説明

新規なガレクチン−糖鎖結合体、ガレクチン活性調節剤

【課題】本発明は、新規なガラクチン分子とグリコサミン分子とから構成される結合体を提供する。また、ガレクチン分子またはグリコサミノグリカン分子の精製、測定ツールを提供する。さらにガレクチン分子の活性調整剤ならびに調整方法を提供する。
【解決手段】本発明者らはフロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィーを用いて、各種ガレクチン分子を固定化したカラムと各種グリコサミノグリカン分子の蛍光標識物との網羅的相互作用解析を行うことにより、特定のガレクチン分子とグリコサミノグリカン分子との組み合わせにおいて新規の結合性を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なガレクチン−グリコサミノグリカン結合体、ガレクチン活性調節剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書において以下の略号を使用する。
ガラクトース残基:Gal
N−アセチルグルコサミン残基:GlcNAc
N−アセチルノイラミン酸残基:NeuAc
N−アセチルガラクトサミン残基:GalNAc
グルクロン酸残基:GlcA
C6位に保持されている硫酸基:6S
α2-3グリコシド結合:α2-3
β1-4グリコシド結合:β1-4
β1-3グリコシド結合:β1-3
【0003】
ガレクチンは、1992年に提唱された動物レクチンの一家系に対する総称である(非特許文献1)。ガラクトースに対する結合特異性を有することと、ガレクチン家系を特徴づけるアミノ酸一次配列をもつことがガレクチンとしての条件である。哺乳類ガレクチンについては、発見順(GenBankへの登録順)に番号を付して呼ぶことが提唱されている。この方式に従い、現在、哺乳類ではガレクチン1〜15(種類)が見つかっており、生体内において、ガラクトースを持つ種々の糖鎖と結合することにより、その生理機能を発揮していると考えられている。それぞれの種類のガレクチンは、ガラクトースを有する種々のオリゴ糖鎖に対する結合(認識)特異性がやや異なる。
【0004】
これまでに12種類のヒト由来ガレクチンファミリーが同定されている(非特許文献2)。すなわち、ガレクチン−1〜4(galectin−1〜4:Gal−1〜4)、ガレクチン−7〜10(galectin−7〜10:Gal−7〜10)そしてガレクチン−12(galectin−12:Gal−12)である。各ファミリーを構成するメンバーはさらにその構造により3つのサブタイプに分けられている(非特許文献3)。
【0005】
ガレクチン−1、−2、−7および−10は、おおよそ130〜140個のアミノ酸残基からなる一つの糖鎖認識領域(carbohydrate−recognition domain;CRD)を有するもので、プロトタイプに属するものである。ガレクチン−3は、カルボキシ末端CRDと異なるタイプのアミノ末端領域とを有するもので、唯一のキメラタイプのものである。ガレクチン−4、−8、−9および−12は、リンカーペプチドにより連結された二つのCRDを有しており、タンデムリピートタイプに分類されているものである。
【0006】
プロトタイプおよびキメラタイプのガレクチン類は、一つのCRDを有するものであるが、そのうちガレクチン−1、−2および−3、そしておそらくはガレクチン−7および−10もダイマー(2量体)/マルチマー(多量体)を形成し、多価性の結合機能を有しており、複合糖質(glycoconjugate)を架橋する能力を備えていると考えられている。
【0007】
グリコサミノグリカンとは、生体内に細胞外マトリックス成分などとして存在する複合糖質(糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカン)のうち、プロテオグリカンの糖鎖部分をいう(特許文献1〜4)。グリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸など、十種類程度が知られており、特徴的な共通構造、即ちN−アセチルヘキソサミンとウロン酸(もしくはガラクトース)の交互繰り返し構造を持つ。
【0008】
酵素、レクチンなどの生体物質と基質アナログ、オリゴ糖鎖間の親和力を高い精度で測定できる方法としてフロンタル・アフィニティー・クロマトグラフィー(以下、FACと呼称することがある)が知られている。
【0009】
FACは液体クロマトグラフィーを用いたアフィニティー・クロマトグラフィーの一手法である。FACでは、一般的に、ある分子を固定化したカラムを作製し、そこに相互作用させる分子を蛍光標識して溶媒として流す。そして蛍光検出器によって観測された溶出前端(フロント)が、非結合性分子よりも遅延した場合、その程度が分子間結合力に比例することを利用して分子間結合力を決定する(非特許文献4)。
【0010】
特許文献5および6では、FAC技術を用いてガレクチン固定化カラムに対して蛍光標識糖鎖を溶出させ、複合糖質のうち「糖タンパク質」および「糖脂質」に見られる糖鎖とガレクチンとの結合が解析されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−80201号公報
【特許文献2】特開平4−80202号公報
【特許文献3】特開平9−30979号公報
【特許文献4】特開平5−236951号公報
【特許文献5】特開2004−215612号公報
【特許文献6】特開2003−189874号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Barondes,S. H.,et al.,Cell 76,597−598,1994
【非特許文献2】Douglas N. W. Cooper.,Biochimica et Biophysica Acta,1572(2002)209−231
【非特許文献3】Hirabayashi,J.et al.,Glycobiology,3:297−304(1993)
【非特許文献4】生化学、第76巻、第3号、p256−268、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、各種ガレクチン分子と各種グリコサミノグリカン分子との新規な結合体(以下、「ガレクチン−グリコサミノグリカン結合体」と呼称することがある)を提供する。
また、これまでにガレクチン分子はガラクトースのみを認識するとされていたが、ガラクトースを持たないグリコサミノグリカン分子とガレクチン分子との新規な結合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らはFACを用いて、各種ガレクチン分子(ガレクチン−1、3、8N、8C、9N、9C;NとCはそれぞれN末端側糖鎖認識ドメイン、C末端側糖鎖認識ドメインを指す)固定化カラムと各種グリコサミノグリカン分子の蛍光標識物との網羅的相互作用解析を行った。その結果、特定のガレクチン分子とグリコサミノグリカン分子との組み合わせにおいて新規の結合性を見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち本発明は以下よりなる。
1.下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−1(galectin−1;Gal−1)またはガレクチン−9のC−末端糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain;CRD)(ガレクチン−9C;galectin−9C;Gal−9C)、
(II)非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、かつ、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖。
ここで、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を示す。
2.ガレクチン分子がガレクチン−1であり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、前項1に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)
(ii)下記式(1)〜(3)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
3.ガレクチン分子がガレクチン−9Cであり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、前項1に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(4)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
4.下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−8のN末端糖鎖認識ドメイン(galectin−8N;Gal−8;Gal−8N)
(II)以下のいずれか1つである。
II−1.非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖
II−2.非還元末端にシアル酸残基を有する構造を持つ糖鎖
5.グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、前項4に記載の結合体;
(i)デルマタン(dermatan;DN)
(ii)下記式(5)で表される構造を有するオリゴ糖鎖
SL2L4;NeuAc α2-3 Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(5)
ここで、式中のNeuAcはN−アセチルノイラミン酸残基を、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、α2-3はα2-3グリコシド結合を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
6.下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−3(galectin−3;Gal−3)またはガレクチン−9のN−末端糖鎖認識ドメイン(ガレクチン−9N;galectin−9N;Gal−9N)
(II)以下のいずれか1つである。
II−1.非硫酸化ガラクトース残基を有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖、
II−2.非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖
7.ガレクチン分子がガレクチン−3であり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、前項6に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(5)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
SL2L4;NeuAc α2-3 Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(5)
ここで、式中のNeuAcはN−アセチルノイラミン酸残基を、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、α2-3はα2-3グリコシド結合を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
(iii)デルマタン(dermatan;DN)
(iv)コンドロイチン(chondroitin;CH)
(v)下記式(6)〜(12)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
CH6;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(6)
CH7;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(7)
CH8;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(8)
CH9;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(9)
CH10;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(10)
CH11;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(11)
CH12;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(12)
ここで、式中のGlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
8.ガレクチン分子がガレクチン−9Nであり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、前項6に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(4)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
(iii)デルマタン(dermatan;DN)
(iv)コンドロイチン(chondroitin;CH)
(v)下記式(6)〜(15)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
CH6;
GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(6)
CH7;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(7)
CH8;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(8)
CH9;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(9)
CH10;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(10)
CH11;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(11)
CH12;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(12)
CH3;GalNAc β1-4 GlcA β1-3 GalNAc(13)
CH4;GlcA β1-3 GalNAsc β1-4 GlcA β1-3 GalNAc(14)
CH5;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(15)
ここで、式中のGlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
9.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体。
10.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体。
11.前項9に記載の担体を用いることを特徴とする、前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出する方法。
12.前項10に記載の担体を用いることを特徴とする、前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出する方法。
13.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体を含むキット。
14.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体を含むキット。
15.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を構成するグリコサミノグリカン分子により、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する方法。
16.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を含有する、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する組成物。
17.前項16に記載の組成物を含有する医療用材料。
18.前項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を含有する医療用材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、新規物質としてのガレクチン−グリコサミノグリカン結合体が提供されるとともに、該結合体および該結合体を構成するガレクチン分子の分離、精製、測定ツールとしてのグリコサミノグリカン分子を固定化した担体、並びに、該結合体および該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子の構造分離、精製、測定ツールとしてのガレクチン分子固定化した担体が提供される。
【0017】
また、生体内におけるガレクチン分子の生理的機能を、外部から与えるグリコサミノグリカン分子によって正・負の方向に制御できる可能性があり、それらガレクチン分子結合性のグリコサミノグリカン分子は医療への適用が期待される。特にグリコサミノグリカン分子を含有する、ガレクチン分子の活性調整剤ならびに調整方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のグリコサミノグリカン分子として、下記(1)非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖、(2)非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖、(3)非還元末端にシアル酸残基を有する糖鎖の構造上の特徴を有するものが好適に挙げられる。
【0019】
下記(1)〜(3)の構造上の特徴は、天然に存在しうる高分子量グリコサミノグリカン分子についての特徴であるが、グリコサミノグリカン分子の製造法は特に限定されるものではなく、本発明に使用するグリコサミノグリカン分子は有機化学的合成や酵素化学的合成などによって製造されたものであってもよい。また、本発明に使用するグリコサミノグリカン分子には、広く市販されているものを利用することができる。
【0020】
本発明に使用するコンドロイチン(CH)、角膜型ケラタン硫酸(KS−I)は広く市販されているもの(生化学工業(株))を用いることができる。また、軟骨型ケラタン硫酸(KS−II)は鮫軟骨から公知の手法により調製することができる。さらに、デルマタン(DN)はデルマタン硫酸(生化学工業(株))を公知の化学的手法により完全脱硫酸化して調製することができる。
【0021】
(1)非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖
本発明に使用する非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖は、非還元末端に非硫酸ガラクトースを有していれば分子量は問われない。そのようなグリコサミノグリカンとして、ケラタン硫酸が好ましく、角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)、および軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)がより好ましい。
【0022】
本発明に使用する非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖として、ケラタン硫酸を化学的もしくは生化学的手法により任意の程度に低分子化したオリゴ糖鎖(ケラタン硫酸構成オリゴ糖と称する)を用いてもよい。本発明に使用するケラタン硫酸構成オリゴ糖の略号および配列を表1に示す。本発明に使用するケラタン硫酸構成オリゴ糖鎖は、特許公開公報2006−047240号に記載の方法により調製することができる。
【0023】
【表1】

【0024】
表1において、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保存されていることを、GalNAcはN-アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を、NeuAcはN-アセチルノイラミン残基を示す。
【0025】
本発明に使用するケラタン硫酸および表1に示すオリゴ糖鎖は、非硫酸化ガラクトースを構造中に一残基以上有すれば、さらに構造修飾されたものであってもよい。また、混合物であっても単一に精製されたものであってもよい。前記非硫酸化ガラクトースを構造中に一残基以上有するオリゴ糖鎖の例として、G2K1、G1L1、L2L2およびL2L4が好適に挙げられる。
【0026】
本発明の実施例において、KS−Iはガレクチン−1、3、−8N、−9Nおよび9Cに結合活性を示した。またKS−IIはガレクチン−3、−9Nおよび9Cに結合活性を示した。G2K1、L2L2およびL2L4はガレクチン−1、−3、−9Nおよび−9Cに結合活性を示し、G1L1はガレクチン−3および9Nに結合活性を示した。
【0027】
(2)非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖
非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖として、(2−1)デルマタンと(2−2)コンドロイチンが好適に挙げられる。本発明に使用する非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖は、非硫酸化N−アセチルガラクトサミンを一残基以上持てば分子量は問われず、また任意の方法で低分子化されていてもよく、さらに、それらの修飾誘導体であってもよい。混合物であっても単一に精製されたものであってもよい。
【0028】
(2−1)デルマタン(dermatan;DN)
本発明に使用するデルマタンは、デルマタン硫酸(CSB)のうち、その構造中に非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する構造のものが好ましく、CSB構造中のN−アセチルガラクトサミン残基上の硫酸基を任意の割合で除去した構造のものがより好ましく、ほぼ完全に脱硫酸化された構造のものが特に好ましい。
【0029】
本発明の実施例において、デルマタンはガレクチン−3、−8N、および−9Nに結合活性を示した。
【0030】
(2−2)コンドロイチン(chondroitin;CH)
本発明に使用するコンドロイチンは、コンドロイチン硫酸(たとえばCSA、CSC、CSD、CSEなど)のうち、その構造中に非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する構造であって、コンドロイチン硫酸構造中のN−アセチルガラクトサミン残基上の硫酸基を任意の割合で除去した構造のものが好ましい。
【0031】
本発明にはコンドロイチンを化学的もしくは生化学的手法により任意の程度に低分子化したオリゴ糖(コンドロイチンオリゴ糖と称する)を用いてもよい。本発明に使用するコンドロイチンオリゴ糖の略号および配列を表2に示す。本発明に使用するコンドロイチンオリゴ糖はPCT/JP2006/322847に記載の方法により、コンドロイチンから調製することができる。
【0032】
【表2】

【0033】
表2において、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN-アセチルグルコサミン残基を、GalNAcはN-アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を示す。
【0034】
本発明の実施例において、コンドロイチン、およびコンドロイチンオリゴ糖CH3〜CH12はガレクチン−3および9Nに長さ依存的な結合活性を示し、特にガレクチン−9Nに強く結合することが示された。また、ガレクチン−3はコンドロイチンを低分子化したCH3〜CH12の中でも特に6糖以上のもの(CH6〜CH12)に結合活性を有していた。
【0035】
(3)非還元末端にシアル酸残基を有する構造を持つグリコサミノグリカン糖鎖
本発明に使用する非還元末端にシアル酸残基を有する構造を持つグリコサミノグリカン糖鎖の好適な例として、表1に示したケラタン硫酸構成オリゴ糖のうちSL2L4が挙げられる。
【0036】
本発明の実施例において、SL2L4はガレクチン−3およびガレクチン−8Nに結合活性を示した。
【0037】
本発明に使用するガレクチン分子の配列は公知となっている配列(非特許文献1)を使用することができる。また、これらのガレクチン分子の糖鎖に対する結合性が損なわれない限り、当該ガレクチン分子はアミノ酸の変異を有しているものであってもよい。
【0038】
本発明に使用するガレクチン分子は、遺伝子工学的および生化学的に常用される方法を用いて製造することができる。また、本発明のタンパク質合成には、公知のペプチド合成法、例えば液相合成法、固相合成法などの化学合成法を使用することができる。
【0039】
上記のグリコサミノグリカン分子とガレクチン分子との結合性に基づき、本発明はガレクチン分子と該ガレクチン分子に結合性を示すグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体を提供する。また、本発明は該ガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体を提供する。さらに、本発明はガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するガレクチン分子を精製、分離および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体を提供する。
【0040】
本発明のガレクチン分子またはグリコサミノグリカン分子の担体への固定化は、代表的には組換えポリペプチドを水不溶性担体に固定して行われる。固定化方法としては、(1)担体結合法、(2)包括法等、およびそれらを組み合わせた複合法が挙げられる。該固定化には、当該分野で汎用されている方法を用いることができる。
【0041】
前記担体結合法としては、例えばイオン相互作用、疎水相互作用、物理的吸着などを利用する方法、共有結合などの化学的結合により行うことができる。
【0042】
前記イオン相互作用を利用する担体結合方法では、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類のイオン交換体、例えばDEAE基、TEAE基、CM基、スルホン酸アルキル基などを持つ誘導体、イオン交換樹脂などを担体として用いることができる。
【0043】
前記疎水相互作用を利用する担体結合方法では、ポリスチレンビーズやガラスビーズ、さらに、ブチル基やフェニル基などの疎水性官能基が結合された一般的な担体などを担体として用いることができる。
【0044】
前記物理的な吸着を利用する担体結合方法では、例えば活性炭、酸性白土、漂白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、金属酸化物、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムなどの無機物質、デンプン、キチン、グルテン、セルロース、アガロース、タンニンなどの天然高分子、ポリスチレンなどの合成高分子、疎水性基を持ったアガロース誘導体などを担体として用いることができる。
【0045】
前記共有結合などの化学的結合による担体結合方法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられる。好ましくは、共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。好ましくは共有結合などのより安定した結合を形成できる化学的結合剤・架橋剤などが使用される。
【0046】
前記化学的結合剤・架橋剤としては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルジスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2− ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル (4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS)、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S− アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0047】
前記ペプチド法では、担体と所要のポリペプチドとの間にペプチド結合を形成させて固定化される。例えばカルボキシル基を持つ担体をアジド、クロリド、イソシアネートなどの誘導体とし、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基との間でペプチド結合を形成させる。
ペプチド合成に用いられる試薬、例えばカルボジイミド試薬、ウッドワード試薬K(N−エチル−5−フェニルイソキサゾリウム−3’−スルホナート)などが用いられる。担体のアミノ基及びカルボキシル基と所要のポリペプチド中のアミノ基及びカルボキシル基との間でペプチド結合を形成させることもできる。
【0048】
前記ジアゾ法は、芳香族アミノ基を持つ担体をジアゾニウム化合物とし、これと所要のポリペプチドとをジアゾカップリングさせて固定化するものである。遊離アミノ基、ヒスチジンのイミダゾール基、チロシンのフェノール性水酸基などを持つ当該ポリペプチドに好適に適用できる。担体としては、多糖類、アミノ酸共重合物、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂、エチレン・マレイン酸共重合物、多孔性ガラス・芳香族アミノ誘導体などが挙げられる。
【0049】
前記アルキル化法は、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基、フェノール性水酸基、スルフヒドリル基をハロゲンのような反応性官能基を持つ担体によりアルキル化して固定化する方法である。担体としては、ハロゲン化アセチル誘導体、トリアジニル誘導体、ハロゲン化メタクリル誘導体などが挙げられる。
【0050】
前記臭化シアン活性化法は、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類、多孔性ガラスなどを臭化シアンで活性化した後、当該ポリペプチドを固定化するものである。架橋試薬による結合法のうち、特にグルタルアルデヒドなどの二官能性試薬を用いた場合、セルロース、アガロース、アルブミン、ゼラチン、キトサンなどのアミノ基を導入されたあるいは有する天然高分子、合成高分子、多孔性ガラス、多孔性セラミックスなどの無機担体のアミノシラン誘導体などが挙げられる。
【0051】
前記ユギ反応とは、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、イソニトリル基が共存していて反応させると縮合反応が起こることを利用するものである。カルボキシル基又はアミノ基を持つ担体と当該ポリペプチドとを混合した中にアセトアルデヒド及び3−ジメチルアミノプロピルイソシアニドを加えることで反応させるものが挙げられる。担体としては、多糖類、ポリアクリルアミドのアミノ誘導体、ナイロンのイソニトリル誘導体などが挙げられる。
【0052】
前記生化学的特異結合法においては、特異的結合反応ペア同志の生化学的特異結合反応を利用するもので、例えば抗原とそれに対する抗体、抗体とハプテン、エフェクターとレセプター、酵素と酵素インヒビター、酵素基質、補酵素類、複合蛋白質における補欠分子団、レクチンと糖鎖含有物質、酵素と酵素基質、核酸とその相補的な核酸などが挙げられ、それらは公知のものの中から選んでよい。
【0053】
前記包括法とは、多糖類や蛋白質などの天然高分子や合成高分子の細いゲル・マトリックスの中に当該ポリペプチドを閉じ込めることによる高分子ゲルを用いる方法と、膜で区切られた空間に当該ポリペプチドを閉じ込める方法とに大別できる。膜包括法には、半透性の固体膜に包み込むマイクロカプセル型膜包括法、半透膜性のホロー・ファイバーや限外濾過膜による空間に包み込む方法、液体状の膜に包み込むリポソーム型などの方法が挙げられる。
【0054】
前記高分子ゲルを用いる方法は、網目構造を持つ高分子ゲルのマトリックスの中に当該ポリぺプチドを閉じ込めて固定化するもので、固定時にゲルを球状、フィルム状、チューブ状、膜状に自由に成形できる。当該ゲルの調製法としては、モノマーと架橋剤を重合させて高分子ゲルを形成させる方法、プレポリマーあるいはオリゴマーを重合させる方法、高分子を可溶性の状態から不溶の状態に変化させることによりゲルを形成させる方法などが挙げられる。当該ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂、ウレタンポリマーなどの合成高分子、κ−カラギーナン、アルギン酸、ペクチン、キトサン、デンプン、コラーゲンなどの天然高分子などが挙げられる。
【0055】
前記ポリアクリルアミドを用いる場合、アクリルアミドモノマー、架橋剤N、N’−メチレンビスアクリルアミド、重合促進剤N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、重合開始剤過硫酸カリウムを用いてゲル化させたり、γ線又はX線のような放射線を用いたりできる。アルギン酸カルシウムを利用する場合、アルギン酸ナトリウムは水に可溶であるが、そのカルシウム塩やアルミニウム塩は水に不溶であることを利用している。まずアルギン酸ナトリウム水溶液と当該ポリペプチドとを混合し、塩化カルシウム水溶液と接触させる。
【0056】
前記κ−カラギーナンを用いる場合、κ−カラギーナンは加熱すると水に溶解するが、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、脂肪族アミンなどが存在するとゲル化するので、こうして得られたゲルをグルタルアルデヒドやヘキサメチレンジアミンなどで架橋して安定化させる。
【0057】
前記光硬化性樹脂を用いる場合、適度な重合度のポリエチレングリコール(PEG)あるいはポリプロピレングリコール(PPG)を主鎖とし、その末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基などの光感応性基を組み込んだプレポリマーを用いることができる。該プレポリマーは光増感剤ベンゾインエチルエーテル又はベンゾインイソブチルエーテル存在下、当該ポリペプチドを含む溶液と混合し、紫外線を照射してゲル化させることができる。ウレタンプレポリマーは当該ポリペプチドを含む水溶液と混合するだけでゲル化させることができる。
【0058】
前記マイクロカプセル型膜包括法は、例えば親水性モノマーと疎水性モノマーとをその界面で重合させる際、当該ポリペプチドを被覆して固定化したり、液中乾燥法で例えばベンゼン、ヘキサン、クロロホルムなどの揮発性の高い有機溶媒にポリマーを溶解し、その中に当該ポリペプチドを含む水溶液を分散させ一次乳化液とし、次にこの一次乳化液をゼラチン、ポリビニルアルコール又は界面活性剤などの保護コロイド物質を含む水溶液中に分散させ、得られた二次乳化液から有機溶媒を除去することによりカプセルを形成させるものである。
【0059】
前記ホロー・ファイバーや限外濾過膜に当該ポリペプチドを固定化する方法では、複数の当該ポリペプチドを固定化することも可能で、さらに膜に結合すること無く遊離状態で固定化することができる。
【0060】
参考となる文献としては、例えば文献〔米国特許第4,003,988号;B. K. Van Weemen 及び A. H. A. Schuurs, Febs Letters, Vol. 15, No. 15:232−235(1971);P. Leinikki;Suvi Passila, J. Clin. Path., 29:116−120(1976);B. R. Brodeur, F. E. Ashton及び B. B. Diena, The Journal of Medical Microbiology, Vol. 15, No. 1:1−9(1981);J. Clin. Path., 29:150−153(1976);石川栄治、他編「酵素免疫測定法」株式会社医学書院、1978年〕などを挙げることができる。
【0061】
前記水不溶性担体とは、固定化、保存、測定などにおいて用いられる液体媒質に実質的に不溶性である担体を指す。当該担体としては、特異的結合反応に使用されるものが種々知られており、本発明においてもこれらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えば架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、架橋デキストラン、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体などのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質を乳化重合して得られたものなどの有機高分子物質、ガラス、例えば活性化ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナなどの無機材料などからなるもので、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
【0062】
本発明に係るガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体をカラムなどに詰めて被検試料を該カラムに通し、該結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカンン分子の分離、精製、および/または検出する方法に用いることができる。また、前記ガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体をカラムなどに詰めて被検試料を該カラムに通し、該結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を精製、分離および/または検出する方法に用いることができる。
【0063】
前記被検試料としては、例えば糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、非ペプチド性糖鎖含有化合物、合成化合物、発酵生産物、植物抽出物、動物などの組織抽出物、細胞抽出物などが挙げられる。被検試料に使用される試験化合物の例には、ガレクチン阻害剤、ガレクチンに対するインヒビター活性を有する化合物、特には合成化合物を含んでいてよい。
これら化合物は、新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0064】
前記ガレクチン分子を固定化した担体に、ガレクチン分子を介して結合したグリコサミノグリカン分子または形成されたガレクチン−グリコサミノグリカン結合体の検出は、該グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質を用いて行うことが好ましい。また、前記グリコサミノグリカンを固定化した担体に、グリコサミノグリカン分子を介して結合したガレクチン分子または形成されたガレクチン−グリコサミノグリカン結合体の検出は、該ガレクチン分子に特異的に結合する物質を用いて行うことが好ましい。当該物質としては、例えば該グリコサミノグリカン分子またはガレクチン分子に対する抗体等が親和性の強さから好ましい。
【0065】
前記抗体としてはポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を用いることが可能であり特に限定はされない。前記検出において、上記グリコサミノグリカン分子またはガレクチン分子に対する抗体を用いる場合は、当該抗体又は当該抗体に対する二次抗体を標識物質により標識することが、より正確なグリコサミノグリカン分子またはガレクチン分子の検出が可能となるため好ましい。
【0066】
前記標識物質としては、例えば特異的結合対(例えばビオチンとストレプトアビジン等のアビジン類、又はレクチンとそのレクチンが認識する糖鎖等)の一方の物質;FITC、フィコエリトリン、ユーロピウム、フィコシアニン、ローダミン、テキサスレッド、ウンベリフェロン、トリカラー、シアニン又は7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)等の蛍光物質類;ルミノール、アクリジニウム又はルシゲニン等の発光物質類、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼ等の酵素類;ジニトロフルオロベンゼン、AMP(アデノシン一リン酸)又は2,4−ジニトロアニリン等のハプテン類;及び125I、131I、3H等のラジオアイソトープ類等を用いることができる。
【0067】
前記標識物質の検出は、使用する標識物質に適した通常実施される方法により行うことが可能である。例えば、標識物質として上記酵素に分類されるペルオキシダーゼを用いた場合は、テトラメチルベンジジン(TMB)などの酸素受容体と過酸化水素(H)などの酸素供与体を反応させることにより、溶液の着色により検出することが可能である。
【0068】
本発明は、本発明に係るガレクチン−グリコサミノグリカン結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を精製、分離および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体を含むキットを提供する。また、本発明は、本発明のガレクチン−グリコサミノグリカン結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体を含むキットを提供する。
【0069】
生体内においてガレクチン分子は、ガラクトース含有糖鎖に結合することで種々の生理機能を発揮していると考えられている。このことから、ガレクチン分子の機能は、外部から加えたグリコサミノグリカン分子により促進または阻害することができる。したがって、本発明は、本発明に係るガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するグリコサミノグリカン分子により、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する方法を提供する。また、本発明はガレクチン−グリコサミノグリカン結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を含有する、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する組成物を提供する。当該組成物、および本発明に係るガレクチン−グリコサミノグリカン結合体は、各種疾病の予防および/または治療のための種々の医薬用材料として用いることも可能である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。
【0071】
実施例1
各種ガレクチン分子固定化カラムの作製
各種ガレクチン分子は、独立行政法人産業技術総合研究所において、既知の手法により調製した(ガレクチン−1、8N、8C、9N、9Cは香川大学、ガレクチン−3は帝京大学それぞれよりプラスミドを譲り受け、常法に従ってタンパク質発現、精製された)。
【0072】
ガレクチン分子固定化用担体としてNHSセファロース(アマシャム・バイオサイエンス社)を用い、添付書記載の方法に準じて、Nakamura S, Yagi F, Totani K. Ito Y, Hirabayashi J. FEBS J. 272:2784−2799 (2005)に記載の方法で各種ガレクチン分子固定化カラムを作製した(括弧内は固定化濃度、mgガレクチン/ml担体)。
【0073】
各ガレクチン分子は次の濃度でカラムに固定化した;ガレクチン−1(0.8mg/ml)、ガレクチン−3(0.5mg/ml)、ガレクチン−8N(3.6mg/ml)、ガレクチン−8C(4.0mg/ml)、ガレクチン−9N(3.6mg/ml)、ガレクチン−9C(3.0mg/ml)。各ガレクチンを固定化した担体は、ステンレス製ミニチュアカラム(内径2mm、長さ10mm;島津製作所製)に充填した。
【0074】
実施例2
蛍光標識(ピリジルアミノ化(以下「PA化」という))グリコサミノグリカン分子の調製
コンドロイチン(CH)、コンドロイチン硫酸A(CSA)、デルマタン硫酸(CSB)、コンドロイチン硫酸C(CSC)、コンドロイチン硫酸D(CSD)、コンドロイチン硫酸E(CSE)、角膜型ケラタン硫酸(KS−I)は、生化学工業(株)より購入した。
【0075】
ヒアルロナン(HA)、N−アセチルヘパロサン(NAH)、軟骨型ケラタン硫酸(KS−II)は、それぞれ生化学工業(株)において、鶏冠、大腸菌K5株培養上清、鮫軟骨から調製された。デルマタン(DN)は、CSBを公知の化学的手法により完全脱硫酸化して調製した。
【0076】
ケラタン硫酸構成オリゴ糖であるG2K1、G1L1、G4L4、L2L2、L2L4、L4L4、SL2L4のそれぞれについては、特許公開公報2006−047240号に記載の方法により調製した。
【0077】
以上の各糖鎖の蛍光標識は、広く公知のPA化法〔Hase S, Ikenaka T, Matsushima Y. Biochem. Biophys. Res. Commun. 85:257−263 (1978)〕によって行い、公知のゲル濾過HPLC法によって精製した。一方、コンドロイチンオリゴ糖(CH3〜CH12)は、PCT/JP2006/322847に記載の方法によって調製されたものを用いた。
【0078】
実施例3
FAC実施例(1):結合性試験
ガレクチン分子固定化カラムを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムに装着し、Nakamura S,Yagi F,Totani K,Ito Y,Hirabayashi J,FEBS Journal,272.,2784−2799(2005)に記載の方法により実験を行った。
【0079】
試料(PA化グリコサミノグリカンおよび陰性対照試料:ガレクチンと相互作用しないPA化糖)の導入容量は500μl、総試料量5〜50pmol程度とした。
【0080】
陰性対照試料としては、PA化N-アセチルグルコサミン(PA−GlcNAc、タカラバイオ製、PA化グリコサミノグリカン・オリゴ糖試料対象)またはPA化プルラン(Shodex社製標準プルランをPA化したもの、PA化グリコサミノグリカン多糖試料対照)を用い、蛍光検出によるこれらの溶出容積(V値)と、試料、即ちPA化グリコサミノグリカン糖鎖の溶出容積(V値)からV−V値を算出し、これを相互作用の強さの指標とした(蛋白質 核酸 酵素、Vol48、No.8、1206〜1212ページ、2003年)。実施例1の結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
PA化グリコサミノグリカン(HA、CH、DN、NAH、CSA、CSB、CSC、CSD、CSE、KS−I、KS−II)のV−V値はPA-GlcNAcに対して、PA化グリコサミノグリカン・オリゴ糖(G2K1、G1L1、G4L4、L2L2、L2L4、L4L4、SL2L4、CH3〜CH12)のV−V値はPA化プルランに対して、それぞれ算出して示した。
【0083】
なお、本実施例においては、V−V値が5μl未満の算出値については相互作用検出限界未満として扱った。すなわち、表3中において5μl以上のV−V値が示されているガレクチン−グリコサミノグリカン糖鎖の間に、相互作用(結合)が認められたことが示されている。
【0084】
表3に示したように、以下の結果が得られた。
(1)ガレクチン−8Cは、いずれのグリコサミノグリカン分子とも結合しなかった。
(2)KS−Iはガレクチン−1、3、9N、9Cと結合した。KS−IIはガレクチン−3、9N、9Cと結合したが、KS−Iとの結合よりも弱かった。これは、KS−IIの持つガラクトースのほとんどが硫酸基を持っているのに対し、KS−Iの持つガラクトースの多くが硫酸基を持っていないことに起因していると考えられた〔Funderburgh J.L.,Glycobiology10,951(2000)〕。
(3)ケラタン硫酸構成オリゴ糖の中でも、硫酸基を持たないガラクトースを有するオリゴ糖(即ちG2K1、G1L1、L2L2、L2L4、SL2L4)は、種々のガレクチン分子と結合した。一方で、ガラクトースがすべて硫酸基を持つオリゴ糖(即ちG4L4とL4L4)は、いずれのガレクチン分子とも結合しなかった。
(4)HA、NAH、およびコンドロイチン硫酸類(CSA、CSB、CSC、CSD、CSE)は、いずれのガレクチン分子とも結合が認められなかった。
(5)ガレクチン−3と9NはCHおよびDNと結合し、さらにコンドロイチンオリゴ糖鎖(CH3〜CH12)とも結合することがわかった。CHおよびCHオリゴ糖はその構造中にガラクトースを持たないが、N−アセチルガラクトサミンを持っており、それを介して結合していると考えられた。
【0085】
実施例4
FAC実施例(2):競合阻害実験
ガレクチン分子と該ガレクチン分子に結合する糖鎖との結合をグリコサミノグリカン分子により阻害する競合阻害のモデル実験をFACにより実施した。FACの実施は、上記の実施例1に従った。また、ガレクチン分子に対して結合することが知られているモデル糖鎖として、ラクト−N−ネオテトラオース(以下LNnT、Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、生化学工業より購入)のPA化物を使用した。
【0086】
実験は、終濃度5.0nMのPA−LNnT試料溶液に対して種々の濃度のグリコサミノグリカン分子(PA化していないもの、即ち阻害糖鎖)を混合してFACにおける溶出容積(V値)を測定し、非混合時の溶出容積(V値)と陰性対照試料の溶出容積(V値)から、以下の通り阻害率(%)を算出した。
【0087】
阻害率(%)= 100×(V−V)/(V−V
なお、本実験に用いた非標識(PA化されていない)CH4、CH6、CH10、HA4、CSA4は、それぞれ生化学工業(株)において公知の方法に従って調製した。FAC実施例(2)の結果を表4および5に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
表4に示したように、ガレクチン−3とLNnTとの結合はCSA4、HA4では阻害されなかったが、FAC実施例(1)においてガレクチン−3に結合したコンドロイチンオリゴ糖では、阻害効果が確認された。また、表5に示したように、ガレクチン−9NとLNnTとの結合がCH4によって濃度依存的に阻害されることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記に述べたように、本発明により新規物質としてのガレクチン−グリコサミノグリカン結合体が提供されるとともに、ガレクチン分子またはグリコサミノグリカン分子の分離、精製、検出ツールが提供される。また、ガレクチン分子結合性のグリコサミノグリカン分子は生体内における該ガレクチン分子の生理的機能の調節に利用できる可能性があり、医療への適用が期待される。
【0092】
さらには、本発明により明らかとなった種々のガレクチン分子とグリコサミノグリカン分子との結合性は、国際公開公報WO 2005/064327号等に記載のグリコサミノグリカン糖鎖の構造を推定する方法に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−1(galectin−1;Gal−1)またはガレクチン−9のC−末端糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain;CRD)(ガレクチン−9C;galectin−9C;Gal−9C)、
(II)非還元末端に非硫酸化ガラクトースを有し、かつ、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖。
ここで、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を示す。
【請求項2】
ガレクチン分子がガレクチン−1であり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、請求項1に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)
(ii)下記式(1)〜(3)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
【請求項3】
ガレクチン分子がガレクチン−9Cであり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、請求項1に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(4)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
【請求項4】
下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−8のN末端糖鎖認識ドメイン(galectin−8N;Gal−8;Gal−8N)
(II)以下のいずれか1つである。
II−1.非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖
II−2.非還元末端にシアル酸残基を有する構造を持つ糖鎖
【請求項5】
グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、請求項4に記載の結合体;
(i)デルマタン(dermatan;DN)
(ii)下記式(5)で表される構造を有するオリゴ糖鎖
SL2L4;NeuAc α2-3 Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(5)
ここで、式中のNeuAcはN−アセチルノイラミン酸残基を、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、α2-3はα2-3グリコシド結合を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
【請求項6】
下記(I)で示されるガレクチン分子と、下記(II)で示されるグリコサミノグリカン分子とから構成される結合体;
(I)ガレクチン−3(galectin−3;Gal−3)またはガレクチン−9のN−末端糖鎖認識ドメイン(ガレクチン−9N;galectin−9N;Gal−9N)
(II)以下のいずれか1つである。
II−1.非硫酸化ガラクトース残基を有し、Gal−GlcNAcの繰り返し構造を有する糖鎖、
II−2.非硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有する糖鎖
【請求項7】
ガレクチン分子がガレクチン−3であり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、請求項6に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(5)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
SL2L4;NeuAc α2-3 Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(5)
ここで、式中のNeuAcはN−アセチルノイラミン酸残基を、Galはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、α2-3はα2-3グリコシド結合を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
(iii)デルマタン(dermatan;DN)
(iv)コンドロイチン(chondroitin;CH)
(v)下記式(6)〜(12)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
CH6;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(6)
CH7;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(7)
CH8;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(8)
CH9;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(9)
CH10;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(10)
CH11;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(11)
CH12;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(12)
ここで、式中のGlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
【請求項8】
ガレクチン分子がガレクチン−9Nであり、かつ、グリコサミノグリカン分子が以下のいずれか1つである、請求項6に記載の結合体;
(i)角膜型ケラタン硫酸(keratan sulfate−I;KS−I)または軟骨型ケラタン硫酸(keratan sulfate−II;KS−II)
(ii)下記式(1)〜(4)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
G2K1;Gal β1-4 GlcNAc β1-3 Gal(1)
L2L2;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal β1-4 GlcNAc6S(2)
L2L4;Gal β1-4 GlcNAc6S β1-3 Gal6S β1-4 GlcNAc6S(3)
G1L1;GlcNAc β1-3 Gal β1-4 GlcNAc(4)
ここで、式中のGalはガラクトース残基を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、6SはC6位に硫酸基が保持されていることを、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
(iii)デルマタン(dermatan;DN)
(iv)コンドロイチン(chondroitin;CH)
(v)下記式(6)〜(15)で表されるいずれか1つの構造を有するオリゴ糖鎖
CH6;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(6)
CH7;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(7)
CH8;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )3 GalNAc(8)
CH9;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(9)
CH10;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )4 GalNAc(10)
CH11;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(11)
CH12;GlcA β1-3 ( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )5 GalNAc(12)
CH3;GalNAc β1-4 GlcA β1-3 GalNAc(13)
CH4;GlcA β1-3 GalNAsc β1-4 GlcA β1-3 GalNAc(14)
CH5;( GalNAc β1-4 GlcA β1-3 )2 GalNAc(15)
ここで、式中のGlcNAcはN−アセチルグルコサミン残基を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を、GlcAはグルクロン酸残基を、β1-4はβ1-4グリコシド結合を、β1-3はβ1-3グリコシド結合をそれぞれ示す。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体。
【請求項11】
請求項9に記載の担体を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の担体を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出する方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するガレクチン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を固定化した担体を含むキット。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体または該結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を、分離、精製および/または検出するための、該結合体を構成するガレクチン分子を固定化した担体を含むキット。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を構成するグリコサミノグリカン分子により、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を構成するグリコサミノグリカン分子を含有する、該結合体を構成するガレクチン分子の生物学的活性を促進または阻害する組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物を含有する医療用材料。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合体を含有する医療用材料。

【公開番号】特開2013−56932(P2013−56932A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257741(P2012−257741)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2007−133090(P2007−133090)の分割
【原出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、糖鎖エンジニアリングプロジェクト/糖鎖構造解析技術開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】