説明

新規な麺食品

【課題】 本発明は、麺食品の生地物性を損ねることなく腰の強化を改良し、その上また加水率を多くすることもできる、新規な麺食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 穀粉類を含有する麺用生地であって、融点が50〜85℃であるゲル状物が生地中に不均一分散しており、ゲル状物の含有量が、麺用生地中の穀粉類100重量部に対して5〜70重量部であることを特徴とする麺用生地を用いて、麺および麺食品を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺用生地、それを用いた麺食品及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニに代表される麺食品は幅広く食されている食品である。その麺食品の腰の強化を改良する方法としては、タンパク類、乳化剤、増粘剤等の種類や配合を検討されてきた。しかし、これらの方法は、生地物性に悪影響しない範囲で行う必要があったため、最終製品において大幅な改良効果が見られないという欠点があった。また、腰の強い中華麺を提供することを目的に、コンニャクゼリーを添加してなる中華麺(特許文献1)があるが、ここで麺生地に添加配合されるこんにゃくゼリーは、こんにゃく粉に水を加えて膨潤溶解して得られるこんにゃく粉を塩基性アミノ酸等のアルカリの存在下で加熱して、こんにゃく粉がゲル化する前に加熱を終了して得られるものであり、生地作製時に、コンニャクゼリーはまだゲル状物になっておらずゾル状物である為に、ゾル状物である前記コンニャクゼリーは生地中に均一分散しており、腰を強化しようとして添加量を多くすると、生地物性に影響があるといった欠点があった。また、喉越し、透明性を良好とする事目的に、加水率を多くすることを検討されてきた。しかしこれらの方法は、生地をあらかじめ加熱しアルファ化させたり、減圧下で製造を行ったり、従来の設備では製造出来ないという欠点があった。
【特許文献1】特開平4−166047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、麺食品の生地物性を損ねることなく腰の強化を改良し、その上また加水率を多くすることもできる、新規な麺食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定量のネイティブジェランガムからなるゲル化剤を用いてなるゲル状物が生地中に不均一分散した麺生地を加熱して得られる麺食品は、生地物性を損ねることなく腰の強化を改良し、その上また加水率を多くすることもできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の第一は、穀粉類を含有する麺用生地であって、融点が50〜85℃であるゲル状物が生地中に不均一分散しており、ゲル状物の含有量が、麺用生地中の穀粉類100重量部に対して5〜70重量部であることを特徴とする麺用生地に関する。好ましい実施態様は、ゲル状物に使用されるゲル化剤は、ネイティブジェランガムからなるゲル化剤(A)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とκカラギナンからなるゲル化剤(B)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とキサンタンガムからなるゲル化剤(C)、ιカラギナンからなるゲル化剤(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を含有することを特徴とする上記記載の麺用生地に関する。本発明の第二は、上記記載の麺用生地からなる麺に関する。本発明の第三は、上記記載の麺を加熱してなる麺食品に関する。本発明の第四は、融点が50〜85℃であるゲル状物が不均一分散した麺用生地を作る工程、麺用生地を麺にする工程、および生地温度がゲル状物の融点よりも高い温度になるまで該麺用生地を加熱する工程があることを特徴とする麺食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
麺食品の生地物性を損ねることなく腰の強化を改良し、その上また加水率を多くすることもできる、新規な麺食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の麺用生地は、穀粉類、融点が50〜85℃であるゲル状物、水及び食塩を含有し、融点が50〜85℃であるゲル状物が生地中に不均一分散していることを特徴とする。
【0008】
本発明の穀粉類とは、蕎麦粉、小麦粉などを例示できる。穀粉類の含有量は、麺用生地全体中59〜77重量%が好ましい。
【0009】
本発明ゲル状物とは、コロイド溶液が流動性を失い、多少の弾性と固さをもってゼリー状に固化した状態のものであり、該ゲル状物は通常、水に糖類とゲル化剤とキレート剤の粉体混合したものを加え、所定の温度にて10分間程度加熱攪拌混合し、容器に充填して所定の温度で所定の品温になるまで冷却して作製される。そして前記ゲル状物の融点、即ち湿熱でゲル状物の保形成を保てない時点の温度は、50〜85℃が好ましく、55〜85℃がより好ましい。50℃よりも低いと、麺用生地を加熱する前にゲル状物が溶解してしまい、麺食品の生地物性が低下する場合があり、85℃より高いと、耐熱性がある為に加熱時にゲル状物が全て溶解せずに、でき上がった麺食品にゲル状物が残ってしまい食感に違和感がある場合がある。本発明のゲル状物の種類は、食品用途に用い得る物であれば特に限定は無いが、ネイティブジェランガムからなるゲル化剤(A)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とκカラギナンからなるゲル化剤(B)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とキサンタンガムからなるゲル化剤(C)、ιカラギナンからなるゲル化剤(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0010】
前記ゲル状物の含有量は、麺用生地中の穀粉類100重量部に対して5〜70重量部が好ましい。含有量が5重量部より少ないと発明の効果を奏さない場合があり、70重量部よりも多いと生地物性を損なう場合がある。
【0011】
ゲル状物の生地中への不均一分散とは、目視でゲル状物の点在していることが確認できる程度、すなわちゲル状物が直径0.2〜3mm程度の大きさで分散している状態をいう。ゲル状物の直径が0.2mmより小さいもしくはゲル状物が見あたらなければ均一分散となっており、ゲル化剤の添加量を増加させると良く、逆に3mmよりも大きければゲル化剤の添加量を減量させることにより調整できる。
【0012】
尚、ゲル状物の融点の測定は、ゲル状物に直接水流が当たらないように調整した水浴恒温槽中に一辺約2cmの立方体に切り出したゲル状物を静置し、0.3〜0.5℃/分のスピードで水浴恒温槽を昇温し、高さが10mm以下となった時の水温の温度を測定し、その温度を融点とすることにより求めることができる。
【0013】
本発明の麺用生地中の水分量は、製麺できるのであれば特に限定は無いが、穀粉類100重量部に対して30〜70重量部が好ましい。ここで、麺用生地中の穀粉類100重量部に対する水分量を加水率と呼び、該水分量としては、配合で加える水とゲル状物中の水の合計を計上し、全卵を用いた場合の全卵中の水は計上しない。従って、上記の水分量を言い換えると、本発明の麺用生地中の加水率は30〜70%が好ましい。また、一般的に加水率が40%を超えると作業しづらくなるが、40%を超えた数量をゲル状物に置き換える事により作業性が向上し、本発明の効果を好適に奏することができる。
【0014】
本発明の麺用生地は、通常の方法で所望の形に成形した後、沸騰水で加熱することで麺食品を得ることができる。
【0015】
<麺食品の製造方法>
融点が50〜85℃であるゲル状物が不均一分散した麺用生地を作る工程は、以下の通りである。まず、所定量の穀粉を所定量の食塩と水と混ぜて軽く捏ね、その後所定量のゲル状物を添加して、ミキサーなどにより充分に捏ね上げ、麺用生地を得る。
【0016】
麺用生地を麺にする工程は、以下の通りである。得られた麺用生地を一定時間醸成した後、所望の厚みに延ばした後、カッティングし、麺を得ることができる。
【0017】
生地温度がゲル状物の融点よりも高い温度になるまで麺を加熱する工程は、以下の通りである。上記で得られた麺を、沸騰水で所望の時間加熱し、麺食品を得ることができる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0019】
<生地物性評価方法>
実施例・比較例における生地物性評価は、5人の熟練した調理人に調理させ、以下の4段階の基準により評価を実施し、その結果を集約した。評価基準は次の通りである。◎:ブランクとなる比較例と較べてまったく作業性が変わらない、○:ブランクとなる比較例と較べて差は判るが問題ない、△:ブランクとなる比較例と較べて作業性が悪くなる。×:ブランクとなる比較例と較べて作業性が著しく悪く、生地とならない。
【0020】
<腰の評価方法>
実施例・比較例で得られた麺を、5人の熟練したパネラーに試食させ、以下の4段階の基準により評価し、その結果を集約した。評価基準は次の通りである。◎:ブランクとなる比較例と較べて腰がかなりある、○:ブランクとなる比較例と較べて腰が充分ある、△:ブランクとなる比較例と較べて腰の差がわかる程度、×:ブランクとなる比較例と較べて腰の差がわからない。
【0021】
(製造例1〜5) ゲル状物G1〜G5の作製
表1に示す配合に従い、水飴に水以外の原料を粉体混合してから投入し、軽く混ぜて分散させた物に水を加え、攪拌ミキサー(製品名:ケミスターラーB−100型、東京理化器械(株)社製)により85℃で10分間加熱攪拌混合し、蒸発した水を補填しながら均一になるように攪拌し、耐熱性のあるビニール袋に充填し、5℃の冷蔵庫で3時間冷却し、ゲル状物G1〜G5を得た。
【0022】
【表1】

【0023】
(比較例1) 実施例1,2のブランク(うどん)
表2の配合に従い縦型ミキサーとフックを用いて、低速で小麦粉を攪拌しながら、あらかじめ水に食塩を溶解しておいた食塩水をゆっくり投入し、そぼろ状になるまで混捏した。そのものを丸めて1時間生地を寝かした後、麺帯機にて厚さ3mmまで圧延し、3mm幅にて麺状に加工して麺を得た。沸騰した湯中にて15分間麺を茹で、麺食品(うどん)を得た。得られたうどんを実施例1,2のブランクとした。
【0024】
【表2】

【0025】
(実施例1)
食塩水を投入した後にゲル状物G1を投入した以外は、比較例1と同様にして麺および麺食品を得た。得られた麺をブランクとなる比較例1と比較して生地物性評価し、結果を表2に示した。また、得られた麺食品(うどん)をブランクとなる比較例1と比較して腰の評価し、結果を表2に示した。
【0026】
(実施例2)
食塩水を投入した後にゲル状物G2を投入した以外は、比較例1と同様にして麺および麺食品を得た。得られた麺をブランクとなる比較例1と比較して生地物性評価し、結果を表2に示した。また、得られた麺食品(うどん)をブランクとなる比較例1と比較して腰の評価し、結果を表2に示した。
【0027】
(比較例2) 実施例3,4のブランク(中華麺)
表2の配合に従い縦型ミキサーとフックを用いて、低速で小麦粉と炭酸ナトリウムと炭酸カリウムを攪拌しながら、卵と水の混合物をゆっくり投入し、そぼろ状になるまで混捏した。そのものを丸めて1時間生地を寝かした後、麺帯機にて厚さ1mmまで圧延し、1mm幅にて麺状に加工して麺を得た。沸騰した湯中にて3分間麺を茹で、麺食品(中華麺)を得た。得られた中華麺を実施例3,4のブランクとした。
【0028】
(実施例3)
卵と水の混合物を投入した後にゲル状物G3を投入した以外は、比較例2と同様にして麺および麺食品(中華麺)を得た。得られた麺をブランクとなる比較例2と比較して生地物性評価し、結果を表2に示した。また、得られた麺食品(中華麺)をブランクとなる比較例2と比較して腰の評価し、結果を表2に示した。
【0029】
(実施例4)
卵と水の混合物を投入した後にゲル状物G4を投入した以外は、比較例2と同様にして麺および麺食品(中華麺)を得た。得られた麺をブランクとなる比較例1と比較して生地物性評価し、結果を表2に示した。また、得られた麺食品(中華麺)をブランクとなる比較例2と比較して腰の評価し、結果を表2に示した。
【0030】
(比較例3) 実施例5のブランク(そば)
表2の配合に従い縦型ミキサーとフックを用いて、低速で小麦粉とそば粉を攪拌しながら、水をゆっくり投入し、そぼろ状になるまで混捏した。そのものを丸めて1時間生地を寝かした後、麺帯機にて厚さ1mmまで圧延し、1mm幅にて麺状に加工し麺を得た。沸騰した湯中にて3分間麺を茹で、麺食品(そば)を得た。得られたそばを実施例5のブランクとした。
【0031】
(実施例5)
水を投入した後にゲル状物G5を投入した以外は、比較例3と同様にして麺および麺食品(そば)を得た。得られた麺をブランクとなる比較例3と比較して生地物性評価し、結果を表2に示した。また、得られた麺食品をブランクとなる比較例3と比較して腰の評価し、結果を表2に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類を含有する麺用生地であって、融点が50〜85℃であるゲル状物が生地中に不均一分散しており、ゲル状物の含有量が、麺用生地中の穀粉類100重量部に対して5〜70重量部であることを特徴とする麺用生地。
【請求項2】
ゲル状物に使用されるゲル化剤は、ネイティブジェランガムからなるゲル化剤(A)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とκカラギナンからなるゲル化剤(B)、カシアガム、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンから選ばれる少なくとも1種とキサンタンガムからなるゲル化剤(C)、ιカラギナンからなるゲル化剤(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の麺用生地。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の麺用生地からなる麺。
【請求項4】
請求項3に記載の麺を加熱してなる麺食品。
【請求項5】
融点が50〜85℃であるゲル状物が不均一分散した麺用生地を作る工程、麺用生地を麺にする工程、および生地温度がゲル状物の融点よりも高い温度になるまで該麺用生地を加熱する工程があることを特徴とする麺食品の製造方法。