説明

新規なポリチオール化合物

【課題】光学材料、加硫剤等、中でもプラスチックレンズ等に好適に使用される、合成が簡便であり、安価に得られる高屈折率材料となるポリチオール化合物を提供する。
【解決手段】ピロメリット酸クロライドまたはトリメリット酸クロライドとジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物とを反応させることにより得られる末端にチオール基を有する、下記ピロメリット酸誘導体およびトリメリット酸誘導体、および該誘導体の製造方法。


(XはOまたはS原子を表し、R1〜R4はそれぞれ独立で[(CH2)aS]bから選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリチオール化合物とその製造方法に関する。本発明のポリチオール化合物は、光学材料、合成樹脂原料、架橋剤、エポキシ樹脂硬化剤、加硫剤、重合調整剤、金属錯体生成剤、中でもプラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、特にプラスチックレンズに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料、特に眼鏡レンズに近年多用されている。光学材料、中でも眼鏡レンズに特に要求される性能は光学物性が良好なことであり、さらには高耐熱性、高染色性である。
従来より用いられているプラスチックレンズ用の樹脂として、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)がある。しかしながらこの樹脂は屈折率が1.50と低く、レンズが肉厚となることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ樹脂が望まれている。
これらの問題を解決するために、特許文献1〜3に記載されたチオール化合物が提案されている。これらを用いることによって屈折率が1.60〜1.67の材料が得られている。しかしながらこれらのポリチオール化合物も数工程に及ぶ複雑な合成が必要であり、また大量の酸、塩基、チオ尿素を用いるため、経済的にも合理的ではない。
したがって、合成が簡便で、安価に得られる高屈折率材料となるポリチオール化合物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−270859号公報
【特許文献2】特開平5−208950号公報
【特許文献3】特開平7−252207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、合成が簡便で、安価に得られる高屈折率材料となるポリチオール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、本課題を解決し、本発明に至った。具体的には、(1)式または(3)式で表される化合物、およびそれらの製造方法により本課題を解決し、本発明に至った。更に本発明の詳細を以下に示す。
1.(1)式で表される化合物。
【化1】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)
2.ピロメリット酸を原料とする(1)式で表される化合物の製造方法。
3.無水ピロメリット酸クロライドと(2)式で表されるジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物とを原料とする(1)式で表される第2項記載の化合物の製造方法。
【化2】

(式中、XはOまたはS原子を表し、aは1から4の整数、bは1または2の整数)

4.(3)式で表される化合物。
【化3】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)
5.トリメリット酸を原料とする(3)式で表される化合物の製造方法。
6.無水トリメリット酸クロライドと(2)式で表されるジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物とを原料とする(3)式で表される第5項記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物により、従来技術の化合物を原料とする限り困難であった合成が簡便であり、安価に得られる高屈折率のポリチオール化合物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で言う(1)式または(2)式で表される化合物とは、下記の化合物である。
【化4】

【化5】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)
好ましい化合物はXがS、aが1または2、bが1または2であり、より好ましい化合物は下記(4)〜(12)の化合物である。特に好ましい化合物は下記(4)〜(7)の化合物であり、最も好ましい化合物は(4)、(5)である。
【化6】

(4)

【化7】

(5)

【化8】

(6)

【化9】

(7)

【化10】

(8)

【化11】

(9)

【化12】

(10)

【化13】

(11)

【化14】

(12)
【化15】

(13)
(式中、YはOまたはS原子を表し、R〜R11はそれぞれ独立で[CZ]から選択され、ZはOまたはS原子を表し、YとZは異なる原子である。)
【0008】
本発明の化合物の合成方法としては、一般的なチオール化合物の合成方法である前駆体であるハロゲン化物もしくはポリオールをチオ尿素と反応させてイソチウロニウム塩とし、これを加水分解で製造することも可能であるが、収率やコスト面から考慮した場合、好ましい方法は酸クロライドとチオール化合物の反応やエステル交換法もしくは脱水縮合反応で得ることであり、より好ましくは酸クロライドとチオール化合物の反応で得ることである。酸クロライドは、カルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、カルボン酸と酸ハロゲン化物、α、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、カルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアミン塩と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、エステルまたはラクトンとトリフェニルハロホスホニウムハロゲン化物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物とα、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、カルボン酸とN、N‘−カルボニルイミダゾールとの反応によって得られるが、反応性を考慮すれば好ましくはカルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、カルボン酸と酸ハロゲン化物、α、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物とα、α−ジハロゲノエーテル、ハロゲン化アルキルアミン、有機リンハロゲン化物等の有機ハロゲン化物との反応であり、より好ましくはカルボン酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応、酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応であり、最も好ましくは酸無水物と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等の無機ハロゲン化合物との反応である。具体的には、無水トリメリット酸、もしくは無水ピロメリット酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンの反応で得ることが好ましい。
【0009】
本発明の化合物の合成方法を、以下にさらに詳しく述べる。酸クロライドは無水トリメリット酸、もしくは無水ピロメリット酸と塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンとの反応で得られる。反応性を考慮すれば好ましくは塩化チオニル、五塩化リンであり、最も好ましくは五塩化リンである。反応は溶媒を使用しても、無溶媒でも可能であるが、好ましくは無溶媒で行う。なお、使用する場合は、好ましくはトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、THF等のエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系炭化水素であり、特に好ましくはトルエンである。塩化ホスホリル、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リンの使用量は特に制限はないが、反応時間やその後の精製を考慮すると酸無水物に対して0.50〜4.0当量、好ましくは0.80〜2.0当量、より好ましくは1.0〜1.5当量である。反応温度は反応が進行すれば特に制限はないが、反応時間や収率を考慮すれば好ましくは10℃〜300℃である。特に無水トリメリット酸を用いる場合は20〜250℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃、特に好ましくは50〜100℃である。無水ピロメリット酸を用いる場合は20〜280℃が好ましく、より好ましくは50〜250℃、特に好ましくは100〜220℃である。反応時の圧力は常圧、減圧、加圧いずれも可能であるが、経済性を考慮すれば常圧が好ましい。また、不純物の生成を抑制するために不活性ガス雰囲気下での反応はより好ましく、最も好ましくは窒素雰囲気下である。反応時間は、反応が進行すれば特に制限はないが、収率や反応性を考慮すれば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、最も好ましくは30分〜5時間である。
【0010】
このようにして得られる酸クロライドは、精製せずに次の工程に用いることができるが、精製する場合は、ろ過、再結晶、カラム、蒸留等の手法を用いることが可能である。好ましくはろ過または、蒸留により精製することができる。
【0011】
このようにして得られた酸クロライドとジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物を、塩基性化合物の存在下、もしくは非存在下反応させて目的化合物を得ることができる。ここで用いられるジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物の好ましい例としては、メタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2−メルカプトエタノールが挙げられる。より好ましくは1,2−ジメルカプトエタン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドであり、最も好ましくはビス(2−メルカプトエチル)スルフィドである。ジチオール化合物は本発明で用いる酸クロライドに対して0.50〜30当量、好ましくは1.0〜20当量用いる。なお、未反応のポリチオール化合物は回収して再利用することが可能である。
【0012】
収率の向上のためには塩基性化合物を用いることが好ましいが、好ましい塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミン、アンモニア、ホスフィン、アンモニウム塩などが挙げられる。より好ましくはアミンまたはアルカリ金属水酸化物、さらに好ましくはアミンである。アミンの具体例としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。好ましくは、トリエチルアミン、ピリジンである。塩基化合物の添加量は本発明で用いる酸クロライドに対して0.50〜10.0当量、好ましくは0.8〜5.0当量、より好ましくは1.0〜5.0当量である。
【0013】
反応は溶媒を使用しても、無溶媒でも可能であるが、好ましくは溶媒を用いて行う。溶媒は使用可能であれば構わないが、好ましくはトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、THF等のエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤である。反応温度は反応が進行すれば特に制限はないが、反応時間や収率を考慮すれば−20℃〜100℃である。好ましくは−10〜80℃、より好ましくは0〜50℃である。反応時の圧力は常圧、減圧、加圧いずれも可能であるが、経済性を考慮すれば常圧が好ましい。また、不純物の生成を抑制するために不活性ガス雰囲気下での反応が好ましく、より好ましくは窒素雰囲気下である。反応時間は、反応が進行すれば特に制限はないが、収率や反応性を考慮すれば好ましくは1分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、最も好ましくは30分〜5時間である。
このようにして得られるポリチオール化合物は、トルエン等の有機溶剤によって抽出後、酸洗浄、塩基洗浄、水洗浄、濃縮、ろ過、再結晶等の一般的な手法により精製ができ、必要に応じて蒸留精製しても良い。
【0014】
本発明の化合物を用いることで高屈折率材料を得ることができるが、その代表的な例がポリイソシアネート化合物と共重合させることにより得られる材料である。ポリイソシアネート化合物としては、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6−ビス(イソシアナートメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3−(2’−イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2、2’−ビス(4−イソシアナートフェニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアナートトリル)フェニルメタン、4,4’、4’’−トリイソシアネート−2,5−ジメトキシフェニルアミン、3,3’−ジメトキシベンジジン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートビフェニル、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナートベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−メチル−4−イソシアナートベンゼン)、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(2−イソシアナート−2−プロピル)ベンゼン、2,6−ビス(イソシアナートメチル)ナフタレン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアナートメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナートメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナートメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアナートメチル)ノルボルネン、ビス(イソシアナートメチル)アダマンタン、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3,5−トリ(1−イソシアナートヘキシル)イソシアヌル酸、チオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ビス〔(4−イソシアナートメチル)フェニル〕スルフィド、2,5−ジイソシアネート−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネートを挙げることができる。以上具体例を示したが、これらに限定されるわけではなく、またこれらは単独でも2種以上を混合して使用しても構わない。以上の中で好ましい化合物はポリイソシアネート化合物であり、より好ましくは1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナートメチル)ノルボルネン、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼンである。
【0015】
本発明の化合物を用いて重合硬化して光学材料を得る際、公知のウレタン化触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。また、本発明の化合物を用いて重合硬化する際に型から剥がれにくい場合は、周知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。
【0016】
重合硬化前にあらかじめ脱気処理を行うが、これにより光学材料の高度な透明性が達成される場合がある。さらには、0.05〜10μm程度の孔径を有するフィルターで固形物等を濾過し精製することは品質をさらに高める上からも好ましい。
【0017】
重合硬化の際は、ガラスや金属製の型に注入し、加熱によって反応を進めた後、型から外し製造される。この場合、硬化時間は0.1〜200時間、通常1〜100時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間ホールドし、0.1℃〜100℃/時間で昇温し、0.1℃〜100℃/時間で降温およびこれらの組み合わせで行う。また、重合終了後、硬化物を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行う事は、歪を除くために好ましい処理である。さらに必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等表面処理を行うことができる。
【実施例】
【0018】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、光学物性はアタゴ社製アッベ屈折計NAR−4Tを用い、d線での屈折率を25℃で測定した。
【0019】
実施例1
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245g(1.12モル)に五塩化リン492g(2.36モル)を加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、ピロメリット酸クロライド330g(1.01モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド188g(1.21モル、ピロメリット酸クロライドに対して20当量)、ピリジン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解したピロメリット酸クロライド20g(0.06モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを除去し、目的化合物である(4)式の化合物を38g得た。精製はトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いた再結晶で行った。
1H−NMR(ppm):1.5(4H)、2.7(8H)、2.9(8H)、3.1(8H)、3.2(8H)、7.9(2H)
【化16】

(4)
【0020】
実施例2
窒素雰囲気下無水トリメリット酸225g(1.17モル)に五塩化リン500g(2.40モル)を加え混合攪拌し、70℃で4.5時間反応を行った。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、147℃で蒸留することにより、トリメリット酸クロライド234g(0.88モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド175g(1.13モル、トリメリット酸クロライドに対して15当量)、トリエチルアミン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解したトリメリット酸クロライド20g(0.094モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを除去し、目的化合物である(5)式の化合物を25g得た。
1H−NMR(ppm):1.5(3H)、2.7(6H)、2.9(6H)、3.1(6H)、3.2(6H)、8.0(1H)、8.1(1H)、8.3(1H)
【化17】

(5)
【0021】
実施例3
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245g(1.12モル)に五塩化リン492g(2.36モル)を加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、ピロメリット酸クロライド330g(1.01モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下ビスメルカプトメタン98g(1.21モル、ピロメリット酸クロライドに対して20当量)、ピリジン20gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ200mlのジクロロメタンに溶解したピロメリット酸クロライド20g(0.06モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応のビスメルカプトメタンを除去し、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(富士シリシア化学(株)製球状シリカ)で精製を行い、目的化合物である(10)式の化合物を21g得た。
1H−NMR(ppm):1.7(4H)、3.4(8H)、7.9(2H)
【化18】

(10)
【0022】
実施例4
窒素雰囲気下無水ピロメリット酸245g(1.12モル)に五塩化リン492g(2.36モル)を加え混合攪拌し、185℃で3時間反応を行い、その後155℃で4時間反応させた。反応終了後未反応の五塩化リンをろ過で除去した。その後0.5Torr、150℃で蒸留することにより、ピロメリット酸クロライド330g(1.01モル)を得た。
次いで窒素雰囲気下2−メルカプトエタノール477g(6.09モル、ピロメリット酸クロライドに対して20当量)、ピリジン100gを混合攪拌して10℃にしたのち、そこへ1500mlのジクロロメタンに溶解したピロメリット酸クロライド100g(0.30モル)を30分かけて滴下した。その後10℃で1時間、25℃で1時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を用いて分液操作を行った後、有機層を水洗し、5Torr減圧下未反応の2−メルカプトエタノールを除去し、粗生成物として(13)式で表される混合物150gを得た。この粗生成物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(富士シリシア化学(株)製球状シリカ)で精製を行い、(12)式で表される化合物11gを得た。
【化19】

(12)
1H−NMR(ppm):1.5(4H)、2.9(8H)、4.5(8H)、8.1(2H)
【0023】
参考例1
(3)式の化合物6.4g、m−キシリレンジイソシアネート13.6gに触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率は1.68であった。
【0024】
参考例2
(4)式の化合物6.3g、m−キシリレンジイソシアネート13.7gに触媒としてジブチルスズジクロライド10mg、内部離型剤としてジブチルリン酸2mgを加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10Torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で40℃から120℃まで24時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、120℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率は1.68であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式で表される化合物。
【化1】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)
【請求項2】
ピロメリット酸を原料とする(1)式で表される化合物の製造方法。
【請求項3】
無水ピロメリット酸クロライドと(2)式で表されるジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物とを原料とする(1)式で表される請求項2記載の化合物の製造方法。
【化2】

(式中、XはOまたはS原子を表し、aは1から4の整数、bは1または2の整数)

【請求項4】
(3)式で表される化合物。
【化3】

(式中、XはOまたはS原子を表し、R〜Rはそれぞれ独立で[(CHS]から選択され、aは1から4の整数、bは1または2の整数である。)
【請求項5】
トリメリット酸を原料とする(3)式で表される化合物の製造方法。
【請求項6】
無水トリメリット酸クロライドと(2)式で表されるジチオール化合物もしくはヒドロキシ基を有するチオール化合物とを原料とする(3)式で表される請求項5記載の化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−132193(P2011−132193A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294534(P2009−294534)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】