説明

新規な芳香族ポリカーボネート組成物

少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)、および繰り返し単位の50質量%超が場合により置換されたアリーレン基であり[繰り返し単位(R2)]、前記繰り返し単位(R2)のそれぞれがその二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されている、少なくとも1種のポリアリーレン(P2)であって、そして前記繰り返し単位(R2)が、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい、剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)、および繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいキンク形成アリーレン単位(R2b)からなる混合物(M)であるポリアリーレン(P2)を含むブレンド物(B)。ブレンド物(B)を含む物品または物品の一部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の出願の利益を主張するものである:(i)米国仮特許出願第60/842,367号(出願日:2006年9月6日)、(ii)米国仮特許出願第60/842,368号(出願日:2006年9月6日)、および(iii)米国仮特許出願第60/842,365号(出願日:2006年9月6日)。これらの出願の内容のすべてを、参照により本明細書に援用する。
本発明は、新規な芳香族ポリカーボネートに、ならびにそれから製造される物品および物品の一部に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートは、高い剛性、良好な溶融加工性、良好な伸び性および高い耐衝撃性などのいくつかの優れたエンジニアリング特性を提供する熱可塑性ポリマーのクラスを形成する。その一方で、それらは強度および耐環境応力亀裂性において、そしてより少ない程度には、耐火性(典型的には燃焼時間によって定量化されるような)においていくらかの限界がある。ある種の厳しい業界においては、強度および耐環境応力亀裂性の点で芳香族ポリカーボネートによって達成される性質のレベルは不充分である。商業航空機製造および他の民間輸送のような業界において見いだされるかもしれないある種のさらにより厳しい用途では、さらにより高い強度だけでなく、増加した耐火性も必要とされる。
ポリアリーレン、特にポリフェニレンは例外的に高い強度を示し、それらはまた例外的に高い硬度、耐引掻性および寸法安定性を示す。これらの性質に関しては、ニートのポリアリーレンによって達成される性質のレベルは通常、最も厳しい最終用途によって要求されるものをはるかに超える。残念なことには、ポリアリーレンには、靱性関連性質に、特に耐衝撃性および伸び性の点で深刻な限界がある。
【0003】
増加した強度および耐環境応力亀裂性に対する第一のニーズを満たすために、芳香族ポリカーボネートをある種のクラスのポリアリーレンと、特にParmax(登録商標)1000およびParmax(登録商標)1200ポリフェニレン(Parmax(登録商標)1200は現在、SOLVAY ADVANCED POLYMERSによって商品名PRIMOSPIRE(商標)PR−120で市販されている)とブレンドすることは既に試みられてきた。先行技術のこれらの芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物において、ポリアリーレンはより高いレベルの強度(用途によって設定された要件を場合によっては満たす)を実際に提供するが、これらのブレンド物は依然として実質的に耐環境亀裂性の点でいくらかの限界がある。その上、当業者がニートのポリアリーレンの性質を踏まえて恐れてきたように、先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物は、伸び性および耐衝撃性の点でいくらかの限界に悩まされ、また、それらは比較的乏しいか、あるいは乏しい溶融相溶性を有し、それはおそらく、当業者が溶液ブレンディングによってそれらを一般に調製する理由を説明する。最終的に、耐火性増加は全く得られず、それとは反対に、ブレンド物ポリカーボネート−Parmax(登録商標)1200ブレンド物はさらにいくぶんより低い耐火性を示す。
【0004】
ポリマーブレンド物は、当業界では広く知られており、採用されてきた。この表現法は広くあてはまってはいるものの、ポリマーをブレンドするということは依然として半実験的な技量であって、特定の性質を付与するためのブレンド物へのポリマーの選択は、主として、エジソン式(Edisonian−like)選択法である。ポリマーブレンド物のある種の特質は、その他のものよりも独特である。あるブレンド物においてより独特の特質が見出されれば、予想もしなかった性質が得られる可能性がある。ZollerおよびHoehnは、Journal of Polymer Science,Polymer Physics Edition,vol.20,p.1385〜1397(1982)に、次のように記している:「ポリマーをブレンドするということは、熱可塑性材料において、単一のポリマーでは容易に達成することができないような性質を得るのに有用な方法である。実質的にすべての技術的に重要な性質は、この方法によって改良することが可能であるが、より重要な性質をいくつか挙げれば、流動性、機械的性質(特に衝撃強度)、熱安定性、および価格などである。(中略)。究極的には、そのようなモデル化および相関の研究のゴールは、純粋な成分単独の性質から、ブレンド物の性質を予測するものであるべきである。我々が、そのようなゴールに達するにはまだはるかに遠いところにいるのは間違いない。」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の性質の少なくとも一部、および好ましくは全部を含めた、優れたバランスの性質を提供するポリマー材料が依然として熱望されている:
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの強度より高い、高い強度;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの剛性と同程度に高い、高い剛性;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの耐環境応力亀裂性および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐環境応力亀裂性より高い、高い耐環境応力亀裂性;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐火性特性に対して向上した耐火性特性;
ある種の態様によってニートの芳香族ポリカーボネートの耐衝撃性特性に理想的に近づく、先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐衝撃性特性に対して向上した耐衝撃性特性;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の伸び性に対して向上した伸び性;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物のそれと比較したときに実質的に向上した、良好な溶融加工性。
【0006】
さらに、商業航空機製造および他の民間輸送などの、最も厳しい業界のある種の用途での使用に好適であるためには、ポリマー材料はさらに下記を提供するべきである:
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの強度および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の強度より高い、極めて高い強度;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの耐火性特性および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐火性特性より高い、極めて高い耐火性特性。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このニーズ、およびさらに他のニーズは、特殊なタイプの芳香族ポリカーボネートおよびポリアリーレンを含むブレンド物(B)によって予想外にも満たされる。
【0008】
したがって、その主たる態様において、本発明は以下のものを含むブレンド物(B)に関する:
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)、および
繰り返し単位の50質量%超が場合により置換されたアリーレン基であり[繰り返し単位(R2)]、前記繰り返し単位(R2)のそれぞれがその二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されており、そして前記繰り返し単位(R2)が、
・繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい、剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)、および
・繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい、キンク形成アリーレン単位(R2b)
からなる混合物(M)である、少なくとも1種のポリアリーレン(P2)。
【0009】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)を少なくとも1種のポリアリーレン(P2)と溶融混合することを含む、上記のようなブレンド物(B)を調製するための方法に関する。
本発明のさらに別な態様は、上述のようなブレンド物(B)を含むかもしくは上述のような方法によって得られる、成形物品もしくは成形物品の一部に関する。
本発明のさらに他の態様は、上記のようなブレンド物(B)における、芳香族ポリカーボネート(P1)の火災安定剤添加物としての、特に芳香族ポリカーボネート(P1)の燃焼時間短縮剤としてのポリアリーレン(P2)の使用を目的としている。この態様によれば、対象となるこのブレンド物は特に、成形物品または成形物品の一部の形態にあってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
芳香族ポリカーボネート(P1)およびポリアリーレン(P2)の量に関して一般に適用できる好ましい条件
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には30%を超える、好ましくは50%を超える、より好ましくは少なくとも70%である、さらにより好ましくは少なくとも75%を超える。その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には、多くとも99%、好ましくは多くとも95%、より好ましくは多くとも90%、さらにより好ましくは多くとも85%である。
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも15%である。その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には70%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは多くとも30%、さらにより好ましくは多くとも25%である。
【0011】
芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも15%である。その一方で、芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には70%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは多くとも30%、さらにより好ましくは多くとも25%である。
ブレンド(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量は、有利には25%を超える、好ましくは50%を超える、より好ましくは80%を超える、さらにより好ましくは95%を超える。優れた結果は、ブレンド物(B)が芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)とから実質的になる、またはそれらからなるときに得られた。
【0012】
芳香族ポリカーボネート(P1)およびポリアリーレン(P2)の量に関して他の好ましい特定の実施態様
この特定の実施態様において、ポリアリーレン(P2)は芳香族ポリカーボネート(P1)の量より高い量でブレンド物(B)中に含まれる。
この特定の実施態様によれば:
芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%であり、最も好ましくは25%を超え;その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には45%未満であり;芳香族ポリカーボネート(P1)の特に好適な質量の例は、30、35および40%であり;
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%であり、最も好ましくは25%を超え;その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)の質量は、有利には45%を超え;芳香族ポリカーボネート(P1)の特に好適な質量の例は30、35および40%であり;
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には55%を超え;その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量は、有利には多くとも99%、好ましくは多くとも95%、より好ましくは多くとも90%、さらにより好ましくは多くとも80%であり、最も好ましくは75%未満であり;ポリアリーレン(P2)の特に好適な質量の例は60、65および70%であり;そして
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量は、有利には25%を超え、好ましくは50%を超え、より好ましくは80%を超え、さらにより好ましくは90%を超える。
【0013】
芳香族ポリカーボネート(P1)
芳香族ポリカーボネート(P1)は繰り返し単位(R1)の50質量%超が、本明細書で以下にポリアリーレン基(P2)と定義されるような、場合により置換されていてもよい少なくとも1種のアリーレン基と、少なくとも1個のカーボネート基(−O−C(=O)−O)とを含む各種のポリマーである。
【0014】
繰り返し単位(R1)中に含まれるアリーレン基は好ましくはフェニレンおよびナフチレンから選択される。
繰り返し単位(R1)中に含まれるアリーレン基は非置換であってもよい。あるいはまた、繰り返し単位(R1)中に含まれるアリーレン基は少なくとも1個の置換基によって置換されていてもよい。その置換基は有利には、(s−1)C1〜C20アルキル、(s−2)C5〜C15シクロアルキル、(s−3)C1〜C20アリール、(s−4)C1〜C20アルキルアリール、(s−5)C1〜C20アラルキル、(s−6)C1〜C20アルケニル、ハロゲン、基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の部分的にハロゲン化された同族体、ならびに基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の完全にハロゲン化された同族体から選択される。
【0015】
繰り返し単位(R1)は特に、炭酸ジフェニルと本明細書で以下に定義されるような、少なくとも1種の芳香族ジオール(D1)との重縮合反応によって得られるものから選択されてもよい:
【化1】

式中、φはフェニルであり、ρはC6〜C50の2価基である。
【0016】
繰り返し単位(R1)は好ましくは、ホスゲンと少なくとも1種の芳香族ジオール(D1)との重縮合反応によって得られるものから選択される:
【化2】

式中、ρはC6〜C50の2価基である。
【0017】
芳香族ジオール(D1)は、2個のヒドロキシ基および少なくとも1種の場合により置換されていてもよいアリーレン基を含む任意の化合物である。
【0018】
芳香族ジオール(D1)の場合により置換されていてもよいアリーレン基は好ましくは、場合により置換されていてもよいフェニレンおよび場合により置換されていてもよいナフチレンから選択される。芳香族ジオール(D1)が場合により置換されていてもよいいくつかのアリーレン基を含む場合、それらは互いに独立して選択される。
芳香族ジオール(D1)のアリーレン基は非置換であってもよい。あるいはまた、芳香族ジオール(D1)のアリーレン基は、少なくとも1個の置換基によって置換されていてもよい。その置換基は有利には、(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)、(s−6)、ハロゲン、基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の部分的にハロゲン化された同族体、ならびに基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の完全にハロゲン化された同族体から選択される。いくつかの置換基が同じアリーレン基に置換している場合、その置換基は互いに独立して選択される。さらに、芳香族ジオール(D1)がいくつかの置換されたアリーレン基を含む場合、その置換基は芳香族ジオールごとに独立して選択される。
【0019】
それとホスゲンとの重縮合によって繰り返し単位(R1)が得られる芳香族ジオール(D1)は好ましくは、本明細書で下に示されるような、構造式(I)および(II)に従った芳香族ジオールから選択される:
【化3】

式中:
Aは、C1〜C8アルキレン、C2〜C8アルキリデン、C5〜C15シクロアルキレン、C5〜C15シクルアルキリデン、カルボニル原子、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO2−および次式にしたがった基から選択され;
【化4】

Zは、先に定義されたような(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)から選択され;好ましくはZは、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルから選択され;いくつかのZ基が置換基である場合、それらは互いに同一であってもまたは異なってもよく;
eは0〜1の整数を表し;
gは0〜1の整数を表し;
dは0〜4の整数を表し、そして
fは0〜3の整数を表す。
【0020】
芳香族ジオール(D1)のなかには、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル−1,1−ジフェノールおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、ならびにそれらの核アルキル化化合物がある。これらのおよびさらなる芳香族ジオール(D1)は、たとえば、米国特許第3,028,356号明細書、米国特許第2,999,835号明細書、米国特許第3,148,172号明細書、米国特許第2,991,273号明細書、米国特許第3,271,367号明細書、および米国特許第2,999,846号明細書に記載されており、これらのすべてを、参照により本明細書に援用する。
【0021】
繰り返し単位(R1)がそれから得られる芳香族ジオールのさらなる例は、次のビスフェノールである:
2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、α,α’−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、α,α’−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル−1,1−ジフェノールおよび4,4’−スルホニルジフェノール。
【0022】
上述の芳香族ジオール(D1)はすべてより好ましい。
さらにより好ましい芳香族ジオールは次のリストから選択される:2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル−1,1−ジフェノールおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン。
繰り返し単位(R1)がそれから得られる最も好ましい芳香族ジオールは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)である。
【0023】
本発明のポリカーボネート(P1)は、ホスゲンと1種のおよびたった1種の芳香族ジオールとから得られる繰り返し単位(R1)をその構造中に伴ってもよい。あるいはまた、本発明のポリカーボネート(P1)は、ホスゲンと2種、3種または3種より多い芳香族ジオールとから得られる繰り返し単位(R1)をその構造中に伴ってもよい。
芳香族ポリカーボネート(P1)として本発明の実施に好適な芳香族ポリカーボネートのうちに、米国特許第3,036,036号明細書および米国特許第4,210,741号明細書に記載されているものなどのフェノールフタレン−ベースのポリカーボネート、コポリカーボネートおよびターポリカーボネートが含まれ、両方とも参照により本明細書に援用する。
【0024】
芳香族ポリカーボネート(P1)は、繰り返し単位(R1)とは異なる繰り返し単位(R1*)をさらに含んでもよい。
繰り返し単位(R1*)は特に、ホスゲンとエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,5−ヘキサンジオールなどの、少なくとも1種のC1〜C20脂肪族ジオールとの重縮合反応によって得られるそれらの繰り返し単位であってもよい。
繰り返し単位(R1*)はまた、アジピン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などの、少なくとも1種の二酸と、C1〜C20の脂肪族ジオールおよび上記の芳香族ジオール(D1)と同一であるような芳香族ジオールから選択される少なくとも1種のジオールとの重縮合反応によって得られるそれらの繰り返し単位であってもよい。これらの繰り返し単位(R1*)のうちで、テレフタル酸および/またはイソフタル酸と、少なくとも1種の芳香族ジオール(D1)との重縮合反応によって得られるそれらの繰り返し単位が好ましい。
【0025】
芳香族ポリカーボネート(P1)の繰り返し単位の好ましくは75質量%超、より好ましくは90質量%超が繰り返し単位(R1)である。さらにより好ましくは、芳香族ポリカーボネート(P1)の繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R1)である。
【0026】
優れた結果は、General Electricから入手可能な、LEXAN(登録商標)104ポリカーボネートで得られた。
【0027】
本発明の芳香族ポリカーボネート(P1)は、分岐を含まなくてもよく;あるいはまた、それはまた、特にその中に少量、たとえば、0.05〜2.0モル%(ビスフェノールに対して)のポリヒドロキシル化合物を縮合させることによって分岐していてもよい。このタイプのポリカーボネートは、たとえば、独国特許出願公開第1,570,533号明細書、独国特許出願公開第2,116,974号明細書および独国特許出願公開第2,113,374号明細書;英国特許第885,442号明細書および英国特許第1,079,821号明細書ならびに米国特許第3,544,514号明細書に記載されてきた。次のものが、この目的のために使用されてもよいポリヒドロキシル化合物のいくつかの例である:フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)]−シクロヘキシル−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシ−1−イソプロピリデン)−フェノール、2,6−ビス(2’−ジヒドロキシ−5’−メチルベンジル)置換4−メチル−フェノール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロパンおよび1,4−ビス−(4,4’−ジヒドロキシ−トリフェニルメチル)−ベンゼン。他の多官能性化合物のいくつかは、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0028】
芳香族ポリカーボネート(P1)は好ましくは分岐していない。
芳香族ポリカーボネート(P1)は、半晶質であることができる(すなわち、融点を有する)かまたは非晶質であることができる(すなわち、融点を有さない)。それは好ましくは非晶質である。
芳香族ポリカーボネート(P1)は各種の好適な方法によって製造することができる。
【0029】
ポリカーボネート(P1)を調製するための好適な方法には、均一相における重縮合およびエステル交換が挙げられる。好適な方法は、参照により本明細書に援用される米国特許第3,028,365号明細書、米国特許第2,999,846号明細書、米国特許第3,153,008号明細書、および米国特許第2,991,273号明細書に開示されている。ポリカーボネート(P1)を調製するための好ましい方法は、繰り返し単位(R1)が炭酸誘導体、特にホスゲンと、少なくとも1種の芳香族ジオール(D1)との界面重縮合法によって得られる、界面重縮合法である:
【化5】

式中、ρはC6〜C50の2価基である。
【0030】
ポリカーボネート(P1)の形成における合成のさらに他の好適な方法は、参照により本明細書に援用される、米国特許第3,912,688号明細書に開示されている。
芳香族ポリカーボネート(P1)として好適な芳香族ポリカーボネートは、市場で入手可能である。たとえば、LEXAN(登録商標)104ポリカーボネートは、General Electricから市販されている、ビスフェノールAポリカーボネートである。他の好適な芳香族ポリカーボネートは、Makrolon CD 2005、Makrolon FCR 2400、Makrolon 2600、Makrolon 2800およびMakrolon 3200であり、それらのすべては、それらのそれぞれの分子量の点で異なり、そしてASTM D−1238によるそれらのメルトフローインデックス(MFR)がそれぞれ、約60〜85、16.5〜24、13〜16、7.5〜13.0および3.5〜6.5g/10分であることを特徴とするビスフェノールA−ベースのホモポリカーボネートである。Makrolon 1239などの分岐ポリカーボネートもまた使用することができる。Makrolon製品はすべて、ペンシルバニア州PittsburghのBayer Material Science LLCから入手可能である。
【0031】
芳香族ポリカーボネート(P1)は、ペレットおよび/または粉末の形態にあってもよい。
ブレンド物(B)は、1種およびたった1種の芳香族ポリカーボネート(P1)を含むことができる。あるいはまた、それは2種、3種、または3種よりさらに多くの芳香族ポリカーボネート(P1)を含むことができる。
【0032】
ポリアリーレン(P2)
本発明の目的においては、アリーレン基は、1個のベンゼン系の環からなるか、または2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより縮合された複数のベンゼン系の環から構成される一つのコアからなり、2個の末端を有する炭化水素の2価の基である。
アリーレン基の例を非限定的に挙げれば、フェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、テトラセニレン、トリフェニリレン、ピレニレン、およびペリレニレンなどである。アリーレン基(特に環炭素原子の付番)は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第64版、p.C1〜C44、特にC11〜C12の推奨に従って名付けた。
【0033】
アリーレン基は通常、ある程度のレベルの芳香族性を示し、そのため、芳香族基と呼ばれることも多い。アリーレン基の芳香族性のレベルは、そのアリーレン基の性質に依存する。Chem.Rev.、2003、103、p.3449〜3605、Aromaticity of Polycyclic Conjugated Hydrocarbonsに詳しく説明されているとおり、多環芳香族炭化水素の芳香族性のレベルは、「ベンゼン特性指数(index of benzene character)」Bによってうまく定量化することが可能である(上述文献のp.3531に定義されている)、大きい多環芳香族炭化水素のセットについてのBの値が、同じページの表40に示されている。
【0034】
アリーレン基の末端は、アリーレン基の(その)ベンゼン系の環の中に含まれる炭素原子の遊離電子であるが、ここで、前記炭素原子に結合されている水素原子は除去されている。アリーレン基のそれぞれの末端は、他の化学基との結合を形成することができる。アリーレン基の末端、あるいはより詳しくは、前記末端により形成され得る結合は、方向およびセンス(sense)によって特徴づけることができる。本発明の目的では、アリーレン基の末端のセンスとは、アリーレン基のコアの内側から前記コアの外側へ向かうことと定義される。より正確には、その末端が同じ方向を有するアリーレン基に関しては、そのような末端は同一のセンスまたは逆向きのセンスのいずれであってもよく、さらには、それらの末端が互いに直線的に先行していてもよい(their ends can be in the straight foregoing of each other)し、あるいはそうでなくても(言い方を変えれば、それらが離別していて(disjoint)もよい。
【0035】
ポリアリーレン(P2)は、繰り返し単位の50質量%超が繰り返し単位(R2)である、先に定義されたような芳香族ポリカーボネート(P1)以外の、各種のポリマーであり、ここで、繰り返し単位(R2)が場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式のものであり、そして繰り返し単位(R2)を構成する場合により置換されていてもよいアリーレン基が、それらの二つの末端のそれぞれによって二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されている。
【0036】
場合により置換されていてもよいアリーレン基が、その二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されているということは、繰り返し単位(R2)の本質的な特徴である。したがって、ポリアリーレン(P2)中に存在する場合、その二つの末端のうちの少なくとも一つによって、下記のフェニレン繰り返し単位φ1、φ2およびφ2などのアリーレン基以外の基に結合されているアリーレン繰り返し単位は、本発明の意味合いにおいては繰り返し単位(R2)ではない:
−O−φ1−S(=O)2−、
−O−φ2−φ2−O−
【0037】
繰り返し単位(R2)を構成する場合により置換されていてもよいアリーレン基は、剛直棒状(rigid−rod)形成アリーレン単位(R2a)であろうとまたはキンク形成アリーレン単位(R2b)であろうと、非置換であることができる。あるいはまた、繰り返し単位(R2)を構成する場合により置換されていてもよいアリーレン基の一部または全部は、少なくとも1個の1価の置換基によって置換されることができる。
その1価の置換基は通常、本質的には高分子量ではなく、その分子量は、好ましく500未満、より好ましくは300未満、さらにより好ましくは200未満、最も好ましくは150未満である。
【0038】
その1価の置換基が可溶化基であるのが有利である。可溶化基とは、少なくとも1種の有機溶媒の中、特に、溶液重合プロセスによってポリアリーレン(P2)を合成する際の溶媒として使用することが可能なジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ベンゼン、テトラヒドロフランおよびジメトキシエタンの内の少なくとも1種の中への、ポリアリーレン(P2)の溶解性を向上させるものである。
その1価の置換基はさらに、ポリアリーレン(P2)の可融性(fusibility)を増大させる、すなわちそれが、そのガラス転移温度およびその溶融粘度を低下させる基であるのが有利である。
【0039】
好ましくは、1価の置換基は以下のものから選択する:

ヒドロカルビル、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリール、およびアラルキル;

ハロゲン、たとえば−Cl、−Br、−F、および−I;

少なくとも1種のハロゲン原子によって部分的または全面的に置換されたヒドロカルビル基、たとえばハロゲノアルキル、ハロゲノアリール、ハロゲノアルキルアリール、およびハロゲノアラルキル;

ヒドロキシル;

少なくとも1個のヒドロキシル基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキルアリール、およびヒドロキシアラルキル;

ヒドロカルビルオキシ[−O−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、およびアラルキルオキシ;

アミノ(−NH2);

少なくとも1個のアミノ基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばアミノアルキル、およびアミノアリール;

ヒドロカルビルアミン[−NHRまたは−NR2、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミンおよびアリールアミン;

カルボン酸およびその金属塩またはアンモニウム塩、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物;

カルボン酸、その金属塩もしくはアンモニウム塩、カルボン酸ハライドおよびカルボン酸無水物の少なくとも1種によって置換されたヒドロカルビル基、たとえば−R−C(=O)OH(ここでRは、アルキルまたはアリール基である);

ヒドロカルビルエステル[−C(=O)ORまたは−O−C(=O)R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルエステル、アリールエステル、アルキルアリールエステル、およびアラルキルエステル;

アミド[−C(=O)NH2];

少なくとも1個のアミド基によって置換されたヒドロカルビル基;

ヒドロカルビルアミドモノエステル[−C(=O)NHRまたは−NH−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミド、アリールアミド、アルキルアリールアミド、およびアラルキルアミド、ならびに、ヒドロカルビルアミドジエステル[−C(=O)NR2または−N−C(=O)R2、ここでRはヒドロカルビル基である]たとえば、ジアルキルアミド、およびジアリールアミド;

スルフィン酸(−SO2H)、スルホン酸(−SO3H)、それらの金属塩またはアンモニウム塩;

ヒドロカルビルスルホン[−S(=O)2−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアリールスルホン、アラルキルスルホン;

アルデヒド[−C(=O)H]およびハロホルミル[−C(=O)X、ここでXはハロゲン原子である];

ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトン、およびアラルキルケトン;

ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は、2価の炭化水素基、たとえばアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレンもしくはアラルキレン、好ましくはC1〜C18アルキレン、フェニレン、少なくとも1個のアルキル基によって置換されたフェニレン基、または少なくとも1個のフェニル基によって置換されたアルキレン基であり、そしてR2は、ヒドロカルビル基、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアラルキル基である]、たとえばアルキルオキシアルキルケトン、アルキルオキシアリールケトン、アルキルオキシアルキルアリールケトン、アルキルオキシアラルキルケトン、アリールオキシアルキルケトン、アリールオキシアリールケトン、アリールオキシアルキルアリールケトン、およびアリールオキシアラルキルケトン;
少なくとも1個のヒドロカルビル基もしくは2価の炭化水素基R1を含む上述の基のいずれかであって、ここで前記ヒドロカルビル基または前記R1がそれ自体、上述の1価の置換基の少なくとも1個によって置換されている、たとえばアリールケトン−C(=O)−R(ここでRは、1個のヒドロキシル基によって置換されたアリール基である)であるが;
ここで:
そのヒドロカルビル基には、好ましくは1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれ;
そのアルキル基には、好ましくは1〜18個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれるが、極めて好ましくは、それらはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびtert−ブチルから選択され;

そのアリール基は、一つの末端と、1個のベンゼン系の環(たとえばフェニル基)からなるか、または、炭素−炭素結合を介してそれぞれが直接結合されるか(たとえばビフェニル基)もしくは2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより互いに縮合された(たとえばナフチル基)、複数のベンゼン系の環からなる一つコアとからなる1価の基として定義されるが、ここで、その環炭素原子が少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄原子によって置換されていてもよいが、アリール基において、環炭素原子が置換されていないのが好ましく;

そのアリール基には、好ましくは6〜30個の炭素原子を含み、より好ましくは、それらがフェニル基であり;

そのアルキルアリール基の中に含まれるアルキル基は、先に挙げたアルキル基の好ましい条件に適合し;

そのアラルキル基の中に含まれるアリール基は、先に挙げたアリール基の好ましい条件に適合する。
【0040】
より好ましくは、その1価の置換基は、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択されるが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
【0041】
さらにより好ましくは、その1価の置換基は、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択され、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
最も好ましくは、その1価の置換基は、(非置換の)アリールケトンであり、特にフェニルケトン[−C(=O)−フェニル]である。
【0042】
繰り返し単位(R2)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアは、それらが剛直棒状形成アリーレン基(R2a)であろうとまたはキンク形成アリーレン単位(R2b)であろうと、好ましくは多くとも3個、より好ましくは多くとも2個、さらにより好ましくは多くとも1個のベンゼン系の環からなる。それから、繰り返し単位(R2)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアが1個のベンゼン系の環からなるとき、繰り返し単位(R2)は場合により置換されていてもよいフェニレン基からなり、ただし、前記場合により置換されていてもよいフェニレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されている。
【0043】
先に説明したように、繰り返し単位(R2)の場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されている。それが、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいフェニレン基と結合されているのが好ましい。
【0044】
有意義なときはいつでも、先に挙げた定義および好ましい条件はすべて、それらの関心事が何であれおよび挙げられた好ましい条件のレベルが何であれ、互いに独立して剛直棒状形成アリーレン繰り返し単位(R2a)におよびキンク形成アリーレン繰り返し単位(R2b)に適用することができる。
これもまた先に説明したように、繰り返し単位(R2)の場合により置換されていてもよいアリーレン基の両方の末端を、方向およびセンスによって明確に特徴づけることができる。
【0045】
混合物(M)中に含まれる繰り返し単位(R2)の第一のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなり、その末端は
同一の方向を有し、
逆向きのセンスのものであり、そして
互いに直線的に先行している[剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)]。
【0046】
より正確には、混合物(M)は、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)を含む。
【0047】
かかる場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例には、次のものが挙げられる。
【化6】



および先に定義されたような、少なくとも1個の1価の置換基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているこれらの基の各種の基。
【0048】
場合により置換されていてもよいp−フェニレンが剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)として好ましい。
一般的に言えば、剛直棒状形成アリーレン単位は、ポリアリーレン中に含まれるとき、傑出した剛性を示す真っ直ぐなポリマー鎖をもたらす。この理由から、かかるポリアリーレンは一般に、「剛直棒状ポリマー」と呼ばれる。ポリアリーレン(P2)は、剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)を含むとき、剛直棒状ポリアリーレンと見なすことができる。
【0049】
混合物(M)に含まれる繰り返し単位(R2)の第二のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなるが、その末端が、
いずれもが異なった方向を有していて、そのために互いに0〜180度を形成するが、前記角度は鋭角であっても鈍角であってもよいか、
または同一の方向および同一のセンスを有するか、
または同一の方向を有し、逆向きのセンスであって、離別している(すなわち、互いに直線的に先行していない)
[以後全体的に、キンク形成アリーレン単位(R2b)と呼ぶ]。
より正確には、混合物(M)は、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されている、キンク形成アリーレン基(R2b)を含む。
【0050】
可能なキンク形成アリーレン単位(R2b)の第一のサブセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなり、その末端は、鋭角を一緒に形成する、異なる方向を有する[キンク形成アリーレン単位(R2b−1)]。
その末端が互いに異なる方向を有する場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例には、次のものが挙げられる。
【0051】
【化7】

および先に定義されたような、少なくとも1個の1価の置換基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているこれらの基の各種の基。
【0052】
可能なキンク形成アリーレン単位(R2b)の第二のサブセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなり、その末端は、鈍角を一緒に形成する、異なる方向を有する[キンク形成単位(R2b−2)]。その末端が互いに異なる方向を有する場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例には、次のものが挙げられる。
【0053】
【化8】

および先に定義されたような、少なくとも1個の1価の置換基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているこれらの基の各種の基。
【0054】
可能なキンク形成アリーレン単位(R2b)の第三のサブセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなり、その末端は、同一の方向および同一のセンスを有する[キンク形成アリーレン単位(R2b−3)]。その末端が同一の方向および同一のセンスを有する場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例には、次のものが挙げられる。
【0055】
【化9】

および先に定義されたような、少なくとも1個の1価の置換基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているこれらの基の各種の基。
【0056】
可能なキンク形成アリーレン単位(R2b)の第四のサブセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなり、その末端は、同一の方向を有し、逆向きのセンスのものであり、離別している(disjoint)[キンク形成アリーレン単位(R2b−4)]。かかる場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例には、次のものが挙げられる。
【0057】
【化10】

および先に定義されたような、少なくとも1個の1価の置換基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているこれらの基の各種の基。
【0058】
好ましくは、キンク形成アリーレン単位(R2b)は、キンク形成アリーレン単位(R2b−1)、キンク形成アリーレン単位(R2b−2)およびキンク形成アリーレン単位(R2b−4)から選択される。より好ましくは、キンク形成アリーレン単位(R2b)は、キンク形成アリーレン単位(R2b−1)およびキンク形成アリーレン単位(R2b−2)から選択される。さらにより好ましくは、キンク形成アリーレン単位(R2b)は、キンク形成アリーレン単位(R2b−1)から選択される。なお一層さらにより好ましくは、キンク形成アリーレン単位(R2b)は、場合により置換されていてもよいm−フェニレンである。
【0059】
一般的に言えば、キンク形成アリーレン単位は、ポリアリーレン中に含まれるとき、真っ直ぐなポリマー鎖より高い溶解性および可融性(fusibility)を示す、多かれ少なかれキンク化した(kinked)ポリマー鎖をもたらす。ポリアリーレン(P2)は、キンク形成アリーレン単位(R2b)を含むとき、「キンク化ポリマー」と見なすことができる。
【0060】
混合物(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数は、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも45%である。その一方で、混合物(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数は、好ましくは多くとも90%、より好ましくは多くとも75%、さらにより好ましくは多くとも65%、最も好ましくは多くとも55%である。
【0061】
ポリアリーレン(P2)の繰り返し単位(R2)は、次のものからなる好ましくは混合物(M)=(M)である:
繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいp−フェニレンから選択される剛直棒状化性アリーレン単位(R2a)、
および
繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、(i)少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいm−フェニレンおよび(ii)m−フェニレンおよびo−フェニレンの両方が互いに独立して、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されている、m−フェニレンとo−フェニレンとの混合物から選択されるキンク形成アリーレン単位(R2b)。
【0062】
好ましくは、混合物(M)=(M)の剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)の全部ではないとしても、実質的に全部が、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいp−フェニレン単位である。より好ましくは、混合物(M)=(M)の剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)の全部ではないとしても、実質的に全部が、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2 はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されているp−フェニレンであり、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンはそれら自体非置換であるかまたは先にリストされたもののような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。さらにより好ましくは、(M)=(M)の剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)の全部ではないとしても、実質的に全部が、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択されるp−フェニレンであり、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは非置換であるかまたは先にリストされたもののような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。最も好ましくは、(M)=(M)の剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)の全部ではないとしても、実質的に全部が、アリールケトン基によって、特にフェニルケトン基によって置換されているp−フェニレンである。
【0063】
混合物(M)=(M)のキンク形成アリーレン単位(R2b)の全部ではないとしても、実質的に全部が、場合により少なくとも1個の置換基によって置換されていてもよいm−フェニレン単位である。混合物(M)=(M)のキンク形成アリーレン単位(R2b)の全部ではないとしても、実質的に全部がm−フェニレンであるのがより好ましいが、それは場合により、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよく、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(M)=(M)のキンク形成アリーレン単位(R2b)の全部ではないとしても、実質的に全部が、非置換のm−フェニレン単位であれば、さらにより好ましい。
【0064】
混合物(M)=(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数は、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも45%である。その一方で、混合物(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数は、好ましくは多くとも90%、より好ましくは多くとも75%、さらにより好ましくは多くとも65%、最も好ましくは多くとも55%である。
【0065】
繰り返し単位(R2)が、約50:50のモル比で、非置換のm−フェニレンと共にフェニルケトン基によって置換されているp−フェニレン単位からなる混合物(M)=(M)であるときに良好な結果が得られた。
【0066】
本発明の使用および物品に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンは、繰り返し単位(R2)とは異なる、繰り返し単位(R2*)をさらに含んでもよい。
繰り返し単位(R2*)には、アリーレン基の両端それぞれに結合された、少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれていても、含まれていなくてもよい。そのような強い2価の電子吸引性基を含まない、繰り返し単位(R2*)の非限定的な例は以下のものである:
【化11】

および
【化12】

【0067】
繰り返し単位(R2*)には、アリーレン基、特にp−フェニレン基に対してその両端のそれぞれに結合された好ましくは少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれる。その2価の電子吸引性基は、スルホン基[−S(=O)2−]、カルボニル基[−C(=O)−]、ビニレン基[−CH=CH−]、スルホキシド基[−S(=O)−]、アゾ基[−N=N−]、飽和フルオロカーボン基たとえば−C(CF32−、有機ホスフィンオキシド基[−P(=O)(=Rh)−、ここでRhはヒドロカルビル基である]、およびエチリデン基[−C(=CA2)−、ここでAは水素またはハロゲンであってよい]から選択するのが好ましい。2価の電子吸引性基がスルホン基およびカルボニル基から選択されるのがより好ましい。繰り返し単位(R2*)が以下のものから選択されれば、さらにより好ましい:
(i)次式の繰り返し単位:

【化13】

(ii)次式の繰り返し単位:

【化14】

(ここで、Qは以下のものから選択される基である)、

【化15】

−(CH2n−、
(nは、1〜6の整数であり、n’は2〜6の整数である)、
Qは、以下のものから選択するのが好ましく、
【化16】

(iii)次式の繰り返し単位:
【化17】

(iv)次式の繰り返し単位:
【化18】

(ここで、Qは、繰り返し単位(ii)について先に定義されたとおりである)。
【0068】
好ましくは、ポリアリーレン(P2)の繰り返し単位の75質量%超、より好ましくは90質量%超が繰り返し単位(R2)である。さらにより好ましくは、ポリアリーレン(P2)の繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R2)である。
【0069】
ポリアリーレン(P2)がキンク化剛直棒状ポリフェニレンコポリマーであるときに、優れた結果が得られたが、このコポリマーの繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が10:90〜70:30の、好ましくは25:75〜65:35の、より好ましくは35:65〜60:40の、さらにより好ましくは45:55〜55:45の、最も好ましくは約50:50のp−フェニレン:m−フェニレンのモル比でフェニルケトン基によって置換されているp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物からなる。かかるキンク化剛直棒状ポリフェニレンコポリマーは、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されている。
【0070】
そのポリアリーレン(P2)は、通常、1000を超える、好ましくは5000を超える、より好ましくは10000を超える、さらにより好ましくは15000を超える数平均分子量を有する。その一方で、ポリアリーレン(P2)の数平均分子量は通常100000未満、好ましくは70000未満である。ある種の実施態様においては、ポリアリーレン(P2)の数平均分子量が35000よりも高い。また別な実施態様においては、それが多くとも35000であり、この実施態様においては、多くの場合多くとも25000、場合によっては多くとも20000である。ポリアリーレンの数平均分子量、特にポリアリーレン(P2)のそれは以下によって求めるのが好都合である。(1)ポリスチレン較正標準を使用し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってそのポリアリーレンの「相対的な」数平均分子量を測定してから、(2)そのようにして求めた「相対的」数平均分子量を係数2で割り算すること。そのようにして実施する理由は、ポリアリーレンの専門家である当業者ならば、GPCで測定した場合、その「相対的な」数平均分子量は通常、約2倍にずれていることを知っているからであり、上述の分子量の下限および上限はすべてこの補正係数ですでに処理したものである。
【0071】
ポリアリーレン(P2)は非晶質(すなわち、融点を有さない)であっても、半晶質(すなわち、融点を有する)であってもよい。非晶質であるのが好ましい。
ポリアリーレン(P2)は、有利には50℃を超える、好ましくは120℃を超える、より好ましくは150℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0072】
ポリアリーレン(P2)は、各種の方法によって調製することができる。ポリアリーレン(P2)を調製するための当該技術で周知の方法は特に、米国特許第5,227,457号明細書、米国特許第5,539,048号明細書、米国特許第5,565,543号明細書、米国特許第5,646,231号明細書、米国特許第5,654,392号明細書、米国特許第5,659,005号明細書、米国特許第5,668,245号明細書、米国特許第5,670,564号明細書、米国特許第5,721,335号明細書、米国特許第5,756,581号明細書、米国特許第5,760,131号明細書、米国特許第5,824,744号明細書、米国特許第5,827,927号明細書、米国特許第5,869,592号明細書、米国特許第5,886,130号明細書、および米国特許第6,087,467号明細書に記載されており、そのすべての内容を参照により本明細書に援用する。ポリアリーレン(P2)を調製するための好適な方法は、(i)その二つの末端のそれぞれの上で1個のハロゲン原子、たとえば塩素、臭素およびヨウ素に結合されている、場合により置換されていてもよい剛直棒状形成アリーレン基からなる少なくとも1種のジハロアリーレン分子化合物を、(ii)その二つの末端のそれぞれの上で1個のハロゲン原子、たとえば塩素、臭素、ヨウ素、およびフッ素に結合されている、場合により置換されていてもよいキンク形成アリーレン基からなる少なくとも1種のジハロアリーレン分子化合物と好ましくは還元カップリングさせることによって重合させることを含む。ジハロアリーレン分子化合物からのハロゲン原子の脱離は、それぞれ場合により置換されていてもよい剛直棒状形成および場合により置換されていてもよいキンク形成アリーレン基の形成をもたらす。
【0073】
したがって、たとえば:
p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルまたはそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは3〜10の整数)の一つの分子から両方の塩素原子を除去すると、それぞれ1、2またはNに隣接したp−フェニレン単位(剛直棒状形成アリーレン単位)が形成され、そのために、p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルおよびそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは上で定義されたもの)は、重合させてp−フェニレン単位を形成させることができる;
2,5−ジクロロベンゾフェノン(p−ジクロロベンゾフェノン)は、1,4−(ベンゾイルフェニレン)単位(また、剛直棒状形成アリーレン単位)を形成するために、重合させることができる;
m−ジクロロベンゼンは、m−フェニレン単位(キンク形成アリーレン単位)を形成するために、重合させることができる。
【0074】
ブレンド物(B)は、1種のおよびたった1種のポリアリーレン(P2)を含むことができる。あるいはまた、それは2種、3種、または3種よりさらに多くのポリアリーレン(P2)を含むことができる。
ブレンド物(B)において、ポリアリーレン(P2)はいかなる形態にあることもできる。一般的には、ポリアリーレン(P2)は繊維以外の形態にある。
【0075】
好ましくは、ポリアリーレン(P2)は、次の形態のうちの少なくとも1つであり:
芳香族ポリカーボネート(P1)を含む相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相の中に可溶化されたポリアリーレン(P2);
分散相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相を形成するポリアリーレン(P2)であって、前記分散相がその中に分散された、可溶化された状態での芳香族ポリカーボネート(P1)を含むポリアリーレン(P2);
そして、場合によりこれらに加えて、次の形態の1つまたは複数にある:
芳香族ポリカーボネート(P1)を含む相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相の中に分散されたポリアリーレン(P2)のノジュール;
分散相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相を形成するポリアリーレン(P2)であって、前記分散相がその中に分散された、芳香族ポリカーボネート(P1)のノジュールを含むポリアリーレン(P2)。
【0076】
極めて好ましくは、ポリアリーレン(P2)は次の形態にあり:
芳香族ポリカーボネート(P1)を含む相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相の中に可溶化されたポリアリーレン(P2);
そして、場合によりこれに加えて、次の形態にある:
芳香族ポリカーボネート(P1)を含む相、場合によりブレンド物(B)のマトリックス相の中に分散されたポリアリーレン(P2)のノジュール;
ここで:
ポリアリーレン(P2)のある種のノジュールは、芳香族ポリカーボネート(P1)を含まなくてもよく、そして
ポリアリーレン(P2)のある種の他のノジュールはそれら自体、それらの中に分散された、可溶化された状態でのおよび/またはサブノジュールの形態での芳香族ポリカーボネート(P1)を含む、マトリックス相以外の、分散相を形成してもよい。
【0077】
ブレンド物(B)の任意成分
ブレンド物(B)には、各種のその他のポリマー、添加剤、充填剤など(総称的に「構成成分」と呼ぶ)がさらに含まれていてもよい。芳香族ポリカーボネートおよびポリアリーレン組成物に慣用される構成成分としては、繊維質強化材、微粒子状充填剤および成核剤たとえばタルクおよびシリカ、接着促進剤、相溶化剤、硬化剤、潤滑剤、金属粒子、離型剤、有機および/または無機顔料たとえばTiO2およびカーボンブラック、染料、難燃剤、発煙抑制剤、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、強靱化剤たとえばゴム、可塑剤、静電防止剤、溶融粘度低下剤たとえば液晶性ポリマーなどが挙げられる。
【0078】
一般に、前記任意の構成成分の質量は、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、有利には75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは10%未満である。ブレンド物(B)が、前記任意構成成分を実質的に含まないか、あるいは完全に含まない場合に、優れた結果が得られた。
【0079】
特定の実施態様において、ブレンド物(B)は、繊維質強化材、特に、ガラス繊維および炭素繊維などの無機繊維質強化材をさらに含んでもよい。したがって、前記特定の実施態様において、ブレンド物(B)は、10〜50質量%、特に20〜30質量%の強化材(すべてのパーセンテージはブレンド物の全質量を基準にする)を含み;かかるブレンド物の例は、35質量%のキンク化剛直棒状ポリフェニレンコポリマー、35質量%の芳香族ポリカーボネートおよび30質量%のガラス繊維からなるものである。
【0080】
本発明のブレンド物の調製
ブレンド物(B)は、いかなる方法によっても調製することができる。
本発明の態様は、少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)を少なくとも1種のポリアリーレン(P2)と溶融混合することを含む上記のようなブレンド物(B)を調製するための方法を目的とする。
【0081】
ポリアリーレン(P2)と芳香族ポリカーボネート(P1)との溶融混合は、各種の適切な手段によって達成することができる。溶融混合は有利には、ブレンド物(B)中で両方のポリマーの高い程度での混合を達成するように、充分に高い剪断下に行われる(「剪断混合」)。溶融混合は特に、ブレンド物(B)のストランドを得るために、芳香族ポリカーボネート(P1)をポリアリーレン(P2)と押し出すことによって所望の方法で達成することができる。そのようにして得られたストランドを次いで切断してペレットとするのが極めて好ましい。
本発明の方法は好ましくは、芳香族ポリカーボネート(P1)をポリアリーレン(P2)と、両方とも好ましくは粉体または粒状体の形態で乾式混合する工程をさらに含み、その後で溶融混合工程にかける。
【0082】
本発明のブレンド物の最終用途
先にも説明したように、本発明のまた別な態様は、上述のようなブレンド物(B)を含む成形物品または成形物品の一部を目的としている。

本発明に従った成形物品または成形物品の一部の非限定的な例としては、以下のようなものが挙げられる:
【0083】
フィルム
フィルムを形成させるには、多くの各種方法が使用できる。連続プロセス、バッチプロセスのいずれを使用してもよい。

フィルムを溶液から形成させてもよい。その溶液には一般に、有機液体(溶媒)が含まれていて、それが、有利には、および芳香族ポリカーボネート(P1)ポリアリーレン(P2)を溶解させる。

フィルムを、ブレンド物(B)の溶融物から形成させてもよい。フィルムは、スリットを通して溶融物を押出し加工してもよい。フィルムは、インフレーション法によって形成させてもよい。さらに、延伸法および/またはアニーリング法によってフィルムをさらに加工することもできる。二層フィルム、積層フィルム、多孔質フィルム、型押しフィルムなどのような特殊なフィルムも、当業者公知の方法によって製造することができる。
ブレンド物(B)を含むフィルムを、延伸によって配向させてもよい。一次元での延伸では、一軸配向が得られるであろう。二次元での延伸では、二軸配向が得られるであろう。ガラス転移温度近くにまで加熱することによって、延伸を助けてもよい。可塑剤によって延伸を助けることもできる。本発明のブレンド物に、延伸とアニーリングを交互サイクルで適用するような、もっと複雑なプロセスを使用してもよい。
【0084】
繊維
ブレンド物(B)を含む繊維は、公知の方法によって形成されてもよい。それらは特に溶液から、またはブレンド物(B)の溶融物から形成されてもよい。
【0085】
コーティング
一般的にはコーティングされないフィルムの場合とは対照的に、コーティングは通常、基材の上に塗布される。「基材の上へのコーティング」という表現は、その常識的な意味合い、すなわちそのコーティングが基材の表面上に被覆を形成すると理解されるべきであり、したがって、コーティングを達成するために使用されるプロセスに関しては何の限定も含まれない。基材の表面は、そのコーティングによって部分的に被覆されていても、全面的に被覆されてもよい。
コーティングの厚みは、通常少なくとも1μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、さらにより好ましくは少なくとも20μmである。さらに、コーティングの厚みは、通常多くとも10000μm、好ましくは多くとも1000μm、より好ましくは多くとも500μmである。ある種の実施態様においては、コーティングの厚みは、200μm以下、さらには100μm以下であってもよい。
コーティングは公知の方法で形成されてもよく、たとえば、粉体コーティング法、予備成形フィルムの積層法、溶液からのコーティング法、溶融物からのコーティング法などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
本発明の一つの態様は、その上に上述のコーティングが塗布された、基材を含む物品である。
【0086】
特に高い技術的関心をひく本発明の具体的な態様は、防摩(ablative insulation)のために上述のコーティングを使用することに関する。それによれば、そのコーティングを基材たとえば金属の上に塗布し、コーティングを部分的または全面的に破壊するような攻撃的因子(aggresive agent)にそのコーティングを暴露させると、そのコーティングが「犠牲」層として使われて、その基材をその攻撃的因子から防御する。攻撃的因子の第一のタイプは、そのコーティングに対して相対的な運動をして、コーティングをこするような物体であり、その物体は通常、コーティングそのものよりも研磨性が強い。また別なタイプの攻撃的因子は炎の中にあり、炎の調節の有無にかかわらないが、特に燃料の緩燃焼(deliberate combustion)で発生する。さらにまた別なタイプの攻撃的因子は、化学物質から選択される。これら異種のタイプの攻撃的因子を組み合わせたものもまた、包含される。
【0087】

ブレンド物(B)を加工して、混合気体、液体および固体を分離するための膜とすることができる。

その他の成形物品または成形物品の一部
ブレンド物(B)を加工して、シート、ならびに各種の三次元成形物品および成形物品の一部としてもよい。
【0088】
ブレンド物(B)から成形物品を成形するためには、各種の成形法が使用できる。
成形法
ブレンド物(B)の粉体、ペレット、ビーズ、フレーク、粉砕再生物質またはその他の形態のものを、液体またはその他の添加剤の存在下または非存在下に、成形したり、プレミックスしたり、あるいは個別にフィードしたりすることができる。具体的な実施態様においては、ブレンド物(B)を圧縮成形してもよい。小型のサンプルの成形をトライアルアンドエラーで実施して、正確な条件を決めればよい。温度の上限は、たとえば熱質量分析のような熱分析から推測することができる。温度の下限は、たとえば動的機械熱分析(DMTA)、示差走査熱量測定(DSC)などの方法によって測定したTgから推測することができる。ブレンド物(B)は射出成形することも可能である。そのブレンド物(B)が分解せずに数回再溶融させることが可能であるならば、成形プロセスからのリグラインド(粉砕再生)を使用することも望ましい。当業者のよく認識するところであるが、その物質の応力緩和性および溶融粘度の温度依存性などのその他の因子もまた射出成形性に影響する。
【0089】
押出法
ブレンド物(B)を押出し成形することも可能である。非限定的な例としては、アングル材、チャンネル材、六角材、中空材、I形材、接合帯材、筒材、矩形筒材、棒材、シート、プレート、角材、角筒材、T形材、薄壁筒材、ミクロチューブ、ストランド、矩形ストランド、その他特定の用途のために必要とされるその他の形状などが挙げられる。押出しに関連するものとして引抜き成形があるが、その場合には繊維強化材たとえばガラスまたは炭素繊維を、溶融状態で押出し加工されたブレンド物(B)のマトリックスに連続的に添加する。例外的に大きなモジュラスと圧縮強度を有する複合材料が得られるであろう。
【0090】
熱成形
シート素材を、切断したり、圧断したり、融着したり、加熱成形したりしてもよい。たとえば、印刷配線板をシートまたは厚いフィルムから加工することもできるが、そのためのプロセスでは、銅を片面または両面の上に析出させ、標準的なフォトリソグラフィー法によってパターン化し、エッチングし、次いで孔を開け、数枚のそのようなシートを合わせて積層させて、最終的なボードを形成させる。シートおよびフィルムは、熱成形することで、各種のハウジング、キャビネット、容器、カバー、シャーシー、プレート、パネル、フェンダー、フードなどとすることもできる。
【0091】
本発明の予想外のメリット
その分子構造において実質的に不一致があるにもかかわらず、ブレンド物(B)の中に含まれるポリアリーレン(P2)および芳香族ポリカーボネート(P1)は、ときに実質的に向上した、互いに良好な相溶性を示し;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物と比較した、それらは一般的には互いに少なくとも部分的に混和性であり、両方のポリマーの混和性部分がそのとき単一相を形成する[両方のポリマーの相対的な量に依存して、(P2)が(P1)の中に可溶化されるか、またはその逆である]。
【0092】
さらに意外なことには、ブレンド物(B)は以下をはじめとする性質の優れたバランスを示す:
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの強度より高い、高い強度;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの剛性と同程度に高い、高い剛性;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの耐環境応力亀裂性および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐環境応力亀裂性より高い、高い耐環境応力亀裂性;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐火性特性に対して向上した耐火性特性;
ある種の態様によってニートの芳香族ポリカーボネートの耐衝撃性特性に理想的に近づく、先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐衝撃性特性に対して向上した耐衝撃性特性;
ブレンド物中のポリアリーレンの固定レベルで、先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の伸び性に対して向上した伸び性;
先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の溶融加工性と比較したときに実質的に向上した、良好な溶融加工性。
【0093】
本発明の好ましい実施態様において、ブレンド物(B)は、商業航空機製造および他の民間輸送などの、最も厳しい業界のある種の用途での使用に好適であり、ひいては下記を提供する:
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの強度および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の強度より高い、極めて高い強度;
先行技術のニートの芳香族ポリカーボネートの耐火性特性および先行技術の芳香族ポリカーボネート−ポリアリーレンブレンド物の耐火性特性より高い、極めて高い耐火性特性。
【0094】
実施態様(E*
本発明の特定の実施態様(E*)において、芳香族ポリカーボネート(P1)は、約10フィート−ポンド/インチ(ASTM D256−00によって測定されるように)より大きい室温ノッチ付アイゾッド衝撃強度または値を有し、約4未満の室温でのノッチ付アイゾッド強度値対約−40℃でのノッチ付アイゾッド衝撃値の比を有する。
【0095】
実施態様(E*)によるブレンド物(B)は、(i)ケーシングがブレンド物(B)からなるか、または(ii)ケーシングが2つもしくはそれ以上の小片もしくは部分からなり、ケーシングの少なくとも1つの部分がブレンド物(B)からなる、カートリッジケーシングを含む弾薬物品の製造のために特に好適である。ポリアリーレン(P2)は、芳香族ポリカーボネート(P1)の耐クリープ性および耐粘弾性緩和性を向上させる。
【0096】
実施態様(E*)にしたがった芳香族ポリカーボネートの例には、シロキサン変性ビスフェノール−Aポリカーボネート(S−PC、たとえば、General Electric Company−GE Plastics,GE Plastics Datasheet,Lexan(登録商標)EXL 9330(5ページ)(著作権1997−2003)によって商標Lexan(登録商標)EXL 9330で提供される)、およびビフェニル結合を含むポリカーボネート(B−PC、たとえば、ペンシルバニア州PittsburghのBayer Polymers LLC,Bayer Polymers Datasheet,Makrolon(登録商標)DP1−1848(4ページ)(5/3日付)によって商標Makrolon(登録商標)DP1−1848で提供される)が挙げられるが、それらに限定されない。ノッチ付アイゾット試験(ASTM D256、23℃の室温、上記と同じ)によって測定されるような、芳香族ポリカーボネートエネルギー吸収能力は、S−PCに関しては15フィート−ポンド/インチであり、B−PCに関しては13フィート−ポンド/インチであり;さらに、S−PCおよびB−PCのそれぞれは、4より充分に下の室温でのノッチ付アイゾッド強度値対約−40℃でのノッチ付アイゾッド衝撃値の比を有する。
【0097】
実施態様(E*)において、ポリアリーレン(P2)は、2005年3月7日に出願された、米国特許出願第11/074,616号明細書に記載されているかまたは参照により援用されるポリフェニレンの特性をすべて満たすかもしれず、これらの特性が本明細書に記載されるポリアリーレン(P2)のそれらと適合する限り、その特許のすべての内容を参照により本明細書に援用する。正確には、米国特許出願第11/074,616号明細書に参照により援用されるポリフェニレンポリマーおよびコポリマーは、米国特許第5,227,457号明細書、米国特許第5,539,048号明細書、米国特許第5,565,543号明細書、米国特許第5,646,231号明細書、米国特許第5,654,392号明細書、米国特許第5,659,005号明細書、米国特許第5,668,245号明細書、米国特許第5,670,564号明細書、米国特許第5,721,335号明細書、米国特許第5,756,581号明細書、米国特許第5,760,131号明細書、米国特許第5,824,744号明細書、米国特許第5,827,927号明細書、米国特許第5,869,592号明細書、米国特許第5,886,130号明細書、および米国特許第6,087,467号明細書にMarroccoらによって記載されている組成物のいずれかを有し、それら自体すべてを、参照により本明細書に援用する。
【0098】
実施態様(E*)において、ポリマーは任意の割合でブレンドすることができようが、ポリアリーレン(P2)の量は、生じたブレンド物の延性が弾薬ケーシング材料として役立つのに充分であるようにバランスをとるべきである。ポリアリーレン(P2)の量の非限定的な例は、約50質量%、より好ましくは約25%、さらにより好ましくは約15%、もっとより好ましくは約10%、さらにより好ましくは約5%である。2.5%未満、1%未満、または0.1%未満さえの量も、実施態様(E*)の実施のために有用であるように機械的性質に充分な影響を及ぼすかもしれない。ポリアリーレン(P2)のパーセントの下限はまったく暗示されない。
【0099】
例として、弾薬カートリッジケースレッツ(caselets)は、シロキサン変性ビスフェノール−Aポリカーボネートとポリアリーレン(P2)とのブレンド物から射出成形されてもよい。別の例として、弾薬カートリッジケースレッツはまた、ビフェニル結合ありのビスフェノール−Aポリカーボネートとポリアリーレン(P2)とのブレンド物から射出成形されてもよい。
当業者の良く理解するところであろうが、本発明はこの特定の実施態様(E*)に限定されるものではなく、本明細書に記載される(E*)以外の各種の実施態様もまた包含される。
【0100】
さらに、本明細書に記載の実施態様に対する各種の修正も当業者には容易に自明であり、本明細書において定義された包括的な原理は、本発明の精神および範囲から外れることなく、他の実施態様にも適用できるであろう。したがって、本発明はまた、全ての示された実施態様に限定されるものではなく、本明細書において開示された原理と特徴と矛盾しない最も広い範囲が当てられるものとする。
【実施例】
【0101】
本発明は、実施例について言及することによって以下により詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0102】
使用したポリマーは下記のものである:
ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーであって、General ElectricからLEXAN(登録商標)104ポリカーボネートとして市販されているもの、
ポリフェニレンコポリマーであって、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとのp−フェニレン:m−フェニレンのモル比が約85:15の混合物からなり、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリフェニレンとして市販されているもの、
および
ポリフェニレンコポリマーであって、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとのp−フェニレン:m−フェニレンのモル比が約50:50のものからなり、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されているもの。
【0103】
本発明によるブレンド物[(E1)および(E2)]、比較ブレンド物[(CE1)および(CE2)]、ならびにニートのポリカーボネート対照物[(CE0)]は、Berstorff 25mm二軸スクリュー共回転かみあい押出機でコンパウンディングした。ニートのポリカーボネート対照物(CE0)の場合には、そのコンパウンディング工程では、その樹脂を粉体からペレットの形態へと転化させ、そのベースポリマーに、ブレンド物に見られるのと同じ熱履歴を与えるようにした。
【0104】
第一セットの実験結果
機械的性質
機械的性質の試験は、厚み3.2mmのASTM試験片を用いて、示されるASTM試験法にしたがって実施した。
【0105】
得られたそれらの結果を下の表1に示す。
表1−機械的性質

【0106】
両方のブレンド物(E1)および(E2)(本発明による)とも、優れた性質のバランスを示した。ブレンド物(E1)および(E2)のうち、より機能するものは、グローバルな観点から、ブレンド(E2)である。
【0107】
第二セットの実験結果
室温での24時間浸漬暴露後イソプロパノールへの耐環境応力亀裂性。
それらの結果を表2に示す。
表2

【0108】
第三セットの実験結果。耐火性に関連する性質。
UL−94垂直燃焼法を用いた。

それらの結果を表3に示す。
表3−耐火性に関する性質

【0109】
全体燃焼時間および最長燃焼時間T1(火炎への最初の10秒暴露後の時間)が短ければ短いほど良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)、および
繰り返し単位の50質量%超が場合により置換されたアリーレン基であり[繰り返し単位(R2)]、前記繰り返し単位(R2)のそれぞれがその二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されており、そして前記繰り返し単位(R2)が、
・繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい、剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)、および
・繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよい、キンク形成アリーレン単位(R2b)
からなる混合物(M)である、少なくとも1種のポリアリーレン(P2)
を含むブレンド物(B)。
【請求項2】
芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量が少なくとも10%であることを特徴とする請求項1に記載のブレンド物。
【請求項3】
芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量が少なくとも15%であることを特徴とする請求項2に記載のブレンド物。
【請求項4】
芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量を基準にして、ポリアリーレン(P2)の質量が多くとも30%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項5】
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、芳香族ポリカーボネート(P1)とポリアリーレン(P2)との総合質量が95%を超えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項6】
ポリアリーレン(P2)の繰り返し単位(R2)が、
繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして0〜75モル%の、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいp−フェニレンから選択される剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)、および
繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして25〜100モル%の、(i)少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていてもよいm−フェニレンおよび(ii)m−フェニレンおよびo−フェニレンの両方が互いに独立して、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されている、m−フェニレンとo−フェニレンとの混合物から選択されるキンク形成アリーレン単位(R2b)
からなる混合物(M)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項7】
混合物(M)の剛直棒状形成アリーレン単位(R2a)がフェニルケトン基によって置換されているp−フェニレンであることを特徴とする請求項6に記載のブレンド物。
【請求項8】
混合物(M)のキンク形成アリーレン単位(R2b)が非置換のm−フェニレンであることを特徴とする請求項6または7に記載のブレンド物。
【請求項9】
混合物(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数が少なくとも40%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項10】
混合物(M)において、繰り返し単位(R2)の合計モル数を基準にして、キンク形成アリーレン単位(R2b)のモル数が多くとも65%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項11】
芳香族ポリカーボネート(P1)の繰り返し単位の50質量%超が、ホスゲンと少なくとも1種の芳香族ジオール(D1)と:
【化1】

(式中、ρはC6〜C50の2価基である)
の重縮合反応によって得られるものから選択される繰り返し単位(R1)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項12】
芳香族ジオール(D1)が構造式(I)および(II):
【化2】

(式中:
AはC1〜C8アルキレン、C2〜C8アルキリデン、C5〜C15シクロアルキレン、C5〜C15シクロアルキリデン、カルボニル原子、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO2−および次式にしたがった基から選択され;
【化3】

Zは(s−1)C1〜C20アルキル、(s−2)C5〜C15シクロアルキル、(s−3)C1〜C20アリール、(s−4)C1〜C20アルキルアリール、(s−5)C1〜C20アラルキル、(s−6)C1〜C20アルケニル、ハロゲン、基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の部分的にハロゲン化された同族体、ならびに基(s−1)、(s−2)、(s−3)、(s−4)、(s−5)および(s−6)の完全にハロゲン化された同族体から選択され;いくつかのZ基が置換基である場合、それらは互いに同一であっても異なってもよく;
eは0〜1の整数を表し;
gは0〜1の整数を表し;
dは0〜4の整数を表し;そして
fは0〜3の整数を表す)
の芳香族ジオールから選択されることを特徴とする請求項11に記載のブレンド物。
【請求項13】
芳香族ジオール(D1)が2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)であることを特徴とする請求項12に記載のブレンド物。
【請求項14】
芳香族ポリカーボネート(P1)の繰り返し単位の実質的に全部が繰り返し単位(R1)であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載のブレンド物。
【請求項15】
少なくとも1種の芳香族ポリカーボネート(P1)を少なくとも1種のポリアリーレン(P2)と溶融混合することを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のブレンド物を調製するための方法。
【請求項16】
ブレンド物(B)のストランドを得るために、芳香族ポリカーボネート(P1)をポリアリーレン(P2)と押し出すことを含むことを特徴とする請求項15に記載のブレンド物を調製するための方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のブレンド物を含むか、または請求項15もしくは16に記載の方法によって調製される成形物品または成形物品の一部。
【請求項18】
フィルムであることを特徴とする、請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項19】
繊維であることを特徴とする請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項20】
コーティングであることを特徴とする請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項21】
膜であることを特徴とする請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項22】
シートであることを特徴とする請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項23】
三次元形状であることを特徴とする、請求項17に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項24】
前記ブレンド物(B)を射出成形することを特徴とする、請求項17〜23のいずれか一項に記載の成形物品または成形物品の一部を調製するための方法。
【請求項25】
芳香族ポリカーボネート(P1)の火災安定剤添加物としてのポリアリーレン(P2)の、請求項1〜14のいずれか一項に記載のまたは請求項15もしくは16に記載の方法に従って調製されるブレンド物における使用。
【請求項26】
ポリアリーレン(P2)が芳香族ポリカーボネート(P1)の燃焼時間短縮剤として使用されることを特徴とする請求項25に記載の使用。

【公表番号】特表2010−502796(P2010−502796A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527073(P2009−527073)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052079
【国際公開番号】WO2008/028695
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】