説明

新規なヌクレオシドホスホネート及びそのアナログ

ウイルス感染及び/又は細胞増殖に関連する様々な医学的障害を治療、予防又は軽減するための化合物及び組成物を提供する。本明細書で提供される化合物は、ヌクレオシドホスホネート及びそのエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドホスホネート及びヌクレオシドホスホネートのエステルに関する。より詳細には、生物活性を有するヌクレオシドのモノエステル及びその類似体(アナログ)に関する。また、本発明は、他の側面としてヌクレオシドホスホネート化合物及び該化合物を含む組成物を用いた、ウイルス感染や細胞増殖に関連する様々な医学的障害の治療、予防及び治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオシドホスホネートは、抗ウイルス活性、抗増殖活性及び他の様々な治療効果を奏することが知られている。ヌクレオシドホスホネートとしては、例えば抗ウイルス性ヌクレオシドホスホネート、より具体的には、シドホビル(cidofovir)、環状シドホビル、アデホビル(adefovir)、テノホビル(tenofovir)や、アジドチミジン(azidothymidine:AZT)、ガンシクロビル(ganciclovir)、アシクロビル(acyclovir)等の5’−ホスホネート及びメチレンホスホネートが挙げられる。これらの化合物では、糖部分の5’−ヒドロキシル若しくは完全な糖部分を含まない非環状ヌクレオシド(ガンシクロビル、ペンシクロビル(penciclovir)、アシクロビル)の等価体が、リン−炭素結合で置換されている。例えばメチレンホスホネートの場合、5’−ヒドロキシル又はその等価体がメチレン基で置換され、該メチレン基の炭素原子はホスホネートと共有結合している。
【0003】
こうした化合物は、抗ウイルス性又は抗増殖性のヌクレオチドとして有用であり得る。ヌクレオシドホスホネートの細胞代謝の際には、さらに2回のリン酸化が起こり、ヌクレオシド三リン酸の等価体であるヌクレオシドホスホネート二リン酸が形成される。抗ウイルス性のヌクレオシドホスホネート二リン酸は、ウイルスのRNAポリメラーゼ若しくはDNAポリメラーゼ又は逆転写酵素の選択的阻害剤である。従って、ウイルスのポリメラーゼに対する阻害作用は、哺乳動物細胞のDNAポリメラーゼα、β及びγや、RNAポリメラーゼに対するものよりはるかに大きい。これに対し、抗増殖性ヌクレオシドホスホネート二リン酸は癌細胞のDNA及びRNAポリメラーゼを阻害し、正常な細胞のDNA及びRNAポリメラーゼに対して非常に低い選択性を示し得る。
【0004】
上述の通り、ウイルス感染や細胞増殖に関する様々な障害を治療するために、安全で(毒性が低く)、より効果的な医薬剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明により、ヌクレオシドホスホネート及びヌクレオシドホスホネートの親油性エステルが提供される。また、本発明により様々な疾患を治療するための組成物が提供される。さらに、本発明の他の側面として、様々な疾患を治療する方法であって、化合物及び組成物の使用方法が提供される。本発明の一実施形態では、ここで開示される化合物及び組成物は、抗ウイルス活性を有する。また、他の実施形態では、細胞増殖に関する1つ又はそれ以上の症状の予防及び治療に有用な化合物及び組成物が提供される。
【0006】
ある実施形態において、本発明に係る化合物は、ヌクレオシドホスホネート及び薬学的に許容されるヌクレオシドホスホネートの誘導体である。また、他の実施形態では、本発明に係る化合物は、ヌクレオシドホスホネートの親油性エステルである。
【0007】
本発明の一実施形態では、下記式(I)又は式(II)で表される化合物、又は該化合物の塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。:
【化1】

式中、Bは、プリン塩基若しくはピリミジン塩基、又はそれらの類似体(アナログ)であり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、−RS(O)、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、若しくは置換ヘテロアリールアルキルである。あるいは、式(I)の化合物では、R及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルであってもよく;
Xは、−CH−であり;
nは、0又は1であり;
kは、0、1又は2であり;
は、水素、1価のカチオン又は親油基であり;
、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。;
ただし、R及びRの少なくとも1つが水素ではないか、あるいは、R及びRが何れも水素である場合、
Bは以下の構造:
【化2】

であり、
ここで、式中、
101は、−OR104、−SR105、−NR106NH又は−NR107NHSOMeであり、R102は、水素、アルキル、ハロ又は−NR108109であり、R103は、水素又はアルキルであり、R104、R105、R106、R107、R108、R109はそれぞれ独立して、水素又はアルキルであり、;
及びRが、それらを構成する原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルである場合、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得;
また、R及びRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、−RS(O)、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである場合、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得る。
【0008】
本発明の他の実施態様では、下記式(III)で表される化合物、又は該化合物の塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。:
【化3】

式中、R201及びR201’は、それぞれ独立して、水素、−OR203、−OC(O)R204、−SR205又はSC(O)R206であり、R203、R204、R205又はR206はそれぞれ独立してアルキルであり、R202及びR202’は、それぞれ独立して、水素、−OR207、−OC(O)R208、−SR209、−SC(O)R210、−NR211212、又は−NC(O)R213であり、R207、R209、R211又はR212は、水素又はアルキルであり、R208、R210、R213はアルキルであり;
300は、ヌクレオチドホスホネート又は抗ウイルス性ホスホネートであり、そのヌクレオチド若しくはヌクレオシド又は抗ウイルス性ホスホネートのプリン塩基若しくはピリミジン塩基が、以下に示す構造のピリミジン塩基R301
【化4】

で置換された、ヌクレオチドホスホネート又は抗ウイルス性ホスホネートを含むホスホネートであり、
式中、R220は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、−OR224、−SR225、−NR226NH、−NR227NHSOMe、−NR228229であり、R221は、水素、アルキル、ハロ又は−NR228229であり、R222は、水素又はアルキルであり、R224、R225、R226NH、R227、R228、R229は、水素又はアルキルであり;
Xは−(R202)C(R202’)−であり;
Lは、原子価結合、又は一般式:−J−(CR230−G−(ここで、式中、tは1〜24の整数であり、J及びGはそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(O)O−又はNH−であり、R230は、水素、アルキル又は置換アルキルである。)で表される二官能性分子であり;
mは0〜6の整数であり;
nは0又は1であり;
ただし、R201及びR201’は、何れもOC(O)R204、−SC(O)R206又はこれらの組合せではないものとし;同一の炭素原子に結合したR202及びR202’は、何れもOC(O)R208、−SC(O)R210、−NR211212、又は−NC(O)R213ではないものとする。
【0009】
本発明は、また、ここで開示される化合物の塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶剤和物、水和物及びプロドラッグ等の薬学的に許容される誘導体を提供する。さらに、本発明は、ここで開示される化合物及び薬学的に許容される該化合物のビヒクルを含む医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態において、該医薬組成物は単回投与量毎に製剤化されたものであり得る。
【0010】
本発明は、他の側面として、ここで開示される化合物及び該化合物を含む組成物を用いて、ウイルス感染及び細胞増殖に関する疾患の1つ又はそれ以上の症状を予防及び治療する方法を提供する。かかる方法は、該化合物又は該化合物を含む組成物を、治療に有効な量で投与することを包含する。
【0011】
また、本発明は、ウイルス感染又は細胞増殖に関する疾患又は障害の1つ又はそれ以上の症状を予防及び治療するのに有用な、化合物又は組成物をその有効性について記載した書面と一緒に包装(パッケージ化)した製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔定義〕
特に記載がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、全て本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同様の意味を有する。ここで開示される全ての特許出願及び刊行物は、参照によりその全体を本明細書に援用される。なお、本明細書の用語に複数の定義が存在する場合、他に記載がない限り、このセクションの定義が優先する。
【0013】
本明細書において、「ヌクレオシド塩基」とは、天然若しくは非天然のプリン塩基及びピリミジン塩基、例えばアデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシル、ならびにそれらの類似体(アナログ)等をいう。また、本明細書で提供される化合物の調製条件下において、ヌクレオシド塩基が副生成物を生成し得る1つ又はそれ以上の官能基(例えば、シトシンやアデニンのアミノ基、グアニンの2−アミノ基及び6−オキソ基)を含む場合は、こうした官能基をヌクレオシドの反応で一般的に用いられる保護基でブロック(保護)することもできる。例えば、アデニン及びシトシンのアミノ基はベンゾイルで保護することができ、グアニンの6−オキソ及び2−アミノ基はトリフェニルメチル(トリチル)基で保護することができる。かかる保護基の導入及びその後の除去方法については、従来公知の手法を適宜選択して用いることができる。
【0014】
本明細書において、「親油性」又は「長鎖」とは、ホスホン酸と共有結合してホスホネートモノエステルを形成した場合、(親化合物たるヌクレオシドホスホネートと比較して、)経口バイオアベイラビリテを向上させヌクレオシドホスホネートの活性を高め得る、環状、分岐又は直鎖の化学基をいう。特に限定されるものではないが、かかる親油基としては、アルキル、アルコキシアルキル、アルキルグリセリル等が挙げられる。幾つかの実施形態において、アルキルは炭素数8〜26(C〜C26)、例えば8個、10個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個又は24個の炭素原子を含んでおり、直鎖又は分岐鎖であり得る。
【0015】
本明細書において、「ヌクレオシドホスホネート」及び「非環状ヌクレオシドホスホネート」とは、例えば、抗ウイルス剤、抗癌薬や抗寄生虫薬として生物活性を有する、ホスホノメトキシアルキル又はホスホノ置換されたヌクレオシド誘導体をいう。
【0016】
本明細書において、「ヌクレオシドホスホネートの親油性モノエステル」とは、エステル結合を介してヌクレオシドホスホネートに親油基が共有結合した化合物をいう。
【0017】
本明細書において、「アルキル」とは、単独で、又は他の置換基の一部として、親化合物たるアルカン、アルケン又はアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより生成し得る、飽和又は不飽和の分岐鎖、直鎖若しくは環状の、1価の炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基としては、メチル;エタニル、エテニル、エチニル等のエチル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、シクロプロパ−1−エン−1−イルシクロプロパ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イル等のプロピル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イル等のブチル;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より具体的には、「アルキル」とは任意の飽和又は不飽和の結合を有する基、すなわち、炭素−炭素の単結合のみで構成される基、1つ又はそれ以上の炭素−炭素の二重結合を有する基、1つ又はそれ以上の炭素−炭素の三重結合を有する基、ならびにこれらが混合した基、を包含する。また、ある特定の飽和度を有する基を指す場合には、「アルカニル」、「アルケニル」及び「アルキニル」という用語を使用する。かかるアルキル基は、例えば、炭素数1〜20のアルキル(C〜C20アルキル)又は炭素数1〜10のアルキル(C〜C10アルキル)であってもよいし、炭素数1〜6のアルキル(C〜Cアルキル)であってもよい。
【0018】
本明細書において、「アルカニル」とは、単独で、又は置換基の一部として、飽和の分岐鎖、直鎖又は環状のアルキルラジカルを指し、親化合物たるアルカンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより生成し得る。典型的なアルカニル基としては、メタニル;エタニル;プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イル等のプロパニル;ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イル等のブタニル;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、「アルケニル」とは、単独で、又は置換基の一部として、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を持つ不飽和の分岐鎖、直鎖又は環状のアルキルラジカルを指し、親化合物たるアルケンの炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導され得る。かかるアルケニル基には、二重結合への置換によって、シス又はトランス異性体が存在し得る。典型的なアルケニル基としては、エテニル;プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル等のプロペニル;ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル等のブテニル;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、「アルキニル」は、単独で、又は置換基の一部として、親化合物たるアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより生成し得る少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を持つ不飽和の分岐鎖、直鎖又は環状のアルキルラジカルを指す。典型的なアルキニル基としては、エチニル;プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イル等のプロピニル;ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イル等のブチニル;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、「アルコキシ」とは、単独で、又は置換基の一部として、一般式:−O−R400で表されるラジカル(ここで、式中、R400は、上記に定義したアルキル又は置換アルキルである。)を指す。
【0022】
本明細書において、「アシル」とは、単独で、又は置換基の一部として、一般式:−C(O)R401で表されるラジカルを指す。ここで、式中、R401は、水素若しくは上記に定義したアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。特に限定されないが、代表的な例としては、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「アリール」とは、単独で、又は置換基の一部として、以下に定義する親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって生成し得る1価の芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等から誘導されるが、これらに限定されるものではない。アリール基は、炭素原子数6〜20のアリール(C〜C20アリール)又は、炭素原子数6〜15のアリール(C〜C15アリール)であってもよいし、炭素原子数6〜10のアリール(C〜C10アリール)であってもよい。
【0024】
本明細書において、「アリールアルキル」とは、単独で、又は置換基の一部として、炭素原子(典型的には、末端の炭素原子又はsp炭素原子)に結合した水素原子の1個が、上記に定義したアリール基で置換された非環状アルキル基をいう。典型的なアリールアルキル基としては、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ある特定のアルキル基を指す場合には、「アリールアルカリル」、「アリールアルケニル」及び/又は「アリールアルキニル」という用語を使用する。かかるアリールアルキル基は、例えば炭素原子数6〜30(C〜C30)アリールアルキルであり得、より具体的には、該アリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分又はアルキニル部分が炭素数1〜10(C〜C10)であり、アリール部分が炭素数6〜20(C〜C20)であり得る。また、アリールアルキル基は、例えば炭素原子数6〜20(C〜C20)アリールアルキルであり得、より具体的には、該アリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分又はアルキニル部分が炭素数1〜8(C〜C)であり、アリール部分が炭素数6〜12(C〜C12)であり得る。また、アリールアルキルは、例えば炭素数6〜15(C〜C15)アリールアルキルであり得、より具体的には、該アリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分又はアルキニル部分が炭素数1〜5(C〜C)であり、アリール部分が炭素数6〜10(C〜C10)であり得る。
【0025】
本明細書において、「シクロアルキル」とは、単独で、又は置換基の一部として、上記に定義した飽和又は不飽和の環状のアルキルラジカルを指す。また、ある特定の飽和度を有する基を指す場合には、「シクロアルカニル」又は「シクロアルケニル」という用語を使用する。典型的なシクロアルキル基は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等から誘導されるが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基は、例えば、3〜10個の環原子を含んでいてもよい(C〜C10シクロアルキル)し、3〜7個の環原子を含んでいてもよい(C〜Cシクロアルキル)。
【0026】
本明細書において、「シクロヘテロアルキル」とは、単独で、又は置換基の一部として、1個又はそれ以上の炭素原子(及び該炭素原子に結合した水素原子)が、それぞれ独立して、同一又は異なるヘテロ原子に置換された、飽和又は不飽和の環状アルキルラジカルを指す。炭素原子を置換し得る典型的なヘテロ原子としては、窒素(N)、リン(P)、酸素(O)、硫黄(S)、ケイ素(Si)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ある特定の飽和度を有する基を指す場合には、「シクロヘテロアルカニル」又は「シクロヘテロアルケニル」という用語を使用する。典型的なシクロヘテロアルキル基は、エポキシド、アジリン、チイラン、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリドン、キヌクリジン等から誘導されるが、これらに限定されるものではない。シクロヘテロアルキル基は、例えば、3〜10個の環原子を含んでいてもよい(3〜10員環シクロヘテロアルキル)し、5〜7個の環原子を含んでいてもよい(5〜7員環シクロヘテロアルキル)。また、シクロヘテロアルキル基を構成するヘテロ原子(例えば、窒素原子)は、(C〜C)アルキル基で置換されていてもよい。具体例としては、N−メチル−イミダゾリジニル、N−メチル−モルホリニル、N−メチル−ピペラジニル、N−メチル−ピペリジニル、N−メチル−ピラゾリジニル及びN−メチル−ピロリジニル等が挙げられる。シクロヘテロアルキル基は、環炭素原子を介して分子の残部に結合していてもよく、環ヘテロ原子を介して分子の残部に結合していてもよい。
【0027】
本明細書において、「化合物」とは、ここで開示される構造式によって示される化合物を指す。化合物は、その化学構造及び/又は化学名の何れかにより特定することができる。化学構造と化学名とが矛盾する場合は、化学構造により化合物を特定する。ここで開示される化合物は、1つ又はそれ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含んでいてもよい。従って、かかる化合物は立体異性体、例えば二重結合のシス−トランス異性体(幾何異性体)、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。このため、ここで開示される化学構造は、純粋な立体異性体(例えば、純粋な幾何異性体、エナンチオマー又はジアステレオマー)だけでなく、エナンチオマーや立体異性体の混合物をも包含し得、化学構造等から導かれるあらゆるエナンチオマーや立体異性体等を意味するものである。なお、エナンチオマーや立体異性体の混合物は、従来公知の分離技術やキラル合成技術を用いて、エナンチオマー成分や立体異性体成分に分離することができる。また、化合物はエノール型、ケト型及びこれらの混合物等のような互変異性体として存在していてもよい。このため、ここで開示される化学構造は、化学構造等から導かれるあらゆる互変異性体をも包含する。さらに、ここで開示される化合物には、1個又はそれ以上の原子が自然界で通常みられる原子質量と異なる原子質量を持つ、同位体標識化合物(同位元素標識化合物)をも包含する。ここで開示される化合物に導入し得る同位体としては、例えば、H、H、13C、14C、15N、18O、17O等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ここで開示される化合物は、水和物等の溶媒和された形態であっても非溶媒和形態であってもよく、N−オキシドであってもよい。つまり、ここで開示される化合物は、水和物や、溶媒和物、N−オキシドであり得る。また、複数の結晶形態又はアモルファス形態であってもよい。ここで開示される化合物は、全ての物理的形状をも包含し得る。
かかる化合物の部分構造を示す場合には、分子の残部に対する部分構造の結合点を角括弧で表記する。また、式(I)及び(II)中に示される、以下の記号:
【化5】

は、二重結合が任意に存在し得ることを表している。
【0028】
本明細書において、「ハロ」とは、単独で、又は置換基の一部として、−F、−Cl、−Br又は−Iのラジカルを指す。
【0029】
本明細書において、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」及び「ヘテロアルキニル」とは、それぞれ、単独で、又は置換基の一部として、1個又はそれ以上の炭素原子(及び該炭素原子に結合した水素原子)が各々相互に独立して、同一又は異なるヘテロ原子又はヘテロ原子団に置換された、アルキル基、アルカニル基、アルケニル基、アルキニル基を指す。炭素原子を置換し得る典型的なヘテロ原子又はヘテロ原子団としては、−O−、−S−、−N−、−Si−、−NH−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NH−、−S(O)NH−、ならびにこれらを組み合わたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロ原子又はヘテロ原子団は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基中の任意の位置に存在し得る。かかるヘテロ原子団としては、特に限定されるものではないが、例えば、−O−、−S−、−O−O−、−S−S−、−O−S−、−NR501502−、=N−N=、−N=N−、−N=N−NR503504、−PR505−、−P(O)−、−POR506−、−O−P(O)−、−SO−、−SO−、−SnR507508(ここで、式中、R501、R502、R503、R504、R505、R506、R507、R508はそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。)等が挙げられる。
【0030】
本明細書において、「ヘテロアリール」とは、単独で、又は置換基の一部として、以下に定義する親芳香族複素環系を構成する1個の原子から1個の水素原子を除去することにより生成される、1価のヘテロ芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基は、アクリジン、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等から誘導されるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール基は、例えば5〜20個の環原子を含んでいてもよい(5〜20員環ヘテロアリール)し、5〜10個の環原子を含んでいてもよい(5〜10員環ヘテロアリール)。かかるヘテロアリール基は、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、インドール、ピリジン、ピラゾール、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピラジンから誘導されたものであり得る。
【0031】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」とは、単独で、又は置換基の一部として、炭素原子(典型的には末端の炭素原子又はsp炭素原子)に結合した水素原子の1個が、ヘテロアリール基で置換された、非環状アルキル基をいう。また、ある特定のアルキル基を指す場合には、「ヘテロアリールアルカニル」、「ヘテロアリールアルケニル」及び/又は「ヘテロアリールアルキニル」という用語を使用する。ヘテロアリールアルキル基は、例えば6〜21員環ヘテロアリールアルキルであり得、より具体的には該ヘテロアリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分又はアルキニル部分が炭素数1〜6(C〜C)のアルキルであり、ヘテロアリール部分が5〜15員環ヘテロアリールであり得る。また、ヘテロアリールアルキル基は、例えば6〜13員環ヘテロアリールアルキルであり得、より具体的には、該ヘテロアリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分又はアルキニル部分が炭素数1〜3(C〜C)のアルキルであり、ヘテロアリール部分が5〜10員環ヘテロアリールであり得る。
【0032】
本明細書において、「親芳香環系」とは、共役π電子系を持つ不飽和な環式又は多環式系をいう。具体的には、1つ又はそれ以上の芳香環を含み、該芳香環の1つ又はそれ以上が飽和又は不飽和である縮合環系がこの定義に含まれる。より具体的には、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン等が例示される。典型的な親芳香環系としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランセン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書において、「親芳香族複素環系」とは、1個又はそれ以上の炭素原子(及び、該炭素原子に結合した水素原子)が各々独立して、同一又は異なるヘテロ原子で置換された親芳香環系をいう。炭素原子を置換し得る典型的なヘテロ原子としては、窒素(N)、リン(P)、酸素(O)、硫黄(S)、ケイ素(Si)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、1つ又はそれ以上の芳香環を含み、該芳香環の1つ又はそれ以上が飽和又は不飽和である縮合環系がこの定義に含まれ、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテン等が例示される。典型的な親芳香族複素環系としては、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本明細書において、「予防すること」又は「予防」とは、疾患又は障害に罹患するリスクが低下すること(すなわち、疾患に曝され得るか、若しくは罹患し易い傾向があるが、疾患の症状がない又はまだ発症していない患者に対して、疾患の臨床症状のうち少なくとも1つを発症させないようにすること)をいう。
【0035】
本明細書において、「保護基」とは、反応性の高い官能基に結合した場合に、該官能基の反応性を遮蔽、低下、又は抑制し得る基(原子団)をいう。かかる保護基の例は、Green et al., Protective Groups in Organic Chemistry, (Wiley, 2nded.
1991) や、Harrison et al., Compendium of Synthetic Organic
Methods, Vols.1-8. (John Wiley and Sons, 1971-1996)等に記載されている。代表的なアミノ基の保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチル基、置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的なヒドロキシ基の保護基としては、該ヒドロキシ基がアシル化あるいはアルキル化されたもの、例えばベンジルエーテルや、トリチルエーテル、アルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、アリルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書において、「塩」とは、親化合物の所望の薬理活性を有する化合物の塩をいう。より具体的には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸とで形成される塩;若しくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸とで形成される、塩;(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又はアルミニウムイオン)で置換され形成された塩;又は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン等の有機塩基と配位結合した塩、が挙げられる。
【0037】
本明細書において、「置換」とは、任意の基又はラジカルが修飾される際に、これらを構成する1つ又はそれ以上の水素原子が各々相互に独立して、同一又は異なる置換基で置き換えられること、を意味する。
任意の基又はラジカルを構成する飽和炭素原子の置換に用い得る基(置換基)としては、特に限定されるものではないが、例えば、−R、ハロ、−O、=O、−OR、−SR、−S、=S、−NR、=NR、=N−OR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)NR、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)R、NRC(NR)NRが挙げられる。ここで、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、;Rは各々独立して水素又はRであり、;Rは各々独立してR若しくは、2つのRが窒素原子と結合し形成された、4員、5員、6員又は7員シクロヘテロアルキル(酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)からなる群から選択される1〜4個の任意のヘテロ原子を含み得る)である。より具体的には、例えば−NRは、−NH、−NH−アルキル、N−ピロリジニル、N−モルホリニルを包含する。
【0038】
同様に、任意の基又はラジカルを構成する不飽和炭素原子の置換に用い得る基(置換基)としては、特に限定されるものではないが、例えば、−R、ハロ、−O、−OR、−SR、−S、−NR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)R、NRC(NR)NRが挙げられる。ここで、式中、R、R、Rは、上記と同様であり得る。
【0039】
ヘテロアルキル基やシクロヘテロアルキル基を構成する窒素原子の置換に用い得る基(置換基)としては、特に限定されるものではないが、例えば、−R、−O、−OR、−SR、−S、−NR、トリハロメチル、−CF、−CN、−NO、−NO、−S(O)、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)R、NRC(NR)NR挙げられる。ここで、式中、R、R、Rは、上記と同様であり得る。
【0040】
上記置換基は、勿論、上記以外の他の基や原子を置換するために用いることもできる。
【0041】
また、置換基は、典型的には上記から選択される1つ又はそれ以上の同一又は異なる基でさらに置換してもよい。
【0042】
「被検体」、「個体」、「患者」という用語は、本明細書において同義で使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、マウス、齧歯動物、サル、ヒト、家畜、競技用動物(sport animal)及びペットが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書において、任意の疾患又は障害を「治療すること」又は「治療」とは、幾つかの実施形態では、疾患又は障害を軽減すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を阻止又は抑制すること)を指す。他の実施形態では、「治療すること」又は「治療」とは、少なくとも1つの身体的パラメーター(患者が自覚していない場合もあり得る。)を改善することを指す。さらに他の実施形態では、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害を、身体的に抑制すること(例えば、認識し得る症状の安定化)、生理学的に抑制すること(例えば、身体的パラメーターの安定化)、あるいはその両方を指す。なお、さらに他の実施形態では、「治療すること」又は「治療」とは、疾患又は障害の発症又は進行を遅らせることを指す。
【0044】
本明細書において、「治療有効量」とは、疾患の治療のため患者に投与する場合に、そうした疾患の治療を達成し得る十分な化合物の量を意味する。なお、「治療有効量」は、投与する化合物や、疾患及びその重症度、ならびに治療を受ける患者の年齢、体重等によって異なり得る。
【0045】
本明細書において、「ビヒクル」とは、化合物と共に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤又は担体を指す。
【0046】
特に記載がない限り、任意の保護基、アミノ酸及び他の化合物の略称や略語は、当業者に認識し得る略語の通常の使用方法又はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature((1972)Biochem. 11, p.942-944を参照されたい。)に従う。
本明細書で用いる略語の一例を以下に示す。:
5−ホスホノ−ペント−2−エン−1−イル アデニン=PPen−A
5−ホスホノ−ペント−2−エン−1−イル シトシン=PPen−C
5−ホスホノ−ペント−2−エン−1−イル グアニン=PPen−G
5−ホスホノ−ペント−2−エン−1−イルチミン=PPen−T
5−ホスホノ−ペント−2−エン−1−イルウラシル=PPen−U
ヘキサデシルオキシプロピル=HDP
オクタデシルオキシエチル=ODE
オレイルオキシエチル=OLE
オレイルオキシプロピル=OLP
【0047】
〔B.化合物〕
第1の態様では、下記式(I)又は下式(II)で表される置換ホスホネート又は該化合物の塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。:
【化6】

式中、Bは、プリン塩基若しくはピリミジン塩基又はそれらの類似体(アナログ)であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、−RS(O)、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル若しくは置換ヘテロアリールアルキルであり、あるいは、式(I)の化合物においては、R及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルであってもよく、;Xは−CH−であり、nは0又は1であり、kは0、1又は2であり、Rは水素、1価カチオン又は親油基であり、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。
ただし、R及びRの少なくとも1つが水素ではないか、あるいは、R及びRのいずれもが水素である場合、Bは以下の構造:
【化7】

であり、
ここで、式中、R101は、−OR104、−SR105、−NR106NH又は−NR107NHSOMeであり、R102は、水素、アルキル、ハロ又は−NR108109であり、R103は、水素又はアルキルであり、R104、R105、R106、R107、R108、R109はそれぞれ独立して、水素又はアルキルである。また、R及びRが、それらを構成する原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルである場合、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得;また、R及びRがそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、−RS(O)、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである場合、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得る。
【0048】
幾つかの実施形態では、式(I)で示される化合物が提供される。ここで、式中、B、R、R、R、X、nは、上記と同様であり得る。また、他の実施形態では、式(II)で示される化合物において、Rは水素ではない。さらに他の実施形態では、式(II)で示される化合物において、Bがシトシン又はウラシルである場合、Rは水素ではない。
【0049】
幾つかの実施形態では、Rは、水素、1価カチオン、C〜C24アルキル、置換C〜C24アルキルである。他の実施形態では、Rは、置換C〜C24アルキルである。また他の実施形態では、Rは、1〜3個のハロ、−OH、−SH、−O−又はアルキルで置換されている。また他の実施形態では、Rは、RCO−(ここで、Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。)である。また他の実施形態では、Rは、アセチル、バリル、ジピボキシル、ビス(ピバロイルオキシメチル)又はジソプロキシルである。また他の実施形態では、Rは、アセチル、バリル又はジピボキシルである。
【0050】
幾つかの実施形態では、Rは以下の構造であり、:
【化8】

ここで、式中、R及びR8aはそれぞれ独立して、水素、R11CO−、R12O−、R13S−又はR14COS−であり、ここで、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して、(C〜C24)アルキルであり、任意に最大6つの二重結合を有している。ただし、R及びR8aの少なくとも1つは水素ではなく、またR及びR8aは、何れもR11CO−若しくはR14COS−又はこれらの組合せでもないものとし、R10及びR10aは、それぞれ独立して、水素、R15CO−、R16O−、R17S−、R18COS−、R19CON−、R20NH−、R21NR22−、オキソ、ハロゲン、NH、−OH又はSHであり、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22は、それぞれ独立して、(C〜C)アルキルである。ただし、R10及びR10aは、何れもハロゲン、NH、−OH、R15CO−、R18COS−、R19CON−、R20NH−、R21NR22−、−SH又はこれらの組合せではなく、R10又はR10aの何れかがオキソである場合には、他方は制限されない。
また、Rは以下の構造:
【化9】

であり、
ここで、R22及びR22aはそれぞれ独立して、水素、R23CO−、R24O−、R25S−、R26COS、R27CON−、R28NH−、R28NR29−、オキソ、ハロゲン、NH、−OH、−SHであり、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30はそれぞれ独立して(C〜C)アルキルである。ただし、R22及びR22aは、両方がハロゲン、R23CO−、R26COS、R27CON−、R28NH−、R28NR29−、NH、−OH、−SH又はこれらの組合せではないものとし、R10及びR10aの何れかがオキソである場合には、他方は制限されないものとする。また、mは0〜6の整数、例えば0、1又は2であってもよいし、或いは0又は1であってもよい。さらに、mは0であり得る。また他の実施形態では、R10及びR10aは水素である。さらに他の実施形態では、R22及びR22aは水素である。さらに他の実施形態では、R10及びR10a、R22及びR22aは水素である。また他の実施形態では、Rは以下の構造:
【化10】

である。
さらに他の実施形態では、Rは以下の構造:
【化11】

であり得る。
さらに他の実施形態では、Rは、アセチル、バリル、ジピボキシル、ビス(ピバロイルオキシメチル)又はジソプロキシルである。さらに他の実施形態では、Rは、ヘキサデシルオキシプロピル、オクタデシルオキシエチル又はオレイルオキシエチルである。また他の実施形態では、Rは、R12Oである。ここで、R12は、(CH−CHであり、tは0〜24である。またtは、8、10、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であってもよく、13、14、15、16、17、18、19、20であってもよい。さらに、tは、15、16、17、18、19、20であってもよく、17、18、19、20であってもよい。また、tは、15、17、18であり得る。
【0051】
幾つかの実施形態では、Rは、(C〜C24)アルキル又は置換(C〜C24)アルキルである。また他の実施形態では、Rは、最大6つの二重結合を有している。
【0052】
幾つかの実施形態では、Rは、Cアルキル、C10アルキル又は(C12〜C24)アルキルである。また他の実施形態では、Rは、(C16〜C24)アルキル、(C17〜C22)アルキル、(C17〜C19)アルキル、又は、(C17〜C22)アルカニル、(C17〜C19)アルカニルであり得る。より具体的には、Rは、7−メチル−オクチル、8−メチル−ノニル、9−メチル−デシル、10−メチル−ウンデシル、11−メチル−ドデシル、12−メチル−トリデシル、13−メチル−テトラデシル、14−メチル−ペンタデシル、15−メチル−ヘキサデシル、16−メチル−ヘプタデシル、17−メチル−オクタデシル、18−メチル−ノナデシル、19−メチル−エイコシル、20−メチル−ヘンエイコシル、21−メチル−ドコシル、22−メチル−トリコシル、7−フルオロ−オクチル、8−フルオロ−ノニル、9−フルオロ−デシル、10−フルオロ−ウンデシル、11−フルオロ−ドデシル、12−フルオロ−トリデシル、13−フルオロ−テトラデシル、14−フルオロ−ペンタデシル、15−フルオロ−ヘキサデシル、16−フルオロ−ヘプタデシル、17−フルオロ−オクタデシル、18−フルオロ−ノナデシル、19−フルオロ−エイコシル、20−フルオロ−ヘンエイコシル、21−フルオロ−ドコシル又は22−フルオロ−トリコシルであり得る。
【0053】
また幾つかの実施形態では、Rは、n−C1429O(CH−、n−C1531O(CH−、n−C1633O(CH−、n−C1735O(CH−又はn−C1837O(CH−である。
【0054】
幾つかの実施形態では、Bは以下の構造:
【化12】

である。
ここで、式中、R110は、水素、アルキル、置換アルキル、−OH、ハロ、アリール又はヘテロアリールであり、R111は、水素又はアルキルであり、R101は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、−OR104、−SR105、−NR106NH、−NR107NHSOMe又は−NR108109であり、R102は、水素、アルキル、ハロ又は−NR108109であり、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109はそれぞれ独立して、水素又はアルキルであり、R103は、水素又はアルキルである。
ここで、R110は、水素又はアルカニルであってもよく、水素又はメチルであってもよい。幾つかの実施形態では、R108及びR109はそれぞれ独立して、水素、アルカニル又はシクロアルカニルである。また他の実施形態では、R108は、水素、メチル又はシクロプロピルである。また、R111は、水素又はアルカニルであってもよく、水素又はメチルであってもよい。また、R101は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル又は−NR108109でああってもよく、水素、アルキル又は−NR108109であってもよいまた、R101は、メチル、NH又は−NR108109であってもよく、−OR104、−SR105、−NR106NH又は−NR107NHSOMeであってもよい。また幾つかの実施形態では、R104、R105、R106又はR107は、メチルである。さらに他の実施形態では、R102は、水素である。さらに他の実施形態では、R103は水素である。
【0055】
また幾つかの実施形態では、Bは、ピリミジン−1−イル、ピリミジン−3−イル、プリン−3−イル、プリン−7−イル又はプリン−9−イルである。他の実施形態では、Bは、チミン−1−イル、シトシン−1−イル、アデニン−9−イル又はグアニン−9−イルである。また他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化13】

である。
【0056】
また幾つかの実施形態では、Bは以下の構造:
【化14】

である。
【0057】
幾つかの実施形態では、Rは、アルキル又はハロである。他の実施形態では、Rは、メチル又はフルオロである。
【0058】
幾つかの実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロプロピル又は置換シクロプロピルである。また他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:、
【化15】

である。
【0059】
幾つかの実施形態では、Rは、n−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化16】

である。
【0060】
幾つかの実施形態では、Rは、n−C1633O(CH−であり、Rは、アルキル又はハロである。他の実施形態では、Rは、n−C1633O(CH−であり、Rは、メチル又はフルオロである。また他の実施形態では、Rは、n−C1633O(CH−であり、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。さらに他の実施形態では、n−C1633O(CH−であり、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化17】

である。
【0061】
幾つかの実施形態では、Bは以下の構造:
【化18】

であり、Rはアルキル又はハロである。
他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化19】

であり、Rはメチル又はフルオロである。
また他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化20】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。
さらに他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化21】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化22】

である。
【0062】
幾つかの実施形態では、Rは、n−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化23】

であり、Rはアルキル又はハロである。
他の実施形態では、Rはn−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化24】

であり、
はメチル又はフルオロである。
また他の実施形態では、Rはn−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化25】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。
さらに他の実施形態では、Rはn−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化26】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化27】

である。
【0063】
幾つかの実施形態では、Rはn−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化28】

であり、
式中、R101は、−OR104、−SR105、−NR106NH、−NR107NHSOMeであり、R102は、水素、アルキル、ハロ、−NR108109であり、R103は、水素又はアルキルであり、R104、R105、R106、R107、R108、R109はそれぞれ独立して、水素又はアルキルであり、R及びRは水素である。他の実施形態では、R104、R105、R106、R107はアルキルであり、R102は、−NR108109である。また他の実施形態では、R104、R105、R106、R107はアルキルであり、R102は−NR108109であり、R103は水素である。さらに他の実施形態では、R104、R105、R106、R107はメチル又はエチルであり、R102は−NHであり、R103は水素である。さらに他の実施形態では、R104はメチル又はエチルであり、R105、R106、R107はメチルであり、R102は−NHであり、R103は水素である。
上記の実施形態の幾つかでは、RとRは水素である。また上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、式(I)に示す化合物中の水素である。上記の実施形態の幾つかでは、Rはメチル又はフルオロである。上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロプロピル又は置換シクロプロピルである。上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化29】

である。
上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルを形成する。上記の実施形態の幾つかでは、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化30】

である。
【0064】
幾つかの実施形態では、Bは以下の構造:
【化31】

であり、
はアルキル又はハロである。
他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化32】

であり、
はアルキル又はハロである。
また他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化33】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。
さらに他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化34】

であり、
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化35】

である。
【0065】
幾つかの実施形態では、Rはn−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化36】

である。
他の実施形態では、Rはメチル又はフルオロである。
また他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである。さらに他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロプロピル又は置換シクロプロピルである。さらに他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化37】

である。
【0066】
幾つかの実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルである。他の実施形態では、R及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、以下の構造:
【化38】

である。
【0067】
上記実施形態の幾つかでは、nは0である。
他の実施形態では、Bが以下の構造:
【化39】

である場合、nは0である。
また他の実施形態では、Rがn−C1633O(CH−であり、Bが以下の構造:
【化40】

である場合、nは0である。
さらに他の実施形態では、Bは以下の構造:
【化41】

であり、R及びRは水素である場合、nは0である。
さらに他の実施形態では、Bが以下の構造:
【化42】

であり、R102がNHであり、R103が水素であり、R及びRが水素である場合、nは0である。
さらに他の実施形態では、Rがn−C1633O(CH−であり、Bが以下の構造:
【化43】

であり、R及びRが水素である場合、nは0である。
さらに他の実施形態では、Rがn−C1633O(CH−であり、Bが以下の構造:
【化44】

であり、R102がNHであり、R103が水素であり、R及びRが水素である場合、nは0である。
【0068】
第2の態様では、下記式(III)で表される化合物又は該化合物の塩、溶媒和物若しくは水和物が提供される。:
【化45】

ここで、式中、R201及びR201’はそれぞれ独立して、水素、−OR203、−OC(O)R204、−SR205、SC(O)R206であり、R203、R204、R205、R206は、それぞれ独立してアルキルである。ただし、R201、R201’が何れもOC(O)R204、−SC(O)R206又はこれらの組合せではない場合、R202及びR202’は、それぞれ独立して、−OR207、−OC(O)R208、−SR209、−SC(O)R210、−NR211212又は−NC(O)R213である。また、R207、R209、R211、R212はそれぞれ独立して、水素又はアルキルであり、R208、R210、R213はそれぞれ独立してアルキルである。ただし、同一の炭素原子に結合したR201及びR201’が、何れも−OC(O)R208、−SC(O)R210、−NR211212、−NC(O)R213ではないものとする。また、R300は、ヌクレオチドホスホネート又は抗ウイルス性ホスホネートを有するホスホネートであって、かかるホスホネートは、ヌクレオチド、ヌクレオシド又は抗ウイルス性ホスホネートのプリン塩基若しくはピリミジン塩基を、以下に示す構造のピリミジン塩基R301
【化46】

で置換した構造である。
ここで、式中、R220は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、−OR224、−SR225、−NR226NH若しくは−NR227NHSOMe、−NR228229であり、R221は、水素、アルキル、ハロ、−NR228229であり、R222は、水素又はアルキルであり、R224、R225、R226、R227、R228、R229は、水素又はアルキルであり、Xは−(R202)C(R202’)−であり、Lは、原子価結合又は式:−J−(CR230−G−(ここで、式中、tは1〜24の整数であり、J及びGはそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(O)O−又はNH−であり、R230は、水素、アルキル又は置換アルキルである。)で表される二官能性分子であり、mは0〜6の整数であり、nは0又は1である。幾つかの実施形態では、R201及びR201’は、何れも水素ではない。
【0069】
幾つかの実施形態では、R300は、リン原子に結合したヒドロキシル上の水素原子の1個を結合で置換することにより、以下の化合物:
【化47】

から誘導される。
【0070】
幾つかの実施形態では、ヌクレオチドホスホネートも同様に、ddA、ddI、ddG、L−FMAU、DXG、DAPD、L−dA、L−dl、L−(d)T、L−dC、L−dG、FTC、ペニシクロビア、2−クロロ−デオキシアデノシン、シタラビン、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン、ara−G、ara−A、ara−Uから誘導される。
【0071】
幾つかの実施形態では、抗ウイルス性ホスホネートも同様に、シドホビル、環状シドホビル、アデホビル、テノホビル、バロモシクロビルから誘導される。
【0072】
〔化合物の合成〕
ここで開示される組成物及び該組成物の使用方法に用いられる、ヌクレオシドホスホネート及びそのエステルの典型的な調製方法を以下に記載するが、かかる具体例には限定されない。ここで開示されるヌクレオシドホスホネート及びそのエステルの調製には、当該技術分野において従来公知の種々の方法を適宜用いることができる。
【0073】
下記スキームIに、式(I)又は式(II)(ここで、式中、X、n、R、R及びRは、上記に定義した通りである。)で示される三置換オレフィン化合物の一般的な合成方法を示す。かかる合成は、当該分野における当業者の技術常識に基づいて実施することができ、例えば以下の反応を行う際には種々の試薬を利用し得るし、以下の化合物A〜Jに種々の保護基を使用することもできる。
【0074】
下記スキームIに示すように、ここで開示される合成方法では、先ず化合物Aを選択的にモノ保護して(化合物Aに保護基P’を付加して)、化合物Bを得る。化合物Aとしては、市販品若しくは従来公知の化合物及び手法を用いて合成したものを用いることができる。次に、化合物Bの遊離アルコール基を酸化して、カルボニル化合物Cを得る。そして、Horner Emmons反応又は従来公知の手法によって、化合物DとEとの混合物を得た後、これらを立体選択的に分離する。説明を簡単にするため、スキーム1の以下のステップでは化合物Eのみを示すが、化合物Dも同様に用い得る。従来公知の手法を適宜用いることによって化合物Eのエステル基を還元し、アルコールFを得る。次いで、これを特異的に保護して(アルコールFに保護基P’’を付加して)、化合物Gを得る。そして、保護基P’’を選択的に除去して第一級アルコールHを得、これを脱離させて化合物Iを得る。次いで、ホスフィット置換によりホスホネートJ(R’及びR’’はアルキル又はアリールである)を得、次いでこれを脱保護してアルコールKを得る。そして、アルコールKを、例えばプリン塩基誘導体で置換して(ここで同様の手法を用いて、ピリミジン誘導体を結合してもよい。)、保護されたビニルホスホネートLを得ることができ、これを加水分解することによりリン酸Mを得る。そして、かかるリン酸Mの親油性側鎖を選択的に結合させてホスホネートNを得、これを加水分解してビニルプリンホスホネートOを得ることができる。
【化48】

【0075】
下記スキームIIに、式(I)又は式(II)(ここで、式中、X、n、R、R及びRは上記に定義した通りである。)で示される環状化合物の一般的な合成方法を示す。かかる合成は、当該分野における当業者の技術常識に基づいて実施することができ、例えば、以下の反応を行う際には種々の試薬を利用し得、また以下の化合物A’〜H’に種々の保護基を使用することもできる。
【化49】

【0076】
上記スキームIIに示すように、ここで開示される合成方法では、先ず化合物A’を保護して(化合物A’に保護基P’を付加して)、化合物B’を得る。化合物A’としては、市販品若しくは従来公知の化合物及び手法を用いて合成したものを用いることができる。次に、このオレフィンB’を従来の方法によって一段階で環状化合物に変換し、化合物C’が得られる。ここで、yは1又は2である。かかる化合物C’は、例えば、yが3〜8である既存の環化合物を用いて従来公知の手法により調製することもできる。そして、化合物C’から保護基P’を除去することによりジオールD’を得ることができ、これをモノ保護して(化合物D’に保護基P’
’を付加して)アルコールE’を得ることができる。かかるアルコールE’を酸化して、カルボニル化合物F’を得る。そして、Horner
Emmons反応によって、例えばビニルホスホネートG’(R’及びR’’はアルキル又はアリールである。)を得、これを水素化することで飽和ホスホネートH’を得る。かかる飽和ホスホネートH’から、保護基P’’を除去してアルコールI’を得、これを例えばプリン塩基誘導体で置換して、ホスホネートJ’を得ることができ(ここで、同様の手法を用いてピリミジン誘導体を結合させてもよい。)、これを加水分解することによりリン酸K’を得る。そして、かかるリン酸K’の親油性側鎖を選択的に結合させてホスホネートL’を得、これを加水分解してプリンホスホネートM’を得ることができる。
【0077】
以下のスキームIIIに、式(I)又は式(II)(ここで、式中、X、n、R、R、Rは上記に定義した通りである。))で示される二置換オレフィン化合物の一般的な合成方法を示す。かかる合成は、当該分野における当業者の技術常識に基づいて実施することができ、例えば、以下の反応を行う際に種々の試薬を利用し得る。
【化50】

【0078】
上記スキームIIIに示すように、ここで開示される合成方法では、先ず化合物A’’(R’及びR’’はアルキル又はアリールである。)をアルコール置換によりホスホネートB’’に変換し、これを加水分解してリン酸C’’を得る。化合物A’’としては、市販品若しくは従来公知の化合物及び手法を用いて合成したものを用いることができる。次に、リン酸C’’の親油性側鎖を選択的に結合させてホスホネートD’’を得、これを加水分解しすることでホスホネートE’を得ることができる。そして、従来公知の方法によって、かかるホスホネートE’を種々のプリン誘導体F’’(式中、R101は上記に定義した通りである。)に変換することができる。
【0079】
式(III)に示される化合物は、また、Hostetlerらの米国特許第7,098,197号に記載された方法によって製造することもできる。その他、従来公知の種々の方法を用いて、式(III)に示される化合物を製造することができる。
【0080】
〔医薬組成物及び該組成物の投与方法〕
本明細書で提供される医薬組成物は、ウイルス感染及び異常な細胞増殖に関連する疾患又は障害の1つ若しくは複数の症状の予防、処置又は軽減に有用な量のここで開示される1種又はそれ以上の化合物を、治療有効量含んでいる。かかる医薬組成物は、また、薬学的に許容されるビヒクルを含んでいる。ここで開示される化合物の投与に好適な医薬ビヒクルは、特定の投与方法に好適であることが従来公知な担体を任意に含み得る。
【0081】
さらに、ここで開示される化合物は、組成物中の唯一の医薬活性成分として製剤化してもよく、他の医薬活性成分と組合せて製剤化することもできる。
【0082】
ここで開示される医薬組成物は、ここで開示される1種又はそれ以上の化合物を含んでいる。かかる化合物は、経口投与に好適な溶液剤、懸濁剤(サスペンション)、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤、エリキシル剤等の医薬調製物として、或いは非経口投与用の滅菌溶液剤や懸濁剤として、或いは経皮パッチ製剤や乾燥粉末吸入薬として、製剤化し得る。かかる化合物は、当該技術分野において従来公知の技法及び手順を用いて、医薬組成物として製剤化し得る(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Seventh
Edition(1999)を参照されたい)。
【0083】
ここで開示される医薬組成物は、治療有効濃度の1種又はそれ以上の化合物又はその薬学的に許容される誘導体と、好適な医薬ビヒクルとの混合物である。なお、上記化合物は、製剤化の前に、かかる化合物の塩、エステル、エノールエーテル又はエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物又はプロドラッグとして誘導体化してもよい。組成物中の該化合物の濃度は、患者への投与時に、ウイルス感染又は異常な細胞増殖に関連する疾患又は障害1つ又はそれ以上の症状を治療、予防又は軽減し得るのに効果的なものとする。幾つかの実施形態では、該組成物を1回の投与量毎に製剤化する。組成物の製剤化は、治療した状態を緩和、予防、あるいは1つ又はそれ以上の症状を軽減し得る量の化合物を、選択したビヒクルに溶解、懸濁、分散等させて混合することで、行い得る。
【0084】
薬学的に許容されるビヒクルには、治療上有用な作用を発揮するために十分で、且つ患者に対して副作用がない量の活性化合物を含有させる。該化合物の治療有効濃度は、従来公知のインビトロ系及びインビボ系での試験結果をヒトへの投与量に外挿して、経験的に決定することができる。
【0085】
医薬組成物中の活性化合物の濃度は、例えば、該化合物の吸収速度、不活性化速度及び排泄速度、物理化学的性質、投与計画、投与量等によって異なり得る。例えば処方する量は、ここで開示されるようなウイルス感染又は異常な細胞増殖に関連する疾患又は障害の1つ又はそれ以上の症状を軽減するのに十分な量である。
【0086】
幾つかの実施形態では、治療上有効な投与量は、活性成分の血清中濃度が約0.1ng/mlから約50〜100μg/mlになるよう調製することができる。他の実施形態では、ここで開示される化合物の1日当たりの投与量が体重1キログラムにつき約0.001mg〜約2000mgとなるよう医薬組成物を調製することができる。また、単位用量形態は、該単位用量形態当たり活性成分又は必須成分の組合せが約0.01mg(例えば、0.1mg又は1mg)〜約500mg(例えば、1000mg又は2000mg)、例えば約10mg〜約500mgとなるように調製する。
【0087】
活性成分は1回で投与してもよいし、あるいは、少量ずつ数回に分け、間隔をおいて投与してもよい。好ましい投与量や投与期間は、治療される疾患によって決まり、公知の検査プロトコルを用いて、あるいは、インビボ又はインビトロの検査データから外挿して、経験的に決定することができる。好ましい活性成分の濃度や投与量は、疾病の重症度等によっても異なり得る。従って、各々の被検体に対する処方は、個々の必要性や該組成物の投与の管理及び監督を行う者の専門的判断に応じて経時的に調製すべきである。なお、上記好適な濃度範囲は例示的なものにとどまり、ここで開示される組成物の使用範囲や実施の限定を意図していない。
【0088】
また、化合物の溶解性が不十分な場合は、該化合物を可溶化し得る手法を適宜用いることができる。かかる手法としては、従来公知の手法、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)等の共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)等の界面活性剤の使用、炭酸水素ナトリウム水での溶解等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、例えばプロドラッグ等の化合物の誘導体を使用することもできる。
【0089】
化合物の混合又は添加により得られる混合物の形態は、溶液でも、懸濁液でも、エマルジョンでもよい。かかる形態は、患者への投与方法や選択したビヒクルに対する化合物の溶解性等の種々の要因により適宜選択し得る。また、該化合物の有効濃度は、疾患や障害の治療(又はかかる状態の症状の軽減)に十分な量であり、かかる値は経験等に基づいて決定し得る。
【0090】
ここで開示される医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口溶液剤又は懸濁剤;経口溶液剤又は懸濁剤;好適な量の化合物又はその薬学的に許容される誘導体を含む油水乳剤(エマルジョン剤)等の単位剤形;等の形態で、ヒト及び動物に投与するために提供される。医薬品として治療効果のある化合物及びその誘導体は、単位用量形態(unit-dosage form)で製剤化して投与してもよく、複数回投与量形態(multiple-dosage
form)で製剤化して投与してもよい。なお、本明細書において、単位用量形態とは、ヒト及び動物被検体に好適であり、当該技術分野において従来公知な単位で物理的に分離し、個別に包装された形態を指す。単位用量には、各々、所望の治療効果を発揮するのに十分な量の治療活性化合物と共に必要とされる医薬ビヒクルが含まれる。単位用量形態としては、例えば、アンプル剤、シリンジ剤、個別包装された錠剤又はカプセル剤が挙げられる。かかる単位用量形態は、分割して投与しても、分割したものを複数投与してもよい。また、本明細書において複数回投与量形態とは、単位用量形態を分離して、投与する複数の同一の単位剤形を単一容器に収めされたものを指す。かかる複数回投与量形態としては、例えば、バイアル、錠剤若しくはカプセル剤のビン、パイントビン、ガロンビンが挙げられる。このため、複数回投与量形態は分離包装されていない単位用量の倍数である。
【0091】
薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば、上記のような活性化合物及び任意の医薬アジュバントを、適当なビヒクル(例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等)に溶解、分散、又は他の方法で混合し、溶液又は懸濁液を形成することによって調製し得る。医薬組成物には、必要に応じて、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤等、より具体的にはアセテート、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、及びこうした作用を有する物質を、適宜含有させることもできる。
【0092】
このような剤形は、当業者に従来公知の手法を用いて調製することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company,
Easton, Pa., 15th Edition, 1975又はその新版を参照されたい。
【0093】
剤形又は組成物は、例えば0.005%〜100%の範囲の活性成分と、非毒性の担体と、を含むよう調製することができる。かかる組成物の調製には、当業者に従来公知の手法を用いることができる。また、組成物中の活性成分は、0.001%〜100%(例えば0.1〜95%、あるいは75〜85%)となるよう調製することもできる。
【0094】
ある種の実施形態では、かかる組成物は、当該技術分野において従来公知な(例えば、U.S.Pharmacopeia(USP)25-NF20(2002)に記載されるような)賦形剤を含み、ラクトースを含まない組成である。ラクトースを含まない組成物は、典型的には、薬学的に許容し得る量の活性成分、結合剤、充填剤、潤滑剤等を含んでいる。また、ラクトースを含まない剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム等を含み得る。
【0095】
さらに、水分が存在することで一部の化合物の分解を促進する虞があるため、本明細書において、活性成分を含む無水医薬組成物及び剤形が提供される。例えば、医薬品技術分野では、製剤の有効期間又は一定期間における安定性等の特性を判定するための長期保存試験として、水分の添加(例えば、5%の水分の添加)が一般的に行われている(例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d.
Ed., Marcel Dekker, NY, 1995, pp.379-80を参照されたい。)。実際に、水分や熱は、一部の化合物の分解を加速させ得る。製剤の製造、取扱い、包装、保管、輸送、及び使用の際の環境には、通常、水分及び/又は湿気が存在するため、製剤に対する水分の作用を考慮することは、殊に重要である。
【0096】
ここで開示される無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有の構成成分を、低水分又は低湿気条件下において調製することにより、得ることができる。
【0097】
また、かかる無水医薬組成物は、その無水性が維持されるよう調製及び保存することが好ましい。従って、かかる無水組成物は、例えば該組成物の処方に好適な、水不透過性の材料で包装することが好ましい。より具体的には、例えば、密封ホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、ストリップ包装が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
経口製剤の剤形は、固体、ゲル又は液体の形態であり得る。固体の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤(powders)が挙げられる。また、経口錠剤としては、組成物を圧縮したチュアブルロゼンジやチュアブル錠(トローチ錠)が挙げられる。これらには腸溶コーティングや糖衣が施されていてもよく、またフィルムコーティングが施されていてもよい。また、カプセル剤は硬質ゼラチンカプセルでもよく、軟質ゼラチンカプセルでもよい。さらに顆粒剤及び散剤は従来公知の他の成分と組合せることができ、且つ非発泡形態でも発泡形態でもよい。
【0099】
ある種の実施形態では、製剤は、固体剤形、例えばカプセル剤や錠剤である。また、錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分やこれらと性質の類似した化合物を1種又は2種以上を含んでいてもよい。かかる成分としては:結合剤;潤滑剤;希釈剤;流動促進剤;崩壊剤;着色剤;甘味剤;着香剤;湿潤剤;催吐コーティング剤;フィルムコーティング剤;が挙げられる
かかる結合剤としては、例えば、微結晶性セルロース、トラガントゴム、グルコース溶液、アラビアゴム液、ゼラチン溶液、糖蜜、ポリビニルピロリジン、ポビドン、クロスポビドン、スクロース、デンプン糊が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム、石松子、ステアリン酸が挙げられる。希釈剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール、リン酸二カルシウムが挙げられる。流動促進剤としては、例えば、コロイド状の二酸化ケイ素が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、コーンスターチ、ポテトスターチ、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては、例えば、認可された水溶性FD及びC色素、それらの混合物;アルミナ水和物で懸濁した水不溶性FD及びC色素;が挙げられる。甘味剤としては、例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、サッカリン等の人工甘味剤、ならびに様々な噴霧乾燥香味料が挙げられる。着香剤としては、例えば、果実等の植物から抽出された天然香味料、爽快感を与える化合物(例えば、ペパーミントやサリチル酸メチルの合成ブレンド)が挙げられる。湿潤剤としては、例えば、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。催吐コーティング剤としては、例えば、脂肪酸、油脂、ワックス、セラック、アンモニア処理セラック、セルロースアセテートフタレートが挙げられる。フィルムコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、セルロースアセテートフタレートが挙げられる。
【0100】
本化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、それらを胃の酸性環境から保護し得る組成物の形態として提供することができる。より具体的には、胃内では該組成物がそのままの形態を維持し、腸内では活性化合物を放出し得るような腸溶コーティングを用いて製剤化することができる。かかる組成物は、制酸薬や他のこうした成分と組合せて製剤化することもできる。
【0101】
また、投薬単位剤形がカプセルの形態である場合、上記構成成分に加え、脂肪油等の液体の担体を含有させることもできる。さらに、かかる投薬単位剤形は、例えば、糖のコーティングや他の腸内作用物質のように、該剤形の物理的形状を改変し得る種々の成分をも含み得る。また、ここで開示される化合物は、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート(ウエハー)、噴霧剤(スプリンクル)、チューインガム、等の成分として含有させることもできる。なお、シロップ剤は、ここで開示される活性化合物に加え、甘味剤及び防腐剤(例えばスクロース)、色素、着色剤、香味料等を含み得る。
【0102】
さらに、ここで開示される活性材料には、所望の作用を弱めない他の活性材料や所望の作用を補い得る材料、例えば制酸薬、H2ブロッカー、利尿薬、等を混合することができる。かかる材料の活性成分は、ここで開示される化合物又はその薬学的に許容される誘導体であり、例えば最大約98重量%の高濃度で該活性成分を含ませることもできる。
【0103】
上述したあらゆる実施形態において、錠剤やカプセル剤は、上記活性成分の溶解を制御又は持続させるために従来公知の製剤でコーティングすることができる。より具体的には、かかる製剤は例えば、従来公知のサリチル酸フェニル、ワックス、セルロースアセテートフタレート等、腸内で消化可能なコーティング剤でコーティングすることができる。
【0104】
液体経口剤形としては、水溶液剤、乳剤、懸濁剤、非発泡顆粒剤から再構成された溶液剤、及び/又は懸濁剤や発泡顆粒剤から再構成された発泡調製物、が挙げられる。水溶液剤としては、例えばエリキシル剤やシロップ剤が挙げられる。また、乳剤は水中油型と油中水型に分類することができる。
【0105】
エリキシル剤は、甘味を加えた透明な含水アルコール調製液である。該エリキシル剤に使用され得る薬学的に許容されるビヒクルとしては、溶媒が挙げられる。シロップ剤は、糖(例えば、スクロース)の濃縮水溶液であり、防腐剤を含んでいてもよい。乳剤は、任意の液体が微細な液滴となって、混合し得ない液体中に分散している、2相系の分散液である。乳剤に使用し得る薬学的に許容される担体としては、非水性溶液、乳化剤、防腐剤が挙げられる。また、懸濁剤は、薬学的に許容される懸濁化剤や防腐剤を含み得る。
液体経口剤形に再構成された非発泡顆粒剤に使用され得る薬学的に許容される物質としては、例えば、希釈剤、甘味剤、湿潤剤が挙げられる。液体経口剤形に再構成された発泡顆粒剤に使用され得る薬学的に許容される物質としては、例えば、有機酸や二酸化炭素源が挙げられる。また、着色剤や着香剤は、上記の剤形の全てで使用され得る。
【0106】
上記溶媒としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、シロップが挙げられる。防腐剤としては、例えば、グリセリン、メチル、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、アルコールが挙げられる。乳剤に利用される非水性液体の例としては、鉱油や綿実油が挙げられる。乳化剤としては、例えば、ゼラチン、アカシア、トラガント、ベントナイト、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート等の界面活性剤が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ペクチン、トラガント、アルマシラート(ベーガム)、アカシアが挙げられる。甘味剤としては、スクロース、シロップ、グリセリン、サッカリン等の人工甘味剤が挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。有機酸としては、クエン酸や酒石酸が挙げられる。二酸化炭素源としては、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムが挙げられる。着色剤としては、認可された水溶性FD及びC色素及びそれらの混合物が挙げられる。着香剤としては、果実等の植物から抽出された天然香味料、及び好ましい味覚を与える化合物の合成ブレンド等が挙げられる。
【0107】
固体剤形の場合、例えばプロピレンカルボネート、植物油、トリグリセリド等の溶液又は懸濁液を、ゼラチンカプセルに封入することができる。溶液の調製及び封入については、米国特許第4328245号明細書;同第4409239号明細書;同第4410545号明細書;に開示されている。また、液体剤形の場合、ある溶液(例えばポリエチレングリコールの溶液)を、十分な量の薬学的に許容される液体ビヒクル(例えば水)で希釈することで、投与の際の計量を容易にし得る。
【0108】
液体又は半固体経口製剤は、活性化合物又は該化合物の塩を植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、プロピレンカルボネート)等の担体に溶解又は分散させ、これらの溶液剤又は懸濁剤を硬質又は軟質のゼラチンカプセルに封入することで調製し得る。他の有用な製剤としては、米国特許第RE28819号明細書及び同第4,358,603号明細書の記載を参照し得る。特に限定されないが、上記特許文献によればかかる製剤には、ここで開示される化合物と、ジアルキル化モノ−又はポリアルキレングリコール(例えば、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテル(ここで、350、550、750は、其々、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を指す。))と、1種又はそれ以上の酸化防止剤(例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びこれらのエステル、ならびにジチオカルバマート)と、を含み得ることが開示されている。
【0109】
他の製剤としては、例えば薬学的に許容されるアセタール等の水性アルコール溶液剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。かかる製剤に使用されるアルコールは、1つ又はそれ以上のヒドロキシル基を有する薬学的に許容される任意の水混和性溶媒であり、例えばプロピレングリコールやエタノールが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、アセタールとしては、例えばアセトアルデヒドジエチルアセタール等低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0110】
幾つかの実施形態では、皮下、筋肉内、又は静脈内への注射(注入)によって、該化合物を非経口投与することができる。注射剤は、溶液剤、懸濁剤、溶液に好適に溶解又は分散し得る固体の形態であり得る。若しくは、乳剤として調製してもよい。注射剤、溶液剤及び乳剤は、1種又はそれ以上の賦形剤をさらに含み得る。好適な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールが挙げられる。さらに、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、及び他のこうした作用物質、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、シクロデキストリン等の少量の非毒性補助物質を適宜添加することもできる。
【0111】
また、ここで開示される投与方法には、所定の量が継続的に投与可能な、遅放性又は徐放性の放出装置を移植すること(例えば、米国特許第3,710,795号明細書を参照されたい。)をも包含する。上記特許文献によれば、かかる装置は、ここで開示される化合物を例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は無可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコンカルボネートコポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル酸やメタクリル酸のエステルのヒドロゲル)、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコールならびに部分的に加水分解された架橋ポリビニルアセテート、等に分散させ、これを体内で溶解しない高分子膜、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー等で包んだ形態であり得る。かかる構成によれば、高分子膜に内包された化合物は、制御された放出速度で段階的に拡散し得る。こうした非経口組成物に含有させる該活性化合物の割合は、例えば、その性質や、化合物の活性、被検体の必要量等によって大きく異なり得る。
【0112】
組成物の非経口投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与が挙げられる。かかる非経口投与用の調製物としては、すぐに注入可能な滅菌溶液;使用直前に溶媒と混合し得る可溶性の滅菌乾燥生成物(例えば凍結乾燥粉末)からなる皮下注射用錠剤;すぐに注入可能な滅菌懸濁剤;使用直前にビヒクルと混合し得る不溶性の滅菌乾燥生成物;滅菌乳剤;が挙げられる。また、かかる溶液剤は、水溶性でもよく非水溶性でもよい。
【0113】
静脈内に投与する場合の好適な担体としては、生理食塩水、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS);粘度付与剤や可溶化剤を含む溶液、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールならびにこれらの混合物等;が挙げられる。
【0114】
非経口調製物に使用される薬学的に許容されるビヒクルとしては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔薬、懸濁化剤(分散剤)、乳化剤、金属イオン封鎖剤(キレート化剤)、及び他の薬学的に許容される物質が挙げられる。
【0115】
水性ビヒクルとしては、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、乳酸リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、例えば、植物性不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ピーナッツ油が挙げられる。また、フェノール(クレゾール)、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムを含む複数回投与量形態の非経口調製物には、静菌濃度又は静真菌濃度の抗菌剤を添加することが好ましい。等張剤としては、例えば、塩化ナトリウム、デキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、ホスフェート、シトレートがある。酸化防止剤としては、例えば、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔薬としては、例えば、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁化剤(分散剤)としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、例えばポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤(キレート化剤)としては、例えばEDTAが挙げられる。薬学的担体としては、例えば、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール;pH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、乳酸;等が挙げられる。
【0116】
医薬活性化合物の濃度は、注射によって所望の薬理効果を発揮することのできる量を付与し得るよう適宜調整する。従来公知なように、かかる量は患者又は動物の年齢、体重、状態等によって異なり得る。
【0117】
単位用量の非経口調製物は、アンプル、バイアル、針付きシリンジ等に包装し得る。なお、かかる非経口投与用の調製物は、当該技術分野において従来公知の方法で無菌処理することが好ましい。
【0118】
例えば、活性化合物を含んだ無菌水溶液の静脈内又は動脈内への注入(注射)は、効果的な投与方法である。また他の実施形態では、所望の薬理効果を得るために、必要に応じて(活性材料を含む)滅菌水性溶液若しくは油性の溶液;滅菌水性若しくは油性の懸濁液;を含むこともできる。
【0119】
注射剤は、局所投与用又は全身投与用に設計し得る。ある実施形態では、治療上有効な投与量は、治療される組織に対し、活性化合物が少なくとも約0.1%w/w、例えば約0.1%w/w〜約90%w/w、好ましくは1%w/wを超える濃度で含むよう決定し、処方することができる。
【0120】
かかる活性化合物は、微粒子状、又は他の好適な形状で担体等に懸濁させてもよいし、あるいは誘導体化して高溶解性の生成物やプロドラッグとしてもよい。化合物を包含する混合物は、投与方法や選択した担体又はビヒクルに対する化合物の溶解性等、幾つかの要因によって異なる形態であり得る。混合物中の有効濃度は、患者の症状を軽減し得るのに十分な濃度となるよう、経験に基づき適宜決定することができる。
【0121】
本明細書で提供される活性成分は、例えば、従来公知の放出制御装置や薬剤送達装置によって投与することができる。例えば、米国特許第3,845,770号明細書;同第3,916,899号明細書;同第3,536,809号明細書;同第3,598,123号明細書;同第4,008,719号明細書;同第5,674,533号明細書;同第5,059,595号明細書;同第5,591,767号明細書;同第5,120,548号明細書;同第5,073,543号明細書;同第5,639,476号明細書;同第5,354,556号明細書;同第5,639,480号明細書;同第5,733,566号明細書;同第5,739,108号明細書;同第5,891,474号明細書;同第5,922,356号明細書;同第5,972,891号明細書;同第5,980,945号明細書;同第5,993,855号明細書;同第6,045,830号明細書;同第6,087,324号明細書;同第6,113,943号明細書;同第6,197,350号明細書;同第6,248,363号明細書;同第6,264,970号明細書;同第6,267,981号明細書;同第6,376,461号明細書;同第6,419,961号明細書;同第6,589,548号明細書;同第6,613,358号明細書;同第6,699,500号明細書;同第6,740,634号明細書に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
かかる剤形によれば、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、ミクロスフェア、又はこれらの組合せを用いて、1種又は2種以上の活性成分の放出速度を遅らせる等、放出速度を自由に調節することができる。このように、かかる剤形を用いることで、任意の放出制御を行うことができる。ここで開示される活性成分を使用する際には、従来公知の放出制御製剤を適宜選択し得る。
【0122】
放出制御製剤は、何れも非制御型の製剤よりも治療効果等を高めるために用いられる。最適に設計された放出制御製剤を治療に用いることで、最低量の薬剤物質により、短時間でその状態を治癒又は制御することができる。放出制御製剤の利点としては、薬剤活性を持続し得ること、投薬頻度を下げられること、治療の質(ペイシェント・コンプライアンス)の向上が挙げられる。さらに、かかる放出制御製剤を用いることで、例えば薬剤の血中濃度が急激に上昇すること等に伴う、副作用(有害作用)の発生を軽減させることもできる。
【0123】
多くの放出制御製剤は、服用後、速やかに所望の治療効果を発揮し得る量の薬剤(活性成分)を放出し、残りの量の薬剤を徐々に(持続的に)放出し治療又は予防の効果を長期間にわたり維持するよう設計されている。体内の薬剤濃度を一定に維持するためには、代謝されて体から排泄される量を考慮した速度で、かかる剤形から薬剤を放出しなければならない。活性成分の放出制御は、特に限定されないが、例えば、pH、温度、酵素、水、若しくは他の生理的条件、化合物等の様々な条件で行うことができる。
【0124】
活性成分の投与は、例えば、点滴静注、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム等を用いて行ってもよく、また例えばポンプ等を使用して行ってもよい。かかる手法については、例えば、Sefton,CRC Crit. Ref. Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al. , Surgery 88:507(1980);Saudek et al. , N. Engl. J. Med. 321:574(1989)を参照することができる。また他の実施形態では、高分子材料を使用してもよい。さらに他の実施形態では、放出制御装置を治療標的に近接して配置することもできる。かかる形態によれば、治療に必要な薬剤の量を低減することができる。例えば、Goodson, Medical Applications of Controlled Release, vol.2, pp.115-138(1984)を参照されたい。より具体的には、例えば、被検体に対し、免疫活性化が異常な部位や腫瘍に近接した位置に放出制御装置を配置することができる。また、他の放出制御装置については、例えば、Langerの概説(Science 249:1527-1533(1990)を参照し得る。
かかる装置では、活性成分を、例えばポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は無可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル酸やメタクリル酸のエステルのヒドロゲル)、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び部分的に加水分解された架橋ポリビニルアセテート分散し、これを体内で溶解しない高分子膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー等で包んだ形態であり得る。かかる構成によれば、高分子膜に内包された化合物は、制御された放出速度で段階的に拡散し得る。こうした非経口組成物に含有させる該活性化合物の割合は、例えば、その性質や化合物の活性、被検体の必要量等によって大きく異なり得る。
【0125】
本明細書では、投与のため溶液、乳剤、及び他の混合剤として再構成できる凍結乾燥粉末をも対象とし得る。また、凍結乾燥粉末は、再構成して固体又はゲルとして製剤化してもよい。
【0126】
無菌の凍結乾燥粉末は、ここで開示される化合物又はその薬学的に許容される誘導体を、好適な溶媒に溶解することによって調製することができる。溶媒は、粉末又は粉末から調製された再構成溶液の安定性若しくは他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含んでもよい。使用し得る賦形剤としては、酸化防止剤、緩衝液、増量剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。かかる賦形剤としては、例えば、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、及び他の好適な作用物質等が挙げられる。溶媒としては、クエン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液若しくはリン酸カリウム緩衝液、又は当業者に公知の他のこうした緩衝液を、ほぼ中性pHで用いることができる。その後、該溶液を無菌化濾過し、続いて従来公知の一般的な条件下で凍結乾燥することによって、所望の製剤を得る。ある実施形態では、得られた溶液はを凍結乾燥のために複数のバイアルに移す。その際、各バイアルには、該化合物の単一投与量(単位投与量)又は複数回投与量を含ませ得る。かかる凍結乾燥粉末は、約4℃から室温の適切な条件下で保存することができる。
【0127】
そして、この凍結乾燥粉末を注射用蒸留水で再構成することで、非経口投与で用いられる製剤を得ることができる。再構成では、凍結乾燥粉末を滅菌水又は他の好適な担体に添加する。添加量は用いる化合物等によって異なり、経験的に決定することができる。
【0128】
局所及び全身への投与用には、ここで開示されるような混合物を調製する。かかる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョン等であり得、或いは、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、乳剤、溶液剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁剤、チンキ剤、ペースト剤、フォーム剤、エアロゾル剤、灌注剤、スプレー剤、坐剤、包帯、経皮パッチ剤、又は局所投与に好適な任意の他の製剤として製剤化したものであり得る。
【0129】
化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、吸入等による局部用途にエアロゾル剤として製剤化してもよい。例えば、炎症性疾患(特に喘息)の治療に有用なステロイドを投与するために用いられるエアロゾル剤については、米国特許第4,044,126号明細書、同第4,414,209号明細書、同第4,364,923号明細書の記載を参照することができる。気道に投与するこれらの製剤は、単独又はラクトース等の不活性な担体と組合せた、ネブライザー用のエアロゾルや溶液の形態でもよく、吹送用の超微粒粉末のような形態でもよい。かかる製剤の粒子の大きさは、直径50ミクロン未満、例えば10ミクロン未満であり得る。
【0130】
化合物の形態は、局所又は局部への投与用(例えば、ゲル、クリーム、ローション等の形態)に製剤化することもでき、より具体的には、皮膚及び粘膜への用途塗布用、点眼用、大槽内若しくは髄腔内への投与用等に製剤化することもできる。局所投与用に製剤化することで、経皮送達、眼や粘膜への投与、吸入療法等を行い得る。また、かかる化合物は、単独で用いてもよく、例えば他の薬学的に許容される賦形剤等と組合せ経鼻溶液剤の形態で投与してもよい。
【0131】
鼻腔への投与用は、典型的にはエアロゾルの形態で使用するため、調製物には液体状の担体(例えば、水性担体に溶解又は懸濁したエステル化ホスホネート化合物)を含み得る。また、かかる担体には、プロピレングリコール等の可溶化剤、界面活性剤、レシチンやシクロデキストリン等の吸収促進剤、防腐剤等を含んでもよい。
【0132】
これらの溶液剤(とりわけ点眼用の溶液剤)は、該化合物の塩を0.01%〜10%の割合で含む等張液であって、pH約5〜7の溶液として製剤化してもよい。
【0133】
本明細書で開示される投与方法は、イオントフォレーシス(iotophoretic)装置や電気泳動装置を含む経皮パッチ剤、直腸投与等他の投与経路も意図している。
【0134】
イオントフォレーシス装置及び電気泳動装置を含む経皮パッチ剤は、当業者によく知られている。こうしたパッチ剤については、例えば、米国特許第6,267,983号明細書、同第6,261,595号明細書、同第6,256,533号明細書、同第6,167,301号明細書、同第6,024,975号明細書、同第6,010715、同第5,985,317号明細書、同第5,983,134号明細書、同第5,948,433号明細書、同第5,860,957号明細書等に開示されている。
【0135】
直腸投与用の剤形は、例えば、全身作用を狙った直腸坐剤、カプセル剤、錠剤等であり得る。本明細書で使用する直腸坐剤とは、直腸に挿入すると体温で溶けるか若しくは軟化して、1種又はそれ以上の薬理学的又は治療的に活性な成分を放出し得る固形物を意味する。直腸坐剤に用い得る薬学的に許容される物質としては、基剤又はビヒクル、坐剤の融点を上げ得る作用物質等が挙げられる。基剤としては、例えば、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン−ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、脂肪酸のモノ−、ジ−、トリグリセリドからなる混合物が挙げられる。また、上述したような種々の基剤を組合せて用いることもできる。坐剤の融点を上げ得る作用物質としては、鯨蝋やワックスが挙げられる。直腸坐剤の調製は、例えば圧縮法や成形のによって行うことができる。かかる直腸坐剤の重量は、例えば約2〜3gmであり得る。直腸投与用の錠剤やカプセル剤は、経口投与用の製剤と同様の薬学的に許容される物質を用いて、同様の手法で製造することができる。
【0136】
ここで開示される化合物及びその薬学的に許容される誘導体は、特定の組織、受容体、治療される被検体の身体の他の領域を標的にするように製剤化することもできる。こうした標的化の方法が、当業者に広く一般的に知られている。かかる標的化の方法は特に制限されず、本組成物に使用することができる。標的化の方法としては、特に限定されないが、例えば、米国特許第6,316,652号明細書、同第6,274,552号明細書、同第6,271,359号明細書、同第6,253,872号明細書、同第6,139,865号明細書、同第6,131,570号明細書、同第6,120,751号明細書、同第6,071,495号明細書、同第6,060,082号明細書、同第6,048,736号明細書、同第6,039,975号明細書、同第6,004,534号明細書、同第5,985,307号明細書、同第5,972,366号明細書、同第5,900,252号明細書、同第5,840,674号明細書、同第5,759,542号明細書、同第5,709,874号明細書等の記載を参照することができる。
【0137】
幾つかの実施形態では、組織を標的としたリポソーム(例えば、腫瘍を標的としたリポソーム等)を含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として好適であり得る。これらは、当業者に従来公知の方法に従い調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、米国特許第4,522,811号明細書の記載に基づいて調製することができる。より具体的には、フラスコ内で卵ホスファチジルコリンと脳ホスファチジルセリンとを7:3のモル比で混合して乾燥させることにより、多重膜小胞(MLV)等のリポソームを形成することができる。そして、2価カチオンに乏しいリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に、ここで開示される化合物をを加えて溶解させ、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪する。得られた小胞を洗浄して未封入の化合物を除去した後、遠心分離によりペレット状にして、次いでPBSに再懸濁させることで調製し得る。
【0138】
化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、ウイルス感染や異常な細胞増殖に関する疾患又は障害の1つ又はそれ以上の症状の治療、予防又は軽減に効果がある化合物又はその薬学的に許容される誘導体と、その有効性について記載した書面と、を含む製品として包装(パッケージ化)してもよい。
【0139】
上記製品では、製剤が包装材料で包装されている。製剤の包装には、当業者によく知られている包装材料を用いることができ、例えば、米国特許第5,323,907号明細書、同第5,052,558号明細書、同第5,033,252号明細書の記載を参考にし得る。かかる包装材料の例としては、ブリスターパック、ビン、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ等が挙げられるが、これらに限定されず、用いる製剤や投与方法、治療方法等によって適宜好適な包装材料を用いることができる。即ち、ここで開示される化合物や組成物は、ウイルス感染や異常な細胞増殖に関する様々な疾患や障害を治療するために、多様な形態の製剤であり得る。
【0140】
〔投与量〕
ヒトの治療では、被検体の年齢、体重、疾患の段階等に基づき、最も適切な投与量を医師が決定する。医薬組成物の投与量は、例えば体重1キログラム当たりの化合物の投与量が、1日約0.001mg〜約2000mgとなるよう調節する。また、投薬単位剤形は、例えば1投薬単位剤形当たりの活性成分が、約0.01mg以上(例えば0.1mg以上、例えば1mg以上)であって、2000mg以下(例えば1000mg以下、例えば約500mg以下)となるよう調製することができる。或いは、1投薬単位剤形当たりの活性成分又は必須成分が、約10mg〜約500mgとなるように調製することもできる。
【0141】
障害又は疾患の1つ又はそれ以上の症状の予防や治療に効果的な活性成分の量は、疾患及びその重症度、活性成分の投与方法等によっても異なる。また、製剤の投与回数(頻度)や投与量も、例えば投与する製剤の種類(例えば、治療剤であるか予防剤であるか)、障害や疾患の状態やその重症度、投与方法のほか、被検体の年齢、身体的特徴、体重、反応性、既往歴等、各被検体の要因によっても異なり得る。
【0142】
製剤中に含まれる活性化合物の用量は、例えば被検体の体重若しくはサンプルの重量1キログラム当たり、ミリグラムオーダー〜マイクログラムオーダー(例えば、約1マイクログラム〜約50ミリグラム、約10マイクログラム〜約30ミリグラム、約100マイクログラム〜約10ミリグラム、約100マイクログラム〜約5ミリグラム)とすることができる。
【0143】
また、当業者には明らかなように、場合によっては上記範囲外の活性成分の投与量を使用し得る。さらに、臨床医や治療をしている医師が、被検体の反応に応じて適宜治療を中断、調整、終了する時期等を調整する必要がある。
【0144】
また治療有効量は、様々な疾患及び状態に応じて、適宜好適な量とし得る。上記投与量及び投与スケジュールは、障害の防止、管理、治療又は軽減に十分な量であるかどうかと共に、副作用を引き起こさない量か否かを検討し、決定する。さらに、ここで開示される組成物を被検体に複数回投与する場合、各回の投与量は必ずしも全て同じである必要はない。被検体に投与される投与量は、例えば、予防又は治療効果を向上させるため増やしてもよいし、1つ又はそれ以上の副作用を抑制するために減少させてもよい。
【0145】
ここで開示される製剤の投与は繰り返して行うこともでき、例えば、各投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月、6ヶ月の間隔をあけて行うことができる。
【0146】
〔化合物の活性の評価〕
化合物の抗ウイルス活性は、当該技術分野において一般的なアッセイにより測定することができる。かかるアッセイとしては、例えば、HFF細胞を用いたプラーク減少アッセイ、MRC−5細胞を用いたDNA減少アッセイ、MT−2細胞を用いたp24減少アッセイ、HFF細胞を用いたCPEアッセイ、Daudi細胞を用いたEBV Elisaアッセイ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
〔化合物及びその組成物の使用方法〕
ここで開示される化合物及びその組成物を用いて、ウイルス感染又は異常な細胞増殖に関連する疾患の1つ又はそれ以上の症状を治療、予防又は軽減する方法を提供する。かかる方法を実施する際は、被検体に治療有効濃度の化合物を含む化合物又は組成物を有効量投与する。本明細書で提供される方法は、特に限定されないが、例えば、インフルエンザ;B型及びC型肝炎ウイルス;サイトメガロウイルス(CMV);疱疹感染症、例えば水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタインバーウイルス、ヘルペス6型6(HHV−6)及び8型(HHV−8);水痘帯状疱疹ウイルス感染症、例えば帯状疱疹又は水痘;エプスタインバーウイルス感染症、例えば伝染性単核球症/腺熱;レトロウイルス感染症、例えばSIV、HIV−1及びHIV−2;エボラウイルス;アデノウイルス及びパピローマウイルス;等のウイルス感染に関連する疾患の1つ又はそれ以上の症状を、治療、予防又は軽減する方法である。
【0148】
また、本明細書で提供される方法は、大痘瘡及び小痘瘡、ワクシニア、天然痘、牛痘、ラクダ痘及びサル痘等、オルソポックスウイルスが原因のウイルス感染症に関連する疾患の1つ又はそれ以上の症状を治療、予防又は軽減する方法である。例えば、かかる疾患は薬剤耐性B型肝炎であり得る。
【0149】
さらに、本明細書によって、癌等の細胞増殖に関する疾患の1つ又はそれ以上の症状を治療、予防又は軽減する方法が提供される。癌としては、例えば、肺癌、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、子宮頸癌、小児癌、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、食道癌、有毛細胞白血病、腎臓癌、肝臓癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、膵癌、原発性中枢神経系リンパ腫、皮膚癌等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
〔併用療法〕
ここで開示される化合物及びその組成物はまた、1種又はそれ以上の他の活性成分と組合せて使用してもよい。例えば、化合物を別の治療剤と組合せて、又は連続的して、投与し得る。かかる(別の)治療剤としては、ウイルス感染又は異常な細胞増殖に関する1つ又はそれ以上の症状を治療、予防又は軽減し得るとして知られたものが挙げられる。具体的には、例えば抗ウイルス薬や抗腫瘍薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
HIV感染症に対する薬剤の効力は、主要薬剤とは異なる変化を誘導し得る第2の、場合によっては更に第3の、抗ウイルス性化合物と組合せて又は交互に化合物を投与することによって、持続、増強又は回復し得ることが、近年明らかになった。即ち、こうした併用投与療法や交互投与療法によって、薬剤の薬物動態、体内分布又は他のパラメーターを変化させ得る。
【0152】
ある実施形態では、HIV及び/又はHCV感染症等のウイルス感染症の治療又は予防に効果的な第2の作用物質の投与を包含する、治療、予防又は軽減の方法が提供される。かかる第2の作用物質としては、例えば、HIV及び/又はHCV感染症等のウイルス感染症の予防及び/又は治療に効果的であることが従来公知な作用物質を用いることができる。あるいは、ウイルス感染の治療、予防又は軽減のために今後開発される、第2の作用物質を用いることもできる。さらに、かかる第2の作用物質は、HIV及び/又はHCVの治療又は予防用として現在承認されているものであり得る。
【0153】
ある実施形態では、ここで開示される化合物を、1種類の第2の作用物質と組合せて投与することができる。また他の実施形態では、2種類の第2の作用物質と組合せて投与することができる。さらに他の実施形態では、3種以上の第2の作用物質と組合せ投与することができる。
【0154】
HIVを治療するための第2の抗ウイルス薬としては、例えば逆転写酵素阻害剤(「RTI」)を用いることができ、該逆転写酵素阻害剤は合成ヌクレオシド化合物(「NRTI」)であってもよく非ヌクレオシド化合物(「NNRTI」)であってもよい。また、第2の(又は第3の)抗ウイルス薬は、プロテアーゼ阻害剤であってもよい。さらに、第2の(又は第3の)化合物は、ピロリン酸類似体(アナログ)でも、融合結合阻害剤でもよい。
【0155】
HBVを治療するために併用投与療法又は交互投与療法で用いられる第2の化合物としては、例えば、3TC、FTC、L−FMAU、インターフェロン、β−D−ジオキソラニル−グアニン(DXG)、β−D−ジオキソラニル−2,6−ジアミノプリン(DAPD)、β−D−ジオキソラニル−6−クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、BMS−200475、ビスpom PMEA(アデホビル、ジピボキシル);ロブカビル、ガンシクロビル、リババリン;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
また、HIV療法のため、ここで開示される化合物と組合せて又は交互に用いることができる抗ウイルス薬としては、例えば、シス−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(FTC);2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオランの(−;)−エナンチオマー(3TC);カルボビル、アシクロビル、ホスカルネット、インターフェロン、AZT、DDI、DDC、D4T、CS−87(3’−アジド−2’,3’−ジデオキシ−ウリジン)、ならびにβ−D−ジオキソラニル−グアニン(DXG)、β−D−ジオキソラニル−2,6−ジアミノプリン(DAPD)、β−D−ジオキソラニル−6−クロロプリン(ACP)等のβ−D−ジオキソランヌクレオシド、MKC442(6−ベンジル−1−(エトキシメチル)−5−イソプロピルウラシル);が挙げられる。
【0157】
プロテアーゼ阻害剤としては、例えば、クリキシバン(Merck)、ネルフィナビル(Agouron)、リトナビル(Abbott)、サキナビル(Roche)、DMP−266(Sustiva)、DMP−450(DuPont Merck)が挙げられる。
【0158】
更に、ここで開示される化合物の何れかと組合せて又は交互に投与することができる化合物として、(1S,4R)−4−[2−アミノ−6−シクロプロピル−アミノ)−9H−プリン−9−イル]−2−シクロペンテン−1−メタノールスクシネート(「1592」、カルボビル類似体(アナログ));3TC;−β−L−2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン;α−APA R18893:α−ニトロ−アニリノ−フェニルアセトアミド;A−77003;C2対称性プロテアーゼ阻害剤;A−75925:C2対称性プロテアーゼ阻害剤;AAP−BHAP:ビスヘテロアリールピペラジン類似体(アナログ);ABT−538:C2対称性プロテアーゼ阻害剤;AzddU:3’−アジド−2’,3’−ジデオキシウリジン;AZT:3’−アジド−3’−デオキシチミジン;AZT−p−ddI:3’−アジド−3’−デオキシチミジリル−(5’,5’)−2’,3’−ジデオキシイノシン酸;BHAP:ビスヘテロアリールピペラジン;BILA 1906:N−{1S−[[[3−[2S−{(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル}−4R−]3−ピリジニルメチル)チオ]−1−ピペリジニル]−2R−ヒドロキシ−1S−(フェニルメチル)プロピル]アミノ]カルボニル]−2−メチルプロピル}−2−キノリンカルボキサミド;BILA 2185:N−(1,1−ジメチルエチル)−1−[2S−[[2−2,6−ジメチフェノキシ)−1−オキソエチル]アミノ]−2R−ヒドロキシ−4−フェニルブチル]4R−ピリジニルチオ)−2−ピペリジン−カルボキサミド;BM+51.0836:チアゾロ−イソインドリノン誘導体;BMS 186,318:アミノジオール誘導体HIV−1プロテアーゼ阻害剤;d4API:9−[2,5−ジヒドロ−5−(ホスホノメトキシ)−2−フラニル]アデニン;d4C:2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシシチジン;d4T:2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン;ddC;2’,3’−ジデオキシシチジン;ddI:2’,3’−ジデオキシイノシン;DMP−266:1,4−ジヒドロ−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2−オン;DMP−450:{[4R−(4−a,5−a,6−b,7−b)]−ヘキサヒドロ−5,6−ビス(ヒドロキシ)−1,3−ビス(3−アミノ)フェニル]メチル)−4,7−ビス(フェニルメチル)−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン}−ビスメシレート;DXG:(−;)−β−D−ジオキソラン−グアノシン;EBU−dM:5−エチル−1−エトキシメチル−6−(3,5−ジメチルベンジル)ウラシル;E−EBU:5−エチル−1−エトキシメチル−6−ベンジルウラシル;DS:デキストラン硫酸;E−EPSeU:1−(エトキシメチル)−(6−フェニルセレニル)−5−エチルウラシル;E−EPU:1−(エトキシメチル)−(6−フェニル−チオ)−5−エチルウラシル;FTC:β−2’,3’−ジデオキシ−5−フルオロ−3’−チアシチジン(Triangle);HBY097:S−4−イソプロポキシカルボニル−6−メトキシ−3−(メチルチオ−メチル)−3,4−ジヒドロキノキサリン−2(1H)−チオン;HEPT:1−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]−6−(フェニルチオ)チミン;HIV−1:ヒト免疫不全ウイルス1型;JM2763:1,1’−(1,3−プロパンジイル)−ビス−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン;JM3100:1,1’−[1,4−フェニレンビス−(メチレン)]−ビス−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン;KNI−272:(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸含有トリペプチド;L−697,593;5−エチル−6−メチル−3−(2−フタルイミド−エチル)ピリジン−2(1H)−オン;L−735,524:ヒドロキシ−アミノペンタンアミドHIV−1プロテアーゼ阻害剤;L−697,661:3−{[(−4,7−ジクロロ−1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)メチル]アミノ}−5−エチル−6−メチルピリジン−2(1H)−オン;L−FDDC:(−;)−β−L−5−フルオロ−2’,3’−ジデオキシシチジン;L−FDOC:(−;)−β−L−5−フルオロ−ジオキソランシトシン;MKC442:6−ベンジル−1−エトキシメチル−5−イソプロピルウラシル(I−EBU);ネビラピン:11−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−4−メチル−6H−ジピリドール[3,2−b:2’,3’−e]ジアゼピン−6−オン;NSC648400:1−ベンジルオキシメチル−5−エチル−6−(α−ピリジルチオ)ウラシル(E−BPTU);P9941:[2−ピリジルアセチル−IlePheAla−y(CHOH)]2;PFA:ホスホノホルメート;PMEA:9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン;PMPA:(R)−9−(2−ホスホニル−メトキシプロピル)アデニン;Ro 31−8959:ヒドロキシエチルアミン誘導体HIV−1プロテアーゼ阻害剤;RPI−312:ペプチジルプロテアーゼ阻害剤、1−[(3s)−3−(n−α−ベンジルオキシカルボニル)−1−アスパルギニル)−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブチリル]−n−tert−ブチル−1−プロリンアミド;2720:6−クロロ−3,3−ジメチル−4−(イソプロペニルオキシカルボニル)−3,4−ジヒドロ−キノキサリン−2(1H)チオン;SC−52151:ヒドロキシエチル尿素イソスタープロテアーゼ阻害剤;SC−55389A:ヒドロキシエチル尿素イソスタープロテアーゼ阻害剤;TIBO R82150:(+)−(5S)−4,5,6,7−テトラヒドロ−5−メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ[4,5,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン−2(1H)−チオン;TIBO 82913:(+)−(5S)−4,5,6,7,−テトラヒドロ−9−クロロ−5−メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ[4,5,1jk]−[1,4]ベンゾ−ジアゼピン−2(1H)−チオン;TSAO−m3T:[2’,5’−ビス−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3’−スピロ−5’−(4’−アミノ−1,2’−オキサチオール−2’,2’−ジオキシド)]−b−D−ペントフラノシル−N3−メチルチミン;U90152:1−[3−[(1−メチルエチル)−アミノ]−2−ピリジニル]−4−[[5−[(メチルスルホニル)−アミノ]−1H−インドール−2イル]カルボニル]−ピペラジン;UC:チオカルボキサニリド誘導体(Uniroyal);UC−781=N−[4−クロロ−3−(3−メチル−2−ブテニルオキシ)フェニル]−2−メチル−3−フランカルボチオアミド;UC−82=N−[4−クロロ−3−(3−メチル−2−ブテニルオキシ)フェニル]−2−メチル−3−チオフェンカルボチオアミド;VB 11,328:ヒドロキシエチル−スルホンアミドプロテアーゼ阻害剤;VX−478:ヒドロキシエチルスルホンアミドプロテアーゼ阻害剤;XM 323:環状尿素プロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0159】
好適な第2の作用物質としては、例えば、経口吸収性があるHCV酵素の低分子阻害剤、ウイルスRNAを攻撃する核酸ベースの作用物質、宿主免疫応答を調節できる作用物質が挙げられる。また、例えば、(i)現在承認されている治療薬(ペグインターフェロン+リバビリン)、(ii)HCV酵素を標的とした化合物、(iii)ウイルスゲノムを標的とした治療薬(例えば、RNA干渉、すなわちRNAi)、(iv)リバビリン、インターフェロン(INF)Toll受容体アゴニスト等の免疫調節薬を用いることもできる。
【0160】
さらに、第2の作用物質は、NS3−4Aプロテアーゼのモジュレーターであり得る。かかるNS3−4Aプロテアーゼは、NS3タンパク質のアミノ末端ドメイン及び小型NS4A補因子を含む、ヘテロ二量体プロテアーゼである。その活性は、ウイルスRNA複製複合体の成分の生成に不可欠である。
【0161】
有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤としては、ペプチド産物阻害剤の大環状模倣体、BILN 2061(Ciluprevir;Boehringer Ingelheim)が挙げられる。BILN 2061の臨床試験は、前臨床段階における心毒性のために中止されたものの、BILN 2061は、ヒトで試験が行われた最初のNS3阻害剤であった。かかる内容全体を参照によって本明細書に援用する(Lamarre et al., 2003,Nature 426:186-189を参照されたい。)。
【0162】
他の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤としては、NS3−4Aプロテアーゼのプロテアーゼ切断産物由来のペプチド模倣物阻害剤VX−950(Vertex/三菱)が挙げられる。VX−950は、ケトアミドを介して酵素の活性部位で安定化すると考えられる。Lin et al., 2005, J Biol Chem. Manuscript M506462200 (epublication); Summa, 2005, Curr Opin Investig Drugs. 6:831-837の内容全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0163】
さらに、第2の作用物質は、HCV NS5BのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のモジュレーターであり得る。かかるRdRpは、NS5Bタンパク質内に含まれ、RNA鋳型を用いてRNAを合成する。なお、この生化学的活性は、哺乳動物の細胞には存在しない。
【0164】
上記RdRpの有用なモジュレーターとしては、NM283(バロピシタビン;Idenix/Novartis)が挙げられる。NM283は、HCV感染症の治療又は予防の第II相試験にある、NM107(2’−C−メチル−シチジン)の経口プロドラッグ(バリンエステル)である。米国特許出願公開第2004/0077587号パンフレットの内容全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0165】
RdRpの他の有用なモジュレーターとしては、7−デアザヌクレオシド類似体(アナログ)が挙げられる。例えば、7−デアザ−2’−C−メチル−アデノシンは、優れた薬物動態特性を有する、C型肝炎ウイルス複製の強力な選択的阻害剤である。Olsen et al., 2004, Antimicrob. Agents Chemother. 48:3944-3953の内容全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0166】
さらに、第2の作用物質は、NS5Bの非ヌクレオシドモジュレーターであり得る。NS5B阻害剤の非ヌクレオシド阻害剤(NNI)の少なくとも3種類のクラスが臨床で評価されている。
【0167】
NS5Bの有用な非ヌクレオシドモジュレーターとしては、JTK−003やJTK−009が挙げられる。JTK−003は、第II相に入っている。NS5Bの有用な非ヌクレオシドモジュレーターとしては、ベンゾイミダゾール核やインドール核をベースにした、6,5−縮合複素環化合物が挙げられる。Hashimoto et al.、国際公開第WO/00147883号の内容全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0168】
有用なポリメラーゼNNIとしては、R803(Rigel)、ならびにHCV−371、HCV−086、HCV−796(ViroPharma/Wyeth)等が挙げられる。有用なNNIとしては、例えばチオフェン誘導体が挙げられる。かかる誘導体はNS5Bポリメラーゼの可逆的なアロステリック阻害剤であり、ベンゾイミダゾール系阻害剤が結合する部位に近いが、異なる部位に結合する。例えば、Biswal,et al., 2005, J.Biol. Chem. 280, 18202-18210 (2005) を参照されたい。
【0169】
ここで開示される方法において有用なNNIとしては、更に、ベンゾ−1,2,4−チアジアジン等のベンゾチアジアジンが挙げられる。ベンゾ−1,2,4−チアジアジンの誘導体は、HCV RNAポリメラーゼの高度な選択性を有する阻害剤であることが明らかになっている。Dhanak, et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:38322-38327の内容全体を、参照によって本明細書に援用する。
【0170】
ここで開示される方法において有用なNNI及びそのメカニズムについては、LaPlante et al., 2004, Angew Chem. Int. Ed. Engl. 43:4306-4311;Tomei et al., 2003, J. Virol. 77:13225-13231;Di Marco et al., 2005, J. Biol. Chem. 280:29765-70;Lu, H., 国際公開第WO/2005/000308号パンフレット;Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett.1 4:797-800;Chan et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:793-796;Wang et al., 2003, J. Biol. Chem.
278:9489-9495;Love, et al., 2003, J. Virol.
77:7575-7581;Gu et al., 2003, J. Biol. Chem.
278:16602-16607;Tomei et al., 2004, J. Virol.
78:938-946;Nguyen et al., 2003, Antimicrob. Agents
Chemother. 47:3525-3530に記載されている。
【0171】
また、第2の作用物質は、HCVポリヌクレオチドに対する阻害的低分子RNA(siRNA)又は低分子ヘアピン型RNA(shRNA)等の、HCV RNAに干渉することができる作用物質であり得る。組織培養では、ウイルスゲノムに対するsiRNAと、ベクターにコードされた低分子ヘアピン型RNA、shRNAとが、HCVのレプリコンの複製を効果的に阻止し得る。例えば、Randall et al., 2003, Proc.Natl Acad. Sci. USA 100:235-240を参照されたい。
【0172】
さらに、第2の作用物質は、被検体の免疫応答を調節する作用物質であり得る。具体的には、例えば、インターフェロン(IFN)、ペグ化IFN、IFN+リバビリン、ペグ化IFN+リバビリン等、現在承認されているHCV感染症の治療薬であり得る。また、インターフェロンは、IFNa、IFNa2a又はIFNa2b、特にペグ化IFNa2a(PEGASYS(登録商標))又はペグ化IFNa2b(PEG−INTRON(登録商標))を包含し得る。
【0173】
さらに、第2の作用物質は、Toll様受容体(TLR)のモジュレーターであり得る。TLRは、先天性抗ウイルスの応答を刺激する標的であると考えられる。好適なTLRとしては、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9が挙げられるが、これらに限定されるものではない。Toll様受容体は、細菌、ウイルス、寄生虫等の、侵入した微生物の存在を認識し得ると考えられる。かかるToll様受容体は、例えば、マクロファージ、単球、樹状細胞、B細胞等の免疫細胞に発現する。TLRの刺激又は活性化により、抗菌遺伝子、ならびにプロ炎症性サイトカインやケモカインの誘導によって、急性炎症反応を惹起することができる。
【0174】
また、第2の作用物質は、CpGモチーフを含むポリヌクレオチドであり得る。非メチル化CpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチドは、TLR−9の強力なアゴニストである。これらのオリゴヌクレオチドで樹状細胞が刺激されると、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−12及びIFN−αが産生される。TLR−9リガンドはまた、B細胞増殖及び抗体分泌の強力な刺激因子でもある。CpGを含む有用なオリゴヌクレオチドとしては、臨床で評価されているCPG−10101(Actilon;Coley Pharmaceutical Group)が挙げられる。
【0175】
TLRの他の有用なモジュレーターとしては、ANA975(Anadys)が挙げられる。ANA975は、TLR−7を介して作用すると考えられ、IFN−α等の炎症性サイトカインの誘導及び放出により、強力な抗ウイルス応答を引き起こすことが知られている。
【0176】
また、第2の作用物質はセルゴシビルであり得る。セルゴシビルは、α−グルコシダーゼI阻害剤であり、宿主依存性(host-directed)のグリコシル化を介して作用する。セルゴシビルは、前臨床試験においてIFNa+リバビリンとの強力な相乗作用を示した。例えば、Whitby et al., 2004, Antivir Chem Chemother. 15(3):141-51を参照されたい。セルゴシビルは現在、カナダにおいて、慢性HCV患者の第II相単独療法試験で評価されている。
【0177】
さらなる免疫調節薬、ならびにそのメカニズムや標的については、Schetter& Vollmer, 2004, Curr. Opin.
Drug Discov. Dev.7:204-210;Takeda et al., 2003, Annu.
Rev. Immunol. 21:335-376;Lee et al., 2003, Proc. Natl
Acad. Sci. USA 100:6646-6651;Hosmans et al., 2004,
Hepatology 40 (Suppl.1), 282A;米国特許第6,924,271号明細書等に記載されている。
【0178】
また、ここで開示される化合物を1種又はそれ以上の抗癌剤と組合せて投与することもできる。かかる抗癌剤としては、例えば、葉酸代謝拮抗薬、5−フルオロピリミジン(5−フルオロウラシル等)、β−L−1,3−ジオキソラニルシチジンやβ−L−1,3−ジオキソラニル5−フルオロシチジン等のシチジン類似体(アナログ)、代謝拮抗剤(プリン代謝拮抗剤、シタラビン、フルダラビン、フロクスウリジン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、6−チオグアニン等)、ヒドロキシ尿素、分裂阻害剤(CPT−11、エトポシド(VP−21)、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン等のビンカアルカロイド類、アルキル化剤(ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォファミド、メクロレタミン、メルファラン、チオテパ等)、非古典的アルキル化剤、白金含有化合物、ブレオマイシン、抗腫瘍抗生物質、ドキソルビシン、ダウノマイシン等のアントラサイクリン、アントラセンジオン、トポイソメラーゼII阻害剤、ホルモン剤(コルチコステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、フルオキシメステロン、メチルテストステロン等のアンドロゲン、ジエチルスチルベステロール等のエストロゲン、タモキシフェン等の抗エストロゲン剤、ロイプロリド等のLHRH類似体(アナログ)、フルタミド、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、メドロキシプロゲステロン等の抗アンドロゲン)、アスパラギナーゼ、カルムスチン、ロムスチン、ヘキサメチル−メラミン、ダカルバジン、ミトタン、ストレプトゾシン、シスプラチン、カルボプラチン、レバミソール、ならびにロイコボリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで開示される化合物はまた、酵素治療剤、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、マクロファージコロニー刺激因子、コロニー刺激因子等の免疫系モジュレーターと組合せて使用しすることもできる。
【0179】
本明細書で提供される化合物は、上記化合物の1種又はそれ以上、及び1種又はそれ以上の他の薬理学的に活性な物質と任意に組合せることができ、かかる混合物は本発明に包含される。また、別の実施形態では、1種又はそれ以上の追加の活性成分の前又は後に、ここで開示される化合物を投与する。
【0180】
本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、上記材料や方法には様々な改変を施し得る。
【0181】
最後に、本発明の両方を実施する別の方法がある点に留意されたい。ここで開示される実施形態は、あくまで例示であり、かかる例に限定されるものではない。従って、本発明はここで開示される細部には限定されず、特許請求の範囲に記載された内容及びこれと均等な範囲内で適宜変更することもできる。
【0182】
本明細書に引用する刊行物及び特許については、参照によってその内容全体を援用する。
【0183】
以下の例は、あくまで具体的な説明を目的とするものであり、本発明をかかる範囲に限定することを意図してはいない。
【実施例1】
【0184】
<実施例1>
【化51】

当該技術分野において公知の化合物1(15.4g、0.0558mol)をTHFに溶解させた後、かかる溶液を0℃まで冷却し、テトラヒドロアルミン酸リチウム(2.3g、0.061mol)で処理した。この結果、440℃まで発熱した。次に、この混合物を0℃までゆっくりと冷却し、15分間撹拌した。そして、NaSOと共に6mLの水をゆっくりと加えた。撹拌を45分間継続し、次いでこの灰色混合物をSolka Floc(登録商標)パッドで濾過した。かかる混合物を濃縮して、生成物2を透明な油状物として76%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.76−0.88(m,26H)11.13−1.26(m,5H);1.71−1.81(m,1H);2.14−2.27(m,5H);3.52−3.59(m,5H);3.60−3.69(m,2H);4.09(br.s.,2H);4.14(br.s.,2H);5.06−5.19(m,2H)。
【0185】
<実施例2>
【化52】

生成物2(13.0g、0.0555mol)と1H−イミダゾール(8.2g、0.12mol)とを含むテトラヒドロフラン(100mL、1mol)溶液を13℃まで冷却し、t−ブチルクロロジフェニルシラン(15.7mL、0.0605mol)を添加し、温度を13℃〜16℃に維持した。添加が終了したら、かかるスラリーを室温まで昇温し、1時間撹拌した。そこに水を加え、生成物をヘキサン/エーテルで抽出した。かかる抽出物を濃縮し、化合物3を透明な油として100%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.81−0.94(m,9H);1.01−1.13(m,16H);1.21−1.33(m,1H);1.21−1.33(m,1H);1.77−1.86(m,1H);1.96−2.08(m,1H);3.44−3.56(m,1H);3.66−3.78(m,2H);4.17−4.29(m,1H);7.33−7.46(m,10H);7.64−7.77(m,7H)。
【0186】
<実施例3>
【化53】

ピリジニウムp−トルエンスルホネート6とエタノール(100mL)とを室温で混合し、一晩撹拌した。かかる混合物を10mLの飽和炭酸水素塩でクエンチし濃縮した後、エーテルを用いてSolka Floc(登録商標)で濾過して固形物を除去した。次いでこの粗材料をクーゲルロール蒸留し、TBSOH及び一部のTBDPSOHを除去して化合物4を66%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.81−0.93(m,2H);1.00−1.12(m,17H);1.20−1.33(m,1H);1.27(s,1H);1.79(br.s.,2H);1.99−2.10(m,3H);3.44−3.56(m,3H);4.16−4.28(m,3H);5.09−5.22(m,1H);7.34−7.46(m,10H);7.64−7.76(m,7H)。
【0187】
<実施例4>
【化54】

化合物4(3E)−5−{[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}−4−フルオロペント−3−エン−1−オール(12.7g、0.0354mol)と四臭化炭素(12.9g、0.0390mol)とを、−58℃で100mLのCHC1に溶解させた。温度を−55℃〜−58℃に維持しながら、かかる溶液を、塩化メチレンにトリフェニルホスフィン(10.2g、0.0390mol)を溶かした溶液(50mL)で処理した。この混合物をゆっくりと室温まで加温し、一晩撹拌した。そこにヘキサンを加え、溶液を濃縮して塩化メチレンを除去した後、室温で撹拌してトリフェニルホスフィンを晶出させた。多少の固形物が溶液から析出したため、これはある程度成功した。これらを濾過により除去し、次いで母液を濃厚な油になるまで濃縮した。かかる生成物を、0〜5%EtOAc/hexを用いて、クロマトグラフィーによって精製し、臭化物5を68%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.73−0.82(m,1H)10.88−1.01(m,18H);1.09−1.21(m,1H);2.17−2.29(m,3H);3.06−3.16(m,3H);3.37−3.48(m,1H);4.04−4.12(m,2H);4.13−4.17(m,1H);4.98−5.11(m,2H);7.23−7.36(m,11H);7.53−7.63(m,7H)。
【0188】
<実施例5>
【化55】

臭化物5を100mLの亜リン酸トリエチル(100mL、0.6mol)に溶解させ、155℃で一晩加熱した。次いで70℃で減圧蒸留にて過剰なホスフィットを除去した。かかる残渣を、50〜70%EtOAc/hexを用いたシリカクロマトグラフィー(約200g)に供し、化合物6を70%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.89−1.01(m,7H);0.95(s,7H);1.13−1.24(m,3H);1.17(t,J=7.07Hz,6H);1.54−1.66(m,2H);1.93(s,1H);1.98−2.10(m,2H);3.90−4.02(m,6H);4.08−4.20(m,2H);5.00−5.12(m,1H);7.24−7.36(m,8H);7.52−7.64(m,5H)。
【0189】
<実施例6>
【化56】

ジエチル[(3E)−5−{[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}−4−フルオロペント−3−エン−1−イル]ホスホネート6(7.7g、0.016mol)のアセトニトリル溶液を、テトラブチルアンモニウムフルオリド(4.72g、0.0169mol)で0℃にて処理し、1間撹拌した。この混合物を濃縮し、次いで5%MeOH/CHClを用いたシリカクロマトグラフィーに供し、アリルアルコール7を76%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.21−1.34(m,18H);1.77−1.88(m,6H);2.29−2.41(m,6H);3.99−4.09(m,12H;4.11−4.13(m,3H);4.15−4.20(m,3H);5.06−5.18(m,3H)。
【0190】
<実施例7>
【化57】

ジエチル[(3E)−4−フルオロ−5−ヒドロキシペント−3−エン−1−イル]ホスホネート7(1.046g、0.004354mol)と、2−アミノ−6−クロロプリン(0.738g、0.00435mol)と、トリフェニルホスフィン(1.14g、0.00435mol)と、をDMFに溶解させ、0℃まで冷却した後、温度を4℃未満に維持するようにジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.9025mL、0.004354mol)をゆっくり添加して処理した。かかる添加が終了したら、反応混合物を室温で一晩撹拌した。そして、45℃において、高真空でクーゲルロール蒸留により溶媒を除去した。次いで、MSで生成物を含んでいた粗油を、2.5〜10%MeOH/塩化メチレンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーに供した。生成物は、5%MeOH画分に溶出した。生成物を含む画分は晶出したものの、一部、トリフェニルホスフィンオキシドを含んでいた。この固形物をEtOAcでトリチュレートし、所望の生成物8を50%の収率で800mg得た。母液を濃縮し、追加量の固形物を分離した(112mg、6.8%)。LCMSによれば、これにはPhPが少量含まれていた。また、第2の異性体をEtOAcから結晶化させ、やや淡黄色の固形物を得た。HNMRでは、大きな二重線がかなり低磁場側にあること以外は、所望のものと類似しているように見える。13C NMR(101MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 16.47(s,1C);16.53(s,1C);19.22(s,1C);19.26(s,1C);19.31(s,1C);19.34(s,1C);25.33(s,1C);26.72(s,1C);40.10(s,1C);40.41(s,1C);61.89(s,1C);61.96(s,1C);76.73(s,1C);77.05(s,1C);77.15(s,1C);77.36(s,1C);77.47(s,1C);110.64(s,1C);110.85(s,1C);141.71(s,1C);153.63(s,1C);159.85(s,1C)。
H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.32−1.44(m,15H);1.84−1.96(m,5H);2.67−2.79(m,5H);4.09−4.21(m,10H);4.76−4.81(m,2H);4.81−4.94(m,3H);5.28(dt,J=19.23,8.06Hz,3H);6.07(br.s.,4H);7.78−7.89(m,3H)。
【0191】
<実施例8>
【化58】

ジエチル[(3E)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロペント−3−エン−1−イル]ホスホネート8(800mg、0.00204mol)のアセトニトリル(2.0mL、0.038mol)溶液を、ブロモトリメチルシラン(0.620mL、0.00470mol)で処理し、室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和NaHCOでクエンチし、pHを8.5に調整した。この透明な溶液をDowex 1×2樹脂に充填し、100mLの水で洗浄した。生成物を、1〜5%のギ酸を含むMeOHのグラジエントで溶出した。この粗材料を濃縮し、MeOHから結晶化させて化合物9を96%の収率で得た。H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ ppm 1.73(s,14H);3.13−3.22(m,10H);4.84−4.92(m,7H);4.95(s,7H);5.38(s,3H);5.44(s,3H);8.13−8.23(m,7H)。
【0192】
<実施例9>
【化59】

[(3E)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロペント−3−エン−1−イル]ホスホン酸9(596mg、0.00178mol)と、3−(ヘキサデシルオキシ)プロパン−1−オール(0.755g、0.00251mol)と、4−ジメチルアミノピリジン(0.31g、0.0025mol)とを含むDMF溶液を、Ν,Ν’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.814mL、0.00520mol)を用いて室温で処理した後、該混合物を50℃で1.4時間加熱した。次いで、かかる反応混合物を70℃まで加温し、一晩撹拌した。そこに水を加え、過剰なアルコールをMTBEで抽出しようとした。これは、均一な石鹸溶液が得られたため、失敗した。そこで溶媒を蒸発させ、かかる残渣を、溶媒(900mL:100mL:15mL:CHCl:MeOH:濃縮NHOH DMAP)を用いた100mLのシリカクロマトグラフィーに供し、XがClである化合物10を20%の収率で、XがDMAPである化合物10を24%の収率で、それぞれ得た。H NMR(400MHz,MeOD)δ ppm 0.86−0.97(m,3H);1.23−1.36(m,23H);1.49(br.s.,2H);1.73(s,2H);1.88(t,J=6.32Hz,2H);3.30−3.35(m,3H);3.39(t,J=6.66Hz,2H);3.55(t,J=6.35Hz,2H);3.97(q,J=6.24Hz,2H);4.91(s,6H)4.98(s,1H);5.03(s,1H)8.09−8.14(m,1H)。H NMR(400MHz,MeOD)δ ppm 0.84−0.97(m,2H);1.22−1.34(m,8H);1.22−1.34(m,13H);1.46−1.56(m,2H);1.70−1.82(m,2H);1.91(quin,J=6.32Hz,2H);2.57−2.70(m,1H);3.36−3.48(m,2H);3.43(s,4H);3.56(t,J=6.35Hz,2H);4.01(q,J=6.34Hz,2H);4.93(s,4H);4.99(s,1H);5.04(s,1H);5.36−5.48(m,1H);7.12−7.25(m,2H);8.03−8.16(m,1H);9.47−9.59(m,1H)。
【0193】
<実施例10>
【化60】

3−(ヘキサデシルオキシ)プロピル水素[(3E)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロペント−3−エン−1−イル]ホスホネート10(184mg、0.000298mol)のギ酸(4mL、0.1mol)溶液を95℃で加熱した。45分後、反応の約40%が終了した。約2時間後、LCMSにより反応は終了した。溶媒を除去して白色の固形物を得た。かかる固形物をMeOHでトリチュレートして、NMRにより所望の生成物を得た。生成物及び母液を再びMeOH中で混合して、部分濃縮した。これにより、生成物はゆっくりと沈殿した。かかる混合物を氷浴で1時間冷却し、次いでMeOHをピペットで除去した。この固形物を真空下で乾燥させて生成物11を78.5%収率で得た。H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ ppm 0.80−0.92(m,3H);1.18−1.30(m,24H);1.77(t,J=6.32Hz,3H);2.51(dt,J=3.77,1.87Hz,8H);3.31(t,J=6.58Hz,3H);3.40(t,J=6.30Hz,3H);3.89(d,J=6.89Hz,2H);4.75(s,1H)4.81(s,1H);7.67(s,1H)。
【0194】
<実施例11>
【化61】

1Lのフラスコに、テトラヒドロフラン(500mL、6mol)と、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(12.9g、0.0647mol)と、1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(0.181mol)とを仕込んだ。次いで−78℃まで冷却後、エチル2−[ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ホスホリル]プロパノアート(28.0g、0.0647mol)を加えた。ここに、当該技術分野において公知のアルデヒド3を含む20mLのTHF溶液を加え、混合物を15℃まで一晩ゆっくり昇温した。次いで反応混合物をNHCl溶液でクエンチし、生成物をMTBEで抽出した。抽出物を飽和KCOで洗浄し、濃縮した。かかる濃縮物をMTBEに溶解させ、水で2回洗浄した。有機層を濃縮することで、100%を超える収率で生成物13を得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.78−0.91(m,23H)1.20−1.32(m,6H)1.42−1.51(m,1H)1.66(t,J=6.19Hz,1H)1.79−1.91(m,5H)2.57−2.68(m,2H)3.59−3.70(m,5H)4.09−4.21(m,4H)4.31−4.44(m,2H)5.91−5.99(m,1H)。
【0195】
<実施例12>
【化62】

粗エチル(2Z)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2−メチルペント−2−エノエート(17.6g、0.0647mol)13を50mLのTHFに溶解させ、1MのDIBALを200mLの塩化メチレンに溶かした溶液200mLを−72℃でゆっくりと加えた。混合物を2.5時間撹拌し、分液漏斗に入れて一晩静置した後、メタノール、続いてロッシェル塩水溶液でクエンチし、最終的に通常のエマルジョンを破壊した。有機層を分離して、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮することで粗アルコール14を91%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.77−0.89(m,29H);1.16−1.24(m,1H);1.61−1.68(m,1H);1.70−1.81(m,5H);2.20−2.32(m,3H);2.54−2.66(m,1H);3.56(t,J=6.06Hz,2H);3.60−3.69(m,3H);3.97−4.08(m,1H);3.99(s,2H);5.20−5.30(m,2H)。
【0196】
<実施例13>
【化63】

粗アルコール14を100mLのTHFに溶解させ、イミダゾールで処理して11℃まで冷却した。次いで40mLのTHFにシリルクロリドを溶解させた溶液をゆっくりと加え、温度を10℃〜12℃に維持した。3時間後、混合物を水でクエンチし、生成物15をMTBEにより99%の収率で分離した。この粗原料をそのまま次のステップに使用した。
【0197】
<実施例14>
【化64】

(6Z)−2,2,6,11,11,12,12−ヘプタメチル−3,3−ジフェニル−4,10−ジオキサ−3,11−ジシラトリデカ−6−エン(30.3g、0.0646mol)15とピリジニウムp−トルエンスルホネート(1.32g、0.00525mol)とを含むエタノール(190mL、3.2mol)溶液を、室温で24時間撹拌した。反応終了後、かかる溶液を飽和炭酸水素塩でクエンチし、部分濃縮した。得られた油状物をMTBE及び水に溶解させ、相を分離させた。そして、MTBE層をMgSOで乾燥させ、濾過した後に濃縮した。70℃で高真空下において、クーゲルロール蒸留によって低沸点の不純物を除去した。NMRの結果から、加水分解が終了していないことが示されたため、混合物を再び一晩中反応条件に付した。次いでこの材料を、MTBEを用いてマグネゾール(magnesol)のプラグで濾過し、濃縮することで生成物16を約92%の収率で得た。一晩の高真空後も、生成物16は約12%MTBEを含んでいた。1H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.74−0.86(m,1H);0.92−1.05(m,16H);1.07−1.16(m,3H);1.66−1.79(m,5H);2.01(m,J=7.61,6.41,6.41,1.14Hz,2H);3.05−3.14(m,1H);3.34−3.46(m,2H);4.02−4.13(m,2H);5.07−5.19(m,1H);7.24−7.37(m,10H);7.55−7.67(m,7H)。
【0198】
<実施例15>
【化65】

(3Z)−5−{[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}−4−メチルペント−3−エン−1−オール(22.12g、0.06239mol)16と四臭化炭素(24.2g、0.0730mol)とを含む200mLの塩化メチレン溶液を−78℃まで冷却し、温度を<−70℃に維持しながら、トリフェニルホスフィン(19.6g、0.0749mol)を80mLの塩化メチレンに溶かした溶液で処理した。混合物を室温まで一晩ゆっくり昇温した。得られた粗混合物を濃縮し、1〜2%EtOAc/Hexを用いたクロマトグラフィーに供し、ブロミド17を53%の収率で得た。
H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.91−1.03(m,16H);1.72−1.82(m,5H);2.21−2.33(m,4H);3.10(t,J=7.18Hz,3H);4.03−4.15(m,4H);5.04−5.16(m,2H);7.25−7.37(m,10H);7.55−7.67(m,7H)。
【0199】
<実施例16>
【化66】

{[(2Z)−5−ブロモ−2−メチルペント−2−エン−1−イル]オキシ}(tert−ブチル)ジフェニルシラン(9.20g、0.0220mol)17を亜リン酸トリエチル(30mL、0.2mol)に溶解させ、150℃で26時間加熱した。過剰なホスフィットを蒸留により除去して、生成物18を約100%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.01−1.13(m,12H);1.21−1.28(m,7H);1.30−1.35(m,2H);1.61−1.72(m,2H);1.77−1.89(m,4H);2.08−2.21(m,2H);3.98−4.06(m,4H);4.08−4.14(m,1H);4.17−4.22(m,2H);5.15−5.26(m,1H);7.34−7.47(m,8H);7.64−7.76(m,5H)。
【0200】
<実施例17>
【化67】

粗ジエチル[(3Z)−5−{[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}−4−メチルペント−3−エン−1−イル]ホスホネート18(10.4g、0.0220mol)をアセトニトリルに0℃で溶かした溶液をn−テトラブチルアンモニウムフルオリド水和物(6.8g、0.024mol)で処理し、5時間撹拌した。TLCは、5時間で反応が終了していることを示した。得られた混合物をシリカゲルのプラグで濾過してn−BuNを除去した後、10〜15%IPA/EtOAcを用いた150gのシリカクロマトグラフィーに供して、アルコール19を76%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.06−1.17(m,2H);1.20−1.32(m,15H);1.72−1.83(m,12H);2.29−2.42(m,5H);3.95−4.08;(m,14H)5.14−5.27(m,2H)。
【0201】
<実施例18>
【化68】

ジエチル[(3Z)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エン−1−イル]ホスホネート(1.50g、0.00635mol)19と、2−アミノ−6−クロロプリン(1.23g、0.00724mol)と、をN,N−ジメチルホルムアミド(20.0mL、0.258mol)に懸濁させ、トリフェニルホスフィン(1.90g、0.00724mol)で処理した。このスラリーを0℃まで冷却し、その後ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.42mL、0.00724mol)で発熱反応によりゆっくり処理した。この溶液を室温までゆっくり昇温し、一晩撹拌した。得られた混合物を濃縮し、5〜10%MeOH/塩化メチレンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーに供して、生成物20を51%の収率で、該生成物の位置異性体(regiosiomer)を約15%の収率で、それぞれ得た。どちらも分離し得たが、好ましくない異性体の方は完全に純粋というわけではなかった。図示した位置異性体20のH NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.29(d,J=6.22Hz,2H);1.36(t,J=7.07Hz,11H);1.65(s,6H);1.67−1.75(m,6H);1.92(dd,J=17.91,16.46Hz,4H);4.08−4.21(m,7H);4.61−4.69(m,4H);7.28(s,3H);7.76(s,3H)。不適切な位置異性体のH NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.18−1.21(m,3H);1.23−1.35(m,11H);1.56−1.60(m,5H);1.81−1.92(m,4H);2.43−2.55(m,3H);3.41−3.50(m,4H);4.05−4.15(m,7H);4.94−5.05(m,4H);5.27−5.35(m,4H);5.50−5.59(m,2H);7.73−7.84(m,1H)。
【0202】
<実施例19>
【化69】

ホスホネート20(1g、0.00258モル)と、ブロモトリメチルシラン(0.85mL、0.0064モル)とを溶媒(5mL)に溶解させて、4時間撹拌した。反応物を飽和NaHCOでクエンチし、pHを8.5に調整した。得られた生成物をDowex 1×2樹脂に充填し、1〜10%ギ酸/MeOHで溶出することで、不溶性の高い固形物21を76%の収率で得た。H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ ppm 2.51(dt,J=3.73,1.87Hz,20H);8.14(s,2H);8.11(s,3H)。
【0203】
<実施例20>
【化70】

[(3E)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)−4−メチルペント−3−エン−1−イル]ホスホン酸21(650mg、0.0020mol)と、3−(ヘキサデシルオキシ)プロパン−1−オール(0.833g、0.00294mol)と、4−ジメチルアミノピリジン(0.31g、0.0025mol)と、を含む室温のDMF(5.0mL)溶液をΝ,Ν’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.890mL、0.00568mol)で処理し、この混合物を65℃で一晩加熱した。その後、溶媒を除去して、全混合物をシリカゲルに充填し、1000:200:10CHCl:MeOH:アンモニアを用いたクロマトグラフィーに供した。主要な生成物は、DMAP付加体22であった。H NMR(400MHz,MeOD)δ ppm 0.86−0.97(m,2H);1.06−1.17(m,2H);1.12(d,J=6.53Hz,3H);1.19−1.30(m,14H);1.30−1.40(m,2H);1.50(br.s.,1H);1.57−1.69(m,2H);1.73(s,1H);1.89(t,J=6.30Hz,1H);3.30−3.34(m,2H);3.36−3.46(m,2H);3.43(s,3H);3.56(t,J=6.32Hz,1H);3.99(d,J=6.17Hz,1H);4.82−4.93(m,5H);4.90(s,5H);7.19−7.28(m,1H);8.18(s,1H);9.61−9.70(m,1H)。
【0204】
<実施例21>
【化71】

3−(ヘキサデシルオキシ)プロピル[(3Z)−5−{2−アミノ−6−[4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−1−イル]−9H−プリン−9−イル}−4−メチルペント−3−エン−1−イル]ホスホネート22(398mg、0.000509mg)と、LiOH(90.12g、0028mol)と、THF(5mL)と、水(92mL)と、を混合し、室温で1/2時間撹拌した。LCMSによれば、生成物はゆっくりと形成されることを示していた。次いで、この混合物を、LCMSが出発材料の消失を示すまで50℃で加熱した。かかる混合物をギ酸で酸性化し、濃縮した。この粗材料を、CHCl:MeOH:アンモニアを500mL:50mL:5mLで、次いで400mL:100mL:10mLで、さらに300mL:200mL:20mLで用い、所望の生成物が溶出するまでシリカクロマトグラフィーに供した。得られた生成物にギ酸を加え、溶液を濃縮して、残渣を−10℃でMeOHから結晶化させ、生成物23をオフホワイトの固形物として得た。H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ ppm 0.85(s,3H)1.22;(d,J=4.92Hz,23H);1.53(s,4H);2.51(dt,J=3.73,1.87Hz,9H);2.52(br.s.,2H);3.30(s,3H)3.39(s,2H)7.61−7.65(m,1H)。
【0205】
<実施例22>
【化72】

水素化ナトリウム(1.41g、0.0353mol)のテトラヒドロフラン(50mL、0.6mol)溶液を、0℃において、ジオール24(4.78g、0.0346mol)で処理した(Itoh et al., J. Fluorine Chem. 2004, 125, 775-783)(4.00g、0.0106mol)。20分後、tert−ブチルクロロジフェニルシラン(9.0mL、0.035mol)を加え、混合物を1間撹拌した。水を加え、生成物をMTBEで抽出して油を得、これを10%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカクロマトグラフィーに供し、生成物25を59%の収率で得た。1H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.84−0.96(m,1H);1.04−1.15(m,7H);1.09(s,12H);1.24−1.37(m,2H);1.98(m,J=13.66,11.08,11.08,6.22Hz,2H);2.14−2.26(m,2H);3.14(br.s.,2H);3.76−3.85(m,3H);3.92−4.05(m,3H);7.40−7.52(m,10H);7.64−7.77(m,7H)。
【0206】
<実施例23>
【化73】

塩化オキサリル(1.26mL、0.0149mol)を含む60mLの塩化メチレン溶液を−70℃まで冷却し、20mLの塩化メチレンにジメチルスルホキシド(1.66mL,(0.0234mol)を溶かした溶液でゆっくり処理し、温度を−67℃に維持した。添加が終了したら、溶液を10分撹拌し、次いで20mLの塩化メチレンに[3−({[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)−2,2−ジフルオロシクロプロピル]メタノール25を溶かした溶液をゆっくりと加え、温度を−68℃未満に維持した。このスラリーを30分間撹拌した後、温度を−65℃未満に維持しながら、トリエチルアミン(7.4mL、0.053mol)をゆっくりと加えた。かかる混合物を1時間撹拌した後0℃まで加温し、水を加えて塩化メチレンで抽出した。該塩化メチレン溶液をMgSOで乾燥させ、濾過した後に濃縮し、生成物26を透明な油状物として100%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.87−0.97(m,2H);1.00−1.12(m,18H);1.26−1.38(m,2H);2.36−2.48(m,2H);2.53−2.66(m,3H);3.99−4.12(m,2H);4.13−4.24(m,2H);7.40−7.52(m,11H);7.63−7.73(m,7H);9.32−9.43(m,2H)。
【0207】
<実施例24>
【化74】

水素化ナトリウム(474mg、0.0118mol)を含むテトラヒドロフラン(40.0mL、0.493mol)溶液を−50℃まで冷却し、テトラエチルジメチルアミノメチレンジホスホナ(3.38mL、0.0118mol)のTHF(5mL)溶液で処理した。反応物が透明になり、ガスの発生が止まったら、5mLのTHFに3−({[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)−2,2−ジフルオロシクロプロパンカルボアルデヒド26(3.70g、0.00988mol)を溶かした溶液をゆっくりと加え、温度を−50℃未満に維持した。次いで、かかる反応混合物を−78℃まで冷却し、室温まで一晩ゆっくり昇温した。そして、反応混合物を水に注ぎ、EtOAcで抽出した。抽出物をMgSOで乾燥させて濃縮した後、MTBEに溶解させた。これをマグネゾール(Magnesol)のプラグで濾過し、濃縮することで生成物27を100%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 0.84−0.96(m,1H);1.01−1.13(m,12H);1.19−1.22(m,4H);1.21(s,4H);1.25−1.38(m,8H);2.17(s,1H);3.24(s,1H);3.81−3.86(m,1H);3.88−3.92(m,1H);3.99−4.12(m,4H);5.87−5.99(m,1H);7.37−7.49(m,8H);7.63−7.70(m,5H)。
【0208】
<実施例25>
【化75】

ジエチル{(E)−2−[3−({[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)−2,2−ジフルオロシクロプロピル]ビニル}ホスホネート(4.40g、0.00865mol)27を含むエタノール(30mL、0.5mol)溶液を10%パラジウム炭素(0.50g、0.00047mol)で処理し、13psiで4時間、次いで20psiでさらに4時間水素化して濃縮することで、生成物28を100%の収率で得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−d)δ ppm 1.01−1.13(m,13H);1.26−1.38(m,10H);1.79−1.90(m,3H);3.70−3.80(m,2H);3.80−3.92(m,2H);4.02−4.15(m,5H);7.37−7.49(m,9H);7.66−7.78(m,6H)。
【0209】
<実施例26>
【化76】

ジエチル{2−[(1R,3R)−3−({[tert−ブチル(ジフェニル)シリル]オキシ}メチル)−2,2−ジフルオロシクロプロピル]エチル}ホスホネート28(4.77g、0.00934mol)と、N−BuNF(2.87g 0.0103mol)と、を0℃においてTHF(5mL)中で混合し、次いで氷浴を除去することにより昇温した。TLCで反応の終了を確認した後、混合物を濃縮して、5%MeOH/CHClを用いたシリカクロマトグラフィーに供して生成物29を得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM−)ppm 1.32(t,6H)1.55−2.21(m,6H)3.56−3.94(m,3H)3.96−4.22(m,4H)。
【0210】
<実施例27>
【化77】

ジエチル{2−[2,2−ジフルオロ−3−(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]エチル}ホスホネート29(1.624g、0.005966mol)と、2−アミノ−6−クロロプリン(1.01g、0.00596mol)と、トリフェニルホスフィン(1.56g、0.00596mol)と、をDMFに溶解させ、0℃まで冷却し、温度を−7℃未満に維持しながら、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.236mL、0.005966mol)を添加し、ゆっくり処理した。添加が終了したら、反応混合物を室温で一晩撹拌した。翌日、45℃、高真空でクーゲルロール蒸留により溶媒を除去した。次いで、MSにより生成物を含む粗油を、5%MeOH/塩化メチレンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーに(2回)供して、生成物30を59%の収率で得た。MS(ESI−)for C1521ClFP m/z422.0(M−H)
【0211】
<実施例28>
【化78】

ジエチル(2−{3−[(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)メチル]−2、2−ジフルオロシクロプロピル}エチル)ホスホネート30(1.44g、0.00340mol)と、ブロモトリメチルシラン(1.34mL、0.0102mol)と、をアセトニトリル(15mL)に溶かした溶液を室温で一晩撹拌した。得られたスラリーをさらにブロモトリメチルシラン0.6mLで処理した。かかる混合物を飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチし、pHを8.5に調整した。その後、Dowex樹脂を用いて精製し、これを1〜5%ギ酸を含むメタノールで溶出して生成物31を得た。MS(ESI−)for C1113ClFP m/z366.0(M−H)
【0212】
<実施例29>
【化79】

(2−{(1S,3S)−3−[(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)メチル]−2,2−ジフルオロシクロプロピル}エチル)ホスホン酸31(839mg、0.0022mol)と、3−(ヘキサデシルオキシ)プロパン−1−オール(1.02g、0.00339mol)と、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(1.02mL、0.00655mol)と、4−ジメチルアミノピリジン0.35g、0,0028mol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(5.8mL)と、を室温で混合し、65℃で一晩加熱した。翌日、DMFを濃縮により除去し、全混合物をシリカゲルに充填し、CHCl:MeOH:アンモニアを1000mL:200mL:10mLで、次いで1000mL:300mL:20mLで、さらに600mL:400mL:40mLで用い、クロマトグラフィーに供した。主要な生成物は、DMAP付加体32(収率18%)だった。MS(ESI+)for C3760P m/z736.4 A(M+H)
【0213】
<実施例30>
【化80】

3−(ヘキサデシルオキシ)プロピル{2−[(1S,3S)−3−({2−アミノ−6−[4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−1−イル]−9H−プリン−9−イル}メチル)−2,2−ジフルオロシクロプロピル]エチル}ホスホネート32(929mg 0.000404mol)と、LiOH(0.1g、0.00236mol)と、THF(5mL)と、水(2mL)と、を混合して、室温で0.5時間撹拌し、次いで出発材料が消失するまで50℃で加熱した。この混合物をギ酸で酸性化し、濃縮した。粗残渣を、CHCl:MeOH:アンモニアを400mL:100mL:10mLで、次いで300mL:200mL:20mLで用い、シリカクロマトグラフィーに供した。この画分をプールして生成物を濃縮した。かかる生成物をMeOHに溶解させ、ギ酸で処理した後に、濃縮し、酸性型に変換した。次いでこれを冷MeOHから結晶化させ、高真空下で5日間乾燥させて水を除去し、生成物33を47%の収率で得た。MS(ESI+)for C3052P m/z632.2(M+H)
【0214】
<実施例31>
【化81】

[(3Z)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)ペント−3−エン−1−イル]ホスホン酸34(Choo et al., Bioorg. Med Chem 2007, 15, 2007)(0.509g、0.00160mol)を、2Mのメチルアミンを含むメタノール(9.0mL)溶液で室温にて処理し、室温で一晩撹拌することで粘稠性の油状物35を得た。MS(ESI+)for C1117P m/z312.9(M+H)
【0215】
<実施例32>
【化82】

実施例31で得られた粘稠性の油状物35を9.0mLのDMFに溶解し、DMAP(0.401g、0.00328mol)を加えた。このスラリーを部分濃縮して過剰なメチルアミンを除去し、次いで3−(ヘキサデシルオキシ)プロパン−1−オール(0.67g、0.0022mol)と3mLのDMFとを加え、スラリーを濃縮して水を除去した。次いで、かかるスラリーをΝ,Ν’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.748mL、0.00477mol)で処理し、65℃まで4時間加熱した。粗混合物を濃縮し、30%MeOH/塩化メチレン、0.3%アンモニアを用いたシリカクロマトグラフィーに供した。この部分精製された材料を、0.4%アンモニア水を含む20%MeOH:80%塩化メチレンを用い、再びクロマトグラフィーに供した。HPLCにより精製された(clean)画分を合わせて、濃縮し、高真空下で一晩乾燥させた。これをバイアルに移して吹き付けると、固形物が形成された。かかる固形物を高真空下で4日間ポンプダウンして(pumped down)、生成物36を20%の収率で得た。MS(ESI+)for C3055P m/z595.2(M+H)
【0216】
<実施例33>
【化83】

[(3Z)−5−(2−アミノ−6−クロロ−9H−プリン−9−イル)ペント−3−エン−1−イル]ホスホン酸34(0.513g、0.00161mol)と、3−(ヘキサデシルオキシ)プロパン−1−オール(0.686g、0.00228mol)と、をN,N−ジメチルホルムアミド(4.5mL、0.059mol)に溶解させ、部分濃縮して水を除去した。次いで十分なDMFを加えて元の量に戻した。そこに、4−ジメチルアミノピリジン(0.30g、0.0024mol)と、続いてΝ,Ν’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.741mL、0.00473mol)と、を加えた。かかる混合物を50℃で1時間撹拌し、70℃に加熱した後、一晩撹拌した。この反応混合物を濃縮し、25%MeOH/CHCl、2%NHOHを用いたシリカクロマトグラフィーに供して、プリン37を黄色の泡状物として33%の収率で得た。MS(ESI+)for C3660P m/z686.5(M+H)
【0217】
<実施例34>
【化84】

プリン37(0.420g、0.000518mol)のDMAP付加体を含むジメチルスルホキシド(10mL、0.1mol)のメタノール(0.1000mL、0.002469mol)の溶液を、室温にて水素化ナトリウム(79mg、0.0020mol)で処理した。かかる混合物を10分間撹拌すると、溶液はスラリーになった。これを70℃まで一晩加熱したところ、生成物はほとんど形成されなかった。このため、かかる反応混合物を室温まで冷却し、10mLのMeOHと水酸化リチウム(0.035g、0.0015mol)で処理し、室温で15分間撹拌した。この混合物を濃縮し、CHCl:MeOH:アンモニア80mL:20mL:0.5mLで用いたシリカゲルクロマトグラフィーに供して、生成物を得た。この生成物を塩化メチレンに溶解させ、2μのシリンジフィルターで濾過した。この溶液に、数滴のギ酸と共に約10mLのMeOHを加え、該溶液を濃縮することで生成物37を、58%の収率でアモルファスな固体として酸性型38に変換した。MS(ESI+)for C3054P m/z596.6(M+H)+。
【0218】
<実施例35>
【化85】

化合物37(0.215g、0.000313mol)を含むエタノール(5.0mL、0.086mol)溶液を水酸化リチウム(22mg、0.00094mol)で処理し、80℃まで数分間加熱してLiOHを溶解させた。3時間後、この溶液を濃縮し、CHCl:MeOH:NHOHを700mL:150mL:20mLで用いたシリカクロマトグラフィーに供した。得られた画分をプールし、濃縮して生成物39を89%の収率で得た。MS(ESI+)for C3156P m/z610.3(M+H)
【0219】
<実施例36>
【化86】

化合物37(0.253g、0.000369mol)を含むN,N−ジメチルホルムアミド(2.0mL、0.026mol)溶液をナトリウムメチルメルカプチド(0.100g、0.00143mol)で処理し、室温で一晩撹拌した。この混合物を濃縮し、0.4%NHOHを含む15%MeOH−CHClを用いてシリカクロマトグラフィーに供した。この粗材料をMeOH及びギ酸に溶解し、濃縮してアンモニアを除去した。HPLCの結果は、さらに極性不純物を示したため、同じ溶媒系を用いてこの材料を再びクロマトグラフィーに供し、再度ギ酸で処理し、濃縮することにより生成物40を50%の収率で得ることができた。MS(ESI+)for C3054PS m/z612.3(M+H)。NMR(400MHz,CHLOROFORM−)ppm 0.88(t,J=6.74Hz,5H)1.12−1.39(m,47H)1.43−1.60(m,4H)1.69−1.93(m,7H)2.42−2.67(m,8H)3.39(dt,J=47.32,6.50Hz,7H)3.84−4.15(m,3H)4.50−4.82(m,3H)5.30−5.88(m,3H)7.75(s,2H)8.12(s,3H);
【0220】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)又は式(II)で表される化合物、又は該化合物の塩、溶媒和物若しくは水和物。
【化1】

式中:
Bは、プリン塩基若しくはピリミジン塩基、又はそれらの類似体(アナログ)であり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、−RS(O)、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル若しくは置換ヘテロアリールアルキルである。あるいは、式(I)の化合物においては、R及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルであってもよく;
Xは、−CH−であり;
nは、0又は1であり;
kは、0、1又は2であり;
は水素、1価のカチオン又は親油基であり;
、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである。;
ただし、R及びRの少なくとも1つが水素ではないか、あるいは、R及びRのいずれもが水素である場合、
Bは以下の構造:
【化2】

である。ここで、式中、R101は、−OR104、−SR105、−NR106NH又はNR107NHSOMeであり、R102は、水素、アルキル、ハロ又はNR108109であり、R103は水素又はアルキルであり、R104、R105、R106、R107、R108及びR109は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであり;
及びRが、それらを構成する原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル又は置換シクロヘテロアルキルである場合は、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得;
及びRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、RCO−、RO−、RS(O)−、ハロ、ヘテロアルキル、−N、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換ヘテロアリールアルキルである場合は、RとRとを結合する炭素結合は二重結合であり得る。
【請求項2】
は、n−C1429O(CH−、n−C1531O(CH−、n−C1633O(CH−、n−C1735O(CH−又はn−C1837O(CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bは、以下の構造式:
【化3】

で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、アルキル又はハロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
は、メチル又はフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
及びRは、それらを構成する原子が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロプロピル又は置換シクロプロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合して、以下の環状構造:
【化4】

を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
は、n−C1633O(CH−であり、
Bは以下の構造:
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
は、n−C1633O(CH−であり、
は、アルキル又はハロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
は、n−C1633O(CH−であり、
は、メチル又はフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
は、n−C1633O(CH−であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
は、n−C1633O(CH−であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合して、以下の環状構造:
【化6】

を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Bは、以下の構造:
【化7】

であり、
は、アルキル又はハロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Bは、以下の構造:
【化8】

であり、
は、メチル又はフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
Bは、以下の構造:
【化9】

であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
Bは、以下の構造:
【化10】

であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合して、以下の環状構造:
【化11】

を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
は、n−C1633O(CH−であり、
Bは、以下の構造:
【化12】

であり、
は、アルキル又はフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
はn−C1633O(CH−であり、
Bは、以下の構造:
【化13】

であり、
はメチル又はフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
はn−C1633O(CH−であり、
Bは、以下の構造:
【化14】

であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
はn−C1633O(CH−であり、
Bは、以下の構造:
【化15】

であり、
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合して、以下の環状構造:
【化16】

を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
はn−C1633O(CH−であり、
Bは、以下の構造:
【化17】

であり、
ここで、式中、R101は、−OR104、−SR105、−NR106NH2、−NR107NHSOMeであり、R102は、水素、アルキル、ハロ、NR108109であり、R103は、水素又はアルキルであり、R104、R105、R106、R107、R108、R109はそれぞれ独立して、水素又はアルキルであり、R及びRは水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
104、R105、R106、R107はアルキルであり、R102は−NR108109である、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
104、R105、R106、R107はアルキルであり、R102は−NR108109であり、R103は水素である、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
104、R105、R106、R107はメチル又はエチルであり、R102は−NHであり、R103は水素である、請求項21に記載の化合物。
【請求項26】
104はメチル又はエチルであり、R105、R106、R107はメチルであり、R102は−NHであり、R103は水素である、請求項21に記載の化合物。
【請求項27】
はメチル又はフルオロである、請求項22〜26の何れか1項に記載の化合物。
【請求項28】
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロアルキル又は置換シクロアルキルである、請求項22〜26の何れか1項に記載の化合物。
【請求項29】
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合してなる、シクロプロピル又は置換シクロプロピルである、請求項22〜26の何れか1項に記載の化合物。
【請求項30】
及びRは、それらを構成する炭素原子同士が相互に結合して、以下の環状構造:
【化18】

している、請求項22〜26の何れか1項に記載の化合物。
【請求項31】
請求項1に記載の化合物及びと薬学的に許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物。
【請求項32】
又は治療を必要とする被検体に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、ウイルス感染の治療方法。
【請求項33】
又は治療を必要とする被検体に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、新生物(腫瘍)の治療方法。
【請求項34】
治療を必要とする被検体に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、悪性腫瘍の治療方法。
【請求項35】
細胞増殖を調節する方法であって、治療を必要とする被検体に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、細胞増殖の調整方法。

【公表番号】特表2013−503197(P2013−503197A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527052(P2012−527052)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047054
【国際公開番号】WO2011/031567
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510075240)エピファニー バイオサイエンシズ, インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】EPIPHANY BIOSCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】One California Street, Suite 2800, San Francisco, California 94111 U.S.A.
【Fターム(参考)】