考慮しながら、例えば補助的な炭酸カルシウムの使用時に、該炭酸カルシウムが溶解して歩留まりが低下したり、抄紙工程での汚れの原因となる恐れをなくすという観点のほか、硫酸バンドや希硫酸添加による繊維の劣化を防止できることから、pH6未満で抄紙するよりも、pH6以上で抄紙することによって紙力の向上が図られるという観点で、抄紙時のpHが6〜9.5程度となるように調整することが好ましい。
【0040】
また石膏ボード古紙由来の石膏からなる硫酸カルシウムは、古紙パルプを含むパルプ処理工程で内在させることが好適であるが、原料配合チェストからインレットの間でパルプに添加することも可能である。この間で添加することにより、石膏ボード古紙由来の石膏からなる硫酸カルシウムが分散し易くなり、パルプ繊維への定着性が向上し、その結果、填料全体の歩留まりが向上する。また硫酸カルシウムがパルプ繊維間の結合を阻害しないので、紙の剛度が低下することもない。硫酸カルシウムをより均一に分散させ、パルプ繊維への定着性をさらに向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で該硫酸カルシウムを添加することが特に好ましい。
【0041】
さらに本発明においては、パルプスラリーを抄紙して得られた新聞用紙の表面に、例えば澱粉、変性澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の高分子材料を含む表面処理剤を塗布してもよい。
【0042】
前記変性澱粉には特に限定がなく、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等に酸化処理、酵素処理等が施された澱粉といった通常の変性澱粉があげられる。該変性澱粉を用いる場合の表面処理剤中の量は、所望の効果を得るためには、全固形分中40質量%以上となるように調整することが好ましい。
【0043】
表面処理剤には、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス類、カオリン、炭酸カルシウム等の顔料、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。また表面処理剤の固形分濃度には特に限定がなく、塗布装置や塗布量に応じて、例えば2〜25質量%程度に調整することが好ましい。
【0044】
なお、前記表面処理剤をあまりにも多量に使用すると、コスト高となるだけでなく、新聞用紙の表面が湿った状態でネッパリ性と呼ばれる紙表面の粘着性が発現される傾向がある。このネッパリ性が大きくなると、特に非画線部におけるブランケットパイリングを逆に増大させたり、また印刷時に紙面がブランケットに貼り付き、結果的にシワや断紙といった走行トラブルを誘発する恐れがある。また、表面処理剤の使用量が多すぎると、目的とする新聞用紙の透明性が上昇、すなわち不透明度が低下したり、インク乾燥性が低下する場合もある。前記表面処理剤に含む成分のうち、澱粉類やポリアクリルアミドは比較的ネッパリ性が低いので広範に使用されるが、いずれも水への溶解性が高いため、あまりにも多量に含まれると、印刷時に湿し水中に容易に溶出して填料と共にブランケットに堆積し、ブランケットパイリングが生じる恐れがある。また溶出した表面処理剤がブランケットを介して刷版に転移、蓄積することで刷版の非画線部が感脂化し、非画線部のインク汚れ、すなわち地汚れと呼ばれる紙面の汚れを誘発する場合もあることから、表面処理剤を用いる際には、その成分等に応じて、多量になりすぎないように適宜調整することが好ましい。
【0045】
前記表面処理剤は、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いて表面に塗布すればよい。
【0046】
表面処理剤の塗布量は、新聞用紙の表面強度を充分に向上させるには、乾燥固形分で片面あたり0.4g/m2以上、さらには0.7g/m2以上となるように調整することが好ましく、またコストが上昇したり、新聞用紙の不透明度やインク乾燥性の低下を招かないようにするには、乾燥固形分で片面あたり3.0g/m2以下、さらには2.5g/m2以下となるように調整することが好ましい。
【0047】
また本発明においては、抄紙後の新聞用紙又は表面処理剤を塗布した後の新聞用紙を、必要に応じてカレンダー装置に通紙し、加圧、平滑化処理を施して仕上げることもできる。該カレンダー装置としては、通常の金属ロールと金属ロールとの組み合わせによるマシンカレンダーを使用してもよいが、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせによるソフトカレンダーを使用する方が、紙層を強く加圧せずに平滑化することができ、さらに紙層強度の低下を充分に抑制することができるのでより好ましい。
【0048】
なおソフトカレンダーの使用においては、新聞用紙の粗面側に当たる裏面側がソフトカレンダーの金属ロール面に先に接触するように通紙することで、平坦性及び嵩高性の向上をさらに図ることができ、例えば1500m/分以上の高速抄紙において、高い平坦性を有し、表裏差の少ない新聞用紙を得ることができる。さらに、表面処理剤の塗布量に関して、表面側よりも裏面側を多くすることにより、より良好な平坦性と嵩高性とが得られ、腰のある新聞用紙を得ることができる。
【0049】
かくして得られる新聞用紙の灰分は、該新聞用紙の中性紙化を考慮すると、JIS P 8128「紙及び板紙の灰分試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、3%以上、さらには5%以上であることが好ましく、逆に灰分があまりにも多いと、例えばオフセット印刷において印刷面の品質が低下したり、抄紙工程や印刷工程において断紙が起こり易くなる恐れがあるので、15%以下、さらには13%以下であることが好ましい。
【0050】
また、前記灰分中、填料として用いられた硫酸カルシウムの量があまりにも少ないと、樹脂ピッチや合成ピッチの抑制効果が充分に発現されない恐れがあるので、灰分中の硫酸カルシウムの割合は、3質量%以上、さらには5質量%以上であることが好ましく、逆に硫酸カルシウムの量があまりにも多いと、硫酸塩還元により抄紙機系内を汚損する恐れがあるので、灰分中の硫酸カルシウムの割合は、50質量%以下、さらには45質量%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の新聞用紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定して、37g/m2以上、さらには40g/m2以上であることが好ましく、また近年の軽量化、省資源化の点から、48g/m2以下、さらには46g/m2以下であることが好ましい。
【0052】
新聞用紙の白色度は、購読者の眼精疲労をきたさないようにするという点から、JIS P 8148「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定して、50%以上、さらには52〜56%、特に53〜55%であることが好ましい。
【0053】
本発明の新聞用紙では、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から高い不透明度が要求されるが、その白紙不透明度は、TAPPI No.53「紙及び板紙の拡散照明方式による不透明度試験方法(紙の裏当て)」に記載の方法に準拠して測定して、88〜95%、さらには90〜94%であることが好ましい。
【0054】
また本発明の新聞用紙の密度は、近年の軽量化や軽量化に伴う強度維持の点から、JIS P 8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、0.55〜0.60g/cm3、さらには0.56〜0.59g/cm3であることが好ましい。
【0055】
新聞用紙の剛度(MD方向)は、例えば高速輪転印刷に適した腰が付与されるという点から、JIS P 8143「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、30〜55cm3/100、さらには32〜50cm3/100であることが好ましい。
【0056】
ここで、新聞用紙を用いて行われるオフセト輪転印刷は、刷版に湿し水と印刷インクとを供給し、次いでブランケットと呼ばれるゴム版にインクを転移させた後、紙に転移させて印刷する方法であり、従来の凸版印刷に比べて、比較的粘度の高いインクを使用するため、インクの紙層内部への浸透が少なく、インク着肉性が良好であると共に、印刷後のインク裏抜けが少ない(印刷不透明度が大きい)という利点を有している。
【0057】
さらに近年では、新聞用紙のカラー化や軽量化に伴い、良好なインク着肉性や印刷不透明度がより一層求められている。このうち、インク着肉性を高めるためには、前記のごときソフトカレンダー等による平坦化処理にて新聞用紙の平滑性を向上させる方法が広く採用されている。しかしながら、カレンダー処理においてニップ圧を高くしたり、ニップ数を増やして平滑化処理を行うと、インク着肉性は向上するものの、紙の嵩高さが損なわれるため、印刷不透明度や剛度が低下し、印刷時の皺発生といった走行性不良トラブルの原因となる恐れがある。
【0058】
一方、カレンダー処理を軽減すれば嵩高な紙を得ることはできるが、インク着肉性の表裏差が増大し、特に平滑性が低い側の紙面でインク着肉性が低下するため、表裏面で画像の濃度が著しく異なる恐れが生じる。このような現象は、抄紙工程中、ワイヤーパートやプレスパートでの脱水条件が表面と裏面とでは微妙に異なるため、用紙の平滑性に表裏差が生じたり、厚さ方向での填料や微細繊維の分布状態が異なるため、インクの転移性に表裏差が生じることが原因であると考えられている。
【0059】
以上のことから、例えば本発明の新聞用紙のように、JIS P 8124に準拠した坪量が好ましくは37〜48g/m2である新聞用紙において、前記湿し水と印刷インクの転写との関係を考慮すると、該新聞用紙の、JIS P 8140「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に記載の方法に準拠して測定した10秒コッブ吸水度(サイズ度)が30〜300g/m2、さらには50〜280g/m2であり、かつJIS P 3001「新聞巻取紙」に記載の方法に準拠して測定した吸油度が50〜150秒、さらには70〜140秒であることが好ましい。このように、いわゆる親水性と親油性との関係を所定の範囲内に調整することで、前記平坦化処理と相俟ってよりオフセット輪転印刷適性を向上させることができる。
【0060】
また新聞用紙の表面強度は、やはり高速輪転印刷における紙質強度を考慮すると、後述するRIテスターによる測定にて、最低限度グレード3以上であることが好ましい。
【0061】
さらに本発明の新聞用紙では、前記したように、パルプに内添する填料として少なくとも硫酸カルシウムが含有されていることから、ピッチ個数が10個/m2以下、さらには6個/m2以下というように、該ピッチの発生が充分に抑制されたものである。なお、本明細書において、「ピッチ」とは、例えば樹脂ピッチや合成ピッチ等の粘着性の異物で、1個の大きさが0.05〜0.5mm2のものをいう。
【0062】
このように、本発明の新聞用紙は、パルプに少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含有され、填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されたものである。したがって、本発明の新聞用紙は、資源を循環使用して低コストで製造することができ、優れた紙力が維持されて断紙がないだけでなく、ピッチや紙粉によるブランケット汚れ、剣先詰まり、色ズレ、印刷白抜け等もなく、高い不透明度で裏抜けが少ない。しかも本発明の新聞用紙は、印刷時、特にカラー印刷時の各種特性にも優れ、例えば12〜17万部/時程度といった高速オフセット輪転カラー印刷等に好適に使用することができる。
【0063】
次に、本発明の新聞用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
製造例1〜12及び比較製造例1〜2(古紙パルプの製造及び硫酸カルシウムの調製)
表1に示す古紙原料を、離解工程、粗選工程、脱墨工程、精選工程、脱水濃縮工程及び晒工程を含む古紙処理工程に供し、古紙パルプを製造した。
【0065】
なお、前記粗選工程においては、表1に示す穴径のホールスクリーンと、同じく表1に示すスリット幅のスリットスクリーンとを組み合わせて用い、過大な硫酸カルシウムやパルプ繊維に固着した硫酸カルシウムを選別した。また、前記脱墨工程においては、表1に示す泡径の泡を発生させて浮選処理を行い、不要な石膏分を系外に排出した。
【0066】
古紙パルプ製造時の操業性及び古紙パルプの品質安定性について、以下のように評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
[操業性]
古紙原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を調べて各々4段階で評価し、以下の評価基準に基づいて総合的に評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスがよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
【0068】
[品質安定性]
古紙パルプの白色度、色調(Lab表色系のb値)、夾雑物及び脱墨性を調べて各々4段階で評価し、以下の評価基準に基づいて総合的に評価した。なお、白色度は後述する新聞用紙の白色度と同様の方法にて測定した。
(評価基準)
◎:白色度が57%以上で、b値が6.5以上であり、夾雑物がない乃至少なく、脱墨性
が良好であった。
○:白色度が55%以上、57%未満で、b値が6.0以上、6.5未満であり、夾雑物
も少なく、脱墨性は問題がなかった。
△:少なくとも、白色度が55%未満であるか、b値が6.0未満であるか、夾雑物が多
かった。
×:白色度が55%未満で、b値が6.0未満であり、夾雑物が多く、脱墨性にも問題が
あった。
【0069】
また、前記古紙処理工程にて得られた硫酸カルシウムの体積平均粒子径を、以下の方法にて測定した。その結果を併せて表1に示す。
【0070】
[硫酸カルシウムの体積平均粒子径]
硫酸カルシウムサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この分散溶液について、コールターカウンター粒度分布測定装置(TA−II型、COULTER ELECTRONICS社製)にて、50μmのアパチャーを用いて硫酸カルシウムの体積平均粒子径を測定した。ただし、この50μmのアパチャーで測定不可能なものについては、200μmのアパチャーを使用した。また電解液としては、0.7%の高純度NaCl水溶液(商品名:ISOTON II、COULTER ELECTRONICS社製)を用いた。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1〜12及び比較例1〜2(新聞用紙の製造)
表2に示す割合で、前記製造例1〜12及び比較製造例1〜2で得られた古紙パルプ及び機械パルプ(TMP)を配合し、レファイナーでカナディアンスタンダードフリーネス(CSF、JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」に準拠)を120mLに調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに、絶乾パルプ100質量部あたりカチオン化澱粉を0.5質量部添加し、さらに填料として、前記製造例1〜12及び比較製造例1〜2で得られた硫酸カルシウムを、灰分中に表2に示す割合で含有されるように添加し、硫酸バンドでpHを約7.6に調整後、ツインワイヤー型抄紙機にて抄紙した。さらに、表面処理剤として酸化澱粉(固形分濃度:約2〜15質量%)を、片面あたりの塗布量が乾燥固形分で表2に示す量となるように、ゲートロールコータにて塗布し、乾燥させて新聞用紙を得た。
【0073】
なお、各パルプの割合は、JIS P 8120「紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0074】
【表2】

【0075】
得られた新聞用紙について、以下の方法にて各物性を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0076】
(a)坪量
JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0077】
(b)密度
JIS P 8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0078】
(c)熱水抽出pH
JIS P 8133「紙、板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0079】
(d)灰分
JIS P 8128「紙及び板紙の灰分試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0080】
(e)コッブ吸水度(サイズ度)
JIS P 8140「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に記載の方法に準拠し、測定時間10秒にて測定した。
【0081】
(f)吸油度
JIS P 3001「新聞巻取紙」に記載の方法に準拠して測定した。
【0082】
(g)白色度
JIS P 8148「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0083】
(h)白紙不透明度
TAPPI No.53「紙及び板紙の拡散照明方式による不透明度試験方法(紙の裏当て)」に記載の方法に準拠して測定した。
【0084】
(i)剛度(MD方向)
JIS P 8143「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0085】
(j)表面強度
新聞用紙試料を、実験室の金属ロールからなるカレンダーに、線圧40kg/cmで2回通した後、この新聞用紙試料の表面に、RIテスター(型番:RI−2型印刷適性試験機、石川島産業機械(株)製)で、インキタック6(東洋インキ製造(株)製)を用いて印刷した。10cm2あたりの繊維が剥がれ状態を目視にて観察し、以下の評価基準(グレード)に基づいて評価した。
(評価基準)
1:繊維の剥がれかなりあり。
2:繊維の剥がれあり。
3:繊維の剥がれややあり。
4:繊維の剥がれ僅かしかなし。
5:繊維の剥がれ殆ど乃至全くなし。
なお、前記評価基準のうち、グレード3以上を実使用可能と判断する。
【0086】
【表3】

【0087】
次に、実施例1〜12及び比較例1〜4の新聞用紙について、以下の試験例1〜10に基づいて各特性を調べた。その結果を表4に示す。
【0088】
試験例1(ケバ立ち)
RI印刷適正試験機((株)明製作所製)にて、試験インクを付与しないゴムロールのままで新聞用紙表面を繰り返し5回印刷した。ルーペを用い、100mm×100mmの範囲で紙ウェブ表面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ケバ立ちが非常に少ない。
○:ケバ立ちが少ない。
△:ケバ立ちがやや多い。
×:ケバ立ちが非常に多い。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0089】
試験例2(インク吸収ムラ)
オフセットカラー印刷機(型番:SYSTEM C−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、16万部/時の印刷速度で、藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。藍/赤の重色部分のインク濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インク濃度ムラが全く認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インク濃度ムラが殆ど認められず、均一な画像である。
△:インク濃度ムラが認められ、やや不均一な画像である。
×:インク濃度ムラが明らかであり、不均一な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0090】
試験例3(ブランケットへの紙粉堆積)
(1)目視評価
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。10000部の印刷を行った後、ブランケット非画線部への紙粉の堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、実用上問題がない。
△:紙粉の発生が明確に認められる。
×:ブランケット上に紙粉が多く堆積し、ブランケットが白くなっている。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0091】
(2)紙粉量
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、ブランケット上に堆積している紙粉をかき取り、その質量を測定して100cm2あたりの質量で表した。なお湿し水の膜厚は0.9μmとした。
【0092】
試験例4(印刷不透明度)
前記試験例1と同じRI印刷適正試験機を使用し、墨色インクのインク量を変えて印刷を行った。印刷面の反射率が10%のときの、印刷前の裏面反射率(印刷面と反対側の面の反射率)に対する印刷後の裏面反射率の割合を以下の式に基づいて求めた。なお反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を使用した。
印刷不透明度(%)=(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100
【0093】
試験例5(印刷白抜け)
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、網点面積率30〜100%でオフセット輪転印刷用インク(墨)の単色印刷を行った。網点面積率100%ベタ部について、印刷面の白抜けの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが殆ど認められない。
○:白抜けが少ししか認められない。
△:白抜けが認められる。
×:白抜けが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0094】
試験例6(ネッパリ性)
新聞用紙サンプル2枚を適切な大きさに切断して水に10秒間浸漬した後、2枚を素早く密着させ、線圧100kg/cmでカレンダーに通紙した。24時間室温乾燥した後、引張り試験機(型番:オートグラフAGS−500NG、(株)島津製作所製)を用いて2枚の剥離強度を測定した。なお、数値が大きいほど、ネッパリ性(粘着性)が高い。
【0095】
試験例7(インク乾燥性)
前記試験例2と同じオフセットカラー印刷機を使用し、同じ印刷速度で、植物油含有量が45%の新聞印刷用インクにて藍、赤、黄、墨の順に4色カラー印刷を行った。印刷面と白紙面とが重なるように印刷物500部を重ね合わせ、5kgf(約49N)の荷重で1日間放置した後、白紙面の汚れの程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:汚れが殆ど認められない。
○:汚れが少ししか認められない。
△:汚れが認められる。
×:汚れが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0096】
試験例8(断紙回数)
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機、(株)東芝製)を使用し、900rpmの印刷速度で墨色単色印刷を行い、6万部の印刷の間に、断紙が発生する回数を測定した。
【0097】
試験例9(ピッチ個数)
新聞用紙1m2あたりに含まれるピッチ(大きさ:0.05〜0.50mm2)の個数を、国立印刷局製造の夾雑物測定図表を用い、目視にてカウントした。
【0098】
試験例10(裏抜け)
前記試験例8と同じオフセット輪転機を使用し、同じ印刷速度で墨色単色印刷を行った。6万部印刷後、墨ベタ面を裏面から目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:裏抜けが殆ど認められない。
○:裏抜けが少ししか認められない。
△:裏抜けが認められる。
×:裏抜けが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0099】
【表4】

【0100】
表4に示された結果から、実施例1〜12の新聞用紙はいずれも、石膏ボード古紙由来の古紙パルプを含むパルプに、填料として硫酸カルシウムが内添されたものであるので、ピッチ個数及び紙粉発生が少ないことからブランケット汚れが全く乃至殆どないだけでなく、印刷白抜けも少なく、しかもインク吸収性、インク乾燥性にも優れ、高い不透明度で裏抜けが少ないうえ、断紙もなく、特に高速オフセット輪転印刷に好適な特性を具備したものであることがわかる。
【0101】
これに対して比較例1〜2の新聞用紙はいずれも、石膏ボード古紙由来の古紙パルプが用いられておらず、ピッチ個数及び紙粉発生が多いことからブランケット汚れが著しく、印刷白抜け、インク吸収性、インク乾燥性、裏抜け、断紙等に問題があり、例えば高速オフセット輪転印刷に不適切なものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の新聞用紙は、例えば12〜17万部/時程度の高速オフセット輪転カラー印刷といった高速オフセット印刷等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプに填料が内添されてなる新聞用紙であって、
前記パルプに、少なくとも石膏ボード古紙由来の古紙パルプが含有され、
前記填料として、少なくとも硫酸カルシウムが含有されていることを特徴とする、新聞用紙。
【請求項2】
硫酸カルシウムが、石膏ボード古紙由来の石膏からなる、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項3】
JIS P 8128に準拠した灰分が、3〜15%であり、該灰分中の硫酸カルシウムの割合が、3〜50質量%である、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項4】
石膏ボード古紙由来の古紙パルプが、石膏ボード古紙を含む古紙原料を、少なくとも離解工程、粗選工程、脱墨工程、精選工程、脱水濃縮工程及び晒工程を含む古紙処理工程に供して得られるものである、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項5】
ピッチ個数が10個/m2以下である、請求項1に記載の新聞用紙。

【公開番号】特開2009−57667(P2009−57667A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227402(P2007−227402)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】