説明

新規なトランスアルキル化プロセス

本発明は、高収量のキシレンを得るためのC、C、及びC10芳香族物質のトランスアルキル化のための触媒及び方法を具現化する。本触媒は、60nm以下の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さ、及び少なくとも0.10cc/gのメソ細孔体積を有するMOR骨格タイプを有する微結晶の球状凝集体を含む新規なUZM−14触媒材料を含む。UZM−14触媒は、トランスアルキル化プロセスにおいて非常に活性で安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、芳香族炭化水素を転化させるため、より詳しくは芳香族炭化水素をトランスアルキル化してキシレンを得るための触媒及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]キシレン異性体は、種々の重要な工業用化学物質のための供給材料として石油から大量に製造されている。キシレン異性体の中では、大規模の需要からの高い成長速度を保有し続けているポリエステル用の主要な供給材料であるパラキシレンが最も重要である。オルトキシレンは、大規模であるが成熟した市場を有する無水フタル酸を製造するのに用いられる。メタキシレンは、可塑剤、アゾ染料、及び木材保存料などの製品のために、より少ないが成長する量で用いられている。エチルベンゼンは、一般にキシレン混合物中に存在しており、時にはスチレン製造のために回収されるが、通常はC芳香族物質のより望ましくない成分と考えられている。
【0003】
[0003]芳香族炭化水素の中で、キシレンの総合的な重要性は、工業用化学物質のための供給材料としてベンゼンのものと競っている。キシレンもベンゼンも、ナフサの改質によっては需要を満足する十分な量で石油から製造されず、キシレン及びベンゼンの収量を増加させるためには他の炭化水素を転化させることが必要である。トルエンは、通常は脱アルキル化してベンゼンを製造するか、或いは不均化させてベンゼン及びC芳香族物質を生成させ、これから個々のキシレン異性体を回収する。より最近では、より重質の芳香族物質をトルエンによってトランスアルキル化して芳香族コンプレックスからのキシレンの収量を選択的に増加させるプロセスが商業化されている。
【0004】
[0004]当該技術においては、芳香族炭化水素をトランスアルキル化するための種々の触媒が教示されている。モルデナイトなどの広範囲のゼオライトが、有効なトランスアルキル化触媒として開示されている。成形触媒、複合ゼオライト、金属調整剤、及び蒸気カ焼のような処理が、触媒の有効性を増加させるものとして記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒の安定性及び重質材料の転化率を向上させる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]本発明によれば、全ての公知の従来技術の形態のモルデナイトが有するものとは大きく異なる吸着特性及び触媒活性を有する新規な変性形態のモルデナイトが提供される。
【0007】
[0006]本発明の主たる目的は、アルキル芳香族炭化水素をトランスアルキル化する方法を提供することである。より詳しくは、本発明方法は、C〜C11+芳香族物質を用いるトルエンのトランスアルキル化における向上した活性を示すUZM−14触媒上で、芳香族炭化水素を所望のキシレン異性体の向上した収率で転化することに関する。
【0008】
[0007]したがって、本発明の広範な態様は、供給流を、トランスアルキル化条件において、12員環チャネルを含むMOR骨格タイプ、少なくとも0.10cc/gのメソ細孔体積、及び60nm以下の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さを有する微結晶の球状凝集体を含むUZM−14凝集体材料を含む触媒と接触させることを含む、C、C、C10、及びC11+芳香族物質の1以上を含む供給流をトランスアルキル化して、供給流のものと比べて増加したC芳香族物質の濃度を有するトランスアルキル化生成物流を得る方法である。
【0009】
[0008]より具体的な態様は、供給流を、トランスアルキル化条件において、12員環チャネルを含むMOR骨格タイプ、少なくとも0.10cc/gのメソ細孔体積、及び60nm以下の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さを有する微結晶の球状凝集体を含むUZM−14凝集体材料、アルミナ、シリカ、及びシリカ−アルミナの1以上から選択されるバインダー、並びに周期律表の第VIB(6)、VIIB(7)、VIII(8〜10)、及びIVA(14)族から選択される1以上の元素を含む金属成分を含む触媒と接触させることを含む、C、C、C10、及びC11+芳香族物質を含む供給流をトランスアルキル化して、供給流のものと比べて増加したC芳香族物質の濃度を有する生成物流を得る方法である。
【0010】
[0009]更により具体的な態様は、供給流を、トランスアルキル化条件において、12員環チャネルを含むMOR骨格タイプ、少なくとも0.10cc/gのメソ細孔体積、及び60nm以下の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さを有する微結晶の球状凝集体を含むUZM−14凝集体材料、MFI、MEL、EUO、FER、MFS、MTT、MTW、TON、MOR、及びFAUの1以上から選択される更なるゼオライト成分、アルミナ、シリカ、及びシリカ−アルミナの1以上を含むバインダー、並びに周期律表の第VIB(6)、VIIB(7)、VIII(8〜10)、及びIVA(14)族から選択される1以上の元素を含む金属成分を含む、芳香族炭化水素を転化させるのに好適な触媒と接触させることを含む、C、C、C10、及びC11+芳香族物質を含む供給流をトランスアルキル化して、供給流のものと比べて増加したC芳香族物質の濃度を有する生成物流を得る方法である。
【0011】
[0010]これらの並びに他の対象及び態様は、以下の本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0011]図1は、幾つかの試料を用いて得られた12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さ、メソ細孔体積、及び転化率の三次元比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0012]本方法への供給流は、一般式:C(6−n)(式中、nは0〜5の整数であり、Rは、任意の組み合わせのCH、C、C、又はCである)のアルキル芳香族炭化水素を含む。好適なアルキル芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらは本発明を限定するものではない。
【0014】
[0013]トランスアルキル化又は不均化プロセスへの芳香族物質に富む供給流は、限定なしに、接触改質、軽質のオレフィン及びより重質の芳香族物質に富む副生成物を与えるナフサ、蒸留物、又は他の炭化水素の熱分解、並びにガソリン範囲の生成物を与える重油の接触又は熱分解などの種々の源から誘導することができる。熱分解又は他の分解操作からの生成物は、一般にイオウ、オレフィン、及び生成物の品質に悪影響を与える可能性のある他の化合物を除去するために、複合施設に充填する前に産業界において周知のプロセスにしたがって水素処理する。軽質のサイクルオイルはまた、有益には水素化分解して、接触改質して芳香族物質に富む供給流を生成することができるより軽質の成分を得ることができる。供給流が接触改質物である場合には、改質器は、好ましくは、生成物中の非芳香族物質の低い濃度と共に高い芳香族物質の収率を与えるために非常に厳しい条件で運転する。また、改質物は有利にはオレフィン飽和にかけて、潜在的な生成物汚染物質、及びトランスアルキル化プロセスにおいて重質の転化できない物質に重合する可能性がある物質を除去する。かかる処理工程は、US−6,740,788−B1(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0015】
[0014]トランスアルキル化又は不均化プロセスへの供給流は、炭素原子数6〜15の実質的に純粋なアルキル芳香族炭化水素、複数のかかるアルキル芳香族炭化水素の混合物、或いはかかるアルキル芳香族物質に富む炭化水素フラクションであってよい。供給流は、一般式:C(6−n)(式中、nは1〜5の整数であり、Rは、任意の組み合わせのCH、C、C、C、又はC11の1以上である)のアルキル芳香族炭化水素を含む。供給流はまた、ベンゼン及び2〜4個の環を有する芳香族物質を含んでいてもよい。したがって、供給流の好適な成分としては、一般に、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、プロピルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、エチルプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、インダン、ナフタレン、テトラリン、デカリン、ビスフェニル、ジフェニル、及びフルオレンが挙げられるが、これらは本発明を限定するものではない。供給流はまた、より低濃度の、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びより重質のパラフィンのような非芳香族物質を、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、及びより重質のナフテンと共に含んでいてもよく、ペンタン及びより軽質のパラフィンは一般に芳香族物質複合施設内で処理する前に除去する。混合したトランスアルキル化供給流は、好ましくは10重量%以下の非芳香族物質を含み、オレフィンは好ましくは1000以下、好ましくは500以下の臭素インデックスに制限される。
【0016】
[0015]供給材料の好ましい成分はC芳香族物質を含む重質芳香族物質流であり、これによりトルエン及びC芳香族物質のトランスアルキル化が起こって更なるキシレンが生成する。ベンゼンもトランスアルキル化させて更なるトルエンを生成させることができる。インダンは、C芳香族生成物の高収率を与える望ましい成分ではないが、重質芳香族物質流中に存在していてもよい。C10+芳香族物質もまた、好ましくは供給流の30%以下の量で存在していてもよい。重質芳香族物質流は、好ましくは少なくとも90質量%の芳香族物質を含み、ベンゼン及びトルエン供給材料と同じか又は異なる公知の精製及び石油化学プロセスから誘導することができ、及び/又はトランスアルキル化からの生成物の分離から再循環することができる。
【0017】
[0016]供給材料は、好ましくは、気相中において、水素の存在下でトランスアルキル化する。液相中でトランスアルキル化する場合には、水素の存在は随意である。存在する場合には、遊離水素は、アルキル芳香族物質1モルあたり0.1モル乃至アルキル芳香族物質1モルあたり10モルの量で供給材料及び再循環炭化水素と会合する。このアルキル芳香族物質に対する水素の比は、水素/炭化水素比とも呼ばれる。トランスアルキル化反応により、好ましくは、増加したキシレン含量を有し、トルエンも含む生成物が生成する。
【0018】
[0017]トランスアルキル化反応区域への供給流は、通常はまず反応区域の流出流に対する間接熱交換によって加熱し、次に加温流、蒸気、又は炉との交換によって反応温度に加熱する。供給流は、次に1以上の個々の反応器を含んでいてよい反応区域に通す。混合した供給流を反応区域に通すことによって、未転化の供給流及び生成物炭化水素を含む流出流が生成する。この流出流は、通常は反応区域に導入される流れに対する間接熱交換によって冷却し、次に空気又は冷却水を用いることによって更に冷却する。流出流はストリッピングカラム中に送ることができ、ここで流出流中に存在する実質的に全てのC及びより軽質の炭化水素を塔頂流中に凝縮し、プロセスから除去する。芳香族物質に富む流れが最終的なストリッパーの塔底流として回収され、ここではこれをトランスアルキル化流出流と呼ぶ。
【0019】
[0018]トランスアルキル化又は不均化反応は、任意の通常か又は他の好都合な方法で本発明の触媒複合体と接触させて行うことができ、これはバッチ又は連続タイプの操作を含んでいてよく、連続操作が好ましい。触媒は有用には縦型管状反応器の反応区域内の固定床として配置され、アルキル芳香族供給材料は上向き流又は下向き流で床を通して投入される。トランスアルキル化区域内で用いられる条件は、通常は200℃〜540℃、好ましくは200℃〜480℃の間の温度を含む。トランスアルキル化区域は、広範には100kPa〜6MPa絶対圧の範囲の中程度の昇圧下で操作する。トランスアルキル化反応は広範囲の空間速度で行うことができ、則ち、1時間あたり触媒の体積あたりの投入体積:液空間速度は概して0.1〜20hr−1の範囲である。本触媒は、高い活性レベルにおけるその比較的高い安定性に関して特に注目に値する。
【0020】
[0019]トランスアルキル化流出流は、軽質再循環流、混合C芳香族物質生成物、及び重質芳香族物質流に分離する。混合C芳香族物質生成物は、パラキシレン及び他の価値のある異性体の回収に送ることができる。軽質再循環流は、ベンゼン及びトルエン回収のような他の用途に迂回させることができるが、或いは部分的にトランスアルキル化区域に再循環する。重質再循環流は、実質的に全てのC及びより重質の芳香族物質を含み、部分的か又は全体的にトランスアルキル化反応区域に再循環することができる。
【0021】
[0020]本発明のUZM−14は、独特の吸着特性及び触媒活性を有し、Atlas of Zeolite Framework Types, 改訂6版, C.H. Baerlocher, L.B. MuCusker, 及びD.H. Olson編, Elsevier (2007), pp.218-219に記載されているようなMOR骨格タイプを有する新規なアルミノケイ酸塩ゼオライトである。MOR骨格は、結晶格子が結晶軸に沿って平行に走る12員環チャネルを含むように配列しているSiO及びAlO四面体の4及び5員環を含む。このゼオライトは、通常は10〜50のシリカ−アルミナモル比を有することを特徴とする。本発明は、特定の結晶の特徴によって、芳香族物質のトランスアルキル化における向上した活性及び選択性のための内部微細孔体積への向上した接近容易性が与えられるという発見に基づく。
【0022】
[0021]本発明のUZM−14凝集体材料は、次の個別の特徴の1以上を有することを特徴とする。
【0023】
(1)球状凝集体が少なくとも0.10cc/g、好ましくは少なくとも0.13cc/gのメソ細孔体積を有する;
(2)UZM−14微結晶がUZM−14材料1gあたり少なくとも1×1019個の12員環チャネルを有する;
(3)12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さが、60nm以下、好ましくは50nm以下である;
(4)UZM−14凝集体材料のSi/Al比が、概して8〜12の間、好ましくは30以下である。
【0024】
[0022]本発明のUZM−14は、合成されたままの形態で、無水ベースで、実験式:
n+p+Al1−xSi
(式中、Mは少なくとも1種類の交換可能なカチオンであり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの混合物など(しかしながらこれらに限定されない)のアルカリ及びアルカリ土類金属からなる群から選択される)
によって表される実験組成式を有する。Rは、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、第4級アンモニウムイオン、ジ4級アンモニウムイオン、プロトン化アルカノールアミン、及び第4級化アルカノールアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種類の有機カチオンである。この成分に関し、「m」はAlに対するMのモル比であり、0.05〜0.95の範囲であり、「r」はAlに対するRのモル比であり、0.05〜0.95の値を有し、「n」はMの加重平均価数であり、1〜2の値を有し、「p」はRの加重平均価数であり、1〜2の値を有し、「y」はAlに対するSiのモル比であり、3〜50の範囲であり、「z」はAlに対するOのモル比であり、等式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって定められる値を有する。
【0025】
[0023]本発明のUZM−14凝集体材料は、M、R、アルミニウム、及びケイ素の反応性源を配合することによって形成される反応混合物の水熱結晶化によって製造する。アルミニウムの源としては、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、アルミニウム金属、アルミニウム塩、及びアルミナゾルが挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウムアルコキシドの具体例としては、アルミニウムオルトsec−ブトキシド、及びアルミニウムオルトイソプロポキシドが挙げられるが、これらに限定されない。シリカの源としては、テトラエチルオルトシリケート、コロイダルシリカ、沈降シリカ、アルカリケイ酸塩、HiSil、及びUltrasilが挙げられるが、これらに限定されない。M金属の源としては、それぞれのアルカリ又はアルカリ土類金属のハロゲン化物塩、硝酸塩、酢酸塩、及び水酸化物が挙げられる。Rが第4級アンモニウムカチオン又は4級化アルカノールアンモニウムカチオンである場合には、その源としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、及びフッ化物化合物が挙げられる。具体例としては、限定なしに、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。Rはまた、アミン、ジアミン、又はアルカノールアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリエチルアミン、及びトリエタノールアミンとして導入することもできる。
【0026】
[0024]場合によってはUZM−14の種晶を含む、所望の成分の反応性源を含む反応混合物を、85℃〜225℃、好ましくは110℃〜170℃の温度において、1日間〜2週間の時間、好ましくは2日間〜6日間の時間、密封反応容器内、自生圧下で反応させる。100〜1000、好ましくは200〜500rpmの間の有効な混合が、本発明を実現するために重要である。結晶化が完了したら、濾過又は遠心分離のような手段によって固体生成物を不均一混合物から単離し、次に脱イオン水で洗浄し、空気中、100℃以下の雰囲気温度において乾燥する。
【0027】
[0025]合成した状態で、UZM−14は、そのチャネル内に若干の交換可能か又は荷電を平衡にするカチオンを含む。これらの交換可能なカチオンは、他のカチオンと交換することができ、或いは有機カチオンの場合には、これらは制御された条件下での加熱によって除去することができる。モルデナイトは大孔径ゼオライトであるので、例えば10〜12のpHにおける水性アンモニア処理によるイオン交換によって直接若干の有機カチオンを除去することもできる。
【0028】
[0026]本発明の触媒は、耐熱性無機酸化物バインダー及び金属成分を含む。本触媒はまた、好ましくは予備硫化工程にかけて、元素基準で0.05〜2重量%のイオウを含ませる。
【0029】
[0027]本発明の無機酸化物バインダー成分は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チアニア、トリア、ボリア、マグネシア、クロミア、酸化第2スズなど、並びにこれらの組み合わせ及び複合体、例えばアルミナ−シリカ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−チタニア、リン酸アルミニウムなどのような物質を含む。バインダーは、好ましくは、アルミナ、シリカ、及びシリカ−アルミナの1以上から選択される。特にアルキル芳香族炭化水素のトランスアルキル化において用いるための触媒複合体の製造に関しては、アルミナがここで用いるのに特に好ましい耐熱性無機酸化物である。アルミナは、ベーマイト構造のα−アルミナ一水和物、ギブサイト構造のα−アルミナ三水和物、バイヤライト構造のβ−アルミナ三水和物などのような任意の種々の水和酸化アルミニウム又はアルミナゲルであってよく、1番目に言及したα−アルミナ一水和物が好ましい。他の好ましいバインダーは、US−4,629,717(参照として本明細書中に包含する)に記載されているリン酸アルミニウムである。
【0030】
[0028]バインダーとゼオライトを任意の通常か又は他の好都合な方法で配合して、球状体、錠剤、ペレット、顆粒、押出物、又は他の好適な粒子形状を形成することができる。例えば、微粉砕ゼオライト及び金属塩粒子をアルミナゾル中に分散し、混合物を次に加熱油浴中に液滴として分散させ、これによってゲル化を起こしてほぼ球状のゲル粒子を形成することができる。この方法は、US−2,620,314により詳細に記載されている。好ましい方法は、微粉砕形態の選択されたゼオライト、耐熱性無機酸化物、及び金属塩を、バインダー及び/又は潤滑剤と混合して、混合物を均一な寸法及び形状の錠剤又はペレットに圧縮することを含む。或いは、更により好ましくは、ゼオライト、耐熱性無機酸化物、及び金属塩を配合し、混合粉砕器内で解膠剤(希釈硝酸が好適な解膠剤の一例である)と混合する。得られる生地を所定寸法のダイ又はオリフィスに通して圧縮して押出物粒子を形成し、これを乾燥及びカ焼してそのまま利用することができる。円筒形、四つ葉形、亜鈴形、並びに対称及び非対称の多葉形(三葉形態が好ましい)など(しかしながらこれらに限定されない)の複数の異なる押出物の形状が可能である。押出物はまた、回転盤又はドラムを用いて球状体に成形して、次に乾燥及びカ焼することもできる。
【0031】
[0029]本発明の触媒には、場合によって更なるゼオライト成分を含ませることができる。更なるゼオライト成分は、好ましくはMFI、MEL、EUO、FER、MFS、MOR、MTT、MTW、MWW、MAZ、TON、及びFAU(ゼオライト命名に関するIUPAC委員会)、並びにUZM−8(WO−2005/113439(参照として本明細書中に包含する)を参照)の1以上から選択される。より好ましくは、特に触媒をトランスアルキル化プロセスにおいて用いる場合には、更なるゼオライト成分は、実質的にMFIから構成される。触媒中の好適な全ゼオライト量は、1〜100重量%、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%の範囲である。
【0032】
[0030]触媒は、好ましくは周期律表のVIB(6)、VIIB(7)、VIII(8〜10)、IB(11)、IIB(12)、IIIA(13)、及びIVA(14)族から選択される1以上の元素を含む金属成分を含む。好ましくは、触媒をトランスアルキル化プロセスにおいて用いる場合には、金属成分は、レニウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、及びタングステンの1以上から選択される。触媒にはまたリンを含ませることもできる。トランスアルキル化触媒中の好適な金属の量は元素基準で0.01〜15重量%の範囲であり、0.1〜12重量%の範囲が好ましく、0,1〜10重量%の範囲が非常に好ましい。触媒はまた、好ましくは予備硫化工程にかけて、元素基準で0.05〜2重量%のイオウを含ませる。この予備硫化工程は、触媒の製造中か、又は触媒をプロセスユニット中に装填した後のいずれかに行うことができる。
【0033】
[0031]最終複合体は、好ましくは、空気雰囲気中、425℃〜750℃の温度、好ましくは475℃〜550℃の温度において、0.5〜10時間の間カ焼する。
【0034】
[0032]UZM−14の12員環チャネルへの反応物質の接近が、芳香族炭化水素のトランスアルキル化のための触媒の活性及び安定性に影響を与える最も重要なパラメーターであることが見出された。この接近は、微結晶の寸法、メソ細孔体積、及びゼオライトの単位あたりの12員環チャネル開口に関係することが見出された。最も重要なパラメーターは、明らかに12員環チャネルの方法に対して平行方向の微結晶の長さであり、これは60nm以下、好ましくは50nm以下でなければならない。
【実施例】
【0035】
[0033]以下の実施例は、アンモニウム交換しカ焼したUZM−14についての試験結果及び測定された特性に基づく。特許請求の範囲は、合成したまま、或いはイオン交換の前又は後、及び/又はカ焼の前又は後などの任意の製造又は配合段階におけるUZM−14を包含する。実施例は本発明の例示として示すものであり、特許請求の範囲において示す本発明の概して広い範囲に対して限定するものと解釈すべきではない。
【0036】
[0034]触媒の配合及び詳細な試験のために、実施例1においてはUZM−14の2種類の試料を調製し、UZM−14A及びUZM−14Bと呼んだ。試料は、NaOH、アルミン酸ナトリウム、SiO(Ultrasil)、及びテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)、並びに十分量の脱イオン水から調製し、示された温度において、示されたrpmでの撹拌下で、示された時間の間結晶化を行った。得られた微結晶の球状凝集体を脱イオン水で3回洗浄し、100℃の温度において乾燥した。
【0037】
実施例1:
【0038】
【表1】

【0039】
[0035]UZM−14試料と比較するために、公知の最新技術のモルデナイトの試料をZeolyst International及びTosoh Corporationから入手した。実施例2においては、2種類のUZM−14試料並びにZeolyst及びTosoh試料の特性を比較した。
【0040】
[0036]X線回折データにScherrer式を適用することによって、12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さを求めた。分析の前に、NH交換形態を窒素中において540℃に2時間、次に空気中において5時間加熱することによって、UZM−14及び市販のモルデナイトのそれぞれを水素形態に変換した。具体的には、CuKα放射線に関する23.8°2θにおけるMOR成分の(002)回折ピークに関して半値全幅(FWHM)を測定し、次にScherrer式:
002=0.9・λ/(β・cos(θ))
(式中、λはCuKα放射線に関する波長であり、θは回折角の1/2であり、βは等式:
β1/2=B1/2−b1/2
(式中、Bはピークに関して測定されたFWHMであり、bは装置による拡がりのみを示す装置標準に関して測定されたFWHMである)
を用いて装置による拡がりに関して補正したピークに関するFWHMである)
から12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さ(L002)を計算した。ピークは、形状が部分的にガウス分布で部分的にコーシー分布であると仮定した。
【0041】
MOR骨格タイプのゼオライト1gあたりの12員環チャネル開口の数:Nは、12員環チャネルの方向に平行方向の平均微結晶長さに反比例し、式:
=(4・N・c)/(L002・MW)
(式中、Nはアボガドロ数(6.023・1023)であり、cはc軸の単位セル長さであり、L002は12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さであり、MWは単位セル内容物の分子量である)から算出した。本試料に関しては、この式は、(L002は、nmで測定)約分して
=6.2×1020/L002
にする。
【0042】
[0037]高解像度SEM画像から、UZM−14試料及び市販のモルデナイトに関する粒径を評価した。粒子は集合微結晶を含んでいる可能性があるので、SEM粒径は一般に微結晶の寸法よりも大きい。
【0043】
[0038]これらの材料のそれぞれに関するメソ細孔体積を、以下のような窒素吸着等温線から求めた。分析の前に、NH交換形態を窒素中で540℃に2時間、次に空気中で5時間加熱することによって、UZM−14及び市販のモルデナイトのそれぞれを水素形態に変換した。次に、吸着等温線を測定し、P/P0の最も高い値(約0.98)における窒素吸収量から全孔体積を求めた。t−プロットを用いて微細孔体積を評価した。全孔体積から微細孔体積を減じることによってメソ細孔体積を得た。
【0044】
[0039]更なる試験のために、上記に記載のUZM−14粉末及び市販のモルデナイトのそれぞれを、0.15%のRe、25%のAlバインダー、及び75%のUZM−14又は市販のモルデナイト材料を含む触媒に形成した。代表的な触媒の製造においては、100gのアンモニウム交換ゼオライトを解膠Catapal Bアルミナと一緒に押出して、75%ゼオライト/25%アルミナ配合物を調製した。押出物を空気中550℃において3時間カ焼し、次に触媒上に0.15%のReを目標としてHReO水溶液を回転含浸した。次に、Reを含む押出物を、空気中540℃において2時間カ焼した。
【0045】
[0040]芳香族物質トランスアルキル化試験において、これらの触媒試料のそれぞれに関して活性試験を行った。350℃、反応器圧力=250psig、重量空間速度=4、及びH:HC比=6において、トランスアルキル化、脱アルキル化、及び不均化反応の加重平均全転化率を測定した。触媒は、試験ユニット内において、試験の最初の1時間の間に供給流に過剰のジメチルジスルフィドをドープする(250ppm−S)ことによって硫化した。消費された触媒上のS/Reモル比は、通常は0.5〜0.8の範囲であった。供給流は、みかけ上、重量%で以下の組成を有していた。
【0046】
【表2】

【0047】
これらの触媒のそれぞれについての上記記載の供給流のトランスアルキル化に関する比較転化結果、並びにZeolyst及びTosoh試料の特性を、実施例2において示す。
【0048】
実施例2:
【0049】
【表3】

【0050】
実施例3:
[0041]実施例1において議論したパラメーターに対して僅かな変更を加えて、UZM−14A及びUZM−14Bと同様の方法で更なるUZM−14試料を調製し、それぞれの試料に関して、12員環チャネルの方向に対して平行方向の微結晶長さ、メソ細孔体積、及び転化率を測定した。
【0051】
【表4】

【0052】
[0042]上記の結果を添付の三次元図に示す。ここで、それぞれの点の下の垂直線は25%の基準よりも高い転化率%を表す。上記の結果は、12員環チャネルの方向に対して平行方向のより短い微結晶長さ、及び増加したメソ細孔体積の有利性を明確に示している。
【0053】
実施例4:
[0043]50%のUZM−14、25%のMFIゼオライト、及び25%の解膠Catapal Bの混合物を、硝酸ニッケル、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、及びリン酸の溶液とブレンドすることによって、上記に記載のUZM−14A及びUZM−14B材料を触媒に形成して、0.45%のNi、2%のMo、及び0.3%のPを有する触媒を得た。押出の後、触媒を空気中500℃において2時間カ焼した。
【0054】
[0044]次に、硫化段階を20時間に延長してより多量の金属の完全な硫化を行うのに十分な時間にした他は、実施例9において用いたものと同じ条件下でこれらの触媒を活性に関して試験した。350℃において得られた転化率は以下の通りであった。
【0055】
【表5】

【0056】
実施例5:
[0045]更なる試験のために、UZM−14粉末及びZeolystからの市販のモルデナイト粉末:CBV 21Aをそれぞれ、同様の方法で、0.15%のRe、25%のAlバインダー、及び75%のUZM−14又は市販のモルデナイト材料を含む触媒に形成した。アンモニウム交換ゼオライトを解膠Catapal Bアルミナと一緒に押出して、75%ゼオライト/25%アルミナ配合物を調製した。押出物を空気中550℃において3時間カ焼し、次に触媒上に0.15%のReを目標としてHReO水溶液を回転含浸した。次に、Reを含む押出物を、空気中540℃において2時間カ焼した。
【0057】
[0046]それぞれの触媒に関して、400psigの圧力、4の重量空間速度、4のH/HC比、及び50%の転化率を保持するのに必要な温度においてパイロットプラント試験を行った。試験は、これらの条件において、触媒1ポンドあたり2.8バレルの炭化水素供給流の触媒寿命まで行った。触媒は、試験ユニット内において、試験の前に、280℃及び400psigにおいて、ジメチルジスルフィド(DMDS)として10ppmのイオウを含む炭化水素供給流中で4WHSV及び4のH/HCにおいて6時間硫化した。供給流は、見かけ上重量%で以下の組成を有していた。
【0058】
【表6】

【0059】
[0047]下表にこの試験の結果を示す。UZM−14をベースとする触媒は、20℃において優位な活性を示した。また、触媒安定性における小さな有利性(安定な転化を保持するための温度上昇速度がより低い)も示された。これらの2つの特性が一緒に組み合わさって、この触媒に関して交換するか又は再生することが必要になるまでのより長い使用時間が導かれるであろう。重要なことには、UZM−14をベースとする触媒は、反応器流出流中の最も望ましい生成物であるキシレンの向上したレベルも示す。
【0060】
【表7】

【0061】
実施例6:
[0048]UZM−14及び市販のZeolystモルデナイトの更なる比較試験を行った。50%のUZM−14又はZeolyst CBV 21Aモルデナイト粉末、25%のMFIゼオライト、及び25%の解膠Catapal Bの混合物を、ヘプタモリブデン酸アンモニウムの溶液とブレンドすることによって、UZM−14A及びZeolyst CBV 21Aモルデナイト粉末を別々に触媒に形成して、3%のMoを含む触媒を得た。押出の後、触媒を空気中で2時間カ焼した。
【0062】
[0049]それぞれの触媒に関して、400psigの圧力、3の重量空間速度、3のH/HC比、及び50%の転化率を保持するのに必要な温度においてパイロットプラント試験を行った。触媒は、試験ユニット内において、試験の前に、280℃〜360℃の間の温度及び400psigにおいて、ジメチルジスルフィド(DMDS)として250ppmのイオウを含む炭化水素供給流中で3WHSV及び3のH/HCにおいて18時間硫化した。供給流は、見かけ上重量%で以下の組成を有していた。
【0063】
【表8】

【0064】
[0050]下表にこの試験の結果を示す。UZM−14をベースとする触媒は、19℃において優位な活性を示した。また、触媒安定性における大きな有利性(安定な転化を保持するための温度上昇速度がより低い)も示された。これらの2つの特性が一緒に組み合わさって、この触媒に関して交換するか又は再生することが必要になるまでのより長い使用時間が導かれるであろう。重要なことには、UZM−14をベースとする触媒は、反応器流出流中の最も望ましい生成物であるキシレンの大きく向上したレベルも示す。
【0065】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給流を、トランスアルキル化条件において、12員環チャネルを含むMOR骨格タイプ、少なくとも0.10cc/gのメソ細孔体積、及び60nm以下の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さを有する微結晶の球状凝集体を含むUZM−14凝集体材料を含む触媒と接触させることを含む、C、C、C10、及びC11+芳香族物質の1以上を含む供給流をトランスアルキル化して、供給流のものと比べて増加したC芳香族物質の濃度を有するトランスアルキル化生成物流を得る方法。
【請求項2】
供給流がベンゼン及びC芳香族物質の一方又は両方を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給流が2〜4個の環を有する芳香族化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
供給流がトランスアルキル化生成物流からのC芳香族物質の分別からの塔底流を更に含む、請求項1、2、又は3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
トランスアルキル化条件が、200℃〜540℃の温度、100kPa〜6MPa絶対厚の圧力、及び0.1〜20hr−1の空間速度を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
UZM−14凝集体材料の12員環チャネルの方向に対して平行方向の平均微結晶長さが50nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
UZM−14凝集体材料のメソ細孔体積が少なくとも0.13cc/gである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒が、アルミナ、シリカ、及びシリカ−アルミナの1以上から選択されるバインダーを更に含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒が、周期律表の第VIB(6)、VIIB(7)、VIII(8〜10)、及びIVA(14)族から選択される1以上の元素を含む金属成分を更に含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
触媒が、MFI、MEL、EUO、FER、MFS、MTT、MTW、TON、MOR、及びFAUの1以上から選択される更なるゼオライト成分を更に含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−525920(P2011−525920A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516447(P2011−516447)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047584
【国際公開番号】WO2009/158244
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】