説明

新規な抗真菌組成物

本発明は、亜リン酸塩およびナタマイシンを含む組成物を農産物に添加することを含む農産物の処理方法であって、組成物が、ナタマイシン1グラム当たり、好ましくは0.1g未満のリグノスルホン酸塩を含有し、より好ましくは0.1g未満のポリフェノールを含有し、より一層好ましくはリグノスルホン酸塩を含有せず、特に好ましくはポリフェノールを含有しない方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、花の球根、塊茎、塊根、根茎、タマネギおよび種ジャガイモなどの農作物を処理するための新規な抗真菌組成物に関する。
【0002】
[発明の背景]
球根および塊茎植物の栽培は困難な一連の作業である。多くの場合、球根または塊茎は、収穫後、再び土中に植え付けられるまで、数ヶ月の長期にわたって保存される。再び植え付けられた後、植物が成長するまでに、多くの場合、数週間から数ヶ月を必要とする。さらに、これらの作物の多くは屋外で成長する。そこでは、あらゆる種類の負の影響、例えばカビ、昆虫、寄生虫、および多湿などの気候条件によって、その成長が決まってくる。保存中および輸送中にも、球根または塊茎の品質は負の影響を受けるおそれがある。球根または塊茎の品質の低下を避けるために、それらは、殆どの場合、多かれ少なかれ制御された環境条件下で保存される。
【0003】
球根および塊茎は生物的および非生物的な様々な脅威に曝されるが、保存中および植え付け後のカビの発育が主要な問題の一つであると考えられる。合成殺菌剤が広く使用されているにもかかわらず、花の球根のカビによる経済的損失は、オランダだけでも、年間2億ユーロと推定されている。
【0004】
チューリップとユリが最も重要な作物である花の球根では、フザリウム(Fusarium)(例えば、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum))およびペニシリウム(Penicillium)菌が、問題の大部分を引き起こしていることが知られている。しかしながら、これらや他の球根には、ボツリチス(Botrytis)菌、スタゴノスポラ(Stagnospora)菌、リゾクトニア(Rhizoctonia)菌およびピチウム(Pythium)菌などの他のカビも発生する。種ジャガイモでは、フザリウム(Fusarium)菌(例えば、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani))、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)、フォーマ(Phoma)菌およびペニシリウム(Penicillium)菌が、良く知られた病原性カビの例として挙げられる。
【0005】
頻繁に使用されている合成殺菌剤のいくつかは、来るべきEUの規制により、禁止されると予想されるため、カビに関する将来の問題は一層悪化すると見られる。近い将来にこの産業が蒙る相当な経済的損失を回避するためには、環境調和型の天然殺菌剤が必要である。環境および健康の観点からも、今日使用されている有害な合成殺菌剤の代替品を得ることが重要である。
【0006】
チーズやソーセージなどの食品にカビが生育するのを防止するために、ポリエンマクロライド系抗真菌剤ナタマイシンが何十年にもわたって使用されてきた。ストレプトマイセス・ナタレンシス(Streptomyces natalensis)を用いる発酵により製造されるこの天然の保存料は、食品保存料として世界中で広く使用され、食品産業において安全使用の長い歴史を有している。それは、食品腐敗菌として知られているもの全てに非常に有効である。ナタマイシンは、例えばチーズ産業において今日まで長い間使用されてきたが、耐性菌の発育は全く観察されなかった。
【0007】
チーズやソーセージは、ナタマイシンの水懸濁液への浸漬、または、そのスプレーにより処理される。チーズは、また、ナタマイシンを含有する、主にポリビニルアセテートからなるプラスチックコーティングの水性エマルジョンで覆うこともできる。ソーセージに使用する皮を、ナタマイシンの飽和懸濁液に浸漬することができる。フルーツジュースなどの飲料の場合には、最終製品にナタマイシンを単に溶解させる。
【0008】
ナタマイシンの水に対する溶解度は30〜50ppmと低く、溶解部分のみが抗真菌活性を有する。ナタマイシンの真菌に対するMIC(最小発育阻止濃度)は、その殆どで10ppm未満であるから、溶解濃度は、殆どの場合、カビの発育を防止するには十分である。普通の衛生状態では、溶解したナタマイシンの変性は、結晶からナタマイシンが溶解し、かつ表面に沿って汚染部位へ拡散することによって補われる。
【0009】
既に1970年代には、ナタマイシン(ピマリシン)は、花の球根に発生する真菌による植物の病気を抑制するのに有用であることが知られていた(デッカー(Dekker)およびランゲラク(Langerak)(1979)を参照)。線虫、昆虫およびダニを除くために球根を水浴中に43.5℃で2時間浸漬した場合の、ナタマイシンのフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の拡がりを防止する効果は、有機水銀またはホルマリンと同等であることが実証された。ナタマイシンは、水浴中でフザリウム(Fusarium)菌を効果的に除去し、病気の球根から健康な球根への二次汚染を防止した。
【0010】
しかしながら、これらの30年前の肯定的な結果や、実験室条件でナタマイシンが、花の球根、塊茎および種ジャガイモなどの作物に発生する真菌の防除に有効であることが観察されたにもかかわらず、実際には、これらの作物を高濃度のナタマイシンで処理した場合でさえ、カビの発育の防止に有効ではなかった。したがって、今日まで、この環境調和型抗真菌剤が、花の球根や、それと同程度のカビに対する感受性を有する塊茎、タマネギおよび種ジャガイモなどの作物に、実際に使用されることはなかった。
【0011】
特許出願国際公開第2004/067699号パンフレットには、リグノスルホン酸塩を、広く選択される他の化合物とともに含有する組成物が、雑草、生物的および非生物的ストレス、昆虫、線虫、並びに、カビ、細菌およびビールスなどの病原性微生物などの脅威から、農作物を保護し得ることが開示されている。ポリフェノールおよび特にリグノスルホン酸塩は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤および植物保護化合物などの他の活性化合物の効果を高めるために使用される。ナタマイシンは適切な殺菌剤の一例として挙げられており、亜リン酸カリウムは植物保護化合物の一例として挙げられている。国際公開第2004/067699号パンフレットの実施例3には、ナタマイシン−リグノスルホン酸塩の組み合わせが、葉頂におけるボトリチス(Botrytis)の発育の抑制に有効であったことが示されている。実施例11には、チューリップをフザリウム(Fusarium)菌から保護するために、リグノスルホン酸塩およびナタマイシンを使用した実験が記載されている。ナタマイシンおよびリグノスルホン酸塩で処理したチューリップ球根から成長した葉には、いくつかの黄斑が観察されたナタマイシン単独浸漬の球根と比較すると、カビによる黄斑がなかったことが観察されている。しかしながら、この実験には球根の品質に関する報告はなかった。
【0012】
[発明の概要]
本発明は、亜リン酸塩およびポリエン系殺菌剤を含有する組成物を農産物に添加することを含む農産物の処理方法に関する。好ましくは、組成物はポリエン系殺菌剤1グラム当たり0.1g以下のリグノスルホン酸塩を含有し、より好ましくは0.1g以下のポリフェノールを含有し、より一層好ましくはリグノスルホン酸塩を含有せず、最も好ましくはポリフェノールを含有しない。
【0013】
本発明は、また、亜リン酸塩およびナタマイシンを含む組成物を提供する。組成物中における亜リン酸塩のナタマイシンに対する比(重量で)は、一般に2:1〜500:1(w/w)であり、好ましくは3:1〜300:1(w/w)であり、より好ましくは5:1〜200:1(w/w)である。組成物中に、ナタマイシンの10分の1(または10分の1未満)(グラムで)のリグノスルホン酸塩が含まれていることが好ましく、ナタマイシンの10分の1(または10分の1未満)(グラムで)のポリフェノールが含まれていることがより好ましく、組成物がリグノスルホン酸塩を含んでいないことがより一層好ましく、ポリフェノールを含んでいないことが最も好ましい。この組成物は農産物の処理に使用することができる。
【0014】
[発明の詳細な説明]
本発明は、亜リン酸塩およびポリエン系殺菌剤を含有する組成物を農産物に添加することを含む農産物の処理方法であって、組成物が、ポリエン系殺菌剤1グラム当たり、0.1g以下のリグノスルホン酸塩、好ましくは0.1g以下のポリフェノールを含有する方法を提供するものである。組成物が、ポリエン系殺菌剤1グラム当たり、0.05g以下のリグノスルホン酸塩、好ましくは0.05g以下のポリフェノールを含有することがより好ましい。組成物が、ポリエン系殺菌剤1グラム当たり、0.01g以下のリグノスルホン酸塩、好ましくは0.01g以下のポリフェノールを含有することがより一層好ましい。好ましい一実施形態では、本発明の組成物はリグノスルホン酸塩を含有せず、ポリフェノールを含有しないと最も好ましい。
【0015】
予想しなかったことに、本発明者らは、ポリエン系殺菌剤、例えばナタマイシンを、亜リン酸塩の群に属する天然の作物保護化合物、例えばKHPOもしくはKHPO、または両亜リン酸塩の混合物と組み合わせると、カビに対する例えば球根、塊茎および種ジャガイモなどの保護が顕著に増進されることを見出した。さらに、作物の生長および発育が促進され、収穫量が増加することを見出した。また、リグノスルホン酸塩が、花の球根などの農産物におけるカビの発生に影響しないどころか、加速させる効果すらあることを見出した。したがって、リグノスルホン酸塩などのポリフェノールは、農産物をカビから保護するための本発明の組成物には実質的に含まれず、本発明の方法にも実質的に含まれない。
【0016】
本発明は、花の球根、塊茎、塊根、根茎、タマネギおよび種ジャガイモなどの農産物を処理するための調合物または組成物であって、カビの発育の防止に有効な一定量のポリエン系殺菌剤と一定量の亜リン酸塩化合物とを含む調合物または組成物を提供するものである。抗真菌活性は、亜リン酸塩と組み合わされたポリエン系殺菌剤の活性からなることが好ましい。
【0017】
本発明の組成物中で使用されるポリエン系殺菌剤の適切な例としては、ナタマイシン、ニスタチン、アムホテリシンB、フィリピンおよびルセンソマイシンが挙げられる。好ましいポリエン系殺菌剤はナタマイシンである。本発明の一実施形態では、組成物は、また、2種以上の異なるポリエン系殺菌剤を含有することができる。ポリエン系殺菌剤の塩もしくは溶媒和物、またはポリエン系殺菌剤の修飾された形態など(但し、これらに限定されるものではない)のポリエン系殺菌剤の誘導体も、また、本発明の組成物に使用可能であることは理解されるべきである。Delvocid(登録商標)などのナタマイシンを含む市販品は、本発明の組成物に組み込むことができる。Delvocid(登録商標)は、DSM Food Specialities(オランダ(The Netherlands))により製造されている市販品の商品名である。Delvocid(登録商標)は、ナタマイシンを50%(w/w)含有している。
【0018】
亜リン酸塩化合物の適切な例としては、KHPOおよびKHPOなどの亜燐酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸アンモニウム、ホスホン酸水素エチル、ホセチル−アルミニウム錯体、亜リン酸またはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、あるいは、これらの化合物の混合物が挙げられる。例えば、KHPOとKHPOとの混合物は、例えば、KOHまたはKCOをKHPO溶液に最終pHが5.0〜6.0になるまで加えることによって、容易に得ることができる。球根、種ジャガイモ、作物または植物中で、亜リン酸塩化合物として代謝される前駆体タイプの化合物もまた、本発明の組成物に含有させることができる。そのような組成物、および本明細書に記載の方法でのそれらの使用は、本発明の別の一態様である。ホセチル−アルミニウム錯体などのホスホン酸塩は、その例である。例えば、植物中で、この分子のホスホン酸エチル部分は亜リン酸塩として代謝される。そのような化合物の例として、Aliette(登録商標)(バイエル(Bayer)、ドイツ(Germany))と称するホスホン酸水素エチルの市販品が挙げられる。
【0019】
本発明の組成物は、粉体などの固体であっても、液体であってもよい。一般には、例えば花の球根、塊茎、タマネギおよび種ジャガイモなどの浸漬またはスプレーに使用することができる液体であろう。本発明の組成物は、一般に、0.05g/l〜100g/l、好ましくは0.1g/l〜50g/lのポリエン系殺菌剤を含むであろう。0.1g/l〜3g/lの量が好ましい。ポリエン系殺菌剤としてはナタマイシンが好ましい。組成物は、一般に、0.5g/l〜100g/l、好ましくは1g/l〜50g/lの亜リン酸カリウムを含むであろう。亜リン酸カリウムの量は2g/l〜30g/lがより好ましい。本発明では、また、他の亜リン酸塩を、亜リン酸カリウムに対して等モル量で使用することができる。
【0020】
本発明の組成物は、場合により、固着剤を含有してもよく、例えば花の球根、塊茎、挿し木、タマネギおよび種ジャガイモなどの表面への抗真菌化合物の固着性を向上させる。そのような固着剤の例としては、Prolong(登録商標)(Holland Fyto B.V.、オランダ)およびBond(登録商標)(Loveland Industries Ltd)のようなラテックスをベースとした製品、Nu−film(登録商標)(Hydrotech Saad)およびSpray−Fast(登録商標)(Mandops)のようなピノレン/テルペンをベースとした製品、並びにキサンタンガムおよびグアーガムのような長鎖ポリサッカライドなどが挙げられる。あるいは、固着剤は、ポリアクリレートおよびポリエチレンなどのタイプのポリマーから製造されるポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0021】
例えば花の球根などの疎水性の表面を有する物を処理するには、界面活性剤の添加が有利である。前記化合物を場合により添加することも、本発明に含まれる。有用な界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性テンサイド、または、例えばTween(登録商標)60、61もしくは65などのポリエチレンアルキルエーテルもしくはポリオキシエチルエーテルが挙げられる。有用な界面活性剤の他の例としては、有機シリコーン、スルホサクシネート、アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸プロポキシレート、および市販品のZipper(登録商標)(Asepta BV、オランダ)がある。さらに、本組成物は、製剤技術で通常使用されている適切な担体や補助剤、例えば、鉱物、溶媒、分散剤、展着剤、安定剤、消泡剤および酸化防止剤など(これらに限定されるものではない)を含んでもよい。
【0022】
本発明の効果を向上させ、かつ実際の使用を改善するために、昆虫、線虫、ダニおよび細菌を防除する化合物も、この抗真菌組成物に添加することができる。そのような化合物の例としては、Admire(登録商標)(バイエル)、ホルマリン、Actellic(登録商標)(Syngenta、スイス(Switserland))が挙げられる。さらに、本発明の組成物は、また、例えばキャプタン(非浸透性フタルイミド殺菌剤)、Prochloraz(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド)およびホルマリン、並びに、Topsin(登録商標)M(Cerexagri Inc、活性成分チオファナート−メチル)、Jet−5(登録商標)(Certis Europe BV、オランダ、活性成分過酢酸および過酸化水素)、およびShirlan(登録商標)(Syngenta、スイス、活性成分フルアジナム)という名前で知られている市販品などの他の抗真菌化合物を含有してもよい。
【0023】
本発明の組成物は、また、濃縮原料懸濁液/溶液、並びに、例えば粉末、顆粒および錠剤などの濃縮乾燥品を含む。これらは、農産物の浸漬用またはスプレー用組成物を調製するのに使用することができる。
【0024】
さらに、本発明は、本発明の組成物により処理された農産物を提供する。この処理された農産物は、本発明の組成物を含有するコーティングを含むものであってもよい。そのような農産物の例としては、球根、特にチューリップ、ユリ、スイセン、クロッカスまたはヒアシンスなどの花の球根;例えばタマネギなどの他の球根作物;種ジャガイモおよびダリアなどの塊茎、塊根および根茎が挙げられる。
【0025】
前記作物は、収穫後、保存前に、例えば、本発明の組成物に浸漬するかまたはそれをスプレーすることによって処理することができる。収穫後、例えばその直後に処理すれば、保存中の例えば花の球根におけるカビの増殖といったカビの発育が防止されよう。例えば、チューリップの球根は一般に夏に収穫され、10〜11月に植え付けられる。他の例には、ユリの球根や種ジャガイモがあり、これらの作物は夏または秋に収穫され、春に植え付けられる。
【0026】
あるいは、球根、塊茎または種ジャガイモは、植え付けの直前に本発明の組成物で処理することもできる。これにより、さらに地中での発芽期間中の作物を保護することができよう。
【0027】
今日まで、花の球根などの球根は、植え付け直前に殺菌剤で処理されていた。意外にも、本発明者らは、保存前、好ましくは収穫直後に、球根を抗真菌剤で処理すると、カビの生育が最適に制御されることを見出した。収穫直後とは、ここでは、洗浄/クリーニング中、洗浄直後で第1乾燥工程前(皮むき前)、または皮むき後で第2乾燥工程の前、例えば、収穫後、最初の14日以内、好ましくは最初の12日以内、より好ましくは最初の10日以内、特には最初の7日以内、より特には最初の5日以内をいう。したがって、本発明のさらに別の態様は、球根のカビの生育、すなわちカビ/真菌の増殖および/またはカビ/真菌の感染の防止および/または処理のための方法であって、球根を収穫した直後に、抗真菌剤または抗真菌組成物を球根に使用する工程を含む方法に関する。好ましい一実施形態では、抗真菌組成物は、ナタマイシンを含む。適切な抗真菌組成物としては、例えば、キャプタン(非浸透性フタルイミド殺菌剤)、Prochloraz(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド)、およびホルマリン、並びに、Topsin(登録商標)M(Cerexagri Inc、活性成分チオファナート−メチル)、Jet−5(登録商標)(Certis Europe BV、オランダ、活性成分過酢酸および過酸化水素)、およびShirlan(登録商標)(Syngenta、スイス、活性成分フルアジナム)という名前で知られている市販品などの化合物を含む組成物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい一実施形態では、本発明の組成物が、その方法に使用される。当業者であれば、その抗真菌組成物が、異なる抗真菌剤を含むことができ、また、使用目的に適した他の薬剤/化合物をさらに含み得ることを理解するであろう。
【0028】
さらに、本発明の組成物は、花植物、室内植物または作物を増やすために通常使用される挿し木または接ぎ木;新しい植物を栽培するための種子、および食料として貯蔵されている種子または食料(例えばトウモロコシおよび小麦)の処理に使用することができる。挿し木または接ぎ木の例としては、カーネーション、フクシア、キク、バラ、果樹(トマト、メロン、キュウリ、ナスなど)、および温室栽培植物が挙げられる。
【0029】
本発明の組成物は、また、穀物、トウモロコシ、コーヒー、豆、カカオ豆、大豆、例えばイチゴなどのベリー類、例えばオレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類、ブドウ、モモ、プラムおよびサクランボなどの貯蔵された農産物におけるカビ/真菌の増殖および/またはカビ/真菌の感染を防止するためにも使用される。当然ながら、本発明の組成物は、コーヒー豆およびカカオ豆の乾燥および/または発酵過程においても使用することができる。
【0030】
最後に、本発明の組成物は、また、これらに限定されるものではないが、穀物、トウモロコシなどの穀類作物、野菜、コーヒーの木、カカオの木、果樹、ブドウの木、イチゴ、キュウリの木およびトマトの木などの田畑で栽培されている作物の処理にも使用することができる。
【0031】
本発明は、また、農産物のカビの生育の防止および/または農産物のカビの処理、すなわち、カビ/真菌の増殖および/またはカビ/真菌の感染に対する処理のための本発明の組成物の使用に関する。
【0032】
[実施例]
[実施例1]
[チューリップ球根の処理]
この実施例では、プロミネンス変種のチューリップ球根を、病原菌フザリウム・オキシスポラム・エフ・スピーシーズ・チューリッパエ(Fusarium oxysporum f.sp.tulipae)CBS116591とフザリウム・オキシスポラム・エフ・スピーシーズ・チューリッパエ(Fusarium oxysporum f.sp.tulipae)Tu467の胞子の1:1混合物を用い、1ml当たり50,000〜100,000個の胞子を含有する懸濁液に30分間球根を浸漬することによって処理した。カビの胞子はよく知られている方法で得た。この効能試験では、極めて多数のカビの胞子を使用しているため、非常に厳しい条件下で組成物の効果が試験されたことに注意すべきである。実際のところ、発病の圧力はこれほど厳しくはないであろう。
【0033】
カビの胞子の植菌後、よく知られている方法で球根を乾燥させた。乾燥後40〜60分後に、表1に示す、異なる組成物で処理した。組成物は、ラベルに記載されている指示に従って調製した。全ての組成物に、0.1%(v/v)の固着剤Prolong(登録商標)(Holland Fyto、オランダ)と、1ml/lの濃度の界面活性剤Zipper(登録商標)(Asepta BV、オランダ)とを含有させた。その後、球根をポット中の培土に植え付け(1ポット当たり10個の球根)、よく知られたチューリップの標準的な成長条件でインキュベートした。
【0034】
各処理において感染した球根のパーセントを表1に示す。球根のカビの感染は、花が満開の時に調べた。各インキュベーションに対し、平均60個の球根を観察した。ASIN変換後、統計的分析を行った。P=5%でのLSDは6.50であった。
【0035】
表1の結果は、本発明の組成物(ナタマイシン+亜リン酸カリウム)は、ナタマイシンまたは亜リン酸カリウムを単独で使用した場合よりも、カビに対する保護がはるかに良好であることを明確に示している。意外にも、ナタマイシンと亜リン酸カリウムを組み合わせて使用すると、極めて相乗的に感染が抑えられる。表1に示した結果は、また、リグノスルホン酸銅の単独またはナタマイシンとの併用では、カビが減少しないばかりか、カビの感染をわずかに増加させることさえあることを示している。リグノスルホン酸銅が、花球根に対して亜リン酸カリウムおよび/またはナタマイシンと併用するとき、その併用活性に明らかにマイナスの影響を及ぼすことは明らかである。
【0036】
[実施例2]
[チューリップ球根の処理]
この実施例では、実施例1と同様に行った実験結果について記載する。実施例1で行った実験と同様に、KOHまたはKCOにより全ての溶液のpHを5.7に調節し、2つの亜リン酸塩、KHPOおよびKHPOの混合物を得た。
【0037】
実際に一般的に使用されている、標準混合物を25%含有する組成物で得た結果も含まれている。この標準混合物は、市販品の0.5%(v/v)Captan(1リットル当たり546gの活性成分)、0.3%(v/v)Prochloraz(450g/l)および1%(v/v)Topsin M(500g/l)を含有する。感染した球根の数を記録し、よく知られた統計的手法のANOVA(P=5%におけるLSDは6.50)を使用してグループ分けした。
【0038】
表2は、本発明の組成物が、ナタマイシンと標準混合物とを併用する場合と同じグループに入ることを示している。これは、ナタマイシンと亜リン酸カリウムの環境調和型組成物がナタマイシンと殺菌剤の標準混合物との併用に代替し得ることを意味する。本実施例は、また、本発明の組成物が、標準混合物、ナタマイシンまたは亜リン酸カリウムの単独の場合より、カビに対してはるかに良好な保護性を有することを示している。「D」は、対照の未処理の球根である。
【0039】
[実施例3]
[チューリップ球根の処理]
この実験では、収穫直後に、フザリウム・オキシスポラム・エフ・スピーシーズ・チューリッパエ(Fusarium oxysporum f.sp.tulipae)CBS116593の胞子の懸濁液を用いて、プロミネンス変種チューリップの球根を感染させ、表3に示す抗真菌組成物で処理した。今度は、球根は植え付けずに保存した。この実験では、球根保存中の抗真菌組成物の効果を調べた。
【0040】
収穫後、球根の外側の乾燥した表皮を除去し、4%(v/v)Glorix(登録商標)で5分間の処理を行って、球根を殺菌した。球根を乾燥させ、ナイフで球根の表面に数ミリメートルの傷をつけた。フザリウム・オキシスポラム・エフ・スピーシーズ・チューリッパエ(Fusarium oxysporum f.sp.tulipae)の胞子懸濁液15μlで傷口に感染させた。この方法で約10,000個のカビの胞子を傷口に感染させ、その後、表3に示す組成物30μlで処理した。組成物1種類当たり、20個の球根を処理した。1つの実験では、感染から12時間後に抗真菌組成物の処理を行った。球根を15日間24℃の温度でインキュベートし、その後、球根のカビの増殖を目視により調べた。結果を表3に示す。
【0041】
結果は、本発明の組成物が保存中のカビの感染から花球根を保護することを明確に示している。また、感染してから12時間後に処理を行った場合、本発明の組成物が球根のカビの発生を完全に抑えることを示している。
【0042】
これらの結果は、また、収穫直後、保存の前に、抗真菌組成物で球根を処理すると、球根のカビの発生が抑えられることを示している。
【0043】
[実施例4]
[種ジャガイモの処理]
この実施例は、ジャガイモの病気としてよく知られる銀か病を引き起こすヘルミントスポリウム・ソラニ(Helminthosporium solani)菌に対する、ナタマイシンおよび亜リン酸カリウムを含む組成物の種ジャガイモにおける抗真菌効果を示すものである。
【0044】
この実験には、新たに収穫した種ジャガイモで自然に銀か病に罹ったものを選択した。表4に示す組成物で種ジャガイモを処理した。組成物は全て、0.1%(v/v)の固着剤Prolong(登録商標)(Holland Fyto、オランダ)、および1ml/lの濃度の界面活性剤Zipper(登録商標)(Asepta BV、オランダ)を含有させた。よく知られた方法で前記組成物を種ジャガイモにスプレーし、その後、標準の条件で種ジャガイモを保存した。各組成物に対して、9×25個の種ジャガイモを使用した。各組成物について、保存1ヶ月後(t=1)、保存3ヶ月後(t=3)および保存6ヶ月後(t=6)に、3セットの種ジャガイモ(3×25)を一括りにして、目視によりカビの増殖を判定した。カビの増殖は、カビで覆われた表面の増加(パーセントで)として報告される。さらに、種ジャガイモにおけるカビの胞子形成を調べ、0〜4(0=胞子形成なし;4=大量の胞子形成)の基準で評価した。これらの結果を表5に示す。
【0045】
表4および表5の結果は、本発明の組成物が、種ジャガイモの6ヶ月の保存期間中の銀か病菌の防止に非常に有効であることを明確に示している。また、ナタマイシンおよび亜リン酸カリウムを含む組成物が、保存期間中のカビの胞子形成をほぼ完全に防止し、これにより種ジャガイモの保存期間中の汚染の拡大が防止されることを示している。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
References
Dekker J and Langerak CJ (1979), Use of antifungal antibiotics in agriculture, with special reference to control of narcissus bulb rot with pimaricin. Abh. Akadamie. Wissenschaft. DDR, Abt. Math., Naturwiss., Tech. 2N:63−74.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物の処理方法であって、亜リン酸塩およびポリエン系殺菌剤を含む組成物、好ましくは、ポリエン系殺菌剤1グラム当たり、0.1g以下のリグノスルホン酸塩を含有し、より好ましくは0.1g以下のポリフェノールを含有し、より一層好ましくはリグノスルホン酸塩を含有せず、特に好ましくはポリフェノールを含有しない組成物を添加することを含む方法。
【請求項2】
ポリエン系殺菌剤がナタマイシンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
亜リン酸塩含有組成物が、固着剤、界面活性剤、並びに/あるいは、昆虫、線虫、ダニおよび/または細菌を防除する化合物を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
亜リン酸塩およびナタマイシンを含み、ナタマイシンの、好ましくは10分の1以下(グラムで)のリグノスルホン酸塩、より好ましくは10分の1以下(グラムで)のポリフェノールを含有し、より一層好ましくはリグノスルホン酸塩を含有せず、特に好ましくはポリフェノールを含有しない組成物。
【請求項5】
固着剤、界面活性剤、並びに/あるいは、昆虫、線虫、ダニおよび/または細菌を防除する化合物をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の組成物により処理された農産物。
【請求項7】
農産物が、球根、塊茎、塊根、種ジャガイモ、根茎、挿し木、接ぎ木、タマネギ、穀物、トウモロコシ、小麦、コーヒー豆、カカオ豆、大豆、種子、ベリー、柑橘類フルーツ、ブドウ、モモ、プラム、サクランボ、穀草類作物、野菜、コーヒーの木、カカオの木、果樹、ブドウの木、イチゴ、キュウリの木、トマトの木からなる群から選択される請求項6に記載の農産物。
【請求項8】
農産物のカビの予防および/または処理のための請求項4または5に記載の組成物の使用。
【請求項9】
球根のカビの増殖を予防および/または処理する方法であって、球根を収穫した直後に、球根に抗真菌組成物を添加することを含む方法。
【請求項10】
抗真菌組成物がナタマイシンを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗真菌組成物が請求項4または5に記載の組成物である請求項9または10に記載の方法。

【公表番号】特表2009−543848(P2009−543848A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519970(P2009−519970)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057330
【国際公開番号】WO2008/009657
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【出願人】(506410822)プラント・リサーチ・インターナショナル・ビー.・ブイ. (2)
【Fターム(参考)】